主文 1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人主文同旨 2 被控訴人控訴棄却第2 事案の概要 1 本件は,被控訴人が平成2年9月期から平成4年9月期まで(本件各事業年度)の法人税,平成3年9月期の法人臨時特別税,平成4年9月期の法人特別税の各申告に当たり,租税特別措置法(租特法)56条の5第1項本文及び表3号(平成7年法律第55号による改正前。以下同じ。)(本件規定)に基づいてプログラム等準備金の損金算入をして所得金額を算定したところ,控訴人は,この損金算入を否認するなどして,原判決添付の別紙「申告・更正処分対比表」記載のとおりの更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(本件各更正等)をしたことから,被控訴人がその取消しを求めた事案である。 控訴人は,このプログラム等準備金の損金算入制度は,情報処理システムの構築について,ユーザーの要求内容を把握し,これに基づいて基本設計,プログラム作成,試験,運用の準備及び保守に至るまでを一貫して請け負う統合情報処理システムのサービス形態(システムインテグレーション,SI)が抱える無償補修特約に伴うリスクを軽減するための税制上の優遇措置として設けられたものであり,租特法の上記規定による損金算入が認められるためには,①情報処理システムの設計,プログラムの作成,試験,運用の準備及び保守のすべての役務の提供を遅くとも要求定義の終了(設計及びシステム分析に入る前まで)の段階で一括契約によって請け負い,その内容が契約書等によって裏付けられていること(SI要件及び一括契約要件),②引渡し後1年以上の間の書面による無償補修特約が存在すること(無 ム分析に入る前まで)の段階で一括契約によって請け負い,その内容が契約書等によって裏付けられていること(SI要件及び一括契約要件),②引渡し後1年以上の間の書面による無償補修特約が存在すること(無償補修特約要件),③契約締結当初の段階で5000万円以上の役務提供の対価が定められていること(対価要件),④エンド・ユーザーとの直接契約に基づき役務を提供するものであること(直接契約要件),⑤システムの一部だけではなく,ユーザーが開発しようとするシステム全体の構築を請け負う契約であること(全体システム要件)といった各要件を満たす必要があるが,被控訴人が損金算入の対象として申告した各契約(本件各契約)はいずれも上記の要件を欠くものであり,上記規定の適用対象となるものではないと主張した。 原判決は,控訴人の主張する各要件について検討を加え,契約当初の段階で上記の各役務のすべてを提供する旨の合意がされている必要はあるものの,黙示の合意も含まれるのであって,それが契約書に明示されている必要はなく,対価については当初から5000万円以上と定められていなくても,当初契約に基づいて行われた業務の対価の総額が5000万円以上であると認められれば足りるとし,また,システム業者がエンド・ユーザーと直接契約を締結していない場合やユーザーが開発しようとしているシステムの一部を受注したにすぎない場合であっても,それだけで適用対象でないということはできず,実質的に当該システム業者がシステムインテグレーターとしての統合的機能を果たしているかどうかが検討されなければならないとして,控訴人の主張する一括契約要件,対価要件,直接契約要件,全体システム要件は不要であるとした。そして,控訴人が上記規定の適用の対象とならないとした本件各契約の中で,第一証券システムのうちの第一証券向け 控訴人の主張する一括契約要件,対価要件,直接契約要件,全体システム要件は不要であるとした。そして,控訴人が上記規定の適用の対象とならないとした本件各契約の中で,第一証券システムのうちの第一証券向け顧客情報システム(申告対象時期平成2年9月期・金額5350万円),山九システムのうちの倉庫国内システム(申告対象時期平成2年9月期・金額3150万円),山一證券システムのうちのTISーFFシステムの営業店TISメニュー追加1開発(申告対象時期平成2年9月期・金額2164万円)及び東海銀行システム(申告対象時期平成2年9月期・金額2億0162万3600円,申告対象時期平成3年9月期・金額4億0216万3000円,申告対象時期平成4年9月期・金額1億2690万円)については,いずれも適用の対象になるものと認められ,これにより平成2年9月期は3000万円,平成3年9月期は4000万円,平成4年9月期は1200万円のプログラム等準備金積立てにつき損金算入が認められるべきであったもので,被控訴人の申告に係る損金算入についての控訴人の否認は上記金額を控除した限度で適法であるが,これを超える部分は違法であり,本件更正等の各処分のうち,原判決添付の別紙「税額計算一覧表」記載の「法人税額」又は「税額」欄及び「過少申告加算税額」欄記載の各金額を超える部分は違法であるとして,これを取り消した。