平成28(ワ)10643 販売差し止め等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年10月20日 東京地方裁判所
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判決文本文7,027 文字)

- 1 -平成28年10月20日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成28年(ワ)第10643号販売差し止め等請求事件口頭弁論終結日平成28年9月6日判決 原告株式会社ミツムラ 同訴訟代理人弁護士高橋輝美 被告株式会社ジュエリー・ミウラ 同訴訟代理人弁護士大西英敏 大西雄太主文 1 被告は,原告に対し,別紙商標権目録記載の各商標を付した宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,キーホルダー,宝石箱,記念カップ,記念たて,身飾品,貴金属製靴飾り並びに時計を販売,頒布してはならない。 2 被告は,原告に対し,被告の占有する上記各物品を廃棄せよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求主文第1項及び第2項と同旨第2 事案の概要 - 2 -本件は,別紙商標権目録記載の各商標(以下「本件商標」と総称する。)につき商標権を有する原告が,被告による「NEONERO」なる文字を含む標章(別紙被告標章目録記載のものを含む。以下「被告標章」という。)が付された身飾品類(以下「被告商品」という。)の販売及び頒布が上記各商標権を侵害する旨主張して,被告に対し,商標法36条1項,2項に基づき被告商品の販売及び頒布の差止め並びに廃棄を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,書証の枝番の記載は省略する。以下同じ。)⑴ 当事者原告は貴金属製品の製造及び卸売業を営む会社であり,被告は宝石・貴金属類の輸入,加工及び販売業を営む会社である。 ⑵ 原 られる事実。なお,書証の枝番の記載は省略する。以下同じ。)⑴ 当事者原告は貴金属製品の製造及び卸売業を営む会社であり,被告は宝石・貴金属類の輸入,加工及び販売業を営む会社である。 ⑵ 原告の商標権原告は,別紙商標権目録記載の各商標権(以下「本件商標権」と総称する。)を有しており,本件商標を付した身飾品類(以下「原告商品」という。)を販売している。(甲25,26)⑶ 被告の行為被告は,本件商標権の登録後,被告商品をイタリアのP.V.Z.srl社(以下「PVZ社」という。)から輸入し,販売している。 2 争点被告は,被告による被告商品の販売及び頒布が本件商標権と同一又は類似の商標の使用に当たることを争わず,次の3点を理由に本件商標権の侵害に当たらないと主張している。 ⑴ 先使用による商標の使用をする権利の有無⑵ 並行輸入による商標権侵害の違法性阻却事由該当性⑶ 商標権の行使の権利濫用該当性 3 争点についての当事者の主張 - 3 -⑴ 争点⑴(先使用による商標の使用をする権利の有無)について(被告の主張)被告標章は被告商品の製造元であるPVZ社の標章であるところ,本件商標権の出願日である平成26年10月15日より前から被告標章が付されたPVZ社の製造に係る商品が日本国内で多数流通していた上,被告も,PVZ社の承諾を得て被告標章を付した被告商品を販売し,ウェブサイト上に写真を掲載するなどしていた。その結果,被告標章は被告のものとして同日時点で周知となっていたから,被告は先使用による商標の使用をする権利(商標法32条1項前段)を有する。 (原告の主張)被告の主張する上記商品が多数流通していたこと,被告がPVZ社から承諾を得ていたことはない。その上,被告の主張する各事実から被告標章が る権利(商標法32条1項前段)を有する。 (原告の主張)被告の主張する上記商品が多数流通していたこと,被告がPVZ社から承諾を得ていたことはない。その上,被告の主張する各事実から被告標章が周知性を有するとはいえない。 ⑵ 争点⑵(並行輸入による商標権侵害の違法性阻却事由該当性)について(被告の主張)被告は,被告標章のイタリアにおける商標権者であるPVZ社によって適法に付された被告商品を輸入して販売しているものである。