主文 1 控訴人A及び同Bを除くその余の控訴人らの控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用(参加費用を含む。)は、控訴人A及び同Bを除くその余の控訴人らの負担とする。 3 本件訴訟のうち、控訴人Aの請求に関する部分は、令和5年4月25日、同 控訴人の死亡により終了し、控訴人Bの請求に関する部分は、令和7年5月31日、同控訴人の死亡により終了した。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決中、控訴人ら敗訴部分を取り消す。 2 原子力規制委員会が平成26年9月10日付けで九州電力株式会社に対してした核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律43条の3の8第1項に基づく川内原子力発電所1号炉及び2号炉に対する設置変更許可処分を取り消す。 (以下、上記発電所を「川内原発」といい、上記処分を「本件処分」という。そ のほかの用語の略称は、別紙2略称目録記載のとおりである。)第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、原審原告らが、被控訴人に対し、原子力規制委員会が参加人に対してした本件処分の取消しを求めた抗告訴訟である。 原審は、控訴人C、同D、同E、同F、同G、原審原告H及び同Iの訴えを却下し、その余の原審原告らの訴えを棄却した。控訴人らは、これを不服として控訴をした。控訴人A及び同Bは、当審係属中に死亡した。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実、顕著な事実、後掲証拠(なお、証拠の表記において枝番を省略する。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により認めら れる事実) ⑴ 当事者等ア控訴人ら(控訴人A及び同Bを除く。以下同じ。)は、別紙1当事者目録記載の肩書住所地に居住している。 イ参加人は、電力事業等を目的とする株式会社であり、鹿児島県薩摩 ⑴ 当事者等ア控訴人ら(控訴人A及び同Bを除く。以下同じ。)は、別紙1当事者目録記載の肩書住所地に居住している。 イ参加人は、電力事業等を目的とする株式会社であり、鹿児島県薩摩川内市a町に所在する川内原発に本件各原子炉を設置している。 ウ原子力規制委員会は、設置法2条、国家行政組織法3条2項に基づき、環境省の外局として設置された行政機関である。原子力規制庁は、原子力規制委員会の事務を処理するために同委員会の事務局として設置された組織である。 エ JNESは、原子力の安全の確保のための基盤の整備を図ることを目的 とする独立行政法人である。(乙A7)オ IAEAは、原子力の平和的利用を促進するとともに、原子力が平和的利用から軍事的利用に転用されることを防止することを目的として設立された国際機関である。IAEAは、健康を保護し、生命及び財産に対する危険を最小にするための安全上の基準を設定し又は採用する権限を有する。 (乙A4、5)カ ICRPは、放射線から人や環境を守る仕組みにつき専門家の立場から勧告を行う国際学術組織である。(乙D39)⑵ 原子力発電の原理、構造原子力発電は、ウラン燃料が核分裂する際に放出する熱エネルギーを利用 して水を蒸気に変えて、蒸気の力でタービンを回転させて発電することを基本的な原理とする発電方法であり、中性子が原子核に衝突し、衝突により原子核が分裂し、エネルギーを発生させるとともに中性子を放出し、放出された中性子が更に別の原子核に衝突して核分裂を起こす過程を繰り返すという核分裂連鎖反応を利用している。 発電用原子炉は、核分裂連鎖反応を制御して、これを継続的に行わせるこ とで熱エネルギーを発生させる装置である。その中心部である炉心は、 程を繰り返すという核分裂連鎖反応を利用している。 発電用原子炉は、核分裂連鎖反応を制御して、これを継続的に行わせるこ とで熱エネルギーを発生させる装置である。その中心部である炉心は、核分裂反応を起こす核燃料、核分裂で新たに発生した高速の中性子を次の核分裂反応が起こりやすい状態にまで減速させるための減速材、発生した熱を取り出すための冷却材及び核分裂連鎖反応を制御するための制御材等によって構成されている。 発電用原子炉のうち、減速材及び冷却材の役割を果たすものとして水を用いるものを軽水型原子炉という。軽水型原子炉の型式には、沸騰水型原子炉及び加圧水型原子炉がある。加圧水型原子炉は、原子炉内を加圧して冷却材である水(一次冷却材)を沸騰させることなく、水を高温、高圧の液体の状態で維持し、この熱水を熱源として別の系統の水(二次冷却材)を蒸気に変 えて、主蒸気管を通じて蒸気をタービンに送って発電する方式のものをいう。 核燃料には、二酸化ウランを円柱状に焼き固めた燃料ペレットが使用されている。燃料ペレットを金属管に被覆したものを燃料棒といい、この燃料棒をまとめた燃料集合体が炉心を構成している。(乙C1)⑶ 本件各原子炉の概要 本件各原子炉は加圧水型原子炉である。1号機は、電気出力が89万キロワット、燃料装荷量が約72トン(燃料集合体にして157本)であり、燃料として低濃縮二酸化ウランを使用している。2号機の出力、燃料及びその装荷量は、概ね同じである。1号機は、平成23年5月に定期点検を開始して運転を停止し、平成27年9月に運転を再開した。2号機は、昭和60年 に営業運転を開始し、平成23年9月に定期点検を開始して運転を停止し、平成27年11月に運転を再開した。 本件各原子炉には、平成27年3月 27年9月に運転を再開した。2号機は、昭和60年 に営業運転を開始し、平成23年9月に定期点検を開始して運転を停止し、平成27年11月に運転を再開した。 本件各原子炉には、平成27年3月末日時点で、使用済みの燃料が合計1946本、使用前の燃料が合計88本貯蔵されていた。(甲B1、乙C1)⑷ 放射性物質 ア放射性物質とは、放射線を放つ物質をいい、放射線を浴びることを被ば くという。放射性物質には、放射線を発射しながら原子核を崩壊させ、次第に放射線を出す能力(放射能)が弱まるという性質がある。放射線が弱まる速度は、原子核の種類によって異なり、放射能が半分になる期間を半減期という。半減期は、ヨウ素131が8.04日、セシウム137が30.1年、プルトニウム239が2万4390年である。 人体が被ばくすると、分子が切断されて健康被害が生ずるおそれがあるほか、切断された分子が修復作用により再結合する際に遺伝子が組み替えられて結合することによって健康被害が生ずるおそれがある。放射線によりDNAが損傷した場合、正常な細胞ががん化することもある。 (甲A73、乙D36) イ放射線に関する単位には、ベクレル、グレイ及びシーベルトがある。ベクレルは、1秒間に崩壊する原子核の数をいい、放射性物質の量を表す。 グレイは、1㎏当たり1ジュールのエネルギーを吸収する放射線量を「1」とする単位であり、物質が吸収した放射線量を表す。シーベルトは、放射線の種類や組織、臓器による人体への影響の違いを反映し、足 し合わせを可能にした単位であり、放射線が人体に与える影響を表す場合や、生物が被ばくした量を表す場合に用いられる。(甲A1、73、乙D32)ウ原子炉施設には、多重の物理的防護壁が し合わせを可能にした単位であり、放射線が人体に与える影響を表す場合や、生物が被ばくした量を表す場合に用いられる。(甲A1、73、乙D32)ウ原子炉施設には、多重の物理的防護壁が設けられているが、防護壁が機能しない場合、原子炉内の核燃料をはじめとする放射性物質が周辺環境 に放出される。大気へ放出される可能性のある放射性物質には、クリプトン、キセノン等の放射性希ガス、揮発性の放射性ヨウ素等がある。これらの物質は、大気中に放出されると、空気の一団となって、移動距離が長くなる場合には拡散して濃度が低くなる傾向があるものの、風下方向の広範囲に影響が及ぶ可能性がある。降雨雪により地表に沈着して長 期間とどまる場合、土壌やがれき等に付着する場合、冷却水にとどまる 場合もある。このように、事故が発生した場合の放出形態は、単一的なものではなく、複合的なものとなる。(乙A34)⑸ チェルノブイリ原発事故チェルノブイリ原発は、旧ソビエト連邦チェルノブイリに所在した原子力発電所である。原子炉の型式は黒鉛減速・沸騰軽水冷却・チャンネル炉であ り、4基の原子炉が設置されていた。4号機は、電気出力が100キロワット、燃料装荷量が194トンであった。1986年(昭和61年)4月26日、4号機において爆発事故が発生し、炉心及び原子炉建屋が瞬時に破壊され、大量の放射性物質が大気中に拡散した。(甲A48、114)⑹ 福島第1原発事故 福島第1原発は、福島県双葉郡に所在した原子力発電所である。型式は沸騰水型原子炉であり、6基の原子炉が設置されていた。電気出力は1号機が46キロワット、2号機ないし4号機が78.4キロワットであった。平成23年3月11日、東北地方三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の東 炉であり、6基の原子炉が設置されていた。電気出力は1号機が46キロワット、2号機ないし4号機が78.4キロワットであった。平成23年3月11日、東北地方三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震が発生し、その地震動及び津波等で1号機ないし4号機 の全電源が喪失した。これにより1号機ないし3号機の炉心が損傷し、1号機、3号機及び4号機の原子炉建屋内で水素爆発が発生し、大量の放射性物質が大気中に拡散した。(甲A1)⑺ 法改正福島第1原発事故の後、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会が国会 に設置され、原子力関連法制の見直しが提言されるなどし、基本法、規制法の改正及び設置法の制定が行われた。この改正により設置された原子力規制委員会は、規制法43条の6第1項4号所定の基準を策定することなどを目的として新規制基準検討チームを設置した。新規制基準検討チームは、各会合での議論、意見公募手続等を経て、平成25年6月、設置許可基準規則を 制定するとともに、設置許可基準規則解釈及び火山ガイドを発した。これら の規則等は、同年7月8日に施行された。(乙A3、C4)⑻ 安全目標原子力規制委員会は、平成25年4月10日、原子炉の安全性に関し、旧原子力安全委員会での安全目標に関する議論を踏まえて、原子力規制委員会が原子力施設の規制を進めていく上で達成を目指す目標という趣旨で安全目 標を定めること、安全目標を議論するに当たり、旧原子力安全委員会安全目標専門部会における検討結果を議論の基礎とすること、ただし、発電用原子炉については、事故時のセシウム137の放出量が100テラベクレルを超えるような事故の発生頻度は100万炉年に1回程度を超えないように抑制されるべきである旨を追加すること、安全目標に関 、発電用原子炉については、事故時のセシウム137の放出量が100テラベクレルを超えるような事故の発生頻度は100万炉年に1回程度を超えないように抑制されるべきである旨を追加すること、安全目標に関する議論は、継続的な安 全性向上を目指す原子力規制委員会として、今後とも引き続き検討を進めていくことなどに合意した。(乙A95、乙C5)⑼ 手続の経過参加人は、平成25年7月8日付けで、原子力規制委員会に対し、本件各原子炉につき発電用原子炉設置変更許可を申請し、原子力規制委員会は、平 成26年9月10日付けで、本件処分をした。 原審原告らは、平成26年11月7日、原子力規制委員会に対し、本件処分につき異議申立てをした。原子力規制委員会は、平成27年12月11日、異議申立てを棄却した。原審原告らは、同月13日以降に棄却決定があったことを知り、平成28年6月11日、本件訴訟を提起した。 3 争点及びこれに関する当事者の主張以下のとおり付加するほか、原判決「事実及び理由」第2の4を引用する。 4 当審における当事者の主張⑴ 原告適格(控訴人らの主張) 放射性物質は、人体の細胞に細胞死やがん化を生じさせ、白血病をはじめ とする重大な疾病を発症させるおそれがあること、規制法が、国民の生命・健康の保護等という目的を達成するため、原子炉の設置許可申請から稼働、核燃料物質等の廃棄に至るまで、被ばく量を年間1ミリシーベルト以下に抑えるよう要求していることのほか、放射性同位元素等の規制に関する法律、電離放射線障害防止規則、人事院規則の定めにも照らせば、年20ミリシー ベルトを超える被ばくのおそれのある地域に限らず、年1ミリシーベルトを超える被ばくのおそれがある地域に居住する者に原告適 、電離放射線障害防止規則、人事院規則の定めにも照らせば、年20ミリシー ベルトを超える被ばくのおそれのある地域に限らず、年1ミリシーベルトを超える被ばくのおそれがある地域に居住する者に原告適格を認めるべきである。 (被控訴人の主張)規制法及び設置許可基準規則の定めのほか、原子力災害対策特別措置法及 び原子力災害対策指針を参酌すれば、年間20ミリシーベルトを超える被ばくのおそれのある地域に居住するというだけで原告適格があるとは認められず、より合理的な範囲内に限定されるべきである。放射性同位元素等の規制に関する法律、電離放射線障害防止規則及び人事院規則の定めは、ICRPの1990年勧告を踏まえて定められたものであるところ、同勧告は、あら ゆる状況で適用されるべき被ばく線量を定めたものではなく、生命、身体等への直接的かつ重大な被害が生ずる具体的な基準として定められたものでもないから、原告適格の有無の判別根拠となるものとはいえない。 ⑵ 本件処分の違法性(控訴人らの主張) ア司法審査の在り方(ア) 深刻な災害を万が一にも起こさないようにするという基本法、規制法及び設置法の趣旨、確立された国際的な基準であるSSG-21、原子力規制委員会が定めた安全目標のほか、原発事故により大量の放射性物質が極めて広範囲に拡散されることによって生ずる被害の不可逆・甚大 性、長期継続性をはじめとする特異性、原子力科学技術の特殊性、自然 現象における科学の不定性を考慮すれば、裁判所が、原子炉の安全性について、処分行政庁の判断に専門的、技術的知見を要することを理由に、積極的な司法審査を控えることは許されない。 発電用原子炉の設置変更許可処分に係る処分行政庁の判断には、一定の専門技術的裁量が認め ついて、処分行政庁の判断に専門的、技術的知見を要することを理由に、積極的な司法審査を控えることは許されない。 発電用原子炉の設置変更許可処分に係る処分行政庁の判断には、一定の専門技術的裁量が認められるが、その範囲は、政治的、政策的裁量と 比較して極めて狭いものである。原子炉の安全性に係る審査は、自然科学領域のみならず、人文・社会学的領域にまたがる評価判断を含むものであり、人文・社会学的領域における評価判断については、司法にも専門的知見が存在するから、裁判所は、法の求める安全性の水準を満たしているかどうかの評価判断を積極的に行うべきである。また、自然科学 的領域における評価判断についても、自然科学的領域といっても初歩的な問題から複雑困難な問題まで様々であるところ、上記のような原発事故の被害の特異性に鑑みれば、他の科学技術の利用に関する司法審査とは異なり、厳格かつ慎重な評価判断を行うべきである。本件において、福島第1原発事故の反省と教訓を絶対に無視してはならない。 以上の諸点を考慮すれば、原子炉の安全性の審査に際し、処分行政庁の判断に過誤欠落がなく、行政庁の判断が不合理とはいえないと評価されるためには、その時点において利用可能で、信頼される情報のすべてが検討されていること、採用された調査・分析及び予測方法の適切性・信頼性が認められること、法の仕組みや趣旨等に照らして必要な権利・ 法益のすべてを比較衡量していること、その選択・判断のプロセスが意思決定の理由とともに明確に示されていること、全体を通じて判断に恣意性・不合理な契機が認められないこと、事後的に、必要に応じて当初の決定内容を修正・変更する義務が尽くされていることの全ての要件を満たす必要があるというべきである。また、科学上の知見に関して複数 の成り な契機が認められないこと、事後的に、必要に応じて当初の決定内容を修正・変更する義務が尽くされていることの全ての要件を満たす必要があるというべきである。また、科学上の知見に関して複数 の成り立ち得る見解がある場合には、裁判所は、最も安全側に立つ見解 に立って判断することが求められるというべきである。 (イ) 原判決は、影響が著しく重大かつ深刻であるが、極めて低頻度で、少なくとも歴史時代において経験したことがないような規模及び態様の自然災害は、その発生の可能性が相応の根拠をもって示されるようになれば格別、そうでなければ、社会生活上、安全性確保の点で考慮されて いないと判示する。 しかし、歴史時代においても、1257年のリンジャニ山(インドネシア)の噴火、1815年のタンボラ山(インドネシア)の噴火をはじめ破局的噴火が実際に発生している。また、現在の火山学の水準では、破局的噴火の可能性を否定することはできないが、他方で、相応の根拠 をもって発生することを示すこともできないのであって、破局的噴火の発生の可能性の立証を求めることは住民側に不可能を強いるものである。 極めて広範囲に、長期間継続して、回復困難な被害を与え続けるという原発事故の特異性に鑑みれば、原子炉の安全性の確保と、他の一般防災とを同列に扱う合理性もない。安全目標が、セシウム137の放出量が 100テラベクレルを超えるような事故の発生頻度を100万炉年に1回程度を超えないようにするとしている以上、1万年に1回程度の頻度で発生する破局的噴火のリスク、更にはそれよりも一回り頻度の高い巨大噴火のリスクは到底容認されるようなものとはいえない。原判決のいう社会通念論は、火山事象のリスクを無視し、原子炉の稼働を容認する ための論理であり、安全神話に他なら よりも一回り頻度の高い巨大噴火のリスクは到底容認されるようなものとはいえない。原判決のいう社会通念論は、火山事象のリスクを無視し、原子炉の稼働を容認する ための論理であり、安全神話に他ならないのであって、これを採用すべきでないことは明らかである。 イ審査基準の不合理性(ア) 対象となる審査基準等本件処分の基準適合性審査に用いられたのは平成25年策定当時の火 山ガイドであって、本件処分後に作成された「基本的な考え方」や、平 成29年及び令和元年の改正後の火山ガイドは、本件処分の基準適合性審査における具体的審査基準に当たるものではない。内容の点でも、平成25年策定当時の火山ガイドは、巨大噴火とその余の規模の噴火を区別しておらず、これらを区別する「基本的な考え方」や令和元年改正後の火山ガイドとは異なるものであることが明らかである。 仮に「基本的な考え方」や令和元年改正後の火山ガイドが具体的審査基準に当たるとしても、これらは、噴火の予測が的確にできないことを認めるとしながら、結局、巨大噴火の的確な予測が可能であることを前提としている点、「差し迫った状態」との要件が定性的で、曖昧である点、巨大噴火とその余の規模の噴火を区別した上で、保守的に行わなけ ればならないはずの巨大噴火について、それ以外の噴火よりも緩やかな基準を設定している点で、不合理である。 (イ) 指標の不存在火山ガイドは、原子力発電所の運用期間中における検討対象火山の活動の可能性を評価し、活動の可能性が十分小さい場合には、過去最大規 模の噴火によって設計対応可能な火山事象が敷地に到達したと考えられる火山について、モニタリングを実施する旨を定める。しかし、どのような場合に活動可能性が十分小さいと評価するのかの具体的内容や指標 模の噴火によって設計対応可能な火山事象が敷地に到達したと考えられる火山について、モニタリングを実施する旨を定める。しかし、どのような場合に活動可能性が十分小さいと評価するのかの具体的内容や指標が定められておらず、いかようにでも解釈することが可能である。これに対し、確立された国際的な基準であるSSG-21では、段階3にお いて決定論的手法としてスクリーニング距離値を用いることとし(5. 17項)、TECDOC-1795で、その詳細な評価手法と適用例が明らかにされているのであって、火山ガイドよりもはるかに詳細な指標が示されている。 このように、火山ガイドは、火山の活動可能性評価に関し、具体的な 判断指標を示しておらず、内容に乏しい点で、不合理である。 (ウ) 噴火予測の限界等の不考慮現在の火山学の水準では、噴火から十数年前の時点、すなわち、原子炉を停止して核燃料等を敷地外へ搬出するために必要な期間よりも前の時点で、噴火の時期や規模を的確に予測することは困難である。このことは、我が国の火山活動のモニタリングに関わってきた研究者の共通認 識であり、本件処分当時から現在に至るまで状況は変わっていない。原子力規制委員会は、噴火の時期や規模が分からなくても、地下のマグマ溜まりの存否を確認することで、噴火のポテンシャルを把握することができるとの考え方に立っている。しかし、平成25年策定時の火山ガイドは、文献調査、地形・地質調査及び火山学的調査を調査の中心として おり、地球物理学的調査の位置付けは「必要に応じて」行われる補助的なものにすぎない。上記考え方は、福岡高等裁判所宮崎支部平成28年4月6日決定(同裁判所平成27年(ラ)第33号)後に、原子力規制庁が持ち出した後付けの説明にすぎず、平成25年策定当時の火 補助的なものにすぎない。上記考え方は、福岡高等裁判所宮崎支部平成28年4月6日決定(同裁判所平成27年(ラ)第33号)後に、原子力規制庁が持ち出した後付けの説明にすぎず、平成25年策定当時の火山ガイドにおいて重視されていたものではない。原子力規制委員会が依 拠するドルイット論文も、ミノア噴火の一事例を紹介したものにすぎず、カルデラ一般に当てはまるものではない。 そもそも、地球物理学的調査によって地下にマグマ溜まりが存在しないことを確認することは大きな不確実性を伴うものであり、日本国内において地下のマグマ溜まりの存在又は不存在が相当の確度をもって示さ れた例はない。Q教授が指摘するように、マッシュ状のマグマ溜まりは、下部の親マグマ溜まりから高温の玄武岩質マグマが注入されると再活性化を起こし、場合によっては10年オーダーでVEI7規模の噴火に至ることがあるが、その存在を地震波の探査によって把握することは困難である。このように、現在の火山学では、地下のマグマ溜まりの状態を 把握し得ず、地下にマグマ溜まりがないことを的確に確認することはで きないのであって、原子力規制委員会が立脚する考え方は、現在の火山学の水準に反する。 そして、日本火山学会の原子力問題対応委員会は、火山ガイドにつき、噴火予測の限界や曖昧さなどの特性を十分に考慮しなければならない旨の提言をし、火山ガイドの見直しを求めた。しかし、原子力規制委員会 は、何らの対応をしない。 以上のとおり、火山ガイドは、噴火予測の限界や曖昧さを適切に考慮せず、火山学者による警鐘や提言を無視している点で、不合理である。 (エ) 運用期間の定めの不明確性火山ガイドは、原発の運用期間、すなわち、核燃料物質が原発に存在 する期間において、活動可能性が十分小さ による警鐘や提言を無視している点で、不合理である。 (エ) 運用期間の定めの不明確性火山ガイドは、原発の運用期間、すなわち、核燃料物質が原発に存在 する期間において、活動可能性が十分小さいことを評価する旨を定める。 しかし、核廃棄物の処理場が全く決まっていないという現状に照らすと、川内原発には極めて長期間、核燃料が保管される可能性が高く、運用期間は、数十年にとどまらず数百年に及ぶ可能性もある。 このように、火山ガイドは、運用期間がどれくらいになるのか明らか でないのに、運用期間中における火山の活動可能性の評価が可能であるとしている点で、不合理である。 (オ) 過去の火山活動履歴の評価における不合理性火山ガイドは、文献調査、地形・地質調査及び火山学的調査を基に作成された階段ダイアグラムによって、将来の火山活動可能性を評価する 旨を定める。その上で、個別評価において、過去の火山活動履歴を中心としつつ、「必要に応じて」現在の火山の活動の状況を併せて評価する旨を定める。これらは、破局的噴火の発生について、一定の周期を見出した上で、最後の破局的噴火から当該周期に相当する期間が経過していないという理由で、運用期間中の活動可能性が十分小さいと評価するこ とを念頭に置いたものと解される。 しかし、噴火の周期は、ある特定の火山において、過去に何度も噴火が発生し、かつ、その間隔が比較的よく揃っている場合にのみ考えることが可能なものである。対象となるデータ数が少ないことからすれば、日本列島の破局的噴火全体を平均して周期性を導いたり、九州の複数のカルデラを平均して周期性を導いたりすることはできない。 このように、火山ガイドは、過去の火山活動履歴から活動可能性を適切に 破局的噴火全体を平均して周期性を導いたり、九州の複数のカルデラを平均して周期性を導いたりすることはできない。 このように、火山ガイドは、過去の火山活動履歴から活動可能性を適切に評価し得ることを前提としている点で、不合理である。 (カ) 現在の火山の活動の状況に関する不合理性平成25年策定当時の火山ガイドは、過去の火山活動履歴を中心とし、必要に応じて現在の火山の活動の状況を併せて評価をする旨を定めてい たが、前記福岡高裁宮崎支部決定後、原子力規制委員会は、地球物理学的調査により現在の火山の活動の状況を調べることで、噴火のポテンシャルを把握することができるとの考え方を示している。これらは、地球物理学的調査により地下のマグマ溜まりが存在しないことを確認することができれば、当面の間、破局的噴火を発生させるだけのポテンシャル がないから、検討対象火山の活動の可能性が十分小さいと評価することができるという趣旨をいうものと解される。 しかし、現在の火山学の水準では、地下のマグマ溜まりの位置や大きさを正確に把握することはできず、地震波トモグラフィを行っても、地下の低速度領域の存在を見落とす場合がある。密な間隔で地震計を設置 するなどして稠密な調査を行えば、ある程度、地下の低速度領域を把握することが可能な場合もあるが、そのような調査が行われたのは平成28年に開始された鬼界カルデラプロジェクトが初めてである。また、新規制基準検討チームの会合において、地下のマグマ溜まりの有無について十分に議論された形跡はなく、少なくともQ教授が問題点を指摘する マッシュ状のマグマ溜まりが存在する可能性については、十分な検討が 行われていない。 地球化学的調査も、これまでに起きた破局的噴火の前兆段階で、火山 なくともQ教授が問題点を指摘する マッシュ状のマグマ溜まりが存在する可能性については、十分な検討が 行われていない。 地球化学的調査も、これまでに起きた破局的噴火の前兆段階で、火山ガスの変化等を観測した例がなく、何らかの変化があっても、それが破局的噴火につながるかを把握することはできないから、これを根拠として、今後数百年にも及ぶ可能性のある運用期間中に破局的噴火が発生し ないと評価することは非常に困難である。 このように、火山ガイドの定める各種調査によっても、運用期間中の活動可能性が十分小さいことを把握することは困難であるのに、これを誤解して、火山ガイドは、現在の火山の活動の状況によって、活動可能性を適切に評価できるという前提に立っている点で、不合理である。 (キ) モニタリングに関する不合理性火山ガイドは、破局的噴火に伴う設計対応不可能な火山事象(火砕物密度流)に対しては、モニタリングによって噴火の前兆現象を把握した上で、原子炉を停止し、核燃料物質を搬出することによって、原子炉の安全性を確保する枠組みを採用している。 しかし、VEI6以上の巨大噴火に関しては、モニタリングの観測例がほとんどなく、中・長期的な噴火予測の手法は確立しておらず、噴火がいつ、どのような規模で起こるかといった的確な予測は困難な状況にある。ところが、原子力規制委員会ないし新規制基準検討チームの参加者は、モニタリングを実施しさえすれば、カルデラ噴火の兆候を把握し て、原子炉を停止した上で核燃料を搬出することができると誤解していた。また、モニタリング検討チームの会合において、R教授が、モニタリングによって噴火の兆候があった場合の閾値を定めなければ、失敗すると指摘したにもかかわらず、原子炉火山部会は とができると誤解していた。また、モニタリング検討チームの会合において、R教授が、モニタリングによって噴火の兆候があった場合の閾値を定めなければ、失敗すると指摘したにもかかわらず、原子炉火山部会は、定量的な指標や閾値を定めず、定性的な表現に終始するチェックリストしか作成していない。 さらに、火山ガイドは、モニタリングにつき、事業者自身が、地震活 動、地殻変動及び火山ガスの状況等を観測するものとし、公的機関が火山活動を監視している場合には、その結果を活用することができるとするにとどまる。これに対し、確立された国際的な基準であるSSG-21では、モニタリングは、適切な国内及び国際機関と協力して実施するものとし、確立した火山観測所がない場合には観測所を設けるべきであ るとしている(8.2項)。火山ガイドは、SSG-21の要求を満たすものとはいえない。R教授も、モニタリング検討チームにおいて、事業者をモニタリングの実施主体としている点を見直すべきであると指摘している。 このように、火山ガイドは、モニタリングの実効性に関する評価を誤 り、かつ、モニタリングを事業者自身が行うものとしている点で、不合理である。 (ク) 降下火砕物の影響評価に関する基準の欠落火山ガイドには、降下火砕物の大気中濃度を推定する手法に関する基準が欠落しており、不合理である。 平成29年改正後の火山ガイドには、降灰継続時間を仮定して降灰量から気中降下火砕物濃度を推定する手法及び数値シミュレーションにより気中降下火砕物を推定する手法が定められたが、定量的なものではなく、不確実性や再飛散の問題も考慮されていない点で、依然として不合理である。 ウ調査審議及び判断の過程における過誤欠落(ア 降下火砕物を推定する手法が定められたが、定量的なものではなく、不確実性や再飛散の問題も考慮されていない点で、依然として不合理である。 ウ調査審議及び判断の過程における過誤欠落(ア) 過去の事実に基づく頻度に関する誤認川内原発の敷地は、周辺5カルデラのいずれかを起源とする火砕流堆積物が分布しており、過去60万年間に概ね10万年に1回の頻度で火砕物密度流に襲われてきた。阿蘇カルデラ及び鬼界カルデラでは、約2 6万年前の阿蘇1、約15万年前の小アビ山、約14万年前の阿蘇3、 約9万5000年前の鬼界葛原、約9万年前の阿蘇4、約7000年前の鬼界アカホヤと、それぞれ約5万年に1回の頻度で破局的噴火が発生している。SSG-21が、可能な限り決定論的な評価方法及び確率論的な評価方法の併用を求めていること(2.20項)からすれば、控訴人らが主張するポアソン分布を用いた確率計算を行うことは、SSG- 21の要請というべきであるし、決定論的な評価方法によるとしても、過去の活動履歴から活動頻度を推定することの重要性は明らかである。 上記事実を看過して検討対象火山の活動の可能性が十分小さいとした原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程には過誤欠落がある。 (イ) VEI6以下の噴火についての不考慮 周辺5カルデラにおいてVEI7以上の破局的噴火が発生する可能性が十分小さいとしても、過去にVEI7の噴火が発生した火山は、VEI6における最大級の噴火を発生させる潜在性を有するから、VEI6以下の噴火において想定される最も厳しい条件の下でのシミュレーションを行うことが求められるというべきである。にもかかわらず、参加人 及び原子力規制委員会は、噴出物量99㎦といったVEI6の最大級の噴火を想定したシミュレー も厳しい条件の下でのシミュレーションを行うことが求められるというべきである。にもかかわらず、参加人 及び原子力規制委員会は、噴出物量99㎦といったVEI6の最大級の噴火を想定したシミュレーションを実施していないばかりか、姶良カルデラで発生したVEI6以下では過去最大とされる姶良福山噴火でさえも考慮していない。 このように、周辺5カルデラの噴火規模の設定の点で、原子力規制委 員会の調査審議及び判断の過程には過誤欠落がある。 (ウ) ナガオカ論文及びドルイット論文に関する誤認ナガオカ論文及びドルイット論文は、相応の学問的意義のある論文であるが、ナガオカ論文が示す噴火ステージのマルチサイクルや、ドルイット論文が示すマグマの供給率が1年当たり0.05㎦といった一部の 記載を抜き出して、これらを一般化することはできない。上記各論文は、 周辺5カルデラにつき、今後数十年間において破局的噴火の発生する可能性の大小を評価する論拠となるような論文ではなく、そのような評価が可能であると指摘する火山の専門家は皆無である。にもかかわらず、本件処分の適合性審査では、これらの論文の内容や射程範囲が審議されていない。 このように、ナガオカ論文及びドルイット論文の評価を誤り、十分な審議が行われていない点で、原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程には過誤欠落がある。 (エ) 階段ダイアグラムに関する誤認参加人は、許可申請に際し、加久藤・小林カルデラ、姶良カルデラ及 び阿多カルデラの噴火を一つにまとめた階段ダイアグラムを作成し、申請資料として提出している。しかし、階段ダイアグラムは、根拠となる噴出物量や噴出年代の測定に誤差がある上、期間中のマグマの供給率も放出率が一定ではなく、期間が約60万年という イアグラムを作成し、申請資料として提出している。しかし、階段ダイアグラムは、根拠となる噴出物量や噴出年代の測定に誤差がある上、期間中のマグマの供給率も放出率が一定ではなく、期間が約60万年という長期間にわたることからすれば、噴火の時期を予測する根拠となるものではない。また、マグ マ溜まりは、火山ごとに形成されているから、火山ごとに活動履歴の評価検討を行うべきものであって、3つのカルデラをまとめる合理的根拠はないし、周辺5カルデラから阿蘇カルデラ及び鬼界カルデラを除外する合理的根拠もない。 このように、階段ダイアグラムの学術的な妥当性につき十分な審議が 尽くされていない点で、原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程には過誤欠落がある。 (オ) 地球物理学的調査等の限界に関する誤認本件処分の基準適合性審査では、破局的噴火が地下約10㎞以浅に珪長質の大規模なマグマ溜まりがある場合に発生することを前提に調査審 議が行われている。しかし、調査審議において地球物理学的調査や地球 化学的調査の限界や不確かさが指摘された形跡がなく、これらは全く考慮されなかったものと考えらえる。地球物理学的調査、地球化学的調査の限界や不確かさを適切に考慮したことにつき主張立証を尽くすことが求められるのは被控訴人であり、被控訴人がこのような主張立証をしない以上、調査審議及び判断の過程に過誤欠落があるというべきである。 (カ) 周辺5カルデラの個別評価に関する判断の誤り本件処分の基準適合性審査では、過去の活動間隔から噴火の可能性を検討しているが、カルデラにおける破局的噴火の間隔にはばらつきがあり、過去の活動間隔から、それ以降の活動間隔も同様であると推定することはできない。 また、火山ガイドでは、調査の結果により 検討しているが、カルデラにおける破局的噴火の間隔にはばらつきがあり、過去の活動間隔から、それ以降の活動間隔も同様であると推定することはできない。 また、火山ガイドでは、調査の結果により噴火の規模を推定し、これができない場合には、過去最大の噴火規模とする旨を定めているのに、周辺5カルデラの審査では、過去最大の噴火規模ではなく、「現在の噴火ステージにおける既往最大規模の噴火」を考慮しており、火山ガイドに則ったものとはいえない。 個別にみても、姶良カルデラについては、地下に珪長質のマグマ溜まりはないと断定する火山学的知見はないし、VEI6相当の姶良福山噴火や姶良岩戸噴火を考慮せず、より小規模の桜島薩摩噴火を設定して検討を行っている点、桜島でVEI5相当の噴火が発生した場合に破局的噴火に移行する可能性があることを考慮していない点で、調査審議及び 判断の過程に過誤欠落がある。