平成12年(行ケ)第275号審決取消請求事件(平成14年2月13日口頭弁論終結)判決原告株式会社セガ(旧商号) 株式会社セガ・エンタープライゼス訴訟代理人弁護士近藤惠嗣同弁理士江原望同中村訓被告コナミ株式会社訴訟代理人弁理士園田敏雄同坂上好博 主文 特許庁が平成10年審判第35303号事件について平成12年5月31日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告主文と同旨 2 被告原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯原告は、昭和62年10月6日の特許出願に係る特願昭62-252011号出願の一部を新たな特許出願とした特願平8-97035号出願につき平成9年9月12日に設定登録を受けた、名称を「ゲーム装置」とする特許第2694689号発明(以下、この特許を「本件特許」といい、本件特許に係る発明を「本件発明」という。)の特許権者である。 被告は、平成10年7月8日、原告を被請求人として、本件特許につき無効審判の請求をし、平成10年審判第35303号事件として特許庁に係属したところ、原告は、同年10月13日に願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説 求人として、本件特許につき無効審判の請求をし、平成10年審判第35303号事件として特許庁に係属したところ、原告は、同年10月13日に願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明の記載を訂正する旨の訂正請求をした(以下、この訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)。 特許庁は、同審判請求について審理した上、平成12年5月31日に「特許第2694689号発明の特許を無効とする。」との審決をし、その謄本は同年6月28日に原告に送達された。 2 設定登録時の明細書(以下「登録時明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1(以下「登録時請求項1」という。)の記載複数の模型体が走行経路を規制されることなく移動可能に載置される環状の模型体走行面と、環状の模型体走行面の周縁に沿って配置され遊戯者が投票等の操作を行うための操作パネルを有する複数のサテライトと、模型体走行面の下方に配置され、模型体走行面に載置された模型体と磁力により結合し、模型体のそれぞれを走行経路を規制されることなく個別に誘導すように(注、「誘導するように」の誤記であると認められる。)構成された走行駆動機構と、模型体が順番を競って走行しレース展開を行うように走行駆動機構を制御する走行制御手段と、サテライトを制御するサテライト制御手段と、を有することを特徴とするゲーム装置。 3 本件訂正に係る明細書(以下「訂正明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1の記載(下線部が訂正箇所である。)複数の模型体が走行経路を規制されることなく移動可能に載置される環状の模型体走行面と、環状の模型体走行面の周縁に沿って配置され遊戯者が投票等の操作を行うための操作パネルを有する複数のサテライトと、模型体走行面の下方に配 となく移動可能に載置される環状の模型体走行面と、環状の模型体走行面の周縁に沿って配置され遊戯者が投票等の操作を行うための操作パネルを有する複数のサテライトと、模型体走行面の下方に配置され、模型体走行面に載置された模型体と磁力により結合し、模型体のそれぞれを走行経路を規制されることなく個別に誘導すように(注、「誘導するように」の誤記であると認められる。)構成された走行駆動機構と、模型体が順番を競って走行しレース展開を行うように走行駆動機構を制御する走行制御手段と、サテライトを制御するサテライト制御手段と、コンピュータシステムと、を有し、前記コンピュータシステムは、模型体が順番を競って走行する様子を模倣させるためのレース展開を決定し、前記走行駆動機構は、対応する模型体を磁力を介して誘導しそれぞれ走行経路を変更して移動可能に模型体走行面の下方に配置された複数の走行体を含み、前記走行制御手段は、前記コンピュータシステムの制御の下に、前記決定されたレース展開に基づき前記走行駆動機構を制御して前記複数の走行体の走行を制御し、これによって到着順位の予測がつかないように複数の模型体の走行を誘導し、前記サテライト制御手段は、前記コンピュータシステムの制御の下に、前記サテライトのモニターにレース情報を表示し、操作パネルからの投票及びレース結果に応じた配当を行うように構成されてなることを特徴とするゲーム装置。 4 審決の理由審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、①本件訂正は、請求項1に新たな構成要件を付加したもので、実質上特許請求の範囲を変更しているものと認められ、特許法134条5項において準用する同法126条3項の規定(注、「平成6年法律第116号附則6条1項が、同法の施行前にした特 成要件を付加したもので、実質上特許請求の範囲を変更しているものと認められ、特許法134条5項において準用する同法126条3項の規定(注、「平成6年法律第116号附則6条1項が、同法の施行前にした特許出願に係る特許の願書に添付した明細書又は図面の訂正については、なお従前の例によるとすることにより、平成11年法律第41号による改正前の特許法134条5項において準用する同法126条3項が読み替えられて準用される平成6年法律第116号による改正前の特許法126条2項の規定」の趣旨と解される。)に適合しないので、認められないとし、②本件発明の要旨を、登録時請求項1の記載のとおり認定した上、本件発明は、実公昭55-46222号公報(審判甲第4号証、本訴甲第4号証、以下「刊行物1」という。)、実願昭56-8254号(実開昭57-123191号)のマイクロフィルム(審判甲第8号証、本訴甲第5号証、以下「刊行物2」という。)及び特公昭52-38781号公報(審判甲第5号証、本訴甲第6号証、以下「刊行物3」という。)にそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、本件特許は、特許法29条2項の規定に反してされたものであり、昭和62年法律第27号による改正前の特許法123条1項1号に該当するものとした。 