また,原告は,PVZ社から日本国内において排他的な代理店とされており,同社と法律的又は経済的に同一人と同視し得る。加えて,被告商品は被告がPVZ社に製造を依頼しているものであるから,原告は直接的又は間接的に被告商品の品質管理を行い得る。したがって,被告商品の販売及び頒布は,違法性が阻却され,本件商標権の侵害に当たらない。 原告は,原告商品は原告独自の仕様によるものであるから被告商品と同一でないと主張するが,①原告商品がPVZ社のブランドコンセプトと異なるものでなく,原告もイタリアのジュエリーブランドであると説明しており,需要者が相違点を感得できないこと,②身飾品業界においてチェーン,引き - 4 -輪,金具等の部品の配置を販売者が工夫することが通常であり,そうした工夫があるから独自のものとはいい難いことからすれば,原告商品と被告商品の同一性が損なわれるものでなく,原告の主張は失当である。 (原告の主張)原告は,日本国内向けに鎖のデザインを行ってPVZ社に製作を依頼し,又は同社が製作したペンダントその他の部品に引き輪等の部品を付するなどの加工をして原告独自の商品としており,原告商品と被告商品は異なるものである。したがって,被告商品に付された標章がPVZ社によって適法に付されていたとしても, の他の部品に引き輪等の部品を付するなどの加工をして原告独自の商品としており,原告商品と被告商品は異なるものである。したがって,被告商品に付された標章がPVZ社によって適法に付されていたとしても,本件商標の出所表示機能及び品質保証機能が害されるというべきであるし,被告商品の品質につき原告が直接的又は間接的に管理を行い得るとはいえない。 加えて,原告はPVZ社と別法人であり,役員や資金的な提携関係もないから,法律的に又は経済的に同一人と同視されるべきでない。 ⑶ 争点⑶(商標権の行使の権利濫用該当性)について(被告の主張)ア日本国内においてPVZ社の排他的な代理店となり,本件商標権を有するに至った原告は,PVZ社と実質的に同一の立場にあるというべきところ,被告は本件商標権の出願前から被告標章の使用につきPVZ社から許諾を得ていたのである。そうした立場にある被告の行為を本件商標権に基づき差し止めることは,客観的に公正な競争秩序を乱すものであって,権利の濫用であるから,許されない。 イ原告が,PVZ社の日本国内における排他的な代理店であることを理由に,同社と共謀して本件商標権に基づき被告の商品販売等の差止めを求めることは,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)2条5項所定の私的独占並びに不公正な取引方法(昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号)12項又は14項所定 - 5 -の行為に各該当するものであり,かつ,同法21条所定の権利の行使に該当しないから,権利の濫用であって,許されない。 (原告の主張)争う。仮に原告による差止請求が独占禁止法2条5項所定の私的独占等に該当するとしても,本件商標権に基づく正当なものであって,同法21条所定の権利の行使に該当するから,同法が 。 (原告の主張)争う。仮に原告による差止請求が独占禁止法2条5項所定の私的独占等に該当するとしても,本件商標権に基づく正当なものであって,同法21条所定の権利の行使に該当するから,同法が適用されないことは明らかである。 第3 当裁判所の判断 1 争点⑴(先使用による商標の使用をする権利の有無)について⑴ 被告は,本件商標権の出願前から被告標章が付されたPVZ社の商品が日本国内で多数流通していたことなどから,被告標章は被告のものとして周知であったと主張する。 ⑵ そこで判断するに,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,①京都府内の宝石等販売店が,平成26年6月頃,ウェブサイト上に被告標章と同一の標章を掲載してネックレスを販売している旨紹介したこと(乙1),②被告が本件商標権の出願前から被告商品を販売していたこと(乙7~9),以上の事実が認められる。しかし,上記事実によっても,本件商標権の出願前に被告商品等が販売されており,需要者がこれを認知し得たというにすぎず,その販売数量その他被告標章の周知性を基礎付ける事情の有無は不明といわざるを得ないから,被告標章が需要者に広く知られていたとは認められない。 ⑶ したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告に先使用による商標の使用をする権利(商標法32条1項前段)があるということはできない。 2 争点⑵(並行輸入による商標権侵害の違法性阻却事由該当性)について⑴ 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告は,平成25年3月頃から,PVZ社に対し,同社が「PIZZOD’ORONEONERO」又は「NEONERO」のブランド(以 - 6 -下「本件ブランド」という。)で製造販売している身飾品の部品の型番,材質及び色,部品の組合せ方その他の仕 IZZOD’ORONEONERO」又は「NEONERO」のブランド(以 - 6 -下「本件ブランド」という。)で製造販売している身飾品の部品の型番,材質及び色,部品の組合せ方その他の仕様を指定して身飾品の製作を依頼してこれを輸入し,又はペンダントのみの製作を依頼してこれを輸入した後に金具やネックレスを付するなどした上,プライスタグを付け,独自のケースに入れた原告商品を販売していた。原告が本件ブランド名で販売する商品のうち,部品の組合せその他を原告独自の仕様としたものは約85%である。(甲17~19,21,27,28,44)イ被告は,平成26年2月頃から,PVZ社に対し,本件ブランド名で製造販売している身飾品の部品の型番のほか,材質,色,ネックレスの長さその他の仕様を指定して被告商品の製作を依頼しており,別紙被告標章目録記載の標章のうち文字直下の2か所の曲線を結んで1本の線としたものを付したプライスタグを同社からの承諾を得て製作した上で,同社から輸入した身飾品にこれを付して販売していた。(甲20,乙2,4,6,19)ウ原告は,同年8月20日,PVZ社に対し,代理店契約の締結を打診した。両者間で電子メール等による協議が行われた結果,同年9月30日,工賃を1グラム当たり5ユーロから6ユーロに値上げする一方でPVZ社が日本国内においては原告に対してのみ身飾品の製造販売を行う旨の合意をした。(甲38)エ PVZ社は,同年10月2日,原告に対し,PVZ社が被告から同年7月に受けた注文を取り消すべきか,原告を通じて注文するように被告に対して依頼すべきかを照会したところ,原告から後者の意向が表明されたので,同年10月8日,被告に対し,本件ブランドの身飾品につき日本市場において原告を排他的な代理店とする契約を締結したこと, 被告に対して依頼すべきかを照会したところ,原告から後者の意向が表明されたので,同年10月8日,被告に対し,本件ブランドの身飾品につき日本市場において原告を排他的な代理店とする契約を締結したこと,既に受けた注文は原告を通じて受け付けることとすれば特別価格で商品を提供すること,以上を伝えた。その後,被告から直接注文を求める意向がPVZ社に伝え - 7 -られたことから,原告及びPVZ社は,協議の上,被告からの上記注文に限り直接受け付ける方針を決定した。(甲38,乙14)オ原告は,PVZ社との間で本件商標の商標登録につき協議を開始し,第三者による並行輸入を阻止するために原告のみが出願人となることの必要性を説明した。そして,PVZ社の承諾を得た上で,同月15日にその商標登録出願をした。(甲39)カ被告は,上記エの注文の後,平成27年12月まで,香港の業者から本件ブランドの商品を輸入し,販売しており,輸入の前に上記業者に対して被告の要望を伝えてこれを商品の仕様に反映させていた。(乙4)⑵ 被告は,被告商品をPVZ社から輸入して販売する行為がいわゆる並行輸入による商標権侵害の違法性阻却事由に該当すると主張する。 そこで判断するに,上記⑴ア,イ及びカの事実関係によれば,①本件商標の商標権者である原告の販売する商品の多くは原告の定めた仕様によっている上,PVZ社製以外の部品を組み合わせた商品もあるから,原告商品のほとんどはPVZ社が本件ブランド名で原告以外に販売する商品とは異なること,②被告が販売する商品には被告独自の仕様が含まれており,その仕様は,原告の仕様とは異なるもので,かつ,原告を通さずに被告からPVZ社に伝えられること,以上のことが明らかである。また,身飾品という商品の性質上,部品の組合せ方,用いられる金具等が異な り,その仕様は,原告の仕様とは異なるもので,かつ,原告を通さずに被告からPVZ社に伝えられること,以上のことが明らかである。