加久藤・小林カルデラについては、最後の破局的噴火から約33万年経過しているが、破局的噴火を発生させる供給系ではなくなっている可能性を示す火山学的知見はない上、鹿児島地溝における破局的噴火の活動間隔は、噴火の可能性の根拠となるものではなく、結局、噴火の可能性が十分小さいと判断した根拠が明らかに されていない。阿多カルデラについては、阿多鳥浜噴火から阿多噴火の 間隔が約14万年であり、阿多噴火から約11万年後であることから破局的噴火までに十分な時間があると推測することはできないし、深さ5㎞という地下浅部に大規模なマグマ溜まりが存在する可能性を示唆する低速度異常が確認されているのに、これが考慮されておらず、判断に至る過程に過誤欠落がある。鬼界カルデラについても、原判決が判断の根 拠とする、最新の破局的噴火の際のマグマが全て出し尽くさ 唆する低速度異常が確認されているのに、これが考慮されておらず、判断に至る過程に過誤欠落がある。鬼界カルデラについても、原判決が判断の根 拠とする、最新の破局的噴火の際のマグマが全て出し尽くされて、浅部に大規模なマグマ溜まりが形成されていないことや、地球化学的情報から80㎦のマグマ溜まりが存在することが推定されるが、ほとんどが玄武岩質であることについては、審査資料に記載があるにとどまり、具体的な立証はされていない。阿蘇カルデラについても、加久藤・小林カル デラと同様に、噴火の可能性が十分小さいとした判断の根拠は明らかにされていない。 また、神戸大学海洋底探査センターの研究チームは、鬼界カルデラプロジェクトという名称で、極めて広範囲に密な観測点を設けて連続的に人工地震を発生させて探査を行うという調査を行っている。この調査に より、鬼界カルデラ直下の深さ3~11㎞において、水平方向に約25㎞、鉛直方向に約8㎞に広がる低速度領域がイメージングされた。その体積は、単純計算にして2000㎦程度であり、これがマグマ溜まりであるとすれば、VEI8クラスの超巨大噴火が発生する可能性すらあることになる。約7300年前の鬼界アカホヤ噴火の後に生じている火山 活動の基になったマグマは流紋岩質マグマである可能性が高いとされており、この点からも、破局的噴火を発生させる可能性があるといえる。 そして、上記研究と鬼界カルデラに40㎦程度の流紋岩質の溶岩ドームが形成されていることを合わせると、鬼界カルデラにおいては、約7300年前から現在に至るまでの間に、鬼界アカホヤ噴火、溶岩ドームの 形成という2度の破局的噴火が発生し、更に、溶岩ドームの形成から現 在までの間に、十分な破局的噴火を発生させ得るだけのマグマ溜まりが形成されてい の間に、鬼界アカホヤ噴火、溶岩ドームの 形成という2度の破局的噴火が発生し、更に、溶岩ドームの形成から現 在までの間に、十分な破局的噴火を発生させ得るだけのマグマ溜まりが形成されていることになる。 以上のとおり、原子力規制委員会がした個別評価に係る調査審議及び判断の過程には過誤欠落がある。 (キ) 降下火砕物のシミュレーション及び評価に関する判断の誤り 降下火砕物のシミュレーションは、桜島山頂部に限定することなく、鹿児島地溝のどこでも起こる可能性があることを想定して行うべきである。傘型領域を踏まえていないことや試験的なものであることがソフトウェアの問題であれば、傘型領域を再現可能なソフトウェアを使用させるか、この点の不確かさを考慮した保守性の確保を求めるべきところ、 そのような対応は全くされていない。風向や風力の不確実さの保守的な考慮もされていない。 また、本件処分の基準適合性審査では、エイヤフィヤトラ氷河において発生した噴火におけるヘイマランド地区の観測値を設計基準として審査が行われたが、この観測値は、降灰量が5㎜程度の場所におけるもの である上、セントへレンズ噴火におけるヤキマ地区の観測値の約10分の1にとどまるものであった。ヘイマランド地区の観測値は観測記録の最大値と評価されるようなものではなく、川内原発の敷地に15㎜の降下火砕物がある場合を想定した大気中濃度として、過少なものであることは明らかである。 (ク) 専門的知見の取得に関する判断の誤り原子力規制委員会及び原子力規制庁は、火山に関する科学的、専門技術的知見をほとんど有していない。にもかかわらず、本件処分の基準適合性審査において、火山に関する外部専門家からの意見聴取等を十分に行わず、最新の火山に関する科学的、専門技 火山に関する科学的、専門技術的知見をほとんど有していない。にもかかわらず、本件処分の基準適合性審査において、火山に関する外部専門家からの意見聴取等を十分に行わず、最新の火山に関する科学的、専門技術的知見を十分に踏まえる ことなく、本件処分を行った。 (被控訴人及び参加人の主張)ア司法審査の在り方最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決・民集46巻7号1174頁(伊方原発最高裁判決)の考え方を前提とすれば、本件では、原子力規制委員会の専門技術的な調査審議を基にした判断に不合理点があるか 否か、具体的には、本件処分の基準適合性審査で用いられた火山ガイドに不合理な点があるか否か、本件各原子炉が火山ガイドに適合するとした原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤欠落があるか否かを審理判断すべきこととなる。 規制法43条の3の6第1項4号、43条の3の8第2項は、どのよう な異常事態が生じても、発電用原子炉施設内の放射性物質が外部の環境に放出されることは絶対にないという絶対的安全性を備えていることを求めるものではなく、発電用原子炉の位置、構造及び設備が相対的安全性を前提とした安全性を備えていることを求めるものと解すべきである。すなわち、発電用原子炉を含む科学技術を利用した各種の機械、装置等は、絶対 に安全というものではなく、常に何らかの程度の事故発生の危険性を伴っているが、その危険性が社会通念上容認し得る水準以下であると考えられる場合又はその危険性の相当程度が人間によって管理し得ると考えられる場合に、その危険性の程度と科学技術の利用により得られる大きさとの比較衡量の上で、これを一応安全なものであるとして利用することを許容し ているものと解される。そうす って管理し得ると考えられる場合に、その危険性の程度と科学技術の利用により得られる大きさとの比較衡量の上で、これを一応安全なものであるとして利用することを許容し ているものと解される。そうすると、原子力規制委員会は、巨大噴火を含む火山事象について、審査基準を策定し、許可申請の基準適合性を審査するに当たっては、最新の火山学等の科学技術的知見のみならず、火山事象の自然現象としての特徴及びその影響等を踏まえて、我が国の社会がどの程度の危険性であれば容認するかという社会通念をも考慮に入れなければ ならず、これをどのように考慮するのかについては原子力規制委員会の専 門技術的裁量に委ねられているものと解すべきである。 巨大噴火の自然現象としての特徴や、巨大噴火に対する我が国一般における法規制による対応状況等に照らせば、規制法43条の3の6第1項4号、43条の3の8第2項及び設置許可基準規則6条は、自然現象のうち巨大噴火については、その他の噴火と異なり、その発生が相応の根拠をも って示されない限り、安全確保上、巨大噴火を想定しないことを許容しているものと解される。したがって、巨大噴火は、その発生可能性が相応の根拠をもって示されない限り、設置許可基準規則6条1項の「想定される自然現象」にも、同条2項の「重要安全施設に大きな影響を及ぼすおそれがあると想定される自然現象」にも該当しないと解すべきである。 安全目標は、原子力規制委員会が原子力規制を進めていく上で達成を目指す目標であるが、自然現象については発生確立の不確かさが大きく、確率論的評価には限界がある。特に、現在の火山学においては、噴火確率を含めた火山事象の発生確率に関する確立した知見は存在せず、火山事象に対する設備の故障の確率評価も同様であって、炉 確かさが大きく、確率論的評価には限界がある。特に、現在の火山学においては、噴火確率を含めた火山事象の発生確率に関する確立した知見は存在せず、火山事象に対する設備の故障の確率評価も同様であって、炉心損傷確率を計算して算 出することは不可能であり、火山学の現状によれば、確率論的評価方法を規制に取り入れる段階にはない。 イ審査基準の不合理性(ア) 対象となる審査基準火山ガイドは、JNESが原案を作成し、これを基に新規制基準検討 チームにおける議論を経て、原子力規制委員会が作成したものであり、SSG-21、RFS審査等の審査資料及びJEAG4625に示された考え方や火山学的知見等が基になっている。 SSG-21は、火山の影響評価に関して、最新の科学的知見に基づき、安全指針として策定されたものである。IAEAの安全基準の一つ である安全指針は、加盟国が各国の自然現象の特性や政策全体の特徴に 応じて取り入れるという性質のものであり、我が国において、これを取り入れる場合には、日本の火山の特徴を踏まえたものとすることが肝要である。そこで、JNESは、日本の火山が島弧火山であることなど、日本の自然現象の特性に合わせて、SSG-21の内容を火山ガイドに取り入れて、火山ガイドの原案を作成したものであって、評価の手順、 立地評価、影響評価、運用期間中における火山の活動可能性の評価等を行うという判断の枠組み、追加的考慮要素としてのモニタリングの実施等の点で、火山ガイドとSSG-21とは整合している。 司法審査の対象となるのは審査に用いられた火山ガイドであるが、本件処分の基準適合性は、飽くまで規制法43条の3の6第1項4号、4 3条の3の8第2項、設置許可基準規則6条所定の要件に適合するかどうかを 対象となるのは審査に用いられた火山ガイドであるが、本件処分の基準適合性は、飽くまで規制法43条の3の6第1項4号、4 3条の3の8第2項、設置許可基準規則6条所定の要件に適合するかどうかを審査するものであるから、火山ガイドの合理性を評価するに当たっては、法規である上記各規定の内容及び趣旨を十分に踏まえる必要がある。そして、原子力規制委員会は、上記各規定の内容や趣旨を踏まえ、巨大噴火の可能性評価につき、現在の火山学の知見に照らして十分な火 山学的調査を行った上で、巨大噴火の発生可能性が相応の根拠をもって示されているか否かを個別に評価するという観点から、検討対象火山につき、「火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態ではないこと」及び「運用期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性のある具体的な根拠があるとはいえないこと」との要件を充足するかどうか を確認することとしており、これが充足された場合には、火山ガイドにいう検討対象火山の活動可能性が十分に小さいものと扱うとの考え方に立脚しているところ、このような考え方を確認したものが「基本的な考え方」である。「基本的な考え方」は、本件処分後に作成されたものであるが、原子力規制委員会は、従前からこのような考え方に基づいて審 査を実施しており、今後もそのような考え方で行っていくことを確認す る趣旨で作成されたものであって、本件処分の基準適合性の審査の時点で、「基本的な考え方」の示す判断枠組みによって審査を行っていた。 (イ) 指標の不存在火山ガイドは、原子力発電所に影響を及ぼし得る火山として原子力発電所から半径160㎞以内の地理的領域内に所在する第四紀に活動した 火山を抽出し、次に、抽出した火山のうち、完新世に活動があった火山及び完新 は、原子力発電所に影響を及ぼし得る火山として原子力発電所から半径160㎞以内の地理的領域内に所在する第四紀に活動した 火山を抽出し、次に、抽出した火山のうち、完新世に活動があった火山及び完新世に活動を行っていないものの、将来の活動可能性が十分小さいとはいえない火山につき、原子力発電所の運用期間中における火山活動の個別評価を行うものとし、更に、個別評価において、文献調査、地形・地質調査、火山学的調査、地球物理学的調査及び地球化学的調査を 踏まえて評価するものとし、検討対象火山の噴火規模につき、調査結果から推定するか、推定することができない場合には同火山の過去最大の噴火規模とする旨を定めている。これらによれば、火山ガイドは、指標という点でも十分な合理性を有する。 (ウ) 噴火予測の限界等の不考慮 火山ガイドが定める立地評価の方法は、火山の噴火の時期及び規模を的確に予測することが可能であることを前提としたものではなく、現在の火山学の水準では噴火の規模及び時期を的確に予測することが困難であることを前提としたものである。令和元年改正後の火山ガイドにおいても、その趣旨が明確にされている。 (エ) 運用期間の定めの不明確性火山ガイドは、原子力発電所に影響を及ぼし得る火山(検討対象火山)として抽出された火山につき、原子力発電所の運用期間中、具体的には、本件各原子炉に核燃料物質が存在する期間中における火山活動の個別評価を行うものとされており、運用期間に関する定めが不合理であ るとはいえない。 (オ) 過去の火山活動履歴の評価における不合理性火山ガイド及び「基本的な考え方」は、巨大噴火の可能性につき、噴火の時期及び規模の予測が困難であることを前提に、巨大噴火の活動間隔、最後の巨大噴火、現在の 去の火山活動履歴の評価における不合理性火山ガイド及び「基本的な考え方」は、巨大噴火の可能性につき、噴火の時期及び規模の予測が困難であることを前提に、巨大噴火の活動間隔、最後の巨大噴火、現在のマグマ溜まりの状況、地殻変動の観測データ等の個々の考慮要素や火山学上の各種知見を参照して、総合的に評価 を行うものとしており、個々の要素を総合的に判断して評価を行う趣旨のものであり、個々の要素から噴火の時期を予測しようとする趣旨のものではない。すなわち、個別の項目には、それぞれその精度や正確性等に一定の限界があることを前提に、これらの項目を総合的に考慮することにより、巨大噴火が差し迫った状態でないとの評価や、運用期間中に おける巨大噴火の可能性を示す科学的に合理性のある具体的根拠が得られているかどうかの評価を行うものである。控訴人らの主張は、個々の要素を一つ一つ取り上げて、その限界や問題点を指摘するものにすぎず、審査基準としての不合理性を基礎づけるものとはいえない。 (カ) 現在の火山の活動の状況に関する不合理性 控訴人らの主張が、個々の項目を一つ一つ取り上げて、その限界や問題点を指摘するものにすぎないことは上述のとおりである。「基本的な考え方」では、巨大噴火の可能性評価の項目の一つとして現在のマグマ溜まりの状況を挙げているが、その趣旨は、地震波トモグラフィ等の可視化技術により、正確にその存在や形状を把握することを求めるもので はなく、飽くまで、可視化技術により、巨大噴火を引き起こすような大規模なマグマ溜まりである可能性がある領域が観測された場合、その領域がマグマ溜まりである可能性があると想定し、その他の調査結果等を踏まえて、現在のマグマ溜まりの状況を検討することを求めるものであって、調査によ 溜まりである可能性がある領域が観測された場合、その領域がマグマ溜まりである可能性があると想定し、その他の調査結果等を踏まえて、現在のマグマ溜まりの状況を検討することを求めるものであって、調査により地下のマグマ溜まりの位置や大きさを正確に把握する ことが可能であることを前提としたものではない。 控訴人らは、マッシュ状のマグマ溜まりに地下深部から高温のマグマが供給されると、再活性化し、10年オーダーで巨大噴火を発生させる可能性があると主張するが、想定し難い条件下でのシミュレーション結果による参照価値の乏しい仮説に基づくものにすぎず、理由があるものとはいえない。 (キ) モニタリングに関する不合理性モニタリングは、福島第1原発事故の教訓を踏まえ、想定を超える事象に対しても、事前にできる限りの準備を求めることが重要であることに鑑み、個別評価により、原子力発電所の運用期間中に設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価し た火山であっても、この評価とは別に、監視対象火山に対し、その評価の根拠が維持されていることを確認することを目的として行われるものである。モニタリングは、立地ではないと判断した場合でも、想定を超える事象に対しても事前にできる限りの備えをすることで、対処方針が全くない場合と比較して、適切な対処を比較的容易に行うことができる ようにする目的で行うものであり、立地評価の厳格性を緩和することを目的とするものではない。 また、火山ガイドが事業者に求めるモニタリングは、噴火の規模、時期等を的確に予知、予測することを目的としたものではなく、立地評価の根拠の継続を確認することを目的とするものである。事業者は、観測 データに有意な変化がある場 るモニタリングは、噴火の規模、時期等を的確に予知、予測することを目的としたものではなく、立地評価の根拠の継続を確認することを目的とするものである。事業者は、観測 データに有意な変化がある場合には、実際に噴火の兆候が認められるか否かにかかわらず、状況に応じた判断・対応が求められるのであって、火山防災等のために行われてきた火山のモニタリングに比して、より長いリードタイムをもって判断、対応することが可能である。このことはモニタリング検討チームにおいても確認されている。このように、火山 ガイドは、現在の火山学の限界を踏まえつつ、火山学的合理性が認めら れる監視項目等を提示し、これに基づいたモニタリングの実施を求めているものであって、立地評価の厳格性を緩和することを目的としたものではないし、火山学の限界に関する誤解に基づくものでもない。 (ク) 降下火砕物の影響評価に関する基準の欠落規制法は、発電用原子炉の設計から運転に至る過程を段階的に区分し、 それぞれの段階に対応して、一連の許認可等の規制手続を介在させ、これらを通じて原子炉の利用に係る安全確保を図るという段階的安全規制の体系を採用している。これによれば、発電用原子炉の設置許可及び設置変更許可の段階における安全審査においては、専ら原子炉の基本設計の安全性のみが審査の対象となるから、設置変更許可処分の取消訴訟の 審理の対象となるのは原子炉の基本設計ないし基本的設計方針に関する事項に限られる。控訴人らの指摘する気中降下火砕物濃度の点は、基本設計ないし基本的設計方針に関する問題ではなく、原子炉の運転管理体制の問題であるから、設置許可及び設置変更許可の段階ではなく、保安規定(変更)認可の段階において審査の対象とされるものである。した いし基本的設計方針に関する問題ではなく、原子炉の運転管理体制の問題であるから、設置許可及び設置変更許可の段階ではなく、保安規定(変更)認可の段階において審査の対象とされるものである。した がって、この点に関する控訴人らの主張は失当である。 なお、参加人は、本件処分の基準適合性審査の審査会合及びヒアリングにおいて、原子力規制委員会に対し、降下火砕物による非常用発電機の吸気フィルタの影響に関する資料を提出し、関連する説明を行っているが、これらの説明は、気中降下火砕物濃度について設置変更許可の段 階で基本設計ないし基本的設計方針を審査するために行われたものではなく、フィルタの交換という運転中の具体的な保安活動によって対処すれば足りる事項につき、後に行われる保安規定変更認可の審査のための参考として、保安活動が可能であるとの見込みを確認したにとどまるものである。 ウ調査審議及び判断の過程における過誤欠落 原子力規制委員会は、本件処分の基準適合性審査において、火山ガイドを前提に、過去にVEI7以上の噴火が発生した周辺5カルデラにつき、破局的噴火を起こしていない他の火山と区別してその発生の可能性を検討し、周辺5カルデラの現在の状況は巨大噴火が差し迫った状況ではないと判断した。本件処分の基準適合性審査の結果は、本件処分後の最新の科学 的・技術的知見を含む現在の科学技術水準に照らし、周辺5カルデラの現在の活動状況が、巨大噴火が差し迫った状況ではないと評価することができ、運用期間中における巨大噴火の可能性を示す科学的に合理性のある具体的な根拠が得られていないことからしても、合理的なものといえる。したがって、原子力規制委員会による調査審議及び判断の過程に看過し難い 過誤欠落があるとはいえない。 科学的に合理性のある具体的な根拠が得られていないことからしても、合理的なものといえる。したがって、原子力規制委員会による調査審議及び判断の過程に看過し難い 過誤欠落があるとはいえない。 (ア) 過去の事実に基づく頻度に関する誤認原子力規制委員会は、周辺5カルデラにつき、各々の破局的噴火の間隔、特徴、その一部を鹿児島地溝帯として捉えた場合の破局的噴火の間隔を検討し、それに加えて地下構造調査等による現在のマグマ溜まりの 状況を把握した上で、参加人の評価を妥当としたものであり、過去の噴火間隔を含む過去の事実も適切に考慮している。 控訴人らの主張するポアソン分布は、ある事象がランダムに発生する事象(発生する確率が時間によって変化しない事象)であるという仮定に基づいて、ある事象がある一定の期間内の発生回数に基づく平均的な 発生間隔のみに着目して発生確率を計算するという数理モデル(ポアソン過程)を用いたものであるところ、その前提となる知見の不確かさは捨象した上で、破局的噴火の発生という事象がランダムに発生する事象であると仮定して、「過去12万年間で、日本列島で少なくとも11回の破局的噴火が起きている」という過去の破局的噴火の発生回数のみに 基づき、日本列島のどこかで破局的噴火が発生する確率として算出され たものにすぎず、科学的根拠に極めて乏しいものである。 (イ) VEI6以下の噴火についての不考慮参加人は、本件各原子炉の運用期間中の噴火規模に関し、周辺5カルデラにおける噴火につきVEI6以下の噴火ステージにおける既往最大を評価の対象とした。具体的には、阿蘇カルデラが阿蘇千里ケ丘噴火 (噴出量約2k㎥)、加久藤・小林カルデラが霧島イワオコシ噴火(噴出量約1k㎥)、姶良カルデラが桜島薩摩噴火 ージにおける既往最大を評価の対象とした。具体的には、阿蘇カルデラが阿蘇千里ケ丘噴火 (噴出量約2k㎥)、加久藤・小林カルデラが霧島イワオコシ噴火(噴出量約1k㎥)、姶良カルデラが桜島薩摩噴火(噴出量約11k㎥)、阿多カルデラが池田噴火(噴出量約5k㎥)、鬼界カルデラが薩摩硫黄島噴火(噴出量約0.1k㎥)を評価の対象とし、この規模の噴火が発生しても、川内原発の敷地内に火砕物密度流は到達しないと評価した。 これは、カルデラ噴火のサイクルと現在の状態を評価し、阿蘇、加久藤・小林、姶良及び鬼界の4カルデラについては後カルデラ期と、残る阿多カルデラについては先カルデラ期又は後カルデラ期とし、それぞれの区分における既往最大を評価の対象としたものである。周辺5カルデラは、いずれも小規模な噴火にとどまるような平穏な火山活動が続いて おり、火山学では後カルデラ期にあるといわれることに照らすと、後カルデラ期における最大規模を評価することは、合理性を有する。 (ウ) ナガオカ論文及びドルイット論文に関する誤認原子力規制委員会は、巨大噴火の可能性を総合的に評価するに当たり上記論文の知見を考慮要素の一つとしたが、火山ないしカルデラ一般に 関する知見として用いたものではない。 参加人は、周辺5カルデラが後カルデラ期にあるという火山学的に広く肯定されている知見を裏付ける資料の一つとしてナガオカ論文を用いたものであって、原子力規制委員会は、同論文を根拠に噴火サイクルのとおりに噴火が進行するとか、大規模火砕流噴火以前にプリニー式噴火 が必ず発生するなどと認定したものではない。 また、参加人は、現在のマグマ溜まりが破局的噴火直前の状態にあるかを検討するための一要素として、国土地理院による電子基準点の解析結果等 が必ず発生するなどと認定したものではない。 また、参加人は、現在のマグマ溜まりが破局的噴火直前の状態にあるかを検討するための一要素として、国土地理院による電子基準点の解析結果等から示されるマグマ供給量とドルイット論文が示す破局的噴火直前でのマグマ供給量とを比較するために、その記載を援用したものであって、カルデラ一般に当てはまる知見として用いたものではない。 (エ) 階段ダイアグラムに関する誤認原子力規制委員会は、参加人が提出した資料やその説明から認められる事実を総合的に考慮して、噴火の可能性を総合的に評価したものであって、参加人が提出した階段ダイアグラムのみに依拠したものではないし、階段ダイアグラムから噴火の時期を予測したものでもない。原子力 規制庁の担当者は、平成25年9月19日のヒアリングにおいて、階段ダイアグラムを作成するに当たって、加久藤・小林カルデラ、姶良カルデラ及び阿多カルデラの鹿児島地溝をグルーピングしているが、ソースが異なるものもあるため、個々に作成することも含め、グループ化については慎重に検討するよう指摘した。これに対し、参加人は、第24回 審査会合に提出した資料において、上記階段ダイアグラムに加えて、鹿児島地溝に鬼界カルデラを含めた階段ダイアグラムを示し、鹿児島地溝に鬼界カルデラを含まないとする文献と、鬼界カルデラと鹿児島地溝との関係は不明であるとする文献を示しつつ、鹿児島地溝に鬼界カルデラを含む場合、含まない場合のそれぞれについて、噴火履歴による検討を 行った。このように、本件処分の基準適合性審査においては、参加人が提出した階段ダイヤクラムにつき調査審議が行われている。 (オ) 地球物理学的調査等の限界に関する誤認巨大噴火が、大量の珪長質マグマ溜まりをお うに、本件処分の基準適合性審査においては、参加人が提出した階段ダイヤクラムにつき調査審議が行われている。 (オ) 地球物理学的調査等の限界に関する誤認巨大噴火が、大量の珪長質マグマ溜まりをおおむね地下10㎞以浅に定置させて噴火に至るという知見は、火山学分野で広く肯定されている 知見である。巨大噴火を発生させたマグマ溜まりが珪長質マグマの浮力 中立点よりも深い位置に形成されたと理解されている実例は、これまでの調査において国内に限らず国外でも確認されていない。 原子力規制委員会は、上記知見を基に、巨大噴火の可能性評価において、珪長質マグマ溜まりの浮力中立点に着目したが、地下10㎞以浅というのは飽くまで目安の一つにすぎず、形式的、固定的な基準として浮 力中立点を位置づけているものではない。 (カ) 周辺5カルデラの個別評価に関する判断の誤り原子力規制委員会は、巨大噴火の可能性を検討するに当たり、巨大噴火の活動間隔、最後の巨大噴火からの経過時間、現在のマグマ溜まりの状況、地殻変動の観測データ等の考慮要素を総合して評価を行ったもの であって、個々の考慮事項から巨大噴火がいつ起きるのか又はいつまでは起きないのかを予測しようとしたものではない。周辺5カルデラの現在の活動状況が、いずれも小規模な噴火にとどまるような平穏な火山活動が続いており、火山学では後カルデラ期にあるといわれることからすれば、周辺5カルデラの現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態で ないとした原子力規制委員会の判断は、現在の火山学的知見に照らしても合理的なものであり、判断に至る過程に看過し難い過誤欠落があるとはいえない。 また、火山ガイドによれば、運用期間中における活動可能性が十分小さいとは認められない場合、検討対象火山の調査結果 しても合理的なものであり、判断に至る過程に看過し難い過誤欠落があるとはいえない。 また、火山ガイドによれば、運用期間中における活動可能性が十分小さいとは認められない場合、検討対象火山の調査結果から噴火規模を推 定するか、又は調査結果から噴火の規模を推定できない場合は、検討対象火山の過去最大の噴火規模を設定することになるところ、「基本的な考え方」及び令和元年改正後の火山ガイドは、噴火規模を設定するに当たり、当該火山の最後の巨大噴火以降の最大規模を用いることとしている。これは、検討対象火山の過去最大の噴火規模を設定するに当たって は、既に当該検討対象火山の運用期間中における巨大噴火の可能性が小 さいと判断されている場合であるから、過去最大の噴火規模に当該巨大噴火を含める必要がないという理由によるものである。このような考え方の下で、本件処分の基準適合性審査においては、周辺5カルデラの火山活動につき、それぞれの火山の最後の破局的噴火後に、現在の噴火ステージに移行したことを踏まえ、最後の破局的噴火以降の噴火のうち最 大規模の噴火を想定したものであって、火山ガイドに則ったものといえる。 そして、本件処分後に得られた火山学の知見を含む現在の科学的知見を踏まえても、周辺5カルデラは、巨大噴火が差し迫った状況にあるとはいえない。姶良カルデラについては、巨大噴火が大量の珪長質マグマ 溜まりを概ね地下10㎞以浅に定置させて噴火に至るという知見があるところ(なお、一つの目安にしたものにとどまる。)、現在の火山学的知見によれば、10㎞以浅には大規模なマグマ溜まりは認められないとされている。また、ドルイット論文によると、サントリーニ火山のミノア噴火における噴火直前の約100年間に貫入したマグマの充填速度が 0.05㎦ 0㎞以浅には大規模なマグマ溜まりは認められないとされている。また、ドルイット論文によると、サントリーニ火山のミノア噴火における噴火直前の約100年間に貫入したマグマの充填速度が 0.05㎦以上であったとされているのに対し、現在の火山学的知見によれば、姶良カルデラにおけるマグマ供給率は、概ね0.01㎦であるとされている。また、K教授やM教授は、姶良カルデラにつき巨大噴火が差し迫った状況ではないとの見解を示しているほか、V教授も、VEI7クラスの巨大噴火が発生する現時点での可能性は限りなく小さいと の見解を示している。加久藤・小林カルデラ及び阿多カルデラについては、地下深部からのマグマの供給等による地殻変動が認められておらず、大規模なマグマ溜まりの存在を示唆する火山学的知見や調査結果も存在しない。L教授やM教授も、巨大噴火が差し迫った状況ではないとの見解を示している。鬼界カルデラについては、岩石学的調査手法及び地球 化学的調査手法による解析結果によると、鬼界カルデラの地下にあるマ グマの大部分は玄武岩質マグマであると考えられ、流紋岩質マグマが存在したとしても、現在は大規模噴火を起こし得る状態にあるとはいえない。産総研のO研究員やM教授も、現在の鬼界カルデラの状況は巨大噴火が差し迫った状況ではないとの見解を示している上、このことは国土地理院によるGNSS観測の結果からも裏づけられている。阿蘇カルデ ラについても、地殻変動及び地震波トモグラフィの解析結果によれば、阿蘇カルデラの地下数㎞程度には大規模なマグマ溜まりは確認されていない。阿蘇カルデラでは「低速度領域LA」、「低速度領域LB」及び「草千里直下」の3つの領域に着目して調査研究が行われているが、いずれも巨大噴火を引き起こすような噴火能力を有するマグマ溜ま されていない。阿蘇カルデラでは「低速度領域LA」、「低速度領域LB」及び「草千里直下」の3つの領域に着目して調査研究が行われているが、いずれも巨大噴火を引き起こすような噴火能力を有するマグマ溜まりであ るとは考え難いものである。また、岩石学的評価の結果によれば、阿蘇カルデラ内で過去1万年間にカルデラ中央部に存在する噴出物の岩質は玄武岩質であり、巨大噴火を起こすような巨大な珪長質のマグマ溜まりは存在しないと考えられる。L教授やM教授も、阿蘇カルデラにつき巨大噴火が差し迫った状況にはないとの見解を示している。 控訴人らは、鬼界カルデラプロジェクトで確認された鬼界カルデラ直下における低速度領域が破局的噴火の可能性を示すものであると主張する。しかし、長屋ほか(2023・甲D277)によると、上記低速度領域は直ちに噴火可能なマグマ溜まりの存在を示唆するものとはいえない上、それに続く調査研究においても、鬼界カルデラ直下に巨大噴火に つながる噴火可能なマグマ溜まりの存在を示唆するような知見は得られておらず、鬼界カルデラの現在の活動状況につき、巨大噴火が差し迫った状態ではないとの評価は揺らぐものではない。 (キ) 降下火砕物のシミュレーション及び評価に関する判断の誤り控訴人らの指摘する気中降下火砕物濃度の点は、基本設計ないし基本 的設計方針に関する問題ではなく、原子炉の運転管理体制の問題である から、設置許可ないし設置変更許可の審査対象ではなく、保安規定(変更)認可の段階において審査の対象とされるものである。したがって、この点に関する控訴人らの主張は失当である。 (ク) 専門的知見の取得に関する判断の誤り原子力規制委員会は、本件処分の基準適合性審査において、火山学的 知見に照らして、周辺5カルデラの 、この点に関する控訴人らの主張は失当である。 (ク) 専門的知見の取得に関する判断の誤り原子力規制委員会は、本件処分の基準適合性審査において、火山学的 知見に照らして、周辺5カルデラの現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態ではないと判断したものであり、このことは、本件処分後に得られた知見を含む火山学の知見によっても、裏付けられるものである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、本件訴えのうち、控訴人A及び同Bの請求に係る部分は、同控 訴人らの死亡により終了し、控訴人C、同D、同E、同F及び同Gの請求に係る部分は、原告適格が認められず、不適法であり、その余の控訴人らの請求は、本件処分の違法性が認められず、理由がないと判断する。その理由は以下のとおりである。 2 原告適格 ⑴ 処分の取消しの訴えは、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる(行政事件訴訟法9条1項)。この「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうものと解するのが相当である(最高裁昭和53年3月14日第三小法廷判 決・民集32巻2号211頁)。 ⑵ 基本法は、原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし(同法2条1項)、安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全等を目的として行うものとする旨を定める(同条2 項)。また、規制法は、基本法の精神にのっとり、核原料物質、核燃料物質 及び原子炉の利用が平和の目的に限られることを確保するとともに、原子力施設において重大な事故が生じた場合に 同条2 項)。また、規制法は、基本法の精神にのっとり、核原料物質、核燃料物質 及び原子炉の利用が平和の目的に限られることを確保するとともに、原子力施設において重大な事故が生じた場合に放射性物質が異常な水準で当該原子力施設を設置する工場又は事業所の外へ放出されることその他の核原料物質、核燃料物質及び原子炉による災害を防止し、及び核燃料物質を防護して、公共の安全を図るために、製錬、加工、貯蔵、再処理及び廃棄の事業並びに原 子炉の設置及び運転等に関し、大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した必要な規制を行うほか、原子力の研究、開発及び利用に関する条約その他の国際約束を実施するために、国際規制物資の使用等に関する必要な規制を行い、もって国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的とする旨を定めた上で (同法1条)、発電用原子炉の設置許可及び変更許可の要件として、申請者に重大事故の発生及び拡大の防止に必要な措置を実施するために必要な技術的能力その他の発電用原子炉の運転を適確に遂行するに足りる技術的能力があること、発電用原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障が ないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであることなどを求めている(同法43条の3の6第1項、43条の3の8第2項)。 