平成23(行ス)35 仮の義務付申立についてした決定に対する抗告申立事件(原審・和歌山地方裁判所平成22年(行ク)第4号)

裁判年月日・裁判所
平成23年11月21日 大阪高等裁判所 その他
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判決文本文28,696 文字)

主文 1 原審相手方の抗告に基づき,原決定を取り消す。 2 原審申立人の本件申立てを却下する。 3 原審申立人の抗告を棄却する。 4 申立費用及び抗告費用は原審申立人の負担とする。 理由 第1 抗告の趣旨 1 原審申立人(1) 原決定を次のとおり変更する。 処分行政庁は,原審申立人に対し,原審申立人が平成23年5月11日にした介護給付費支給申請に対して,重度訪問介護の支給量を1か月651時間とする障害者自立支援法に基づく支給決定を仮にせよ。 (2) 原審相手方の抗告を棄却する。 (3) 抗告費用は原審相手方の負担とする。 2 原審相手方主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,原審申立人が,平成23年5月11日,重度訪問介護の支給量を1か月651時間とする障害者自立支援法(以下「法」ともいう。)に基づく介護給付費(平成23年度分)の支給申請をしたところ,処分行政庁は,同月31日付けで,1か月268時間の支給量とする支給決定(以下「原支給決定」という。)をしたので,原審相手方(和歌山市)を被告として,和歌山地方裁判所に対し,原支給決定が違法であるとしてその取消を求めるとともに,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条6項2号,37条の3第1項2号,3項2号に基づいて,処分行政庁は,原審申立人に対し,重度訪問介護の支給量を1か月651時間とする障害者自立支援法に基づく支給決定をせよと の義務付け訴訟を提起し(上記取消訴訟とこの義務付け訴訟を「本案訴訟」という。),更に,行訴法37条の5第1項に基づき,1か月268時間の支給量では不十分で,1か月651時間の支給量とする支給決定がされないことにより生ずる償うことのできない損害を 訴訟を「本案訴訟」という。),更に,行訴法37条の5第1項に基づき,1か月268時間の支給量では不十分で,1か月651時間の支給量とする支給決定がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり,かつ,本案について理由があるとみえるときに該当すると主張して,処分行政庁に仮に1か月651時間の支給量とする支給決定をすべき旨を命ずる申立てをした事案である。 2 原決定は,処分行政庁に,原決定の確定の日から平成24年5月末日までの間(ただし,同時点までに,本案事件(和歌山地方裁判所平成○年(行ウ)第○号行政処分義務付等請求事件のうち,原審申立人が平成23年5月11日にした介護給付費支給申請に対する支給決定の義務付けに係る部分)の判決が確定したときはそのときまで),原審申立人に対し,重度訪問介護の支給量を1か月511.5時間とする支給決定を仮にせよと命ずる限度で,原審申立人の申立てを認容し,その余の申立てを却下した。原審申立人が却下部分につき,原審相手方が原支給決定を超えて認容した部分について,それぞれ抗告した。 3 法令等の定め,争いのない事実等,主たる争点,当事者の主張は,原決定「理由」欄の第2の1ないし4(原決定2頁14行目から9頁17行目まで及び22頁から130頁まで)と同じであるから,これを引用する。 ただし,原決定「理由」欄第2の「3 主たる争点」(原決定9頁11行目から14行目まで)を次のとおり改める。 「3 争点(行訴法37条の5第1項)(1) 原支給決定の支給量である1か月268時間を超える支給量の支給決定がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるか。 (2) 原支給決定は,処分行政庁がその裁量の範囲を逸脱し又はこれを濫用し 8時間を超える支給量の支給決定がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるか。 (2) 原支給決定は,処分行政庁がその裁量の範囲を逸脱し又はこれを濫用したもので違法として取り消されるべきであり,かつ,原審申立人が 主張するように処分行政庁は1か月651時間の支給量又は少なくとも1か月268時間以上の支給量の支給決定をすべきことが,法的に義務付けられていることにつき,理由があるとみえるか。」 4 原審申立人の抗告理由及び主張は別紙①の1及び2のとおりであり,原審相手方の抗告理由及び主張は別紙②の1及び2のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 疎明資料及び審尋の結果によれば,次の事実が認められる。 (1) 原審申立人の疾患ア原審申立人は,平成18年6月ころ,○の診断を受け,同年12月ころ,寝たきり状態となり,平成19年3月ころには,嚥下等が困難な状態となり,その後,胃瘻を造設され,人工呼吸器を常時装着するようになった(甲総60,甲B21,22,Aの審尋結果,Bの審尋結果)。 イ ○は,脊髄の神経細胞の変性により発症する病気で,人口10万人に4人の割合で発病する。○と○が特徴的な疾患で,手足の脱力から始まり,次第に全身の○が進行し,運動神経が障害を受ける。○や○はみられない。○は,数年かけてゆっくり進行し,○,○,○,○が出現する。病気の進行を止める治療はなく,難病指定されている(甲総8,16,42)。人工呼吸器を装着した○患者の場合,人工呼吸器そのものの故障や人工呼吸器取扱い時の出血,細菌感染,喀痰による気道の閉塞などのトラブルが起こり得るが,そのようなトラブルが発生した場合,自発呼吸ができないため,途端に生命の危険が生じる。24時間の監視が必要であり, 呼吸器取扱い時の出血,細菌感染,喀痰による気道の閉塞などのトラブルが起こり得るが,そのようなトラブルが発生した場合,自発呼吸ができないため,途端に生命の危険が生じる。24時間の監視が必要であり,不測の事態が発生したときに10分以上放置されないことが望まれるとされている。また,自力では喀痰排出ができないため,気管内吸引が必要とされている。気管内吸引を行わないと気管内に喀痰が貯留し,窒息状態となる。気管内吸引1回に要する時間は数分程度であり,吸引の頻度は患者によるが,1日の吸引回数について1日に10回から50回(平均29 回)との研究結果もある(平成11年「人工呼吸装置を装着している○患者の訪問看護ガイドライン」)。気管内吸引は本来,看護師が行うのが最も望ましいが,在宅で人工呼吸の療養に当たっては,家族に気管内吸引を指導して日常的な吸引を行う必要があるとされている。また,ホームヘルパーによる気管内吸引行為についても,手技を獲得した者が,○患者に限って,家族との契約関係において行うことが許容されている(甲総42)。 (2) 原審申立人の障害程度区分原審申立人は,平成19年当時,処分行政庁から,自立支援法における障害程度区分を区分6(最重度)とする認定を受け,その後,平成22年5月18日,再び区分6とする認定を受け,更にその後,障害区分に変更はない(乙B3,甲B3の9頁)。 (3) 介護給付申請状況ア平成19年度の支給決定(ア) 原審申立人は,平成19年4月13日,処分行政庁に対し,自立支援法に基づく介護給付の支給量の希望量を1か月310時間として同給付の申請をした(乙B1,2)。 これに対し,処分行政庁は,同年5月29日付けで,重度訪問介護の支給量を1か月130時間とする支給決定 づく介護給付の支給量の希望量を1か月310時間として同給付の申請をした(乙B1,2)。 これに対し,処分行政庁は,同年5月29日付けで,重度訪問介護の支給量を1か月130時間とする支給決定をした(乙B3)。 (イ) 原審申立人は,同年8月30日,処分行政庁に対し,上記支給決定につき,支給量の希望量を620時間として,自立支援法に基づく支給決定の変更申請をした(甲B4の3頁,乙B1,11の2頁)。 これに対し,処分行政庁は,同年9月4日付けで,支給量を1か月46時間増量し,1か月176時間とする支給決定変更決定をした(甲B4の1頁,乙B11の1頁)。 (ウ) 原審申立人は,平成19年11月16日,処分行政庁に対し,更に 支給量の希望量を300時間として,自立支援法に基づく支給決定の変更申請をした(乙B1,4)。 