- 1 -平成30年(あ)第1528号有印私文書偽造,同行使,ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件令和2年7月30日第一小法廷判決 主文 本件上告を棄却する。 理由 検察官の上告趣意は,原判決のストーカー行為等の規制等に関する法律(平成28年法律第102号による改正前のもの。以下「ストーカー規制法」という。)2条1項1号所定の「見張り」に関する判断は,所論引用の福岡高等裁判所平成29年(う)第175号同年9月22日判決・高等裁判所刑事裁判速報集平成29年282頁と相反するとともに,判決に影響を及ぼすべき法令の違反があり,これを破棄しなければ著しく正義に反するというのである。 原判決は,被告人が,別居中の当時の妻(以下,単に「妻」という。)が使用する自動車にGPS機器をひそかに取り付け,その後多数回にわたって同車の位置情報を探索して取得した行為は,ストーカー規制法2条1項1号の「通常所在する場所」の付近における「見張り」に該当しないとして,上記行為に同号を適用した第1審判決には法令適用の誤りがある旨の判断を示している。この判断は,同様の事案において,同号所定の「見張り」該当性を肯定した所論引用の判例と相反する判断をしたものというべきである。 しかしながら,ストーカー規制法2条1項1号は,好意の感情等を抱いている対象である特定の者又はその者と社会生活において密接な関係を有する者に対し,「住居,勤務先,学校その他その通常所在する場所(住居等)の付近において見張り」をする行為について規定しているところ,この規定内容及びその趣旨に照らすと,「住居等の付近において見張り」をする行為に該当するためには,機器等を用いる場合であ る場所(住居等)の付近において見張り」をする行為について規定しているところ,この規定内容及びその趣旨に照らすと,「住居等の付近において見張り」をする行為に該当するためには,機器等を用いる場合であっても,上記特定の者等の「住居等」の付近という一定の場所におい- 2 -て同所における上記特定の者等の動静を観察する行為が行われることを要するものと解するのが相当である。そして,第1審判決の認定によれば,被告人は,妻が上記自動車を駐車するために賃借していた駐車場においてGPS機器を同車に取り付けたが,同車の位置情報の探索取得は同駐車場の付近において行われたものではないというのであり,また,同駐車場を離れて移動する同車の位置情報は同駐車場付近における妻の動静に関する情報とはいえず,被告人の行為は上記の要件を満たさないから,「住居等の付近において見張り」をする行為に該当しないとした原判決の結論は正当として是認することができる。 したがって,刑訴法410条2項により,所論引用の判例を変更し,原判決を維持するのを相当と認めるから,所論の判例違反は,結局,原判決破棄の理由にならない。 よって,同法408条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官山口厚裁判官池上政幸裁判官小池裕裁判官木澤克之裁判官深山卓也)
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