そして、発電用原子炉が、核分裂連鎖反応を利用し、原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する核燃料物質を燃料とする装置であり、その稼働により、人体に有害な多量の放射性物質を内部に保有することとなること に照らすと、発電用原子炉で事故が発生した場合、原子炉施設に近い住民ほど被 出する核燃料物質を燃料とする装置であり、その稼働により、人体に有害な多量の放射性物質を内部に保有することとなること に照らすと、発電用原子炉で事故が発生した場合、原子炉施設に近い住民ほど被害を受ける蓋然性が高く、しかも、その被害の程度はより直接的かつ重大なものとなり、特に、原子炉施設の近くに居住する者はその生命、身体等に直接的かつ重大な被害を受けることが想定される。 以上の諸点を考慮すると、発電用原子炉の設置許可及び設置変更許可に関 する規制法上の各規定は、単に公衆の生命、身体の安全、環境上の利益を一 般的公益として保護しようとするにとどまらず、原子炉施設周辺に居住し、事故等がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命、身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解される。 その上で、当該住民の居住する地域が、原子炉事故等による災害により直 接的かつ重大な被害を受けるものと想定される地域であるか否かについては、当該原子炉の種類、構造、規模等の当該原子炉に関する具体的な諸条件を考慮に入れた上で、当該住民の居住する地域と原子炉の位置との距離関係を中心として、社会通念に照らし、合理的に判断すべきものと解するのが相当である(最高裁平成4年9月22日第三小法廷判決・民集46巻6号571頁 参照)。 ⑶ 本件各原子炉は、加圧水型原子炉であり、電気出力が89万キロワット、燃料装荷量が約72トンであり、燃料として低濃縮二酸化ウランが使用され、平成27年3月末日の時点で高レベルの放射能を有する使用済燃料が合計1946本貯蔵されていた。放射性物質が人体に及ぼす影響を考慮すれば、本 件各原子炉において原子炉事故等による災害が発生した場合、原子炉施設 末日の時点で高レベルの放射能を有する使用済燃料が合計1946本貯蔵されていた。放射性物質が人体に及ぼす影響を考慮すれば、本 件各原子炉において原子炉事故等による災害が発生した場合、原子炉施設周辺に直接的かつ重大な被害が発生するおそれがあるといえる。 その範囲についてみると、原子力災害対策特別措置法6条の2第1項に基づき原子力規制委員会が定めた原子力災害対策指針は、発電用原子炉施設の原子力災害対策重点区域として、予防的防護措置を準備する区域につき「原 子力施設からおおむね5㎞以内」、緊急防護措置を準備する区域につき「原子力施設からおおむね半径30㎞」と定めており(乙A34)、少なくとも原子炉施設から半径30㎞圏内は、原子炉の事故等による災害が発生した場合、直接的かつ重大な被害を受けることが想定されているといえる。しかし、同指針は、上記区域につき、主として参照する事故の規模等を踏まえ、迅速 で実効的な防護措置を講ずることができるよう検討した上で、継続的に改善 していく必要があるとしており、原子炉事故等による災害が発生した場合に原子炉周辺に直接的かつ重大な被害が発生するおそれのある範囲が上記区域に限定される趣旨をいうものとは解されない。また、原子炉事故が発生した場合の放射能の放出形態は、単一的なものではなく、複合的なものであり、気象条件にも左右される。これらの事情によれば、原子炉事故等による災害 が発生した場合に直接的かつ重大な被害が発生するおそれのある範囲が、原子炉施設から半径30㎞圏内にとどまるとはいえない。 翻って、福島第1原発事故では、推計で、900ペタベクレルの放射性物質(ヨウ素換算)が放出されたとされている。同原発事故の後、セシウム137の土壌の蓄積量が1㎡当たり3000キロベクレル以上となった 翻って、福島第1原発事故では、推計で、900ペタベクレルの放射性物質(ヨウ素換算)が放出されたとされている。同原発事故の後、セシウム137の土壌の蓄積量が1㎡当たり3000キロベクレル以上となった地域は、 福島第1原発から概ね約30㎞の範囲に及んでいる。これらの地域は、年間の積算放射線量が20ミリシーベルト以上に達するおそれがあるものとして、計画的避難区域に設定されており、その区域は、最も遠方で福島第1原発から約47㎞の位置にある。(甲A1、乙A38、39)チェルノブイリ原発事故では、推計で、合計1万4000ペタベクレル (1800ペタベクレルのヨウ素131及び85ペタベクレルのセシウム137を含む。)の放射性物質が放出されたとされている。同原発事故の後、セシウム137の土壌汚染濃度が1㎡当たり555キロベクレル以上となった地域は、同原発の半径100㎞圏内にとどまらず、北東方向を中心に半径300㎞圏内に広く及んでおり、250㎞離れた地域にも、セシウム137 の土壌汚染濃度が1㎡当たり1480キロベクレルを超える場所が存在している。同原発事故により被災した3か国においては、ロシア連邦及びウクライナ共和国が、セシウム137の土壌汚染濃度1㎡当たり555キロベクレル以上の地域を移住ゾーン又は強制的・義務的に移住を実施する地域と定め、ベラルーシ共和国がセシウム137の土壌汚染濃度1㎡当たり1480キロ ベクレル以上の地域を移住義務ゾーン、1㎡当たり555キロベクレルから 1480キロベクレルの地域を移住ゾーンと定めている。原子力規制委員会委員長が平成23年3月25日付けで作成した福島第1原発事故で予想される不測事態の概略を示した資料(甲A3)でも、チェルノブイリ原発事故に際して設けられた移転勧告や自主移転容 いる。原子力規制委員会委員長が平成23年3月25日付けで作成した福島第1原発事故で予想される不測事態の概略を示した資料(甲A3)でも、チェルノブイリ原発事故に際して設けられた移転勧告や自主移転容認区域の範囲等を参照した上で、110㎞の範囲で移転を求めるべき地域が生じ、事故の状況によっては強制移 転を求めるべき地域が半径170㎞以遠にも生ずる可能性がある旨を指摘している。(甲A3、48、114~117)これらを勘案すれば、本件各原子炉が所在する九州(本島)は、原子炉事故等による災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される地域に当たるといえるが、本件各原子炉から800㎞以上離れた地域が、原子炉 事故等による災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される地域に当たるということはできない。そうすると、控訴人らのうち、鹿児島県薩摩川内市、同県日置市、同県いちき串木野市、同県鹿児島市、熊本県水俣市、同県宇土市、同県熊本市、福岡県糟屋郡篠栗町、同県福岡市及び同県宗像市に居住する者には、原告適格があると認められる。他方で、富山県、神 奈川県、東京都、埼玉県及び福島県に居住する者には、原告適格があるとは認められない。 ⑷ ICRPが1990年に採択した勧告は、計画被ばく状況(平常時)における公衆被ばくに係る線量限度につき、実効線量を年間1ミリシーベルトとする旨を示している。しかし、自然界には、宇宙線と呼ばれる宇宙からの放 射線や地殻を構成する花崗岩等に含まれる放射性物質から放出される放射線等が存在し、地球上にいる限り、人体は、絶えず自然界からの放射線に被ばくしており、その線量は、地域によって差異はあるものの、一人当たり年2. 4ミリシーベルトであるとされている(乙D32、37)。これを踏まえれば、上記勧 る限り、人体は、絶えず自然界からの放射線に被ばくしており、その線量は、地域によって差異はあるものの、一人当たり年2. 4ミリシーベルトであるとされている(乙D32、37)。これを踏まえれば、上記勧告が示した数値は、社会的、経済的要因を考慮に入れながら合理 的に達成可能な限り低く被ばく線量を制限する趣旨で提示されたものと解さ れるから、実効線量が年間1ミリシーベルトを超えるおそれがあるという事情をもって、原子炉の事故等による災害により周辺住民の生命、身体等に対する直接的かつ重大な被害が生ずるおそれがある範囲を画するのが相当ということはできない。 実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則2条2項6号は、管理区域 の周辺の区域であって、当該区域の外側のいかなる場所においてもその場所における線量が原子力規制委員会の定める線量限度を超えるおそれのないものを周辺監視区域とし、核原料物質又は核燃料物質の製錬の事業に関する規則等の規定に基づく線量限度等を定める告示2条1項1号は、上記の線量限度に関し、実効線量で1年間につき1ミリシーベルトとする旨を定める。ま た、放射性同位元素等の規制に関する法律6条1号、放射性同位元素等の規制に関する法律施行規則14条の7第1項3号ロ、放射線を放出する同位元素の数量等を定める件(告示)10条2項1号は、管理区域に係る外部放射線に係る線量につき、原則として、実効線量が3か月間につき250マイクロシーベルトを超えてはならないと定める。 しかし、これらはICRPの1990年勧告が計画被ばく(平常時)における公衆被ばくについて、実効線量の限度が年間1ミリシーベルトと示したことを受けて定められたものと解されるところ(乙D38)、この基準が生命、身体等への直接的かつ重大な被害が生ずるお (平常時)における公衆被ばくについて、実効線量の限度が年間1ミリシーベルトと示したことを受けて定められたものと解されるところ(乙D38)、この基準が生命、身体等への直接的かつ重大な被害が生ずるおそれのある範囲を画するものということはできないから、上記基準を根拠として、原告適格が認められ る範囲を画するのが相当ということはできない。 3 本件処分の違法性⑴ 判断の枠組み規制法は、発電用原子炉の設置許可を受けた者が、同法43条の3の5第2項2号から5号まで又は第8号から第11号までに掲げる事項を変更しよ うとするときは、原子力規制委員会の許可を受けなければならないものとし (同法43条の3の8第1項)、許可の要件の一つとして、発電用原子炉の設置許可の場合と同様に、発電用原子炉施設の位置、構造及び設備が、災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであることを求める(同法43条の3の6第1項4号、43条の3の8第2項)。上記規定を受けて原子力規制委員会が定めた設置許可基準規則 は、地震及び津波につき別の定めを置くほか(同規則4条、5条)、地震及び津波を除く自然現象について、安全施設は、想定される自然現象が発生した場合においても安全機能を損なわないものでなければならない旨(同規則6条1項)、重要安全施設は、当該重要安全施設に大きな影響を及ぼすおそれがあると想定される自然現象により当該重要安全施設に作用する衝撃等を 適切に考慮したものでなければならない旨(同条2項)を定める。 これらの規定が設けられた趣旨は、発電用原子炉が原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する核燃料物質を燃料とする装置であり、その稼働により、内部に多量の人体に有害な放射性物質を発生させ これらの規定が設けられた趣旨は、発電用原子炉が原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する核燃料物質を燃料とする装置であり、その稼働により、内部に多量の人体に有害な放射性物質を発生させるものであって、その安全性が確保されない場合、当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等 の生命、身体に重大な危害を及ぼし、周辺の環境を放射能によって汚染するなど、深刻な災害を引き起こすおそれがあることに鑑み、災害が万が一にも起こらないようにするため、発電用原子炉の設置許可処分及び設置変更許可処分の各段階において、想定される自然現象が発生した場合に災害の防止上支障がないといえるかどうかという観点から、原子力規制委員会において、 その安全性につき十分な審査を行わせることにあるものと解される。 そして、原子炉施設の安全性に関する審査は、当該原子炉施設そのものの工学的安全性、平常運転時における従業員、周辺住民及び周辺環境への放射線の影響、事故時における周辺地域への影響等を、原子炉施設の所在地の地形、地質、気象等の自然的条件、人口分布等の社会的条件及び原子炉施設設 置者の技術的能力等との関連において、多角的、総合的見地から検討するも のであり、審査の対象には、将来の予測に係る事項も含まれていることからすれば、その審査においては、原子力工学はもとより、多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づく総合的判断が必要とされるものといえる。また、規制法は、原子炉施設の安全性に関する審査につき原子力規制委員会において行うべきものとしているが、このような規定が設け られたのは、上記のような原子炉施設の安全性に関する審査の性質を考慮し、その委員長及び委員が、専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使するも ものとしているが、このような規定が設け られたのは、上記のような原子炉施設の安全性に関する審査の性質を考慮し、その委員長及び委員が、専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使するものとして組織された原子力規制委員会において、基準の策定、基準の適合性に関する調査審議及びこれに基づく判断を行わせる点にあるものと解される。 以上の諸点を考慮すると、発電用原子炉の設置変更許可処分の取消訴訟における裁判所の審理判断は、調査審議を経た上で行った原子力規制委員会の判断に不合理な点があるかという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、又は当該原子炉施設が具体的審査基準に適合するとした原子力 規制委員会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤欠落があり、その判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、原子力規制委員会の判断に不合理な点があるものとして、その判断に基づく原子炉設置変更許可処分は違法と解するのが相当である。 また、発電用原子炉の設置変更許可処分の取消訴訟においては、設置変更 許可処分が上記のような性質を有することに鑑みると、原子力規制委員会がした判断に不合理な点があることの主張立証責任は、本来、原告側が負うべきものと解されるが、当該原子炉施設の安全審査に関する資料を被告側が所持していることなどの点を考慮すると、被告側において、まず、その依拠した具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、原子力規制委員会の判 断に不合理な点がないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要 があり、被告側がこのような主張立証を尽くさない場合には、原子力規制委員会の判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべき 点がないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要 があり、被告側がこのような主張立証を尽くさない場合には、原子力規制委員会の判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである(伊方原発最高裁判決参照)。 以上と異なる当事者双方の主張は、いずれも採用することができない。 ⑵ 認定事実 前提事実、顕著な事実のほか、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア法改正の経緯福島第1原発事故の後、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会が組織され、国会事故調報告書が取りまとめられて、原子力規制関連法令の抜 本的な見直しが提言されるなどした。これらを踏まえて、平成24年6月、基本法、規制法の改正及び設置法の制定等が行われ、設置法により原子力規制委員会が設置された。改正後の基本法は、原子力利用の安全の確保につき、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行う ものとすること(基本法2条2項)などを定めている。また、改正後の規制法は、自然現象による災害に関し、大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した必要な規制を行うこと、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的とすること(規制法1条)、原子力規制委員会が原子炉の設置許可基準 及び設置変更許可基準に係る規則を制定すること(同法43条の3の6第1項4号、43条の3の8第2項)、発電用原子炉の設置者は、原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならず(同法43条の3の14)、原子力規制委員会は、発電用原子炉が当該基準に適合していないと認める 、発電用原子炉の設置者は、原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならず(同法43条の3の14)、原子力規制委員会は、発電用原子炉が当該基準に適合していないと認めるときは、発電用原子炉の設置者に対し、使 用停止等の処分を行うことができること(同法43条の3の23第1項)、 発電用原子炉の運転期間は40年とし、1回に限り、20年を超えない期間で延長することができること(同法43の3の32)などを定めている。 原子力規制委員会は、規制法43条の3の6第1項4号所定の規則を定めるため、新規制基準検討チームを設置して検討を行い、意見公募手続等を経て、平成25年6月に設置許可基準規則及び設置許可基準規則解 釈を定め、これらは同年7月に施行された。 イ安全上の基準火山災害に対する原子炉の安全性に関して策定された基準又は指針には以下のものがある。 (ア) RFS審査等に関する審査資料 リサイクル燃料貯蔵株式会社は、平成19年3月、青森県むつ市のリサイクル燃料備蓄センターにおける使用済燃料の貯蔵事業に係る許可を申請し、諮問・答申等を経て、原子力安全・保安院は、平成22年5月、規制法(当時)43条の4第1項の規定に基づき、上記事業に係る許可をした。この審査の際、火山の影響評価に関して「使用済燃料中間貯蔵 施設の安全審査における『自然環境』の考え方について」(「自然環境の考え方」)が作成されて、火山の影響評価が行われた。 「自然環境の考え方」は、平成20年10月、旧原子力安全委員会が、金属製乾式キャスクを用いる使用済核燃料中間貯蔵施設のための安全指針のうち、自然環境についての考え方を具体的に示したものである。 「自然環境の考え方」は、第四紀に活動し 旧原子力安全委員会が、金属製乾式キャスクを用いる使用済核燃料中間貯蔵施設のための安全指針のうち、自然環境についての考え方を具体的に示したものである。 「自然環境の考え方」は、第四紀に活動した火山を考慮すべき火山として抽出し、火山の活動履歴及び火山の活動度について総合的に検討を行い、敷地に及ぼす影響の検討を行うこととしている。火山の活動履歴の検討に際しては、文献調査、地質調査等を行うこと、火山の活動度の検討に際しては、火山の活動履歴の検討とともに、必要に応じて、地球物 理学的手法及び地球化学的手法による調査結果についても併せて検討す ることなどを示している。 RFS審査では、自然環境の考え方を踏まえ、恐山及びむつ燧岳を抽出した上で、恐山の階段ダイアグラムが作成されるなどして火山の活動履歴の検討が行われたほか、地球物理学的調査に関し、地震波速度構造、重力構造、比抵抗構造、地震活動、地殻変動に関する調査結果が審査の 対象とされ、また、地球化学的調査に関し、噴気の分析等についての調査結果の検討が行われた。(乙A66、117)(イ) JEAG4625社団法人日本電気協会は、平成21年6月、JEAG4625を公表した。JEAG4625は、原子力発電所の立地及び設計上の考慮条件 策定段階において考慮する火山及び火山現象が原子力発電所の安全性に与える影響の有無の評価及びその必要な調査検討について示した技術指針であり、作成に当たっては、副主査としてR教授が、委員としてW教授が参画した。 JEAG4625は、第四紀に活動した火山を調査対象の火山とし、 火山灰等の降下、火山弾の放出、火砕流・火砕サージ、新火口の形成等を調査対象の火山事象とすること(例えば、火砕流・火砕サージは、噴出中心が敷地から16 紀に活動した火山を調査対象の火山とし、 火山灰等の降下、火山弾の放出、火砕流・火砕サージ、新火口の形成等を調査対象の火山事象とすること(例えば、火砕流・火砕サージは、噴出中心が敷地から160㎞以内の場合に、調査対象の火山事象とされている。)、文献調査、地形調査を実施し、十分な資料が得られない場合に地質調査を行い、更なる資料が必要な場合に地球物理学的調査及び地 球化学的調査を行って供用期間中に噴火する可能性がある火山を抽出すること、活動可能性を考慮する火山については、火山事象ごとに検討を行い、新火口形成の可能性がある場合及び詳細設計段階で対応可能性がない場合、立地の再検討を行うことなどを示している。(乙A6)(ウ) SSG-21 IAEAは、2012年(平成24年)10月、SSG-21を策定 した。IAEAの策定する安全上の基準には、基本的な安全目標と防護及び安全の原則を示す「安全基本事項」、安全基本事項の目標と原則に準拠し、その要件を定めた「安全要件」、安全要件を遵守する方法に関する勧告と指針を提供する「安全指針」がある。SSG-21は、上記のうち安全指針に位置づけられる。SSG-21は、火山活動による影 響の評価について、以下のとおり、4段階に分けて行い、追加的考慮要素としてモニタリングを行う旨を示している。(乙A4)a 段階1(初期評価)過去1000万年の間に発生した可能性のあるすべての火山活動源を包含するサイト周辺の地理的領域を定める。 b 段階2(将来の火山活動の潜在的発生源の特性評価)特定した火山活動源を評価し、将来における噴火又は別の火山事象が発生する可能性を判別する。 c 段階3(火山ハザードのスクリーニング b 段階2(将来の火山活動の潜在的発生源の特性評価)特定した火山活動源を評価し、将来における噴火又は別の火山事象が発生する可能性を判別する。 c 段階3(火山ハザードのスクリーニング)原子力施設のサイトに悪影響を及ぼす可能性のある危険な現象を生 ずる将来の火山事象の可能性を評価する。サイトにおいて危険な現象を生ずる可能性のない火山は、更なる検討の対象から除外する。 d 段階4(可能性のある火山のハザード評価)可能性のある火山源が特定された場合には、特定サイトの火山ハザード評価を実施する。この評価では、サイトに影響を与える可能性の ある具体的な各現象を含め、これらの現象の間の潜在的因果関係について検討する。 e 追加的考慮事項地理的領域内の火山がサイトにおける信憑性のあるハザードの発生源である場合には、これらの可能性のある火山の特性を施設の全耐用 年数期間にわたってモニターする必要がある。 (エ) TECDOC-1795IAEAは、平成28年(2016年)、原子力発電所の火山ハザードの評価におけるサイト評価の手法と適用例を示すものとして、TECDOC-1795を策定した。(甲D193)ウ火山に関する知見 (ア) プレートテクトニクスとの関係プレートテクトニクスの理論によると、日本列島及びその周辺海域は、太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート及び北米プレートの境界部に位置するとされる。プレートの境界部では、互いに離れ合う場合のほか、プレートが他方のプレートの下に沈み込む場合等 がある。プレートが他のプレートの下に沈み込む場合、海溝が形成されるほか、沈み込みを受ける側のプレート上に、海溝から離 互いに離れ合う場合のほか、プレートが他方のプレートの下に沈み込む場合等 がある。プレートが他のプレートの下に沈み込む場合、海溝が形成されるほか、沈み込みを受ける側のプレート上に、海溝から離れた位置に、海溝と並行して噴火が発生し、多くの火山が形成される。この火山や島が弧状に連なった状態を火山弧ないし島弧といい、帯状に連なった火山の海溝側の境界線を火山フロントという。日本列島は、現在、5つの島 弧によって形成されており、日本の火山の多くは島弧に沿って存在している。 プレートの境界部に火山が多く存在する理由としては、次のような説明がされている。すなわち、プレートが沈み込むと、地下の温度・圧力の条件によりプレートに含まれた水が放出される。放出された水は、密 度が低いため上昇し、水の介在によってマントルが溶解してマグマを形成する。液体となったマグマは、密度が低下して上昇し、その密度が周囲と釣り合う状態になると、マグマ溜まりを形成する。このマグマ溜まりから供給されたマグマが地表に噴出することにより噴火が発生する。 (甲D3、乙C6、乙D1、5~7、106、107) (イ) マグマ 火山の噴火は地下で生成されたマグマが地表に噴出することによって生ずるが、噴火の元となるマグマは地下で形成されたマグマ溜まりから供給されると考えられている。 マグマが冷却して固化した岩石を火成岩というが、マグマは、この火成岩の種別に従って分類されることがある。火成岩は、鉄やマグネシウ ムを含む苦鉄質鉱物と、これを含まない珪長質鉱物とからなり、二酸化ケイ素(シリカ)とアルカリ元素量の関係で、ほぼ苦鉄質鉱物からなる超苦鉄質岩、苦鉄質鉱物に富む苦鉄質岩、珪長質鉱物に富む珪長質岩、両者の中間に位置する中間質岩に区分されている。苦鉄質 らなり、二酸化ケイ素(シリカ)とアルカリ元素量の関係で、ほぼ苦鉄質鉱物からなる超苦鉄質岩、苦鉄質鉱物に富む苦鉄質岩、珪長質鉱物に富む珪長質岩、両者の中間に位置する中間質岩に区分されている。苦鉄質岩には玄武岩が、中間質岩には玄武岩質安山岩及び安山岩が、珪長質岩にはデイサイ ト及び流紋岩が相当する。 マグマの粘性や密度は、温度や圧力のほか、科学的組成と密接な関連があるとされる。玄武岩、安山岩、流紋岩の順に含有するシリカの量が多いが、シリカの含有量が多いものほど粘性が上がり、温度の上昇によって粘性が下がるとされ、アルカリ元素量の違いも粘性に影響を与える とされる。(乙D6、8)(ウ) 噴火の様式噴火の様式は、マグマの粘性や含有物と関係があると考えられている。ハワイ式噴火、ストロンボリ式噴火、ブルカノ式噴火、プリニー式噴火等に分類されるが、粘性が高く火山ガス成分にも富むマグマが発泡 して連続的に噴出され、1万mを超えるような噴煙が上がり、大量の降下火砕物をもたらすような噴火をプリニー式噴火という。(乙D6)(エ) カルデラ噴火カルデラとは、輪郭が円形又はそれに近い火山性の陥没地形で、普通の火口よりも大きいものをいい、カルデラを形成するような噴火をカル デラ噴火という。火口の大きさは、大きいものでも直径1㎞を超えない とされるが、これをはるかに超える陥没地形があり、直径4㎞以上のものを火口とは区別してカルデラという。カルデラは、巨大噴火により大量のマグマが放出されて、地表部が大きく陥没することにより形成されると考えられている。噴火を引き起こすマグマは、玄武岩質、安山岩質、デイサイト質、流紋岩質と多様であるが、カルデラ噴火の場合、ほとん どがデイサイト質又は流紋岩質(珪長岩質)とされる。 形成されると考えられている。噴火を引き起こすマグマは、玄武岩質、安山岩質、デイサイト質、流紋岩質と多様であるが、カルデラ噴火の場合、ほとん どがデイサイト質又は流紋岩質(珪長岩質)とされる。(乙D4、9、45、85)火山学では、カルデラ噴火の形成史について、先カルデラ期、カルデラ形成期、後カルデラ期に区分して検討が行われることがある。(乙D12、16) (オ) 噴火規模の指標VEI(火山爆発指数)は、噴火の規模を表す指標である。VEIは、噴出物量に従い「0」から「8」に区分し、噴出物量0.00001㎦未満を「0」、0.00001㎦以上0.001㎦未満を「1」、0. 001㎦以上0.01㎦以下を「2」とし、それ以降、噴出物量が10 倍増加するごとに指数が1ずつ上がる。VEI6以上は、巨大噴火、カルデラ噴火とも呼ばれ、噴火発生場所にカルデラを生ずることが多く、特にVEI7以上の噴火は、破局的噴火とも呼ばれる。(甲A11、乙D5、25)(カ) 火山現象の観測手法 火山災害を軽減するためには火山活動を常時モニタリングすることが必要であるとされており、気象庁、国土地理院、海上保安庁等の行政機関による観測や国立大学や防災科研等による研究観測が行われている。 観測の手法には大きく地球物理学的観測と地球化学的観測とがある。 (乙A4、乙D5) a 地球物理学的観測 主なものとして地殻変動、地震、電磁気及び熱の観測がある。 地殻変動観測は、地盤の隆起、伸縮、傾斜等を観測する手法である。国土地理院は、みちびき、GPS等の全球測位衛星システム(GNSS)を使用して対象地点の変動を観測している。(乙D5、52、166) 地震観測は、火山性の地震や微動を観測 手法である。国土地理院は、みちびき、GPS等の全球測位衛星システム(GNSS)を使用して対象地点の変動を観測している。(乙D5、52、166) 地震観測は、火山性の地震や微動を観測する手法である。火山近傍に地震計を設置して、測定結果を収集して集中監視する方法がとられている。 電磁気観測は、地殻の電気伝導度等の電磁気現象を観測する手法である。例えば、マグマが地下浅部に上昇してくると、温度の上昇に より磁性が失われる熱消磁が起きることがあるほか、マグマの移動により熱水系に変化がもたらされて、地下の電気抵抗(比抵抗)が変化することがある。昭和61年の三原山の噴火に際しては、顕著な比抵抗の減少が捉えられた。 熱観測は、温度計や熱映像監視装置を用いて噴気地域や地熱域の 地表面、噴気、噴煙、温泉、地下水等を観測する手法である。 b 地球化学的観測主なものとして、火山ガス、噴出物、温泉等の化学成分の分析・観測がある。火山岩の化学組成や同位体を調査し、噴出物の起源や生成過程を解明したり、生成年代を調べたりする研究が行われている。 c 地震波トモグラフィ地震が発生すると地震波が震源から地表まで伝わるが、震源から地表までには、岩盤やマグマ溜まり等の様々な物質が存在し、物質ごとに地震波の伝わる速度が異なる。この速度の違いを把握することにより、地下のどの辺りにどのような物質が存在するのかを推測すること ができる。このような地震波速度構造解析技術を地震波トモグラフィ といい、地球物理学的な観測手法の一つである。 地下には、岩盤の部分、岩盤が一部融解してマグマが一部存在する部分、マグマと析出した結晶が半々程度のお粥のような状態(半固結状ないしマッシュ状)に 球物理学的な観測手法の一つである。 地下には、岩盤の部分、岩盤が一部融解してマグマが一部存在する部分、マグマと析出した結晶が半々程度のお粥のような状態(半固結状ないしマッシュ状)になっている部分、完全に溶けたマグマになっている部分(メルト)、熱水が溜まっている部分等がある。地震波の 速度は、岩盤や岩石の剛性率や密度によって変化し、その剛性率や密度は、温度、圧力等の状態によって変化する。地震波が、岩盤が一部融解するなどして温度の比較的高い岩盤等を通る場合や、熱水やマグマ等の液体が多く含まれている岩盤等を通る場合、温度の比較的低い岩盤等を通る場合と比べて、地震波の速度が遅くなる。この地震波の 速度の遅延が確認された領域を低速度領域といい、この低速度領域には、その原因となるマグマ溜まりや熱水等が存在する可能性があると推測することができる。 地震波トモグラフィは、複数の観測点で複数の地震を観測して得られた多くのデータを解析する方法によって行われる。領域を通った地 震波のデータが多く、異なる角度から入射した地震波が多いほど、速度を推測する精度が上がるとされる。(乙D53)(キ) カルデラ噴火とマグマ溜まりの関係カルデラ噴火は、大量の珪長質マグマから成るマグマ溜まりを概ね地下深さ10㎞以浅に定置させた状態から噴火に至るとする見解が示さ れており、広く肯定されている。以下の文献はこれに沿うものである。 a 荒牧重雄「カルデラ噴火の地学的意味」カルデラを形成する大規模火砕噴火の特徴は、地下数㎞にあるマグマ溜まりに存在していた大量の珪長質マグマが発泡し、急激な体積の膨張に伴ってマグマの一部が地表に噴出するというメカニズムである。 1000㎦を超えるようなマグマが短時間で噴出するためには、 グマ溜まりに存在していた大量の珪長質マグマが発泡し、急激な体積の膨張に伴ってマグマの一部が地表に噴出するというメカニズムである。 1000㎦を超えるようなマグマが短時間で噴出するためには、その 何倍もの量の液体マグマがその時点で地下のマグマ溜まりに蓄えられていなければならない。(丙B31)b 鍵山恒臣編「マグマダイナミクスと火山噴火」地殻中を上昇するマグマは、更に地殻浅部(通常は深さ10㎞から3㎞程度)で蓄積され、噴火のために待機していると考えられてい る。地殻を構成する岩石の密度は、浅部ほど小さく、ある浅さでマグマは浮力を失って上昇を止め、マグマ溜まりを作る。(丙B32)c 東宮昭彦「実験岩石学的手法で求めるマグマ溜まりの深さ」1663年の有珠山、セントへレンズ山(6回)、フィッシュキャニオン・タフ、ピナツボ火山の噴火の噴出物に関する岩石融解実験又 は地質圧力計による調査によると、地下6~12㎞程度の深さにマグマ溜まりが形成されていたと推定される。上記噴火のマグマ溜まりは、いずれもマグマの密度が地殻の密度と釣り合う深さ(浮力中立点)よりも浅部には形成されていない。(丙B33)d 下司信夫「カルデラを形成するマグマ溜まりの定置条件」 マグマ溜まりが安定かつ長期的に地殻内部に存在するためには、マグマ溜まりを満たすマグマと周囲の地殻が密度的に釣り合う、すなわち浮力中立点にマグマ溜まりが定置する必要がある。大規模噴火を引き起こすデイサイト質ないし流紋岩質のマグマの密度は、高温試験の結果等から概ね2200~2500㎏/㎥であるが、上部地殻を構 成する花崗岩質の密度は、概ね2300~2500㎏/㎥であり、中部・下部の地殻を構成する苦鉄質の岩石の密度が2500㎏/㎥を超える 果等から概ね2200~2500㎏/㎥であるが、上部地殻を構 成する花崗岩質の密度は、概ね2300~2500㎏/㎥であり、中部・下部の地殻を構成する苦鉄質の岩石の密度が2500㎏/㎥を超えるため、大規模噴火を引き起こすデイサイト質ないし流紋岩質が浮力中立点で安定的に定置できるのは、密度が小さい上部地殻内に限られる。そして、日本列島の火山フロント付近における珪長質岩からな る上部地殻の下限はおよそ深さ15㎞であるとされている。これらに よると、大規模な珪長質マグマ溜まりが安定的に定置できるのは、地下深さ15㎞以浅に限られる。(乙D85)e 篠原宏志ほか「火山研究解説集薩摩硫黄島」7300年前のカルデラ噴火(鬼界アカホヤ噴火)から1934年の昭和硫黄島噴火までの岩石やメルト含有物を詳細に検討すると、7 300年前のカルデラ噴火の直前には、地下深さ3~7㎞にかけて、巨大な流紋岩マグマ溜まりが存在していた。(丙B35)f 安田敦・吉本充宏・藤井敏嗣「姶良火砕噴火のマグマ溜まり深度」妻屋火砕流堆積物の試料を用いた噴出物の含水量、斑晶メルトインクルージョンの捕獲形態、液組成変化、鉱物組成から総合的に判断す ると、姶良カルデラ噴火(姶良Tn噴火)のマグマ溜まりの上部は深さ4~5㎞程度の地殻浅部にまで広がっていたと考えられる。(乙D10)(ク) 噴火の予知・予測現在の火山学では、カルデラ噴火の予測には、マグマ溜まりの調査が 有用であり、多くの場合、調査・観測により異常の有無を捉えることができると考えられているが、その異常がカルデラ噴火の前駆現象なのか、定常現象の範囲にとどまるのかについての判別が困難であり、これが課題とされている。