第3 原告主張の審決取消事由審決の理由中、「訂正の当否に対する判断」(本件訂正を認めなかった判断、審決謄本3頁26行目~32行目)は争うが、当該判断を前提とした場合には、「本件特許発明に対する判断」中、刊行物1~3の各記載をそのまま摘記した部分(審決謄本4頁12行目~29行目、5頁1行目~24行目)の認定、本件発明(登録時請求項1に記載された発明、以下「訂正前発明」という。)と刊行物1記載の発明との一致点及び相 載をそのまま摘記した部分(審決謄本4頁12行目~29行目、5頁1行目~24行目)の認定、本件発明(登録時請求項1に記載された発明、以下「訂正前発明」という。)と刊行物1記載の発明との一致点及び相違点(1)、(2)の各認定は認める。 審決は、「訂正の当否に対する判断」において、本件訂正が実質上特許請求の範囲を変更するものであるとの誤った判断をした(取消事由1)結果、本件訂正を認めず、ひいて本件発明の要旨の認定を誤ったものであり、仮にそうでないとしても、「本件特許発明に対する判断」において、訂正前発明と刊行物1記載の発明との相違点(1)、(2)についての判断を誤って(取消事由2)、訂正前発明が刊行物1~3にそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとの誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されるべきである。 1 取消事由1(本件訂正の当否についての判断の誤り)(1) 審決は、本件訂正につき、「訂正請求書の訂正事項について検討すると、上記訂正は、請求項1に新たな構成要件を付加したものであって、実質上特許請求の範囲を変更しているものと認められる」(審決謄本3頁27行目~29行目)と判断して、これを認めなかった。 ただし、本件訂正に対する平成10年10月30日付け訂正拒絶理由通知書(甲第7号証)に記載された拒絶の理由は、「全文訂正明細書第1頁特許請求の範囲、請求項1第11乃至14行目『コンピュ-タシステムと、を有し、前記コンピュ-タシステムは、模型体が順番を競って走行する様子を模倣させるためのレ-ス展開を決定し、』の訂正は、新たな構成要件を付加したものであって、実質上特許請求の範囲を変更しており、特許法第134条第5項で準用する同法第126条第3項の規定に適合していない」というものであった ス展開を決定し、』の訂正は、新たな構成要件を付加したものであって、実質上特許請求の範囲を変更しており、特許法第134条第5項で準用する同法第126条第3項の規定に適合していない」というものであったから(審決謄本3頁16行目~21行目)、審決において、本件訂正が、実質上特許請求の範囲を変更しているとするのは、「コンピュ-タシステムと、を有し」との構成要件(以下「構成要件a」という。)及び「前記コンピュ-タシステムは、模型体が順番を競って走行する様子を模倣させるためのレ-ス展開を決定し」との構成要件(以下「構成要件b」という。)を付加した点によるものといえる。 しかしながら、以下のとおり、本件訂正が実質上特許請求の範囲を変更するものであるとの判断は誤りである。 (2) 審決は、「請求項1に新たな構成要件を付加した」こと以外に、本件訂正が実質上特許請求の範囲を変更するものであるとする理由を示していない。 しかしながら、特許請求の範囲に新たな構成要件を付加したことが、直ちに、実質上特許請求の範囲を変更することに当たるものではない。このことは、「特許請求の範囲の減縮」及び「明りょうでない記載の釈明」を目的とする訂正が認められていることからも明らかである。 そして、以下のとおり、本件訂正によって特許請求の範囲の請求項1に新たに付加された構成要件a、同b並びにその目的及び効果は、登録時明細書(甲第2号証)に記載されている事項であるのみならず、これを付加したことによって特許請求の範囲の請求項1は減縮されているのであるから、本件訂正が実質上特許請求の範囲を変更するものに当たるとはいえない。 ア構成要件aは、登録時明細書の「全システムの主な制御を行うマイクロコンピュータ101が設けられる」(【0034】項)、「以上はキャリア 上特許請求の範囲を変更するものに当たるとはいえない。 ア構成要件aは、登録時明細書の「全システムの主な制御を行うマイクロコンピュータ101が設けられる」(【0034】項)、「以上はキャリア50の駆動制御に関するものであったが、マクロコンピュータ101はこのほかサテライト4およびディスプレイ12の制御も行っており、その制御系のブロック図を図15および図16に図示し、簡単に説明する」(【0071】項)等の記載及び図5の制御系の概略ブロック図に基づく事項である。 イ構成要件bは、登録時明細書の「実際のレースと同じようにコースに規制されることなく、実際に即したレース展開が可能で」(【0016】項)、「全システムの主な制御を行うマイクロコンピュータ101が設けられる」(【0034】項)、「マイクロコンピュータ101はレース展開を決定する」(【0076】項)、「レースはここで決定されたレース展開にしたがって進行し、各キャリア50はこのレース展開に基づいて走行制御される」(【0077】項)等の記載に基づく事項である。 ウ構成要件a及び同bに係る構成の目的は、登録時明細書に「本発明(注、本件発明)・・・の目的とする処は、遊戯者が投票等を行うサテライトが模型体走行面の周囲に設けられ、模型体が走行経路を規制されることなく実際のレースと同様に走行し、レースが展開されるゲーム装置を供する点にある」(【0009】項)と記載され、また、その効果は、登録時明細書に「以上のように本実施の競馬ゲーム装置は各模型馬20は独立に駆動制御されるキャリアにしたがって走行されるので実際の競馬の如く、コースに規制されることなく各模型馬20ができるだけ有利なポジションを確保しようとして掛け引きを行いつつ走行する様子が模倣でき、レースを非常に興味あるものとする って走行されるので実際の競馬の如く、コースに規制されることなく各模型馬20ができるだけ有利なポジションを確保しようとして掛け引きを行いつつ走行する様子が模倣でき、レースを非常に興味あるものとすることができる。各キャリアの駆動は位置検出によるフィードバック制御がなされるので確実に予め決定されたレース展開を実現することができる」(【0087】項)と記載されている。 (3) 審決には、「『請求項1に関わる発明は遊戯者によるレース展開への関与を排除するタイプの競争ゲーム装置である。』、及び『請求項1に関わる発明はレース展開をコンピュータによって決定し、決定されたレース展開に基づき走行体の走行を制御するゲーム装置である。甲第4号証にはレース展開を予め決定することの示唆は全くない。』の主張は、被請求人(注、原告)の平成10年10月13日付訂正請求書の訂正(注、本件訂正)に基づく主張であり・・・該訂正は認められないものであるので、上記主張は意味のないものである。言い換えると、上記主張は本件発明の要旨外である」(審決謄本9頁6行目~13行目)との記載があり、この記載に照らして、審決は、訂正前発明が、遊戯者によるレース展開への関与を排除しないという理解をしているとも考えられる。 しかしながら、仮に、審決がそのような理解を前提として、請求項1に構成要件a及び同bを付加した本件訂正が、実質上特許請求の範囲を変更するものに当たると判断したとすれば、その判断の前提である、訂正前発明が遊戯者によるレース展開への関与を排除しないという理解が誤りである。 すなわち、登録時請求項1における「遊戯者が投票等の操作を行うための操作パネルを有する複数のサテライト」との記載の「投票」とは、「環状の模型体走行面」を走行する「複数の模型体」のうちいずれが先着する すなわち、登録時請求項1における「遊戯者が投票等の操作を行うための操作パネルを有する複数のサテライト」との記載の「投票」とは、「環状の模型体走行面」を走行する「複数の模型体」のうちいずれが先着するかという予想を投票するということである。そして、遊戯者が予想を投票することから、必然的に、結果とそれに至るレース展開は遊戯者の支配し得ない方法で決められなければならない。つまり、遊戯者による「投票」と遊戯者自身が走行体を走行制御することとは、両立し得ないのである。したがって、本件発明は、訂正前発明にあっても、賭け競争ゲームであり、遊戯者によるレース展開への関与を排除するタイプの競争ゲーム装置である。 なお、審決は、刊行物1記載の発明に関して、「刊行物1は、遊戯者による投票及びレース結果に応じた配当を行うこと、言い換えるとこの種のゲーム装置において周知の操作パネルやサテライトの配置を示唆している」(審決謄本10頁19行目~21行目)との判断を示し、サテライトが「遊戯者による投票及びレース結果に応じた配当を行う」ゲーム、すなわち、賭け競争ゲーム装置に特有の構成であることを認めている。したがって、サテライトを備えるゲームは賭け競争ゲームであり、遊戯者によるレース展開への関与を排除するタイプの競争ゲーム装置なのである。 そして、登録時明細書(甲第2号証)には、発明の実施例に関し、「コンピュータの制御の下に、レース展開が各レース毎に無作為に決定され、走行体A1,A2,…,Anの順位も予想がつかない」(【0015】項)、「レース展開の決定は予め用意された多数のレース展開(コンピュータに記憶されている)のうちから1つを無作為に選択するものであり」(【0077】項)、「レース展開は予め記憶された多種類のレース展開の中から無作為に選定される」( 意された多数のレース展開(コンピュータに記憶されている)のうちから1つを無作為に選択するものであり」(【0077】項)、「レース展開は予め記憶された多種類のレース展開の中から無作為に選定される」(【0088】項)との各記載があり、レース展開が、遊戯者に知られないようにコンピュータが決定する方法が具体的に開示されている。もとより、これらの記載は実施例に係るものであり、これ以外にも、コンピュータによって適宜の方法によりレース展開を決定することができ、その場合でもレース展開の予測不能性に影響を及ぼさないことは当業者に自明であった。 (4) 本件訂正が、特許請求の範囲を実質上変更するものであるとする被告の主張は、要するに、本件訂正後の本件発明の技術的範囲が、登録時明細書に記載された実施例よりも広くなること、すなわち、同実施例に示されていない実施態様が含まれることになるから、本件訂正は許されないとしているものと解される。 しかしながら、特許請求の範囲が明細書に記載された実施例を包含し、かつ、実施例よりも広いのは当然のことであり、このことは、出願時の明細書のみならず、訂正後の明細書についても当てはまることである。したがって、本件訂正は、訂正制度の趣旨に照らしても、当然に許されるべきものである。 2 取消事由2(訂正前発明と刊行物1記載の発明との相違点(1)、(2)についての判断の誤り)審決は、「本件特許発明に対する判断」において、訂正前発明と刊行物1記載の発明との相違点(1)である「前者(注、訂正前発明)は『環状の模型体走行面の周緑(注、「周縁」の誤記と認められる。)に沿って配置され遊戯者が投票等の操作を行うための操作パネルを有する複数のサテライト』の構成を有するのに対し、後者(注、刊行物1記載の発明)はこのような構成を有しない 、「周縁」の誤記と認められる。)に沿って配置され遊戯者が投票等の操作を行うための操作パネルを有する複数のサテライト』の構成を有するのに対し、後者(注、刊行物1記載の発明)はこのような構成を有しない点」(審決謄本9頁28行目~30行目)及び相違点(2)である「前者は『サテライトを制御するサテライト制御手段』の構成を有するのに対し、後者はこのような構成を有しない点」(同頁32行目~33行目)につき、「この種の競争ゲーム装置において、第2の相違点(注、相違点(2))におけるサテライト制御手段を有するサテライトを設けることは、刊行物2のテーブルユニットにみられる如く当業者には周知の技術であり、この周知技術を刊行物1の発明に適用する際に、刊行物3の第1図から推測される如く、サテライトを環状の模型体走行面の周緑(注、「周縁」の誤記と認められる。)に沿って配置して本件発明の構成の如くすることは、当業者であれば容易になし得る程度のものと認められる」(同9頁35行目~10頁2行目)と判断した。 しかしながら、刊行物1(甲第4号証)記載の発明は、遊戯者自らが走行体の走行を制御するゲーム装置であるのに対し、サテライトは、上記のとおり、遊戯者によるレース展開への関与を排除するタイプの競争ゲームである賭け競争のゲーム装置に特有の構成であるから、刊行物2及び同3記載のサテライトを刊行物1記載の発明に適用する動機が存在し得ない。 