そのため,控訴人が控訴したものである。 2 以上のほかの事案の概要は,原判決28頁末行の「全体契約要件」を「全体システム要件」に改め,次のとおり当事者双方の当審における主張を加えるほか,原判決の事実及び理由の「第2 事案の概要」及び「第3 争点」に記載のとおりであるので,これを引用する。 (1) 控訴人の当審における主張ア本件規定の適用要件租税特別措置は,担税力において ,原判決の事実及び理由の「第2 事案の概要」及び「第3 争点」に記載のとおりであるので,これを引用する。 (1) 控訴人の当審における主張ア本件規定の適用要件租税特別措置は,担税力においては同様の状況にあるにもかかわらず,何らかの政策目的の実現のために,特定の要件に該当する場合に税負担を軽減又は加重することを内容とする措置であり,租税法の基本原則である公平の要請に正面から抵触するものである。そして,その政策目的と租税公平主義とはもともと全く異質の価値であり,理論的に両者を比較考量することは不可能であるところ,立法者は自らの政策的判断に基づいて両者のバランスを図りつつ租税特別措置の要件を定立しているのである。それゆえ,租税特別措置の要件規定の解釈に当たっては,文理解釈を基本としつつ,立法者意思を踏まえた厳格な解釈によるべきであり,租税特別措置による政策目的の実現を強調する余り,その要件を拡張解釈することは,立法者が予定した範囲を超えて租税公平主義を阻害することとなり不当である。本件規定等が制定された当時において想定されていたシステムインテグレーション契約は一括契約形態によるものであった。また,本件規定の導入を推進した通商産業省が大蔵省(いずれも当時)に提出した本件規定創設に係る説明資料(乙33)によれば,本件規定の適用対象となる統合情報処理システムサービスとは,「①情報処理システムの構成要素を組合せ,システム設計,プログラム作成,テスト,運用準備及び保守を一括して請け負ったものであること,②納入した情報処理システムの欠陥につき,その引渡後1年以上の間無償で補修する旨の契約であること」とされており,さらに,これらの要件を満たすことが契約書上明らかな統合情報処理システムサービスに係るものに限定されている。本件規定の定立に当たって,立 後1年以上の間無償で補修する旨の契約であること」とされており,さらに,これらの要件を満たすことが契約書上明らかな統合情報処理システムサービスに係るものに限定されている。本件規定の定立に当たって,立法者は,このような統合情報処理システムサービスを前提として,システムインテグレーターの育成を図ろうとしたことは明らかである。したがって,本件規定の適用に当たっては,SI要件,無償補修特約要件,対価要件及び直接契約要件が充足されることが必要であると解すべきである。 イ各要件の解釈についての原判決の誤り(ア) SI要件原判決は,SI業務に係るすべての役務を提供する旨の黙示の合意が認められれば足りるのであって,当初の契約書上それが明示されていることは必要でないとする。しかし,当初の契約締結時において,SI業務のすべての役務の提供を一括して請け負うことを要する以上,税務当局に提示された契約書等の客観的資料によってこれを判断し得ることが必要である。黙示の合意にとどまって契約書等として書面化されていないような場合には,要件の有無を客観的に判断することは不可能であり,税務当局において要件の有無を判断し得ない以上,本件規定の適用は認められないと解すべきである。 (イ) 直接契約要件システムインテグレーションとは,業者がユーザーのためにSI業務を一貫して提供するものであり,本件規定がユーザー保護の観点からも適正なシステムインテグレーターを育成するために創設されたことからすれば,本件規定の「相手方」は役務の提供先であるエンド・ユーザーを示すものと解するのが正しい。 (ウ) 契約が締結された事業年度末に要件を充足していること準備金は,企業会計上も租税理論上も損金の額に算入することができないにもかかわらず,専ら経済政策上の理由から,一定の要件を満たす場合に 。 (ウ) 契約が締結された事業年度末に要件を充足していること準備金は,企業会計上も租税理論上も損金の額に算入することができないにもかかわらず,専ら経済政策上の理由から,一定の要件を満たす場合に限って租税特別措置として損金の額に算入することが認められているのであり,法人が本件の準備金制度の適用を受けようとする場合には,当該契約が締結された事業年度の年度末においてその適用要件を満たしていることが明らかである場合に限り,損金の額に算入することができるものと解すべきである。原判決は,複数年にわたって支払われる対価の総額が5000万円を超えれば対価要件を満たすとしているが,課税要件事実の認定を不明確にし,統合情報処理システムサービスの概念を誤って本件規定の厳格性を無視した判断である。 ウ本件規定の具体的な適用について(ア) 原判決は,上記の各要件の解釈において誤りがある。