処分行政庁は,相手方支給基準の「重度訪問介護支給決定基準」に従った算定では1か月176時間になったため,原審申立人の健康状態や希望する支給量等を勘案し,「非定型」(利用者の希望する支給決定量が,和歌山市が必要として勘案した支給決定案を著しく超過する場合)に該当するものとして決定することとした(甲B5)。 そこで,処分行政庁は,以下の案を作成し,本件審査会に諮問した(甲B5)。 ① 1か月248時間=8時間/日×31日② 夜間緊急分 1か月20時間③ 合計 1か月268時間(エ) 本件審査会は,平成20年1月8日,処分行政庁に対し,「上記の和歌山市の支給量どおり承認する(重度訪問介護268時間/月)」との諮問結果を決定し,その書面において,「討議内容」として,「現在,24時間体制でヘルパ 成20年1月8日,処分行政庁に対し,「上記の和歌山市の支給量どおり承認する(重度訪問介護268時間/月)」との諮問結果を決定し,その書面において,「討議内容」として,「現在,24時間体制でヘルパーの支援を受けている。支給時間以外の支援については,自費で対応している。和歌山市では,24時間の公的な支援はしておらず。以前同じ病状・介護力のケースについて一日8時間を公費算定とした。」との記載並びに「一日8時間の支給量については,呼吸器の状態(吸引回数等)等身体的な状態,家族の介護技術力の習得,経済力等について改善や悪化があった場合は変更となる」かどうかについて「現在,これ以上の時間を支給決定することは,難しいと思います。」「経済的な負担や介護者の負担を検討すれば,支給時間がもっとあればいいと思われるが,同じ状況のケースについて,一日8時間の算定で決定しているということであり,整合性を考え,支給決定案どおり承認する。今後,8時間の時間算定根拠について検討をお願いした い」等の記載を付した(甲B6)。 (オ) 処分行政庁は,平成20年1月8日,重度訪問介護の支給量268時間とする平成19年度の支給決定をした。 イ平成20年度の支給決定原審申立人は,平成20年5月2日,処分行政庁に対し,自立支援法に基づく支給量の希望量を268時間とする平成20年度の介護給付費支給の継続申請をした(乙B1,6)。 これに対し,処分行政庁は,同年6月3日付けで,支給量を1 か月268時間とする支給決定をした(乙B7)。 ウ平成21年度の支給決定原審申立人は,平成21年4月27日,処分行政庁に対し,支給量の希望量を268時間とする介護給付費支給の継続申請をした(乙B1,8)。 これ ウ平成21年度の支給決定原審申立人は,平成21年4月27日,処分行政庁に対し,支給量の希望量を268時間とする介護給付費支給の継続申請をした(乙B1,8)。 これに対し,処分行政庁は,同年5月19日付けで,支給量を1か月268時間とする支給決定をした(乙B9)。 エ平成22年度の支給決定(ア) 原審申立人は,平成22年4月19日,処分行政庁に対し,支給量の希望量を268時間とする介護給付費支給の継続申請をした(甲B3・3頁,乙B1)。 処分行政庁は,原審申立人の健康状態や希望する支給量等を勘案し,相手方支給基準において,「重度訪問介護支給決定基準」に従った算定では1か月206時間になったため,相手方支給基準における「非定型」に従って決定することとした(甲B3)。 そこで,処分行政庁は,平成22年5月12日,以下の案を作成し,本件審査会に諮問した上で,同月18日付けで,支給量を1か月268時間とする支給決定をした(甲B1,3,7)。 ① 主たる介護者である原審申立人の妻の負担の軽減として,就寝時間等相当分を8時間1か月248時間=8時間/日×31日② 原審申立人の妻の体調不良等やむを得ない場合の緊急時対応分1か月20時間③ 合計 1か月268時間(イ) 原審申立人の妻Bは,前記(ア)の支給決定の前に,福祉事務所の担当者が調査に訪れた際,同人に対し,夏に向けて,原審申立人の週1回の入浴介護を2回にしたいので,支給量を増やして欲しい旨要望していたところ,前記のとおり,支給決定は当初の希望量である月268時間であったので,原審申立人は,Bを通じて,平成22 原審申立人の週1回の入浴介護を2回にしたいので,支給量を増やして欲しい旨要望していたところ,前記のとおり,支給決定は当初の希望量である月268時間であったので,原審申立人は,Bを通じて,平成22年7月16日,支給量を651時間とするように求めて,前記支給決定につき,和歌山県知事に審査請求をした。 これに対し,同知事は,平成23年3月15日付けで,審査請求人の支援計画の見直しや地域生活のための支援のあり方について,審査請求人と処分行政庁の間で十分な議論がされていないと判断されるとして,処分行政庁及び請求人双方共に,再度,原審申立人の支援計画の見直しや地域生活のための支援のあり方について,主治医等の意見も聴取した上で,協議することを検討すべきであり,その上で,支給量が現行の268時間/月で不足するということであれば,支給量について再検討が必要と考えるなどとして,前記支給決定を取り消す旨の裁決をした(甲B1,11,Bの審尋結果)。 (ウ) 処分行政庁は,前記裁決を受けて,原審申立人が月651時間の支給量を希望しているものとして,平成23年5月11日,主治医の意見を聞き,再度,審査をし,本件審査会に諮問した。主治医は,原審申立人の病状につき,痰の吸引は頻繁に必要であること,人工呼吸器を付け ていても心肺機能は徐々に低下していくこと,人工呼吸器の管理は注意が常に必要であること等を述べていた。しかし,本件審査会は,平成23年5月31日,「諮問結果」として「審査会の意見を基に再検討し支給決定することとする。」と記載した書面を処分行政庁に送付し,具体的な支給量についての諮問結果を示さなかった。処分行政庁は,同日,再度,支給量を1か月268時間とする決定をした(甲B13,15ないし17)。 (エ) 原審 を処分行政庁に送付し,具体的な支給量についての諮問結果を示さなかった。処分行政庁は,同日,再度,支給量を1か月268時間とする決定をした(甲B13,15ないし17)。 (エ) 原審申立人は,平成23年6月24日,前記支給決定を不服として,和歌山県知事に審査請求をした(甲B19)。 オ平成23年度の支給決定(ア) 原審申立人は,平成23年5月11日,処分行政庁に対し,重度訪問介護の支給量を1 か月651時間以上とする介護給付費支給申請をした(甲B18の3頁)。 処分行政庁は,これに対し,同年5月31日付けで,支給量を1か月268時間とする原支給決定をした(甲B14,18の1頁)。 (イ) 原審申立人は,同年6月24日,原支給決定を不服として,和歌山県知事に対して審査請求をした(甲B19)。これに対する裁決はまだされていない。 (4) 原審申立人家族の経済状況等については,原決定の「理由」第3「当裁判所の判断」1前提事実の(2)ないし(4)(原決定12頁25行目から15頁19行目まで)のとおりであるから,これを引用する。 2 争点(1)(原支給決定の支給量である1か月268時間を超える支給量の支給決定がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるか。)について(1) 原審申立人は,現状,Cのヘルパーの1人が週5日,もう1人が週2日,24時間体制を組んでボランティアで居宅介護を行ってもらっている状 態であり,このようなボランティアによる状態はいつ崩壊し,原審申立人に24時間介護を提供できなくなるとも知れないものであり,適正な介護給付の支給によって早期に解消されなければ,償うことのできない損害が発生する蓋然性が高く,緊急の必要があ 態はいつ崩壊し,原審申立人に24時間介護を提供できなくなるとも知れないものであり,適正な介護給付の支給によって早期に解消されなければ,償うことのできない損害が発生する蓋然性が高く,緊急の必要があるなどと主張する。 (2) しかしながら,前記認定の原審申立人の病状と現在の状況を前提としても,本件疎明資料からは,C等の介護団体が,原審申立人の介護を行うにつき,ヘルパーとして誰をどのようなシフトで配置することを計画しているのか,また,そのような体制を無理なく組むことができるのか,具体的に必ずしも明らかとはなっておらず,介護の支給量を増加させることによって,原審申立人の前記のような介護状況が具体的にどのように改善されるのか,必ずしも明らかでないと言わざるを得ない。 また,前記認定事実によれば,原審申立人は,平成20年1月8日に介護給付の支給量を1か月268時間とする支給決定を得た後,同年5月及び平成21年4月は,いずれも支給量の現状維持(1か月268時間)を前提とする継続申請をし,変更申請を要望したことはなかったのであり,平成22年4月の申請の際には希望する支給量を1か月268時間とする継続申請をしていたのに,調査の際に,原審申立人は,夏に向けて入浴介護を週1回から2回に増加させることを申し出て,そのころ以降,1か月651時間の支給量を希望するようになったことが窺われるが,そのころに原審申立人の病状やその介護状況に大きな変化があったことまでは,疎明できていない。 