令和3(ワ)12091 発信者情報開示等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年11月25日 東京地方裁判所
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判決文本文6,993 文字)

1 令和3年11月25日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官令和3年(ワ)第12091号 発信者情報開示等請求事件口頭弁論終結日 令和3年10月25日判決 5 原告A 被告株式会社NTTドコモ 同訴訟代理人弁護士南谷健太10 同藏田彩香 同二神拓也 同平田憲人 同渡邉 峻 同上田雅大15 同横山経通主文1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由20第1 請求主文同旨。 第2 事案の概要1 事案の要旨本件は,原告が,氏名不詳者がツイッターに投稿した画像は,原告がツイッターに投稿25した原告の著作物である文章や写真を表示させた画面のスクリーンショットであり,同投 2 稿によって原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたことが明らかであると主張して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,別紙発信者情報目録記載の氏名や住所等の情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。 52 前提事実(証拠等の掲示のない事実は,当事者間に争いがない。なお,枝番号の記載を省略したものは,枝番号を含む。)(1) 原告による投稿原告は,令和3年1月17日,ツイッター・インク(以下「ツイッター社」という。)が運営するソーシャルネットワーキングサービスであるツイッターに,大阪府の新型コロナ10ウイルスへの対応を批判する内容の文章等を記載した別紙 日,ツイッター・インク(以下「ツイッター社」という。)が運営するソーシャルネットワーキングサービスであるツイッターに,大阪府の新型コロナ10ウイルスへの対応を批判する内容の文章等を記載した別紙原告投稿記事目録1記載の記事(以下「原告投稿記事1」という。)を投稿した。(甲8)原告は,同月25日,ツイッターに,ダイエットによる原告の体重の変化等を記載した文章と,上半身の衣服を脱いだ原告の腰から上の部分を原告の右側から撮影した3枚の写真(以下「本件各写真」という。)を掲載した同目録2記載の記事(以下「原告投稿記事2」15という。)を投稿した。(甲8)(2) 本件各投稿ア 氏名不詳者は,令和3年1月17日,自身が使用するスマートフォンで原告投稿記事1を表示させた画面のスクリーンショットを作成し,同日から同月26日にかけて,別紙投稿記事目録記載のユーザー名のアカウント(以下「本件アカウント」という。)を利用20して,同目録1~6記載のとおり,ツイッターに,同スクリーンショットの画像を添付して表示させた記事を6回投稿した。(甲7)イ 氏名不詳者は,令和3年1月25日から同月30日までの間に,自身が使用するスマートフォンで原告投稿記事2を表示させた画面のスクリーンショットを作成し,同月30日,本件アカウントを利用して,別紙投稿記事目録7記載のとおり,ツイッターに,同25スクリーンショットの画像を添付して表示させた記事を投稿した(以下,別紙投稿記事目 3 録記載の各投稿を,その番号に従って「本件投稿1」などといい,本件投稿1~7を総称して「本件各投稿」という。また,本件各投稿を行った氏名不詳者を「本件投稿者」という。)。(甲7)(3) 本件ログインツイッター社は,令和3年3月17日,原告に対し,本件アカウントに 7を総称して「本件各投稿」という。また,本件各投稿を行った氏名不詳者を「本件投稿者」という。)。(甲7)(3) 本件ログインツイッター社は,令和3年3月17日,原告に対し,本件アカウントにログインがあっ5た際の複数のIPアドレスと,それらのIPアドレスが割り当てられた電気通信設備からツイッター社の用いる特定電気通信設備にログイン情報が送信された日時を開示した。これによれば,氏名不詳者が,令和3年2月8日午前5時56分,IPアドレス「(省略)」が割り当てられた電気通信設備から,ツイッターの本件アカウントにログインしたことが認められる(以下「本件ログイン」という。)。(甲2,3)10(4) 本件発信者情報本件発信者情報は,本件ログインに使用された電気通信回線の本件ログイン時における契約者に関する情報である。(弁論の全趣旨)(5) 被告による本件発信者情報の保有被告は,電気通信事業を営む株式会社であり,本件発信者情報を保有している。 153 争点(1) 権利侵害が明らかであるか【原告の主張】原告投稿記事1は,大阪府の新型コロナ対策について,原告という人物を特定する思想と感情を創作的に表現したものであって,文芸の範囲に属する言語の著作物である。 20原告投稿記事2は,原告のダイエット方法について文章で表現しつつ,本件各写真を掲載して,原告という人物を特定する思想と感情を創作的に表現したものであって,同文章部分と本件各写真は,それぞれ文芸と美術の範囲に属する言語と写真の著作物である。 なお,著作者である原告の許可なく原告のツイートのスクリーンショットを使用することは,ツイッター社の規約違反であり,引用の要件である出典(URL)の明示も行われ25ていないから,引用の要件を満たさない。 