平成25(ワ)1377 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年4月17日 札幌地方裁判所
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判決文本文10,751 文字)

主文 1 被告らは,原告に対し,各自77万円及びこれに対する被告医療法人Aについては平成25年7月31日,被告Bについては同年8月7日,被告Cについては同月23日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを100分し,その93を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。 4 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求被告らは,原告に対し,各自1100万円及びこれに対する被告医療法人A(以下「被告法人」という。)については平成25年7月31日,被告Bについては同年8月7日,被告Cについては同月23日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告法人の従業員である原告が,被告法人の実質的な最高責任者である被告B及び看護部次長である被告Cから,セクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」という。)及びパワー・ハラスメント(以下「パワハラ」という。)を受けたと主張して,被告法人に対しては不法行為(使用者責任)及び債務不履行に基づき,被告B及び被告Cに対してはいずれも不法行為に基づき,各自,慰謝料1000万円及び弁護士費用100万円並びにこれらに対する訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 争いのない事実等(1) 被告法人は,D病院のほか,老人保健施設「E」を経営している。 被告B(昭和22年生)は,被告法人の理事の1人で,代表権はないが,院主として被告法人の業務執行についての最終的な決裁権を有しており D病院のほか,老人保健施設「E」を経営している。 被告B(昭和22年生)は,被告法人の理事の1人で,代表権はないが,院主として被告法人の業務執行についての最終的な決裁権を有しており,その意味で被告法人の実質的な最高責任者である。被告Cは,被告法人の看護部次長である。(乙6,乙7,弁論の全趣旨)(2) 原告(昭和47年生)は,被告法人との間で,平成21年8月1日,6か月の有期雇用契約を締結して,介護員(準職員)として採用され,平成22年2月1日,1年間の有期雇用契約を締結し,平成23年2月1日,さらに1年間の有期雇用契約を締結した。(甲16,弁論の全趣旨)(3) 原告は,上記(2)の間の平成23年1月1日,介護員リーダー(病棟ごとに1名任命されている。)となり,同年2月1日に1年間の有期雇用契約を締結後,介護指導員(プリセプター)となって,患者のレクリエーションも担当することとなり,同年4月,正職員となった。 ところが,原告は,平成24年8月8日頃,同月1日付けで,病院の看護部事務に異動となり,同年10月1日,老人保健施設の看護部事務に異動となった。原告は,同年12月10日,被告Bに対し,妊娠を報告し,同月18日から休職した。 本件でセクハラ,パワハラとして問題とされているのは,(3)の間の出来事である。(甲16,原告,弁論の全趣旨)(4) 原告は,平成25年7月18日,本件訴えを提起した。なお,原告は,平成26年12月から,職場に復帰している。(弁論の全趣旨) 2 争点(1) 被告B及び被告Cの行為の違法性(2) 仮に被告B及び被告Cの行為が違法であるとした場合の慰謝料の額 3 当事者の主張(1) 争点(1)(被告B及び被告Cの行為の違法性)について【原告 B及び被告Cの行為の違法性(2) 仮に被告B及び被告Cの行為が違法であるとした場合の慰謝料の額 3 当事者の主張(1) 争点(1)(被告B及び被告Cの行為の違法性)について【原告の主張】 ア本件の事実関係及び違法性に関する主張は,別紙「主張対照表」の「原告の主張」欄及び「原告の認否・反論」欄記載のとおりである。 