したがって、上記各相違点についての審決の判断が誤りであることは明らかである。 第4 被告の反論審決の認定及び判断は正当であり、原告主張の審決取消事由は理由がない。 1 取消事由1(本件訂正の当否についての判断の誤り)について(1) コンピュータシステムは、どのような機能ブロックから構成されるものか、どのような条件で 原告主張の審決取消事由は理由がない。 1 取消事由1(本件訂正の当否についての判断の誤り)について(1) コンピュータシステムは、どのような機能ブロックから構成されるものか、どのような条件でどのような手順に従って何をどのように制御するものかが特定されて、初めて技術的事項として意味を有するものであるが、構成要件bは、要するに、コンピュータがレース展開を決定するとしているにすぎず、このことからすると、構成要件aにおける「コンピュータシステム」は、レース展開をどのような手法で決定するかという技術的手段を明確に規定したものではない。 また、登録時明細書(甲第2号証)に記載された実施例においては、「コンピュータ制御の下に、レース展開が各レース毎に無作為に決定され」(【0015】項)るとされているのであるから、実際のレースを模倣させるような多数の「レース展開」をあらかじめ用意してあって、この中から各レースごとに無作為に「レース展開」を抽出した上、その抽出した「レース展開」の制御データを基準とし、その走行経路、走行速度でフィードバック制御することにより走行体を走行させるのであり、その結果、走行体に誘導される模型体が、あたかも順番を競って走行しているかのような外観を呈し、模型体による競争ゲームの体を成すことになるものと理解される。すなわち、上記実施例は、「コンピュータ制御の下に」、「レース展開が各レース毎に無作為に決定され」るものであり、構成要件bのように、「コンピュータシステム」が「模型体が順番を競って走行する様子を模倣させるためのレース展開を決定」するものではない。 以上のように、構成要件aはコンピュータシステムによる技術的手段を明確にしたものではなく、また、構成要件bは登録時明細書記載の実施例に係る解決手段と一致しないから、 決定」するものではない。 以上のように、構成要件aはコンピュータシステムによる技術的手段を明確にしたものではなく、また、構成要件bは登録時明細書記載の実施例に係る解決手段と一致しないから、構成要件a及び同bが、登録時明細書に記載された事項であるとすることはできない。 (2) また、登録時請求項1には、模型体が走行経路を規制されることなく移動可能であること、このような模型体の走行面の下方に配置されていて、磁力を介して誘導して模型体を走行させる走行駆動機構を有することが記載されているが、この走行駆動機構がどのようなものか、これによる模型体の誘導制御によってどのような競争ゲームをどのように制御するものかに関する構成要件は一切記載されていない。 これに対し、本件訂正によって構成要件a及び同bを特許請求の範囲の請求項1に付加したことは、上記走行駆動機構の意味内容を、模型体の競争により賭け競争ゲームを実現する複数の走行体に変更し、さらに、この走行体を、あらかじめ設定された「レース展開」に従って走行させて賭け競争ゲームが展開されるように走行制御するものに変更した上で、この賭け競争ゲームのための上記走行体の走行制御をその制御基準の設定から完走まで、コンピュータで完全に自動的に行うものに変更するものである。 したがって、本件訂正は、登録時明細書の特許請求の範囲に記載された特定の事項を概念的に減縮したものであるというには当たらず、その特許請求の範囲に記載された「ゲーム装置」の模型体による競争ゲームを、別個独立に走行制御される走行体によって誘導させることにより制御し、これによって賭け競争ゲームを展開させるという、新しい技術的課題を解決するための手段を特許請求の範囲に追加するものであるから、仮にその訂正事項が登録時明細書の発明の詳細 て誘導させることにより制御し、これによって賭け競争ゲームを展開させるという、新しい技術的課題を解決するための手段を特許請求の範囲に追加するものであるから、仮にその訂正事項が登録時明細書の発明の詳細な説明に記載されていたとしても、特許請求の範囲を実質上変更するものである。 審決が、本件訂正について、「上記訂正は、請求項1に新たな構成要件を付加したものであって、実質上特許請求の範囲を変更しているものと認められる」(審決謄本3頁27行目~29行目)とするのは上記の趣旨であり、そのことは、平成10年10月30日付け訂正拒絶理由通知書(甲第7号証)及び審決の記載によって当然に理解できるものである。 (3) 原告は、登録時請求項1における「遊戯者が投票等の操作を行うための操作パネルを有する複数のサテライト」との記載を根拠として、訂正前発明が賭け競争ゲームであり、遊戯者によるレース展開への関与を排除するタイプの競争ゲーム装置である旨主張する。 しかしながら、上記記載を含む「環状の模型体走行面の周縁に沿って配置され遊戯者が投票等の操作を行うための操作パネルを有する複数のサテライトと、を有する」との記載のみによっては、多数の遊技者が環状の模型体走行面の周縁に寄り付いて着順に投票し、その当たり外れを楽しむ賭けゲーム装置の構成を必ずしも特定するものではない。また、コンピュータ制御による競馬ゲームなどの賭けゲーム装置では多数の模型体の競争を前提として、1着、2着、又はその組み合わせに投票するのが常識であるが、競争する模型体の数が賭けゲームを行うにふさわしい数であることを特定する構成要件は登録時請求項1の記載にはない。さらに、上記登録時請求項1の「投票等の操作」との記載における「投票」は、サテライトの操作パネルで行う遊戯者の「操作」の例示にす わしい数であることを特定する構成要件は登録時請求項1の記載にはない。さらに、上記登録時請求項1の「投票等の操作」との記載における「投票」は、サテライトの操作パネルで行う遊戯者の「操作」の例示にすぎず、サテライトの操作パネルが投票操作を行うものであることを構成要件として規定するものではない。 したがって、登録時請求項1における上記記載が、訂正前発明が賭けゲーム装置であることを規定するものではない。 原告は、登録時明細書(甲第2号証)の実施例に、レース展開が遊戯者に知られないようにコンピュータが決定する方法が示されているとした上、これ以外にも、コンピュータによって適宜の方法によりレース展開を決定することができ、その場合でもレース展開の予測不能性に影響を及ぼさないことは当業者に自明であったとも主張する。 