また,仮に原判決のようにSI業務に係る役務の提供に関しては黙示の合意であってもよいとしても,契約である以上は法的拘束力を伴ったものでなければならない。しかるに,本件で問題となる各契約においては,当事者間に,契約は業務委託書及び受託書の作成をもって成立するものとする基本合意が存在するにもかかわらず,原判決は,これらの書面が作成されていない段階ですべての役務の提供についての契約の成立を認定するという不合理な事実認定を行っている。 (イ) 第一証券システムの第一証券向け顧客情報システムについて顧客情報第1契約のうち560万円は別個の大口投資家開拓プロジェクトの対価であり,同第2契約のうち95万円は別個の中堅企業開拓支店実践プログラムの対価であり,これらを除外すると上記システムに係る契約は対価要件を満たしていない。また,原判決が契約の成立を認めた平成元年3月時点では契約書や上記 うち95万円は別個の中堅企業開拓支店実践プログラムの対価であり,これらを除外すると上記システムに係る契約は対価要件を満たしていない。また,原判決が契約の成立を認めた平成元年3月時点では契約書や上記内容の基本合意に係る業務委託書等は存在せず,平成元年12月に作成された業務受託書でもすべての役務提供についての契約が成立したものとはいえず,SI要件を満たしていない。そして,エンド・ユーザーの第一証券株式会社ではなく株式会社第一システムセンターとの間の契約については直接契約要件を満たしていない。 (ウ) 山九システムの倉庫国内システムについて原判決が契約の成立を認めた平成元年5月には上記内容の基本合意に係る業務委託書等は存在せず,被控訴人が保守責任を負っていた事実も認められず,SI要件を満たしていない。また,当初契約における対価は2970万円にすぎず,対価要件も満たさない。 (エ) 山一證券システムのTISーFFシステムについて契約当初の段階では上記内容の基本合意に係る業務委託書等は存在せず,昭和63年9月に作成された業務委託書でもすべての役務の提供についての合意はされておらず,SI要件を満たしていない。「営業店TISメニュー追加1開発」という名称からも,これが当初段階での契約内容に含まれていないことは明らかである。 また,直接契約要件も満たしていない。 (オ) 東海銀行システムについて原判決が基本契約の締結を認めた昭和61年3月の時点では契約書等の客観的資料はなく,上記内容の基本合意に係る業務委託書等も存在せず,SI要件を満たしていない。 (2) 被控訴人の当審における主張ア本件規定の適用要件について(ア) 本件規定からは,契約当初の段階において,特定の情報システムの開発に当たり,SI業務に係る役務のすべてを提供する旨の合意の存在の ) 被控訴人の当審における主張ア本件規定の適用要件について(ア) 本件規定からは,契約当初の段階において,特定の情報システムの開発に当たり,SI業務に係る役務のすべてを提供する旨の合意の存在のみが要請されているのであって,具体的に一括して契約すべきことや契約書等の客観的資料の存在などは要求されておらず,控訴人の主張は本件規定の文言を逸脱するものである。 控訴人は,税務当局の判断を可能にするために契約書等の客観的資料によって要件の存在が裏付けられなければならないと主張するが,本末転倒の理論である。税務当局には契約書等の確定的,客観的な資料に基づかない判断も要求されているのであり,業務遂行の実態等を踏まえた要件充足性の判断がされなければならない。 (イ) 本件規定の文言からは,契約の相手方をエンド・ユーザーに限定し,また,当該契約締結の事業年度末において要件を充足する必要があるとする控訴人の主張のようには解されない。むしろ,原判決のように,申告時点で当該契約が本件規定の適用対象と認められればよいと解するのが自然であり,サービスの提供に係る収益を得た事業年度ごとに適用を考えるべきである。 イ本件規定の具体的な適用について(ア) 原判決がSI業務に係るすべての役務の提供については黙示の合意で足りるとするとともに,一括契約要件を不要としていることからすれば,そこでいう合意は法的拘束力を有するものを意図していないことが明らかである。したがって,当事者間の基本合意において,業務委託書及び受託書の作成をもって契約が成立するとされているのにこれらの書面が作成されていない場合や,見積書やスケジュール表といった文書しか存在しない場合など,法的拘束力を伴った契約が締結されていない場合であっても,契約当初の段階においてSI業務に係るすべての役務を提供する 成されていない場合や,見積書やスケジュール表といった文書しか存在しない場合など,法的拘束力を伴った契約が締結されていない場合であっても,契約当初の段階においてSI業務に係るすべての役務を提供する旨の合意が認められれば,SI要件は満たされていると解すべきである。 (イ) 第一証券システムの第一証券向け顧客情報システムについて本件顧客情報システムは大口投資家開拓プロジェクト及び中堅企業開拓支店実践プログラムを包含する一体のシステムであるから対価要件は満たしている。SI業務に係るすべての役務を提供する合意も存在する。直接契約要件は不要である。 (ウ) 山九システムの倉庫国内システムについて被控訴人が保守責任を負っていることは無償補修条項の存在から明らかであり,SI業務に係るすべての役務を提供する合意が存在する。また,対価要件は業務の対価の総額で決せられるべきであるから,対価要件も満たしている。 (エ) 山一證券システムのTISーFFシステムについて契約当初の段階でSI業務に係るすべての役務を提供する合意が存在する。直接契約要件は不要である。 (オ) 東海銀行システムについてSI業務に係るすべての役務を提供する合意が存在する。一括契約要件は不要であり,SI要件は満たしている。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,本件各契約はいずれも本件規定の適用対象になるものとは認められず,本件各契約に基づくプログラム等準備金の損金算入を否認するなどして行われた本件各更正等の処分は適法であり(なお,本件各更正等の処分における役員賞与の損金算入の否認,所得金額の過大計上の修正,事業税の損金算入の適法性については当事者間に争いがない。),その取消しを求める被控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は以下のとおりである。 (1) 本件規定適用 過大計上の修正,事業税の損金算入の適法性については当事者間に争いがない。),その取消しを求める被控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は以下のとおりである。 (1) 本件規定適用の要件についてア(ア) 本件規定の解釈,適用要件についての双方の主張,システムインテグレーションの概念及び本件規定に基づくプログラム等準備金の損金算入制度導入の経過等についての当裁判所の判断は,原判決の事実及び理由の「第4 争点に対する判断」の1の冒頭及び1)ア)の記載と同一であるので,これを引用する(ただし,原判決43頁24行目の「全体契約」を「全体システム」に改める。)。 これによれば,システムインテグレーションの本質は,情報処理システムの構築に当たって,システムの設計,プログラムの作成,試験,運用の準備及び保守のすべての役務を提供し,ユーザーに代わってシステム開発における統合機能を果たすことにあるものと認められる。また,本件規定の文言上も,契約に基づきこれらの役務のすべてを提供することが必要とされており,したがって,本件規定の適用を受けるためには,上記の各役務のすべてを提供する旨の契約が締結されることが必要であると解される。そして,この契約は必ずしもひとつの契約である必要はないものの,契約当初の段階で上記各役務のすべてを提供することが契約により取り決められていなければならないものというべきである。 (イ) 被控訴人は,当初の契約とその後締結された個別契約を全体的に見て,上記の役務のすべてを提供する旨の合意がされたものと認められれば足りる旨主張する。しかし,システムインテグレーションが上記の役務のすべてを提供してシステム業者がシステム開発における統合機能を果たすものであることからすれば,システムインテグレーションに係る契約の締結と認められ る。しかし,システムインテグレーションが上記の役務のすべてを提供してシステム業者がシステム開発における統合機能を果たすものであることからすれば,システムインテグレーションに係る契約の締結と認められるためには,当初の契約の段階において上記の各役務のすべてを提供するものであることが当該契約から認められることを要するというべきである。被控訴人主張のように,その後締結された個別契約を合わせて全体的に見れば足りるとすることは,各役務を分けてそれぞれについての個別契約を順次締結した結果,たまたま同一のシステム業者がすべてを請け負ったという場合のように,システム開発における統合機能を果たしたものとはいえない場合であっても本件規定の適用を認めることになってしまい相当でない。 (ウ) また,被控訴人は,上記主張が認められないとしても,契約の当初の段階で,あるシステムについて上記の役務のすべてを提供する旨の合意がされていれば足り,その合意は法的拘束力を有しないものであってもよい旨主張する。しかし,そのような合意があっても,合意に法的拘束力がなければ,システム業者は,まだ個別契約を結んでいない役務についてはその提供を目的とする契約の締結に応じずに,当該システム開発から離脱してその後に予想されるリスクを回避することが許されることとなる。このことは,一括契約でなく個別契約の形態を採用する理由が,システム開発中の様々な事情の変化に応じてその後の契約を見直す余地を残しておくことにより,システム開発の硬直化を防ぐとともに,ユーザーとシステム業者の双方が事情の変化によるリスクを小さくすることにあると考えられることからもうなずけるところである。