平成27(ワ)591 地位確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年3月6日 大阪地方裁判所
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判決文本文31,108 文字)

主文 1 原告が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 2 被告は,原告に対し,平成27年4月以降,本判決確定の日まで,毎月25日限り,17万7125円及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告に対し,47万5517円及びこれに対する平成28年2月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求を棄却する。 5 訴訟費用はこれを5分し,その2を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 6 この判決は,第2項及び第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項と同旨 2 被告は,原告に対し,平成27年4月以降,本判決確定の日まで,毎月25日限り,24万7284円及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告に対し,63万6805円及びこれに対する平成28年2月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告に対し,平成29年以降,本判決確定まで,毎年2月25日限り,47万0759円及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 5 被告は,原告に対し,平成27年以降,本判決確定まで,毎年6月25日限り,60万7929円及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 本件事案の概要(1) 原告は,被告(被告と合併する前のA航空を含む。以下,同じ。)との間で,平成17年10月16日,業務を航空機の客室乗務員(以下では,「乗務員」と表記するが,全て客室乗務員を 本件事案の概要(1) 原告は,被告(被告と合併する前のA航空を含む。以下,同じ。)との間で,平成17年10月16日,業務を航空機の客室乗務員(以下では,「乗務員」と表記するが,全て客室乗務員を指す。)とする期間の定めのある労働契約を締結し,これを約1年ごとに継続的に更新してきたところ,平成26年12月5日付けで被告から解雇され,平成27年3月31日以降の契約更新も拒否された。 (2) 本件は,原告が,同解雇が無効であり,また労働契約法(以下「労契法」という。)19条により労働契約は更新したものとみなされると主張して,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,平成27年4月以降の未払賃金及び賞与等の支払を求める事案である。 2 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告原告は,A航空との間で,平成17年10月16日,雇用期間を同日から平成18年4月15日まで,職名を「IFSR」として,労働契約を締結し,その後,別紙1のとおり繰り返し更新されていた。 イ被告(ア) 被告は,アメリカ合衆国デラウェア州法に準拠して設立された航空会社であり,本社は,アメリカ合衆国ジヨージア州aに所在する。 資本金額は8億9700万米ドルである。 平成20年10月,A航空とB航空が合併し,社名が,C(現在の被告の社名)となった。被告の日本支社は,東京都港区に本店を有し,日本国内に複数の支店(空港支店を含む)を有する。 (イ) 被告は,米国国内線のほか,主として米国を起点とする国際線(一部に第三国からの以遠権路線がある。)を運航しており,国際線は,太平洋地区,大西洋地区及び中南米地区(なお,甲第19号証等では,「太平洋路線」等と表記され のほか,主として米国を起点とする国際線(一部に第三国からの以遠権路線がある。)を運航しており,国際線は,太平洋地区,大西洋地区及び中南米地区(なお,甲第19号証等では,「太平洋路線」等と表記されているが,以下では,「太平洋地区」等と表記する。)に大別されている。このうち太平洋地区には,太平洋を横断する路線(以下「太平洋路線」という。)のほか,以遠権を利用して日本とアジア各地を結ぶ路線や日本とグアムやサイパンを結ぶ路線(以下では,前者を「アジア路線」,後者を「ミクロネシア路線」というほか,双方を併せて「アジア・ミクロネシア路線」ということがある。)などが含まれている。 (2) 日本支社における被告の従業員についてア平成26年11月27日時点で,日本支社(以下「日本ベース」ともいう。また,以下では,被告の拠点を「ベース」というほか,特定のベースを本拠地として勤務する乗務員を,「日本ベースの乗務員」などと表記することがある。)の従業員のうち,乗務員としては,正社員であるフライトアテンダント(以下「FA」という。)が57名,雇用期間の定めのある契約社員(以下「IFSR」という。)が112名所属していた(以下,特に断らない限り,「FA」及び「IFSR」はいずれも日本ベースのそれを指す。)。このうち,FAは,全て成田国際空港(成田ベース)を本拠地として職務に就いていたが,IFSRについては,成田国際空港を本拠地として職務に就く者が84名,中部国際空港(名古屋ベース)を本拠地として職務に就く者が12名,関西国際空港(関西ベース)を本拠地として職務に就く者が16名(原告を含む。)であった。 また,FAとIFSRは,同じ便に乗務しないこととされていた。 イなお,本件当時,日本ベースにおけるIFSRの業務管理の統括者は,被告の機内業務本 務に就く者が16名(原告を含む。)であった。 また,FAとIFSRは,同じ便に乗務しないこととされていた。 イなお,本件当時,日本ベースにおけるIFSRの業務管理の統括者は,被告の機内業務本部太平洋地区統括部長のDであった。また,関西ベー スや名古屋ベースにおいては,IFSRの直属の上司としてマネージャーと呼ばれる従業員が配置されており,本件当時,原告の直属の上司のマネージャーは,Eであった。 (3) 労働契約の締結及び契約更新原告被告間の労働契約は,契約期間満了に伴い自動的に終了するが,従業員の勤務成績や能力,会社の業務状態や仕事の量等の事情を考慮して,雇用主が労働契約を更新することができるものとされていたところ,上記(1)アのとおり,原告は,平成18年以降,別紙1のとおり繰り返し契約を更新され,平成26年には,被告との間で,契約期間を同年4月1日から平成27年3月31日までとする契約(以下「本件契約」という。)を締結した(甲7の①,②)。 (4) 原告を含むIFSRの業務内容ア IFSRは,B航空との合併前,太平洋路線(具体的には,大阪とデトロイト,シアトル,ハワイ等を結ぶ路線)及びアジア・ミクロネシア路線に乗務していた。 イ IFSRは,平成20年10月にA航空がB航空と合併された後も,上記同様の乗務便に乗務していたが,平成21年にアジア路線の一部が廃止された上,平成22年の途中からは,そのほかのアジア路線にも乗務しないこととなった。 ウその後,被告は,平成24年5月に太平洋路線について,米国ベースのFAを乗務させ,IFSRを乗務させないこととしたため,原告らIFSRは,同月以降,ミクロネシア路線のみに乗務するようになった。 なお,ミクロネシア路線は,IFSRのみで乗務するのではなく,IFSRと米国ベース せ,IFSRを乗務させないこととしたため,原告らIFSRは,同月以降,ミクロネシア路線のみに乗務するようになった。 なお,ミクロネシア路線は,IFSRのみで乗務するのではなく,IFSRと米国ベースのFAが共に乗務していた。 (5) ミクロネシア路線におけるサービスの変更とIFSRの削減ア被告は,経営合理化の方策として,アジア地域の路線を一部廃止した 上,平成27年1月からミクロネシア路線におけるホットミールサービス(冷蔵された食事を機内でオーブンにより加熱して,温かい食事を提供するサービス)を廃止してコールドミール(調理を要しない食事)に切り替えること(以下「本件サービス変更」という。),これにより同路線におけるIFSRを1名減員させること,名古屋ベースと関西ベースを廃止してIFSRを全て成田ベースとすること,IFSRに対し, 平成26年C航空ボランタリープログラム(以下「希望退職プログラム」という。)と称して希望退職を募集するとともに,名古屋ベースと関西ベースから成田ベースへの異動希望を受け付けることを決定し,平成26年7月31日,原告らを含むIFSRに対して,上記決定事項を通知した。 なお,被告は,上記決定に伴い,IFSRを合計20名削減することを計画していた。 イ原告は,平成26年8月23日,被告に対し,成田ベースへの異動希望を提出した。 (6) 原告の解雇(甲2の①②,甲30)ア被告は,IFSRの希望退職者が,平成26年11月5日時点で,合計12名にとどまり,人員削減を予定していた20名に達しなかったため,原告を含む8名のIFSRを解雇することとした。 イ被告は,平成26年11月5日,原告に対し,「希望退職をせず,成田ベースへの異動も不適格又は是認されない。」として,本件契約に係る期間途中である同年1 含む8名のIFSRを解雇することとした。 イ被告は,平成26年11月5日,原告に対し,「希望退職をせず,成田ベースへの異動も不適格又は是認されない。」として,本件契約に係る期間途中である同年12月5日付けで,原告との労働契約を終結する旨を通知した(以下「本件解雇」といい,同書面を「本件解雇通知書」という。)。 ウ被告は,平成26年11月5日,原告以外のIFSR7名に対しても,上記イと同様の労働契約終結通知をした。そのうち2名は,同月7日,被告に対し,希望退職プログラムに基づく退職希望を提出し,被告は,これ を承認した。また,その後,解雇対象者ではなかったIFSR1名が退職を希望したことから,被告は,解雇通知をしたIFSRのうち1名に対する解雇を撤回した。 以上の結果,希望退職者は合計15名となり,原告を含むIFSR5名が解雇されることとなった。 エ被告は,上記解雇対象者の選定について,IFSRとしての勤続年数(以下「シニオリティ」といい,勤続年数が長い者が上位になる。)が下位の者から順次選定したもので,原告のシニオリティは,解雇された5名の中では最上位であった。 オ被告は,平成26年12月5日をもって解雇した原告らIFSRに対し,契約失効日までの残存月数の基本給与や残存有給休暇分の時間給,基本給与6か月分の退職手当を支払う旨を通知していたが,少なくとも原告に対しては,本件解雇後である同年12月から平成27年3月分までの基本給相当額が支払われた(弁論の全趣旨)。 (7) 原告による契約更新の申込みと被告による更新拒絶ア原告による契約更新の申込み原告は,平成26年12月24日,被告に対し,本件解雇が無効であることを通知するとともに,平成27年3月末以降も,雇用を継続するよう,本件契約の更新申込みをした(甲6の 原告による契約更新の申込み原告は,平成26年12月24日,被告に対し,本件解雇が無効であることを通知するとともに,平成27年3月末以降も,雇用を継続するよう,本件契約の更新申込みをした(甲6の①②。以下「本件更新申込み」という。)。 イ被告による更新拒絶被告は,平成27年2月27日,原告に対し,仮に,本件解雇の有効性が認められないとしても,本件更新申込みを拒絶し,原告との有期労働契約を更新しない旨の意思表示をした(以下「本件雇止め」という。)。 (8) 原告が支払を受けていた賃金の額等ア本件契約における原告の賃金は,実際の乗務時間数等(なお,複数の算 定方法があり,乗務時間や拘束時間と完全に一致するものではない。以下では「ACFH」という。)に応じて計算することとされていたが,被告は,ACFHを70時間とした場合に支給される金額を明示し,これを「基本給」と呼称していた(甲7の①②)。 イ本件解雇前の3か月間である平成26年9月から同年11月において,原告に対し,報償手当として月額8600円が支給されており,これを含む原告の賃金額は,平均して月額24万7284円であった(甲8の①ないし③)。 (9) 賞与被告は,被告従業員に対し,毎年6月に賞与を支給しており,原告に対して,毎年,賞与として,上記(8)アの「基本給」の3か月分に相当する金額を支払っていた(甲10の①ないし④)。 (10) プロフィットシェアア被告は,原告に対し,前年の業績に基づくプロフィットシェアとして,以下のとおり支給した。 平成23年分 13万4017円(甲9の①)平成24年分 18万7994円(甲9の②)平成25年分 25万0167円(甲9の③)平成26年分 52万5307円(甲8の②,甲34,35)イ被告は,プロフ 3万4017円(甲9の①)平成24年分 18万7994円(甲9の②)平成25年分 25万0167円(甲9の③)平成26年分 52万5307円(甲8の②,甲34,35)イ被告は,プロフィットシェアを支給する場合,一定の係数を定め,各従業員の収入に同係数を掛けて,支給金額を算出しており,おおむね毎年2月14日頃に支給していた。 ウ被告は,平成28年2月,従業員に対し,平成27年分のプロフィットシェアとして,実収入(当該従業員が現実に得た収入を意味し,インフライト部の場合は,ACFHに基づき計算される基本給,ボーナス,その他のいくつかの手当の合計額を指す。)の21.46パーセントに相当する金 額を支給した。 3 本件の争点(1) 本件解雇の有効性労契法17条1項所定の「やむを得ない事由」の有無(争点1)(2) 本件雇止めの有効性ア本件契約が,社会通念上期間の定めのない契約と同視できるか(労契法19条1号),又は更新されると原告が期待することに合理的な理由があるか(同条2号)(争点2)イ本件雇止めにつき,客観的に合理的な理由及び社会通念上の相当性があるか(争点3)(3) 原告の被告に対する賃金等(本件解雇後及び本件雇止め後の月額賃金,賞与,プロフィットシェア)に係る支払請求権の有無(争点4) 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点1(本件解雇の有効性)について(被告の主張)被告には,以下のとおり,人員削減の必要性があり,解雇を回避するための努力を尽くしたものの,解雇が不可避であったため,合理的な基準によって解雇対象者を人選し,かつ解雇に至るまで誠実に協議を続けてきた。したがって,本件解雇にはやむを得ない理由があり,有効である。 ア被告には,人員削減の必要性があった。 (ア) 的な基準によって解雇対象者を人選し,かつ解雇に至るまで誠実に協議を続けてきた。したがって,本件解雇にはやむを得ない理由があり,有効である。 ア被告には,人員削減の必要性があった。 (ア) 被告は,全体としては黒字を計上していたものの,既存の航空会社との激しい競争に晒されている上,航空機を対象としたテロにより旅客数が急激に減少する可能性も否定できず,また,いわゆるLCCと呼ばれる低価格の航空会社から顧客基盤の侵食も受けている。 被告において,アジア・ミクロネシア路線は,収益性の高い路線ではなく,ここ数年をみても,成田とアジア各空港(金海や仁川,北京,香 港)を結ぶ便を順次廃止し,ソウル,北京及び香港のベースを順次閉鎖するなど経営合理化を推し進めざるを得なかった。しかし,このような経営合理化努力を経ても,被告の太平洋地区は,平成27年度において大幅な前年比減収となり,更なる路線の廃止や使用機材の小型化,シンガポールとバンコクのベースの閉鎖を余儀なくされた。その結果,平成26年以降,アジア各地のベースにおいて,FAを中心として約260名の人員が削減されている。 (イ) ミクロネシア路線においては,従前,日本など太平洋地域ベースの乗務員4名と米国ベースの乗務員2名の合計6名が乗務していたが,被告において,本件サービス変更に伴い調理作業等が不要になったことを踏まえて業務フローを見直した結果,5名の乗務員で機内サービスを提供することが可能との結論に至り,乗務員1名が余剰となった。被告では,保安上の必要性や一定数を占めている米国人乗客への対応の必要性から,米国ベースの乗務員を削減することはできず,日本など太平洋地域ベースの乗務員を1名削減する必要があった。 被告では,IFSRの基本給につき,ACFHを月70時間として計算した額とし 応の必要性から,米国ベースの乗務員を削減することはできず,日本など太平洋地域ベースの乗務員を1名削減する必要があった。 被告では,IFSRの基本給につき,ACFHを月70時間として計算した額としており,原告を含むIFSRは,ACFHを月70時間とした稼働を見込み,これに基づいて計算した基本給を想定した生活設計を行っていたはずである。しかし,本件サービス変更による乗務員の削減を踏まえて想定されるIFSRのACFHを算定したところ,月70時間を大幅に下回ることが明らかとなった。被告において試算したところでは,IFSRを20名削減すれば,想定されるACFHは月67. 08時間となった。そこで,被告は,IFSRの賃金水準の維持と人員削減を可能な限り少なく抑えるという要請を調整できる境界線として,20名の削減を決定した。 イ被告は,解雇回避努力を尽くした。 (ア) 被告は,余剰人員削減のため,希望退職プログラムによる希望退職者を募り,関西ベース及び名古屋ベースの閉鎖に当たっては,可能な範囲で成田ベースに配置転換した。 (イ) なお,想定されるACFHが月70時間を割り込む状況下にあるため,更なるACFHの削減を伴うワークシェアリングの実施は現実的ではなく,また,海外ベースへの配転や他路線への配置転換も,被告が世界的に人員の削減を進めており,海外において吸収する余裕はないこと,IFSRの雇用確保のため,他国の従業員の雇用を犠牲にすることは公平性の観点から相当ではないこと,就労関係のビザの確保が容易ではないこと,多額の追加費用が見込まれることなどから現実的ではなかった。