しかしながら、登録時明細書(甲第2号証)には、実施例として記載した一つの方法以外には、コンピュータシステムによって「レース展開」(レースごとのすべての模型体の走行制御データ)を決定することは記載されておらず、そのようなものを具体的に示唆する記載もない。また、レース展開を遊戯者に知られないようにすることや、「レース展開の予測不能性に影響を及ぼさない」との条件を満足する「レース展開」を決定するための手法がどのようなものであるかを示唆する記載もない。そもそも、登録時明細書上、上記実施例自体が、コンピュータシステムにおいてレース展開を決定するものではないことは上記のとおりである。 なお、本件訂正において、コンピュータシステムによって決定されるレース展開が、「模型体が実際のレースと同様に走行してレースが展開されるようにする」ための解決手段の重要な一部分であることは明白であり、したがって、構成要件a及び同bは、模型体の競争 って決定されるレース展開が、「模型体が実際のレースと同様に走行してレースが展開されるようにする」ための解決手段の重要な一部分であることは明白であり、したがって、構成要件a及び同bは、模型体の競争によるレースが実際のレースを模倣したものとなるような走行制御データ(レース展開)を、どのようにして作成するかという技術的課題を解決するための手段及び模型体の競争によるレースをコンピュータシステムによってどのように制御するかという技術的課題を解決するための手段を、登録時請求項1に新たに付加したものであり、これは、訂正前発明が解決した課題とは全く別個の新たな課題を解決するための新たな構成要件を請求項1に付加することに当たるから、特許請求の範囲を実質上変更するものであることは明らかである。 2 取消事由2(訂正前発明と刊行物1記載の発明との相違点(1)、(2)についての判断の誤り)について原告は、刊行物1記載の発明は、遊戯者自らが走行体の走行を制御するゲーム装置であるのに対し、サテライトは、遊戯者によるレース展開への関与を排除するタイプの競争ゲームである賭け競争のゲーム装置に特有の構成であるから、刊行物2及び同3記載のサテライトを刊行物1記載の発明に適用する動機が存在しないと主張する。 しかしながら、刊行物1(甲第4号証)には、模型体を誘導する磁石のキャリアをその駆動機構によって無軌道に自在に走行させて模型体を無軌道走行させること、及び上記キャリアをモータで駆動することが記載されているのであるから、刊行物1記載の発明において、キャリアの走行(走行経路及び走行速度)を制御する制御手段によって、模型体の走行(走行経路及び走行速度)が間接的に制御され、その結果、模型体が無軌道走行して競馬ゲームが展開されるものであることは、当業者が容易に理解 行経路及び走行速度)を制御する制御手段によって、模型体の走行(走行経路及び走行速度)が間接的に制御され、その結果、模型体が無軌道走行して競馬ゲームが展開されるものであることは、当業者が容易に理解し得るところである。 そして、いわゆる競馬ゲーム装置は、その周辺に寄り付いて模型体の競争の勝敗を観戦して楽しむのが一般的であり、このことは、当然、刊行物1記載の競馬ゲーム装置に当てはまることである。他方、刊行物2(甲第5号証)及び同3(甲第6号証)に記載されているように、競馬ゲーム装置にサテライトを付設することは従来周知であるから、刊行物1に記載された競馬ゲーム装置にサテライトを付設することは、競馬ゲーム装置を商品に仕上げる段階で当然に採用する設計的事項であるともいえるものである。 したがって、刊行物2及び同3記載のサテライトを刊行物1記載の発明に適用する動機が存在しないとする原告の主張は誤りである。 なお、原告の主張は、訂正前発明の「ゲーム装置」が賭け競争ゲームであり、遊戯者によるレース展開への関与を排除するタイプの競争ゲーム装置であることを前提としているが、訂正前発明は模型体による競争ゲーム装置であり、これを、模型体の着順に投票して、当たりに対して配当が与えられる完全自動の賭け競争ゲーム装置を意味すると解しなければならない理由はない。また、仮に、訂正前発明が賭けゲーム装置であるとしても、賭けゲーム装置においてサテライトを配置することは、刊行物2及び同3に記載されていることである。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(本件訂正の当否についての判断の誤り)について(1) 審決は、本件訂正につき、「訂正請求書の訂正事項について検討すると、上記訂正は、請求項1に新たな構成要件を付加したものであって、実質上特許請求の範囲を変更 についての判断の誤り)について(1) 審決は、本件訂正につき、「訂正請求書の訂正事項について検討すると、上記訂正は、請求項1に新たな構成要件を付加したものであって、実質上特許請求の範囲を変更しているものと認められる」(審決謄本3頁27行目~29行目)として、これを認めなかったところ、本件訂正に対する平成10年10月30日付け訂正拒絶理由通知書(甲第7号証)に記載された拒絶の理由は、審決が引用する(審決謄本3頁16行目~21行目)とおり、「全文訂正明細書第1頁特許請求の範囲、請求項1第11乃至14行目『コンピュ-タシステムと、を有し、前記コンピュ-タシステムは、模型体が順番を競って走行する様子を模倣させるためのレ-ス展開を決定し、』の訂正は、新たな構成要件を付加したものであって、実質上特許請求の範囲を変更しており、特許法第134条第5項で準用する同法第126条第3項の規定に適合していない」というものであるから、審決は、本件訂正のうち、特許請求の範囲の請求項1に、「コンピュ-タシステムと、を有し、前記コンピュ-タシステムは、模型体が順番を競って走行する様子を模倣させるためのレ-ス展開を決定し、」との記載を付加した点、すなわち、構成要件a及び同bを付加した点が、実質上特許請求の範囲を変更することに当たるとしたものと解される。 (2) しかしながら、登録時明細書(甲第2号証)には、「本発明(注、本件発明)・・・の目的とする処は、遊戯者が投票等を行うサテライトが模型体走行面の周囲に設けられ、模型体が走行経路を規制されることなく実際のレースと同様に走行し、レースが展開されるゲーム装置を供する点にある」(【0009】項)、「模型体走行面上を複数の模型体が個別に走行駆動装置に誘導されて走行経路を規制されることなく実際のレースと同様に走行する」 走行し、レースが展開されるゲーム装置を供する点にある」(【0009】項)、「模型体走行面上を複数の模型体が個別に走行駆動装置に誘導されて走行経路を規制されることなく実際のレースと同様に走行する」(【0011】項)、「実際のレースと同じようにコースに規制されることなく、実際に即したレース展開が可能」(【0016】項)、「全システムの主な制御を行うマイクロコンピュータ101が設けられる」(【0034】項)、「以上はキャリア50の駆動制御に関するものであったが、マクロコンピュータ101(注、「マイクロコンピュータ101」の誤記と認められる。)はこのほかサテライト4およびディスプレイ12の制御も行っており、その制御系のブロック図を図15および図16に図示し、簡単に説明する」(【0071】項)、「マイクロコンピュータ101はレース展開を決定する」(【0076】項)、「レースはここで決定されたレース展開にしたがって進行し、各キャリア50はこのレース展開に基づいて走行制御される」(【0077】項)、「以上のように本実施の競馬ゲーム装置は各模型馬20は独立に駆動制御されるキャリアにしたがって走行されるので実際の競馬の如く、コースに規制されることなく各模型馬20ができるだけ有利なポジションを確保しようとして掛け引きを行いつつ走行する様子が模倣でき、レースを非常に興味あるものとすることができる。各キャリアの駆動は位置検出によるフィードバック制御がなされるので確実に予め決定されたレース展開を実現することができる」(【0087】項)との各記載がある。 これらの記載によれば、構成要件aに係る「コンピュ-タシステムと、を有し」との構成及び構成要件bに係る「前記コンピュ-タシステムは、模型体が順番を競って走行する様子を模倣させるためのレ-ス展開を決定し」と の記載によれば、構成要件aに係る「コンピュ-タシステムと、を有し」との構成及び構成要件bに係る「前記コンピュ-タシステムは、模型体が順番を競って走行する様子を模倣させるためのレ-ス展開を決定し」との構成は、いずれも登録時明細書に記載されていることが明らかである。 被告は、構成要件aにつき、コンピュータシステムがレース展開をどのような手法で決定するかという技術的手段を明確に規定したものではないとし、構成要件bにつき、登録時明細書記載の実施例は、「コンピュータ制御の下に」、「レース展開が各レース毎に無作為に決定され」るものであり、「コンピュータシステム」が「模型体が順番を競って走行する様子を模倣させるためのレース展開を決定」するものではないから、登録時明細書の実施例に係る解決手段と一致しないとして、構成要件a及び同bが、登録時明細書に記載された事項であるとすることはできない旨主張する。 確かに、登録時明細書(甲第2号証)には、上記各記載のほか、発明の実施例に関し、「コンピュータの制御の下に、レース展開が各レース毎に無作為に決定され、走行体A1,A2,…,Anの順位も予想がつかない」(【0015】項)、「レース展開の決定は予め用意された多数のレース展開(コンピュータに記憶されている)のうちから1つを無作為に選択するものであり」(【0077】項)、「レース展開は予め記憶された多種類のレース展開の中から無作為に選定される」(【0088】項)との各記載があり、これらの記載によれば、登録時明細書記載の実施例は、被告主張のように、「コンピュータ制御の下に」、「レース展開が各レース毎に無作為に決定され」るものともいうことができる。しかしながら、この場合においても、「予め用意された多数のレース展開」がコンピュータに記憶されるとされているの 制御の下に」、「レース展開が各レース毎に無作為に決定され」るものともいうことができる。しかしながら、この場合においても、「予め用意された多数のレース展開」がコンピュータに記憶されるとされているのみならず、これらの記載に上記各記載を併せ考えれば、「予め用意された多数のレース展開」は、いずれも、模型体が順番を競って走行する実際のレースの様子を模倣するようなレース展開として作成されており、かつ、コンピュータシステムが、各レースごとにそのうちの一つを無作為に選定するものであると推認されるから、このようにしてレース展開を選定することも、構成要件bに係る「コンピュ-タシステムは、模型体が順番を競って走行する様子を模倣させるためのレ-ス展開を決定し」との構成の一態様ということができることは明らかである。 また、構成要件a自体が、コンピュータシステムがレース展開を決定する具体的な手法を規定したものではないことも、被告主張のとおりである。しかしながら、本件訂正において、構成要件bが登録時明細書に記載された実施例の方法を一態様とするコンピュータシステムによるレ-ス展開の決定という構成を規定したものであることは上記のとおりであり、構成要件aは、そのレ-ス展開の決定に利用することを目的の一つとして、コンピュータシステムを有するという構成を規定したものであることは明らかである。そして、構成要件a又は同bが、コンピュータシステムがレース展開を決定する具体的な手法(例えば同実施例の方法)を規定していないということは、構成要件bによって規定される構成は、同実施例のようにしてレース展開を選定する方法を含むが、コンピュータシステムがレース展開を決定する方法としては同実施例の方法に限定されるものではないことを示しているにすぎないところ、前示登録時請求項1の記載を、 にしてレース展開を選定する方法を含むが、コンピュータシステムがレース展開を決定する方法としては同実施例の方法に限定されるものではないことを示しているにすぎないところ、前示登録時請求項1の記載を、本件訂正によって、上記のように、コンピュータシステムによるレ-ス展開の決定という構成を付加する限度で限定することが、そのこと自体として特段の問題を有するとはいえないから、構成要件a又は同bが、コンピュータシステムがレース展開を決定する具体的な手法を規定していなくとも、特段の支障が生ずるものではない。 なお、被告は、登録時明細書には、実施例の方法以外には、コンピュータシステムによって「レース展開」(レースごとのすべての模型体の走行制御データ)を決定することは記載されておらず、そのようなものを具体的に示唆する記載もない旨主張するが、登録時明細書に構成要件bに係る構成が記載されていることは上記のとおりであり、その構成に係るすべての実施態様が記載又は示唆されていることを要するものではない。