平成13(わ)1488 占有離脱物横領,毒物及び劇物取締法違反,業務上過失傷害,道路交通法違反

裁判年月日・裁判所
平成14年5月10日 神戸地方裁判所
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判決文本文4,427 文字)

判決平成14年5月10日神戸地方裁判所平成13年(わ)第1488号,平成14年(わ)第142号,第286号占有離脱物横領,毒物及び劇物取締法違反,業務上過失傷害,道路交通法違反被告事件 主文 被告人を懲役1年10月に処する。 未決勾留日数中70日をその刑に算入する。 神戸地方検察庁で保管中のペットボトル入りシンナー3本(平成14年領第136号符号2,同年領第14号符号2,同年領第202号符号1)及びポリ袋入りシンナー1袋(同年領第14号符号1)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 平成13年10月4日午後4時45分ころ,兵庫県加古川市A町Ba番地のb先路上において,興奮,幻覚又は麻酔の作用を有する劇物であって政令で定めるトルエンを含有するシンナーをみだりに吸入し,かつ,その残量約9ミリリットル(神戸地方検察庁平成14年領第14号符号1はその鑑定残量)及び同様に政令で定めるトルエン,メタノールを含有するシンナー約190ミリリットル(同号符号2はその鑑定残量)をみだりに吸入する目的で所持した第2 同年11月9日午後11時50分ころ,同市A町Bc番地のd先路上において,興奮,幻覚又は麻酔の作用を有する劇物であって政令で定めるトルエンを含有するシンナーをみだりに吸入した第3 同月20日午前8時50分ころ,同県高砂市Ce丁目f番g号所在のD電力高砂火力発電所敷地内において,興奮,幻覚又は麻酔の作用を有する劇物であって政令で定めるトルエンを含有するシンナー約45ミリリットル(神戸地方検察庁平成14年領第202号符号1はその鑑定残量)をみだりに吸入する目的で所持した て,興奮,幻覚又は麻酔の作用を有する劇物であって政令で定めるトルエンを含有するシンナー約45ミリリットル(神戸地方検察庁平成14年領第202号符号1はその鑑定残量)をみだりに吸入する目的で所持した第4 同年12月17日午前零時ころ,同市E町Fh番地所在の高砂市総合体育館北側駐車場において,先に氏名不詳者が窃取して同所に置き去りにしたG管理に係る普通乗用自動車1台(時価約70万円)を発見し,自己の用に供する目的で同所から同車を乗り去って領得し,もって,これを横領した第5 同月20日午後2時28分ころ,業務として前記普通乗用自動車を運転し,パトロールカーの追尾を逃れようとして,神戸市H区Ii丁目j番k号付近道路をJ方面(西)からK区方面(東)に向け進行中,信号待ちのため停止しているL(当時37歳)運転の普通乗用自動車の後方に一時停止したものの,警察官による検挙を免れるためさらに逃走しようと企て,クラクションを鳴らして前記L運転車両を右前方に移動させた上,同車左側方を通過しようとしたが,同車と車道左側に設置されたガードレールとの間には約1.8メートルしかなく,同車左側方を安全に通過するための十分な間隔がなかったのであるから,同車左側方を通過するのを差し控えるべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,逃走を急ぐあまり,自車を急発進させて約15キロメートル毎時の速度で進行し,前記L運転車両の左側方を強引に通過しようとした過失により,同車左後部に自車右前部を衝突させ,よって,前記Lに加療約1週間を要する腰背部打撲,外傷性頚部症候群の傷害を,前記L運転車両の同乗者M(当時68歳)に加療約1週間を要する頭部外傷,外傷性頚部症候群の傷害を,それぞれ負わせた第6 同日午後2時29分ころ,業務として前記普通乗用自動車を運転し,パトロールカーの追尾を逃 両の同乗者M(当時68歳)に加療約1週間を要する頭部外傷,外傷性頚部症候群の傷害を,それぞれ負わせた第6 同日午後2時29分ころ,業務として前記普通乗用自動車を運転し,パトロールカーの追尾を逃れようとして,同市J区N町l丁目m番n号先交差点南東角の路外ガソリンスタンド敷地を東から南に向け進行した上,南北道路に進出して南進するに当たり,道路状況に応じて,適宜速度を調節し,ハンドルを的確に操作すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,パトロールカーの追尾から逃れるのを急ぐあまり,減速徐行することなく,約40キロメートル毎時の速度で南北道路に進出したため,中央分離帯を超えて北行き車線に進出しそうになって,あわててハンドルを左に急転把した過失により,自車を左前方に逸走させ,折から同道路南行き第1車線に停止中のO(当時50歳)運転の普通貨物自動車右後部に自車左前部を衝突させ,よって,同人に加療約1週間を要する左肩・腰部挫傷の傷害を負わせた第7 公安委員会の運転免許を受けないで,同日午後2時39分ころ,同区Po丁目p番q号付近道路において,前記普通乗用自動車を運転した第8 前記第7記載の日時場所において,興奮,幻覚又は麻酔の作用を有する劇物であって政令で定めるトルエンを含有するシンナー約80ミリリットル(神戸地方検察庁平成14年領第136号符号2はその鑑定残量)をみだりに吸入する目的で所持したものである。 (証拠の標目)(省略)(弁護人の主張に対する判断)弁護人は,判示第5及び第6の各犯行当時,被告人が,その各犯行前に吸入していたシンナーの影響によって,心神耗弱の状態にあった旨主張する。 