一時帰休制度やアクセスデー(有給の待機日であり,乗務が割り当てられなかった場合でも,ACFHが2時間40分として,賃金が支払われる。)についても,既に被告において最 となどから現実的ではなかった。一時帰休制度やアクセスデー(有給の待機日であり,乗務が割り当てられなかった場合でも,ACFHが2時間40分として,賃金が支払われる。)についても,既に被告において最大限活用している。 ウ被告は,解雇対象者の選定について,シニオリティの低い順によることとし,当該基準に則り対象者を選別した。したがって,被告は,解雇対象者の選定について,客観的かつ合理的な基準で解雇対象者を選定した。 エ被告は,各ベースにおいて説明会を実施し,IFSRからの質問にできる限り誠実に応え,希望退職プログラムを提示した。原告との関係では,原告の要望に応えて,マネージャーやその上司が原告と直談の機会を持ち,その後も原告と上司との間でメールや電話により頻繁にコミュニケーションをとっており,誠実に原告と協議を続けていた。 オ以上によれば,本件解雇については,労契法17条1項所定の「やむを得ない事由」があるというべきである。 (原告の主張) 被告には,以下のとおり,本件解雇に当たり,人員削減の必要性があるとはいえない上,被告が本件解雇を回避するための努力を尽くしたとはいえず,解雇対象者の選定も不合理であり,また,解雇に至るまでの協議や説明も欠いている。そうすると,本件解雇には,労契法17条1項所定の「やむを得ない理由」がある旨の被告の主張は理由がないというべきである。 ア被告には,人員削減の必要性があるとはいえない。 (ア) 被告は,本件解雇前後を通じて巨額の利益を計上している。また,本件解雇後には,米国ベースのFAを大量に新規採用し,成田-香港便の運航を再開し,成田-パラオ便も増便している。 (イ) 本件サービス変更については,乗務員の仕事量が大きく変わるものではなく,乗務員の削減によって労働密度が強化されてお に新規採用し,成田-香港便の運航を再開し,成田-パラオ便も増便している。 (イ) 本件サービス変更については,乗務員の仕事量が大きく変わるものではなく,乗務員の削減によって労働密度が強化されており,人員削減の必要性を基礎付けるものとはいえない。被告は,本件サービス変更により,年間で72万5000ドルのコスト削減が図れ,それ以外に加熱器具の燃料費やメンテナンス費用も節約できたのであるから,更に人員削減をして経費を削減する必要はなかった。 (ウ) 被告は,IFSRについて,月70時間のACFHを確保する必要があるとも主張するが,ACFHは年間を通じて変動があり,被告は,今までも月70時間よりも少ないACFHを割り当てたり,待機日で調整したり,一時帰休を募ったりしてしのいでいた。このような曖昧な方法で算定されたACFHを基に,合理的な人員削減数が確定できるものではない。 また,そもそも本件契約上,ACFHについて,月70時間の最低保障があるわけではなく,月70時間のACFHを確保することをもって人員削減の必要性を基礎付けることはできない。 イ被告は解雇回避努力を尽くしていない。 (ア) 希望退職プログラムの応募期間は熟慮期間としては短いし,退職 条件も従業員を任意退職に誘導するためには十分な好条件とはいえない。応募期間の延長や第二次希望退職の募集,希望退職の個別打診,退職金の加算等によって,希望退職者が20名に達した可能性は高い。 (イ) 配置転換努力義務についても,被告は,原告が希望した成田ベースへの異動を拒否したほか,海外ベースへの配転の努力を尽くした形跡もなく,原告との関係で配置転換努力義務を尽くしたとはいえない。 (ウ) その他,①一時帰休を募集する,②IFSRを過去に乗務していた太平洋路線やアジア路線に乗務させ スへの配転の努力を尽くした形跡もなく,原告との関係で配置転換努力義務を尽くしたとはいえない。 (ウ) その他,①一時帰休を募集する,②IFSRを過去に乗務していた太平洋路線やアジア路線に乗務させる,③ミクロネシア路線に乗務している2名の米国ベースのFAを他の路線に配置転勤してミクロネシア路線の余剰人員を吸収する,④オフィスアシストの業務を与えて雇用確保をする,⑤アクセスデーを活用する,⑥いわゆるワークシェアリングを行う等の方法があったにもかかわらず,被告はこれらの方法をとっていない。 ウ解雇人員の選任基準も妥当性を欠いている。 シニオリティが低い者は,賃金も低廉であるから,コスト削減目的であれば,シニオリティの低い者から解雇するのは不合理である。また,シニオリティは被告における勤続年数にすぎず,シニオリティが高いから乗務員としての経験が長いとは限らないし,シニオリティが低いから若年で再就職の可能性が高いともいえない。 エ被告は,協議や説明を尽くしていない。 被告は,本件において,余剰人員を20名とした具体的な根拠,希望退職者が15名に達した後の解雇の必要性について,誠実な説明や協議を尽くしておらず,原告が被告の動向を尋ねた際にもこれを放置し,いきなり解雇通知を交付した。 オ以上によれば,被告において,本件契約に係る期間の満了を待てないほどの緊急かつ重大な事由が存するとはいえず,本件解雇には,労契法 17条1項所定の「やむを得ない事由」があるとはいえないことは明らかである。 (2) 争点2(本件契約が,社会通念上期間の定めのない契約と同視できるか,又は更新されると原告が期待することに合理的な理由があるか)について(原告の主張)本件契約は,①原告らの業務内容がFAと同一であること,②原告らの契約上の地位 の定めのない契約と同視できるか,又は更新されると原告が期待することに合理的な理由があるか)について(原告の主張)本件契約は,①原告らの業務内容がFAと同一であること,②原告らの契約上の地位はFAに準じる基幹的なものとして位置付けられていること,③Eらから雇用継続を期待させる発言があったこと,④9年間,9回の長期にわたる契約更新がなされていること(30年間勤続のIFSRも存在すること),⑤更新手続が形骸化していること,以上の点に鑑みれば,本件契約は,実質的に期間の定めのないよう契約と同視できるか,あるいは,継続雇用の客観的な合理的期待が認められるものである。 (被告の主張)ア本件契約は,社会通念上期間の定めのない契約と同視できるものではない。すなわち,本件契約を含む原告被告間の労働契約の締結及び更新に当たっては,①契約書において,期間満了に伴い労働契約は自動的に終了することが明確に規定されていること,②労働契約は,更新の度に見直され,契約条項も重要部分において変更されているのであり,当然に従前の労働契約を漫然と反復して更新していたわけではないこと,③更新時においては,担当管理職との面談の機会が必ず設けられており,更新後の契約内容について,原告と被告との間で確認する機会が設けられていたこと,④全てのIFSRについて契約が更新されていたわけではなく,業績が不振な者については更新を拒絶されることもあったこと等の事実に鑑みれば,原告と被告との間の労働契約は「当然に反復」していたものではなく,原告との労働契約が実質的に期間の定めのない契約と同視できる状態に至っていたとはいえない。 イまた,原告に係る雇用継続に対する期待については,合理的な理由があるとはいえない。すなわち,被告は,外部要因によって収益が大きく変動する航空 と同視できる状態に至っていたとはいえない。 イまた,原告に係る雇用継続に対する期待については,合理的な理由があるとはいえない。すなわち,被告は,外部要因によって収益が大きく変動する航空業界において,事業上のニーズに応えつつ,その時々の国際情勢に対して柔軟な対応を確保し得る体制を維持し続ける必要がある。このため,解雇が困難で人員が固定されるFAではなく,有期雇用によって弾力的な運用を可能にすることを目指してIFSRという職種を設け,雇用の調整弁に位置付けており,IFSRは当初から永続的な雇用が継続される合理的な期待が想定できない職種である。過去にも,IFSRについて契約更新されなかった例がある上,被告では,ここ数年は毎年のように便の削減による希望退職が募られ,IFSRの契約満了による雇止めもなされていた。以上の事情に鑑みると,労働契約の更新に対する期待を持ち得るような客観的情勢にはなかったし,被告が原告に対して雇用継続に対する合理的期待を抱かせるような発言をしたこともない。 (3) 争点3(本件雇止めに係る客観的に合理的な理由及び社会通念上の相当性があるか)について(被告の主張)ア上記(1)(被告の主張)のとおり,被告には人員削減の必要性があり,解雇を回避するための努力を尽くしてきた上,合理的な基準によって,解雇対象者を選定し,誠実に協議を続けてきた。これらの点に照らせば,本件雇止めについても,客観的に合理的な理由があり,かつ,社会通念上も相当なものである。 イなお,被告は,平成26年7月に本件サービス変更に伴う平成27年1月に想定されるACFHを算出し,20名の人員削減を決定したが,実際には更なる減便もあり,ACFHの実績値は,当初算定したACFHの予想値を下回っている。 (原告の主張)ア上 27年1月に想定されるACFHを算出し,20名の人員削減を決定したが,実際には更なる減便もあり,ACFHの実績値は,当初算定したACFHの予想値を下回っている。 (原告の主張)ア上記(1)(原告の主張)のとおり,被告には人員削減の必要性があるとはいえず,解雇回避努力を尽くしていない上,解雇対象者の選定も合理的とはいえず,協議や説明を尽くしていない。これらの事情は,本件雇止めについても,客観的かつ合理的な理由がないことを基礎付けるものである。 イ以上によれば,労契法19条により,原告被告間の労働契約は更新されたというべきである。 (4) 争点4(賃金等の支払請求権の有無)について(原告の主張)ア月額賃金について無効な解雇によって解雇された労働者は当然ながら賃金請求権を失わないが(民法536条2項),その賃金が月によって変動する場合,解雇前の賃金の平均をとって賃金請求権を認めるのが適切である。 これを本件についてみると,本件解雇前3か月の原告に係る賃金平均額は,24万7284円であるから,同額をもって月例賃金額が認められるべきである。 イ賞与について(ア) 被告は,毎年6月,従業員に対し,賞与を支給しており,その額は少なくとも平成23年以降は,基本給額の3か月分で固定されていた。 (イ) 平成27年度以降も他の従業員に賞与支給がなされなかったとか,上記月数分以外の支給方法によって支給された等の主張や的確な証拠が提出されていないことからしても,少なくとも上記金額での賞与の請求権が黙示的に労働契約の内容となっていると解すべきである。 (ウ) したがって,原告は,被告に対し,基本給額20万2643円の3か月分である60万7929円の賞与請求権を有しているというべきである。 ウプロフィット っていると解すべきである。 (ウ) したがって,原告は,被告に対し,基本給額20万2643円の3か月分である60万7929円の賞与請求権を有しているというべきである。 ウプロフィットシェアについて(ア) 被告は,全従業員に対し,原則として毎年2月,前年の業績に基づくプロフィットシェアとして,前年の各従業員の年収に各年の支給係数(従業員一律)を掛けた金額を支給している。プロフィットシェアについては,労働契約書に記載がないが,毎年全従業員に支給してきたことや全社的にイントラネットで通知していること等からしても,明示的ないし黙示的に労働契約の内容となっていると解すべきである。 (イ) 以上を踏まえると,原告は被告に対し,平成27年度(平成28年2月25日支給)については,同年度の支給係数によるプロフィットシェアの請求権63万6805円を,平成28年度以降は,平成25年度から平成27年度のまでの3年間の支給額の平均によるプロフィットシェア(47万0759円)の支払請求権をそれぞれ有しているというべきである。 (被告の主張)ア月額賃金について(ア) 原告と被告との労働契約においては,最低保障額などの定めのない完全な歩合給の制度が採用されており,勤務実績に応じた賃金が支払われている。すなわち,フライトその他の乗務を全く行わず,有給休暇も申請していない場合は,ACFHが0となり,それに対応して月額給与は0円となる。平成26年12月5日以降は,原告に1度も勤務実績がない以上,仮に原告の雇用が維持されていたとの前提に立ったとしても,月額給与は0円とならざるを得ない。また,月額給与 以外の各種の手当についても,いずれも,現実の乗務の存在が前提とされているため,0円ということになる。 (イ) また,上記の点を措くとし ても,月額給与は0円とならざるを得ない。また,月額給与 以外の各種の手当についても,いずれも,現実の乗務の存在が前提とされているため,0円ということになる。 (イ) また,上記の点を措くとしても,平成26年12月以降,IFSRが乗務可能なフライトの便数及び総フライト時間数も毎月減少の一途を辿っており,IFSR全体に配分したACFHの実績値も大きく減少してきたため,勤務を継続したIFSRの月額賃金も低額なものとならざるを得なかった。さらに,ACFHの割当においては,シニオリティが上位の者が優先されるところ,原告は,シニオリティが低く,割当の優先度が低い結果,実際に付与されるACFHは平均値よりも低い数値となることが多くなるという傾向にあった。 したがって,仮に原告の雇用が終了していなかったとしても,原告に対して支払われたであろう現実の賃金は,平均値を基に試算した賃金額よりも,大幅に低くなったはずである。 イ賞与について(ア) 原告と被告との間で締結された労働契約において,賞与の支給に関する規定は全く存在しない。 (イ) また,被告が,過去において,被告の経営状況,業績その他の被告を取り巻く種々の状況を鑑みて,IFSRに対して賞与を支給したことは事実であるが,賞与を支給するか否か及びその額については,被告の裁量において決定されてきた。被告は,原告を含むIFSRに対して,賞与の支払を約束したことはなく,原告と被告との間において,賞与に関する合意がなされたことはなかった。 (ウ) したがって,原告には被告に対する具体的な賞与請求権はない。 ウプロフィットシェアについて(ア) プロフィットシェアは,被告が,過去において,被告の経営状況,業績その他の被告を取り巻く種々の状況を鑑みて適切と判断する場合 に,任意的かつ恩 ない。 ウプロフィットシェアについて(ア) プロフィットシェアは,被告が,過去において,被告の経営状況,業績その他の被告を取り巻く種々の状況を鑑みて適切と判断する場合 に,任意的かつ恩恵的に従業員に対して支給してきたにすぎず,プロフィットシェアの内容及び手続について,何らかの規程が存在するわけではない。プロフィットシェアを支給するか否か,支給する場合の係数(金額),時期等は被告が一方的に通知してきており,被告の一方的な判断によりプロフィットシェアの支給が全く行われなかった年もある。 (イ) 平成27年においては,対象従業員の実収入に対し,21.46パーセントという係数によって計算した額を支給するという決定を行ったが,ここでいう実収入とは,当該従業員が,現実に得た収入を意味するところ,原告が対象期間である平成27年において1度も勤務実績がない以上は,計算根拠となる実収入を観念することができないため,プロフィットシェアの金額を敢えて算定しようとしても,計算上,0円とならざるを得ない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。 (1) 原告らを含むIFSRの業務内容等ア IFSRは,太平洋路線(ただし,IFSRが乗務していたのは,平成24年4月頃までであり,また,乗務していたIFSRの数は,一,二名である。)では,大型機種(ワイドボディ機)に乗務し,機内サービスの一部の業務(機内通訳や免税品販売等)に従事していたが,アジア・ミクロネシア路線では,FAと同様に,機内サービス全般の業務に従事していた(甲30,証人D,原告)。 イミクロネシア路線においては,小型機種(ナローボディ機)が使用され,本件サービス変更前は,米国ベースの乗務員2名と FAと同様に,機内サービス全般の業務に従事していた(甲30,証人D,原告)。 イミクロネシア路線においては,小型機種(ナローボディ機)が使用され,本件サービス変更前は,米国ベースの乗務員2名と,日本を含む太 平洋地域をベースとする乗務員4名の合計6名の乗務員が乗務し,客室全体の責任者であるパーサーの資格は米国ベースの乗務員のみが取得していた。なお,被告がミクロネシア路線で運航しているナローボディ機について,法令上最低限必要とされている乗務員数は4名である。 (甲30,原告)ウ IFSRの始業時刻は,搭乗する便の予定出発時間の75分前とされ,出社後にメールの確認やフライト情報の受取などの乗務準備を行い,予定出発時間の65分前に飛行機に乗り込んで,ブリーフィングや,安全・サービスに関する機内点検等を行った後,乗客を迎え入れて座席に案内するなどの出発の準備を行うこととされていた。 また,飛行機が目的地の空港に着陸して,ターミナルゲートに到着し,停止(ブロックイン)した後は,乗客を降ろして機内の後片付けや安全点検をした上で降機し,入国手続を済ませて退社することとされ,その終業時刻は,ブロックインから30分後とされていた。 (甲14,乙4)エ IFSRの勤務シフトについては,毎月一定のACFHが割り当てられているわけではなく,各IFSRが,毎月一定の日までに被告のコンピュータシステムに就労日等の希望を入力し,それを基にシニオリティ順に希望を優先し,一定の調整を経て決定されていたため,シニオリティに応じて,割り当てられるACFHに格差が生じていた(甲30)。 オ IFSRとFAは,同じマニュアルを使用し,乗務員としての業務に差異はなく,IFSRもFAと同様に,エコノミーリーダーの資格研修や,チャーター便に乗務する CFHに格差が生じていた(甲30)。 オ IFSRとFAは,同じマニュアルを使用し,乗務員としての業務に差異はなく,IFSRもFAと同様に,エコノミーリーダーの資格研修や,チャーター便に乗務するための研修を受けることができ,IFSRが機内におけるエコノミーリーダーを務めることもあった。 