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 (3) ところで、審決は、本件訂正のうち、特許請求の範囲の請求項1に、「コンピュ-タシステムと、を有し、前記コンピュ-タシステムは、模型体が順番を競って走行する様子を模倣させるためのレ-ス展開を決定し、」との記載を付加した点、すなわち、構成要件a及び同bを付加した点が、実質上特許請求の範囲を変更することに当たるとしたものと解されることは上記のとおりであるが、特許請求の範囲を減縮する場合には新たな構成要件を付加することが通常であることに照らせば、新たな構成要件を付加することが、直ちに、実質上特許請求の範囲を変更することに当たるものでないことは明らかである。 この点につき、被告は、本件訂正が を付加することが通常であることに照らせば、新たな構成要件を付加することが、直ちに、実質上特許請求の範囲を変更することに当たるものでないことは明らかである。 この点につき、被告は、本件訂正が、登録時明細書の特許請求の範囲に記載された「ゲーム装置」の模型体による競争ゲームを、コンピュータにより別個独立に走行制御される走行体によって誘導させることにより制御し、これによって賭け競争ゲームを展開させるという、新しい技術的課題を解決するための手段を特許請求の範囲に追加するものであるから、特許請求の範囲を実質上変更するものであり、審決が「実質上特許請求の範囲を変更しているものと認められる」(審決謄本3頁28行目~29行目)としたのがその趣旨であることは、平成10年10月30日付け訂正拒絶理由通知書(甲第7号証)及び審決の記載によって当然に理解できるものである旨主張する。 そこで、上記訂正拒絶理由通知書及び審決の記載によってその趣旨が当然理解できるかどうかはしばらくおき、まず、被告主張の新しい技術的課題を解決するための手段を特許請求の範囲に追加するものであるかどうかにつき検討する。 登録時請求項1の記載は前示のとおりであり、その発明の詳細な説明には、「従来の技術」及び「解決しようとする課題」として、「従来、競馬、自動車レース等を模倣した競争ゲーム装置は数多くあり、例えば、環状のトラック上を自動車模型を走らせて到着順位を競う初期の例では・・・自動車模型の運動に規則性があるために興味が損なわれる欠点があった」(【0002】項)、「そこで、個々の自動車模型の動きを不規則にし、順位の予想がつかないようにした例・・・が提案されている」(【0003】項)、「しかるに各移動模型は・・・循環路の外側のコースに位置する移動模型は常に外側のコースを の自動車模型の動きを不規則にし、順位の予想がつかないようにした例・・・が提案されている」(【0003】項)、「しかるに各移動模型は・・・循環路の外側のコースに位置する移動模型は常に外側のコースを回ることになり、内側のコースに位置する移動模型は常に内側のコースを移動することになる」(【0005】項)、「実際の自動車レース等の場合は・・・自動車がカーブにさしかかると、できるだけ最短距離を走ろうとして各自動車は内側のコースに移動してくる」(【0006】項)、「しかし前記従来例の如く各移動模型がスタートからゴールまで常に一定のコースを移動するものでは上記の如き実際のレースとはかけ離れたものとなり臨場感がうすれ、興味も半減したものとならざるを得ない」(【0008】項)、「本発明(注、本件発明)はかかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、遊戯者が投票等を行うサテライトが模型体走行面の周囲に設けられ、模型体が走行経路を規制されることなく実際のレースと同様に走行し、レースが展開されるゲーム装置を供する点にある」(【0009】項)との記載があり、また、発明の作用効果に関して「したがって遊戯者は、いずれかのサテライトに臨んで操作パネルを操作して投票を行うことができ、サテライトから見ることができる模型体走行面上を複数の模型体が個別に走行駆動装置に誘導されて走行経路を規制されることなく実際のレースと同様に走行するので、遊戯者は臨場感あるエキサイティングなゲームを楽しむことができる」(【0011】項)との記載がある。 これらの記載によれば、訂正前発明の技術的課題及び効果は、競馬、自動車レース等を模倣した競争ゲーム装置において、競走馬、レースカー等を模した模型体が、常に一定のコース(走行経路)を走行するように構成されていた従来例の欠点を解消し、 技術的課題及び効果は、競馬、自動車レース等を模倣した競争ゲーム装置において、競走馬、レースカー等を模した模型体が、常に一定のコース(走行経路)を走行するように構成されていた従来例の欠点を解消し、実際のレースと同様、コース(走行経路)に規制されずに走行するようにして、サテライトに臨んで操作パネルを操作して投票を行う遊戯者が、サテライトから見ることができる模型体の走行を臨場感あるエキサイティングなものとすることにあり、コース(走行経路)に規制されずに走行するようにするための構成が、登録時請求項1に規定された「模型体走行面の下方に配置され、模型体走行面に載置された模型体と磁力により結合し、模型体のそれぞれを走行経路を規制されることなく個別に誘導すように(注、「誘導するように」の誤記であることは上記のとおりである。)構成された走行駆動機構」の構成であるものと認められる。 また、登録時請求項1の「環状の模型体走行面の周縁に沿って配置され遊戯者が投票等の操作を行うための操作パネルを有する複数のサテライト」との規定に係る「投票」、すなわち、上記記載において、遊戯者が「いずれかのサテライトに臨んで操作パネルを操作して」行う「投票」とは、競走馬、レースカー等を模した模型体のいずれがレースで勝つかを投票し、それが的中した場合には、いわゆる配当を受けることができる、例えば、実際の競馬における「勝馬投票」(競馬法5条以下)等を模したものを意味することが明らかであり、このような「投票」が上記「サテライト」の用途の例として挙げられていることに照らせば、訂正前発明が、「投票」により賭け競争ゲームを展開させることも、その目的として含むものということができる。 この点につき、被告は、賭けゲーム装置では多数の模型体の競争を前提として、1着、2着、又はその が、「投票」により賭け競争ゲームを展開させることも、その目的として含むものということができる。 