イ被告Bは,被告法人の組織をフルに使って原告に対する個人的な性的関心を満足しようとした。被告Bによる被告法人の私物化が,本件のセクハラ及びパワハラの根幹にある。 すなわち,被告Bは,原告に個人的関心(性的関心)を持ち,原告を自分の直接の管轄下に置こうとして,原告を介護職員から正職員に昇進させ,直接の管轄下に置いて被告B等のいるピロティと呼ばれる部屋で仕事をさせるようにした。その上で,被告Bないし被告Cは,多数回にわたる食事会を開催し,その席で,原告に対し,性的内容の言葉を言ったり,買い物を目的とする外出に無理に付き合わせて高額な衣類を買い与えたりして,原告を意のままにしようとした。しかし,原告が被告Bの意のままにならないことを知るや,一転して,原告に対し,様々ないじめを行い,介護員リーダーから外して,サクション瓶(吸入した痰が入っているガラス又はプラスチックの瓶。甲17の添付写真1),ガーグルベース,コップ(甲17の添付写真2。奥がガーグルベース)の洗浄,車椅子のタイヤの空気入れ,汚物室の見張り等,介護員としての職務とは全く逸脱した仕事を強要し,挙げ句には,妊娠した原告に対し,中絶を示唆したり,想像妊娠等の発言をしたり,老人保健施設の特浴の入浴介助を命じたりした。 ウ被告Bは被告法人の実質的な最高責任者として,被告Cは原告の上司として,原告が良好な職場環境の下で就業で 示唆したり,想像妊娠等の発言をしたり,老人保健施設の特浴の入浴介助を命じたりした。 ウ被告Bは被告法人の実質的な最高責任者として,被告Cは原告の上司として,原告が良好な職場環境の下で就業できるよう配慮すべき注意義務を負っていた。ところが,被告Bは,その地位を利用して,原告に対し,平成23年2月から9月にかけて30回近くにわたって,食事会に執拗に誘って,私的な用事や食事を無理に付き合わせるなどのセクハラ及びパワハラを行った。また,被告Cは,その地位を利用して,被告Bが原告に私的な用事や食事を付き合わせる際に常に同行し,被告Bの指示にはどんなと きにも従うよう指示するなどして,被告Bの指示の下,原告に対し,セクハラ及びパワハラを行った。被告B及び被告Cは,原告が被告Bからの電話に出ないようになった平成23年10月頃から,原告に対し,いじめをするようになったが,平成24年8月中旬から9月19日頃までの間,上記のサクション瓶の洗浄等,これまでは各病棟で行っていて,特に一人に集中させる必要がないにもかかわらず,原告に行うように命じて,原告を精神的にも肉体的にも過酷な労働に従事させた。さらに,被告Cは,平成24年12月18日,原告が切迫流産の報告をしたところ,3週間の自宅安静後,重労働である特浴の入浴介助を命じて,休職せざるを得なくさせた。 被告法人は,原告の使用者として原告が良好な職場環境の下で就業できるよう配慮すべき注意義務を負っていた。ところが,被告B及び被告Cの原告に対するセクハラ及びパワハラを漫然と放置した。 【被告らの主張】ア本件の事実関係に関する主張は,別紙「主張対照表」の「被告らの認否・反論」欄及び「原告の認否・反論に対する被告らの反論等」欄記載のとおりである。違法性の主張は,争う。 【被告らの主張】ア本件の事実関係に関する主張は,別紙「主張対照表」の「被告らの認否・反論」欄及び「原告の認否・反論に対する被告らの反論等」欄記載のとおりである。違法性の主張は,争う。 イ原告は,サクション瓶洗浄や特浴の入浴介助等の業務の指示が原告に対する嫌がらせの意図に基づくものであるなどと主張するが,これは,原告の業務遂行能力及び業務態度に大きな問題があった(原告も準職員降格により介護職に就くことをよしとしなかった)ことから,原告に担当させる他の適当な業務がない中で,上記の指示をせざるを得なかったことが大きな理由である。被告法人では,大規模改修後の業務改善を見据え,上記業務の現状把握等の必要性もあった。特浴介助への専従は,肉体的負担が重いものでもないし,被告法人は,特浴介助を強制してもいない。原告は,上記業務の指示は原告が被告Bの食事会等に参加しなくなったことに対す る嫌がらせであると主張するが,当時,大規模改修工事のため,上記食事会自体がなくなっていた。被告B及び被告Cは,原告の妊娠という事実に十分な配慮をしていたし,妊娠の報告を受けた際の発言は,原告への心配の情から出たものにほかならない。 