また、噴火の時期及び規模を相当の確度を えることができると考えられているが、その異常がカルデラ噴火の前駆現象なのか、定常現象の範囲にとどまるのかについての判別が困難であり、これが課題とされている。また、噴火の時期及び規模を相当の確度をもって予測することは困難であるとされている。以下の見解はこれらに沿うもので ある。 aR教授新規制基準検討チーム第20回会合(平成25年3月)噴火の予測には、時期、場所、規模、様式及び推移という5つの要素があり、時期及び場所については「何となくできている」という感覚であるが、規模、様式及び推移については予測ができていない。カ ルデラ噴火の場合、マグマが急速に蓄積されるという研究結果からす ると噴火の前兆現象は地球物理学的に捉えられると考えられるが、モニタリングにより異常が見つかった時にカルデラ噴火が切迫しているといえるか否かが今後の大きな課題となる。(甲A6)b 火山学者緊急アンケート(「科学」85巻6号平成27年5月)⒜ N教授 綿密な観測網の下で大規模のマグマ上昇があった場合に限って、数日前~数十日前に噴火を予知できる場合もあるというのが、火山学の偽らざる現状である。機器観測によって数十年以上前に噴火を予測できた例は皆無である。 ⒝ T教授 多くの場合、モニタリングによって火山活動の異常を捉えることは可能であるが、その異常が破局的噴火につながるのか、通常の噴火なのか、それとも噴火未遂に終わるのかなどを判定することは困難である。いずれにせよ、モニタリングによっては把握された異常から、数十年先に起こる事象を正しく予測することは不可能である。 (甲B9)c モニタリング検討チーム提言とりまとめ(平成27年8月) ずれにせよ、モニタリングによっては把握された異常から、数十年先に起こる事象を正しく予測することは不可能である。 (甲B9)c モニタリング検討チーム提言とりまとめ(平成27年8月)VEI6以上の巨大噴火は低頻度の事象であり、国内では約7000年前の鬼界カルデラの噴火が最も新しく、世界的には19世紀にインドネシアで起きたタンボラ火山やクラカトア火山の噴火があるが、 20世紀初頭からは生じていない。現在のモニタリング技術で巨大噴火の発生に至る過程を捉えた事例は未だなく、実際にどのような異常が観測されるかの知見は未だない状況である。このような現状において、巨大噴火の時期や規模を正確に予知するだけのモニタリング技術はないと判断される。ただし、過去のいくつかの巨大噴火の事例をみ ると、主噴火に至る以前により小さい噴火の発生、地震の増加や地殻 変動等の前駆現象が認められた事例があり、巨大噴火の早期警戒に関しても火山モニタリングが有用であることが予想される。 モニタリングで異常が認められたとしても、それを巨大噴火の予兆なのか、定常状態からの「ゆらぎ」の範囲なのかを科学的に識別できないおそれがある。(甲A29) dJ教授 「火山噴火予知と原子力施設への火山活動影響評価」昭和49年に開始された火山噴火予知計画により、事前に多項目を監視していれば、顕著な噴火については、数時間~数日前に噴火に先立つ現象が捕捉できる可能性が高く、他の多くの火山でも観測データに何らかの異常が現れる事例が多いことが分かった。そこで、完全な 噴火予知は困難であるが、国民の生命の安全確保の観点から、異常を検知した時に切迫度や予想される影響範囲に応じた段階的警告を発する噴火警報の業務を平成19年12 ことが分かった。そこで、完全な 噴火予知は困難であるが、国民の生命の安全確保の観点から、異常を検知した時に切迫度や予想される影響範囲に応じた段階的警告を発する噴火警報の業務を平成19年12月に開始した。しかし、警報を発しても噴火に至るとは限らない。余裕をもって非難できるよう警告を発するのは困難である。噴火活動が始まってからの推移の予測は更に 困難である。 巨大噴火のどれくらい前に、どのような範囲に、どのような兆候が現れるか、また、それらの兆候が巨大噴火の前兆と識別できるものか、巨大噴火の経験は世界的に少なく、地質学、岩石学、地球化学及び地球物理学を総合した本格的調査研究は端緒についたばかりであり、残 念ながら判断する材料を持ち合わせていない。 巨大噴火を含めて、火山噴火のリスクに対処するには、理学だけでなく社会的・工学的にも数多くのハードルを超える必要がある。より確かなリスク評価に基づき、火山のモニタリングを実施するために、精度の高い情報を得る努力を続けていくこと、並びに、実効的な調査 ・観測手法の開発維持とそれらの更新が急務である。(甲A154) e 須藤靖明平成30年2月23日付け陳述書現在の科学研究では、火山についての噴火の時期、規模、形態様式、推移、継続時間を予測することはできないというのが、大多数の火山研究者の共通認識である。カルデラ噴火については、噴火予測という観点での研究や観測は、従来ほとんど行われてこなかった。地下のマ グマ溜まりの規模や性状を把握し、その火山における噴火の潜在能力を評価しようとするのは、噴火の中長期の予測を可能にする方法として、大きな方向性としては間違っていないが、現状の火山科学の研究では、その火山の今後数十年における最大規模の噴火を評価す 噴火の潜在能力を評価しようとするのは、噴火の中長期の予測を可能にする方法として、大きな方向性としては間違っていないが、現状の火山科学の研究では、その火山の今後数十年における最大規模の噴火を評価することはできない。(甲D89) (ケ) ナガオカ論文ナガオカ論文は、以下のような見解を示している。 鹿児島地溝における噴火サイクルは、噴火フェーズの考えに基づくと、プリニー式噴火サイクル、大規模火砕流噴火サイクル、中規模火砕流噴火サイクル及び小規模噴火サイクルに分類される。 プリニー式噴火サイクルは、単一のプリニー式噴火(準プリニー式噴火を含む。)から構成され、中規模火砕流噴火フェーズに引き継ぐことがある。火砕流は、プリニー式噴火の噴煙柱が重力的に崩壊することにより発生し、このサイクルでの総噴出物量は50㎦未満である。大規模火砕流噴火サイクルは、噴出物量が100㎦にも及ぶ大規模火砕流のフ ェーズとして特徴づけられ、このフェーズの前には、プリニー式噴火、小規模-中規模火砕流噴火、水蒸気マグマ噴火、水蒸気プリニー式噴火といったような様々な噴火フェーズが先行する。中規模火砕流噴火サイクルは、中規模な火砕流噴火(噴出物量1~50㎦)からなる。小規模噴火サイクルは、小規模のブルカノ式噴火、ストロンボリ式噴火、水蒸 気マグマ噴火からなる。 姶良カルデラ及び阿多カルデラでは、10万年間に複数回のプリニー式サイクルが、それぞれ大規模火砕流噴火サイクルの前に断続的に発生し、大規模火砕流噴火サイクルに続いて、若干の中規模火砕流噴火サイクルが一万年の間続き、次いで、後カルデラ火山で小規模噴火サイクルが発生し、これらのサイクルは、5~8万年続く噴火マルチサイクルを 構成する。深海に沈む鬼界カルデラは、この 中規模火砕流噴火サイクルが一万年の間続き、次いで、後カルデラ火山で小規模噴火サイクルが発生し、これらのサイクルは、5~8万年続く噴火マルチサイクルを 構成する。深海に沈む鬼界カルデラは、この一般的パターンの例外であり、噴火口にかかる高い水圧のため、プリニー式噴火サイクルと中規模火砕流噴火サイクルが存在しない。鹿児島地溝のカルデラは、ただ一回の大規模火砕流噴火サイクルで生じたのではなく、複数の噴火サイクル及びマルチサイクルで形成されたと考えられる。(乙D16、丙B29) (コ) ドルイット論文ドルイット論文は、以下のような見解を示している。 紀元前1600年代後半のミノア期に起きたサントリーニ火山の大規模噴火(ミノア噴火)は、マグマの噴出量が40~60㎦とされるが、ミノア噴火のマグマのほとんどの結晶には、約100年以内に起こった マグマのプロセスを記録している。結晶度等に基づく計算によると、デイサイト成分は噴出マグマの約15%を占めており、噴火前の約100年の間に、少なくとも、数㎦のデイサイトマグマの貫入と、量は明らかでないが、より苦鉄質なマグマの貫入が関与して、急成長し、マグマの蓄積が終了した。一時的なマグマの再充填率は、年0.05㎦を超えて おり、火山の長期マグマ生成速度(年0.01㎦)よりもはるかに大きい。多様な組成のマグマ供給が急速かつ継続的に行われることにより、異なるマグマの混合と均質化が生じ、その10年後に噴火が起こったと考えられる。研究から分かるのは、噴火前の巨大な珪長質マグマ溜まりの再活性化、成長及び最終局面は、先行する休止期間と比べて極めて短 い10年から月単位の時間スケールで発生することができるということ である。このことは、別の火山においても、カルデラ噴火前の 活性化、成長及び最終局面は、先行する休止期間と比べて極めて短 い10年から月単位の時間スケールで発生することができるということ である。このことは、別の火山においても、カルデラ噴火前の同様の時間スケールで、休止期間の末期段階での膨大な量のマグマの再充填が起きたという事実ないし証拠とも矛盾しない。(丙B38)エ九州の火山(ア) 分布 九州北部・中部の活火山は、別府湾から阿蘇、九重を経て島原半島に至る別府‐島原地溝に、南部の活火山は、加久藤盆地から鹿児島湾の湾口にかけて、約20㎞から約30㎞の幅で、ほぼ南北に連なる鹿児島地溝に沿って分布している。 川内原発の半径約160㎞圏内には、以下の周辺5カルデラ及び火山 がある。周辺の活火山の大半は、鹿児島地溝に分布しており、加久藤・小林カルデラ、姶良カルデラ及び阿多カルデラは、鹿児島地溝に分布している。(甲D42、乙D9、13、14、丙B1、21、87の3)a 姶良カルデラ川内原発の東南東約50㎞に位置し、東西約17㎞、南北約23㎞ のカルデラである。北東側に直径約10㎞の若尊カルデラがあり、南西縁に桜島(北岳及び南岳からなる成層火山)がある。 b 加久藤・小林カルデラ加久藤カルデラは、川内原発の東北東約60㎞、小林カルデラはその約80㎞に位置する。両カルデラは近接しており、地形は不明瞭で あるといわれる。加久藤カルデラの南縁付近に霧島山(韓国岳、新燃岳、高千穂峰を含む成層火山及び火砕岳からなる火山群)がある。 c 阿多カルデラ北側及び南側の2つのカルデラからなる。北部は、川内原発の南東約70㎞に位置し、東西約11㎞、南北約10㎞のカルデラであり、 南部は 群)がある。 c 阿多カルデラ北側及び南側の2つのカルデラからなる。北部は、川内原発の南東約70㎞に位置し、東西約11㎞、南北約10㎞のカルデラであり、 南部は、南南東80㎞に位置し、東西約20㎞、南北約10㎞のカル デラである。南部の西側に指宿火山群(複数の成層火山からなる火山群)及び池田(池田カルデラ及びマール群からなる)が、南西縁に開聞岳(成層火山)がある。 d 鬼界カルデラ川内原発の南約120㎞の海域に位置し、東西約23㎞、南北約1 6㎞のカルデラである。北西縁に薩摩硫黄島(硫黄岳及び稲村岳の成層火山からなる火山島)がある。 e 阿蘇カルデラ川内原発の北東約150㎞に位置し、東西約17㎞、南北約25㎞のカルデラである。中央部には阿蘇山(高岳及び中岳を含む成層火山 群)が、東側には根子岳がある。 f その他の火山の分布以上のほか、川内原発の周囲約160㎞圏内には、川内、北薩火山群、薩摩丸山、藺牟田、米丸・住吉池、長島、招川内、雨祈岡、肥薩火山群、尾巡山、えびの火山群、輝北、財部、長尾山、横尾岳、南島 原、大岳、雲仙岳、牧島、有喜、黒島、金峰山、船野山、赤井、多良岳、大峰、虚空蔵山、弘法岳、佐世保火山群、吉ノ本、口永良部島、有田、福江火山群及び荻岳の34の火山がある。 (イ) 過去の噴火a 姶良カルデラ 約9万年前に福山噴火が、約5.0~4.5万年前に岩戸噴火が、約3.3万年前に大塚噴火が、約3.1万年前に深港噴火が、約3. 0万年前に毛梨野噴火が、約3.0~2.8万年前に姶良Tn噴火が、約1.9万年前に高野噴火が、約1.6万年前に新島噴火が発生し、約2.6万年前以降に桜島が活動を開 約3.1万年前に深港噴火が、約3. 0万年前に毛梨野噴火が、約3.0~2.8万年前に姶良Tn噴火が、約1.9万年前に高野噴火が、約1.6万年前に新島噴火が発生し、約2.6万年前以降に桜島が活動を開始したと考えられている。 姶良Tn噴火は、破局的噴火と考えられている。プリニー式噴火に はじまり、多量の降下軽石がもたらされ、次いで火砕流(妻屋火砕流)が発生し、更に大規模な火砕流(入戸火砕流)が発生したと考えられている。同噴火の火山灰は、青森県八戸市でも確認されており、新編火山灰アトラスが示す分布によると、川内原発の敷地は、層厚50㎝以上の範囲に含まれている。入戸火砕流の堆積物は、宮崎県南部、熊 本県南部にも及んでおり、川内原発の敷地を中心とする半径5㎞の地点でも確認されているが、敷地それ自体は新編火山灰アトラスが示す火砕流堆積物の分布範囲に含まれていない。 桜島は、約2.6万年前以降、複数回噴火しているが、このうち最大規模と考えられるのは桜島薩摩噴火である。同噴火の噴出規模は推 計で約11㎦、火口から半径10㎞の範囲に火砕サージが到達し、川内原発から20㎞の地点での火山灰の層厚が推計12.5㎝とされている。(丙B18、21、30、43)b 加久藤・小林カルデラ約53~52万年前に小林笠森噴火が、約52~34万年前の間に、 噴火が複数回発生した境別府噴火期が、約33~32万年前に加久藤噴火が発生し、また、約30万年前に霧島山が活動を開始したと考えられている。霧島山では、同火山で発生したプリニー式噴火を給源とする綾降下スコリア堆積物、イワオコシ軽石堆積物、アワオコシ降下スコリア堆積物が確認されている。 小林笠森噴火及び加久藤噴火は、火砕流及び降下火砕物を噴出した破局的噴火と考えられている。加 する綾降下スコリア堆積物、イワオコシ軽石堆積物、アワオコシ降下スコリア堆積物が確認されている。 小林笠森噴火及び加久藤噴火は、火砕流及び降下火砕物を噴出した破局的噴火と考えられている。加久藤噴火で噴出した火山灰は、広範囲に及んでおり、長野県南牧村の調査地点でも確認されている。加久藤噴火の火砕流の堆積物は、南九州に及んでおり、川内原発から5㎞の地点で、その痕跡が確認されている。(丙B1、18、51) c 阿多カルデラ 阿多カルデラでは、約24万年前より以前に上ノ宇都噴火、塩屋噴火及び阿多丸峰噴火が発生し、約24万年前に阿多鳥浜噴火が、約10.5万年前に阿多噴火が、約10万年前に今和泉噴火が、約8万年前に田代噴火が、約6400年前に池田噴火が発生し、約4400年前以降、開聞岳が活動を開始したと考えられている。指宿火山群では、 約110万年前から約10.5万年前の間に、古期指宿火山群及び中期指宿火山群の火山岩類の活動が、約10.5万年以降に新期指宿火山群の活動が確認されている。 阿多鳥浜噴火及び阿多噴火は、火砕流及び降下火砕物を噴出した破局的噴火と考えられている。阿多噴火の火山灰は、広範囲に及んでお り、神奈川県平塚市でも確認されている。同噴火の火砕流堆積物は、断片的であるが、屋久島、種子島、鹿児島県南部で確認されており、川内原発の敷地は、新編火山灰アトラスが示す予想分布域に含まれている。(丙B1、18、21、55)d 鬼界カルデラ 約14万年前に小アビ山噴火が、約9.5万年前に鬼界葛原噴火が、約7300年前に鬼界アカホヤ噴火が発生したと考えられている。また、約1.6万年から約7300年前までの間に、降下火山灰を主体とする噴火が複数回発生した籠港噴火期があり、約6000年前以降、薩摩 約7300年前に鬼界アカホヤ噴火が発生したと考えられている。また、約1.6万年から約7300年前までの間に、降下火山灰を主体とする噴火が複数回発生した籠港噴火期があり、約6000年前以降、薩摩硫黄島が活動を開始したと考えられている。 鬼界葛原噴火及び鬼界アカホヤ噴火は、破局的噴火と考えられており、火砕流堆積物の分布状況からすると、小アビ山噴火も破局的噴火と考えられている。鬼界アカホヤ噴火は、プリニー式噴火に始まり、多量の降下軽石をもたらし、局地的な火砕流(船倉火砕流)を発生させ、次いで、水蒸気プリニー式噴火が起こり、広域に及ぶ火砕流(幸 屋火砕流)が発生したと考えられている。鬼界アカホヤ噴火の火山灰 は、広範囲に及び、長野県軽井沢町や尾瀬ヶ原で確認されている。川内原発の敷地は、新編火山灰アトラスが示す分布図の層厚30㎝以上の範囲に含まれている。同噴火の幸屋火砕流の痕跡物は、薩摩半島南部、大隅半島南部等で確認されているが、川内原発の敷地から半径30㎞の範囲では確認されていない。鬼界アカホヤ噴火の火山灰及び火 砕流は、南九州の縄文文化と自然環境に大きなダメージを与えるとともに、西日本から東日本にかけて降灰による甚大な影響を及ぼしたと推察されている。(丙B1、18、23、61)e 阿蘇カルデラ約80万年前から約40万年前までの間に先阿蘇の火山岩類の活動 が、約27~25万年前に阿蘇1噴火が、約14万年前に阿蘇2噴火が、約14万年前から約12万年前までの間に根子岳の火山岩類の活動が、約12万年前に阿蘇3噴火が、約9.0~8.5万年前に阿蘇4噴火が発生し、阿蘇3噴火から阿蘇4噴火までの間に阿蘇4/3噴火期があり、また、阿蘇山が約9万年前から噴火活動を開始したと考 えられている。 阿 阿蘇3噴火が、約9.0~8.5万年前に阿蘇4噴火が発生し、阿蘇3噴火から阿蘇4噴火までの間に阿蘇4/3噴火期があり、また、阿蘇山が約9万年前から噴火活動を開始したと考 えられている。 阿蘇1ないし阿蘇4の噴火は、いずれも破局的噴火と考えられている。阿蘇4噴火の火山灰は、北海道網走市でも層厚15㎝の地層が確認されており、極めて広範囲に及んでいる。同噴火の火砕流は、噴火地点から150㎞以上離れた地点まで到達し、鹿児島県北部や山口県 にも及んだと考えられている。ただし、川内原発の敷地は、新編火山灰アトラスが示す火砕流堆積物の分布範囲には含まれていない。(乙D2、丙B18、66、67)オ火山ガイドの策定経緯(ア) 平成24年10月25日、新規制基準検討チームの第1回会合が開催 され、火山の影響について、考慮すべき自然現象に含めるべきことが確 認された。 原子力規制庁は、同会合と前後して、JNESに対し、火山の影響評価に関する基準の原案の作成を依頼し、JNESは、火山タスクチームを立ち上げ、Y専門職ほか複数名が担当者となった。 Y専門職らは、国内外の規制機関における火山ハザードの基準や文献 の調査を行い、SSG-21の原案、JEAG4625及びRFS審査に関する審査資料等を入手した。 Y専門職らは、平成24年9月頃から11月頃にかけて、火山学を専門とする東京大学地震研究所のR教授、首都大学東京(当時)のW教授及び産総研のX研究員及び地球物理や観測を専門とする防災科研のU教 授の4名にヒアリングを行った。Y専門職らは、これらのヒアリングにより、噴火の可能性評価について、確度をもって行うのは難しい旨、階段ダイアグラムを使った活動履歴の評価や、地震波トモグラフィ、重力構造、比抵抗構造等の グを行った。Y専門職らは、これらのヒアリングにより、噴火の可能性評価について、確度をもって行うのは難しい旨、階段ダイアグラムを使った活動履歴の評価や、地震波トモグラフィ、重力構造、比抵抗構造等の調査は、ある程度有用である旨の知見を得た。 平成25年3月14日、第1回火山影響評価に係る研修会が開催され た。R教授及びX研究員は、カルデラ噴火の予兆は地震活動や地殻変動のモニタリングである程度捉えられると考えられるが、噴火に至るか否かを判断する基準や、噴火に至った場合にどの程度の噴火が起こるかを判断する基準を示すのは難しいことなどを指摘した。 JNESの火山タスクチームは、SSG-21を主として参考にしつ つ、ヒアリングや研修会により得られた知見やJEAG4625、RFS審査等に関する審査資料を参照して火山ガイドの原案を作成した。 (甲A206、乙D142、149、150、証人Y)(イ) 平成25年3月28日、新規制基準検討チーム第20回会合が開催され、原子力規制委員会の委員、原子力規制庁の担当者のほか、外部有 識者としてR教授が参加した。 R教授は、この会合において、以下のとおり説明した。同教授が用いた資料には、カルデラ噴火により九州(本島)全域に火砕流が到達したことを示す地図、姶良カルデラ、加久藤・小林カルデラ、阿多カルデラ及び鬼界カルデラにおける噴火を基に作成された南九州全域の主な巨大噴火の階段ダイアグラム等がある。 火山事象のうち火砕流・火砕サージ、溶岩流及び山体崩壊・地滑りが到達したと考えられる範囲は、基本的に原子力発電所が立地することは不可能である。地球全体でみた場合、大噴火は100年単位、VEI8級の超巨大噴火は数十万年単位で発生している一方で、日本国内で1700年代以降、VEI5以上 は、基本的に原子力発電所が立地することは不可能である。地球全体でみた場合、大噴火は100年単位、VEI8級の超巨大噴火は数十万年単位で発生している一方で、日本国内で1700年代以降、VEI5以上の噴火が発生していないという規則性によ ると、日本国内で大噴火が起こる時期が近づいているといえる。噴火の予測には、時期、場所、規模、様式及び推移という5つの要素があり、時期及び場所については「何となくできている」という感覚であるが、規模、様式及び推移については未だ予測ができていない。カルデラ噴火のような超巨大噴火の観測例はなく、その噴火を予測することができる かは非常に大きな問題である。カルデラ噴火の頻度が極めて低く、十分に発生可能性が低いといい得るならば、仮に過去のカルデラ噴火の火砕流の上に建造物があっても問題がないといえる。階段ダイアグラムは、噴火の確率に言及するための一つの材料になり得る。カルデラ噴火の前、マグマ溜まりには数十年から数百年でマグマが充填し、普通の火山より も変動量が非常に大きく記録される。超巨大噴火であっても、カルデラ噴火であっても、広域的にみれば統計的に扱うことができるであろうと考えられる。カルデラ噴火の場合、マグマが急速に蓄積されるという研究結果からすると噴火の前兆現象は地球物理学的に捉えられると考えられるが、モニタリングにより異常が見つかった時にカルデラ噴火が切迫 しているといえるか否かが今後の大きな課題となる。現状の火山学では、 マグマ溜まりの変化の状況を見ることはできるが、マグマの量は分からない。 また、原子力規制庁は、JNESが作成した火山ガイド原案の説明を行った。原子力規制庁が示した資料には、立地評価においては、将来の火山活動可能性があると評価された火山について、原子力発 からない。 また、原子力規制庁は、JNESが作成した火山ガイド原案の説明を行った。原子力規制庁が示した資料には、立地評価においては、将来の火山活動可能性があると評価された火山について、原子力発電所の運用 期間中において、火砕物密度流等設計対応不可能な火山活動が発生する可能性が十分小さいかの評価を行う旨、立地不適と評価されない場合においても、現在の知見では、火山活動可能性及びその噴火規模については、その評価に不確実性を伴うため、モニタリングによる地理的領域内の火山監視及び噴火の兆候が認められた場合の対応を明確化する旨、将 来の活動可能性が否定できないと評価された火山は、原子力発電所の運用期間中において火山活動を監視するため、モニタリングの実施を求める旨、噴火の兆候が認められた場合の対応については、火山活動のモニタリングによる休止期間中の火山の活動が再開又は再開される兆候が見られた場合に当該火山の活動段階に応じた原子力発電所内外の活動が示 されている旨、原子炉内の核燃料を取り出し、敷地外に搬送するには十分な冷却期間が必要であることから、これらを考慮した対応が示されていること等の対策の明確化を求める旨等が示されている。(甲A6、7、123)(ウ) 平成25年4月2日、第2回火山影響評価に係る研修会が開催された。 この研修会にはJNES及び原子力規制庁の担当者のほか、R教授、W教授、X研究員及びU教授が参加し、火山ガイドの原案に関する意見聴取が行われた。Y専門職は、火山ガイドについて、カルデラ噴火の発生可能性評価に関して、火山一般に当てはまる指標を示すのは困難であるため、個々の火山のカルデラ噴火の発生可能性を評価するための方法を 記載したことや、設計対応不可能な火山事象が過去に到達したことを否 評価に関して、火山一般に当てはまる指標を示すのは困難であるため、個々の火山のカルデラ噴火の発生可能性を評価するための方法を 記載したことや、設計対応不可能な火山事象が過去に到達したことを否 定できない場合には、対象火山のモニタリングを必須とすることとしたこと等を説明し、R教授らは、追記し得るような事項はないと述べた。 また、R教授らは、カルデラ噴火において、現時点でどのような現象が噴火のどの程度前から発現するかは分からないこと、阿蘇4のようなカルデラ噴火では、規模の小さい噴火に比べれば、発現する事象の大きさ や期間が異なると考えられるが、観測データがなく、不確実性が大きいこと等を述べた。(乙D142、149、証人Y)(エ) 平成25年4月4日、新規制基準チーム第21回会合が開催され、Z1課長は、修正を加えた火山ガイドの原案の説明を行った。具体的には、大規模噴火の場合、予兆がある程度の期間以前につかめるであろう ということを前提としていたが、JNESでの検討及び専門家の意見聴取によると、明確に、この状況であれば大丈夫ということはいえないなどとした上で、原子力発電所の運用期間中の火山活動可能性が十分小さいといえるかどうかを評価して、十分小さいといえる場合にはモニタリングを実施すること、十分小さいといえない場合には、火山活動の規模 を推定し、影響可能性が十分小さいといえるかどうかを評価した上で立地不適かどうかを判断すること、これにより影響可能性が十分小さいといえる場合にはモニタリングを実施することなどを説明した。 Z1課長は、どの程度の頻度のものを想定すべきなのかを問われたのに対し、大規模なカルデラ噴火を含めて「前兆がある程度把握できるだ ろうということで、普通の確率論的な評価で対象にしているものとは Z1課長は、どの程度の頻度のものを想定すべきなのかを問われたのに対し、大規模なカルデラ噴火を含めて「前兆がある程度把握できるだ ろうということで、普通の確率論的な評価で対象にしているものとは少し性質が違うのかなというのが、今回、この評価のガイドの根っこになって」いる旨、「ちゃんとモニタリングをしっかりやるというのが、一番の前提と考えて」いる旨を述べた。(甲A124)(オ) 平成25年4月10日、原子力規制委員会において、平成25年度 第2回会合が開催され、安全目標に関する合意をした。 (カ) 平成25年5月27日、JNESにおいて、第1回火山に関する規制基準検討会が開催された。同検討会は、R教授を委員長、W教授、X研究員及びU教授を委員とする会議である。同検討会の委員は、火山噴火の既往最大規模に関し、過去に10㎦以上の規模の噴火をしたが、30万年以上にわたって10㎦以上の規模の噴火をしていない火山をモニ タリングの対象外とすることの妥当性、国のモニタリング情報の活用を含むモニタリングの方法及び降下火砕物の影響について今後十分検討する必要がある旨を指摘した。(乙A8)(キ) 平成25年6月3日、新規制基準検討チームの第23回会合が開催された。同会合では、同年4月から同年5月にかけて行われた火山ガイ ドの意見公募手続で提出された意見に関する議論が行われた。(甲A8、125ないし127)(ク) 平成25年6月19日、平成25年度第11回原子力規制委員会が開催され、原子力規制委員会は、同会議において、火山ガイドを策定した。(乙A60) カ火山学会提言日本火山学会は、平成25年9月、巨大噴火の予測可能性に関する火山ガイドの内容と火山研究者の認識との間に大きなギャップがあるとの問題 ドを策定した。(乙A60) カ火山学会提言日本火山学会は、平成25年9月、巨大噴火の予測可能性に関する火山ガイドの内容と火山研究者の認識との間に大きなギャップがあるとの問題意識から、学術的な視点から意見交換・情報共有を行う場として、原子力問題対応委員会を設け、同委員会は、平成26年11月2日、巨大 噴火の予測と監視に関する提言(火山学会提言)を公表した。同委員会委員長のJ教授は、公表に当たり、同提言は火山ガイドの見直しを求めるものであると報道機関に説明した。同提言の内容は、次のとおりである。(甲A11、12、甲B65、66)(ア) 巨大噴火の監視体制や噴火予測の在り方について ・日本火山学会で取り組むべき重要な課題の一つである。 ・巨大噴火については、国(全体)として対策を講ずる必要があるため、関係省庁を含めた協議の場が設けられるべきである。 ・協議の結果については、原子力施設の安全対策の向上等において活用されることが望ましい。 (イ) 巨大噴火の予測に必要となる調査・研究について ・応用と基礎の両面から推進することが重要である。 ・成果は、噴火警報に関わる判断基準の見直しや、精度の向上に活用されることが重要である。 (ウ) 火山の監視態勢や噴火警報等の全般に関して・近年の噴火事例において表出した課題や、火山の調査・観測研究の 将来(技術・人材育成)に鑑み、国として組織的に検討し、維持・発展させることが重要である。 ・噴火警報を有効に機能させるためには、噴火予測の可能性、限界、曖昧さの理解が不可欠である。火山ガイド等の規格・基準類においては、このような噴火予測の特性を十分に考慮し、慎重に検討すべきで ある。 キモニタリング検討チームの 測の可能性、限界、曖昧さの理解が不可欠である。火山ガイド等の規格・基準類においては、このような噴火予測の特性を十分に考慮し、慎重に検討すべきで ある。 キモニタリング検討チームの設置等(ア) 平成26年8月20日、原子力規制委員会は、同委員会としての対応に資する火山学上の知見や考え方を整理するという目的で、原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム(モニタリング 検討チーム)を設置した。(甲A36)(イ) 平成26年8月25日、モニタリング検討チーム第1回会合が開催され、T教授、J教授、R教授等の外部専門家が参加して、説明及び質疑応答が行われた。 T教授は、火山のモニタリングは人的被害の軽減・防止に役立つこと、 GPS、地震観測、監視カメラによって噴火の予知ができるというのは 誤解であり、予知には、現場での目、耳、鼻を生かした諸現象の調査観測や火山の特性と活動の展開に応じた追加の観測調査が不可欠であること、噴火のポテンシャルを評価するには、噴出物の階段ダイアグラムや経年的な地震活動等の複数の指標を併用する必要があること、ピナツボ火山、セントへレンズ火山等の噴火の状況からすると、巨大噴火は何ら かの前駆現象が数か月又は数年前に発生する可能性が高いが、前駆現象が発生したからといって巨大噴火が発生するとは限らないため、顕著な地変が始まった時に巨大噴火の発生を想定した対策が迅速にとれるかが重要となること、ドルイット論文は、サントリーニ山のミノア噴火を述べたもので、カルデラ一般について述べたものではないことなどを説明 した。 R教授は、現在の火山学の水準では、巨大噴火の時期や規模を予測することは極めて困難であること、現在の科学技術では、マグマ溜まりの増減はモニタリングで べたものではないことなどを説明 した。 R教授は、現在の火山学の水準では、巨大噴火の時期や規模を予測することは極めて困難であること、現在の科学技術では、マグマ溜まりの増減はモニタリングできるかもしれないが、その貯蓄量は分からないこと、モニタリングで観測された異常が「ゆらぎ」にとどまるのか、カル デラ噴火に向けた兆候なのかをどのように判断するか、カルデラ噴火の可能性が示された場合におけるシミュレーションと手続が社会的課題となること、過去のカルデラ噴火の状況からすると、噴火には前兆があって、直前には明らかに大きな変動が出るが、燃料の搬出等に間に合うだけのリードタイムを持って、その現象を見ることはできないことなどを 説明した。(甲A15~20、乙A24)(ウ) 平成26年9月2日、モニタリング検討チーム第2回会合が開催され、T教授、J教授、R教授をはじめとする外部専門家が参加して、モニタリングに関する基本的な考え方について議論が行われた。 R教授は、モニタリングを事業者が主体となって行うこととしている 点を見直した方がよいこと、既存の観測体制では不十分で、電気事業者 ではできないこと、異常が噴火の前兆に当たるか否かを判断するための閾値を事前に定めておく必要があり、異常が観測されてから、検討し始めるのであれば、適切に判断することはできないこと、異常の前兆が見つかるか否か、リードタイムがあるか否かなど、様々なシナリオが考えられるので、モニタリングと関連させたアクションプランを作成する必 要があること等を述べた。 Y専門職は、当初、巨大噴火だから大きな予兆があるとか、大きな変動があるということを考えていたが、必ず起こるとは限らないということ、モニタリングにより何かしらの があること等を述べた。 Y専門職は、当初、巨大噴火だから大きな予兆があるとか、大きな変動があるということを考えていたが、必ず起こるとは限らないということ、モニタリングにより何かしらの変化を捉えることができるが、その指標がない状況にあることなどを述べた(なお、同人の尋問の結果によ れば、同発言にいう「当初」の考え方が、平成25年策定当時の火山ガイドの前提となった考え方であるという趣旨を述べたものとは認められない。)。 T教授は、Y専門職の発言を受けて、VEI7以上の噴火の観測例はなく、何が起こるか分からないので、モデルを作成して、どのようなこ とが予想されるかということ以外に手段はないこと、明確なモニタリングのパラメーターを決めることは現時点では無理であることなどを述べた。 R教授は、T教授の発言を受けて、噴火事象がどのような具合で進むかを判断するのは難しいのが現状であり、基礎研究や理論的な研究を推 し進めるしかないこと、モニタリングを実際に行ってみて、その結果からどのように現状を判断するかという実践的なモニタリングもあり得ることなどを述べた。(甲A21)(エ) 平成26年12月16日、モニタリング検討チーム第3回会合が開催され、J教授、K教授、P教授、T教授をはじめとする外部専門家が参 加し、J教授が、火山学会提言の内容につき、K教授が口永良部島での 観測事例につき、P教授が雲仙普賢岳の観測事例につき、説明を行った。 K教授は、2014年の口永良部島の噴火に関し、1999年から月別の地震回数の急激な増加や地盤変動が、2006年から火口周辺の温度異常域が、2008年から白色噴煙活動及び二酸化硫黄の放出量の増加等が観測されたが、同年以降、地震活動の活発化が続いたもの 年から月別の地震回数の急激な増加や地盤変動が、2006年から火口周辺の温度異常域が、2008年から白色噴煙活動及び二酸化硫黄の放出量の増加等が観測されたが、同年以降、地震活動の活発化が続いたものの、地 盤膨張との連動がみられないようになり、噴火直前に隆起が観測されて噴火に至ったこと、多項目を観測することにより前兆過程を把握していること、火山活動には、非常に長期の準備過程と、極めて短い前兆過程があり、分けて検討することが考えられること、変動の全体像を掴むのが重要であるが、噴火の規模が大きくなればなるほど難しくなること等 を説明した。 P教授は、平成2年の雲仙普賢岳の噴火に関し、地震活動及び地殻変動等の明瞭な前駆現象に気が付いたのは噴火の1年ほど前であるが、大正時代から続く群発地震が長期的な準備過程であったことが後に分かったこと、1792年の噴火では、溶岩流出、山体崩壊という経過を辿っ たが、平成2年の噴火では、溶岩ドームの形成、火砕流の発生という経過を辿っており、一つの火山でも噴火の様式は多様性に富んでいること等を説明した。 T教授は、噴火の予知をするためには、長期間にわたってバックグラウンドのレベルから研究をする必要があり、それを行ったとしても最終 的な予知というのは非常に難しく、GPS等による観測を行えば可能となるものではないこと、現在の科学技術水準では限界があることを認識すべきであること、閾値を定めることは否定的であること等を述べた。 (甲A22~24)(オ) モニタリング検討チームは、第4回ないし第7回の会合での議論を経 て、平成27年7月31日、「提言とりまとめ」を作成した。そのうち、 火山活動のモニタリングに関する基本的な考え方として取りまとめられた内容は、以下のとおりで 第7回の会合での議論を経 て、平成27年7月31日、「提言とりまとめ」を作成した。