このようにみてくると,原審申立人と同居する妻Bが,高齢であり,前記認定にかかる健康状態に不安があり,現状の介護支給量を前提として介護サービス会社のヘルパーの援助を受けながら,現状の介護状態を続けていることや,前記諸点,それに原審申立人の経済状態,Bの審尋 ,前記認定にかかる健康状態に不安があり,現状の介護支給量を前提として介護サービス会社のヘルパーの援助を受けながら,現状の介護状態を続けていることや,前記諸点,それに原審申立人の経済状態,Bの審尋結果に照らすと,原審申立人の病状からは支給量を増加させることが望ましいことは確かであるとしても,現時点で,原支給決定による1か月268時間の支給量を超え る支給量の決定がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があることまでの疎明はないものといわざるを得ない。 3 争点(2)(原支給決定は,処分行政庁がその裁量の範囲を逸脱し又はこれを濫用したもので違法として取り消されるべきであり,かつ,原審申立人が主張するように処分行政庁は1か月651時間の支給量又は少なくとも1か月268時間以上の支給量の支給決定をすべきことが,法的に義務付けられていることにつき,理由があるとみえるか。)について(1) 原審申立人は,1か月651時間の支給量を希望して障害者自立支援法に基づく平成23年度の介護給付費の支給申請をしたところ,処分行政庁が平成23年5月31日付けで,1か月268時間の支給量とする原支給決定をしたので,前記のとおり,原支給決定が違法であるとして,その取消しを求める取消訴訟を提起するとともに,処分行政庁に対し,重度訪問介護の支給量を1か月268時間を超えて1か月651時間の支給量とする支給決定をせよとの義務付け訴訟を提起し,それに伴って本件申立てがされたものである。 そして,行訴法37条の3に照らせば,本件申立てにおいて,行訴法37条の5第1項所定の「本案について理由があるとみえるとき」とは,前記の本件支給決定の取消訴訟及び義務付け訴訟の双方について理由があるとみえるときを意味し,特に義 せば,本件申立てにおいて,行訴法37条の5第1項所定の「本案について理由があるとみえるとき」とは,前記の本件支給決定の取消訴訟及び義務付け訴訟の双方について理由があるとみえるときを意味し,特に義務付け訴訟については,処分行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ,又は,処分行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え,若しくは濫用となると認められるときであることを要することになる。 (2) ところで,法21条1項は,市町村は,介護給付費の支給申請があったときは,政令で定めるところにより,市町村審査会が行う障害程度区分に関する審査及び判定の結果に基づき,障害程度区分の認定を行うものと し,法22条1項は,市町村は,障害程度区分,当該障害者等の介護を行う者の状況,障害者等の障害福祉サービスの利用に関する意向その他厚生労働省令で定める事項を勘案して支給要否決定を行うものとする旨規定し,同条4項は,市町村は,障害福祉サービスの種類ごとに月を単位として厚生労働省令で定める期間において介護給付費等を支給する障害福祉サービスの支給量を定めなければならない旨規定し,本件規則12条は,法22条1項の勘案事項として,当該申請に係る障害者等に関する介護給付費等の受給の状況や当該申請に係る障害者の置かれている環境その他を掲げている。 このように,法及び規則は,市町村が支給要否決定及び障害福祉サービスの種類ないしその支給量の決定をするについて,勘案事項を勘案すべきことを規定するほか,具体的な基準をおいていないし,これらの勘案事項の内容には,抽象的ないし概括的な内容も含まれている。更に,障害福祉サービスは,都道府県知事が指定する障害福祉サービス事業を行う者等(以下「指定 ほか,具体的な基準をおいていないし,これらの勘案事項の内容には,抽象的ないし概括的な内容も含まれている。更に,障害福祉サービスは,都道府県知事が指定する障害福祉サービス事業を行う者等(以下「指定障害福祉サービス事業者等」という。)が行うものであるが(法29条1項),指定障害福祉サービス事業者等の指定は,障害福祉サービス事業を行う者の申請により事業所ごとに行われるもので(法36条1項),指定障害福祉サービス事業者等の数,規模,分布等の障害福祉サービスの提供に係る人的,物的諸条件は,当然のことながら,全国一律ではなく,人口,年齢構成,経済状況その他の地域の具体的状況に応じて市町村ごとに異なり得るものであり,本件規則12条9号も,勘案事項の一つとして,当該申請に係る障害福祉サービスの提供体制の整備の状況を掲げているところである。 そして,厚生労働省は,障害者の介護給付に関し,平成19年3月23日障発第0323002号一部改正平成19年3月30日障発第0330014号厚生労働省社会・援護局障害保険福祉部長の都道府県知事,指定 都市市長,中核市市長宛の「介護給付費等の支給決定について」を定めた(甲総44,以下「本件通知」という。)。 本件通知は,支給決定の際の勘案すべき事項として,①障害程度区分又は障害の種類及び程度その他の心身の状況,②介護を行う者の状況,③介護給付費等の受給状況及び介護給付費等以外の保健医療サービス又は福祉サービス等の利用状況,④障害福祉サービスの利用に関する意向の具体的内容,⑤置かれている環境,⑥当該申請にかかる障害福祉サービスの提供体制の整備の状況等を掲げ,上記④については,当該障害者が受けようとするサービスの内容,利用目的等,具体的にどのような利用目的等があるのかを勘案して介護給付費 当該申請にかかる障害福祉サービスの提供体制の整備の状況等を掲げ,上記④については,当該障害者が受けようとするサービスの内容,利用目的等,具体的にどのような利用目的等があるのかを勘案して介護給付費等の支給決定を行うこと,その際,社会参加の意欲を含め,本人がどのような生活をしていきたいのかを十分考慮する必要があるとの指針を示した。 以上のような障害福祉サービスの支給に係る法及び規則の各規定等に照らすと,法は,障害者について障害福祉サービスを支給するかどうか,支給する場合にいかなる種類の障害福祉サービスをどれだけの支給量をもって支給するかという判断については,勘案事項に係る調査結果を踏まえた市町村の合理的な裁量に委ねられているものと解するのが相当であり,しかも,市町村がする支給要否決定並びに支給決定をする場合における障害福祉サービスの種類及び支給量の決定は,その判断の基礎となる事実に重大な誤認があり,あるいはその判断内容が社会通念に照らして明らかに合理性を欠くこと等により,その裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用にわたるものと認められるような場合に限って違法となるものというべきである。 本件通知において,市町村は,勘案事項を踏まえつつ,介護給付費等の支給決定を公平かつ適正に行うため,あらかじめ支給の要否や支給量の決定についての支給決定基準を定めておくことが適当であるとされており,前記のとおり,和歌山市においては相手方支給基準が定められているのも, 支給量の決定が市町村の裁量に委ねられ,支給決定する市町村によって支給量に差が生じ得ることを前提としているものと解される。 (3) 上記のような観点から,「本案について理由があるとみえるとき」について検討すると,本案の審理において更に具体的な事実関係等についての審 生じ得ることを前提としているものと解される。 (3) 上記のような観点から,「本案について理由があるとみえるとき」について検討すると,本案の審理において更に具体的な事実関係等についての審理を進めた上でなければ明確になり得ないが,前記の認定事実のほか,甲総53,Aの審尋結果及び審尋の全趣旨によれば,和歌山市においては,人工呼吸器を扱える介護事業所はC以外になく,近辺の海南市にもう1軒ある程度であること,人工呼吸器を装着した在宅○患者は和歌山市及びその近辺に原審申立人を含めて4名存命すること,いわゆる24時間介護保障の市町村が全くない県が全国で未だ10県もあることが認められることに照らすと,本件支給決定が支給量を月268時間としたことが,処分行政庁の裁量の範囲を超え,若しくはその濫用となって違法となるとの本案の判断が,現段階で「理由があるとみえる」ことにつき,疎明があったとまではいい難いというべきである。 