食事会等への出席も強制ではなかったし,食事会等の回数・頻度・態様は社会的に相当である。被告Bは,原告を含む職員に対し,果物その他贈答品の残り物を与えることがあり,被告Bがこの程度のプレゼント等を行った職員は,原告に限られていたわけではない。特別な感謝の意を示すべきときに,同性異性を問わず,他の職員により高価なプレゼントを贈ることもあった。これらは被告Bの職員への気遣いであり,もとより性的興味に基づく行動ではなく,原告に対するプレゼントもその範疇を超えるものではない。 なお,原告が主張する被告Bの ントを贈ることもあった。これらは被告Bの職員への気遣いであり,もとより性的興味に基づく行動ではなく,原告に対するプレゼントもその範疇を超えるものではない。 なお,原告が主張する被告Bのセクハラの証拠は,原告が記していたとする日記帳(甲6)及びノート(甲7,甲8)と,それに沿う原告自身の供述であるが,これらは,空白の日が多く,具体性,詳細性にも欠け,記述の正確性に疑いがあり,内容も不自然であって,後日になって記載された可能性がある。これらは,原告が不利益事実を承認している限度で証拠価値はあるが,それ以外にその記載どおりの事実関係を認定することなど到底できないものである。 (2) 争点(2)(仮に被告B及び被告Cの行為が違法であるとした場合の慰謝料の額)について【原告の主張】本件のパワハラは,平成24年8月から同年12月に原告が休職するまでの間継続し,しかも原告が休職しなければ継続して行われていたであろうことは明白であり,母子の生命が危険にさらされたという事情を考慮する必要がある。また,本件のセクハラは,身体接触を伴うものではなく,その期間 も長期にわたるものではないが,被告B及び被告Cの言動は,短期間に執拗に行われ,かつ,その後パワハラに一転したとの事情がある。これまでの裁判例における認容額(文献によれば最高額でも300万円)は,低額すぎる。 被告法人内の異常ともいうべき被告B及び被告Cの言動をやめさせ,原告ら職員が安心・安全にその労働を行う環境を整えさせるため,請求額を認容すべきである。 【被告らの主張】争う。 第3 争点に対する判断 1 争点(1) (被告B及び被告Cの行為の違法性)について(1) 前記争いのない事実等,証拠(文中に掲記するもののほか,甲16,甲2 らの主張】争う。 第3 争点に対する判断 1 争点(1) (被告B及び被告Cの行為の違法性)について(1) 前記争いのない事実等,証拠(文中に掲記するもののほか,甲16,甲23,乙6,乙7,原告,被告B,被告C)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告は,平成23年1月以後,介護指導員(プリセプター)となり,患者のレクリエーションも担当することとなって,これに伴い正職員となり,被告B等のいるピロティと呼ばれる部屋で仕事をするようになったが,それまで被告Bとの接点はなかった。 同年2月2日,原告の歓迎会が開かれた。歓迎会には,原告,被告B,被告C(当時師長),Fマネージャー(女性),外数名が参加した。同月16日,原告は,被告B,被告C,Fマネージャーと食事をした。席上,原告は,被告Bから,彼氏はいるのかと聞かれた。また,被告Cから,被告Bからの誘いは,できる限り出席するよう言われた。同月26日(土曜日),原告は,被告Bから電話を受け,原告の自宅の近くで果物をもらった。 同年4月10日(日曜日),原告は,前日に被告Cから電話を受け,被告B,被告Cと東急デパートに行き,被告Bから,バーバリーのコート等 を買ってもらった(甲9の写真1,2,16)。 同年5月13日,原告は,被告B,被告C,Fマネージャーと寿司屋に行った。同月27日,原告は,被告Bから携帯電話に電話を受け,被告B,被告C,企画調査運営推進部の女性と,回転寿司に行った。 同年6月3日,原告は,被告B,被告Cと食事に行った。同月5日(日曜日),原告は,被告C及び被告Bから電話を受け,被告B,被告C,被告Cの息子と,小樽に行き,食事をするなどした(乙6の別紙2の写真2~10,甲9の写 は,被告B,被告Cと食事に行った。