そのうち、 火山活動のモニタリングに関する基本的な考え方として取りまとめられた内容は、以下のとおりである。 国内の通常の火山活動については、気象庁が防災の観点から110の活火山について「噴火警報・予報」を発表することになっているが、噴火がいつ・どのような規模で起きるかといった的確な予測は困難な状況 にある。また、未知の巨大噴火に対応した監視・観測体制は設けられていない。VEI6以上の巨大噴火に関しては発生が低頻度であり、モニタリング観測例がほとんど無く、中・長期的な噴火予測の手法は確立していない。しかし、巨大噴火には何らかの短期的前駆現象が発生することが予想され、モニタリングによって異常現象として捉えられる可能性 は高い。ただし、モニタリングで異常が認められたとしても、いつ、どの程度の規模の噴火にいたるのか、あるいは定常状態からの「ゆらぎ」の範囲なのかを識別できないおそれがある。 このような状況を受け、また原子力施設における対応には時間を要するものもあることも踏まえれば、原子力規制委員会の対応としては、予 測の困難性や前駆現象を広めにとらえる必要性があることから、何らかの異常が検知された場合には、モニタリングによる検知の限界も考慮して、空振りも覚悟のうえで巨大噴火に発展する可能性を考慮した処置を講ずることも必要である。また、その判断は、原子力規制委員会・原子力規制庁が責任を持って行うべきである。 なお、国として巨大噴火の可能性を考慮した処置を講ずるためには、国は関係行政機関や防災組織及び関連研究者等と連携して、住民の避難・移住計画や経済損失の取り扱い等に係る対応策などを策定するべく、調査・研究を推進していくべ の可能性を考慮した処置を講ずるためには、国は関係行政機関や防災組織及び関連研究者等と連携して、住民の避難・移住計画や経済損失の取り扱い等に係る対応策などを策定するべく、調査・研究を推進していくべきであると考える。 巨大噴火の可能性を考慮した処置を原子力施設に対して講ずる判断の 目安及びその設定・改定の考え方、モニタリング方法の具体化及び精度 の向上、モニタリング(観測・監視・評価)の体制や取り組み方、巨大噴火に関連した火山活動に関する火山学上の知見の整理(地質学的・岩石学的・地球化学的・地球物理学的・測地学的)等については、原子力規制委員会をはじめとする国の行政機関及び大学等研究機関が協力して調査・研究を推進しつつ、引き続き検討することが必要である。(甲A 29)ク火山ガイド策定後の検討等(ア) 平成29年改正平成29年11月29日、原子力規制委員会は、火山ガイドを改正し、気中降下火砕物の濃度の推定手法に関する定めが設けられた。(乙A3 2)(イ) 「基本的な考え方」平成30年2月21日、第67回原子力規制委員会が開催され、同委員会のS委員長は、基準適合性審査における巨大噴火に関する原子力規制委員会の考え方を分かりやすくまとめることを提案し、他の同委員会 委員もこれに賛同する意見を述べた。 同年3月7日、第69回原子力規制委員会が開催され、上記提案を受けて原子力規制庁が作成した「基本的な考え方」の審議が行われた。同委員会委員は、従来も「基本的な考え方」でまとめられた考え方で規制を行ってきたし、これからもこの考え方で行っていく旨、巨大噴火の可 能性評価に関しては、いつそれが起きるかという予知をするものではなく、火山の状態、マグマがどれくらい溜まっているかの 方で規制を行ってきたし、これからもこの考え方で行っていく旨、巨大噴火の可 能性評価に関しては、いつそれが起きるかという予知をするものではなく、火山の状態、マグマがどれくらい溜まっているかの状態を見るという理解になる旨を述べ、同委員会は、巨大噴火に関する基本的な考え方は原子力規制庁が示した「基本的な考え方」のとおりである旨を確認した。この「基本的な考え方」の内容は、次のとおりである。 a 巨大噴火とは、地下のマグマが一気に地上に噴出し、大量の火砕流 によって広域的な地域に重大かつ深刻な災害を引き起こすような噴火であり、噴火規模としては、数10㎦程度を超えるような噴火を指す。 b 設計対応不可能な火山事象を伴う火山活動の評価について火山影響評価は、火山ガイドが示す図の手順に従って行っており、このうち、設計対応不可能な火山事象については、当該事象が原子力 発電所の運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいかどうかを評価する。過去に巨大噴火が発生した火山については、巨大噴火の可能性評価を行った上で、巨大噴火以外の火山活動の評価を行う。 c 巨大噴火の可能性評価の考え方巨大噴火の可能性評価に当たっては、火山学上の各種の知見を参照 しつつ、巨大噴火の活動間隔、最後の巨大噴火からの経過時間、現在のマグマ溜まりの状況、地殻変動の観測データ等から総合的な評価を行い、火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態にあるかどうか、及び運用期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性のある具体的な根拠があるかどうかを確認する。 巨大噴火は、広域的な地域に巨大かつ深刻な災害を引き起こすものである一方、その発生の可能性は低頻度な事象である。現在の火山学の知見に照らし合わせて考えた場合には運用期 どうかを確認する。 巨大噴火は、広域的な地域に巨大かつ深刻な災害を引き起こすものである一方、その発生の可能性は低頻度な事象である。現在の火山学の知見に照らし合わせて考えた場合には運用期間中に巨大噴火が発生する可能性が全くないとは言い切れないものの、これを想定した法規制や防災対策が原子力安全規制以外の分野においては行われていない。 したがって、巨大噴火によるリスクは社会通念上容認される水準であると判断できる。 したがって、上記を考慮すれば、巨大噴火の可能性の評価については、現在の火山学の知見に照らした火山学的調査を十分に行った上で、火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態でないことが確認 でき、かつ、運用期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性 のある具体的な根拠があるとはいえない場合は、少なくとも運用期間中は、巨大噴火の可能性が十分に小さいと判断できる。 d 巨大噴火以外の火山活動の評価の考え方について巨大噴火以外の火山活動について、その活動の可能性が十分小さいと判断できない場合には、火山活動の規模と設計対応不可能な火山事 象の評価を行うこととなる。噴火の規模を特定することは、一般に困難であるため、火山ガイドに従い、検討対象火山の過去最大の噴火規模について火山事象の評価を行うこととなる。ここで検討対象火山の過去最大の噴火規模には、当該検討対象火山の最後の巨大噴火以降の最大の噴火規模を用いる。 e 火山ガイドのモニタリングについて(参考)火山活動のモニタリングは、運用期間中の巨大噴火の可能性が十分小さいと評価して許可を行った場合にあっても、この評価とは別に、評価の根拠が継続していることを確認するため、評価時からの状態の変化を検知しようとするものである。ま 運用期間中の巨大噴火の可能性が十分小さいと評価して許可を行った場合にあっても、この評価とは別に、評価の根拠が継続していることを確認するため、評価時からの状態の変化を検知しようとするものである。また、火山ガイドでは、モニタ リングにより火山活動の兆候を把握した場合には、当然のこととして、原子炉の停止を含めた対処方針を事業者が事前に定めておくこととされている。事業者の火山活動のモニタリング評価結果については、原子炉安全審査委員会に設置されている原子炉火山部会において少なくとも年1回評価することとしている。 また、原子力規制委員会が策定する原子炉の停止等に係る判断の目安についても原子炉火山部会において検討中である。(乙A28、29)(ウ) 令和元年改正平成29年度第69回原子力規制委員会及び令和元年度第16回原子 力規制委員会において、同委員会のS委員長は、火山ガイドの記述の適 正化を行うよう原子力規制庁に指示し、原子力規制庁は、火山ガイドの改正案を作成した。行政手続法によらない意見聴取手続等を経て、令和元年12月18日、原子力規制委員会は、修正後の火山ガイド案を了承し、火山ガイドを改正した。 同改正後の火山ガイドでは、「火山影響評価のほか、評価時からの状 態の変化の検知により評価の根拠が維持されていることを確認することを目的として、…火山活動のモニタリングの実施方針及びモニタリングにより観測データの有意な変化を把握した場合の対処方針を策定することとする」旨、「火山活動に関する個別評価は、設計対応不可能な火山事象が発生する時期及びその規模を的確に予測できることを前提とする ものではなく、現在の火山学の知見に照らして現在の火山の状態を評価するものである」旨、「検討対象火山(過去に巨大噴火が な火山事象が発生する時期及びその規模を的確に予測できることを前提とする ものではなく、現在の火山学の知見に照らして現在の火山の状態を評価するものである」旨、「検討対象火山(過去に巨大噴火が発生したものに限る。)の活動の可能性の評価に当たり、巨大噴火については、噴火に至る過程が十分に解明されておらず、また発生すれば広域的な地域に重大かつ深刻な災害を引き起こす火山活動であるが、低頻度な火山事象 であり有史において確認されたことがないこと等を踏まえて評価を行うことが適切である。当該火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態ではないと評価でき、運用期間中における巨大噴火の可能性を示す科学的に合理性のある具体的な根拠が得られていない場合は、運用期間中における巨大噴火の可能性は十分小さいと判断できる」旨、「過去に 巨大噴火が発生した火山(…『火山活動の可能性評価』において運用期間中における巨大噴火の可能性は十分に小さいと判断したものに限る。)については、当該火山の最後の巨大噴火以降の最大の噴火規模とする」旨等が追記されたほか、文言の修正等が行われた。(甲A327、乙A44ないし46) ケ原子炉火山部会の設置等 (ア) 原子力規制委員会は、平成28年3月25日、発電用原子炉設置者の火山モニタリング結果に係る評価及び原子力規制委員会が策定する原子炉の停止等に係る判断の目安について調査審議を行うよう原子炉安全専門審査会に指示し、同審査会は、原子炉火山部会を設置し、上記指示事項を同部会に付託した。同会は、火山地質学を専門とするM教授を部 会長とし、6名の専門家及び関係行政機関の職員によって構成される。 (イ) 平成28年10月17日、原子炉火山部会第1回検討会が開催され、周辺5カルデラにつき、活動状況 を専門とするM教授を部 会長とし、6名の専門家及び関係行政機関の職員によって構成される。 (イ) 平成28年10月17日、原子炉火山部会第1回検討会が開催され、周辺5カルデラにつき、活動状況に変化がなく、平常状態にあることが確認された。(乙A13、14)(ウ) 原子炉火山部会は、その後の調査検討を経て、令和2年3月6日、 「火山モニタリングにおける『観測データに有意な変化があったと判断する目安』について」と題する報告書を取りまとめた。同報告書は、定量的な指標は定められておらず、傾向の変化を重視しつつ、火山モニタリングにおいて観測されている時空的変化に着目し、それらの急激な増減や消長又は傾向の著しい転換等の観点及び火山噴出物の組成(質的) 変化の観点から検討が行われ、必要な監視項目及び確認事項をチェックリストとして取りまとめたものとされている。(甲A342)コ火山影響評価に係る技術的知見の整備原子力規制委員会は、平成25年度から平成30年度にかけて、原子力施設の安全規制の継続的な改善のため、火山影響評価にかかる技術的知 見の整備を行った。この知見の整備は、過去の火山活動の詳細履歴や噴火開始から終息までの噴火進展プロセス、噴火に至るまでのマグマ活動等を知見として把握し、それを基に噴火の準備段階の評価に関する指標、観測調査すべき地下の深さ、マグマ活動と地殻変動の関係について精度の向上を図り、長期評価あるいはモニタリング評価に関する指標を整備 していくことを目的とするものである。(甲A140) サ本件処分の基準適合性審査における参加人の評価参加人は、平成25年7月8日、本件各原子炉の設置変更許可申請をした。原子力規制委員会は、調査審議を経て、平成26年9月10日、本件処分をした サ本件処分の基準適合性審査における参加人の評価参加人は、平成25年7月8日、本件各原子炉の設置変更許可申請をした。原子力規制委員会は、調査審議を経て、平成26年9月10日、本件処分をした。その間、原子力規制委員会は、同申請に係る審査会合を62回実施し、火山事象に関しては第24回、第35回、第82回、 第95回、第107回、第113回の審査会合で議論された。また、並行して、ヒアリングが多数回実施され、火山事象に関するものは26回行われた。火山事象に関して参加人が行った評価は、次のとおりである。 (ア) 本件各原子炉に影響を及ぼし得る火山の抽出参加人は、文献調査、地形・地質調査及び地球物理学的調査を実施し た上で、将来の活動が否定できない火山として、川内原発の敷地から160㎞の範囲内にある火山のうち、完新世に活動を行ったとされる周辺5カルデラ、米丸・住吉池、雲仙岳、口永良部島及び福江火山群と、完新世に活動を行っていないが活動履歴において最後の活動終了からの期間が過去の最大休止期間より長いなどと認められない、えびの火山群、 南島原、金峰山、船野山及び多良岳の合計14火山を抽出した。(乙B1、丙B21)(イ) 本件各原子炉の運用期間における火山活動に関する個別評価参加人は、過去に破局的噴火を発生させたカルデラ火山について、鹿児島地溝全体としてのVEI7以上の噴火の平均発生間隔は約9万年で あり、当該地域における最新のVEI7以上の噴火は約3万年前ないし約2.8万年前であること、ナガオカ論文、ドルイット論文、マグマ溜まりの浮力中立点に関する検討(丙B32、33)、メルト包有物・鉱物組成等に関する分析(丙B34、35)の知見等を踏まえ、加久藤・小林カルデラ、姶良カルデラ及び阿多カルデラにおける破局的噴火 グマ溜まりの浮力中立点に関する検討(丙B32、33)、メルト包有物・鉱物組成等に関する分析(丙B34、35)の知見等を踏まえ、加久藤・小林カルデラ、姶良カルデラ及び阿多カルデラにおける破局的噴火に関 する階段ダイアグラムを作成するなどし、運用期間中における破局的噴 火の可能性について、個別評価をした。 a 鹿児島地溝における破局的噴火の可能性鹿児島地溝(姶良カルデラ、加久藤・小林カルデラ及び阿多カルデラ)におけるVEI7以上の平均発生間隔は、約9万年の周期性があり、最新のVEI7以上の噴火(姶良Tn噴火)は約3.0~2.8 万年前であることから、鹿児島地溝におけるVEI7以上の噴火の活動間隔は、最新のVEI7以上の噴火からの経過時間に比べて十分長く、運用期間中におけるVEI7以上の噴火の活動可能性は十分低いと考えられる。 b 姶良カルデラ 約9万年前に福山噴火が、約5.0~4.5万年前に岩戸噴火が、約3.3万年前に大塚噴火が、約3.1万年前に深港噴火等が認められ、いずれも降下軽石を主体とする噴火とされている。姶良Tn噴火後には、約1.9万年前に火砕サージを噴出した高野噴火が、約1. 6万年前に、火砕流を噴出した新島噴火が認められる。桜島は約2. 6万年前以降に活動を開始し、溶岩や火砕物を噴出する小規模な噴火の繰り返しにより形成された火山体とともに、降下軽石を主体とする噴火が複数回認められる。 上記aの鹿児島地溝における噴火間隔によると、姶良カルデラにおける運用期間中の破局的噴火の可能性は十分小さいと考えられる。姶 良カルデラのみの破局的噴火の噴火間隔は、姶良Tn噴火より前の噴火は明らかでないが、福山噴火から姶良Tn噴火までに破局的噴火は認められず、破局的噴火の間隔は6万年以上と考えられ えられる。姶 良カルデラのみの破局的噴火の噴火間隔は、姶良Tn噴火より前の噴火は明らかでないが、福山噴火から姶良Tn噴火までに破局的噴火は認められず、破局的噴火の間隔は6万年以上と考えられる。最新の破局的噴火からの経過時間に比べて十分長く、破局的噴火までには十分な時間的余裕があると考えられる。 ナガオカ論文によると、福山噴火、岩戸噴火、大塚噴火及び深港噴 火は、プリニー式噴火ステージ、姶良Tn噴火は破局的噴火ステージ、高野噴火及び新島噴火は中規模火砕流噴火ステージ、桜島は後カルデラ火山噴火ステージとされている。現在、破局的噴火に先行して発生するプリニー式噴火ステージの兆候が認められず、桜島における噴火も後カルデラ火山噴火ステージと考えられることから、破局的噴火ま でには十分な時間的余裕があると考えられる。 測地学的検討によると、桜島直下の地下深さ6㎞及び姶良カルデラ中央部の地下深さ12㎞にマグマ溜まりの存在を示唆する圧力源が想定されており、国土地理院の電子基準点の解析結果でも、マグマ溜まりの増大を示唆する基線の伸長傾向が確認されている。 他方で、マグマ溜まりの浮力中立点に関する検討(丙B32、33)やメルト包有物・鉱物組成等に関する分析結果(丙B34、35)等に基づくと、VEI7以上の噴火におけるマグマ溜まりは、少なくとも地下10㎞以浅にあると考えられる。 また、加茂・石原(丙B47)により示される水準測量結果に基づ く姶良カルデラのマグマ供給量は、ドルイット論文で示されている破局的噴火直前のマグマ供給量に比べて十分小さい。 以上によると、姶良カルデラでは、現在のマグマ溜まりは破局的噴火直前の状態にはなく、今後も現在の噴火ステージが継続するものと考えられる。運用期間中の噴火規模について グマ供給量に比べて十分小さい。 以上によると、姶良カルデラでは、現在のマグマ溜まりは破局的噴火直前の状態にはなく、今後も現在の噴火ステージが継続するものと考えられる。運用期間中の噴火規模については、後カルデラ火山噴火 ステージである桜島での既往最大噴火規模(桜島薩摩噴火:噴出物量約11㎦)を考慮する。 c 加久藤・小林カルデラ加久藤・小林カルデラでは、約53~52万年前に小林笠森噴火が、約33~32万年前に加久藤噴火が認められる。いずれも火砕流及び 降下火砕物を噴出した噴火とされ、噴火規模は破局的噴火と考えられ る。加久藤噴火以前には、約52~34万年前の間に、降下軽石を主体とする噴火が複数回発生した境別府噴火期が認められる。加久藤噴火以降には、約30万年前に霧島山が活動を開始し、小規模噴火の繰り返しにより形成された火山体とともに、降下火山灰、降下軽石又は降下スコリアを主体とする噴火が複数回認められる。 上記aの噴火間隔によると、加久藤・小林カルデラにおける運用期間中の破局的噴火の可能性は十分小さいと考えられる。ただし、加久藤・小林カルデラにおける破局的噴火の活動間隔(約20万年)は、最新の破局的噴火(加久藤噴火)からの経過時間(約33万年)に比べて短い。 地質調査結果によると、敷地から半径30㎞の範囲に上記噴火の火砕流堆積物が認められるが、敷地にはいずれの火砕流堆積物も認められない。ただし、敷地から半径5㎞の範囲に加久藤火砕流堆積物が認められることから、火砕流が敷地に到達した可能性は否定できない。 地下構造については、鍵山ほか(1997・丙B53)によると、 加久藤カルデラにおいては、マグマに関連するとされる低比抵抗領域の上面は深さ約10㎞とされ、Gotoほか(1997・丙B54) 地下構造については、鍵山ほか(1997・丙B53)によると、 加久藤カルデラにおいては、マグマに関連するとされる低比抵抗領域の上面は深さ約10㎞とされ、Gotoほか(1997・丙B54)によると、地下深さ10㎞以浅に大規模な低比抵抗領域は認められないとされる。また、国土地理院による電子基準点の解析結果によると、マグマ溜まりの顕著な増大を示唆する基線変化は認められない。小林 カルデラについては、加久藤噴火以降、霧島山に限られることから、大規模なマグマ溜まりは存在しないと考えられる。 ナガオカ論文によると、霧島山における噴火活動は、後カルデラ火山噴火ステージと考えられる。 以上によると、加久藤・小林カルデラでは、現在のマグマ溜まりは 破局的噴火直前の状態ではなく、今後も、現在の噴火ステージが継続 するものと判断される。運用期間中の噴火規模については、後カルデラ火山噴火ステージである霧島山での既往最大噴火規模(霧島イワオコシ噴火:噴出物量約1㎦)を考慮する。 d 阿多カルデラ阿多カルデラでは、約24万年前に阿多鳥浜噴火が、約10.5万 年前に阿多噴火が認められ、いずれも火砕流及び降下火砕物を噴出した噴火とされる。各噴火の火砕流堆積物は、九州南部の広い範囲、種子島及び屋久島に分布しており、いずれの噴火規模も破局的噴火と考えられる。阿多噴火以前には、同噴火以前の数万年間に、上ノ宇都噴火、塩屋噴火及び阿多丸峰噴火が認められ、いずれも降下軽石を主体 とした噴火とされている。阿多噴火以降には、約10万年前に今和泉噴火が、約8万年前に田代噴火が認められ、いずれも火砕流を主体とする噴火とされている。指宿火山群では、約110万年前から約10. 5万年前の間に、古期指宿火山群及び中期指宿火山群の火山岩類の活動 泉噴火が、約8万年前に田代噴火が認められ、いずれも火砕流を主体とする噴火とされている。指宿火山群では、約110万年前から約10. 5万年前の間に、古期指宿火山群及び中期指宿火山群の火山岩類の活動が認められ、約10.5万年前には、新期指宿火山群の活動が開始 され、小規模噴火の繰り返しにより形成された火山体とともに、降下火山灰、降下軽石又は降下スコリアを主体とする噴火が複数回認められる。約6400年前には、降下火砕物を噴出した池田噴火が認められる。約4400年前には、開聞岳が活動を開始し、小規模噴火の繰り返しにより形成された火山体が認められる。 上記aの鹿児島地溝帯における噴火間隔によると、阿多カルデラにおける運用期間中の破局的噴火の可能性は十分小さいと考えられる。 阿多カルデラのみの破局的噴火の活動間隔は、阿多噴火と阿多鳥浜噴火の間隔は約14万年であり、最新の破局的噴火は約10.5万年であり、活動間隔の方が経過時間よりも長い。 ナガオカ論文によると、上ノ宇都噴火、塩屋噴火及び阿多丸峰噴火 は、プリニー式噴火ステージ、阿多噴火は破局的噴火ステージ、今和泉噴火及び田代噴火は中規模火砕流噴火ステージ、指宿火山群及び開聞岳は、後カルデラ火山噴火ステージにあるとされる。池田噴火は、後カルデラ火山噴火ステージ又はプリニー式噴火ステージの初期段階にあるが、プリニー式噴火ステージの継続期間は数万年とされており、 池田噴火からの経過期間に比べて十分に長いことから、破局的噴火までには十分な時間的余裕があると考えられる。 阿多カルデラの地下構造については、西ほか(2001・丙B58)に示される地震波速度構造において、地下深さ5㎞に、マグマ溜まりの存在の可能性を示す低速度異常が認められる。 以上によると、阿多カル ルデラの地下構造については、西ほか(2001・丙B58)に示される地震波速度構造において、地下深さ5㎞に、マグマ溜まりの存在の可能性を示す低速度異常が認められる。 以上によると、阿多カルデラについては、現在のマグマ溜まりは破局的噴火直前の状態ではなく、今後も現在の噴火ステージが継続するものと判断される。運用期間中の噴火規模については、後カルデラ火山噴火ステージである開聞岳等、プリニー式噴火ステージである池田での既往最大噴火規模(池田噴火:噴出物量約5㎦)を考慮する。 e 鬼界カルデラ鬼界カルデラでは、約14万年前に火砕流を噴出した小アビ山噴火が、約9.5万年前に火砕流及び降下火砕物を噴出した鬼界葛原噴火が、約7300年前に火砕流及び降下火砕物を噴出した鬼界アカホヤ噴火が認められる。鬼界葛原噴火及び鬼界アカホヤ噴火は破局的噴火 とされおり、火砕流堆積物の分布状況からすると、小アビ山噴火も破局的噴火と考えられる。鬼界アカホヤ噴火以前には、約1.6万年から約7300年前までの間に、降下火山灰を主体とする噴火が複数回発生した籠港噴火期が認められ、鬼界アカホヤ噴火以降には、約6000年前に薩摩硫黄島が活動を開始し、小規模噴火の繰り返しにより 形成された火山体が認められる。 鬼界カルデラの破局的噴火の最短の活動間隔は約5万年又は約9万年であり、最新の破局的噴火(鬼界アカホヤ噴火)からの経過時間は約0.7万年である。活動間隔からは破局的噴火までには十分な時間的余裕があると考えられる。 ナガオカ論文によると、小アビ山噴火、鬼界葛原噴火及び鬼界アカ ホヤ噴火は、破局的噴火ステージ、薩摩硫黄島における噴火活動は、後カルデラ火山噴火ステージとされている。 地下構造については、メルト包有物に関する検討によ アビ山噴火、鬼界葛原噴火及び鬼界アカ ホヤ噴火は、破局的噴火ステージ、薩摩硫黄島における噴火活動は、後カルデラ火山噴火ステージとされている。 地下構造については、メルト包有物に関する検討によると、地下深さ3㎞にマグマ溜まりの存在が推定され、現在の火山ガスの放出量が800年間継続したと仮定すると、80㎦以上であると推定される。 国土地理院による電子基準点の解析結果によると、マグマ溜まりの顕著な増大を示唆する基線変化は認められない。 以上によると、鬼界カルデラでは、現在のマグマ溜まりは破局的噴火直前の状態ではなく、今後も現在の噴火ステージが継続するものと判断される。運用期間中の噴火規模については、後カルデラ火山噴火 ステージである薩摩硫黄島の既往最大噴火規模(VEI4:噴出物量1㎦以下)を考慮する。 f 阿蘇カルデラ阿蘇カルデラでは、約27~25万年前に、阿蘇1噴火が、約14万年前に阿蘇2噴火が、約12万年前に阿蘇3噴火が、約9.0~8. 5万年前に阿蘇4噴火が認められ、いずれも火砕流及び降下火砕物を噴出した噴火とされている。阿蘇3及び阿蘇4の噴火は破局的噴火とされており、阿蘇1及び阿蘇2の噴火も、火砕流堆積物の分布状況から破局的噴火と考えられる。阿蘇4噴火以前には、約80万年前から約40万年前までの間に、先阿蘇の火山岩類の活動が、約14万年前 から約12万年前までの間に根子岳の火山岩類の活動が、阿蘇3噴火 から阿蘇4噴火までの間に降下軽石又は降下火山灰を主体とする噴火が複数回発生した阿蘇4/3噴火期が認められる。阿蘇4噴火以降には、阿蘇山が約9万年前から噴火活動を開始し、小規模噴火の繰り返しにより形成された火山体とともに、降下軽石を主体とする噴火が複数回認められる。 阿蘇カルデラに が認められる。阿蘇4噴火以降には、阿蘇山が約9万年前から噴火活動を開始し、小規模噴火の繰り返しにより形成された火山体とともに、降下軽石を主体とする噴火が複数回認められる。 阿蘇カルデラにおける破局的噴火の活動間隔は、約11万年、約2万年、約3万年であり、ばらつきがあるが、最新の破局的噴火から約9.0~8.5万年が経過しており、最新の破局的噴火からの経過期間は最短の活動間隔よりも長い。 ナガオカ論文が示す噴火ステージを参考にすると、現在の阿蘇山の 活動は、多様な噴火様式の小規模噴火を繰り返していることから、後カルデラ火山噴火ステージと考えられる。 地下構造については、Sudoほか(2001・丙B71)に示される地震波速度構造において、地下深さ6㎞にマグマ溜まりが存在するとされるが、大規模なマグマ溜まりは認められない。また、三好ほ か(2005・丙B70)によると、阿蘇4噴火以降の火山岩の分布と組成からは大規模な流紋岩ないしデイサイト質のマグマ溜まりは想定されない。国土地理院による電子基準点の解析結果によると、マグマ溜まりの顕著な増大を示唆する基線変化は認められない。 以上によると、阿蘇カルデラでは、現在のマグマ溜まりは破局的噴 火直前の状態ではなく、今後も、現在の噴火ステージが継続するものと判断される。そこで、運用期間中の噴火規模については、阿蘇山での既往最大規模(阿蘇草千里ヶ浜噴火:約2㎦)を考慮する。 g 敷地において考慮する火山事象将来の活動可能性が否定できない火山について、運用期間中の噴火 規模を考慮し、敷地において考慮する火山事象を評価する。姶良カル デラ、加久藤・小林カルデラ及び阿多カルデラは、火砕流が敷地に到達した可能性が否定できず、鬼界カルデラ及び阿蘇カルデラは、自然 規模を考慮し、敷地において考慮する火山事象を評価する。姶良カル デラ、加久藤・小林カルデラ及び阿多カルデラは、火砕流が敷地に到達した可能性が否定できず、鬼界カルデラ及び阿蘇カルデラは、自然現象における不確かさを考慮すると敷地への影響は否定できないことから、火山活動のモニタリングを実施する。モニタリングに当たっては、既存観測等による地殻変動及び地震活動の観測データ、公的機関 による発表情報等を収集・分析し、第三者(火山専門家等)の助言を得た上で活動状況に変化がないことを定期的に確認する。対象火山の状態に顕著な変化が生じた場合には、第三者(火山専門家等)の助言を得た上で破局的噴火への発展性を評価し、破局的噴火への発展可能性がある場合は、発電用原子炉の停止、燃料体の搬出等を実施する。 h 降下火砕物桜島における桜島薩摩噴火(約1万2800年前、噴火規模は約11㎦)によるものが敷地において最も影響が大きいと評価し、文献調査によって、層厚が12.5㎝以下であること及び地質調査によって、川内原発の敷地付近に降下火砕物が認められないことを踏まえ、川内 原発の敷地において考慮する降下火砕物の層厚を15㎝とした。 i 火砕物密度流敷地を中心とする半径160㎞の範囲の火山は、火砕流堆積物の分布範囲は、敷地までの距離に比べて十分小さいことから火砕物密度流が敷地に到達することはなく、火砕物密度流による影響はないとした。 j 溶岩流、岩屑なだれ・地滑り斜面崩壊敷地を中心とする半径50㎞の範囲の火山は、火山岩の分布範囲又は標高から算出される岩屑なだれの最大流走距離が敷地までの距離に比べ十分小さいことから、これらが敷地に到達することなく、影響しないと評価した。 k の火山は、火山岩の分布範囲又は標高から算出される岩屑なだれの最大流走距離が敷地までの距離に比べ十分小さいことから、これらが敷地に到達することなく、影響しないと評価した。 k 新しい火口の開口 敷地を中心とする半径20㎞の範囲には、火山が分布しないこと、敷地近傍において低周波地震が認められないことから、敷地への影響はないと評価した。 l 火山性土石流、火山泥流及び洪水、火山から発生する飛来物(噴石)、火山ガス、津波、火山活動に伴う大気現象、地殻変動及び静振、 火山性地震等、熱水及び地下水の異常いずれも敷地に影響を及ぼさないと評価した。 (ウ) 降下火砕物の影響評価参加人は、降下火砕物の影響評価に関し、桜島における桜島薩摩噴火(約1万2800年前、噴火規模は約11㎦)によるものが敷地におい て最も影響が大きいとし、文献調査及び地質調査を踏まえ、敷地において考慮する降下火砕物の層厚を15㎝とした。また、桜島薩摩噴火による火山灰の堆積量の推定について、月ごとの風向、風速を考慮したシミュレーションを行ったところ、層厚は最大で12㎝であった。これらを踏まえ、降下火砕物の諸元を層厚15㎝、飽和密度1.3~1.5g/ ㎤、湿潤密度1.1~1.3g/㎤、乾燥密度0.6~0.8g/㎤、粒径を4㎜以下が95%以上とし、設計条件を層厚15㎝、密度を0. 6~1.5g/㎤、粒径を4㎜以下と設定したその上で、降下火砕物によって安全施設の安全性が損なわれないようにするために必要な設備を設計上対処すべき施設(設計対象施設)を抽 出する方針を定めて、直接的影響及び間接的影響に係る因子を選定し、設計荷重の設定、降下火砕物の直接的影響及び間接的影響に対する設計方針を定めた。(乙B1、丙B1、2 施設(設計対象施設)を抽 出する方針を定めて、直接的影響及び間接的影響に係る因子を選定し、設計荷重の設定、降下火砕物の直接的影響及び間接的影響に対する設計方針を定めた。(乙B1、丙B1、21、87)シ本件処分の基準適合性審査における審査の概要原子力規制委員会による審査の結果は以下のとおりである。 (ア) 火山の抽出 地理的領域の設定、作成された階段ダイアグラム等に照らし、火山ガイドを踏まえたものであるとした。 (イ) 個別評価参加人が実施した本件各原子炉の運用期間中の検討対象火山の活動の評価は、過去の活動履歴の把握や地球物理学的調査に基づいており、こ れらの手法が火山ガイドを踏まえたものであると判断した。その上で、運用期間中に設計対応不可能な火山事象によって本件各原子炉の安全性に影響を及ぼす可能性について十分小さいとした参加人の判断は妥当であるとした。 (ウ) 火山活動のモニタリング 参加人に対し、火砕物密度流による影響に関する審査の過程において、地球物理学的な調査項目を考慮したモニタリング計画の検討、噴火の可能性につながるモニタリング結果が観測された場合の対応方針の検討等を求め、参加人はこれらを反映したモニタリング計画を再検討した。 その上で、参加人が計画している運用期間中のモニタリングが、設計 対応不可能な火山事象が過去に敷地に到達したことが否定できない火山を監視対象として抽出し、その監視項目及び監視の方法、定期的評価の方針及び火山活動の兆候を把握した場合の対処方針を示していること等から、火山ガイドを踏まえたものであるとした。 (エ) 火山事象の影響評価 参加人が実施した設計対応不可能な火山事象以外の火山事象の影響評価につき、降下火砕物の数値シミ を示していること等から、火山ガイドを踏まえたものであるとした。 (エ) 火山事象の影響評価 参加人が実施した設計対応不可能な火山事象以外の火山事象の影響評価につき、降下火砕物の数値シミュレーションを行うことにより算出していること等から、適切に評価されているものと判断した。具体的には、設計対象施設を抽出するための方針につき、火山ガイドを踏まえて降下火砕物の特徴を考慮した上で適切に抽出しているものとし、降下火砕物 による直接的影響及び間接的影響の選定につき、火山ガイドを踏まえた ものであり、降下火砕物の特徴及び設計対象施設の特徴を考慮しているものとし、設計荷重の設定につき、設計対象施設ごとに常時作用する荷重、運転時荷重等を考慮しているものとし、降下火砕物の直接的影響及び間接的影響につき、設計方針が火山ガイドを踏まえたものであるとした。(乙B1) ⑶ 審査基準の合理性ア規制法及び設置許可基準規則の解釈(ア) 規制法1条は、原子炉の設置及び運転等に関し、大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した必要な規制を行うことを目的の一つとし、同法43条の3の6第1項4号、43条の3の8 第2項は、発電用原子炉施設の位置、構造及び設備が発電用原子炉等による災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合することを求めているが、想定すべき自然災害の内容や規模について具体的な定めを置いていない。 上記規定を受けて原子力規制委員会が定めた設置許可基準規則は、地 震及び津波につき別の定めを置くほか、地震及び津波以外の自然現象につき、安全施設は、想定される自然現象が発生した場合においても安全機能を損なわないものでなければならない旨(6条1項)、重要安全施設は、当該 波につき別の定めを置くほか、地震及び津波以外の自然現象につき、安全施設は、想定される自然現象が発生した場合においても安全機能を損なわないものでなければならない旨(6条1項)、重要安全施設は、当該重要安全施設に大きな影響を及ぼすおそれがあると想定される自然現象により当該重要安全施設に作用する衝撃及び設計基準事故時 に生ずる応力を適切に考慮したものでなければならない旨(同条2項)を定める。その上で、原子力規制委員会が同規則の解釈として定めた設置許可基準規則解釈は、想定される自然現象に「火山の影響」を挙げた上で、重要安全施設に対して衝撃や応力による大きな影響を及ぼすおそれがあると想定される自然現象につき、「対象となる自然現象に対応し て、最新の科学的技術的知見を踏まえて適切に予想されるもの」をいう 旨を定めている。これらの定めは、上記文言や規制法の趣旨目的に照らし、設置法及び設置許可基準規則の解釈として合理的なものといえる。 