他方において,FAは正社員であるため,管理職に昇格する可能性があるほか,地上勤務に就く可能性もあるが,IFSRについては,この ようなことは予定されていなかった。 (甲30,原告)(2) 本件契約の内容等ア本件契約における賃金は,ACFHを月70時間(なお,この月70時間のACFHを「基本乗務時間」ということがある。)と仮定した基本給を月額20万2643円とし,これによる時間単価(20万2643円÷70時間≒2895円)に実際のACFHを乗じて計算することとされていたが,ACFHが月70時間を超えた場合は,超過時間数につき,時間単価の3割の割増分が支払われ,ACFHが月130時間を超過した分の割増率は5割とされていた。 なお,ACFHは,1回の乗務毎に,①ブロックアワー(飛行機が出発空港のゲートを離れた時から,到着空港のゲートに到着し停止した時まで),②職務時間(始業時刻から終業時刻までの間の時間)の1/2,③最低保障時間(2時間40分),④トリップ時間(ベースの出発から帰着までの時間)の1/6,の中から最も長い時間を採用することとされていたところ,①が適用される事案が大半であった。 また,基本乗務時間は最低保障ではなく,実際のACFHは,基本乗務時間より少なくなることもあった。 被告の賃金算定期間は,毎月1日から末日であり,当月25日までに当月分を支払うこととされていた。この点,被告は,翌月25日払いであったと主 のACFHは,基本乗務時間より少なくなることもあった。 被告の賃金算定期間は,毎月1日から末日であり,当月25日までに当月分を支払うこととされていた。この点,被告は,翌月25日払いであったと主張するが,これを認めるに足りる的確な証拠は認められない。 (甲7の①②,証人D)イ本件契約の更新については,「期間満了により自動的に終了する。ただし,本契約失効時における仕事の量,従業員の勤務成績や能力,そして雇用主の業務状態を含み,またはそれに限らずその他事情を考慮して,雇用主は従業員へ本契約を更新することができる。」と規定されていた(甲7の① ②)。 (3) 契約更新手続等ア原告の契約更新は,マネージャーが,毎年,3月か4月に,オフィスや乗客が搭乗する前の機内において,原告に新たな労働契約書を提示して署名を求め,原告がその場で署名するという方法で行われていた。その際,マネージャーは,契約内容に変更があれば変更内容を説明し,変更がなければ特段の説明はしなかった。また,マネージャーは,原告に直接契約書を交付せず,原告のメールボックスの中に契約書を入れる方法で提示したこともあった。(甲30,原告)なお,Dは,あらかじめトーキングポイントを作成し,同ポイントに沿った説明を行っていた旨証言等する(乙4,証人D)。確かに,証拠(乙2の①ないし⑧)によれば,被告は,契約更新に当たって,トーキングポイントを作成したことが認められる。しかしながら,Dが,証人尋問において,短い期間にたくさんの従業員と面談する必要がある一方で,大阪及び名古屋については,マネージャーの数が少なく,時間との闘いであった旨証言していること(証人D)や同面談が既に被告内において契約更新可能と判断された者に対するものであることに照らすと,実際の契約更新手続にお ついては,マネージャーの数が少なく,時間との闘いであった旨証言していること(証人D)や同面談が既に被告内において契約更新可能と判断された者に対するものであることに照らすと,実際の契約更新手続における面談が実施されていたか否かは明確とはいえず,仮に,実施されていたとしても,特に従前の契約内容に変更がない場合などにおいては,予め作成されたトーキングポイントに沿った個別具体的な説明等がなされていたとは認め難い。したがって,Dの上記証言等をもって,上記認定を覆すには足りない。 イ原告が契約書に署名した後,被告側が同契約書に署名するのは4月以降になることが多かった(証人D)。 ウ IFSRは,物販やマイレージ契約等のセールスの成績により,ポイント制で評価されており,同ポイントを基にして,マネージャーによる評価 面談が実施され,契約更新に当たっての賃金増額等の可否に反映されていた(甲30)。 エ原告を含め,IFSRの契約内容は,更新の際に一部変更されることがあり,①平成24年4月の契約更新時には,基本乗務時間が月80時間から月70時間に変更されるとともに,月130時間を超えたACFHについての割増率を5割とする旨の規定が追加され,②平成25年4月の契約更新時には,深夜乗務手当の割増率について,2.5割から5割に変更され,③平成26年4月の契約更新時には,有給の慶弔休暇及び傷病休暇の制度が新たに追加された(乙2の⑥⑦,弁論の全趣旨)。 オ原告の基本給は,別紙1のとおり,平成21年度途中に16万円から16万5500円に変更され,その後,平成26年4月までの間に,合計3回,増額された。 (4) 被告において,人員削減が必要であると判断するに至った経緯アミクロネシア路線は,ナローボディ機で運航される上,ビジネス客が少ないことか 26年4月までの間に,合計3回,増額された。 (4) 被告において,人員削減が必要であると判断するに至った経緯アミクロネシア路線は,ナローボディ機で運航される上,ビジネス客が少ないことから,被告では,採算性の向上と維持が非常に困難な路線と位置付けられており,更なる合理化が課題とされていた(ただし,本件証拠上,同路線の具体的な収支を明らかにする個別具体的な証拠は見当たらない。)。このため,被告は,平成27年1月1日から機内のホットミールサービスを廃止して,コールドミールサービスに切り替えることとし(本件サービス変更),同変更に伴う業務の軽減を考慮すると,5名の乗務員で機内サービスを提供することが可能であり,乗務員1名が余剰と判断した。その上で被告は,米国ベースのFAの削減は保安上の理由等からできないと判断し,従前4名が乗務していたIFSRを3名に削減することとした。 (乙4)イ被告では,乗務員のシフトを決定するに当たり,予定運航路線と運航 本数を参考に運航により生ずるACFHの総合計を算出し,想定される有給休暇時間(1人当たり月6時間)を加えた数値を母数として,これを予定稼働乗務員数で除し,想定される1人当たりのACFHを算出していた。 被告は,平成26年7月,その時点におけるIFSR116名を前提として,平成27年1月におけるIFSR1名当たりのACFHを算出したところ,56.67時間となった。なお,この試算の前提となった運航時間総数は,月5060時間であった。 被告におけるIFSRの契約は,基本となるACFHを月70時間とし,賃金はACFHにある程度対応して算定されているところ,被告は,各IFSRにおいても,月70時間のACFHに対応した賃金を想定した生活設計がされていると考えられることから,可能な限 月70時間とし,賃金はACFHにある程度対応して算定されているところ,被告は,各IFSRにおいても,月70時間のACFHに対応した賃金を想定した生活設計がされていると考えられることから,可能な限り70時間に近いACFHを確保する必要があると判断し,それに基づいて,試算した。その結果,IFSRを20名削減して96名にすれば,想定されるACFHが月67.08時間となったため,被告は,20名の削減が賃金水準の維持と人員削減を可能な限り少なく抑える要請を調整できるぎりぎりの境界線と判断し,同人数の削減を決定した。 (乙4,証人D)(5) 人員削減に関する被告の説明と希望退職者の募集ア被告は,平成26年7月31日,原告を含むIFSRに対して,太平洋地区において,競争力強化を図り,更に利益を生むため,ホノルル-日本路線とミクロネシア路線のプレミアムキャビン(ビジネスクラス)のサービスを簡素化すること,これにより1名のFA/IFSRが不要となること,IFSRを削減する必要があり,名古屋と関西のベースを閉鎖すること,異動の機会と希望退職制度を用意すること,ホノルルベースについては,ベースの縮小を避けるため,ホノルルベースでの更な る国内便の組合せでフライトを埋め戻すようにすることなどをメールで伝えた(甲21の①,②)。 イその後,被告は,原告を含むIFSRに対し,社内メールで,希望退職プログラムの詳細とその申込書等を送付し,希望退職受付の締切りを平成26年8月29日とした(甲30)。 ウ(ア) 被告は,平成26年8月15日,関西ベースのIFSRに対する説明会を実施した。同説明会は,任意参加とされ,乗務のある者は参加できないものであったため,関西ベースのIFSR18名のうち6名(原告を含む。)しか参加しなかった。 同説明会では IFSRに対する説明会を実施した。同説明会は,任意参加とされ,乗務のある者は参加できないものであったため,関西ベースのIFSR18名のうち6名(原告を含む。)しか参加しなかった。 同説明会では,まず,①上記アの内容と同様の説明がされたほか,IFSRの削減人数は,日本ベースIFSR全体で20人を予定しているとの説明がなされた。また,アジア地区各ベース(バンコク,マニラ,上海,シンガポール,台北,香港,東京)においても,路線の廃止,便数削減や使用機種の縮小により人員削減の必要があり,現在調整がなされているとの説明がなされた。