同月5日(日曜日),原告は,被告C及び被告Bから電話を受け,被告B,被告C,被告Cの息子と,小樽に行き,食事をするなどした(乙6の別紙2の写真2~10,甲9の写真6,7)。同月9日,22日,24日,原告は,被告B,被告Cらと食事に行った。同月28日,原告は,被告Cから電話を受け,焼肉店に行った。 同年7月7日,原告は,午後5時に退社し,病院に行ったが,その後,被告Cから電話を受け,被告B,被告Cと居酒屋で食事をした。 同月10日(日曜日),原告は,被告Cから電話を受け,被告B,被告Cと,a町のマオイの丘公園やジンギスカン屋に行った。被告Bは,原告の両親に対し,ジンギスカンを贈った。同月12日,13日,21日,原告は,被告B,被告Cと食事に行った。 同年8月18日,原告は,被告Bから,被告Bのフライパンをもらった(甲9の写真13)。同月20日,原告は,新千歳空港から帰省する前の早朝,被告法人の従業員の運転で,被告B,被告Cと,ゴルフ場に行き,朝食をとった。同月31日,原告は,被告B,被告Cと食事に行った。この頃,被告Bは,原告に対し,かつて被告Bの自宅の隣に「トルコ風呂」があり,自宅の庭にコンドームが落ちていた,という話をしたり,また,会話の中で,ストッキングの色の話がされたりした。 同年9月1日,2日,原告は,被告Bないし被告Cらと食事に行った。 同月3日(土曜日),原告は,被告Bから電話を受け,被告Bと2人で食事に行った。同月4日(日曜日),原告は,被告Bから電話を受け,被告 B,被告C,業者の男性と北広島市の三井アウトレットパークに行き,被告Bから,バーバリーのスカート,Tシャツ,包丁研ぎを買ってもらうなどした(甲9の写真3~5,12)。同月15日,原告 告 B,被告C,業者の男性と北広島市の三井アウトレットパークに行き,被告Bから,バーバリーのスカート,Tシャツ,包丁研ぎを買ってもらうなどした(甲9の写真3~5,12)。同月15日,原告は,被告B,被告C,外数名と居酒屋で食事をした。同月18日(日曜日),原告は,被告Bから電話を受け,被告B,被告Cと東急デパートに行き,被告Bから,ブーツ等を買ってもらった(甲9の写真8~10)。同月23日(祝日),原告は,被告Bから携帯電話に電話を受け,被告B,被告C,業者の男性と居酒屋で食事をし,同月27日にも,被告B及び被告Cと食事に行った。 しかし,原告は,この頃,被告Bからの電話や食事に負担を感じ,携帯電話が圏外になる岩盤浴に行くことがあった。 同年10月,原告は,被告Bからの電話に出ないでいたところ,同月17日,被告Bから,携帯電話を見せるように言われ,「自分の葬式に出ないのだな」といったことを言われた。この頃から,被告Bからの食事等の誘いはなくなった。なお,原告が被告Bと2人になったのは,3回であった(原告の速記録39頁)。 (以上アにつき,甲6)イ平成23年10月1日,被告Cは,看護部部長代理となった。原告は,新たに入社した介護員の入職日(入社日)を知っておく必要があったが,被告Cが部長代理となった後,入職日を教えてもらうことがなくなったと感じるようになった。原告は,被告Bに相談したこともあり,また,被告Cに相談に行こうとすると,アポを取ってから来るよう言われるなどした。 また,同月,原告は,被告Bから,卓上カレンダー(乙6の別紙9)を作るよう指示され,業者に見積りを依頼するなどしたが,同年11月,この業務は,他の職員に引き継がれた。同月30日,原告は,レクリエーションのクリスマスツリー等の飾り 卓上カレンダー(乙6の別紙9)を作るよう指示され,業者に見積りを依頼するなどしたが,同年11月,この業務は,他の職員に引き継がれた。同月30日,原告は,レクリエーションのクリスマスツリー等の飾り付けの準備をしたが,会議室のテーブル(乙6の別紙10)の上に段ボール等が置かれていたことにつき,被告B から注意された。翌日(同年12月1日),原告は,被告Cから,残業時間は20時間までと伝えられた。同月15日,原告は,研修生の新人介護業務記録(乙7の別紙6①~⑧参照)に書いたコメントにつき,被告Cから注意された。原告は,被告Cが自分の行動を決めつけており,今後何も相談できないと感じるようになった。 平成24年1月6日,原告は,研修生の実習に関し,被告Cから対応の遅れを注意された。同年2月9日,原告は,研修生の病気につき,被告Cに報告したが,これに対し,被告Cが真摯に対応した事実は認められない。 