また,身飾品という商品の性質上,部品の組合せ方,用いられる金具等が異なるときは品質が同一であるとはいえないと解される。そうすると,被告商品の品質管理に原告が直接的又は間接的に関与する余地はなく,被告商品と原告商品の品質に差異がないということはできない。したがって,被告による販売行為がいわゆる真正商品の並行輸入として商標権侵害の実質的な違法性を欠くとは認められない。 これに対し,被告は,①原告商品はPVZ社のブランドコンセプトと異なるものでなく,需要者が被告商品との相違点を感得できないこと,②身飾品業界において部品の配置等を販売者が工夫するのが通常であることからすれ - 8 -ば,原告商品と被告商品の同一性が損なわれるものでない旨主張する。そこで判断するに,上記①の点については,仮にブランドコンセプトが共通するとしても,原告商品と被告商品の品質が同一であるといえないことは前記のとおりである。また,上記②の販売者各自により工夫が行われるとの点は,むしろ各商品の品質の同一性を否定する事情と解される。したがって,被告の主張はいずれも失当である。 3 争点⑶(商標権の行使の権利濫用該当性)について⑴ 被告は,①PVZ社と実質的に同一の立場にある原告が被告標章の使用につきPVZ社から許諾を得ていた被告の行為を差し止めることは客観的に公正な競争秩序を乱すものであること,②原告による差止請求が独占禁止法2条5項等に該当することから,原告の本件商標権の行使が権利の濫用に該当すると主張する。 ⑵ そこで判断するに,上記①の点については,前記2⑴イ~カの事実関係によれば,原告とPVZ社は日本における本件ブランド名の身 ることから,原告の本件商標権の行使が権利の濫用に該当すると主張する。 ⑵ そこで判断するに,上記①の点については,前記2⑴イ~カの事実関係によれば,原告とPVZ社は日本における本件ブランド名の身飾品の販売につき原告を独占的な取引先とする旨の合意をし,原告はPVZ社の承諾を得て本件商標の商標権者となったというのであって,原告において被告が先にPVZ社から承諾を得ていたと知りながら殊更に被告に損害を与える意図をもって本件商標権を取得したなどといった事情はうかがわれない。 また,上記②の点については,以上に説示したところによれば,仮に原告の被告に対する本件商標権の行使が独占禁止法2条5項等に該当し得るとしても,同法21条により同法の適用が排除されるというべきである。 ⑶ したがって,原告の被告に対する本件商標権の行使が権利濫用に当たるということはできない。 4 結論以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容し,主文第1項に関する仮執行免脱の宣言及び同第2項に関する仮執行の宣言はいずれも相当でな - 9 -いからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官長谷川 浩 二 裁判官萩原孝基 裁判官林 雅子 - 10 -(別紙)商標権目録 1 登録番号第5799743号商標NEONERO(標準文字)指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分第14類宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,キーホルダー,宝石箱,記念カップ,記念たて,身飾品,貴金属製靴飾り,時計出願日平成26年10月15日(商願2014-086695)登録日平成27年10月16日 2 登録番号 ,キーホルダー,宝石箱,記念カップ,記念たて,身飾品,貴金属製靴飾り,時計出願日平成26年10月15日(商願2014-086695)登録日平成27年10月16日 2 登録番号第5799744号商標 指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分第14類宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,キーホルダー,宝石箱,記念カップ,記念たて,身飾品,貴金属製靴飾り,時計出願日平成26年10月15日(商願2014-086696)登録日平成27年10月16日 - 11 -(別紙)被告標章目録

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