4 以上によれば,本件申立ては,争点(1)の要件についても,更に争点(2)の要件についても,いずれについてもその要件について疎明がないものと言わざるを得ない。原審申立人の本件申立ては却下するのが相当であり,これと異なる原決定は相当ではないから,これを取り消し,原審申立人の本件申立てを却下することとし,原審申立人の抗告は理由がないからこれを棄却し,主文のとおり決定する。 平成23年11月21日 大阪高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官八木良一 裁判官比嘉一美 裁判官遠藤俊郎(原裁判等の表示) 主文 1 処分行政庁は,本決定の確定の日から平成24年5月末日まで(ただし,同時点までに,本案事件(当庁平成○年(行ウ)第○号行政処分 官遠藤俊郎(原裁判等の表示) 主文 1 処分行政庁は,本決定の確定の日から平成24年5月末日まで(ただし,同時点までに,本案事件(当庁平成○年(行ウ)第○号行政処分義務付等請求事件のうち,申立人が平成23年5月11日にした介護給付費支給申請に対する支給決定の義務付けに係る部分)の判決が確定したときはそのときまで)の間,申立人に対し,申立人が平成23年5月11日にした介護給付費支給申請に対して,重度訪問介護の支給量を1か月511.5時間とする障害者自立支援法に基づく支給決定を仮にせよ。 2 申立人のその余の申立てを却下する。 3 申立費用は相手方の負担とする。 理由 第1 申立ての趣旨処分行政庁は,申立人に対し,申立人が平成23年5月11日にした介護給付費支給申請に対して,重度訪問介護の支給量を1か月651時間とする障害者自立支援法に基づく支給決定を仮にせよ。 第2 事案の概要本件は,申立人が,平成23年5月11日,重度訪問介護の支給量を1か月651時間とする障害者自立支援法に基づく介護給付費(平成23年度分)の支給申請をしたのに対し,処分行政庁が,同月31日付けで,1か月268時間にとどめる支給決定をしたため,行政事件訴訟法37条の5第1項に基づき,処分行政庁に対し,1か月651時間とする支給決定をするよう仮に義務 付けることを求めた事案である。 1 法令等の定め(1) 障害者自立支援法(以下「自立支援法」という。)には,以下の定めがある。 アこの法律は,障害者基本法の基本的理念にのっとり,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律,児童福祉法その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって,障害者及び障害児がその有する能力及び 本的理念にのっとり,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律,児童福祉法その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって,障害者及び障害児がその有する能力及び適性に応じ,自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう,必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い,もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに,障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする(1条)。 イこの法律において「障害福祉サービス」とは,居宅介護,重度訪問介護,行動援護,療養介護,生活介護,児童デイサービス,短期入所,重度障害者等包括支援,共同生活介護,施設入所支援,自立訓練,就労移行支援,就労継続支援及び共同生活援助をいう(5条1項前段)。 ウこの法律において「重度訪問介護」とは,重度の肢体不自由者であって常時介護を要する障害者につき,居宅における入浴,排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜及び外出時における移動中の介護を総合的に供与することをいう(5条3項)。 エ自立支援給付は,当該障害の状態につき,介護保険法の規定による介護給付,健康保険法の規定による療養の給付その他の法令に基づく給付であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するものを受けることができるときは政令で定める限度において,当該政令で定める給付以外の給付であって国又は地方公共団体の負担において自立支援給付に相当するものが行われたときはその限度において,行わない(7条)。 オ介護給付費,特例介護給付費,訓練等給付費又は特例訓練等給付費(以下「介護給付費等」という。)の支給を受けようとする障害者又は障害児の保護者は,市町村の介護給付費等 わない(7条)。 オ介護給付費,特例介護給付費,訓練等給付費又は特例訓練等給付費(以下「介護給付費等」という。)の支給を受けようとする障害者又は障害児の保護者は,市町村の介護給付費等を支給する旨の決定(以下「支給決定」という。)を受けなければならない(19条1項)。 カ支給決定は,障害者又は障害児の保護者の居住地の市町村が行うものとする(19条2項本文)。 キ支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者は,厚生労働省令で定めるところにより,市町村に申請をしなければならない(20条1項)。 ク市町村は,20条1項の申請に係る障害者等の障害程度区分,当該障害者等の介護を行う者の状況,当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向その他の厚生労働省令で定める事項を勘案して介護給付費等の支給の要否の決定を行うものとする(22条1項)。 ケ市町村は,支給決定を行う場合には,障害福祉サービスの種類ごとに月を単位として厚生労働省令で定める期間において介護給付費等を支給する障害福祉サービスの量(以下「支給量」という。)を定めなければならない(22条4項)。 コ支給決定は,厚生労働省令で定める期間(以下「支給決定の有効期間」という。)内に限り,その効力を有する(23条)。 サ支給決定障害者等は,現に受けている支給決定に係る障害福祉サービスの種類,支給量その他の厚生労働省令で定める事項を変更する必要があるときは,厚生労働省令で定めるところにより,市町村に対し,当該支給決定の変更の申請をすることができる(24条1項)。 シ市町村は,前項の申請又は職権により,22条1項の厚生労働省令で定める事項を勘案し,支給決定障害者等につき,必要があると認めるとき は,支給決定の変更の ることができる(24条1項)。 シ市町村は,前項の申請又は職権により,22条1項の厚生労働省令で定める事項を勘案し,支給決定障害者等につき,必要があると認めるとき は,支給決定の変更の決定を行うことができる(24条2項本文)。 ス市町村は,支給決定障害者等が,支給決定の有効期間内において,都道府県知事が指定する障害福祉サービス事業を行う者若しくは障害者支援施設から当該指定に係る障害福祉サービス(以下「指定障害福祉サービス」という。)を受けたとき,又はのぞみの園から施設障害福祉サービスを受けたときは,厚生労働省令で定めるところにより,当該支給決定障害者等に対し,当該指定障害福祉サービス又は施設障害福祉サービス(支給量の範囲内のものに限る。)に要した費用(食事の提供に要する費用,居住若しくは滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用又は創作的活動若しくは生産活動に要する費用のうち厚生労働省令で定める費用を除く。)について,介護給付費又は訓練等給付費を支給する(29条1項)。 (2) 障害者自立支援法施行令には,以下の定めがある。 自立支援法7条の政令で定める給付は,次の表の上欄に掲げるものとし,同条の政令で定める限度は,同表の上欄に掲げる給付につき,それぞれ,同表の下欄に掲げる限度とする(2条)。 介護保険法の規定による介護給付(高額医療合算介護サービス費の支給を除く。),予防給付(高額医療合算介護予防サービス費の支給を除く。)及び市町村特別給付受けることができる給付(3) 障害者自立支援法施行規則(以下「本件規則」という。)には,以下の定めがある。 ア自立支援法5条3項に規定する厚生労働省令で定める便宜は,入浴,排せつ及び食事等の介護,調理,洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生 う。)