以上の諸点を考慮すると、規制法43条の3の8第2項及び43条の3の6第1項4号並びに設置許可基準規則6条は、発電用原子炉の設置許可及び設置変更許可の手続に関し、原子力規制委員会に対し、発電用 原子炉施設の位置、構造及び設備が災害の防止上支障がないといえるかどうかを審査する基準を策定し、その基準に適合するかどうかを審査することを求めているが、およそ全ての火山の影響を考慮することを求めるものではなく、火山の影響のうち最新の科学的技術的知見を踏まえて適切に予想されるものを考慮することを求めているものと解すべきであ る。 (イ) 控訴人らは、原発事故の特異性や原子力科学技術の特殊性のほか、SSG-21及び安全目標を根拠として、リスクを無視してよいと判断するには慎重であるべきであり、例えば、1 きであ る。 (イ) 控訴人らは、原発事故の特異性や原子力科学技術の特殊性のほか、SSG-21及び安全目標を根拠として、リスクを無視してよいと判断するには慎重であるべきであり、例えば、1000万年に1回というような定量的な指標を下回るような場合でない限り、これを無視すること は許されないと主張する。 基本法は、原子力利用は、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし(2条1項)、安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うも のとする旨を定める(同条2項)。また、規制法は、原子炉等の災害を防止し、公共の安全を図るために、大規模な自然災害の発生も想定した必要な規制を行うなどし、もって、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的とする旨を定める(1条)。チェルノブイリ原発事故、福島第1原発事故を経て、原子 力発電所の事故がもたらす被害の甚大さが明らかになっているところ、 原子力規制委員会は、基本法の定めに基づき、安全を旨として、原子炉の安全性の審査を行うことが求められており、裁判所においても、これらの規定の趣旨や事故の被害の甚大さを踏まえた審理判断が求められているといえる。 しかし、安全を旨とするという基本法の定めが、いかなる場合であっ ても事故が発生してはならないという絶対的な安全性を求めているものとは解されない。そして、規制法43条の3の8第2項、43条の3の6第1項4号及び設置許可基準規則6条が、およそ全ての火山の影響を考慮することを求めるものではなく、火山の影響のうち最新の科学的技術的知見を踏まえて適切に予想されるもの の3の8第2項、43条の3の6第1項4号及び設置許可基準規則6条が、およそ全ての火山の影響を考慮することを求めるものではなく、火山の影響のうち最新の科学的技術的知見を踏まえて適切に予想されるものを考慮することを求めている ものと解すべきことは上述したとおりである。原子力規制関連法制をみても、法令上、過去1000万年に1回又は1000万分の1若しくはこれに類する定量的な指標をもって自然現象による事故発生の危険性の有無を検討するよう求めていると解すべき規定は存しない。安全目標は、原子力規制委員会が、原子力規制を進めていく上で達成を目指す目標と して合意した内容であって、裁判規範である規制法及び設置許可基準規則を解釈するに当たり、その直接の根拠となるものではない。我が国の火山防災対策をみても、災害対策基本法、活動火山対策特別措置法の下、都道府県防災会議及び市町村防災会議が設置され、地域防災計画、避難計画等が定められているが、低頻度とされる破局的噴火を想定した具体 的な対策は見当たらない。 他方で、SSG-21は、多くの火山弧が1000万年以上にわたる火山活動を繰り返していることを踏まえて、過去1000万年の間に火山活動があった地域は、将来の活動可能性を考慮すべきものとし、また、原子力施設に対する外部事象のハザード評価において、放射線学的影響 の可能性を有する事象の年間発生確率の限界率は一部の加盟国では10 のマイナス7乗(1000万分の1)とされている旨を示している(2. 7項)。しかし、SSG-21は、IAEAが定める安全上の基準のうち安全指針に当たるものであり、加盟国に対し、安全要件を遵守する方法に関する勧告と指針を提供するというものであって、その文言に照らしても、加盟国に対し、火山の影響によるリスク 定める安全上の基準のうち安全指針に当たるものであり、加盟国に対し、安全要件を遵守する方法に関する勧告と指針を提供するというものであって、その文言に照らしても、加盟国に対し、火山の影響によるリスク一般について、過去1 000万年に1回又は1000万分の1以下の水準とすべきことを要求しているものとは解されない。 以上のとおり、原子力規制委員会は、基本法及び規制法の規定や趣旨、事故が発生した場合の被害の甚大さを踏まえ、安全を旨として、原子炉の安全性の審査を行うことが求められており、裁判所においても、これ らを踏まえた審理判断が求められているといえるが、過去1000万年に1回又は1000万分の1以下という指標により、自然現象による事故発生の危険性の有無を判断するよう求められているということはできない。 イ火山ガイドの合理性 (ア) 「基本的な考え方」等との関係本件処分の基準適合性審査において火山の影響に関する具体的審査基準として用いられたのは平成25年に策定された火山ガイドであるが、原子力規制委員会は、平成30年3月、火山ガイドによる基準適合性審査の趣旨につき、原子力規制庁が取りまとめた「基本的な考え方」を確 認した。この「基本的な考え方」は、本件処分後に確認されたものであるが、原子力規制委員会委員長が、基準適合性審査における巨大噴火等の考え方の整理を行うことを提案し、同委員会委員から賛同を得た上で、原子力規制庁が、その原案を作成し、同委員会において、「基本的な考え方」で示された判断の枠組みによって発電用原子炉の設置許可及び設 置変更許可に係る基準適合性審査を行ってきたことを確認したものであ る。モニタリングを実施する目的の点でも、平成25年策定当時の火山ガイドは、噴火の可能性 発電用原子炉の設置許可及び設 置変更許可に係る基準適合性審査を行ってきたことを確認したものであ る。モニタリングを実施する目的の点でも、平成25年策定当時の火山ガイドは、噴火の可能性が十分小さいことを継続的に確認することを目的としてモニタリングを行う旨や、モニタリング結果を定期的に評価し、当該火山の活動状況を把握し、状況に変化がないことを確認するとしているところ(火山ガイド10、11頁)、「基本的な考え方」は、巨大 噴火の可能性が十分小さいと評価した場合であっても、この評価とは別に、評価の根拠が継続していることを確認するため、評価時点からの状態の変化を検知しようとするものであるとしており、これらは同様の趣旨を述べるものと解される。火山ガイドには、事業者が実施すべきモニタリングは、「原子炉の運転停止、核燃料の搬出等を行うための監視で ある」との記載もあるが(火山ガイド11頁)、この記載は、モニタリングの結果の評価では、火山専門家に加えて、原子力及びその関連技術者を含めることとする理由として述べられたものであるから、上記と異なる趣旨をいうものとは解されない。また、平成25年策定当時の火山ガイドでは、巨大噴火の定義が明らかにされておらず、その他の噴火と 明確に区分されていないが、本件処分の基準適合性審査の経過において、参加人は、周辺5カルデラの運用期間中における活動可能性の評価につき、破局的噴火を取り上げて、それ以外の噴火を区別して検討し、原子力規制委員会は、これらを踏まえた審査を行っている。火山ガイドを策定する段階では、原子力規制庁原子力規制部長等として、「基本的な考 え方」を確認する段階では、同庁原子力規制技監として、それぞれ審議に関わったZ2証人も、平成25年策定当時の火山ガイドの考え方を変更 階では、原子力規制庁原子力規制部長等として、「基本的な考 え方」を確認する段階では、同庁原子力規制技監として、それぞれ審議に関わったZ2証人も、平成25年策定当時の火山ガイドの考え方を変更するものではないと述べており、上記事情に照らせば、十分に信用性があるといえる。他方で、火山ガイドの原案作成に携わったY証人は、個人の認識としては、平成25年策定当時の火山ガイドと「基本的な考 え方」とは「少し違うな」と思う旨供述するが、同証人が原子力規制庁 に所属したのは平成26年3月以降であり、「基本的な考え方」にも関与していないというのであるから、同供述は、上記認定を左右するものとはいえない。 これらの事情によれば、原子力規制委員会は、「基本的な考え方」で示された判断枠組みに沿って審査を行っていたものと認められるから、 本件では、「基本的な考え方」で示された趣旨を踏まえて、火山ガイドの合理性の検討を行うのが相当である。 他方で、令和元年改正後の火山ガイドは、改正に当たり、審査実務の考え方を正確に表現し、かつ文章として分かりやすいものにする趣旨で行う旨や「基本的な考え方」において示した火山活動の評価の考え方が 明確になるように記載する旨等の改正理由の説明が行われているが(乙A43)、文言それ自体の改正を行ったものであり、その趣旨はともかく、これ自体が本件処分の基準適合性審査に用いられた具体的審査基準に当たるということはできない。 (イ) 相応の根拠の有無 以下の事情によれば、火山ガイドは、SSG-21をはじめとする安全上の指針に整合的であり、火山学的知見を取り入れた上で作成されたものであって、合理性を有することにつき相応の根拠があるといえる。 a 安全上の指針との整合性IAEA 21をはじめとする安全上の指針に整合的であり、火山学的知見を取り入れた上で作成されたものであって、合理性を有することにつき相応の根拠があるといえる。 a 安全上の指針との整合性IAEAが策定した火山の影響に関する安全指針であるSSG-2 1は、評価の手順につき、段階1ないし段階4により評価を行うものとしているところ、火山ガイドも、これらに対応する形で「原子力発電所に影響を及ぼし得る火山の抽出」「将来の活動可能性」「原子力発電所の運用期間における火山活動の個別評価」「原子力発電所への火山事象の影響評価」の手順で評価を行うものとしている。このよう に、評価の手順の点で、両者は整合的なものといえる。モニタリング に関しても、SSG-21は、追加的考慮要素として、地理的領域内にある火山がサイトにおける信憑性のあるハザードの発生源である場合、これらの可能性のある火山の特性を施設の全耐用年数期間にわたってモニターする必要があるとしており(3.10項)、火山ガイドと整合的である。また、火山ガイドでは、設計対応不可能な火山事象 の範囲、火山系における時間と量の関係、火砕物密度流による影響、溶岩流による影響をはじめ、複数箇所でSSG-21に言及している。 他方で、検討の対象とする火山の抽出について、SSG-21は、1000万年前から現在までに活動した火山を対象としているのに対し(2.7項)、火山ガイドは、第四紀(約258万年前から現在) に活動した火山を対象としており、相違がある。しかし、日本列島は、5つの島弧で形成されているところ、島弧の火山活動は数十万年から10万年程度とする知見があること(乙D101)、日本国内で作成された安全上の指針である「自然環境の考え方」及びJEAG4625においても、第四紀に活 されているところ、島弧の火山活動は数十万年から10万年程度とする知見があること(乙D101)、日本国内で作成された安全上の指針である「自然環境の考え方」及びJEAG4625においても、第四紀に活動した火山を抽出するものとしていること を踏まえれば、この相違が不合理なものとはいえない。 また、火山の活動可能性の評価手法について、SSG-21は、火山の活動可能性及び特定サイトの火山ハザードは、可能な範囲で、確率論的手法及び決定論的手法の双方を用いて評価される旨を示しているのに対し(2.20項)、火山ガイドは、「将来の活動可能性」や 「原子力発電所の運用期間における火山活動の個別評価」の段階において、確率論的手法を用いていない。しかし、SSG-21は、飽くまで、可能な範囲で、確率論的手法及び決定論的手法の双方を用いることを示しているにとどまり、確率論的手法を用いるべきとしているわけではない。W教授は、現在の火山学の水準からすれば、確率論的 手法を用いて活動可能性を定量的に評価することは困難であると述べ ているところ(乙D101)、日本列島における火山の活動可能性の評価において用いることができる的確な確率論的手法が存在すると認めるに足りる証拠もない。これらの事情によれば、火山ガイドが確率論的手法を用いていないことをもって、SSG-21との整合性が否定されるものとはいえない。 b 作成過程火山ガイドは、JNESが原案を作成し、新規制基準検討チームにおける議論を経て、原子力規制委員会が策定したものであるが、原案の作成に当たっては、IAEAが策定したSSG-21が主として参照されたほか、使用済核燃料貯蔵施設の事業許可申請において火山影 響の評価に用いられた「自然環境の考え方」や、社団法人日本電気 案の作成に当たっては、IAEAが策定したSSG-21が主として参照されたほか、使用済核燃料貯蔵施設の事業許可申請において火山影 響の評価に用いられた「自然環境の考え方」や、社団法人日本電気協会が、火山学の研究者の関与の下で策定したJEAG4625が参照されている。 また、原案の作成に際しては、火山学を専門とするR教授、W教授、X研究員及びU教授のヒアリングや研修会が実施され、これらの専門 家は、火山ガイドの原案につき追記し得るような事項はないと述べている。また、原子力規制委員会における調査審議においても、新規制基準検討チーム第20回会合に外部専門家の立場でR教授が参加して、火山学に関する知見の説明が行われた上で、火山ガイドの原案の検討が行われており、火山学に関する専門的知見を踏まえた検討を経て作 成されたものといえる。 (ウ) 控訴人らの主張以下のとおり、控訴人らの主張を踏まえても、本件処分の基準適合性審査において具体的審査基準として用いられた火山ガイドが不合理であるということはできない。 a 指標の不存在 控訴人らは、立地評価における活動可能性評価に関し、具体的な判断指標を示しておらず、内容に乏しい点で不合理であると主張する。 しかし、噴火の活動可能性の評価に関し、的確な確率論的手法があると認められないことは上述したとおりである。SSG-21は、段階3において、スクリーニング距離値(その距離を超えると火山現象 が広がることが合理的に予測できない閾値)を用いることを示しているが(5.17項)、火山ガイドにおいても、「原子力発電所の運用期間における火山活動に関する個別評価」において、設計対応不可能な火山事象につき、表1に示す原子力発電所との位置関係に記載する距離より大きいかどう 7項)、火山ガイドにおいても、「原子力発電所の運用期間における火山活動に関する個別評価」において、設計対応不可能な火山事象につき、表1に示す原子力発電所との位置関係に記載する距離より大きいかどうかを評価の指標としており(火山ガイド9頁)、 火山ガイドが具体的な指標を示していないとはいえない。また、TECDOC-1795は、詳細なアセスメント手法と適用例を明らかにしたものであって、安全上の基準を示すものではない。これらの事情によれば、火山ガイドが、活動可能性評価について、具体的な判断指標を示しておらず、内容に乏しいということはできない。 b 噴火予測の限界等の不考慮⒜ 控訴人らは、現在の火山学の水準では、原子炉を停止して核燃料等を敷地外へ搬出するために必要な期間よりも前の時点で、噴火の時期や規模を的確に予測することは困難であるのに、火山ガイドは、噴火の時期や規模を的確に予測し得ることを前提としている点で不 合理であると主張する。 しかし、火山ガイドは、設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達する可能性が十分小さいと評価できない場合は、原子力発電所の立地は不適とし、その可能性が十分小さいと評価できる場合には、過去の最大規模の噴火により設計対応不可能な火山事象が原 子力発電所に到達したと考えられる火山につき、モニタリングを実 施するものとしている。また、噴火の可能性につながるモニタリング結果が観測された場合には、必要な判断・対応をとること、モニタリングにより火山活動の兆候を把握した場合の対処方針等を定めること、モニタリング結果を定期的に評価し、当該火山の活動状況を把握し、状況に変化がないことを確認することなどを定めている。 これらの定めを見る限り、火山ガイドは、噴火の可能性が十分小さいと ること、モニタリング結果を定期的に評価し、当該火山の活動状況を把握し、状況に変化がないことを確認することなどを定めている。 これらの定めを見る限り、火山ガイドは、噴火の可能性が十分小さいと評価された場合において、設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達したと考えられるときに、対象火山の状況に変化がないことを確認する目的でモニタリングを実施し、モニタリングにより噴火の可能性につながる結果ないし火山活動の兆候が観測された 場合の対処方針を定めることを求めるものであって、噴火の可能性の大小にかかわらず、モニタリングによって噴火の時期や規模を的確に予測した上で、原子炉の停止、燃料の搬出等を行うことを前提としたものとは解されない。 火山ガイドの策定経過をみても、R教授は、新規制基準検討チー ム第20回会合において、噴火の規模、様式及び推移については未だ予測ができていない旨や、カルデラ噴火の場合、マグマが急速に蓄積されるという研究結果からすると噴火の前兆現象は地球物理学的に捉えられると考えられるが、モニタリングにより異常が見つかった時にカルデラ噴火が切迫しているといえるか否かが今後の大き な課題となる旨を述べたほか、原子力規制庁のZ1課長も、新規制基準検討チーム第21回会合において、大規模噴火の場合、予兆がある程度の期間以前につかめるであろうということを前提としていたが、JNESでの検討及び専門家の意見聴取によると、明確に、この状況であれば大丈夫ということはいえないなどと述べており、 モニタリングにより噴火の時期や規模を的確に予測し得ることを前 提としていたとは認め難い。 「基本的な考え方」においても、噴火の規模を特定するのは一般的に困難であるため、検討対象火山の過去最大規模の噴火規模について火 や規模を的確に予測し得ることを前 提としていたとは認め難い。 「基本的な考え方」においても、噴火の規模を特定するのは一般的に困難であるため、検討対象火山の過去最大規模の噴火規模について火山事象の評価を行う旨や、モニタリングは、評価の根拠が継続していることを確認するため、評価時からの状態の変化を検知し ようとするものである旨を示している。 これらの事情によれば、火山ガイドは、噴火の兆候を把握する目的でモニタリングを実施することを求めているものと解されるのであって、噴火の時期や規模を的確に予測し得ることを前提としていたということはできない。 なお、Z1課長は、同会合において、大規模なカルデラ噴火を含めて「前兆がある程度把握できるだろうということで、普通の確率論的な評価で対象にしているものとは少し性質が違うのかなというのが、今回、この評価のガイドの根っこになって」いる旨、「ちゃんとモニタリングをしっかりやるというのが、一番の前提と考えて」 いる旨を述べているが、火山活動の兆候の把握に関して述べたものとも解されるのであって、噴火の時期や規模を的確に予測し得ることを述べたものと認められない。 また、本件処分当時の原子力規制委員会Z3委員長は、平成26年4月3日の衆議院原子力問題調査特別委員会において、「破局的 噴火が起こるような場合には、…マグマ等の移動がかなり活発になりまして、かなり前から地殻変動等が予知できます。…そういった観測をきちっとすることによって、噴火が起こる前に原子炉の方の対策をするということを踏まえて」判断した旨、「火山がどのような活動状態にあるかということについてはかなり正確にモニタリン グできるようになっております。こういうことをきちっと把握した 上で、原子炉を停止し、 まえて」判断した旨、「火山がどのような活動状態にあるかということについてはかなり正確にモニタリン グできるようになっております。こういうことをきちっと把握した 上で、原子炉を停止し、場合によっては核燃料を搬出するということができるというふうに」判断している旨を述べたほか(甲B72)、平成26年6月9日の参議院決算委員会において、「その前に地下からマグマの供給というのが長期間にわたって行われます。 それにつきましてきちっとモニタリングをしながら、いろんな方法 があると思いますが、例えばGPSとかそういうものでかなり前からその兆候を把握して、それに対して原子炉については早急に止めて、必要があれば使用済燃料等の運び出しを行うということを含めて今審査を行っている」旨、また、予知が可能であると考えてよいかを問われたのに対し、「予知というと、非常に時間的にいついつ というようなことで、相当正確なところを求められるという、そういう理解がされがちですけれども、相当さきからそういった兆候を把握することは可能」と思っている旨を述べている(甲B75)。 しかし、これらも、火山活動の兆候の把握に関して述べたものと解されるのであって、モニタリングにより噴火の時期や規模を的確に 予測し得る旨の発言とは認められない。 ⒝ 控訴人らは、現在の火山学の水準では、地球物理学的調査によって地下のマグマ溜まりの状態を把握することは困難であるのに、地球物理学的調査によって地下にマグマ溜まりが存在しないことが的確に確認し得るという考え方に立脚している点で、不合理であると 主張する。 しかし、火山ガイドは、原子力発電所の運用期間における火山活動に関する個別評価において、将来の活動可能性があると評価した火山について、原子力発電所の運用期間中 、不合理であると 主張する。 しかし、火山ガイドは、原子力発電所の運用期間における火山活動に関する個別評価において、将来の活動可能性があると評価した火山について、原子力発電所の運用期間中において設計対応が不可能な火山事象を伴う火山活動の可能性の評価を行うものとして、こ の評価に当たり、過去の活動履歴とともに、必要に応じて、地球物 理学的調査及び地球化学的調査を行い、現在の火山の活動の状況を併せて評価を行うものとし、そのうち地球物理学的調査では、地震波速度構造、重力構造、比抵抗構造、地震活動及び地殻変動に関する検討を実施、マグマ溜まりの規模や位置、マグマの供給系に関係する地下構造等について調査するとしている。これらの定めを見る 限り、火山ガイドは、地球物理学的調査を行って現在の火山の活動状況を評価することや、地球物理学的調査の手法を例示するものにすぎず、地球物理学的調査によって地下のマグマ溜まりの規模や位置を的確に把握し得ることを前提としたものとは解されない。 「基本的な考え方」をみても、巨大噴火の可能性の評価に当たっ ては、火山学上の各種の知見を参照しつつ、巨大噴火の活動間隔、最後の巨大噴火からの経過時間、現在のマグマ溜まりの状況、地殻変動の観測データ等から総合的に評価を行い、火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態にあるかどうか、及び運用期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性のある具体的な根拠があ るかどうかを確認するものとしており、マグマ溜まりが存在しないことが的確に確認し得ることを前提としたものとは解されない。 これらの事情によれば、火山ガイドは、地球物理学的調査によって地下のマグマ溜まりの状況が存在しないことを的確に確認することを求めるものではなく、噴火可能性の評価 とを前提としたものとは解されない。 これらの事情によれば、火山ガイドは、地球物理学的調査によって地下のマグマ溜まりの状況が存在しないことを的確に確認することを求めるものではなく、噴火可能性の評価を行う考慮要素の一つ として地球物理学的調査の結果を位置付けたにすぎないというべきである。 ⒞ 控訴人らは、火山学会提言により、火山ガイドの問題点が指摘されて見直しを求められたのに、何らの対応を行わない点で不合理であると主張する。 しかし、火山学会提言は、巨大噴火の監視体制や噴火予測の在り 方につき、日本火山学会で取り組むべき重要な課題の一つであり、巨大噴火については、国として対策を講ずる必要があるため、関係省庁を含めた協議の場が設けられるべきである旨、火山の監視態勢や噴火警報等の全般につき、国として組織的に検討し、維持・発展させることが重要である旨、噴火警報を有効に機能させるためには、 噴火予測の可能性、限界、曖昧さの理解が不可欠であり、火山ガイド等の規格・基準類においては、このような噴火予測の特性を十分に考慮し、慎重に検討すべきである旨を述べたものであって、火山ガイドの見直しを明示的に求めるものではない。火山学会提言を取りまとめた原子力問題対応委員会の委員長であるJ教授は、公表に 当たり、報道機関に対し、同提言は火山ガイドの見直しを求めるものであると説明した。これは、火山学会提言が、噴火予測の特性を十分に考慮し、慎重に検討すべきとしている点が、火山ガイドの見直しを求める趣旨であることを述べたものと解されるが、上記のとおり、火山ガイドが、噴火の規模及び時期を的確に予測し得ること を前提としたものとは解されないことからすれば、火山ガイドの不合理性を基礎付ける事情とはいえない。 c 運用期間の が、上記のとおり、火山ガイドが、噴火の規模及び時期を的確に予測し得ること を前提としたものとは解されないことからすれば、火山ガイドの不合理性を基礎付ける事情とはいえない。 c 運用期間の定めの不明確性控訴人は、運用期間がどれくらいになるのか明らかでないのに、運用期間中における火山の活動可能性の評価が可能であるとしている点 で、不合理であると主張する。 しかし、火山ガイドは、運用期間につき、原子力発電所に核燃料物質が存在する期間をいう旨を定めているところ、規制法(平成29年法律第15号による改正前のもの)は、運転期間を40年とし、延長する場合でも、最大20年とする旨を定めていることに照らせば(4 3条3の3の32)、運用期間が明らかでないとはいえない。SSG -21も、原子力施設に核燃料が存在する限り、高レベルの運転上の安全を維持する必要のある運転段階にあるとみなすとした上で(1. 19項)、地理的領域内の火山がサイトにおける信憑性のあるハザードの発生源である場合には、これらの可能性のある火山の特性を施設の全耐用年数期間にわたってモニターする必要があるとしており(3. 10項)、火山ガイドの定めと整合的である。運転期間終了後、核燃料が搬出されるまでの間に一定の期間を要するとしても、核燃料物質が存在する期間が数百年に及ぶことが想定されると認めるに足りる証拠はない。 これらの事情によれば、運用期間中における火山の活動可能性の評 価を行うものとしている点で、不合理ということはできない。 d 過去の火山活動履歴の評価における不合理性控訴人らは、過去の火山活動履歴から活動可能性を適切に評価し得ることを前提としている点で、不合理であると主張する。 しかし、火山 去の火山活動履歴の評価における不合理性控訴人らは、過去の火山活動履歴から活動可能性を適切に評価し得ることを前提としている点で、不合理であると主張する。 しかし、火山ガイドは、将来の火山活動可能性につき、完新世(1 万1700年前から現在まで)における活動の有無を確認し、完新世に活動を行ったことがある火山は、将来の活動可能性のある火山とし、完新世に活動を行っていない火山については、文献調査、地形・地質調査及び火山学的調査の調査結果を基に、第四紀の噴火時期、噴火規模、活動休止期間を示す階段ダイアグラムを作成し、より古い時期の 活動を評価するものとし、また、将来の活動可能性のあると評価した火山について、原子力発電所の運用期間中において設計対応が不可能な火山事象を伴う火山活動の可能性評価を行うものとし、過去の火山活動的履歴とともに、必要に応じて、地球物理学的調査及び地球化学的調査を行い、現在の火山の活動状況も併せて評価することとしてい る(火山ガイド7、8頁)。このように、火山ガイドは、過去の火山 活動履歴のみから将来の活動可能性の評価を行うものとしているわけではない。SSG-21においても、将来の火山活動の潜在的発生源の特性評価において、完新世の噴火の証拠は、将来の噴火の信憑性があることを示すものとして広く受けいれられている指標であるとし(5.7項)、現在の活動可能性又は完新世の活動の証拠がない場合 には、その領域における古い活動の時期を評価することについて、より詳細な検討を行うのがよいとしており、稀にしか活動しないカルデラ等の一部の火山系に対しては、およそ過去500万年の間の活動も、将来の活動に対する可能性をある程度示している場合があるなどとしている(5.10項)。これら よいとしており、稀にしか活動しないカルデラ等の一部の火山系に対しては、およそ過去500万年の間の活動も、将来の活動に対する可能性をある程度示している場合があるなどとしている(5.10項)。これらは過去の活動履歴から将来の火山活動 可能性の検討を行うことを示すものといえる。火山ガイドの策定過程をみても、新規制基準検討チーム第20回会合において、R教授は、地球全体でみた場合、大噴火は100年単位、VEI8級の超巨大噴火は数十万年単位で発生している一方で、日本国内で1700年代以降、VEI5以上の噴火が発生していないという規則性によると、日 本国内で大噴火が起こる時期が近づいているといえること、階段ダイアグラムは、噴火の確率に言及するための一つの材料になり得ること、超巨大噴火であっても、カルデラ噴火であっても、広域的にみれば統計的に扱うことができるであろうと考えられることなどを述べて、過去の活動履歴を考慮して噴火の可能性に言及しており、これらの説明 に合理性を否定するような事情は見当たらない。 これらの事情によれば、火山ガイドが、過去の火山活動履歴を考慮して活動可能性を評価するとしている点が、不合理ということはできない。 e 現在の火山の活動の状況に関する不合理性 控訴人らは、現在の火山の活動の状況によって、活動可能性を適切 に評価し得るという前提に立っている点で、不合理であると主張する。 しかし、火山ガイドは、将来の活動可能性があると評価した火山について、原子力発電所の運用期間中において設計対応が不可能な火山事象を伴う火山活動の可能性の評価を行うものとして、この評価に当たり、過去の活動履歴とともに、必要に応じて、地球物理学的調査及 び地球化学的調査を行い、現在の火山の活動の状況と併 が不可能な火山事象を伴う火山活動の可能性の評価を行うものとして、この評価に当たり、過去の活動履歴とともに、必要に応じて、地球物理学的調査及 び地球化学的調査を行い、現在の火山の活動の状況と併せて評価を行うものとしており、現在の火山の活動の状況のみにより活動可能性を評価するものとしているわけではなく、また、地球物理学的調査によって地下のマグマ溜まりの規模や位置を的確に把握し得ることを前提としたものとは解されないことは上述したとおりである。この点に関 し、控訴人らは、現在の火山学の水準では、地球物理学的調査を行っても、マグマ溜まりの存在を見落とす可能性があるのに、火山ガイドの策定段階において、これらの検討がされていないと主張するが、Y証人の尋問結果によれば、火山ガイドの策定段階において、地震波トモグラフィによる調査手法について検討が行われたものと認められ、 原子力規制委員会において、地震波トモグラフィをはじめとする地球物理学的な観測ないし調査手法について誤った認識を有していたとは認められない。 これらの事情によれば、火山ガイドが、現在の火山の活動の状況を考慮して活動可能性を評価することとしていることが不合理というこ とはできない。 f モニタリングに関する不合理性⒜ 控訴人らは、モニタリングの実効性に関する評価を誤っており、不合理であると主張する。 しかし、火山ガイドは、噴火の可能性が十分小さいと評価された 場合において、設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達し たと考えられるときに、対象火山の状況に変化がないことを確認する目的でモニタリングを実施するものとし、モニタリングにより噴火の可能性につながる結果ないし火山活動の兆候が観測された場合の対処方針を定めることを求めるも に、対象火山の状況に変化がないことを確認する目的でモニタリングを実施するものとし、モニタリングにより噴火の可能性につながる結果ないし火山活動の兆候が観測された場合の対処方針を定めることを求めるものであって、噴火の可能性の大小にかかわらず、モニタリングによって噴火の時期や規模を的確に 予測して燃料の搬出等を行うことを前提としたものとは解されないことは上述したとおりである。SSG-21は、モニタリングを追加的考慮要素とし、地理的領域内の火山がサイトにおける信憑性のあるハザードの発生源である場合には、これらの火山の特性を施設の全耐用期間にわたってモニターする必要があるとしているところ、 その位置づけが火山ガイドにおける位置づけと異なるとはいえない。 Z1課長は、新規制基準検討チーム第21回会合において、「ちゃんとモニタリングをしっかりやるというのが、一番の前提と考えて」いると発言しているが、モニタリングの実施を強調しているにすぎず、モニタリングによって噴火の時期や規模を的確に予測して燃料 の搬出等を行う旨を述べたものとはいえない。 これらの事情によれば、火山ガイドが、モニタリングの実効性に関する評価を誤っているということはできない。 ⒝ 控訴人らは、モニタリングを事業者自身が行うものとしている点で、不合理であると主張する。 火山ガイドの定めによると、事業者がモニタリングの実施主体となることを想定しているものと解される(火山ガイド11頁)。 この点に関し、モニタリング検討チーム第2回会合において、R教授は、モニタリングを発電事業者が主体となって行うこととしている点を見直した方がよいとし、既存の観測体制では不十分で、電 気事業者ではできない旨を指摘している。発電事業者は火山の専門 家ではなく、当然 を発電事業者が主体となって行うこととしている点を見直した方がよいとし、既存の観測体制では不十分で、電 気事業者ではできない旨を指摘している。発電事業者は火山の専門 家ではなく、当然に火山学の知見を有する立場にないことに鑑みると、R教授の指摘は、モニタリングには、十分な観測体制による必要があり、また、得られた結果につき火山学的知見を踏まえた評価が必要である趣旨をいうものであって、相応の根拠に基づくものといえる。しかし、モニタリング検討チームの提言とりまとめでは、 モニタリングの主体を発電事業者とすることを否定しておらず(甲A29)、R教授の意見は取りまとめに反映されていない。火山ガイドでは、結果につき火山専門家等の助言を得る方針とするほか、火山専門家のみならず、原子力やその関連技術者により構成され、透明・公平性のあるモニタリング結果の評価を行う仕組みを構築す ることを求めているのであって、火山学に関する知見を取り入れることを求めている。SSG-21の定めをみても、モニタリングを行う場合、自然ハザードの早期警報に関する加盟国の専門機関と協力して、運転段階における早期警報に関するモニタリング・プログラムを試運転前に作成及び実施するのがよいとし(3.10項)、 監視は、火山の観測及び監視に責任のある適切な国内及び国際機関と協力して実施するのがよいとしているが(8.2項)、事業者が主体となることを否定していない。また、確立した火山観測所がない場合には必要とされる監視プログラムの一環としてそのような観測所を設立しなければならない場合もあるとしているが(8.2 項)、モニタリングの実施主体を公的機関や火山観測所とすることを求めるものとは解されない。 これらの事情によれば、火山ガイドが、モニタリングの実施 ればならない場合もあるとしているが(8.2 項)、モニタリングの実施主体を公的機関や火山観測所とすることを求めるものとは解されない。 これらの事情によれば、火山ガイドが、モニタリングの実施主体を事業者とすることを想定している点で、不合理であるということはできない。 