また,②人員削減に至った理由について,本件サービス変更に伴い,ミクロネシア便に乗務するIFSRを1名減員するところ,その乗員人数で計算すると,IFSR1人当たりの基本乗務時間である70時間を分配できなくなるからである旨の説明がなされた。さらに,③希望退職プログラムの詳細について説明がなされ,各IFSRが退職を選択した場合の退職金の概算については,希望するIFSRに対して教えることができるとの説明がなされた。 これらの被告の説明に対し,説明会に参加したIFSRから,「各ベースの人員削減予定の増減は,太平洋地区全体で考えられないのか。」等の質問があったが,被告は「各ベースは独立したものと考え,お互いに影響させない」旨を回答した。 なお,同時期頃,名古屋ベース及び成田ベースの各IFSRに対して も,同様の説明会が実施された。 (甲30,原告)(イ) また,被告は,その頃,IFSRに対し,被告が予定している人員削減の内容や希望退職プログラムの内容,希望退職ブログラムの応募者が予定に達しなかった場合の解雇者の選定等をまとめた書面を送付した(甲31の①②)。 エ被告は,平成26年8月27日,原告を含むIFSR 内容や希望退職プログラムの内容,希望退職ブログラムの応募者が予定に達しなかった場合の解雇者の選定等をまとめた書面を送付した(甲31の①②)。 エ被告は,平成26年8月27日,原告を含むIFSRに対し,希望退職プログラムについて,募集期間の延期(同年9月3日まで)を通知した。なお,被告が提示していた希望退職の条件は,勤続年数1年につき1か月分の賃金に相当する額(ただし,12か月を上限とする)の退職金の支払,未使用有給休暇の買取り,パス旅行特典などであった。 その後,被告は,同年9月6日,更に希望退職の募集期間を同月15日まで延期する旨通知し,最終的には,同募集期間終了時点で12名が希望退職に応募したが,被告が想定していた20名には至らなかった。 (甲30)(6) 本件解雇等ア被告は,平成26年11月5日頃,原告を含むシニオリティが下位のIFSR8名に対し,1か月後の労働契約の終結を通知した(本件解雇)。 原告に対する同告知は,Dと日本地区人事本部長のFが同日に原告に面談し,人員削減の背景事情を説明するとともに,本件解雇通知書(甲2の①,②)を手交する方法により行われた。 被告が本件解雇通知書において示した解雇の条件は,現行の契約失効日までの残存月数の基本給与,残存有給休暇分の時間給及び基本給与6か月分の退職手当の支払というものであった。また,この時,Dらは,原告に対し,希望退職の募集期間は終了しているが,もし退職の意思があれば,より原告に有利な内容である希望退職プログラムの適用を認め,希望退職 扱いとすることも伝えた。 (甲30,乙4)イ本件解雇の通知後の平成26年11月7日,解雇通知を受けた8名のうちの2名は,希望退職プログラムに応募する意思を示したため,被告は,上記2名については希望退職プログラムの (甲30,乙4)イ本件解雇の通知後の平成26年11月7日,解雇通知を受けた8名のうちの2名は,希望退職プログラムに応募する意思を示したため,被告は,上記2名については希望退職プログラムの適用を認め,希望退職扱いとした。また,解雇通知を受けていなかった1名のIFSRが希望退職プログラムへ応募する意思を示したことから,被告は,希望退職プログラムの適用を認め,解雇を伝えたIFSRの中でシニオリティが最上位であった1名に対する解雇を撤回した。 (甲30)⑺ 本件解雇後の交渉経過等ア原告は,平成26年11月30日,被告に対し,契約終了について異議があり,雇用継続について再考を願う旨のメールを送付した(甲4の①②)。 イ原告は,平成26年12月1日,被告に対し,原告の契約終了について異議があり,雇用継続を求めるとともに,契約解除の具体的な理由や余剰人員20名の算出方法,退職を望まない6名(当時)の労働契約を解除する具体的理由を尋ねる文書を送付した(甲3)。 ウ被告は,上記イへの回答として,平成26年12月4日,原告に対し,市場競争のために太平洋地区の人員に調整が必要であること,希望退職の募集期間を延期したが,希望者が予定数に達しなかったこと,平成27年1月のIFSRの初期状態のスケジュールは65時間であったこと,契約終了の決定を覆すことはできないこと等を通知した(甲4の③④)。 (8) 本件サービス変更等ア平成27年1月,本件サービス変更が実施され,ミクロネシア便の乗 務員が6名から5名に減員されたほか,関西ベース及び名古屋ベースが廃止された(乙4)。 イ被告は,本件サービス変更により,ミールの材料費として,年間で72万5000ドルのコスト削減ができると見積もっていたほか,燃料費やメンテナンス費用の削 及び名古屋ベースが廃止された(乙4)。 イ被告は,本件サービス変更により,ミールの材料費として,年間で72万5000ドルのコスト削減ができると見積もっていたほか,燃料費やメンテナンス費用の削減も見込んでいた(弁論の全趣旨)。 ウ平成26年7月以降のミクロネシア路線の便数及び全IFSRのACFHの平均値は,おおむね,別紙2のとおり推移した。なお,被告は,平成26年7月の時点では,平成27年1月の運航時間総数は月5060時間と見積もっていたが,実際には更なる減便もあって4717時間にとどまり,それ以降の月をみても5060時間を超えたのは,同年2月(5272時間)及び3月(5504時間)のみであり,同年4月以降は,4000時間前後という状況が恒常化していた。また,同年4月以降の1人当たりのACFHの平均値は,60時間前後であった。 (乙4,証人D)エなお,被告は,IFSRに対し,IFSRとしての地位はそのままで,オフィスの手伝いや乗務員への伝達の手伝い等の職務を与えることがあり,本件解雇後もIFSRにこれらの業務をさせて,賃金支払の対象となる労働時間を確保したということがあった(甲30,証人D)。 (9) アジア地域における他の人員削減等平成26年に北京及び香港から成田への各路線が廃止された結果,北京ベース及び香港ベースが廃止され,平成27年にはシンガポールベースが廃止されるなどした。 平成26年から平成28年までの3年間で,日本以外のアジア地域において,従業員約600名のうち約260名の人員が削減され,そのほとんどはFAであった。 (証人D) (10) 被告の業績等ア被告は,平成26年に記録的な利益率を達成したとして,従業員に対し,過去最大のプロフィットシェアを支払った(甲17の①②)。 イ被告にお った。 (証人D) (10) 被告の業績等ア被告は,平成26年に記録的な利益率を達成したとして,従業員に対し,過去最大のプロフィットシェアを支払った(甲17の①②)。 イ被告においては,平成27年1月から6月までの間に,米国で新規採用されたFA約2000名が初期研修を終える予定であり,同人数は過去最大であった(甲23の①②)。 ウ被告は,平成27年4月15日,同年1月から3月までの業績として,調整後税引前利益が5億9400万ドルで,前年同期比で1億5000万ドル増加したこと,旅客収益は79億2300万ドルであり,前年同期比で3.2パーセント増加したこと,太平洋地区の旅客収益は約7億4000万ドルであり,前年同期比で10.5パーセント減少したこと,1月から3月までの業績としては,会社史上で最も良かったことなどを発表した(乙1)。 2 争点1(本件解雇の有効性)について(1) 本件解雇は,契約期間途中に行われたものであるから,「やむを得ない事由」がなければ有効とはいえず(労契法17条1項),同事由があるというためには,契約期間の満了を待たずに解雇を行わざるを得ない切迫した事情が必要であると解される。 (2) この点,被告は,前記第2の4(1)(被告の主張)のとおり主張して,本件解雇には「やむを得ない事由」がある旨主張する。 しかしながら,①そもそも被告が人員削減の必要性として挙げる本件サービス変更は,平成27年1月1日から実施するものであるのに対し,本件解雇は平成26年12月5日付けでなされたものであり,本件サービス変更と本件解雇の日が一致しているとはいえないこと,②被告は,本件サービス変更の結果,運航時間総数が月5060時間になると見込まれるとして,削減する人員を20名と算出したと主張しているところ,そもそ 変更と本件解雇の日が一致しているとはいえないこと,②被告は,本件サービス変更の結果,運航時間総数が月5060時間になると見込まれるとして,削減する人員を20名と算出したと主張しているところ,そもそも IFSRの契約において,月70時間のACFHが保障されているわけではないこと,③その点を措くとしても,本件サービス変更の月である平成27年1月の運航時間総数は5060時間を割り込んでいるものの,同年2月及び3月は,月5060時間を超過しており,この3か月の運航時間総数の平均値は月5164時間であって,被告見込み時間数である月5060時間を上回っていること, ④本件サービス変更の結果,5名で機内サービスを提供することが可能であるとしても,従前6名の乗務員が乗務していたことに鑑みれば,過渡期の対応として,5名を超える乗務員を乗務させる余地が全くないとも認め難いこと,⑤被告は,本件解雇に当たり,本件契約の終了日までの基本給を支払っており,本件解雇をしなくても,被告に新たな経済的負担が生ずるものでもないこと,以上の点が認められ,これらの点に鑑みると,本件サービス変更が被告の経営判断に属するものである点を考慮したとしても,これをもって,平成26年12月の時点において,平成27年3月の契約期間満了を待たずに,IFSRを8名削減しなければならない程度に切迫した必要性があったとまでは認められない。