には,以下の定めがある。 ア自立支援法5条3項に規定する厚生労働省令で定める便宜は,入浴,排せつ及び食事等の介護,調理,洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助とする(1条の3)。 イ自立支援法20条1項の規定に基づき支給決定の申請をしようとする障害者又は障害児の保護者は,次の各号に掲げる事項を記載した申請書を, 市町村に提出しなければならない(7条1項)。 ⑥ 当該申請に係る障害福祉サービスの具体的内容ウ自立支援法22条1項に規定する厚生労働省令で定める事項は,次の各号に掲げる事項とする(12条)。 ① 自立支援法20条1項の申請に係る障害者等の障害程度区分又は障害の種類及び程度その他の心身の状況② 当該申請に係る障害者等の介護を行う者の状況③ 当該申請に係る障害者等に関する介護給付費等の受給の状況④ 当該申請に係る障害児が現に児童福祉法42条に規定する知的障害児施設,同法43条に規定する知的障害児通園施設,同法43条の2に規定する盲ろうあ児施設,同法43条の3に規定する肢体不自由児施設又は同法43条の4に規定する重症心身障害児施設を利用している場合には,その利用の状況⑤ 当該申請に係る障害者が現に介護保険法の規定による保険給付に係る居宅サービスを利用している場合には,その利用の状況⑥ 当該申請に係る障害者等に関する保健医療サービス又は福祉サービス等(第3号から前号までに掲げるものに係るものを除く。)の利用の状況⑦ 当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向の具体的内容⑧ 当該申請に係る障害者等の置かれている環境⑨ 当該申請に係る障害福祉サービスの提供体制の整備の状況エ自立支援法22条4項に規定する 護者の障害福祉サービスの利用に関する意向の具体的内容⑧ 当該申請に係る障害者等の置かれている環境⑨ 当該申請に係る障害福祉サービスの提供体制の整備の状況エ自立支援法22条4項に規定する厚生労働省令で定める期間は,1月間とする(13条)。 オ自立支援法23条に規定する厚生労働省令で定める期間は,支給決定を行った日から当該日が属する月の末日までの期間と次の各号に掲げる障害 福祉サービスの種類の区分に応じ,当該各号に規定する期間を合算して得た期間とする(15条1項)。 ① 重度訪問介護 1月間から12月間までの範囲内で月を単位として市町村が定める期間(4) 自立支援法に基づく介護給付費支給決定については,相手方において,「和歌山市介護給付費における支給決定基準」(以下「相手方支給基準」という。)が定められており,重度訪問介護支給決定基準及び非定型の支給決定基準については,以下の定めがある(甲総3,乙総1)。 ア重度訪問介護支給決定基準(ア) 対象者障害程度区分4以上で,次の項目にいずれにも該当する者とする。 ① 二肢以上に麻痺等があること② 障害程度区分の認定調査項目のうち「歩行」「移乗」「排尿」「排便」のいずれも「できる」以外と認定されていること(イ) 基本時間の算出別紙1相手方支給基準1のとおり,障害程度区分と介護力の大きさをA・B・Cの3段階に分け,基本時間を算出する。 (ウ) 加算時間の算出別紙1相手方支給基準2のとおり,「住居の状況・世帯の状況に関すること」4項目,「本人の身体の状況に関すること」7項目で該当する項目におのおの評価点数を設ける。 別紙1相手方支給基準2で算出した合計点数の区分ごとに,別紙1相手方 住居の状況・世帯の状況に関すること」4項目,「本人の身体の状況に関すること」7項目で該当する項目におのおの評価点数を設ける。 別紙1相手方支給基準2で算出した合計点数の区分ごとに,別紙1相手方支給基準3のとおり加算割合を乗じて加算時間数を算出する。 (エ) 減算時間の算出別紙1相手方支給基準4のとおり,以下の項目について減算する。 ① ケアホーム入居者の経過的給付の場合,障害程度区分ごとに減算を 行う。 ② 日中活動系サービスを利用している場合,障害程度区分ごとに減算を行う。 ③ 介護保険対象者の場合,障害程度区分ごとに減算を行う。 イ非定型の支給決定基準利用者の希望する支給決定量が,和歌山市が必要として勘案した支給決定案を著しく超過する場合は,和歌山市介護給付等の支給に関する審査会(以下「本件審査会」という。)に諮り,意見を聞いたうえで支給決定を行うものとする。 2 争いのない事実等(1) 当事者等ア申立人(昭和▲年▲月▲日生)は,和歌山市内に居住する者であり,○(○)による○,○,○の障害を有しており,身体障害者等級1級の認定を受けている(甲B2)。 イ相手方は,普通地方公共団体であり,自立支援法に基づく介護給付費支給決定及び支給変更決定を行う権限を有している(同法19条1項,2項本文,24条1項,2項本文。上記1(1)D)。 そして,相手方においては,同法22条1項による介護給付費等の支給の要否の決定に関する和歌山市長に属する権限が,和歌山市福祉事務所長(処分行政庁)に委任されている(和歌山市福祉事務所長に対する事務委任規則2条)。 (2) 本件の経緯ア申立人は,平成22年9月16日,当裁判所に対し,相手方を被告として,①処分行政庁が平成22年5月1 )に委任されている(和歌山市福祉事務所長に対する事務委任規則2条)。 (2) 本件の経緯ア申立人は,平成22年9月16日,当裁判所に対し,相手方を被告として,①処分行政庁が平成22年5月18日付けでした重度訪問介護の支給量を1か月268時間とする介護給付費支給決定(平成22年度分)の取消し,②重度訪問介護の支給量を1か月651時間とする支給決定(平成 22年度分)の義務付け並びに③慰謝料100万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める訴えを提起した(当庁平成○年(行ウ)第○号行政処分義務付等請求事件)。 イ申立人は,平成23年4月14日,上記アの訴えにつき,①の訴えを取り下げた。 ウ申立人は,同年5月11日,処分行政庁に対し,重度訪問介護の支給量を1か月651時間以上とする自立支援法に基づく介護給付費の支給申請(平成23年度分)をした(甲B14,18・1頁)。 エこれに対し,処分行政庁は,同月31日付けで,重度訪問介護の支給量を1か月268時間とする支給決定(以下「本件決定」という。)をした(甲B14)。 オ申立人は,同年6月24日,本件決定を不服として,和歌山県知事に対して審査請求をした(甲B19)。 カ申立人は,同年9月21日,上記アの訴えにつき,④本件決定(平成23年度分)の取消し及び⑤処分行政庁が同年5月31日付けでした重度訪問介護の支給量を1か月268時間とする介護給付費支給決定(平成22年度分)の取消しを求める訴えを追加し,上記②の請求を,⑥申立人が平成22年4月19日にした支給申請(平成22年度分)に対する,重度訪問介護の支給量を1か月651時間とする支給決定の義務付け及び⑦申立人が平成23年5月11日にした支給申請(平成23年度分)に対する,重度訪問介護の支給量を1か月651時間と 度分)に対する,重度訪問介護の支給量を1か月651時間とする支給決定の義務付け及び⑦申立人が平成23年5月11日にした支給申請(平成23年度分)に対する,重度訪問介護の支給量を1か月651時間とする支給決定の義務付けを求める訴えに訂正する旨の訴えの変更をした(以下,当庁平成○年(行ウ)第○号行政処分義務付等請求事件のうち上記⑦の請求に係る部分を「本案事件」という。)。 3 主たる争点(1) 義務付けの訴えに係る処分がされないことにより生ずる償うことのでき ない損害を避けるため緊急の必要があるか(2) 本案について理由があるとみえるか 4 当事者の主張本件申立てに係る申立人の主張は,別紙2の1ないし6のとおりである。 これに対する相手方の主張は,別紙3の1ないし3のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 前提事実疎明資料及び審尋の結果によれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件申立てに至る経緯ア平成19年度の支給決定(ア) 申立人は,平成19年4月13日,処分行政庁に対し,自立支援法に基づく介護給付費支給申請をした(乙B2)。 これに対し,処分行政庁は,同年5月29日付けで,重度訪問介護の支給量を1か月130時間とする支給決定をした(乙B3)。 (イ) 申立人は,同年8月30日,処分行政庁に対し,上記(ア)の支給決定につき,自立支援法に基づく支給決定変更申請をした(甲B4・2頁,乙B11・2頁)。 