この点につき、被告は、賭けゲーム装置では多数の模型体の競争を前提として、1着、2着、又はその組み合わせに投票するのが常識であるとか、競争する模型体の数が賭けゲームを行うにふさわしい数であることを特定する構成要件は登録時請求項1の記載にはない等と主張するが、投票の形態を「1着、2着、又はその組み合わせ」に限定する理由はなく、模型体が複数、すなわち2個以上あれば、賭け競争ゲームが成り立ち得ることは明白であるところ、登録時請求項1は「複数の模型体」を規定しているから、被告の上記主張は採用することができない。 そうとすれば、本件訂正により、前示登録時請求項1に、構成要件a及び同bに係る「コンピュ-タシステムと、を有し」、「前記コンピュ-タシステムは、模型体が順番を競って走行する様子を模倣させるためのレ-ス展開を決定し」の各構成を付加したところで、そのことによって、模型体をコンピュータにより別個独立に走行制御される走行体によって誘導させることにより制御し、これによって賭け競争ゲームを展開させるという、新しい技術的課題を解決するための手段を特許請求の範囲に追加することに当たるとは到底いうことができない。すなわち、模型体をコンピュータシステムにより別個独立に走行制御される走行体によって誘導させることにより制御することは、登録時請求項1に規定された「模型体走行面の下方に配置され、模型体走行面に載置された模型体と磁力により結合し、模型体のそれぞれを走行経路を規制されることなく個別に誘導するように構成された走行駆動機構」の構成を限定したものにすぎず、また、賭け競争ゲームを展開させることは、上記のとおり、訂正前発明の目的に含まれているのである。 経路を規制されることなく個別に誘導するように構成された走行駆動機構」の構成を限定したものにすぎず、また、賭け競争ゲームを展開させることは、上記のとおり、訂正前発明の目的に含まれているのである。 本件訂正に係る訂正請求書(甲第3号証)及び訂正明細書(同号証添付)によれば、上記のとおり摘記した「従来の技術」及び「解決しようとする課題」並びに発明の作用効果に関する記載は、本件訂正によって、何ら訂正されていないが、このことは、上記説示を裏付けるものということができる。 したがって、本件訂正が、登録時明細書の特許請求の範囲に記載された「ゲーム装置」の模型体による競争ゲームを、コンピュータにより別個独立に走行制御される走行体によって誘導させることにより制御し、これによって賭け競争ゲームを展開させるという、新しい技術的課題を解決するための手段を特許請求の範囲に追加するものであるから、特許請求の範囲を実質上変更するものであるとする被告の主張は、訂正拒絶理由通知書及び審決の記載によってその趣旨が当然理解できるかどうかにつき判断するまでもなく、それ自体誤りであるといわざるを得ない。 (4) なお、被告は、本件訂正において、コンピュータシステムによって決定されるレース展開が、「模型体が実際のレースと同様に走行してレースが展開されるようにする」ための解決手段の重要な一部分であることは明白であるから、構成要件a及び同bは、模型体の競争によるレースが実際のレースを模倣したものとなるような走行制御データ(レース展開)を、どのようにして作成するかという新たな技術的課題を解決するための手段及び模型体の競争によるレースをコンピュータシステムによってどのように制御するかという新たな技術的課題を解決するための手段を、登録時請求項1に新たに付加したものであり 技術的課題を解決するための手段及び模型体の競争によるレースをコンピュータシステムによってどのように制御するかという新たな技術的課題を解決するための手段を、登録時請求項1に新たに付加したものであり、特許請求の範囲を実質上変更するものであるとも主張する。 しかしながら、発明を実施するためには、種々の手段、手法、条件等が必要となるとしても、このような手段、手法、条件等の技術事項のいずれが重要であるかは、発明の技術的課題又は作用効果等との関係において考慮することを要すべきものである。そして、登録時明細書に記載された訂正前発明の技術的課題及び作用効果は上記のとおりであり、それが本件訂正によって訂正されていないことも上記のとおりであるところ、模型体の走行制御データ(レース展開)をどのようにして作成するかとか、模型体の競争によるレースをコンピュータシステムによってどのように制御するかという点はその技術的課題に含まれるものではない。 確かに、模型体が、実際のレースと同様、コース(走行経路)に規制されずに走行するようにすることは、本件訂正の前後を通じて本件発明の技術的課題とされているが、登録時請求項1は、そのための構成として、「模型体走行面の下方に配置され、模型体走行面に載置された模型体と磁力により結合し、模型体のそれぞれを走行経路を規制されることなく個別に誘導するように構成された走行駆動機構」の構成及び「模型体が順番を競って走行しレース展開を行うように走行駆動機構を制御する走行制御手段」の構成を規定しているところであり、本件訂正に係る構成要件a及び同bは、これらの構成を、いずれも登録時明細書に記載されている技術事項によって限定したにすぎないものであることは明らかである。 したがって、構成要件a及び同bが、新たな技術的課題を解決す a及び同bは、これらの構成を、いずれも登録時明細書に記載されている技術事項によって限定したにすぎないものであることは明らかである。 したがって、構成要件a及び同bが、新たな技術的課題を解決するための手段を、登録時請求項1に付加したものであるということはできず、被告の上記主張は採用することができない。 (5) 以上によれば、特許請求の範囲の請求項1に、構成要件a及び同bを付加した点が、実質上特許請求の範囲を変更することに当たるとする被告の主張は、すべて採用することができず、審決が、実質上特許請求の範囲を変更するとして本件訂正を認めなかった判断は誤りというべきであり、この瑕疵が、本件訂正の当否の判断、ひいては本件発明の要旨の認定に影響を及ぼすことは明らかであるから、その余の取消事由について判断するまでもなく、審決は違法として取消しを免れない。 2 よって、原告の請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第13民事部裁判長裁判官篠原勝美裁判官石原直樹裁判官宮坂昌利
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