そうであるとすれば,このような合意が仮に存在したとしても,上記のように個別契約が事実上順次締結されていった場合と比較して,本件規 小さくすることにあると考えられることからもうなずけるところである。そうであるとすれば,このような合意が仮に存在したとしても,上記のように個別契約が事実上順次締結されていった場合と比較して,本件規定の目的である無償補修に伴うリスク軽減の必要性においてはほとんど相違がないこととなる。これは結果として当該システム業者がすべての役務を提供した場合においても同様であって,このようにシステム開発から離脱してリスクを回避する手段が存するような場合にまで,本件規定がプログラム等準備金の損金算入を認めようとするものとは解されない。通商産業省機械情報産業局作成の説明文書(乙26)では,システム業者が抱える無償補修に伴うリスクを軽減するために,無償補修に備えた準備金積立てに係る税制上の特別措置を設ける旨の記載があるが,同時にこの説明文書には,システムインテグレーションとは基本設計から保守に至るまでを一貫して請け負うサービス形態であること,システムインテグレーションサービスはその業務を当初から一括して請け負う点に特徴があり,基本契約は一連の業務の初期において締結される必要があることなどの記載も存在するのであり,これに他の証拠(乙1,2,28,29の1ないし4,31の1・2,33)をも併せて考えると,本件規定は,システムインテグレーション契約がすべての役務を当初から一括して請け負う契約であることを前提にして,引渡し後の無償補修に伴うリスクの軽減を図ろうとするものであることが認められるのであって,上記のように解したからといって本件規定の趣旨に反するものではない。 (エ) 本件規定が,統合情報処理システムサービスを,相手方との間に締結した契約に基づき,一の情報処理システムにつき,その設計,プログラムの作成,試験,運用の準備及び保守のすべてを行う役務をいうと定めてい 本件規定が,統合情報処理システムサービスを,相手方との間に締結した契約に基づき,一の情報処理システムにつき,その設計,プログラムの作成,試験,運用の準備及び保守のすべてを行う役務をいうと定めていることからも,本件規定の適用を受けるためには,システム開発に係るすべての役務を提供するものであることが法的拘束力を有する契約に基づいて認められることを要するものと解されるのであって,法的拘束力を有しない合意は含まれないと解すべきである。本件規定が制定された当時に想定されていたシステムインテグレーション契約が,上記のような個別契約によるものではなく一括契約の形態によるものであったと認められること(乙26,28)からもこのように解するのが相当である。本件規定の解釈に当たっては,立法当時の事情や立法者の意図に必ずしも拘束される必要はないが,文言等の解釈に当たってこれらを参考にすることは当然であり,必要なものというべきである。実際に多く用いられる契約形態が立法の後に変化したからといって,本件規定の文言を離れてこれを解釈することは許されない。 したがって,本件規定の適用が認められるためには,契約の当初において,システム業者と相手方との間で,システムの設計,プログラムの作成,試験,運用の準備及び保守に至るまでのすべての役務を提供することが法的拘束力を有する契約によって取り決められていることを要するものと解されるのである。 イ控訴人の主張する対価要件,直接契約要件及び全体システム要件についての当裁判所の判断は,原判決の上記「第4 争点に対する判断」の1の1)ウ),2)及び3)の各記載と同一であるので,これを引用する(ただし,原判決51頁1行目の「システムインテグレーション契約の」から4行目の「失当であるといわざるを得ない。」までを,「本件規定が前提とする 2)及び3)の各記載と同一であるので,これを引用する(ただし,原判決51頁1行目の「システムインテグレーション契約の」から4行目の「失当であるといわざるを得ない。」までを,「本件規定が前提とするシステムインテグレーション契約の意義にかかわるものでもなく,一貫した役務提供の途中において契約金額を増額する必要が生じることも十分にあり得ることであり,その場合に契約の当初の段階での契約金額で固定すべき必然性は本件規定の趣旨からしても認められないのであって,この点に関する控訴人の主張は理由がない。」に改める。)。 ウそして,被控訴人がシステムサービス業を行う能力がある者として通商産業大臣が認定した法人であることは当事者間に争いがなく,本件規定及び租特法施行令32条の13第7項1号(平成5年政令第87号による改正前のもの)によれば,控訴人の主張する無償補修特約の存在も本件規定の適用のための要件であることが認められる。 (2) 本件各契約についての本件規定の適用の可否についてア第一証券システムの第一証券向け顧客情報システムについて(ア) 証拠(乙3,15の4)によれば,被控訴人と株式会社第一システムセンターとの間では昭和62年4月1日付けで業務委託基本契約が締結されているが,その内容は取引の開始に当たって基本的な事項について合意したものにすぎず,具体的なシステムの構築を前提としてその内容や委託業務の範囲等を定めたものではなく,委託業務の内容はその都度別に業務委託書によって定めること,業務委託契約は業務委託書とこれに対する受託書の交換をもって成立することなどが取り決められていることが認められる。したがって,この業務委託基本契約の存在をもって,上記システムに係るすべての役務の提供を内容とする契約ということはできない。 (イ) そして,上記システム などが取り決められていることが認められる。したがって,この業務委託基本契約の存在をもって,上記システムに係るすべての役務の提供を内容とする契約ということはできない。 (イ) そして,上記システムに係る契約としては,証拠(甲2ないし6,乙15の1・2)によれば,平成元年11月24日付けの見積書(甲5)に基づく業務委託書(乙15の1)及び同年12月8日付けの業務受託書(甲2)によって基本設計からテストランまでの作業についての請負契約(顧客情報システム第1契約)が,平成2年6月25日付けの見積書(甲6)に基づく業務委託書(乙15の2)及び同日付けの業務受託書(甲4)によってテストランから保守までの作業についての請負契約(顧客情報システム第2契約)が,それぞれ個別に締結されたことが認められるのであって,契約の当初の段階ですべての役務の提供が取り決められたものということはできない。平成元年12月作成の進捗状況報告書(甲3)にシステムの移行,本番までの作業スケジュールが記載されているが,これによって全体の作業についての一貫した契約の存在や成立を認め得るものではなく,上記判断を妨げるものではない。 (ウ) また,証拠(甲2ないし6,乙15の1・2・4,乙16の1・2)によれば,顧客情報システム第1契約の契約金額4535万円のうちの560万円は本件システムとは別の大口投資家開拓プロジェクトの作業に対する対価であり,顧客情報システム第2契約の契約金額815万円のうち95万円も同様に別の中堅企業開拓支店実践プログラムの作業の対価であることが認められるのであり,これらを控除すると顧客情報システムに係る金額は4695万円となって,対価要件にも欠けることとなる。 (エ) したがって,第一証券向け顧客情報システムは本件規定の適用対象になるものとは認められない。 れらを控除すると顧客情報システムに係る金額は4695万円となって,対価要件にも欠けることとなる。 (エ) したがって,第一証券向け顧客情報システムは本件規定の適用対象になるものとは認められない。 イ山九システムの倉庫国内システムについて(ア) 証拠(乙17の4)によれば,被控訴人と山九株式会社との間では昭和61年1月10日付けで業務委託基本契約が締結されているが,その内容は取引の開始に当たって基本的な事項について合意したものにすぎず,具体的なシステムの構築を前提としてその内容や委託業務の範囲等を定めたものではないことが認められる。したがって,この業務委託基本契約の存在をもって上記システムに係るすべての役務の提供を内容とする契約ということはできない。 (イ) そして,証拠(甲10の1・2・4ないし6,乙10,17の1・2・4)によれば,平成元年5月1日付けで取り交わされた上記システムの開発業務の委託に関する覚書(乙10)には,委託業務の範囲は業務委託書及び業務受託書による個別契約に明記するものとされているが,業務委託書は,基本設計から単体テストまでの作業についての見積書に基づいて平成2年1月10日付けで作成されていること,この見積書に添付された全体スケジュール表には作業予定として本番スタートまでの記載があるものの,見積書の本文では作業内容として上記のとおり単体テストまでの記載しかなく,検収テストへの立合についても別途相談によるものとされていること,したがって,被控訴人に業務委託されたのは単体テストまでの作業であり,その後の保守作業は委託業務の範囲に含まれていなかったこと,そのためこれについては山九株式会社の情報システム部が行ったことがそれぞれ認められる。 被控訴人は,保守作業については業務委託覚書に定める瑕疵の修補義務として被控訴 範囲に含まれていなかったこと,そのためこれについては山九株式会社の情報システム部が行ったことがそれぞれ認められる。 被控訴人は,保守作業については業務委託覚書に定める瑕疵の修補義務として被控訴人が無償で負担しているとするが(甲10の7),瑕疵修補義務に関する合意によれば,被控訴人の責めに起因する瑕疵があった場合にのみ被控訴人が無償で修補する義務を負うというものであって(乙17の4),保守作業とは異なるものであり,このような瑕疵修補義務を負うからといって被控訴人が保守作業を負担しているものと認めることはできない。