これに対し,処分行政庁は,同年9月4日付けで,支給量を1か月46時間増量し,1か月176時間とする支給決定変更決定をした(甲B4・1頁,乙B11・1頁)。 (ウ) 申立人は,同年11月16日,処分行政庁に対し,さらに自立支援法に基づく支給決定変更申請をした(乙B4)。 相手方支給基準 とする支給決定変更決定をした(甲B4・1頁,乙B11・1頁)。 (ウ) 申立人は,同年11月16日,処分行政庁に対し,さらに自立支援法に基づく支給決定変更申請をした(乙B4)。 相手方支給基準における重度訪問介護支給決定基準(上記第2の1(4)ア)に従った算定では1か月176時間になったため,処分行政庁は,申立人の健康状態や希望する支給量等を勘案し,相手方支給基準における非定型(上記第2の1(4)イ)に従って決定することとした(甲 B5)。 そこで,処分行政庁は,以下の案を作成し,本件審査会に諮問した上で,平成20年1月8日付けで,支給量を1か月268時間とする支給決定をした(甲B5,6,乙B5)。 a 1か月248時間=8時間/日×31日b 夜間緊急分 1か月20時間c 合計 1か月268時間イ平成20年度の支給決定申立人は,平成20年5月2日,処分行政庁に対し,自立支援法に基づく介護給付費支給申請をした(乙B6)。 これに対し,処分行政庁は,同年6月3日付けで,支給量を1か月268時間とする支給決定をした(乙B7)。 ウ平成21年度の支給決定申立人は,平成21年4月27日,処分行政庁に対し,介護給付費支給申請をした(乙B8)。 これに対し,処分行政庁は,同年5月19日付けで,支給量を1か月268時間とする支給決定をした(乙B9)。 エ平成22年度の支給決定(ア) 申立人は,平成22年4月19日,処分行政庁に対し,介護給付費支給申請をした(甲B3・3頁)。 相手方支給基準における重度訪問介護支給決定基準(上記第2の1(4)ア)に従った算定では1か月206時間になったため,処分行政庁は,申立人の健康状態や希望する支給量等を勘案し,相手方支給基準における非定型(上記第2の1(4)イ)に 支給決定基準(上記第2の1(4)ア)に従った算定では1か月206時間になったため,処分行政庁は,申立人の健康状態や希望する支給量等を勘案し,相手方支給基準における非定型(上記第2の1(4)イ)に従って決定することとした(甲B3)。 そこで,処分行政庁は,以下の案を作成し,本件審査会に諮問した上 で,同年5月18日付けで,支給量を1か月268時間とする支給決定をした(甲B1,3,7)。 a 主たる介護者である申立人の妻の就寝時間等相当分1か月248時間=8時間/日×31日b 申立人の妻の体調不良等やむを得ない場合の緊急時対応分1か月20時間c 合計 1か月268時間(イ) 申立人は,同年7月16日,上記(ア)の支給決定を不服として,和歌山県知事に対して審査請求をしたところ,同知事は,平成23年3月15日付けで,上記(ア)の支給決定を取り消す旨の裁決をした(甲B11)。 (ウ) 上記(イ)を受けて,処分行政庁は,平成22年度の支給決定を再度行うこととなった。 相手方支給基準における重度訪問介護支給決定基準(上記第2の1(4)ア)に従った算定では1か月206時間になったため,処分行政庁は,申立人の健康状態や希望する支給量等を勘案し,相手方支給基準における非定型(上記第2の1(4)イ)に従って決定することとした(甲B17)。 そこで,処分行政庁は,以下の案を作成し,本件審査会に諮問した上で,同年5月31日付けで,支給量を1か月268時間とする支給決定をした(甲B13,15ないし17)。 a 主たる介護者である申立人の妻の就寝時間等相当分1か月248時間=8時間/日×31日b 申立人の妻の体調不良等やむを得ない場合の緊急時対応分1か月20時間c 合計 1か月268時間 (エ) 立人の妻の就寝時間等相当分1か月248時間=8時間/日×31日b 申立人の妻の体調不良等やむを得ない場合の緊急時対応分1か月20時間c 合計 1か月268時間 (エ) 申立人は,同年6月24日,上記(ウ)の支給決定を不服として,和歌山県知事に対して審査請求をした(甲B19)。 オ平成23年度の支給決定(ア) 申立人は,平成23年5月11日,処分行政庁に対し,重度訪問介護の支給量を1か月651時間以上とする介護給付費支給申請をした(甲B18・3頁)。 これに対し,処分行政庁は,同年5月31日付けで,支給量を1か月268時間とする本件決定をした(甲B14,18・1頁)。 (イ) 申立人は,同年6月24日,上記(ア)の支給決定を不服として,和歌山県知事に対して審査請求をした(甲B19)。これに対する裁決はまだされていない。 カ障害程度区分申立人は,平成19年度の支給決定の当時(上記ア(ア)),処分行政庁から,自立支援法における障害程度区分を区分6とする認定を受けていたところ(乙B3),平成22年5月18日,再び区分6とする認定を受けた(甲B3・9頁)。 (2) 申立人の身体状況等(甲総42,60,甲B8,15ないし17,21,22,Aの審尋結果,Bの審尋結果)ア現在に至るまでの状況(ア) 申立人は,平成18年6月ころ,○の診断を受けた。 (イ) 申立人は,同年12月ころ,寝たきりとなり,平成19年3月ころには,嚥下等が困難な状態となり,その後,胃瘻を造設され,人工呼吸器を常時装着するようになった。 イ現在の状況(ア) 申立人は,全身の筋肉が麻痺しており,身体の中で動かすことができるのは目と左足の小指だけで,それ以外の部分を動かすことができな い。そのため,ベッドの上で った。 イ現在の状況(ア) 申立人は,全身の筋肉が麻痺しており,身体の中で動かすことができるのは目と左足の小指だけで,それ以外の部分を動かすことができな い。そのため,ベッドの上で寝たきりの状態であり,車椅子に乗ることもできず,介助者が体位交換を行わなければならない。 (イ) 申立人は,自力で呼吸することができないので,人工呼吸器で呼吸を維持している。人工呼吸器やその周辺機器等に異常が発生した場合には,介助者が,手動の人工呼吸器で,直ちに申立人の呼吸を確保しなければならない。 (ウ) 申立人は,自力で食物を嚥下することができないので,胃瘻で流動食を摂取している。この流動食は,1日に3回摂取するが,気管や肺への逆流を防止するため,1回の摂取に約1時間かかり,その後,使用した管の洗浄を行わなければならない。 (エ) 申立人は,自力でたんやつばを嚥下することができず,口や喉にたんやつばが溜まりやすく,たんやつばが気管に入ると呼吸困難や肺炎を起こす可能性があるので,介助者が,頻繁に吸引しなければならない。 (オ) 申立人は,自力で排尿することができないので,おむつを装着し,下(カ)の方法で尿意を介助者に伝え,介助者があてがった尿瓶に排尿している。 また,申立人は,週に3回程度,敷いた紙おむつの上に排便している。 (カ) 申立人は,発声することができないが,左足の小指で,重度障害者用意思伝達装置「E」を操作し,意思表示をすることができる。ただし,この操作には時間がかかるので,迅速に伝えることは困難である。 また,申立人は,まばたきによって,他者からの問いかけに対し肯否の意思表示をすることができる。 (キ) 一方,申立人は,聴覚,触覚,知能に異常等はない。 (3) 平成23年度における申立人の介護の状況等(甲総6 ,まばたきによって,他者からの問いかけに対し肯否の意思表示をすることができる。 (キ) 一方,申立人は,聴覚,触覚,知能に異常等はない。 (3) 平成23年度における申立人の介護の状況等(甲総60,甲B10,1 5ないし18,21,22,Aの審尋結果,Bの審尋結果)ア申立人は,妻のB(昭和▲年▲月▲日生)及び母のF(大正▲年▲月▲日生)の3人で居住している(甲B18・5頁)。 Bは,○で,○の必要があると診断されている(甲B10)。また,○で,○もある(甲B10,21)。 Fは,平成22年4月,○で入院し,現在もG病院に入院している。 イ申立人とBの長男であるHが,和歌山市内で,妻及び3人の子と居住している。 ウ B及びH以外の申立人の親族等で,申立人の介護ができる人はいない。 エ申立人は,株式会社C(以下「C」という。)から,訪問介護員(ヘルパー)2名の派遣を受けている。 2名のヘルパーは,通常,1週間のうち5日間とその余の時間を交代で分担して,24時間,申立人の居宅介護を行っている。 オ申立人は,1か月に2回,○の訪問診療を受け,2週間に1回,目の乾燥や充血に関する訪問診療を受け,1か月に1回,歯の診察の訪問診療を受け,1週間に1回,口腔ケアに関する訪問診療を受けている。 