4 許可なく原告のツイートのスクリーンショットを使用することは,ツイッター社の規約違反であり,引用の要件である出典(URL)の明示も行われ25ていないから,引用の要件を満たさない。 4 したがって,本件各投稿により,原告投稿記事1及び2に係る原告の著作権が侵害されたことは明らかである。 【被告の主張】原告投稿記事1及び2は,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)に該当するか疑義がある。 5また,本件各投稿は,原告の意見に対する批評のために原告投稿記事1及び2を引用して行われており,仮に著作物性が認められたとしても,引用(著作権法32条1項)に該当する可能性がある。 したがって,本件各投稿による原告の権利侵害が明らかであるとはいえない。 (2) 本件発信者情報が「権利の侵害に係る発信者情報」に当たるか10【原告の主張】ツイッターのアカウントにログインするためにはIDとパスワードが必要であり,ログインできるのはアカウントを運用している本人だけである。また,本件投稿者は,本件各投稿をした後も,ツイッター上で原告を批判したり誹謗中傷したりする投稿を繰り返しており,そのうちの1つは,本件ログインがあった令和3年2月8日午前5時56分に極め15て近接した同月7日午後5時32分になされたものである。 したがって,本件ログインを行った者と本件投稿者が同一人物であることは明らかである。 なお,ログイン時の通信に係る発信者情報も,侵害情報の発信者の特定に資する情報として「権利の侵害に係る発信者情報」に当たるから,これに反する被告の主張は失当であ20る。 【被告の主張】ログイン時の通信に係る発信者情報は,権利侵害情報を投稿した通信そのも に資する情報として「権利の侵害に係る発信者情報」に当たるから,これに反する被告の主張は失当であ20る。 【被告の主張】ログイン時の通信に係る発信者情報は,権利侵害情報を投稿した通信そのものではないから,「権利の侵害に係る発信者情報」とはいえない。 かかる点を措くとしても,ツイッターのようなログイン型サービスは,当該サービスの25利用のために作成したアカウントにログインし(すなわちログイン情報を送信し),当該ロ 5 グイン状態を前提として投稿を行う仕組みであることからすれば,投稿後のログイン情報の送信が投稿時と同一人物によってなされたと解する根拠に乏しい。むしろ,本件アカウントは,被告以外にも複数の経由プロバイダを経由してログインされており,被告を経由したログイン情報はごく一部にすぎないのであるから,様々な人物が様々な経由プロバイダを経由してログインしている可能性が高い。実際,本件ログインを行った者は,被告か5らの意見照会に対して,本件各投稿を行っていないと回答している。 (3) 電子メールアドレス及び電話番号の開示を受けるべき正当な理由があるか【原告の主張】原告は,本件投稿者への損害賠償請求権の行使に当たり,民事訴訟の前に任意での示談交渉を検討している。そのためには本件投稿者と直接に連絡が取りやすい電子メールアド10レス及び電話番号の各情報が必要であり,開示を受けるべき正当な理由がある。 【被告の主張】氏名又は名称及び住所の開示を受けることができる場合には,それだけで損害賠償請求権の行使が可能であるから,電子メールアドレス及び電話番号の開示を受けるべき正当な理由はない。 15第3 当裁判所の判断1 争点1(権利侵害が明らかであるか)について(1) 著作物性前記前提事実のとおり,本件 電子メールアドレス及び電話番号の開示を受けるべき正当な理由はない。 15第3 当裁判所の判断1 争点1(権利侵害が明らかであるか)について(1) 著作物性前記前提事実のとおり,本件各投稿は,全て本件アカウントを利用してなされたものであり,事案に照らし,本件各投稿による各著作権侵害のいずれかが認められれば,他の要20件を充足する限り,本件発信者情報の開示が認められる関係にあるところ,原告もこれらを選択的に主張していると解される。そこで,事案に鑑み,まず本件投稿7について判断する。 証拠(甲8)によれば,原告投稿記事2を構成する文章は,原告が,ダイエットによる原告の具体的な体重の変化,それに関する友人との会話,友人に対する感謝の気持ち等に25ついて,独自の文章構成や表現を用いて作成したものであると認められる。また,同証拠 6 によれば,原告投稿記事2を構成する本件各写真は,原告が,デジタルカメラのセルフタイマー機能を用いて,上半身の衣服を脱いだ自分自身の腰から上の部分を自身の右側から撮影したものであり,撮影対象や構図等について独自の工夫がされたものであると認められる。そのため,原告投稿記事2を構成する文章及び本件各写真は,原告の思想又は感情を創作的に表現した著作物に当たるというべきである。 5したがって,本件投稿7によって,原告投稿記事2を構成する文章及び本件各写真についての原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたと認められる。 (2) 引用(著作権法32条1項)該当性著作権法32条1項によって公表された著作物を引用して利用することが許されるのは,その引用が,公正な慣行に合致し,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な10範囲内で行われる場合である。 そこで,本件投稿7についてみるに,証拠 を引用して利用することが許されるのは,その引用が,公正な慣行に合致し,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な10範囲内で行われる場合である。 