令和4(わ)43 公職選挙法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
令和4年11月11日 広島地方裁判所 福山支部
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判決文本文3,517 文字)

令和4年11月11日宣告令和4年(わ)第43号公職選挙法違反被告事件判決 主文 被告人を罰金15万円に処する。 その罰金を完納することができないときは、5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 被告人から30万円を追徴する。 理由 【罪となるべき事実】被告人は、令和元年7月21日施行の第25回参議院議員通常選挙に際し、広島県選出議員選挙の選挙人であり、かつ、同選挙に立候補する決意を有していたAの選挙運動者であるが、同人に当選を得しめる目的をもって、同人への投票及び投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬として供与されるものであることを知りながら、平成31年4月20日頃、広島県三原市(以下住所省略)B後援会事務所において、前記Aの配偶者であるCから、現金30万円の供与を受けた。 【法令の適用】罰条公職選挙法221条1項4号、1号刑種の選択罰金刑を選択労役場留置刑法18条追徴公職選挙法224条後段(被告人が判示犯行により供与を受けた現金30万円は、公職選挙法224条前段の収受した利益に該当するが、既に費消してその全部を没収することができないので、その価額を被告人から追徴する。)【量刑の理由及び公民権停止期間を短縮しなかった理由】─ ─ 1 本件は、被告人が、判示の参議院議員通常選挙に係る広島県選出議員選挙(以下「本件選挙」という。)に関し、その立候補の届出前に、D党の公認候補者として立候補を予定していたAへの投票及びAの選挙運動をすることの報酬として、Aの夫であり現職 選挙に係る広島県選出議員選挙(以下「本件選挙」という。)に関し、その立候補の届出前に、D党の公認候補者として立候補を予定していたAへの投票及びAの選挙運動をすることの報酬として、Aの夫であり現職の衆議院議員であったCから、現金30万円の供与を受けたという公職選挙法違反の事案である。 なお、被告人は、公判廷において、公訴事実は争わない旨述べつつも、上記現金の入った封筒につき、CがAへの投票等を明確に依頼することなくお祝いと述べて交付したことなどから、受け取った時点では、被告人が広島県議会議員選挙に当選したことについての当選祝いの趣旨で供与されたものと認識していた旨供述する。 しかし、被告人は、Cが判示の後援会事務所を訪問した時点で、本件選挙にAがD党の2人目の公認候補者として立候補を予定していたことや、CがAの夫であることについてはいずれも認識していたものである。これに加えて、Cは、被告人の上記県議会議員選挙の立候補選挙区とは異なる地域を選挙地盤としていたものであり、被告人と従前ほとんど関わりを有していなかったのに、Cの側から訪問の約束を取り付けた上で上記訪問をしたこと、被告人自身、Cによる上記訪問以外に、現職の国会議員から後援会事務所を直接訪問してもらったり当選祝いを受け取ったりした経験を有していなかったことをも踏まえると、少なくとも、被告人が、Cから上記封筒を交付された時点で、上記封筒につき本件選挙に係るAへの投票及びAの選挙運動をすることの報酬の趣旨、すなわち選挙買収の趣旨で供与されるものではないかという程度の認識を有していたことは合理的な疑いなく認められる。 そうすると、被告人の上記供述は本件の公職選挙法違反の成否を左右するものではない。 2 被告人は、本件当時、数年にわたって三原市議会議員を務めた後、広島県議会議 は合理的な疑いなく認められる。 そうすると、被告人の上記供述は本件の公職選挙法違反の成否を左右するものではない。 2 被告人は、本件当時、数年にわたって三原市議会議員を務めた後、広島県議会議員選挙に立候補し当選を果たしていたのであり、選挙により有権者から信任を 得て公職に就く者として、選挙の公正を害するような金銭等の供与については、たとえそれがいかなる立場の者からであったとしても毅然とした態度で拒否することがまさに期待されていたといえる。