原告は,明らかに自分に対しての嫌がらせだと感じるようになった。同年5月頃から,レクリエーションの業務は,Fマネージャー,原告,企画調査運営推進部の職員が担当することとなった。 (以上イにつき,甲7)ウ平成24年8月8日頃,原告は,同月1日付けで,病院の看護部事務に異動となる旨の辞令を受けた。そして,同月の盆の頃,原告は,被告Cから,業務の変更を命じられた。原告は,午前9時から午前11時まで病院病棟のサクション瓶,ガーグルベース,コップ等の洗浄,午前11時から午前11時半まで汚物室の衣類の下ろし方のチェック,午前11時半から午後零時半まで休憩,午後零時30分から午後5時までサクション瓶洗い,午後5時から午後6時まで各病棟の車椅子の空気入れを行い,日報を記載して退社していたが,老人保健施設の一般入浴介助,見守りを命 ら午後零時半まで休憩,午後零時30分から午後5時までサクション瓶洗い,午後5時から午後6時まで各病棟の車椅子の空気入れを行い,日報を記載して退社していたが,老人保健施設の一般入浴介助,見守りを命じられることもあった。こうした労働は,それまで1人の職員に集中して命じられることはなかった(甲17,証人G(速記録22頁))。 同年10月1日,原告は,老人保健施設の看護部事務に異動となった。 同月,原告は,妊娠に気付き,同年12月10日,原告は,被告Bに対し,妊娠を報告した。被告B及び院主室に呼ばれた被告Cから,祝福の言葉はなく,かえって,被告Cは,原告に対し,想像妊娠ではないのかと発言し, 被告Bは,原告から,胎児の父親にも両親にも報告していないことを聞き取った上で,我が国では中絶も法的に認められていることに言及した。同月13日,原告は,被告Bから,老人保健施設の特浴の入浴介助を1人で行うことを命じられた。同月18日,原告は,被告Cに対し,今後3週間の休養が必要である旨が記載された妊娠15週の診断書(甲11)を提出し,その後休職した。 (以上ウにつき,甲4,甲5の1~甲5の22,甲8)エなお,証拠の信用性につき補足すると,証拠(甲6~甲8,甲16,原告)及び弁論の全趣旨(原告の準備書面6の21頁第5)によれば,甲6の原告の日記,甲7及び甲8の原告のノートは,格別不自然なところは認め難く,これらに記載された出来事が客観的な観点から記載されているかどうかはさておき,当該日付の日に当該出来事が存在したという限度での信用性は認められるというべきである。 (2) 以上(1)で認定した事実から,次のとおり認められる。すなわち,①原告は,職場の実質的な最高責任者である被告B及び上司である被告Cと,休日も の信用性は認められるというべきである。 (2) 以上(1)で認定した事実から,次のとおり認められる。すなわち,①原告は,職場の実質的な最高責任者である被告B及び上司である被告Cと,休日も含めて頻繁に食事等をし,比較的高価な服等まで贈られていたが,こうした付き合いは主体的なものではなく,被告B及び被告Cの誘いを断りにくかったことからしていたものであった。②その後,上記①のような付き合いがなくなったとの同じ時期に,原告は,被告B及び被告Cの業務に関する注意等を嫌がらせと感じるようになったが,部下である原告がそのように感じるようになったのは無理からぬものであった。③さらにその後,原告は,病院の看護部事務に異動となり,サクション瓶の洗浄等の労働を命じられたが,こうした労働は,それまで1人に集中して命じられることはなく,嫌がらせと受け止められてもやむを得ないものであった。そして,④原告が,妊娠を報告した際,祝福の言葉もなく,かえって,被告B及び被告Cが想像妊娠だとか中絶を示唆するような言動をしたことは,著しく不適切であり,その後, 被告Bが肉体労働である特浴の入浴介助を原告1人で行うことを命じたのも,配慮に欠けるものであった。 こうしたことを総合すると,被告B及び被告Cの原告に対する言動のうち,サクション瓶の洗浄等の労働を命じた平成24年8月の盆の頃以降のもの(上記(1)ウ参照)は,原告の人格的利益を侵害する違法な嫌がらせであったというべきである。そして,被告法人には,原告の主張する職場環境配慮義務違反の不履行があったというべきである。 (3) 以上に関し,被告らが反論しているので,以下補足する。 