このことは,その後,山九株式会社が被控訴人に対してデータ交換及び再構築の業務を委託している事実(甲10の3,乙17の3・4)によって左右されるものではない。 (ウ) したがって,被控訴人が上記システムの開発に係るすべての役務について提供する旨の契約があったとはいえず,また,実際にすべての役務を被控訴人が提供したものとも認められないのであって,これについても本件規定の適用対象とは認められない。 ウ山一證券システムのTISーFFシステムについて(ア) 証拠(乙4の1・2)によれば,被控訴人と山一證券株式会社との間では昭和54年9月1日付けで業務委託基本契約が締結され,昭和58年7月1日付けで同契約における山一證券株式会社の権利義務を株式会社山一コンピュータ・センター(当時)が承継する旨の合意が成立していること,同契約の内容は取引の開始に当たって基本的な事項について合意したものにすぎず,具体的なシステムの構築を前提としてその内容や委託業務の範囲等を定めたものではなく,委託業務の内容はその都度別に業務委託書によって定め,業務委託契約は業務委託書とこれに対する受託書の交換をもって成立することなどが取り決められていることが認められる。 の範囲等を定めたものではなく,委託業務の内容はその都度別に業務委託書によって定め,業務委託契約は業務委託書とこれに対する受託書の交換をもって成立することなどが取り決められていることが認められる。したがって,この業務委託基本契約やこの契約に基づく権利義務の承継の合意をもって,上記システムに係るすべての役務の提供を内容とする契約ということはできない。 (イ) そして,証拠(甲17の6の1ないし3,17の7の1ないし3,17の9の1ないし3,17の10の1ないし3,17の15,乙23の2・3・7)によれば,上記TISーFFシステムに係る契約としては,昭和63年9月27日付け業務委託書(甲17の6の2)及び同年10月1日付け業務受託書(甲17の6の1)によって設計からプログラム開発の一部作業についての請負契約が,平成元年4月3日付け業務委託書(甲17の7の2)及び業務受託書(甲17の7の1)によってプログラム設計から総合テストまでの作業についての請負契約が締結されたこと,そして,同年11月10日付け業務委託書(甲17の9の2)及び業務受託書(甲17の9の1)によって営業店TISメニュー追加1開発としてメニューシステムの追加開発の作業についての請負契約が締結され,さらに,同日付けの業務委託書(甲17の10の2)及び業務受託書(甲17の10の1)により営業店TISー1運用保守支援作業について,平成2年3月30日付け業務委託書(乙23の7)によってTISーFF運用保守支援作業についての各請負契約が締結されたこと,いずれについても業務委託の主体は株式会社山一コンピュータ・センターであったが,同社は山一證券株式会社から受託した業務を処理する過程で,作業に必要なシステムエンジニアを被控訴人から派遣してもらっていたもので,当初の契約で全体の業務の範囲を取 コンピュータ・センターであったが,同社は山一證券株式会社から受託した業務を処理する過程で,作業に必要なシステムエンジニアを被控訴人から派遣してもらっていたもので,当初の契約で全体の業務の範囲を取り決めることはなく,業務委託書ごとに個別に委託する業務の範囲を決めて,問題がなければ次の作業について委託するという方法を取っていたものであることが認められる。したがって,契約の当初の段階ですべての役務の提供が取り決められたものということはできず,また,平成元年4月3日付けの業務委託契約では総合テストまでの作業が業務委託の範囲とされるにとどまり,保守作業については同年11月10日付け及び平成2年3月30日付けで運用保守支援作業として請負契約が結ばれていることからすると,被控訴人が主体となってこれを請け負ったものではないことが窺われるのであって,被控訴人が上記システムの開発に係るすべての役務について提供する旨の契約があったともいえない。 (ウ) したがって,TISーFFシステムの営業店TISメニュー追加1開発が本件規定の適用対象になるものとは認められない。 また,TISーFFシステムに係るその余の業務についても,当裁判所はいずれも本件規定の適用対象にならないものと判断するが,その理由は原判決の74頁4行目から75頁3行目までの説示と同一であるのでこれを引用する(ただし,原判決75頁1行目の「問題があることは」から2行目の「この点からしても」までを「問題があることからしても」に改める。)。 