しかるに、被告人は、Cから現金が入った封筒を渡された際、上記のとおり、選挙買収の趣旨のものである可能性を認識していたにもかかわらず、最終的にはこれを受け取ったのであって、供与者が広島県内を選挙地盤として当選回数を重ねた現職の国会議員であったことや、被告人が一旦は上記封筒の受取を断ったことを考慮しても、本件犯行に及んだことについて相応の非難は避けられない。本件犯行により30万円という多額の現金が供与されたことからすると、被告人が、本件犯行後実際にはAとは別の候補者の支援に回ったことを踏まえても、本件犯行時点では、国会議員を選出する重要な選挙たる本件選挙の公正が害される危険性も相当程度あったことは否定できない。 以上によると、本件の犯情は軽いとはいえないが、他方で、被告人には、犯情以外の点として、上記認識の点を措いても、公判廷で事実を争わず、反省の言葉を述べており、今後再び公職に就く際は選挙の公正を害する違法行為は厳に慎む旨約束していること、自身に対する検察官の取調べ等が開始された後ではあるものの、本件犯行により収受した現金額と同額の30万円をCの議員事務所宛てに郵送して返還していること、前科前歴はないこと、検察審査会の起訴相当の議決を受けて令和4年2月に広島県議会議員を辞職していること の、本件犯行により収受した現金額と同額の30万円をCの議員事務所宛てに郵送して返還していること、前科前歴はないこと、検察審査会の起訴相当の議決を受けて令和4年2月に広島県議会議員を辞職していること、これまで公職の立場で市民や県民のために誠実に職務に従事しており、検察官はその信用性を争うものの、検察官による被告人に対する処分についての嘆願書に多数の署名が集まっていることなど、酌むべき事情もある。 そうすると、被告人に対しては、主文の罰金刑に処するのが相当である。 3 ところで、弁護人は、本件の犯情その他の情状からすると、被告人の公民権停止期間は短縮されるべきである旨主張するので、この点について補足する。 上記のとおり、被告人は、Cから判示の現金を受け取った時点で、CからAへの投票やAの選挙運動をすることを明確に依頼されておらず、上記現金が選挙買 収の趣旨で供与されるものではないかとの認識を有していたにとどまる。また、被告人に対する検察官による最初の取調べが行われてから本件の略式起訴がされるまで、検察審査会の議決を経るなどして約2年の期間が経過しているが、被告人は、この間、早期の段階でCからの現金の収受の事実を捜査機関に認めていたにもかかわらず、長期にわたり処分が決定されず不安定な立場に置かれていたことからすると、もっと早く起訴されていれば公民権停止期間が短縮されなくとも次々回の統一地方選挙に立候補できたと述べていることについては、その率直な心情を述べるものとして理解できなくはない。しかし、本件は選挙犯罪のうち、選挙の公正を直接かつ著しく害する買収罪を構成するものであることに加え、上記のとおり、本件犯行当時選挙の公正確保に一層配慮すべき公職という立場にあったこと、本件犯行による供与額が多額であることからすると、上記認識の点を 著しく害する買収罪を構成するものであることに加え、上記のとおり、本件犯行当時選挙の公正確保に一層配慮すべき公職という立場にあったこと、本件犯行による供与額が多額であることからすると、上記認識の点をもってしても、本件の犯情は、公民権停止期間の短縮を考慮できるほどに軽いとはいい難い。長期にわたり処分が決定されなかったことについても、早期に起訴がなされたという仮定的な前提に立った場合、公民権停止期間が前倒しになるのみならず、実際とは相当異なる事実経過をたどったはずであり、そうしたあり得る事実経過の変化を捨象して、公民権停止期間が後ろ倒しとなったという結果の不当性のみを過度に重視するのは相当とは解されない。そして、上記犯情等を前提に、上記の本件公訴提起に至る経過や公民権停止による被告人への影響を適切に斟酌し、上述した犯情以外に酌むべき事情を考慮しても、被告人の公民権停止期間を短縮するのが相当とは認め難いというべきである。 以上の理由により、被告人の公民権停止期間を短縮しないこととした。 (検察官野田洋平及び同森山智文出席)(求刑罰金15万円、主文同旨の追徴)令和4年11月11日広島地方裁判所福山支部 裁判長裁判官松田克之 裁判官清水俊貴 裁判官牛濵裕輝

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