また,申立人は,1週間に4ないし5回,訪問看護を受け,1週間に2回,訪問マッサージを受け,1週間に1回,訪問入浴のサービスを受けている。 (4) 申立人家族の経済状況等(甲B17,18,20,21,Aの審尋結果,Bの審尋結果)ア申立人は,2か月で約65万円の年金を受給し,Bは,2か月で約8万円の年金を受給しており,その他に特別障害者手当等による収入が1か月で約3万5000円ある。 イ申立人及びBが,ヘルパーを常に雇うに足り は,2か月で約65万円の年金を受給し,Bは,2か月で約8万円の年金を受給しており,その他に特別障害者手当等による収入が1か月で約3万5000円ある。 イ申立人及びBが,ヘルパーを常に雇うに足りる十分な資産を有すると認めるに足りる疎明資料はない。 ウ申立人は,介護保険に関して要介護5の認定を受けており,介護保険法に基づいて,訪問介護,夜間対応型訪問介護及び福祉用具貸与等について,介護給付を受けている。 エ申立人は,1日当たり8時間分の介護については自立支援法による介護給付費の支給として,1日当たり3.5時間分の介護については介護保険法による介護給付として,それぞれ公的給付を受けている。 Cのヘルパーによる介護のうち,1日当たり11.5時間分については,この公的給付によってまかなわれている。 オ申立人は,介護保険法に係る保険料及び自立支援法に係る利用者負担金以外に,自身の介護サービスに関する支出をしていない。 2 争点(1)(義務付けの訴えに係る処分がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるか)について(1) 行政事件訴訟法37条の5第1項所定の「義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるとき」とは,義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことによって被る損害が,原状回復ないし金銭賠償による填補が不能であるか,又は金銭賠償のみによって甘受させることが社会通念上著しく不合理な程度に達していて,そのような損害の発生が切迫しており,社会通念上,これを避けなければならない緊急の必要性が存在することをいうと解するのが相当である。 (2) 申立人は,介護保険法による介護給付を含む1日当たり24時間全ての介護サービスにつ ており,社会通念上,これを避けなければならない緊急の必要性が存在することをいうと解するのが相当である。 (2) 申立人は,介護保険法による介護給付を含む1日当たり24時間全ての介護サービスについて公的給付が受けられなければ,申立人に十分な介護サービスが提供されなくなるおそれがあるので,申立人の生命等に危険をもたらすという損害が発生し,その損害を避けなければならない緊急の必要性が存在する旨主張する。 確かに,上記1(3)のとおり,申立人の妻であるBが,申立人と同居して いることが認められる。このような事情を考慮すると,申立人が,1日当たり24時間全ての介護サービスについて,公的給付を受けなければならないほど,その生命,身体等に対する危険の発生が切迫しているとまではいえない。 しかし,上記1(2)のとおり,申立人が,体位変換,呼吸,食事,排たん,排泄等,生存に係るおよそ全ての要素について,他者による介護を必要とすること,自力で他者に自分の意思を伝える方法が極めて限定されていることに鑑みると,申立人は,ほぼ常時,介護者がその側にいて,見守りも含めた介護サービスを必要とする状態にあることが認められる。 しかも,上記1(3)のとおり認められるBの年齢(本件決定当時73歳)や健康状態等に鑑みると,1日当たり20時間分については,職業付添人による介護サービスがなければ,申立人が必要十分な介護サービスを受けることができず,その生命,身体等に対する重大な危険が発生する蓋然性が高いと考えられる。 そして,上記1(4)のとおり認められる申立人の経済状況等も考慮すると,1日当たり20時間分の介護サービスについて公的給付が与えられないことによって申立人が被る損害は,金銭賠償のみによって甘受させることが社会通念上著しく不合理な程度に達しており 済状況等も考慮すると,1日当たり20時間分の介護サービスについて公的給付が与えられないことによって申立人が被る損害は,金銭賠償のみによって甘受させることが社会通念上著しく不合理な程度に達しており,かつ,そのような損害の発生が切迫しており,社会通念上これを避けなければならない緊急の必要性が存在すると認められる。 ところで,上記1(4)エのとおり,申立人について,現在,1日当たり3. 5時間分の介護サービスが,介護保険法による介護給付によってまかなわれていることが認められる。 したがって,申立人について,重度訪問介護の支給量1日当たり16.5時間分,すなわち,1か月511.5時間については,介護給付費支給決定がされないことによって生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の 必要があると認められる。 (3) これに対し,相手方は,申立人が,現在,Cからヘルパーの派遣を受け,現実に24時間体制で申立人の居宅介護が行われているので,仮の義務付けに係る処分をするべき緊急の必要性はない旨主張する。 しかし,申立人は,Cに対し,公的給付によってまかなわれていない時間分の介護サービスについて,対価を支払っているわけではないところ(上記1(4)エオ),Cが,このような負担を甘受しなければならない義務があるわけではないし,上記1(2)のとおり申立人に必要と認められる介護の内容等も併せて考えると,民間企業にこのような負担を甘受させたままでは,実質的なヘルパーの確保が不可能になるおそれがある。 したがって,現在,申立人に対し現実に24時間体制の居宅介護が行われているからといって,上記(2)の限度で仮の義務付けに係る処分をするべき緊急の必要性を否定することは相当でない。 (4) なお,本決定確定日の前日までの介護給付費の支給は,既に経過した期 護が行われているからといって,上記(2)の限度で仮の義務付けに係る処分をするべき緊急の必要性を否定することは相当でない。 (4) なお,本決定確定日の前日までの介護給付費の支給は,既に経過した期間に要した介護サービスに対する支給であるから,それがされないことによる損害は,金銭賠償のみによって甘受させることが社会通念上著しく不合理であるとはいえない。したがって,償うことのできない損害を避けるための緊急の必要が認められるのは,本決定確定日からの処分の仮の義務付けに限られるというべきである。 3 争点(2)(本案について理由があるとみえるか)について(1) 本件決定が裁量権を逸脱,濫用したものかア市町村が介護給付費の支給量を決定するに当たっては,その市町村の財政を考慮することが必要不可欠であり,自立支援法22条1項に基づく本件規則12条には,勘案すべき9事項が抽象的に規定されているにすぎないことからすると(上記第2の1(1)ク,(3)ウ),各障害者に対していかなる種類の障害福祉サービスをいかなる支給量で行 うかは,市町村の合理的裁量に委ねられていると解するべきである。 したがって,市町村が各障害者に対してした介護給付費の支給決定の適否を裁判所が審査するに当たっては,当該決定が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で,その勘案要素の選択等の過程に合理性を欠くところがないかを検討し,処分行政庁に与えられた裁量権の範囲を超え,又は濫用した場合に限って違法になると判断するべきである。すなわち,その勘案の過程において,重視すべきでない要素を過度に評価し,考慮すべき要素を考慮しないこと等により,当該決定が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるような場合には,処分行政庁に与えられた裁量権の範囲を超え,又は濫用したも 要素を過度に評価し,考慮すべき要素を考慮しないこと等により,当該決定が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるような場合には,処分行政庁に与えられた裁量権の範囲を超え,又は濫用したものとして違法となると解するのが相当である。 イこれを本件についてみるに,上記1(1)ア(ウ),エ(ア)(ウ),オ(ア)の事実によれば,処分行政庁は,主たる介護者であるBの就寝時間等相当分として1日8時間(1か月248時間)を想定し,Bが起床中は,原則として,Bが1人で申立人に対する全ての介護サービスを行うべきという前提で,本件決定を行ったことが認められる。 