g 降下火砕物の影響評価に関する基準の欠落 控訴人らは、降下火砕物の大気中濃度を推定する手法に関する基準が欠落している点で、不合理であると主張する。 規制法は、発電用原子炉の設計から運転に至る過程を段階的に区分し、それぞれの段階に応じて許認可等の規制を行っており、設置許可及び設置変更許可の段階で、発電用原子炉施設の基本設計及び基本的 設計方針の安全性にかかわる事項を審査し、工事計画認可及び工事計画変更認可、使用前検査、保安規定認可及び保安規定変更認可並びに施設前定期検査の段階で、基本設計及び基本設計方針を前提とした、具体的な設計及び工事方法等詳細設計の安全性にかかわる事項を審査することとされている(規制法43条の3の5、43条の3の6、4 3条の3の9、43条の3の11、43条の3の16、43条の3の24等)。これらの定めによれば、設置許可及び設置変更許可の段階では、基本設計及び基本設計方針の安全性にかかわる事項のみが審査の対象となり、工事計画認可や保安規定認可等の段階で審査の対象となる詳細設計の安全性にかかわる事項は、設置許可及び設置変更許可 における審査の対象とならないものと解される(伊方原発最高裁判決参照)。 SSG-21は、火山灰降下の影響は設計及び運転に対する適切な措置によって緩和できるとした上で(6.10項)、その影響に関して、構造物への静的負荷、粒子の衝突 発最高裁判決参照)。 SSG-21は、火山灰降下の影響は設計及び運転に対する適切な措置によって緩和できるとした上で(6.10項)、その影響に関して、構造物への静的負荷、粒子の衝突、水循環系の閉塞及びその内部 における摩耗、換気系、電気系及び計装制御系に対する機械的及び化学的影響、原子力発電プラント周辺の大気内の粒子負荷を挙げている(6.6項)。火山ガイドも、直接的影響として、SSG-21と同様の項目を挙げている(火山ガイド12頁)。噴火により降下火砕物が発生し、気中降下火砕物の濃度が上昇することにより想定される事 象としては、非常用ディーゼル発電機の外気取入口の閉塞による機能 喪失が想定される。しかし、外気取入口の閉塞への対応は、フィルタの仕様及び保守の問題であるから、どのような降下火砕物の大気中濃度の推定手法を用いるかという点につき、その検討は、基本設計及び基本設計方針の段階ではなく、詳細設計の段階で行われるものといえる。その他、降下火砕物の大気中濃度を推定する手法につき、基本方 針及び基本設計方針の段階で審査することが必要となると認めるに足りる事情は見当たらない。 これらの事情によれば、火山ガイドに降下火砕物の大気濃度の推定手法に関する基準が欠落している点をもって、火山ガイドが不合理ということはできない。 h 「基本的な考え方」が示す内容の不合理性⒜ 控訴人らは、「基本的な考え方」が示す判断枠組みは、巨大噴火の発生を的確に予測することができることを前提としている点で不合理であると主張する。 しかし、火山ガイドが、噴火の規模及び時期を的確に予測し得る ことを前提としたものとは解されないことは上述したとおりである。 ⒝ 控訴人らは、「基本的な考 いる点で不合理であると主張する。 しかし、火山ガイドが、噴火の規模及び時期を的確に予測し得る ことを前提としたものとは解されないことは上述したとおりである。 ⒝ 控訴人らは、「基本的な考え方」のいう「差し迫った状態」がいかなる状態であるのかが曖昧であり、判断の根拠とする要素も明らかでないから、不合理であると主張する。 しかし、火山ガイドは、将来の火山活動可能性の評価につき、文 献調査、地形・地質調査及び火山学的調査を行った上で、地理的領域内にある火山のうち、完新世に活動を行った火山及び完新世に活動を行っていない火山のうち、第四紀の噴火時期、噴火規模、活動の休止期間を示す階段ダイアグラムを作成し、より古い時期の活動の評価を行い、その結果、将来の活動可能性が否定できない火山に ついては、個別評価を行う旨を定める。そして、個別評価の対象と した火山につき、過去の火山活動履歴とともに、必要に応じて、地球物理学的調査及び地球化学的調査を行い、現在の火山の活動の状況を併せて評価する旨、この評価においては、原子力発電所の運用期間中における検討対象火山の可能性を総合的に評価するものとし、活動可能性が十分小さい場合には、火山活動のモニタリングを実施 する旨を定める。その上で、「基本的な考え方」は、巨大噴火の可能性評価に当たっては、火山学上の各種知見を参照しつつ、巨大噴火の活動間隔、最後の巨大噴火からの経過時間、現在のマグマ溜まりの状況、地殻変動等の観測データから総合的に評価を行い、火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態にあるかどうか及び 運用期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性のある具体的な根拠があるかどうかを確認するものとしている。これらの事情によれば、「噴火が差し迫った状態にあ し迫った状態にあるかどうか及び 運用期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性のある具体的な根拠があるかどうかを確認するものとしている。これらの事情によれば、「噴火が差し迫った状態にあるかどうか」を判断する際の考慮要素が示されているといえる。また、原子炉火山部会が、令和2年3月に取りまとめた「火山モニタリングにおける『観測デー タに有意な変化があったと判断する目安』について」と題する報告書においても、定量的な指標は定められておらず、必要な監視項目及び確認事項をチェックリストとしたものが作成されており、定量的な指標は示されていないことや、巨大噴火ないし破局的噴火の可能性に関する的確な定量的な指標が存在すると認めるに足りる証拠 はないことに照らせば、「差し迫った状態にあるかどうか」という基準が不合理ということはできない。 ⒞ 控訴人らは、保守的に行わなければならないはずの巨大噴火について、それ以外の噴火よりも緩やかな基準を設定している点で、不合理であると主張する。 しかし、規制法43条の3の8第2項及び43条3の6第1項4 号が、およそ全ての火山の影響を考慮することを求めるものではなく、火山の影響のうち最新の科学的技術的知見を踏まえて適切に予想されるものを考慮すべきことを求めているものと解されることは上述したとおりである。その上で、破局的噴火は、日本列島では、約7300年前の鬼界アカホヤ噴火が最後であり、極めて低頻度の 事象であって、歴史時代に観測されたことがないこと、鬼界カルデラを含む周辺5カルデラの周辺地域において、巨大噴火を具体的に想定した火山防災対策がとられていないこと(乙D70の2、71の2、75の2、76の2、78)からすると、巨大噴火について「火山の現在の活動状況は 辺5カルデラの周辺地域において、巨大噴火を具体的に想定した火山防災対策がとられていないこと(乙D70の2、71の2、75の2、76の2、78)からすると、巨大噴火について「火山の現在の活動状況は差し迫った状態にあるかどうか及び運用 期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性のある具体的な根拠があるかどうか」という基準が不合理ということはできない。 ⑷ 看過し難い過誤欠落の有無ア原子力発電所に影響を及ぼし得る火山の抽出参加人は、文献調査、地形・地質調査、火山学的調査により周辺5カル デラ等の合計14の火山を抽出し、原子力規制委員会は、これを妥当としているところ、火山ガイドに則ったものであり、相当の根拠、資料があるといえる。したがって、この点に関して、原子力規制庁の判断に至る過程に看過し難い過誤欠落があるとは認められない。 イ将来の活動可能性 参加人は、周辺5カルデラ、米丸・住吉池、雲仙岳、口永良部島を将来の活動可能性が否定できない火山とし、原子力規制委員会は、これを妥当としているところ、火山ガイドに則ったものであり、相当の根拠、資料があるといえる。したがって、この点に関して、原子力規制庁の判断に至る過程に看過し難い過誤欠落があるとは認められない。 ウ運用期間中の活動性評価 (ア) 周辺5カルデラに共通する事情a 破局的噴火の設定参加人は、将来の活動可能性が否定できない火山として抽出した火山のうち、過去に破局的噴火(VEI7以上)を発生させた周辺5カルデラを取り上げた上で、運用期間中の活動可能性の評価を行い、原 子力規制委員会は、これを妥当としているところ、破局的噴火を取り上げて検討を行った点は、火山ガイドに則ったものであり、相当の根拠、資料があるとい た上で、運用期間中の活動可能性の評価を行い、原 子力規制委員会は、これを妥当としているところ、破局的噴火を取り上げて検討を行った点は、火山ガイドに則ったものであり、相当の根拠、資料があるといえる。 b 階段ダイアグラムの作成参加人は、鹿児島地溝に存在する姶良カルデラ、加久藤・小林カル デラ及び阿多カルデラにおける噴火を合わせた階段ダイアグラムを作成して噴火間隔の検討を行った。 その妥当性についてみると、新規制基準検討チーム第20回会合において、R教授は、階段ダイアグラムが噴火の確率に言及するための一つの材料になり得る旨、超巨大噴火であっても、カルデラ噴火であ っても、広域的にみれば統計的に扱うことができる旨を指摘している。 火山学上の文献をみても、南九州の地溝構造は、1000万年前以降の沖縄トラフの形成・拡大と関連して形成され、断裂運動の進行につれて火山活動が活発化し、特に200万年前~100万年前は火山活動が最も激しく、かつ広域にわたっており、その過程で、鹿児島地溝 が形成され、鹿児島地溝は、全体として活動的な火山構造性地溝とみなすことができるとする見解(小林・矢野(2007)・丙B28)、世界の噴火をVEIごとに頻度を取ると、片対数表示で明瞭な負となるべき乗則が認められ、この乗則は、世界規模だけでなく、より小さいスケール(火山帯、火山地域又は火山)においても存在するとする 見解(中田(2015)・乙D23)があるほか、T教授も、特定地 域の平均的噴火発生期間から噴火の頻度を求めること自体には問題があるわけではないとしている(甲B9)。これらによれば、鹿児島地溝に存在する複数のカルデラを一つとしてみて活動間隔を検討することは、火山学上の知見に照らし、相応の根拠のあるものといえる。N教 題があるわけではないとしている(甲B9)。これらによれば、鹿児島地溝に存在する複数のカルデラを一つとしてみて活動間隔を検討することは、火山学上の知見に照らし、相応の根拠のあるものといえる。N教授は、階段図は、通常1火山について1つ描かれるのに、3つのカ ルデラを合わせて検討する合理的理由が示されていないなどと指摘するが(甲B4)、上記各見解は、かかわりのある火山地域を一つとみて噴火間隔を検討することの火山学上の妥当性を裏付けるものである。 これに加えて、本件処分の基準適合性審査では、鹿児島地溝における噴火間隔のみならず、個々のカルデラにおける破局的噴火の噴火間隔 の検討も行われていること、現在の火山学において明らかになっている破局的噴火の絶対数が少ないことを踏まえれば、鹿児島地溝に存在する3つのカルデラの噴火を合わせた階段ダイアグラムを作成して、噴火間隔を検討することが、火山学の知見に照らして不当なものとはいえない。 これらの事情によれば、参加人が、鹿児島地溝内の3つのカルデラを合わせた階段ダイアグラムを作成して、噴火間隔を検討し、これが審査資料とされた点で、調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤欠落があるとは認められない。 (イ) 姶良カルデラ 以下の事情によれば、原子力規制委員会が、姶良カルデラの現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状況ではなく、噴火可能性が十分小さいと判断したことにつき、相当の根拠、資料があるというべきである。 a 姶良カルデラにおける直近の破局的噴火は、降下軽石、降下火砕流堆積物、降下火山灰の分布状況等からすると、約3.0~2.8万年 前に発生した姶良Tn噴火であるとされ、それ以前の破局的噴火の時 期は明らかでないが、大規模な噴火は、約9万 降下火砕流堆積物、降下火山灰の分布状況等からすると、約3.0~2.8万年 前に発生した姶良Tn噴火であるとされ、それ以前の破局的噴火の時 期は明らかでないが、大規模な噴火は、約9万年前の姶良福山噴火と考えられている(丙B18・110頁、丙B39)。鹿児島地溝の3つのカルデラでみても、姶良Tn噴火が直近の破局的噴火となる。過去の活動履歴から、姶良カルデラにおける破局的噴火の時期が近いという傾向はうかがえない。 b カルデラ噴火は、大量の珪長質マグマから成るマグマ溜まりを概ね地下深さ10㎞以浅に定置させた状態から噴火に至るとする見解が示されており、広く肯定されているところ、姶良Tn噴火では、噴出物の解析によると、マグマ溜まりの上部が地下深さ4~5㎞程度の地殻浅部まで広がっていたと考えられている(乙D10)。原子力規制庁 の安全研究成果報告でも、姶良Tn噴火におけるマグマは、岩石学的手法によると、地下深さ4~8㎞に存在したと考えられるとされている(乙D165)。 他方で、現在の姶良カルデラには、地殻浅部にマグマ溜まりが存在しないことを示す火山学の知見が多くみられる。すなわち、井口ほか (2011・丙B45)は、地殻変動の状況につきマグマの深度を推定する手法の一つである茂木モデルを用いると、圧力源の中心が姶良カルデラの中心部の地下深さ12㎞及び桜島の北岳の直下6㎞にあるとし、北岳の直下の圧力源は副力源であり、主たる力源は姶良カルデラの中央部にあると考えられるとし、Hickeyほか(2016・ 乙D54)も、地殻変動の状況につき茂木モデルとは異なる推定手法によると、圧力源の中心が地下深さ13.1㎞となるとされている。 また、為栗ほか(2022・乙D144)は、地震波トモグラフィの解析によると、 4)も、地殻変動の状況につき茂木モデルとは異なる推定手法によると、圧力源の中心が地下深さ13.1㎞となるとされている。 また、為栗ほか(2022・乙D144)は、地震波トモグラフィの解析によると、若尊カルデラの地下深さ1㎞にS波速度の低下が、姶良カルデラ中央部の深さ15㎞にS波速度の低下が確認されたが、深 さ5㎞及び10㎞では低速度は確認されなかったとし、若尊カルデラ の低速度領域につき熱水層に対応する可能性が示唆されるとしている。 さらに、V教授の報告書(乙D145)は、地震波トモグラフィの解析により、地下深さ10㎞までの領域に巨大又はその半分程度のマグマ溜まりの存在を示唆する低速度領域は確認されなかったとした上で、この事実は、姶良カルデラの領域には巨大なマグマ溜まりは存在しな いことを意味するとし、K教授の報告書(乙D53)も、地震波トモグラフィの解析及び既存の研究を踏まえ、姶良カルデラ下では、地下数㎞に大規模なマグマ溜まりが蓄積している状態ではないとしている。 c マグマの供給率に関しては、加茂・石原(1980・丙B47)が、地殻変動の測定値を基にすると、静穏期のカルデラの隆起膨張速度が 年800万㎥(0.008㎦)となるとしているほか、井口ほか(2012)が、圧力源の体積変化量及び火山灰放出量を考慮したマグマの供給量が年730万㎥(0.0073㎦)となるとしている(丙B50)。これらの数値は、ドルイット論文が示すミノア噴火のマグマの供給量が年0.05㎦とされていることと比較して低いものである (丙B38)。Z4教授は、年0.01㎦の体積膨張率が、直近の破局的噴火から数万年間続いていたと仮定した場合、破局的噴火を引き起こすのに十分なマグマが蓄積されていることになるとした上で、このような高い値であ )。Z4教授は、年0.01㎦の体積膨張率が、直近の破局的噴火から数万年間続いていたと仮定した場合、破局的噴火を引き起こすのに十分なマグマが蓄積されていることになるとした上で、このような高い値であるにもかかわらず、破局的噴火の兆候がないと判断することに合理的な科学的根拠がないと述べているところ(甲B2 3)、控訴人らは、これを根拠に姶良カルデラにつき破局的噴火に至る可能性があると主張する。しかし、上記のとおり破局的噴火に至る可能性を否定する知見があるほか、同教授が岩石学的手法によるマグマ供給率の推定方法の仮定が必ずしも正当化されない旨を指摘していることを踏まえると、年約0.01㎦というマグマ供給率が、姶良カ ルデラにおいて破局的噴火が発生する具体的可能性を示すものという ことはできない。 d ナガオカ論文は、姶良カルデラが後カルデラ期噴火ステージにあるとしている。破局的噴火が発生する具体的な可能性があることを示唆するものではない。 e 以上のほか、姶良カルデラにおいて破局的噴火が発生することを示 唆する具体的な兆候があると認めるに足りる証拠はない。 (ウ) 加久藤・小林カルデラ以下の事情によれば、原子力規制委員会が、加久藤・小林カルデラの現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状況ではなく、噴火可能性が十分小さいと判断したことにつき、相当の根拠、資料があるというべきで ある。 a 加久藤・小林カルデラでは、加久藤噴火及び小林笠森噴火が破局的噴火であったと考えられている。新編火山灰アトラスは、噴火の時期につき、小林笠森噴火が53~52万年前、加久藤噴火が33~32万年前と推定しているが、堆積物の分析からは複数の時期が推測され るとしている。小林笠森噴火から加久藤噴火までは約2 、噴火の時期につき、小林笠森噴火が53~52万年前、加久藤噴火が33~32万年前と推定しているが、堆積物の分析からは複数の時期が推測され るとしている。小林笠森噴火から加久藤噴火までは約20万年であるのに対し、最後の破局的噴火である加久藤噴火から32万年以上が経過していることになるが、母数が2つであり、間隔が約20万年という長期間であり、推定される噴火の時期にも幅があることに照らすと、活動間隔から噴火の傾向をうかがうことは困難である。 bL教授の報告書(乙D52)は、これまでに多くのマグマ噴火の前兆現象としてマグマ溜まりの膨張が捉えられているが、測地学的手法によると加久藤・小林カルデラでは、火山活動に伴う地殻変動が観測されていないとしている。 cGotoほか(1997・丙B54)は、電磁波を用いた観測手法 であるMT法によると、えびの群発地震の震源域は、その周辺よりも 高い比抵抗値を示しており、大規模な流体は存在しないと考えられるとしている。 d ナガオカ論文は、加久藤・小林カルデラにおける現在の火山活動の噴火ステージにつき直接言及していない。 e 以上のほか、加久藤・小林カルデラにおいて破局的噴火が発生する ことを示唆する具体的な兆候があると認めるに足りる証拠はない。 (エ) 阿多カルデラ阿多カルデラの現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状況ではなく、噴火可能性が十分小さいと判断したことにつき、相当の根拠、資料があるというべきである。 a 約24万年前の阿多鳥浜噴火及び約10.5万年前の阿多噴火が破局的噴火と考えられている。活動間隔から、破局的噴火の時期が近いという傾向はうかがえない。 bL教授の報告書(乙D52)は、測 24万年前の阿多鳥浜噴火及び約10.5万年前の阿多噴火が破局的噴火と考えられている。活動間隔から、破局的噴火の時期が近いという傾向はうかがえない。 bL教授の報告書(乙D52)は、測地学的手法によると、阿多カルデラにおける火山活動に伴う地殻変動は観測されておらず、基線長に 変化がなく、マグマの消費量も乏しい火山であり、マグマ溜まりへの供給もほぼないとしている。 c 西ほか(2001・丙B58)は、地震波トモグラフィの解析によると、阿多カルデラでは熱水活動に関連した低速度領域が認められるとするが、マグマ溜まりを示唆する指摘はみられない。 d ナガオカ論文によると、阿多カルデラは、後カルデラ噴火ステージ又はプリニー式噴火ステージの初期段階にあるとされている。破局的噴火が発生する具体的な可能性があることを示唆するものではない。 e 以上のほか、阿多カルデラにおいて破局的噴火が発生することを示唆する具体的な兆候があると認めるに足りる証拠はない。 (オ) 鬼界カルデラ 以下の事情によれば、原子力規制委員会が、鬼界カルデラの現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状況ではなく、噴火可能性が十分小さいと判断したことにつき、相当の根拠、資料があるというべきである。 a 鬼界カルデラでは、約14万年前に小アビ山噴火が、約9.5万年前に鬼界葛原噴火が、約7300年前に鬼界アカホヤ噴火が発生し、 鬼界葛原噴火及び鬼界アカホヤ噴火は破局的噴火であり、また、参加人は、小アビ噴火も破局的噴火と考えられるとしている。破局的噴火の活動間隔から、破局的噴火の時期が近いという傾向はうかがえない。 Tatsumiほか(2018・乙D159)は、カルデラ陥没後の巨大な流 破局的噴火と考えられるとしている。破局的噴火の活動間隔から、破局的噴火の時期が近いという傾向はうかがえない。 Tatsumiほか(2018・乙D159)は、カルデラ陥没後の巨大な流紋岩溶岩ドーム(約32㎦)形成の一連の証拠が得られた としているところ、Q教授は、この溶岩ドームを構成したマグマの噴出量は40㎦を超えるものであり、噴火マグニチュード7の破局的噴火に相当すると述べる(甲D261、265)。しかし、同教授の指摘する40㎦を超えるという数量は、十分な根拠があるとはいい難い上、この溶岩ドームが単成か複合かも明らかでなく(乙D159)、 火砕流が発生したことを示す堆積物等も確認されていないことからすると(甲D265)、本件処分の基準適合性審査に当たり、原子力発電所への影響として考慮すべき破局的噴火とみることはできない。 b 前野ほか(2001・丙B62)は、鬼界アカホヤ噴火、約5200年前の硫黄岳前期及び約1300年前の硫黄岳後期にかけての形成 史につき、地質学的特徴及び岩石学的特徴から、鬼界アカホヤ噴火では大量の珪長質マグマとともに共存していた安山岩質マグマが噴出したこと、硫黄岳前期では、鬼界アカホヤ噴火と同じマグマによるもので、爆発的な噴火を伴いながら硫黄岳山体を成長させたこと、その後、硫黄岳前期の活動が終了し、稲村岳の活動へと移行したこと、硫黄岳 後期の活動では、稲村岳の活動を挟み、前期とは異なる流紋岩質マグ マを噴出したこと、鬼界アカホヤ噴火及び硫黄岳前期のマグマと、硫黄岳後期の全岩組成で異なるグループに属すること、稲村岳の活動では、鬼界アカホヤ噴火と異なる苦鉄質マグマが噴出したが、これはマグマ溜まりに新しい苦鉄質マグマが供給され、新たな流紋岩質マグマを生み出す 岳後期の全岩組成で異なるグループに属すること、稲村岳の活動では、鬼界アカホヤ噴火と異なる苦鉄質マグマが噴出したが、これはマグマ溜まりに新しい苦鉄質マグマが供給され、新たな流紋岩質マグマを生み出す熱源になった可能性が示唆されることなどと述べた上で、 鬼界カルデラでは、鬼界アカホヤ噴火後、稲村岳の活動期を挟み、新たなマグマを生産する活動期に入ったとしている。被控訴人は、上記文献に示されたモデル図(図15⒝)を根拠に、鬼界アカホヤ噴火時に蓄積されていた流紋岩質マグマが全て出し尽くされたと主張するが、上記文献は、鬼界アカホヤ噴火とは異なる活動期に入ったことを示す ものにとどまるし、O研究員の報告書(乙D84)では、鬼界アカホヤ噴火以降も流紋岩質マグマが残り、後カルデラ期の噴火に関与したという仮説に基づいて論じられており、異なるモデルで説明が行われていることに照らすと、被控訴人の上記主張は採用することができない。 cO研究員の報告書(乙D84)は、メルト包含物と火山ガスの観測結果に基づく計算よると、鬼界カルデラには、上面が地下3㎞程度に80㎦以上の大きさのマグマ溜まりが存在すると推定される、また、鬼界アカホヤ噴火を起こしたマグマ溜まりが3~5wt%という高い濃度を持ち、発泡していたが、現在のマグマ溜まりの状況は、継続的 な火山ガス活動により、流紋岩マグマのH2O濃度が約1wt%程度と低くなっており、流紋岩マグマの下部にあると考えられる玄武岩質マグマのH2О濃度も、メルト包含物の分析結果から1~3wt%と予想され、マグマ溜まり内においてマグマの発泡が起きにくい状態にあるなどと述べた上で、マグマを発泡させる揮発性成分の濃度が低下 していること、マグマ蓄積の時間が短いこと、深部からの大量のマグ れ、マグマ溜まり内においてマグマの発泡が起きにくい状態にあるなどと述べた上で、マグマを発泡させる揮発性成分の濃度が低下 していること、マグマ蓄積の時間が短いこと、深部からの大量のマグ マ上昇やマグマ溜まりの膨張を示唆する地震や地殻変動が現在起きていないことから、鬼界アカホヤ噴火のような破局的噴火がすぐに起きる状況にはないとしている。 dM教授の報告書(乙D45)は、以下の噴火モデルを前提に、鬼界カルデラでは、急激な地盤の上昇等が観測されていないことから、破 局的なカルデラ噴火がすぐにも発生する状況にあるとは考えられないとしている。 珪長質マグマが数十万年ないし数万年という長い年月をかけて蓄積され、地殻の中部から上部にかけて巨大な珪長質岩体又はマグマ溜まりを形成する。その際、広域的な地盤の上昇を伴う。そして、マグマ 溜まりを取りまく地殻応力の限界を超えると、地殻に破壊が生じ、割れ目火道が形成され、マグマ噴火が引き起こされる。この噴火は、爆発的でない溶岩主体の噴火となる。この噴火による溶岩の噴出は、巨大なマグマ溜まり全体を減圧させ、発泡が徐々に下方に伝搬する。その結果、地盤の上昇が急激に加速する。この状態が100年ないし数 百年続くと、マグマ溜まり内の気泡の核形成が更に進み、カルデラ噴火に発展する。カルデラ噴火に移行した最初の噴火が、プリニー式噴火なのか火砕流噴火なのかは、火道となる岩盤の亀裂の大きさと発泡により生ずる上昇流の速度によって決まるが、爆発的なプリニー式噴火が先行する場合が多い。 e 国土地理院によるGNSS観測によると、マグマ溜まりの顕著な増大を示唆する基線長変化は確認されていない。(乙B8の4)f ナガオカ論文によると、鬼界カルデラは、第四紀後期の噴 e 国土地理院によるGNSS観測によると、マグマ溜まりの顕著な増大を示唆する基線長変化は確認されていない。(乙B8の4)f ナガオカ論文によると、鬼界カルデラは、第四紀後期の噴火サイクルに分類される4つのサイクルのうちプリニー式又は中規模火砕流サイクルに当たる噴火がなく、一般的なパターンの例外であるとされて いる。鬼界カルデラの噴火には、他のカルデラの噴火とは異なる点が あることを示すものであるが、破局的噴火が発生する具体的な可能性があることを示唆するものとはいえない。 g 以上のほか、鬼界カルデラにおいて破局的噴火が発生することを示唆する具体的な兆候があると認めるに足りる証拠はない。 (カ) 阿蘇カルデラ 以下の事情によれば、原子力規制委員会が、阿蘇カルデラの現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状況ではなく、噴火可能性が十分小さいと判断したことにつき、相当の根拠、資料があるというべきである。 a 松本ほか(1991・丙B65)及び新編火山灰アトラスによると、阿蘇1が約27~25万年前、阿蘇2が約14万年前、阿蘇3が約1 3~12万年前、阿蘇4が9~8万年前に発生したと推定されており、阿蘇3及び阿蘇4は破局的噴火とされている。また、参加人は、阿蘇1及び阿蘇2も破局的噴火と考えられるとしている。阿蘇3から阿蘇4までの間隔に比して阿蘇4から現在までの間隔の方が長いが、阿蘇1から阿蘇2までの間隔よりは短く、過去の活動間隔から、破局的噴 火の時期が近いという傾向はうかがえない。 b カルデラ噴火は、大量の珪長質マグマから成るマグマ溜まりを概ね地下深さ10㎞以浅に定置させた状態から噴火に至るとする見解が示されており、広く肯定されているところ、原子力規制庁の安全研究成果報告では カルデラ噴火は、大量の珪長質マグマから成るマグマ溜まりを概ね地下深さ10㎞以浅に定置させた状態から噴火に至るとする見解が示されており、広く肯定されているところ、原子力規制庁の安全研究成果報告では、岩石学的手法によると、阿蘇4の噴火におけるマグマは、 地下深さ4~8㎞未満に存在したと考えられるとされている(乙D165)。 現在のマグマ溜まりの状況に関しては、地殻変動及び地震波トモグラフィの解析等の調査研究を踏まえて、「低速度領域LA」「低速度領域LB」及び「草千里直下」の3つの低速度領域が確認され、それ ぞれ議論が行われる状況にある(丙B104、乙D52)。 L教授の報告書(乙D52)は、「低速度領域LA」及び「低速度領域LB」につき、マグマ又は熱水を含む層であるが、全てマグマであったと仮定しても、最大45㎦のうち一部にとどまること、「草千里直下」は、全体として縮小傾向にあるところ、継続的な火山ガスの放出によるものであることから、大規模なカルデラ噴火が起こるよう な状態ではないと推定されるとしている。 Sudoほか(2001・丙B104)は、「草千里直下」の低速度領域が地下深さ6㎞に位置し、中央火口丘群及び活動的なマグマ供給系に関連しているとし、須藤ほか(2006・甲D33)は、この低速度領域にマグマ溜まりが存在しているが、その大きさは直径3~ 4㎞程度としている。 これらの知見によれば、上記低速度領域のうち、「草千里直下」の低速度領域は、マグマ溜まりであることが示唆されるが、その規模や、マグマ溜まりが縮小傾向にあるとするL教授の見解を踏まえれば、カルデラ噴火の具体的な可能性を示すものとはえいない。 c 三好ほか(2005・丙B103)は、後カルデラ形成期では、苦鉄質火山噴出 溜まりが縮小傾向にあるとするL教授の見解を踏まえれば、カルデラ噴火の具体的な可能性を示すものとはえいない。 c 三好ほか(2005・丙B103)は、後カルデラ形成期では、苦鉄質火山噴出物の供給火口がカルデラ中央部に分布し、その周囲により珪長質な火山噴出物の給源火口が分布するという傾向があるが、この火山分布は、大規模な珪長質マグマ溜まりがカルデラ直下に存在する場合に想定される分布とは異なるため、カルデラ形成期に存在し た大規模な単一のマグマ溜まりは存在しなくなったとし、三好雅也准教授の報告書(乙D105)は、カルデラ中央部における玄武岩質火山活動で特徴づけられる後カルデラ期の最近1万年間には、阿蘇カルデラ直下にカルデラ形成期のような巨大なマグマ溜まりが存在しなかったと考えられるとし、また、現時点で知り得る範囲で、阿蘇カルデ ラ直下における巨大珪長質マグマ溜まりの存在を示唆する岩石学的・ 地球化学的研究結果は報告されていないとしている。これらの見解は、岩石学的見地から、カルデラ噴火が発生する可能性を否定するものといえる。 d ナガオカ論文は、阿蘇カルデラの現在の火山活動の噴火ステージには言及していない。 e 以上のほか、阿蘇カルデラにおいて破局的噴火が発生することを示唆する具体的な兆候があると認めるに足りる証拠はない。 エ敷地において考慮する火山事象参加人は、周辺5カルデラにつき、運用期間中の破局的噴火の可能性が十分低いとした上で、姶良カルデラ、加久藤・小林カルデラ及び阿多カ ルデラについては火砕流が敷地に到達した可能性が否定できず、鬼界カルデラ及び阿蘇カルデラは、自然現象における不確かさを考慮し、敷地への影響を否定できないとして、火山活動のモニタリングを実 カ ルデラについては火砕流が敷地に到達した可能性が否定できず、鬼界カルデラ及び阿蘇カルデラは、自然現象における不確かさを考慮し、敷地への影響を否定できないとして、火山活動のモニタリングを実施するなどとし、原子力規制委員会は、妥当なものと判断している。この判断は火山ガイドに則ったものであり、相当の根拠、資料があるといえる。 オ火山活動のモニタリング本件処分の基準適合性審査において、原子力規制委員会は、参加人に対し、地球物理学的な調査項目を考慮したモニタリング計画の検討、噴火の可能性につながるモニタリング結果が観測された場合の対応方針の検討等を求め、参加人はこれらを反映したモニタリング計画を再検討した。 その上で、原子力規制委員会は、参加人の計画する運用期間中のモニタリングが、設計対応不可能な火山事象が過去に敷地に到達したことが否定できない火山を監視対象として抽出し、その監視項目及び監視の方法、定期的評価の方針及び火山活動の兆候を把握した場合の対処方針を示していること等から、火山ガイドを踏まえたと判断している。これらの調 査審議及び判断は、火山ガイドに則ったものであり、相当の根拠、資料 があるといえる。 カ控訴人らの主張以下のとおり、控訴人らの主張を踏まえても、本件処分の基準適合性審査において、調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤欠落があったとは認められない。 (ア) 過去の事実に基づく頻度に関する誤認a 控訴人らは、川内原発の敷地には、周辺5カルデラのいずれかを起源とする火砕流堆積物が分布しており、過去60万年間に概ね10万年に1回の頻度で火砕物密度流に襲われてきたことや、阿蘇カルデラ及び鬼界カルデラでは、約5万年に1回の頻度で破局的噴火 ラのいずれかを起源とする火砕流堆積物が分布しており、過去60万年間に概ね10万年に1回の頻度で火砕物密度流に襲われてきたことや、阿蘇カルデラ及び鬼界カルデラでは、約5万年に1回の頻度で破局的噴火が発生し ていることが看過されていると主張する。 しかし、本件処分の基準適合性審査において、参加人は、阿蘇カルデラ及び鬼界カルデラにおける破局的噴火の活動履歴を検討した上で、火砕流堆積物の分布を踏まえ、姶良カルデラ、加久藤・小林カルデラ及び阿多カルデラについては、火砕流堆積物が敷地内には認められな いが、敷地から半径5㎞の範囲に入戸火砕流、加久藤火砕流及び阿多火砕流の火砕流堆積物が認められるとして、敷地に到達した可能性が否定できないとし、また、鬼界カルデラ及び阿蘇カルデラについては、敷地を中心とする半径30㎞の範囲に火砕流堆積物が認められないとしつつ、不確かさを考慮して、モニタリングを実施するとし、火砕流 堆積物の分布や過去の破局的噴火の状況を明らかにしている。原子力規制委員会は、これらの事実を踏まえて、調査審議及び判断を行ったものであって、火砕流堆積物の分布や破局的噴火に係る事実を看過したということはできない。 b 控訴人らは、SSG-21が、決定論的な評価手法及び確率論的な 評価手法の併用を求めていること(2.20項)からすれば、ポアソ ン分布を用いた確率計算を行うことは、SSG-21の要請というべきであると主張する。 しかし、SSG-21は、可能な範囲で決定論的な評価手法及び確率論的評価手法を併用する旨を示すにとどまっており、ポアソン分布を用いた確率計算を要求しているとは解されないし、火山学において、 ポアソン分布を用いることが広く肯定されていると認めるに足りる証拠もないことに照らすと、 旨を示すにとどまっており、ポアソン分布を用いた確率計算を要求しているとは解されないし、火山学において、 ポアソン分布を用いることが広く肯定されていると認めるに足りる証拠もないことに照らすと、これを行わなかったとしても、調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤欠落があると認めることはできない。 (イ) VEI6以下の噴火についての不考慮控訴人らは、過去にVEI7以上の破局的噴火が発生した火山は、V EI6における最大級の噴火を発生させる潜在性を有するから、現在の噴火ステージの既往最大ではなく、VEI6以下の噴火において想定される最も厳しい条件の下でのシミュレーションを行うことが求められると主張する。 参加人は、周辺5カルデラについて、運用期間中に破局的噴火の可能 性が十分小さいと評価した上で、VEI6以下の噴火ステージにおける既往最大を評価の対象としている(姶良カルデラが桜島薩摩噴火、加久藤・小林カルデラが霧島イワオコシ噴火、阿多カルデラが池田噴火、鬼界カルデラが薩摩硫黄島噴火、阿蘇カルデラが阿蘇草千里ヶ浜噴火)。 しかし、火山ガイドは、検討対象火山の調査結果から噴火規模を推定 し、調査結果から噴火規模を推定できない場合には、検討対象火山の過去最大の噴火規模とするとしており(火山ガイド9頁)、破局的噴火が発生したことがある場合にVEI6以上の噴火において想定される最も厳しい条件で検討を行うことを求めているとは解されない。