エ東海銀行システムについて(ア) 証拠(甲12の4,乙5)によれば,被控訴人と株式会社東海銀行(当時)との間では昭和61年3月31日付けで業務委託基本契約が締結されているが,同契約の内容は取引の開始に当たって基本的な事項について合意したものにすぎず,具体的なシ ,被控訴人と株式会社東海銀行(当時)との間では昭和61年3月31日付けで業務委託基本契約が締結されているが,同契約の内容は取引の開始に当たって基本的な事項について合意したものにすぎず,具体的なシステムの構築を前提としてその内容や委託業務の範囲等を定めたものではなく,委託業務の内容はその都度別に業務委託書によって定め,業務委託契約は業務委託書とこれに対する受託書の交換をもって成立することなどが取り決められていることが認められる。したがって,この業務委託基本契約の存在をもって,上記システムに係るすべての役務の提供を内容とする契約ということはできない。 (イ) そして,証拠(甲12の1ないし5,21,乙24の1ないし30,原審における証人a)によれば,被控訴人は,株式会社東海銀行の第3次オンラインシステム構築の一環として,情報系システムのうちのサブシステムであるデータ蓄積システムと営業店情報システムの開発作業の一部について,それぞれの作業ごと又は一定の期間ごとに個別契約を順次締結する形で同銀行から業務委託を受けてこれに従事したこと,個別契約の内容は,データ蓄積システムに関するものとしては,そのSE作業(要求定義から基本設計段階の作業を意味する。),主要取引先預金・速報DB更新システム,主要取引先日報(照会),主要取引先日報(SE作業),融資・国際/DB更新・移行,融資・国際/ログ・リーダ,融資・国際/移行・ファイル検証・再編成・再構成・一括移管などであり,営業店情報システムに関するものとしては,そのSE作業のほか,CCR(不動産担保情報),営業店決算報告システム,SIS法人マーケティングなどであるが,いずれもデータ蓄積システム及び営業店情報システムの構築作業の一部をなすものであり,被控訴人ばかりでなく同銀行のシステム開発部や子会社の東海バ 算報告システム,SIS法人マーケティングなどであるが,いずれもデータ蓄積システム及び営業店情報システムの構築作業の一部をなすものであり,被控訴人ばかりでなく同銀行のシステム開発部や子会社の東海バンキングソフトウェア株式会社も加わって作業が進められたこと,上記の個別契約を合わせてもデータ蓄積システム及び営業店情報システムの開発に必要なすべての役務を網羅するものではなく,また,その各個別契約からは被控訴人が開発に必要なすべての役務を提供する旨の契約の存在を窺うこともできないことがそれぞれ認められる。これによれば,被控訴人がデータ蓄積システム及び営業店情報システムの開発作業の一部を担当したことが認められるだけで,本件全証拠によっても,本件の各事業年度において,それぞれのシステム開発作業の基本設計から保守までのすべての作業を被控訴人が請け負う旨の契約の存在は認められず,実際にすべての作業を担当したものとも認められない。 また,証拠(乙24の30)及び弁論の全趣旨によれば,上記の各システムについての運用テスト等の作業については,被控訴人と東海銀行のシステム開発部や東海バンキングソフトウェア株式会社が共同して行ったものであることが認められるほか,保守作業については被控訴人における当初の構想においても受託業務の範囲には含まれていないことが窺われる(甲12の3)のであって,結果としても被控訴人が上記各システムの開発に係るすべての役務について提供したものということもできない。 (ウ) したがって,東海銀行システムについても本件規定の適用対象になるものとは認められない。 オその余の本件各契約について上記以外の本件各契約についても,当裁判所は本件規定の適用対象になるものとは認められないと判断するが,その理由は,原判決の事実及び理由の「第4 争点に められない。 オその余の本件各契約について上記以外の本件各契約についても,当裁判所は本件規定の適用対象になるものとは認められないと判断するが,その理由は,原判決の事実及び理由の「第4 争点に対する判断」の2の1)イ)及びウ),2)イ),3),4)ア)及びウ),5),7)ないし10)の記載と同一であるので,これを引用する(ただし,原判決61頁15行目の「解して」を「介して」に,65頁9行目の「一貫として」を「一環として」に,82頁24行目から25行目の「甲11の3」を「乙20の3」に,83頁11行目の「合意」を「契約」にそれぞれ改める。)。 2 以上によれば,本件各契約はいずれも本件規定の適用対象とは認められず,これに基づくプログラム等準備金の損金算入を否認するなどして行われた本件各更正等の処分は適法であり,その取消しを求める被控訴人の請求はいずれも理由がない。したがって,これを一部認容した原判決は失当であるので,その控訴人敗訴部分を取り消して,被控訴人の請求をいずれも棄却することとする。 よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第23民事部裁判長裁判官原田和德裁判官西島幸夫裁判官北澤章功
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