関係各証拠によれば,なるほど,被告人は,判示第5及び第6の各犯行当時,その各犯行前に吸入していたシンナーの影響下にあったことや,被告人のこの各犯 の影響によって,心神耗弱の状態にあった旨主張する。 関係各証拠によれば,なるほど,被告人は,判示第5及び第6の各犯行当時,その各犯行前に吸入していたシンナーの影響下にあったことや,被告人のこの各犯行時の記憶に曖昧な部分のあることは認められるけれども,被告人は,パトロールカーに追尾されていると知るまでは,特に事故を起こすことなく普通に運転を続けていたものであること,被告人が警察官から停止を求められたのに従わなかったのは,判示第4の犯行によって得た自動車をシンナーを吸入しながら無免許運転していたためであること,判示第5及び第6の各犯行は,被告人がパトロールカーの追尾を逃れ,警察官に検挙されるのを避けるためのものであり,強引あるいは危険な運転であったとはいえ,逃走するためには合理的なものであったことなどもまた認められる上,被告人の判示第5及び第6の各犯行当時の記憶に曖昧な部分があったとしても,そのような状況下においての犯行であることからすれば,特に不思議ではないのであるから,被告人が,この各犯行当時,是非を弁識しそれに従って行動する能力を著しく欠くような状態に陥っていなかったことは明白であるから,弁護人の前記主張は採用できない。 (法令の適用)罰条判示第1ないし第3,第8の各行為毒物及び劇物取締法24条の3,3条の3,同法施行令32条の2(判示第1の行為は包括して)判示第4の行為刑法254条判示第5の行為各被害者ごとに平成13年法律第138号附則2条により同法による改正前の刑法211条前段判示第6の行為同じく改正前の刑法211条前段判示第7の行為道路交通法118条1項1号,64条観念的競合の処理刑法54条1項前段,10条(判示第5の各罪は1罪として犯情の重いLに対する業 行為同じく改正前の刑法211条前段判示第7の行為道路交通法118条1項1号,64条観念的競合の処理刑法54条1項前段,10条(判示第5の各罪は1罪として犯情の重いLに対する業務上過失傷害罪の刑で処断)刑種の選択いずれも懲役刑併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第5の罪の刑に法定の加重)宣告刑懲役1年10月未決勾留日数の算入刑法21条(70日)没収刑法19条1項1号,2項本文訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,被告人が,4回にわたりシンナーを吸入あるいは吸入目的で所持し,また,占有離脱物である普通乗用自動車を横領して,これを無免許運転し,その際,パトロールカーに追尾され逃走中,2か所で2台の車両に自車を衝突させ,その運転者等3名に傷害を負わせたという事案である。 被告人は,16,7歳のころからシンナー吸入を繰り返し,平成10年5月と平成11年10月にはシンナー吸入目的所持の罪によりそれぞれ罰金刑に処せられたことがあったにもかかわらず,1か月半程の間に判示第1ないし第3の各犯行を重ね,その処分のいまだ決まらないうちに,シンナーを吸入しながら,判示第5ないし第7の各犯行に及ぶとともに判示第8の犯行に及んだものであって,被告人のシンナーに対する依存性の程度は顕著であるだけでなく,その吸入の態様は重大な結果を招きかねない非常に危険なものであること,被告人は,かつて普通免許を取得していたが,平成8年3月に共同危険行為等により運転免許取消の行政処分を受けておりながら,その後もしばしば無免許運転を繰り返した挙げ句,判示第4の占有離脱物である普通乗用自動車を横領して,判示第7の無免許運転 ,平成8年3月に共同危険行為等により運転免許取消の行政処分を受けておりながら,その後もしばしば無免許運転を繰り返した挙げ句,判示第4の占有離脱物である普通乗用自動車を横領して,判示第7の無免許運転に至ったものであって,被告人の無免許運転の常習性は著しいこと,被告人は,前記普通乗用自動車を無免許運転中,パトロールカーの追尾から逃走するため,判示第5及び第6の各犯行に及んだものであって,運転の態様は強引あるいは危険なものであって,過失の程度は高いこと,被告人の側から判示第4ないし第6の各犯行の被害者らになんらの損害賠償等の措置も取られていないことなどを考え併せると,犯情はよくなく,被告人の刑事責任は重いというべきである。 してみると,判示第4の犯行の被害自動車は,判示第5及び第6の各犯行時の事故によって大破しているとはいえ,一応被害者に還付されていること,判示第5及び第6の各犯行の被害者らの傷害の程度は幸いいずれも比較的軽いものであったこと,被告人が現在では本件各犯行を反省し,今後はシンナー吸入等を止めると述べていること,被告人の父親も被告人の指導監督を約束していること,被告人はまだ24歳と若年であること,被告人にはこれまで禁錮以上の刑に処せられた前科がないこと,本件で4か月半以上の期間身柄拘束を受けていることなどの,被告人のために酌むべき事情を考慮しても,主文の実刑はやむを得ないところである。 (検察官の科刑意見懲役2年6月)よって,主文のとおり判決する。 平成14年5月10日神戸地方裁判所第12刑事係甲 裁判官森岡安廣 ・ 所第12刑事係甲 裁判官 森岡安廣

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