そこで,本件投稿7についてみるに,証拠(甲7)によれば,同投稿は,その内容自体からして,大阪府の新型コロナウイルスへの対応に対する批判(原告投稿記事1の内容)とは何ら関係のない原告の体型に関する原告投稿記事2の内容を揶揄したものにすぎないというほかない。そうすると,本件投稿7における原告投稿記事2の利用について,批評15等のために正当な範囲内で行われたものと認めることはできない。 したがって,本件投稿7は適法な引用(著作権法32条1項)には当たらない。 (3) 小括以上によれば,本件投稿7によって,原告投稿記事2を構成する文章及び本件各写真についての原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかであると認められる。 202 争点2(本件発信者情報が「権利の侵害に係る発信者情報」に当たるか)について証拠(甲9)及び弁論の全趣旨によれば,ツイッターで記事を投稿するためには,ツイッター上の特定のアカウントにログインする必要があり,特定のアカウントにログインするためには,当該アカウントに係るIDとパスワードを入力する必要があることが認められる。ツイッターがこのような仕組みを採用していることからすれば,ツイッター上の特25定のアカウントにログインした者と,同アカウントからツイッターに記事を投稿した者は, 7 同一人物である可能性が高いといえる。加えて,証拠(甲12)によれば,令和3年2月2日や同月7日にも,本件アカウントからは,原告がツイッターに投稿した別の記事に批判的に言及する投稿が繰り返されていると認められる。これらの事情を踏まえると,本件ログインを行った者 ば,令和3年2月2日や同月7日にも,本件アカウントからは,原告がツイッターに投稿した別の記事に批判的に言及する投稿が繰り返されていると認められる。これらの事情を踏まえると,本件ログインを行った者と,本件アカウントから本件各投稿を行った本件投稿者は同一人物であると推認するのが相当であり,本件発信者情報は本件投稿者のものと認めるのが相当で5ある。 したがって,本件発信者情報は,原告の本件各写真についての著作権の侵害に係る発信者情報に当たる。 これに対し,被告は,ログイン時の通信に係る発信者情報は,権利侵害情報を投稿した通信そのものではないから,「権利の侵害に係る発信者情報」とはいえないなどと主張する10が,プロバイダ責任制限法4条1項が「権利の侵害に係る発信者情報」と規定していること等に照らせば,侵害情報の発信そのものから把握される発信者情報だけでなく,侵害情報の発信に関連して把握され,同侵害情報の発信者と同一人物によるものと認められる電気通信に係る発信者情報であっても,「権利の侵害に係る発信者情報」に当たり得るというべきである。 15また,被告は,本件アカウントには被告以外にも複数の経由プロバイダを経由したログインがされている,本件ログインを行った者が本件各投稿を行ったことを否定しているなどと主張するが,証拠(甲3,5)によれば,本件アカウントにログインする際に経由された被告以外の経由プロバイダは1つしかなく,また,その他の証拠を精査しても,前記認定を左右する事情は認められない。 20以上によれば,被告の上記各主張はいずれも採用できない。 3 争点3(電子メールアドレス及び電話番号の開示を受けるべき正当な理由があるか)について前記前提事実及び弁論の全趣旨によれば,原告は,原告の本件各写真についての著作権侵害につ 採用できない。 3 争点3(電子メールアドレス及び電話番号の開示を受けるべき正当な理由があるか)について前記前提事実及び弁論の全趣旨によれば,原告は,原告の本件各写真についての著作権侵害について,本件投稿者に対して損害賠償請求等を行うことを予定していると認められ25る。 8 したがって,原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるといえる。 これに対し,被告は,氏名又は名称及び住所の開示を受けることができる場合には,それだけで損害賠償請求権の行使が可能であるから,電子メールアドレス及び電話番号の開示を受けるべき正当な理由はないと主張する。しかし,プロバイダ責任制限法4条1項の発信者情報を定める省令は,侵害情報の発信者の特定に資する情報として,発信者の氏名5又は名称,住所,電話番号,メールアドレス等を並列的に規定している。また,開示役務提供者が保有する発信者の氏名や住所が開示されただけで確実に同人に対する権利行使が可能になるとまでは当然にはいえず,本件でそのような事情があると認めることもできない。そのため,被告の上記主張は採用できない。 4 結論10以上によれば,本件投稿1~6による権利侵害性などその余の点について判断するまでもなく,本件請求は理由があるからこれを認容することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 15 裁判長裁判官田中孝一 20 裁判官鈴木美智子 25 9 裁判官稲垣雄大 5 10 15 鈴木美智子 25 9 裁判官稲垣雄大 5 10 15 10 (別 紙) 発 信 者 情 報 目 録 別紙投稿記事目録記載8のログイン日時に,同目録記載8のIPアドレスを割り当てられ5た電気通信設備から,同目録記載9の接続先IPアドレスのいずれかに対して通信を行った電気通信回線の,同日時における契約者に関する次の情報。 1 氏名又は名称 102 住所 3 電子メールアドレス 4 電話番号15 以 上 20 (別紙投稿記事目録 省略)(別紙原告投稿記事目録 省略)25

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