しかし,上記2(2)のとおり,申立人は,ほぼ常時,介護者がその側にいて,見守りも含めた介護サービスを必要とする状態にあるところ,Bの年齢(本件決定当時73歳)や健康状態等に鑑みると,介護保険法による1日3.5時間分の介護給付があること(上記1(4)エ)や,Bの体調不良等やむを得ない場合の緊急時対応分として1か月20時間を想定していたと認められること(上記1(1)ア(ウ),エ(ア)(ウ),オ(ア))を考慮しても,処分行政庁がとる上記前提は,相当性を欠くと言わざるを得ない。 したがって,本件決定は,Bが申立人の介護を行っているという要素を過度に評価する一方で,申立人及びBの心身の状況等の考慮すべき要素を十分に考慮しておらず,社会通念に照らし著しく妥当性を欠 いたものというべきである。よって,本件決定は,処分行政庁に与えられた裁量権を逸脱濫用した違法な処分と一応認められる。 (2) 義務付けの請求について理由があるとみえるか上記1のとおり認められる申立人の希望する支給量,障害程度区分,申立人の身体状況等,申立人の介護の状況等,介護保険法による介護給付等に鑑みれば,少なくとも,緊 けの請求について理由があるとみえるか上記1のとおり認められる申立人の希望する支給量,障害程度区分,申立人の身体状況等,申立人の介護の状況等,介護保険法による介護給付等に鑑みれば,少なくとも,緊急の必要性が認められる重度訪問介護の支給量を1か月511.5時間とする介護給付費支給決定の限度では,処分行政庁において,その処分をしないことが裁量権の逸脱濫用になると認められる。よって,上記の処分の限度では,義務付けの請求について理由があるとみえると認められる。 4 他の要件について(1) 本案事件が適法に提起されていること上記第2の2(2)アカのとおり,申立人は,平成22年9月16日,訴えを提起し,平成23年9月21日,本件決定の取消し及び平成23年度の重度訪問介護の支給量を651時間とする介護給付費支給決定の義務付けを求める訴えを追加する旨の訴えの変更をしたこと(本案事件の係属)が認められる。 なお,自立支援法に基づく介護給付費支給決定の取消しを求める訴えは,当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ提起することができないこととされている(行政事件訴訟法8条1項ただし書き,自立支援法105条,97条1項)。しかし,上記第2の2(2)オのとおり,申立人は,同年6月24日,本件決定を不服として,和歌山県知事に対して審査請求をしたところ,同審査請求があった日から既に3か月が経過しているので,裁決を経ないで本件決定の取消しの訴えを提起することができる(行政事件訴訟法8条2項1号)。 よって,本案事件は適法に提起されていると認められる。 (2) 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと本件において,仮の義務付けが認められたとしても,第三者の権利等を侵害,制約することになるわけではないし,相手方の支出の増 れる。 (2) 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと本件において,仮の義務付けが認められたとしても,第三者の権利等を侵害,制約することになるわけではないし,相手方の支出の増加も多額に上るわけではない。したがって,仮の義務付けを認めることによって,公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとは認められない。 5 仮に義務付ける決定の有効期間本件決定の有効期間は,平成23年6月1日から平成24年5月31日までとされている(甲B14)。 この点,自立支援法に基づく重度訪問介護の介護給付費支給決定は,支給決定を行った日から当該日が属する月の末日までの期間と1月間から12月間までの範囲内で月を単位として市町村が定める期間を合算して得た期間内に限り,効力を有するとされている(自立支援法23条,本件規則15条1項1号。上記第2の1(1)コ,(3)オ)。 したがって,仮に義務付ける支給決定の有効期間も,平成24年5月31日までとするのが相当である。 ただし,本案事件の判決が確定すれば,仮に義務付ける支給決定の効力を存続させる意味はないから,平成24年5月31日までに本案事件の判決が確定したときは,仮に義務付ける支給決定の効力は当該確定時までにとどめるのが相当である。 第4 結論以上によれば,本件申立ては,処分行政庁に対し,本決定の確定の日から平成24年5月末日まで(ただし,同時点までに,本案事件の判決が確定したときはそのときまで)の間,申立人が平成23年5月11日にした介護給付費支給申請に対して,重度訪問介護の支給量を1か月511.5時間とする障害者自立支援法に基づく介護給付費支給決定の仮の義務付けを求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを却下すべきである。 よって,主文の か月511.5時間とする障害者自立支援法に基づく介護給付費支給決定の仮の義務付けを求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを却下すべきである。 よって,主文のとおり決定する。 平成23年9月26日和歌山地方裁判所第2民事部裁判長裁判官髙橋善久 裁判官永野公規 裁判官田中一孝 別紙1相手方支給基準 基本時間数介護力介護力A介護力B介護力C(当該障害者のみに(現に介護を行って(現に介護を行ってより構成される世帯いる者があり,家事いる者があり,介護の場合又は,同居家の負担は一定期待で力A,Bのいずれに族が居るが,何らかきるが,何らかの理も該当しない場合)の理由により同居者由により介護にあたからの介護だけでなる時間や能力が大きく家事についても負く制限される場合)担が望めない場合)障害程度区分区分6 区分5 区分4 加算時間の評価点数加算項目加算点数 (平成20年3月まで)住居内の状況として車いすによる移動が不可能であり,常に抱えての移動が必要となる場合(車いす利用者に限る)(平成20年4月から)住居内の状況として車いすによる移動が困難な場合住居の 状況・住居の物理的な環境から,入浴に非常に手間がかかる場合(ただしケアプラ世帯のンに入浴が含まれる場合)状況 長期間の入所・入院状態から退所・退院するにあたり,一時的に多くの支給量が必要な場合(3ヶ月ごとに状況確認し,最大6ヶ月間) 家族等との同居から単身生活を始めたばかりで生活に慣れるまで一時的に多くの支給量が必要な場合(3ヶ月ごとに状況確認し, ,一時的に多くの支給量が必要な場合(3ヶ月ごとに状況確認し,最大6ヶ月間) 家族等との同居から単身生活を始めたばかりで生活に慣れるまで一時的に多くの支給量が必要な場合(3ヶ月ごとに状況確認し,最大6ヶ月間) 物理的に時間を要するコミュニケーション支援が必要な場合 排泄介護・水分補給・体位変換等のため,夜間介護が必要な場合 医療的な介護が常時必要 本人の治療の必要な疾患があり,医師より健康管理が必要な場合身体の 状況に嚥下が困難であり,食事に時間を要する場合(ただしケアプランに食事介護関するが含まれる場合)こと 嚥下が困難等のため,きざみ食やミキサー食等が必要であり,物理的に調理行為に時間を要する場合(ただしケアプランに調理が含まれる場合) 体重・体格・麻痺等の状況から移乗等に際して1人での対応が困難であり,2人介護の必要な場合(ただしケアプランに2人介護が含まれている場合)加算項目の合計評価点点 加算時間数基本時間数加算時間数加算評価点数の加算割合合計点数平成年月まで平成年月から □1点~2点×10%×15%□3点~4点×15%×20%□5点~6点×20%×25%□7点~8点×25%×30%□9点~10点×30%×35%□11点~12点×40%□13点~14点×35%×45%□15点~×50%合計加算時間数時間※端数は切り上げ 減算時間数減算項目減算時間数□ケアホーム入居者の経過的給付で区分6の場合 □ケアホーム入居者の経過的給付で区分5の場合 □ケアホーム入居者の経過的給付で区分4の場合 □区分6で日中活動系サービスを受けている場合 □区分5で日中活 場合 ケアホーム入居者の経過的給付で区分5の場合 ケアホーム入居者の経過的給付で区分4の場合 区分6で日中活動系サービスを受けている場合 区分5で日中活動系サービスを受けている場合 区分4で日中活動系サービスを受けている場合 区分6で介護保険対象者 区分5で介護保険対象者 区分4で介護保険対象者 合計減算時間数時間

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