上記(2)③に関し,被告らは,原告の業務遂行能力及び業務態度に大きな問題があったことから,原 ったというべきである。 (3) 以上に関し,被告らが反論しているので,以下補足する。 上記(2)③に関し,被告らは,原告の業務遂行能力及び業務態度に大きな問題があったことから,原告に担当させる他の適当な業務がなかった,大規模改修後を見据え,業務の現状把握等の必要性もあったなどと主張し,被告B及び被告Cは同旨を供述する。しかし,原告の業務遂行能力及び業務態度に大きな問題があったことを認めるに足りる具体的な勤務評価等の客観的な証拠は提出されていないし,原告に対して業務の現状把握等の必要性が伝えられたことを認めるに足りる証拠もない。被告B及び被告Cの供述に基づいて被告らの主張する事実を認めることはできない。 また,上記(2)④に関し,被告らは,原告の妊娠という事実に十分な配慮をしていたし,妊娠の報告を受けた際の被告B及び被告Cの発言は,原告への心配の情から出たものであると主張する。しかし,仮にそうした心配の情があったとしても,妊娠の報告をした部下に対して職場の上司が想像妊娠だとか中絶を示唆するような言動をすることは,そうした言動をすることがやむを得ないような事情がない限り,著しく不適切である。原告が胎児の父親にも両親にも妊娠を報告していないことは,到底,上記事情に当たらない。 さらに,妊娠をした原告に肉体労働である特浴の入浴介助以外の業務ができなかったと認めるに足りる証拠はない。 なお,上記(2)①,②に関し,被告らは,食事会やプレゼントは被告Bの 職員への気遣いである旨主張する。確かに,被告Bの意図や,原告の負担感,困惑の意思の表明が明らかであったとはいい難いこと等に照らせば,平成23年8月の盆の頃までの被告B及び被告Cの行為がそれだけで違法とまでいえるかは悩ましい。しかし,上司から の意図や,原告の負担感,困惑の意思の表明が明らかであったとはいい難いこと等に照らせば,平成23年8月の盆の頃までの被告B及び被告Cの行為がそれだけで違法とまでいえるかは悩ましい。しかし,上司からのそうした行為がなくなることと裏腹に,業務に関する上司からの注意等を単なる注意等ではなく嫌がらせと感じることは,部下の立場である原告からすれば無理からぬものである。したがって,平成23年8月の盆の頃までの被告B及び被告Cの行為は,それだけで違法とまではいい難いが,その後の行為の違法性を基礎付ける事実として評価されるというべきである。 2 争点(2)(仮に被告B及び被告Cの行為が違法であるとした場合の慰謝料の額)について原告は,被告B及び被告Cの言動をやめさせ,原告ら職員が安心・安全にその労働を行う環境を整えさせるため,請求額(1000万円)を認容すべきであると主張する。そこで検討すると,一般予防を直接の目的とする賠償は認められないが,被告B及び被告Cの原告に対する言動によって,原告が,その時々だけでなく,一定期間にわたり,業務への意欲や自信を失い,人格的利益を侵害され,精神的損害を被ったことは明らかであって,これを回復するためには,被告B及び被告Cの行為が違法であると判断された上で,相応の慰謝料が認められなければならない。 そして,上記慰謝料の額は,以上認定,説示したところ,特に,問題とされている被告B及び被告Cの言動の違法性の程度,期間,これによる原告の苦痛の大きさ等のほか,本件に表れた一切の事情に照らせば,70万円が相当と認められる。 弁護士費用は,7万円が相当と認められる。 3 結論よって,原告の請求は,被告B及び被告Cに対しては,いずれも不法行為に 基づき,被告法人に対しては,不法行為(使 れる。 弁護士費用は,7万円が相当と認められる。 3 結論よって,原告の請求は,被告B及び被告Cに対しては,いずれも不法行為に 基づき,被告法人に対しては,不法行為(使用者責任)及び債務不履行に基づき,各自,慰謝料70万円及び弁護士費用7万円並びにこれらに対する各被告の訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 札幌地方裁判所民事第5部 裁判官榎本光宏 (別紙添付省略)

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