そして,全証拠を精査しても,このほかに契約期間が満了する前に原告を解雇しなければならなかったことを根拠付ける具体的な事情があったことを認めるに足りる的確な証拠は認められない。 (3) 以上によれば,被告の上記主張は理由がなく,本件解雇は無効であると解するのが相当である。 3 争点2(本件契約が,社会通念上期間の定めのない契約と同視できるか,又は更新さ 認められない。 (3) 以上によれば,被告の上記主張は理由がなく,本件解雇は無効であると解するのが相当である。 3 争点2(本件契約が,社会通念上期間の定めのない契約と同視できるか,又は更新されると原告が期待することに合理的な理由があるか)について(1) 本件契約が,社会通念上,期間の定めのない契約と同視できるか否かという点について原告は,①原告の業務内容がFAと同一であること,②原告らの契約上の地位はFAに準じる基幹的なものとして位置付けられていること,③上司で あるEらから雇用継続を期待させる発言があったこと,④原告については,9年間,9回の長期にわたる契約更新がなされていること,⑤更新手続が形骸化していることを挙げて,本件契約が実質的に期間の定めのない契約と同視できる旨主張する。 確かに,前記前提事実(3)アのとおり,原告被告間における労働契約は,これまでおおむね1年毎に9回更新され,約9年間にわたって雇用関係が継続していることが認められる。しかしながら,上記認定事実のとおり,①契約更新の際に契約内容が一部変更されることがあったこと,②基本的に契約更新の際には,被告が,新たな契約書を原告に交付し,契約内容に変更があれば,その内容について告知した上,署名を求めるという方法で,原告に対し,契約更新の意思を確認しており,これにより,原告も変更点を確認した上で,契約を更新するかどうかを決定していたこと,③契約期間の開始日までに原告に契約書が提示されなかったことがあるものの,その回数は1回のみであったこと(別紙1参照),以上の点に鑑みると,原告被告間の労働契約に係る更新手続が形骸化していたとまでは認められない。そして,IFSRとFAを比較すると,人事体系や賃金体系が異なっており,乗務する便も分けられていたのであるから, に鑑みると,原告被告間の労働契約に係る更新手続が形骸化していたとまでは認められない。そして,IFSRとFAを比較すると,人事体系や賃金体系が異なっており,乗務する便も分けられていたのであるから,IFSRが実質的にFAと同等の地位にあったという事情も認められない。 以上の事情を総合的に勘案すると,本件契約が,社会通念上,期間の定めのない契約と同視できる状態にであったとは認められない。したがって,原告の上記主張は採用できない。 (2) 契約継続に対する期待に合理的理由があったか否かという点について被告は,①IFSRとFAは,乗務する機体の違いにより,質的に業務の違いがある上,雇用の調整弁としての補充的な職務と位置付けられていたこと,②契約更新時には人員計画と業務態度の観点から,契約更新の可否を判断し,面談により十分な説明もしていたこと,③過去にも契約更新がされな かった者が複数いることなどを挙げ,本件契約が更新されると期待する合理的理由はない旨主張する。 アしかしながら,上記(1)のとおり,原告被告間における労働契約は,これまでおおむね1年毎に9回更新され,約9年間にわたって雇用関係が継続しているところ,同各契約書には更新があり得る旨が明記されていたこと,日本ベースにおいては,IFSRの方がFAよりも多く,ミクロネシア路線に乗務する日本ベースの乗務員は基本的にはIFSRのみであって,IFSRは,特定の路線において継続的に一定の役割を果たすなど,IFSRについては,単に契約更新があり得る有期労働契約というにはとどまらず,被告の内部で一定の継続的な役割を果たしていたこと,原告のシニオリティはIFSR全体では,相当下位であり,原告よりも勤続年数が長い(多くの更新がされている)IFSRが大半であったと認められること,以上のような 一定の継続的な役割を果たしていたこと,原告のシニオリティはIFSR全体では,相当下位であり,原告よりも勤続年数が長い(多くの更新がされている)IFSRが大半であったと認められること,以上のような客観的な事情を総合的に勘案すると,原告において,本件契約の契約期間が満了する平成27年3月31日時点において,本件契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認めるのが相当である。 イそして,被告の主張①については,IFSRは乗務する路線によっては,FAと同様の業務に従事していた上,日本ベースのIFSRについて,過去に雇用の調整弁として機能していた実情があるとまでは認められない。 また,被告の主張②についても,仮に,契約更新時に協議や説明がされていたとしても,それ自体,契約更新への期待の合理性を否定する事情とはいえない。さらに,被告の主張③については,契約更新がされなかったIFSRの人数等に関する主張を裏付ける的確な証拠は何ら提出されていない上,仮に,過去にIFSRの契約が更新されなかった事実があるとしても,それは恒常的なものではなく,例外的なものであったと推認でき,これをもって契約更新に対する期待の合理性を否定する積極 的な事情になるとまでは認められない。 ウ以上のとおり,被告の上記主張は採用できず,原告が本件契約の契約期間の満了時に原告が更新を期待することについて合理的理由があると認められる。 4 争点3(本件雇止めに係る客観的に合理的な理由及び社会通念上の相当性があるか)について(1) 本件雇止めに係る客観的合理的理由等の判断基準について本件雇止めは,被告が,本件サービス変更に伴い,IFSRの人員が余剰になったことを理由としてなされたものであり,労働者(原告)の責に帰すべき事由によるものとはいえない 理的理由等の判断基準について本件雇止めは,被告が,本件サービス変更に伴い,IFSRの人員が余剰になったことを理由としてなされたものであり,労働者(原告)の責に帰すべき事由によるものとはいえないことから,本件雇止めについて,客観的に合理的な理由があり,かつ,社会通念上の相当であるといえるか否かを判断するに当たっては,期間の定めのない契約との差異等を十分に踏まえつつ,解雇における整理解雇の場合に準じて,①人員削減の必要性,②雇止め回避努力,③手続の相当性,④人選の合理性の各事情を総合的に考慮して判断するのが相当というべきである。 (2) 人員削減の必要性についてア確かに,上記認定したとおり,被告の業績において,太平洋地区の収益性が他の路線に比べて劣っていたことは認められ,収益性を上げるための経営合理化策として,ミクロネシア便について,本件サービス変更を実施したこと自体,被告の経営判断として合理性がないとはいえない。また,実際に,平成27年1月以降,乗務員1名を減員させて業務を遂行させたことで,特段の支障が生じたとはうかがえず,減員することが客観的に可能であったことに照らすと,ミクロネシア便の乗務員のうちIFSR1名を減員させるという経営判断自体,著しく不合理であるとまでは認められない。 イしかしながら,上記1(10)のとおり,被告は,多額の収益を上げるな ど,その業績は好調に推移しており,平成26年に記録的な利益率を達成したとして,従業員に対し,過去最大のプロフィットシェアを支払い,米国で過去最大数の新規採用をしているなど,人件費等の経費を削減しなければ経営状況が悪化するなどの事情は見当たらない。 また,本件サービス変更に伴い,必然的に乗務員の全体の作業量が減少するものの,被告は,他の路線において同様のサービス変更が 件費等の経費を削減しなければ経営状況が悪化するなどの事情は見当たらない。 また,本件サービス変更に伴い,必然的に乗務員の全体の作業量が減少するものの,被告は,他の路線において同様のサービス変更が生じた際に,乗務員を減らしていない上,作業量の減少が乗務員1名を減員させるに見合う程度のものかどうかも具体的に明らかとされていないことに鑑みれば,同変更に伴って人員を削減することについて,高度の必要性があったとは認め難い。 ウもっとも,同減員に伴い,別紙2のとおり,必然的にIFSR全体の実働乗務時間が減少することとなるのであって,契約上,賃金の目安として月70時間の実働乗務時間を前提とした基本給が定められていたことに鑑みれば,1人当たりの乗務時間数の減少を回避するため,人員を削減する必要性が全くなかったとまではいえない。 (3) 雇止め回避努力についてア(ア) 被告は,本件サービス変更により,材料費として,年間で72万5000ドルのコスト削減ができると見積もりをしていたこと,本件雇止め時点においては,15名が希望退職に応じたことで,相当程度の人件費削減も実現されていたと推認できること,以上のような客観的な状況を踏まえると,本件雇止め時点において,ミクロネシア便の乗務員数を維持するか,IFSRの基本乗務時間を引き下げて基本給を維持するなどの方法により,人件費を維持したまま本件サービス変更を実施し,雇止めを回避することも十分に可能であったと認められる。 (イ) また,以上の点に加えて,①被告は,本件雇止め前後において,従業員に対し,賞与や多額のプロフィットシェアを支給していたこと,② IFSRは,FAと同様の業務を行っていたのであり,従前,被告がIFSRを太平洋路線やアジア路線などの他の路線にも従事させていたことに鑑みれば,IF のプロフィットシェアを支給していたこと,② IFSRは,FAと同様の業務を行っていたのであり,従前,被告がIFSRを太平洋路線やアジア路線などの他の路線にも従事させていたことに鑑みれば,IFSRを日本ベースのFAと同じ便に乗務させないことができなかったとは認め難いこと,③被告は,本件解雇後, IFSRに対し,乗務以外の業務を与えて,賃金水準を確保していること,以上の点をも併せ鑑みれば,被告が希望退職を募集している点を考慮したとしても,本件雇止めについては,これを回避すべく他の取り得る手段を十分に尽くしたとは認め難いといわざるを得ない。 イ以上によれば,被告は,本件雇止めを回避するための十分な努力を尽くしていたとまで認めることができない。 (4) 人選の合理性本件解雇の対象となったIFSR5名はシニオリティの低い順で選定されたものであるから,これに続く本件雇止めもシニオリティの低い順で選定されたとみるのが相当である。そうすると,被告は,対象者の選定を恣意的に行ったものではなく,一定の客観的基準によって行ったと認められる上,勤務年数の長い者が残るように選定基準を定めること自体,不合理とはいえないから,本件雇止めにつき,人選の方法や基準が不合理であるとは認められない。 (5) 手続の相当性上記認定したとおり,被告は,平成26年7月31日,原告を含むIFSRに対し,ミクロネシア便におけるサービスの簡素化によりIFSRを削減することや希望退職プログラムについて周知した上,同年8月15日に実施した説明会において,ミクロネシア便の乗務員減員により,基本乗務時間月70時間を確保することが困難になることや削減する人数として20名を予定していることなどを説明したこと,被告は,原告からの質問に対し,平成27年1月の乗務時間が月65時間 減員により,基本乗務時間月70時間を確保することが困難になることや削減する人数として20名を予定していることなどを説明したこと,被告は,原告からの質問に対し,平成27年1月の乗務時間が月65時間となる見込みであるなど の内容を回答したこと,以上の点が認められ,これらの経緯に照らせば,ホットミールサービスを廃止することを上記説明会や本件解雇通知書においても明言していなかった点で不十分さはうかがわれるものの,被告は,人員削減をする理由や根拠を説明し,原告からの問合せにも応じており,相応の手続を実施したということができる。 (6) 小括以上認定説示した点を総合的に考慮すると,確かに,人選の合理性や手続の相当性の点については問題があるとはいえないものの,人員削減の必要性の程度は低いというべきである上,十分な雇止め回避努力がされていたとはいえないから,本件雇止めは,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であるとは認められない。 したがって,労働契約法19条により,原告と被告は従前と同一の条件で労働契約を更新したものとみなすことができるから,原告は,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあるというべきである。 5 争点4(賃金等の支払請求権の有無)について(1) 月額賃金についてア上記のとおり,本件解雇及び本件雇止めはいずれも無効であり,原告は労働契約上の権利を有する地位にあるから,原告は,被告から就労を拒否された平成26年12月5日以降の賃金請求権を有すると認められる(なお,平成27年3月分までの賃金相当額は支払済みである。)。 被告は,原告の賃金は,最低保障のない完全歩合制であるから,現実の乗務がない以上,賃金額は0円となる旨主張する。しかしながら,そもそも原告が現実に乗務していないのは,被告が原告の就労を拒否 。)。 被告は,原告の賃金は,最低保障のない完全歩合制であるから,現実の乗務がない以上,賃金額は0円となる旨主張する。しかしながら,そもそも原告が現実に乗務していないのは,被告が原告の就労を拒否したからであって,被告が拒否しなければ,原告は,平成26年12月以降も乗務員としての業務に従事していたと認められる。したがって,被告は,原告に対し,民法536条2項により,賃金支払義務を負っていると解するのが 相当であり,この点に関する被告の主張は理由がない。 イ(ア) ところで,原告は,平成27年4月以降も,本件解雇前3か月の賃金平均額である24万7284円と同額の月例賃金が認められるべきである旨主張する。しかしながら,本件契約においては,ACFHに応じて賃金が支給され,毎月変動していたと認められるところ,上記1(8)ウで認定したとおり,本件雇止めにより人員削減をしてもなお,同月以降の実際のACFHの平均値は,本件解雇前3か月と比較しても相当程度減少していると認められることからすると,原告の上記主張は採用できない。 (イ) そこで,原告の平成27年4月以降における月額賃金額について検討するに,本件解雇及び本件雇止めの対象とならなかった他のIFSRが平成27年4月以降に得ていた賃金は,基本的に,各IFSRの時間給にACFHを乗じた金額であったと認められるから,原告についても別紙2の実際のACFHの平均値を踏まえ,これと同等の条件で賃金額を算定するのが相当というべきである。そうすると,原告の本件雇止め時における時間給2895円(≒20万2643円÷70時間)を前提に,報償手当として月額8600円を加算して,平成27年4月から同年11月までの原告の賃金平均額を算定すると,別紙2のとおり,17万7125円となる。したがって,平成27年4 3円÷70時間)を前提に,報償手当として月額8600円を加算して,平成27年4月から同年11月までの原告の賃金平均額を算定すると,別紙2のとおり,17万7125円となる。したがって,平成27年4月以降の原告の月額賃金額については,17万7125円と認めるのが相当である。 (2) プロフィットシェアについて原告は,被告が,プロフィットシェアを毎年全社員に支給してきたこと,全社的にイントラネットで通知していること等から,プロフィットシェアを支給することが,明示的又は黙示的に原告被告間における労働契約の内容となっている旨主張する。 アしかしながら,上記認定したとおり,プロフィットシェアを支給することに関する契約条項や支給規定は存在していないこと,同支給額は,前年の業績に従って被告が任意に決定していたこと,以上の点が認められ,これらの点に鑑みると,未だ被告が支給を決定していない分のプロフィットシェアについて,原告が被告に対して具体的な請求権を有しているとは認められない。 イもっとも,弁論の全趣旨によれば,被告は,平成28年支給分のプロフィットシェアとして,全従業員を対象として,実収入の21.46パーセントに相当する金額を支給することを決定したことが認められる。そうすると,原告は,被告に対し,別紙2のとおり算定した賃金額を実収入(なお,平成27年1月から同年3月分の賃金額についても,ACFHの平均値に基づいて算定するのが相当である。)として,その21.46パーセントに相当する47万5517円(≒221万5829円×0.2146)のプロフィットシェアの支払請求権を有していると認めるのが相当である。 (3) 賞与について被告において,賞与の支給に関して定めた契約条項や支給規定は見当たらず,被告がこれまで原告に対して基本 のプロフィットシェアの支払請求権を有していると認めるのが相当である。 (3) 賞与について被告において,賞与の支給に関して定めた契約条項や支給規定は見当たらず,被告がこれまで原告に対して基本給3か月分に相当する額の賞与を支給してきたとの事実をもって,賞与支給に関する黙示の契約が成立したと解することもできない。また,賞与については,プロフィットシェアと異なり,一律に支給率等を定めた上で全従業員に対して支給されていたことを認めるに足りる的確な証拠は認められない。そうすると,原告は,被告に対し,賞与の支払を求める請求権を有しているとはいえない。 6 結論以上によれば,原告の本件各請求は,主文掲記の範囲で理由があるから認容することとし,その余についてはいずれも理由がないから棄却することと して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官内藤裕之 裁判官前原栄智 裁判官甲斐雄次

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