平成20(許)44 親会社の株主の子会社の会社帳簿等閲覧許可決定等に対する抗告審の変更決定等に対する許可抗告事件

裁判年月日・裁判所
平成21年1月15日 最高裁判所第一小法廷 決定 棄却 名古屋高等裁判所 平成19(ラ)61
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判決文本文3,555 文字)

- 1 -主文本件抗告を棄却する。 抗告費用は抗告人の負担とする。 理由 抗告代理人宮崎真の抗告理由三について(1)本件は,相手方が,抗告人の親会社であるA社の株主として,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。以下同じ)293条の8第1項に基づき,原々決定別紙1記載の抗告人の会計帳簿等(以下「本件会計帳簿等」という。)の閲覧謄写の許可を申請した事案である(以下,この申請を「本件許可申請」という。)。所論は,相手方につき同法293条の7第2号に掲げる事由があるので,同法293条の8第2項に基づき,本件許可申請は却下されるべきである旨をいうものである。 (2)記録によれば,本件の経緯等は次のとおりである。 ア抗告人は,青果仲卸業務の受託等を目的とする株式会社であり,その発行済株式5000株はすべてA社が有している。 イA社は,青果の仲買業等を目的とする株式会社である。A社は,名古屋市中央卸売市場北部市場において,青果部に属する仲卸業者として名古屋市長の許可を得ている。A社及び抗告人は,過去に果実類を取り扱っていた時期もあったが,平成17年6月以降はその取扱いを中止し,現在は専ら野菜類を取り扱っている。A社及び抗告人が近い将来において果実類を取り扱う予定はない。 ウB社は,青果物の仲卸業等を目的とする株式会社である。B社は,名古屋市中央卸売市場本場において,青果部に属する仲卸業者として名古屋市長の許可を得- 2 -ている。B社の取扱商品は専ら果実類であり,近い将来において野菜類を取り扱う予定はない。 エ相手方は,A社の株式を5840株(総株主の議決権の約3.6%)有しており,相手方の子であるCは,A社の株式を3万4320株(同約21.5%)有している。Cは,B社の株式の30%以上を有し,同社の監査役に就任してい 株式を5840株(総株主の議決権の約3.6%)有しており,相手方の子であるCは,A社の株式を3万4320株(同約21.5%)有している。Cは,B社の株式の30%以上を有し,同社の監査役に就任しているが,相手方はB社の株式を有していない。 オ相手方は,Cと共に,商法293条の8第1項に基づき,原々審に対し,本件許可申請をした。Cについては,同法293条の7第2号に掲げる事由があるとして,同法293条の8第2項に基づき,許可申請を却下した原々決定が確定した。 (3)原審は,次のとおり判断して,相手方が本件会計帳簿等のうち原々決定別紙1記載1,2,4,7(ただし,7についてはフレンドシップ1世に関するものに限る。)の会計帳簿等を閲覧謄写することを許可した。 ア相手方は,Cの母親で同人と同居し,同人と同一の手続で本件許可申請をしたもので,代理人弁護士も共通であるから,両名の請求はその実質において一体のものと認められ,Cにつき商法293条の7第2号に規定する拒絶事由がある場合は,相手方についても同一の拒絶事由があると認めるのが相当である。 イ会計帳簿等の閲覧謄写を求める株主が商法293条の7第2号に規定する競業会社の株主等であるという客観的事実があれば,原則として同号の拒絶事由に当たるが,当該株主が,会計帳簿等の閲覧謄写によって知り得る事実を自己の競業に利用し,又は他の競業者に利用させようとする主観的意図がないことを立証した場合は,同号の拒絶事由に当たらず,裁判所は閲覧謄写を許可できると解するのが相- 3 -当である。 A社及び抗告人とB社は,いずれも名古屋市内の青果物の仲卸業者であって業務内容も同種であるが,現在,A社及び抗告人は専ら野菜類を,B社は専ら果実類を取り扱い,近い将来において取扱商品が競業する可能性はないこと,したがって, ずれも名古屋市内の青果物の仲卸業者であって業務内容も同種であるが,現在,A社及び抗告人は専ら野菜類を,B社は専ら果実類を取り扱い,近い将来において取扱商品が競業する可能性はないこと,したがって,Cが,抗告人の本件会計帳簿等の閲覧謄写により得られた抗告人の取扱商品である野菜類についての営業秘密を,B社の果実類の商取引に利用することはあり得ないことなどからすると,Cには上記の主観的意図が存在しないことが立証されたといえるから,Cにつき同号に規定する事由はなく,したがって,相手方についても同号に規定する事由がない。 (4)原審の上記判示は是認することができないが,相手方には商法293条の8第2項において不許可事由とされている同法293条の7第2号に掲げる事由がないとして,本件許可申請の一部につきこれを許可した原審の判断は,結論において是認することができる。その理由は,次のとおりである。 ア商法293条の7第2号は,会計帳簿等の閲覧謄写を請求する株主が会社と競業をなす者であること,会社と競業をなす会社の社員,株主,取締役又は執行役であることなどを閲覧謄写請求に対する会社の拒絶事由として規定するところ,同号は,「会社ノ業務ノ運営若ハ株主共同ノ利益ヲ害スル為」などの主観的意図を要件とする同条1号と異なり,文言上,会計帳簿等の閲覧謄写によって知り得る事実を自己の競業に利用するためというような主観的意図の存在を要件としていない。 そして,一般に,上記のような主観的意図の立証は困難であること,株主が閲覧謄写請求をした時点において上記のような意図を有していなかったとしても,同条2号の規定が前提とする競業関係が存在する以上,閲覧謄写によって得られた情報が- 4 -将来において競業に利用される危険性は否定できないことなども勘案すれば,同号は,会社の会計帳 たとしても,同条2号の規定が前提とする競業関係が存在する以上,閲覧謄写によって得られた情報が- 4 -将来において競業に利用される危険性は否定できないことなども勘案すれば,同号は,会社の会計帳簿等の閲覧謄写を請求する株主が当該会社と競業をなす者であるなどの客観的事実が認められれば,会社は当該株主の具体的な意図を問わず一律にその閲覧謄写請求を拒絶できるとすることにより,会社に損害が及ぶ抽象的な危険を未然に防止しようとする趣旨の規定と解される。 したがって,会社の会計帳簿等の閲覧謄写請求をした株主につき同号に規定する拒絶事由があるというためには,当該株主が当該会社と競業をなす者であるなどの客観的事実が認められれば足り,当該株主に会計帳簿等の閲覧謄写によって知り得る情報を自己の競業に利用するなどの主観的意図があることを要しないと解するのが相当であり,同号に掲げる事由を不許可事由として規定する同法293条の8第2項についても,上記と同様に解すべきである。 イそこで,相手方について,商法293条の7第2号に掲げる客観的事実の有無を検討する。前記認定事実によれば,相手方は,B社の株主であり監査役でもあるCの母であって,Cと共に本件許可申請をしたものであるが,相手方とCは,いずれも抗告人の親会社であるA社の総株主の議決権の100分の3以上を有する株主として,それぞれ各別に抗告人の会計帳簿等の閲覧謄写請求をする資格を有するものである。したがって,同号に掲げる客観的事実の有無に関しては,相手方及びCの各許可申請につき各別にこれを判断すべきであって,相手方とCが親子であり同一の手続で本件会計帳簿等の閲覧謄写許可申請をしたということのみをもって,一方につき同号に掲げる不許可事由があれば当然に他方についても同一の不許可事由があるということはできない。そし が親子であり同一の手続で本件会計帳簿等の閲覧謄写許可申請をしたということのみをもって,一方につき同号に掲げる不許可事由があれば当然に他方についても同一の不許可事由があるということはできない。そして,前記(2)の事実によれば,相手方はB社の株主ではなく,B社の役員であるなどの事情もうかがわれないから,B社が抗告- 5 -人と競業をなす会社に当たるか否かを判断するまでもなく,相手方については同号に掲げる事由がないというべきである。 (5)以上によれば,相手方につき商法293条の7第2号に掲げる事由がないとして本件許可申請の一部につきこれを許可した原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用することができない。 その余の抗告理由について所論の点に関する原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官泉徳治裁判官甲斐中辰夫裁判官涌井紀夫裁判官宮川光治裁判官櫻井龍子)

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