控訴人らは、姶良カルデラにつき、VEI6とされる姶良福山噴火を考慮していない 点を指摘する。しかし、姶良福山噴火の発生は約9万年前であり、姶良 Tn噴火よりも前であること、姶良Tn噴火における入戸火砕流堆積物の分布範囲に含まれていないこと(新編火山灰アトラス64頁)、姶良カ る。しかし、姶良福山噴火の発生は約9万年前であり、姶良 Tn噴火よりも前であること、姶良Tn噴火における入戸火砕流堆積物の分布範囲に含まれていないこと(新編火山灰アトラス64頁)、姶良カルデラにおいて破局的噴火が発生する具体的な兆候があると認めるに足りる証拠はないことに照らすと、姶良福山噴火を噴火規模として想定していない点で、調査審議及び判断に至る過程に看過し難い過誤欠落が あると認めることはできない。 (ウ) ナガオカ論文及びドルイット論文に関する誤認a ナガオカ論文の評価控訴人らは、ナガオカ論文に示された知見による認定に誤りがあると主張する。 参加人は、本件処分に係る申請に際し、ナガオカ論文に示された噴火ステージや噴火サイクルに関する知見を根拠としているが、ナガオカ論文に示された知見は、参加人が示した多くの文献の示す知見の一つにとどまる。また、本件処分の基準適合性審査においても、平成25年9月19日の事業者ヒアリングにおいて、原子力規制庁の担当者 は、「破局的噴火ステージの間隔についての根拠、信ぴょう性について説明すること」「噴火履歴の特徴(噴火ステージ)については、必ずしも同一のモデル(フェーズ)で進行するとは限らないこと」と指摘しており(乙B13)、同論文が示す知見につき調査検討が行われており、原子力規制委員会が、ナガオカ論文に示された知見が火山学 における普遍的法則であるとして噴火可能性の判断を行ったとは認められない。審査会合で同論文の内容や射程範囲への言及がなかったとしても、本件処分の基準適合性審査は、審査会合のみにおいて行われたものではないから、このことから調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤があると推認することはできない。 b 控訴人ら としても、本件処分の基準適合性審査は、審査会合のみにおいて行われたものではないから、このことから調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤があると推認することはできない。 b 控訴人らは、ドルイット論文に示された知見による認定に誤りがあ ると主張する。 審査書によると、原子力規制委員会は、ドルイット論文がVEI7以上の噴火直前の100年程度の間に急激にマグマが供給されたと推定していることを知見の一つとして判断に用いているが、ドルイット論文が、サントリーニ火山のミノア噴火における知見を示した上で、 別の火山においても、カルデラ噴火前の同様の時間スケールで、(休止期間)末期段階での膨大な量の再充填が起きたという事実(証拠)とも矛盾しないとしていることに照らすと、破局的噴火の噴火可能性を検討するに当たり、同論文の示された知見を判断に用いたことをもって、調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤欠落があると認める ことはできない。 (エ) 階段ダイアグラムに関する誤認控訴人らは、階段ダイアグラムの学術的な妥当性につき十分な審議が尽くされていない点で判断に至る過程に過誤欠落があると主張する。 しかし、参加人が、鹿児島地溝内の3つのカルデラを合わせた階段ダ イアグラムを作成して、噴火間隔を検討し、これが審査資料とされた点で、調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤欠落があるとは認められないことは上述したとおりである。R教授の新規制基準検討チーム第20回会合における説明内容によれば、学術的な妥当性につき十分な審査が尽くされていないと認めることもできない。 (オ) 地球物理学的調査等の限界に関する誤認控訴人らは、地球物理学的調査や地球化学的調査の限界や不確かさが全く考慮されていない点で、調査 が尽くされていないと認めることもできない。 (オ) 地球物理学的調査等の限界に関する誤認控訴人らは、地球物理学的調査や地球化学的調査の限界や不確かさが全く考慮されていない点で、調査審議及び判断の過程に過誤欠落があると主張する。 しかし、審査に際しては、特定の知見に限らず、様々な地球物理学的 な知見、地球化学的知見に関する文献が用いられているし、鬼界カルデ ラ及び阿蘇カルデラについては、敷地の中心から半径30㎞以内に火砕流堆積物が認められないとしつつ、自然現象の不確かさを考慮して、敷地への影響を否定できないとして、火山活動のモニタリングを実施することとしていることからすれば、地球物理学的調査や地球化学的調査の限界や不確かさが考慮されていないとは認められない。 (カ) 周辺5カルデラの個別評価に関する判断の誤りa 控訴人らは、過去の活動間隔からそれ以降の活動間隔も同様であることを前提に、噴火の可能性を検討している点で、調査審議及び判断の過程には過誤欠落があると主張する。 しかし、火山ガイドは、原子力発電所の運用期間中において設計対 応が不可能な火山事象を伴う火山活動の可能性を評価するに当たり、過去の活動履歴を考慮することとしており、過去の活動間隔の考慮は火山ガイドに則ったものといえる。そして、上記のとおり、特定の火山域の噴火の平均的な発生期間から噴火の頻度をみることを肯定する見解があることや、原子力規制委員会は、破局的噴火の噴火可能性を 検討するに当たり、破局的噴火の活動間隔のみを根拠としたものでもないことに照らすと、過去の破局的噴火の活動間隔から噴火の可能性を検討した点で、調査審議及び判断の過程に過誤欠落があるとは認められない。 b 控訴人らは、過去最大の噴火規模 したものでもないことに照らすと、過去の破局的噴火の活動間隔から噴火の可能性を検討した点で、調査審議及び判断の過程に過誤欠落があるとは認められない。 b 控訴人らは、過去最大の噴火規模ではなく、「現在の噴火ステージ における既往最大規模の噴火」を考慮しており、火山ガイドに則った審査すら行われていない点で、判断に至る過程に過誤欠落があると主張する。 しかし、火山ガイドは、検討対象火山の調査結果から噴火規模を推定し、調査結果から噴火規模を推定できない場合には、検討対象火山 の過去最大の噴火規模とするとしているところ(火山ガイド9頁)、 参加人は、敷地に火砕流堆積物は認められないとしつつ、なお、敷地から半径5㎞以内に火砕流堆積物が認められるものを火砕流が到達した可能性があるとしてモニタリングを実施することとしていることに照らせば、火山ガイドに則った審査が行われていないということはできない。 c 控訴人らは、鬼界カルデラプロジェクトという名称で平成28年頃から行われてきた大規模な海底探査により、鬼界カルデラ直下の深さ3~11㎞において、水平方向に約25㎞、鉛直方向に約8㎞に広がる低速度領域が確認されたとし、その体積は、単純計算にして2000㎦程度であり、マグマ溜まりであるとすると、場合によっては、V EI8クラスの超巨大噴火が発生する可能性があると主張する。 長屋ほかの研究成果報告(2023・甲D277)は、鬼界カルデラで行った屈折法地震波構造探査により、鬼界カルデラ直下には、その近傍よりも平均P波速度が最大約14%遅い領域の存在が明らかになり、その広がりは水平方向に約25㎞、鉛直方向に約8㎞であった としているが、他方で、この研究の測線と交差する デラ直下には、その近傍よりも平均P波速度が最大約14%遅い領域の存在が明らかになり、その広がりは水平方向に約25㎞、鉛直方向に約8㎞であった としているが、他方で、この研究の測線と交差する別の測線(ECrll測線)と速度構造を比較したところ、低速度異常はみられなかったとしている。その上で、これらがどのような物理的特性に起因するのか不明であり、物理的特性と地震波速度の関係を検証する必要があるとし、鬼界カルデラのマグマ供給系のうち、浅部のモデルについて 提案したいと締めくくっている。このように、同研究成果報告は、研究中の事柄に関する報告であって、上記の低速度領域がマグマ溜まりなのか、マグマ溜まりであるとして、どのような状態なのかは明らかにされていない。また、Seamaほか(2024・乙D171)は、上記低速度領域から推定されるマグマ貯留層の平均メルト分率は5%、 総メルト量は24㎦であるとしている。Q教授の意見書(甲D273) は、この低速度領域の体積が2143㎦になるとしているが、Q教授自身、ごく大雑把と述べるように、その全てがマグマ溜まりであり、かつ、半径8㎞の球状と仮定した上での計算にとどまることや、上記知見からすれば、これらをもって、破局的噴火を引き起こす具体的な可能性のあるマグマ溜まりが存在すると認めることはできない。 なお、控訴人らは、カルデラの直下浅部に大規模な低速度領域が存在する場合、稠密な調査及び詳細な分析を行い、科学的根拠に基づいて、この低速度領域がマグマ溜まりでないことを明確に示すといった特段の事情がない限り、破局的噴火を引き起こし得るマグマ溜まりと評価すべきであると主張する。 しかし、地震波を用いた探査は、地震波が、熱水、メルト(液体のマグマ)等の液体 確に示すといった特段の事情がない限り、破局的噴火を引き起こし得るマグマ溜まりと評価すべきであると主張する。 しかし、地震波を用いた探査は、地震波が、熱水、メルト(液体のマグマ)等の液体が多く含まれている岩盤等を通る場合、温度の比較的低い岩盤等を通る場合と比べて、地震波の速度が遅くなるという性質を利用するものであって、低速度領域の存在は、液体等の存在を推測させるものにとどまる。その他、控訴人らが主張するような推定を 行う経験則を認めるに足りる証拠はないし、そのような推定を行うべき法的根拠があるともいえない。控訴人らの上記主張は採用することができない。 (キ) 降下火砕物のシミュレーション及び評価に関する判断の誤り控訴人らは、降下火砕物のシミュレーションにつき、桜島山頂部に限 定することなく、鹿児島地溝のどこでも起こる可能性があることを想定して行うべきであるとか、審査で用いられたヘイマランド地区の観測値は、観測記録の最大値と評価されるようなものではなく、川内原発の敷地に15㎜の降下火砕物がある場合を想定した大気中濃度として、過少なものであるなどと主張する。 しかし、設置許可及び設置変更許可の段階では、基本設計及び基本的 設計方針が審査の対象となり、詳細設計等は、保安規定認可等の段階で審査の対象となることに照らすと、設置許可及び設置変更許可の段階で、控訴人らが指摘するようなシミュレーションを行ったり、観測値を設定したりすることが求められていたとは解し難く、この点で、調査審議及び判断の過程に過誤欠落があるとは認められない。 (ク) 専門的知見の取得に関する判断の誤り控訴人らは、原子力規制委員会及び原子力規制庁は、火山に関する科学的、専門技術的知見をほとんど有していないにも 過誤欠落があるとは認められない。 (ク) 専門的知見の取得に関する判断の誤り控訴人らは、原子力規制委員会及び原子力規制庁は、火山に関する科学的、専門技術的知見をほとんど有していないにもかかわらず、火山に関する外部専門家からの意見聴取等を十分に行わず、最新の火山に関する科学的、専門技術的知見を十分に踏まえることなく、本件処分を行っ た点で、調査審議及び判断の過程に過誤欠落があると主張する。 しかし、これまで述べてきたところによれば、外部専門家からの意見聴取等を十分に行わなかったとも、最新の火山に関する科学的、専門技術的知見を十分に踏まえなかったともいえないから、この点で、原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤欠落があるとは 認められない。 4 当事者の死亡記録によれば、控訴人Aは、令和5年4月25日に死亡し、控訴人Bは、令和7年5月31日に死亡したと認められる。同控訴人らが本件処分の取消しを求める法律上の利益は、同控訴人らの生命、身体の安全等という一身専属的な ものであり、相続の対象となるものではないから(最高裁平成9年1月28日第三小法廷判決・民集51巻1号250頁参照)、本件訴訟のうち同控訴人らの請求に関する部分は、その死亡により終了したといえる。 第4 結論以上の次第で、本件訴えのうち控訴人Cほか4名の請求に係る部分は、不適 法であるから却下し、その余の控訴人ら(控訴人A及び同Bを除く)の請求は、 理由がないから棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当であるから、同控訴人らを除くその余の控訴人らの控訴を棄却することとし、本件訴えのうち控訴人A及び同Bの請求に係る部分は、当然に終了したから、これを明らかにすることとする。 よって、主文のとおり判決す から、同控訴人らを除くその余の控訴人らの控訴を棄却することとし、本件訴えのうち控訴人A及び同Bの請求に係る部分は、当然に終了したから、これを明らかにすることとする。 よって、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官松田典浩 裁判官志賀勝 裁判官穗苅学は、転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官松田典浩 別紙2略称目録用語略称被控訴人訴訟参加人参加人独立行政法人原子力安全基盤機構JNES国立研究開発法人産業技術総合研究所産総研国立研究開発法人防災科学技術研究所防災科研国際原子力機関(InternationalAtomicEnergyAgency)IAEA国際放射線防護委員会(InternationalCommissiononRadiologicalProtection)ICRPJ京都大学名誉教授J教授K京都大学教授K教授L京都大学教授L教授M鹿児島大学名誉教授M教授N静岡大学防災総合センター教授N教授O産業技術総合研究所主任研究員O研究員P九州大学大学院教授P教授Q神戸大学教授Q教授R東京大学地震研究所火山噴火予知研究センター教授R教授S原子力規制委員会委員長S委員長T東京大学名誉教授T教授U防災科学研究所観測・予測研究領域地震・火山防災研究ユニット主任研究員U研究員V鹿児島大学教授V教授W首都大学東京(現東京都立大学)名誉教授W教授 X産業技術総合研究所研究員X 所観測・予測研究領域地震・火山防災研究ユニット主任研究員U研究員V鹿児島大学教授V教授W首都大学東京(現東京都立大学)名誉教授W教授 X産業技術総合研究所研究員X研究員YJNES安全情報部技術基盤グループ研究員(平成26年3月まで)・原子力規制庁長官官房技術基盤グループ技術基盤課技術専門職(同月以降)Y専門職Z1原子力規制庁技術基盤課長Z1課長原子力基本法基本法原子力規制委員会設置法設置法核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律規制法実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(平成25年原子力規制委員会規則第5号。平成31年同委員会規則第4号による改正前のもの)設置許可基準規則実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈(原規技発第1306193号)設置許可基準規則解釈原子力発電所の火山影響評価ガイド(平成25年6月19日原規技発第13061910号平成29年11月29日原規技発第17112910号による改正前のもの)火山ガイド原子力発電所の火山影響評価ガイド(令和元年12月18日原規技発第1912182号による改正前のもの)平成29年改正後の火山ガイド原子力発電所の火山影響評価ガイド(令和元年12月18日原規技発第1912182号による改正後のもの)令和元年改正後の火山ガイドIAEASafetyStandardsSpecificSafetyGuideNo.SSG-21“VolcanicHazardsinSiteEvaluationforNuclearInstallations”SSG-21IAEATECDOCSER o.SSG-21“VolcanicHazardsinSiteEvaluationforNuclearInstallations”SSG-21IAEATECDOCSERIESIAEA-TECDOC-1795 “VolcanicHazardAssessmentsforNuclearInstallations: MethodsandExaTECDOC-179 mplesinSiteEvaluation”「原子力発電所火山影響評価技術指針 JEAG4625-2009」(社団法人日本電気協会原子力規格委員会平成21年6月作成)(乙A6)JEAG4625発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム(後に「発電用原子炉の新規制基準に関する検討チーム」と改称されたが、改称の前後を問わず、右欄の略称を用いる。)新規制基準検討チーム原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム(原子力規制委員会平成26年8月20日設置)モニタリング検討チーム平成30年3月7日付け「原子力発電所の火山影響評価ガイドにおける『設計対応不可能な火山事象を伴う火山活動の評価』に関する基本的な考え方について」「基本的な考え方」平成19年から平成22年にかけて行われたリサイクル燃料貯蔵株式会社の使用済燃料の貯蔵の事業許可申請に係る原子力安全・保安院による審査RFS審査「使用済燃料中間貯蔵施設の安全審査における『自然環境』の考え方について」(平成20年10月27日原子力安全委員会了承)「自然環境の考え方」原子力規制委員会が平成25年4月10日にした安全目標に関する合意安全目標日本火山学会「巨大噴火の予測と監視に関する提言」火山学会提言 原子力安全委員会了承)「自然環境の考え方」原子力規制委員会が平成25年4月10日にした安全目標に関する合意安全目標日本火山学会「巨大噴火の予測と監視に関する提言」火山学会提言火山爆発指数(VolcanicExplosivityIndex)VEI阿蘇カルデラ、加久藤・小林カルデラ、姶良カルデラ、阿多カルデラ及び鬼界カルデラ周辺5カルデラShinjiNAGAOKA “THELATEQUATERNARYTEPHRALAYERSFROナガオカ論文 MTHECALDERAVOLCANOESINANDAROUNDKAGOSHIMABAY、SOUTHERNKYUSHUJAPAN”(1988)Druitt、 T. Hetal. “Decadaltomonthlytimescalesofmagmatransferandreservoirgrowthatacalderavolcano” (2012)ドルイット論文町田洋新井房夫「新編火山灰アトラス日本列島とその周辺」(2003(2011年第2刷発行))新編火山灰アトラス 別紙3火山ガイドの概要 1 総則本ガイドは、原子力発電所への火山影響を適切に評価するため、原子力発電所 に影響を及ぼし得る火山の抽出、抽出された火山の火山活動に関する個別評価、原子力発電所に影響を及ぼし得る火山事象の抽出及びその影響評価のための方法と確認事項をとりまとめたものである。 本ガイドは、新規制基準が求める火山の影響により原子炉施設の安全性を損なうことのない設計であることの評価方法の一例である。また、火山影響評価の妥 当性を審査官が判断する際に ものである。 本ガイドは、新規制基準が求める火山の影響により原子炉施設の安全性を損なうことのない設計であることの評価方法の一例である。また、火山影響評価の妥 当性を審査官が判断する際に、参考とするものである。 2 火山影響評価の流れ立地評価と影響評価の2段階で行う。 立地評価では、まず原子力発電所に影響を及ぼし得る火山の抽出を行い、影響を及ぼし得る火山が抽出された場合には、抽出された火山の火山活動に関する個 別評価、すなわち、設計対応不可能な火山事象が原子力発電所の運用期間中に影響を及ぼす可能性の評価を行う。影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価された場合は、火山活動のモニタリングと火山活動の兆候把握時の対応を適切に行うことを条件として、個々の火山事象に対する影響評価を行う。一方、設計対応不可能な火山事象が原子力発電所運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評 価されない場合は、原子力発電所の立地は不適と考えられる。 影響評価では、個々の火山事象への設計対応及び運転対応の妥当性について評価を行う。 3 原子力発電所に影響を及ぼし得る火山の抽出原子力発電所の地理的領域に対して、文献調査等で第四紀(258万年前から 現在までをいう。以下同じ。)に活動した火山を抽出する。第四紀に活動した火 山について、文献調査、地形・地質調査及び火山学的調査を行い、火山の活動履歴、噴火規模及びその影響範囲等を把握する。 次に、将来の火山活動可能性の評価を行う。この場合、地域特性、マグマの性質等により火山活動の特性や規模が異なることから、個々の火山噴出物の種類、分布、地形、規模、噴火タイプ、噴火パターン、活動間隔等を総合的に検討する 必要がある。なお、類似火山の活動を参照することも重要である。原子力発電所 規模が異なることから、個々の火山噴出物の種類、分布、地形、規模、噴火タイプ、噴火パターン、活動間隔等を総合的に検討する 必要がある。なお、類似火山の活動を参照することも重要である。原子力発電所に影響を及ぼし得るとして抽出された火山につき、後記4の原子力発電所の運用期間中における火山活動に関する個別評価及び後記5の火山活動のモニタリング及び異常を示す兆候を把握した時の対応の検討を行う。原子力発電所に影響を及ぼし得る火山が抽出されない場合は、後記6の降下火砕物の影響を評価する。 ⑴ 文献調査火山とその現象、噴出物に関する既存の文献を集約し、データベースを活用して、原子力発電所周辺の第四紀火山についての概略を把握し、最新の知見も参照の上、地理的領域における火山源の存在と分布を決定する。 ⑵ 地形・地質調査及び火山学的調査 地形調査では、既存の地形図、航空写真等を用いた判読及び海底地形データ等に基づき、火山地形の把握を行う。必要に応じて航空測量による最新データの取得を行う。 文献調査及び地形調査によって、活動位置・規模・様式や噴出時期等の活動履歴の評価に十分な情報が得られなかった場合、地質調査等を行い、原子力発 電所周辺の地理的領域の火山噴出物の噴出中心位置、噴出物の種類、活動時期、噴出物(堆積物)分布等の評価に必要な情報を収集する。 地質調査において、火山灰、火砕流、溶岩流等の火山噴出物(堆積物)が認められた場合、火山学的な調査を行う。 ⑶ 将来の火山活動可能性の評価 地理的領域にある第四紀火山から、文献調査、地形・地質調査及び火山学的 調査により、次の2段階の評価を行い、将来の活動可能性のある火山を抽出する。 ア完新世における活動の有無を確認する。完新世に活動 ある第四紀火山から、文献調査、地形・地質調査及び火山学的 調査により、次の2段階の評価を行い、将来の活動可能性のある火山を抽出する。 ア完新世における活動の有無を確認する。完新世に活動を行った火山は将来活動の可能性のある火山とする。 イ完新世に活動を行っていない火山については、当該火山の第四紀の噴火時 期、噴火規模、活動の休止期間を示す階段ダイアグラムを作成し、より古い時期の活動を評価する。 階段ダイアグラムにおいて、火山活動が終息する傾向が顕著であり、最後の活動終了からの期間が、過去の最大休止期間より長い等、将来の活動可能性がないと判断できる場合は、個別評価の対象外とする。それ以外の火山は、 将来の火山活動可能性が否定できない火山として、個別評価の対象とする。 4 原子力発電所の運用期間における火山活動に関する個別評価将来の活動可能性があると評価した火山について、原子力発電所の運用期間中において設計対応が不可能な火山事象を伴う火山活動の可能性の評価を行う。 ⑴ 設計対応不可能な火山事象 設計対応不可能な火山事象は、火山事象のうち、①火砕物密度流、②溶岩流、③岩屑なだれ・地滑り及び斜面崩壊、④新しい火口の開口並びに⑤地殻変動の5つの事象とする。設計対応不可能な火山事象については、検討対象火山と原子力発電所との間の距離が次の距離より大きい場合、その火山事象を評価の対象外とすることができる。 火砕物密度流 160㎞溶岩流 50㎞岩屑なだれ・地滑り及び斜面崩壊 50㎞火山性土石流・火山泥流及び洪水 120㎞火山から発生する飛来物(噴石) 10㎞ 火山ガス 160㎞ ⑵ 火山活動の可能性 り及び斜面崩壊 50㎞火山性土石流・火山泥流及び洪水 120㎞火山から発生する飛来物(噴石) 10㎞ 火山ガス 160㎞ ⑵ 火山活動の可能性評価上記3の調査の結果と必要に応じて実施する後記の地球物理学的及び地球化学的調査の結果を基に、原子力発電所の運用期間中における検討対象火山の活動の可能性を総合的に評価する。評価の結果、検討対象火山の活動の可能性が十分小さい場合には、過去の最大規模の噴火により設計対応不可能な火山事象 が原子力発電所に到達したと考えられる火山を抽出し、後記5の火山活動のモニタリングを実施し、運用期間中において火山活動を継続的に評価する。 検討対象火山の活動の可能性が十分小さいと判断できない場合には、⑶の火山活動の規模と設計対応不可能な火山事象の評価を実施する。 ⑶ 火山活動の規模と設計対応不可能な火山事象の評価 検討対象火山の調査結果から噴火規模を推定する。規模を推定できない場合は、検討対象火山の過去最大の噴火規模とする。 次に設置した噴火規模における設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達する可能性が十分小さいかを評価する。評価では、検討対象火山の調査から噴火規模を設定した場合には、類似の火山における設計対応不可能な火山事 象の影響範囲を参考に判断する。過去最大の噴火規模から設定した場合には、検討対象火山での設計対応不可能な火山事象の痕跡等から影響範囲を判断する。 いずれの方法によっても影響範囲を判断できない場合には、設計対応不可能な火山事象の国内既往最大到達距離を影響範囲とする。 設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達する可能性が十分小さいと 評価できない場合は、原子力発電所の立地は不適と 設計対応不可能な火山事象の国内既往最大到達距離を影響範囲とする。 設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達する可能性が十分小さいと 評価できない場合は、原子力発電所の立地は不適と考えられる。十分小さいと評価できる場合は、過去の最大規模の噴火により設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達したと考えられる火山については、モニタリング対象とし、後記5の火山活動のモニタリングを実施し、運用期間中に火山活動の継続的な評価を行う。 ⑷ 地球物理学的及び地球化学的調査 地球物理学的調査では、地震波速度構造、重力構造、比抵抗構造、地震活動及び地殻変動に関係する検討を実施し、マグマ溜まりの規模や位置、マグマの供給系に関する地下構造等について調査する。 地球化学的調査では、火山ガス(噴気)の化学組成分析、温度等の情報から地理的領域に存在する火山の火山活動を調査する。 5 火山活動のモニタリング個別評価により運用期間中の火山活動の可能性が十分小さいと評価した火山であっても、設計対応不可能な火山事象が発電所に到達したと考えられる火山に対しては、噴火可能性が十分小さいことを継続的に確認することを目的として運用期間中のモニタリングを行う。噴火可能性につながるモニタリング結果が観測さ れた場合には、必要な判断・対応をとる必要がある。 ⑴ 監視対象火山過去の最大規模の噴火により設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達したと考えられる火山を監視対象火山とする。 ⑵ 監視項目 一般的な項目として、①地震活動の観測(火山性地震の観測)、②地殻変動の観測(GPS等を利用し地殻変動を観測)、③火山ガスの観測(放出される二酸化硫黄や二酸化炭素量等の観測)が挙げられる。地震活動、地殻変 な項目として、①地震活動の観測(火山性地震の観測)、②地殻変動の観測(GPS等を利用し地殻変動を観測)、③火山ガスの観測(放出される二酸化硫黄や二酸化炭素量等の観測)が挙げられる。地震活動、地殻変動及び火山ガス状況等を適切な方法により監視する。監視は事業者自ら実施するものとするが、公的機関が火山活動を監視している場合には、そのモニタリング結 果を活用してもよい。 ⑶ 定期的評価モニタリング結果を定期的に評価し、当該火山の活動状況を把握し、状況に変化がないことを確認する。必要に応じて、地球物理学及び地球化学的調査を実施する。その際、火山活動状況のモニタリング結果の評価は、第三者(火山 専門家等)の助言を得る方針とする。 事業者が実施すべきモニタリングは、原子炉の運転停止、核燃料の搬出等を行うための監視であり、火山専門家のみならず、原子力やその関連技術者により構成され、透明・公平性のあるモニタリング結果の評価を行う仕組みを構築する。また、モニタリング結果については、公的な関係機関等に情報を提供し、共有することが望ましい。 ⑷ 火山活動の兆候を把握した場合の対処モニタリングにより火山活動の兆候を把握した場合の対処方針等、すなわち、①対処を講ずるために把握すべき火山活動の兆候と、その兆候を把握した場合に対処を講ずるための判断条件、②火山活動のモニタリングにより把握された兆候に基づき、火山活動の監視を実施する公的機関の火山の活動情報を参考に して対処を実施する方針、③火山活動の兆候を把握した場合の対処として、原子炉の停止、適切な核燃料の搬出等が実施される方針等を定める。 6 原子力発電所への火山事象の影響評価原子力発電所の運用期間中において設計対応不可能な火山事象によって原子力発電所 処として、原子炉の停止、適切な核燃料の搬出等が実施される方針等を定める。 6 原子力発電所への火山事象の影響評価原子力発電所の運用期間中において設計対応不可能な火山事象によって原子力発電所の安全性に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価された火山について、 それが噴火した場合、原子力発電所の安全性に影響を与える可能性のある火山事象を表1に従い抽出し、その影響評価を行う。 ただし、降下火砕物に関しては、火山抽出の結果にかかわらず、原子力発電所の敷地及びその周辺調査から求められる単位面積あたりの質量と同等の火砕物が降下するものとする。なお、敷地及び敷地周辺で確認された降下火砕物で、噴出 源が同定でき、その噴出源が将来噴火する可能性が否定できる場合は考慮対象から除外する。また、降下火砕物は浸食等で厚さが低く見積もられるケースがあるので、文献等も参考にして、第四紀火山の噴火による降下火砕物の堆積量を評価する。 抽出された火山事象に対しては、前記4及び5の調査結果等を踏まえて、原子 力発電所への影響評価を行うための、各事象の特性と規模を設定する。 ⑴ 降下火砕物ア降下火砕物の影響(ア) 直接的影響降下火砕物は、最も広範囲に及ぶ火山事象で、ごくわずかな火山灰の堆積でも、原子力発電所の通常運転を妨げる可能性がある。降下火砕物に より、原子力発電所の構造物への静的負荷、粒子の衝突、水循環系の閉塞及びその内部における磨耗、換気系、電気系及び計装制御系に対する機械的及び化学的影響、並びに原子力発電所周辺の大気汚染等の影響が挙げられる。 降雨・降雪などの自然現象は、火山灰等堆積物の静的負荷を著しく増大 させる可能性がある。火山灰粒子には、化学的腐食や給水の汚染を引き起こす成分(塩素イオン、フ 気汚染等の影響が挙げられる。 降雨・降雪などの自然現象は、火山灰等堆積物の静的負荷を著しく増大 させる可能性がある。火山灰粒子には、化学的腐食や給水の汚染を引き起こす成分(塩素イオン、フッ素イオン、硫化物イオン等)が含まれている。 (イ) 間接的影響降下火砕物は広範囲に及ぶことから、原子力発電所周辺の社会インフラ に影響を及ぼす。この中には、広範囲な送電網の損傷による長期の外部電源喪失や原子力発電所へのアクセス制限事象が発生しうることも考慮する必要がある。 イ降下火砕物による原子力発電所への影響評価降下火砕物の影響評価では、降下火砕物の堆積物量、堆積速度、堆積期間 及び火山灰等の特性などの設定、並びに降雨等の同時期に想定される気象条件が火山灰等特性に及ぼす影響を考慮し、それらの原子炉施設又はその付属設備への影響を評価し、必要な場合には対策がとられ、求められている安全機能が担保されることを評価する。 ウ確認事項 (ア) 直接的影響の確認事項 ① 降下火砕物堆積荷重に対して、安全機能を有する構築物、系統及び機器の健全性が維持されること。 ② 降下火砕物により、取水設備、原子炉補機冷却海水系統、格納容器ベント設備等の安全上重要な設備が閉塞等によりその機能を喪失しないこと。 ③ 外気取入口からの火山灰の侵入により、換気空調系統のフィルタの目詰まり、非常用ディーゼル発電機の損傷等による系統・機器の機能喪失がなく、加えて中央制御室における居住環境を維持すること。 ④ 必要に応じて、原子力発電所内の構築物、系統及び機器における降下火砕物の除去等の対応が取れること。 (イ) 間接的影響の確認事項原子力発電所外での影響(長期間の外部電源の喪失及び交通の途絶)を考慮し、燃料 発電所内の構築物、系統及び機器における降下火砕物の除去等の対応が取れること。 (イ) 間接的影響の確認事項原子力発電所外での影響(長期間の外部電源の喪失及び交通の途絶)を考慮し、燃料油等の備蓄又は外部からの支援等により、原子炉及び使用済燃料プールの安全性を損なわないように対応が取れること。 ⑵ 火砕物密度流 ア影響(ア) 直接的影響火砕物密度流は、火砕流、サージ及びブラストの総称で、高速で移動し、通常は高温(例えば、300℃超)であるため、その流路の建物等に及ぼす影響は深刻である。また、影響の範囲が広く地形によって抑制でき る程度が低く、通常はほとんどの地形的障害物を乗り越える。さらに、状況によっては地形的障害物を乗り越え、大きな水域を横断して流れることが分かっている。このような火砕物密度流の直接的影響は設計対応が不可能であることから、原子力発電所の立地は不適と考えられる。 (イ) 間接的影響 火砕流・火砕サージの影響は広範囲に及ぶことから、原子力発電所周辺 の社会インフラに影響を及ぼす。この中には、広範囲な送電網の損傷による長期の外部電源喪失や原子力発電所へのアクセスの制限が発生しうることも考慮する必要がある。 イ火砕物密度流による原子力発電所への影響評価原子力発電所の運用期間中に活動可能性のある火山それぞれに対する火砕 物密度流の評価では、対象火山の火砕物密度流の規模、堆積物量等の観点から原子力発電所への影響を示し、設計対応の可否を評価する。 ウ間接的影響の確認事項原子力発電所外での影響(長期間の外部電源の喪失及び交通の途絶)を考慮し、燃料油等の備蓄又は外部からの支援等により、原子炉及び使用済燃料 プールの安全性を損なわないように 接的影響の確認事項原子力発電所外での影響(長期間の外部電源の喪失及び交通の途絶)を考慮し、燃料油等の備蓄又は外部からの支援等により、原子炉及び使用済燃料 プールの安全性を損なわないように対応が取れること。 (中略) 7 附則この規定は、平成25年7月8日より施行する。評価方法は、本ガイドに掲げるもの以外であっても、その妥当性が適切に示された場合には、その方法を用い ることを妨げない。本ガイドは、今後の新たな知見と経験の蓄積に応じて、それらを適切に反映するように見直していくものとする。 以上
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