- 1 -主文 原告の被告に対する,Aに9億円及びこれに対する平成17年1月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求するよう求める訴えを却下する。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,A及びBに対してそれぞれ9億円及びこれに対する平成17年1月15日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員,株式会社横浜銀行に対して4億5000万円及びこれに対する同日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員,株式会社みずほ銀行及び川崎信用金庫に対してそれぞれ2億2500万円及びこれに対する同日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を請求せよ。 第2事案の概要 事案の要旨(,「」。),(「」川崎市以下たんに市ともいうはC株式会社以下訴外会社という)が第三セクター方式で設立されるに際して,株式会社横浜銀行(以。 下「横浜銀行」という,株式会社みずほ銀行(当時の株式会社第一勧業銀。)行。以下「みずほ銀行」という)及び川崎信用金庫(これらの金融機関を以。 下「本件各金融機関」という)との間で,本件各金融機関の訴外会社に対す。 る融資について,本件各金融機関が損失を被った場合には,その損失を補償す- 2 -る旨の協定(以下「本件協定」という)を締結した。 。 その後,川崎市は,訴外会社が破産宣告を受けたことから,本件各金融機関との間で,横浜銀行に対して4億5000万円,みずほ銀行(当時は株式会社みずほプロジェクト及び川崎信用金庫に対してそれぞれ2億2500万円以)(下,併せて「本件損失補償金」という)を支払う旨の和解契約(以下「本件。 和解契約」という)を締結し,同金額を支払った。 。 本件は,川崎市内に事務 信用金庫に対してそれぞれ2億2500万円以)(下,併せて「本件損失補償金」という)を支払う旨の和解契約(以下「本件。 和解契約」という)を締結し,同金額を支払った。 。 本件は,川崎市内に事務所を置く社団である原告が,本件協定は「法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(以下「財政援助制限法」という)」。 3条に違反し,無効であるから,本件損失補償金の支出は違法な公金の支出であるとして,被告に対し地方自治法242条の2第1項4号に基づき,①本件協定を締結した当時の川崎市長であるA(以下「A元市長」という,及。)び本件損失補償金の支出命令を発した川崎市長であるB(以下「B市長」という)に,それぞれ9億円及びこれに対する支払日の翌日からの遅延損害金の。 賠償を請求するように求めるとともに,②本件各金融機関に対して不当利得として上記各損失補償金及びこれに対する同日以降の利息の支払を請求するよう求めた事案である。 基礎となる事実( )当事者等 ア原告は,会則において「川崎市を中心に地方公共団体等の不正・不当な行為を監視し,それらを是正すること」を目的として掲げた,川崎市内に事務所を置く権利能力なき社団である。 イA元市長は,平成13年11月まで川崎市長の職にあり,平成6年当時- 3 -もその職にあった者である。 B市長は,平成13年11月19日に川崎市長に就任し,現在までその職にある者である。 ウ訴外会社は,港湾運送事業,コンテナターミナル及びそれに付随する関連施設の運営,管理,清掃及び警備保障,海上運送事業の代理業,通関業等を行うことを目的として,平成6年5月10日に第三セクター方式によ。 ,,,り設立された株式会社であるなお川崎市は訴外会社の設立に際して資本金6億円のうち3億1000万円を出資し 関業等を行うことを目的として,平成6年5月10日に第三セクター方式によ。 ,,,り設立された株式会社であるなお川崎市は訴外会社の設立に際して資本金6億円のうち3億1000万円を出資した(甲1,4,25。 )( )本件協定の締結 ア本件協定の締結に先立って,平成6年3月29日開催の平成6年第1回川崎市議会定例会において「仮称C株式会社の事業資金借入れに伴う金,融機関等に対する損失補償」について,期間を平成6年度から債務消滅時までとし,限度額を9億円とすることを内容とする債務負担行為等に係る同年度川崎市港湾整備事業特別会計予算が可決された(甲50。 )イ本件各金融機関,訴外会社及び川崎市は,同年5月10日,以下のとおり訴外会社事業資金融資に関する協定書本件協定を取り交わした甲,()(3,乙23。なお,同協定の締結は港湾局長の専決により行われた(甲)49。 )第1条(融資限度額)本件各金融機関の訴外会社に対する融資額は,毎年度川崎市特別会計予算に定める川崎市の訴外会社に対する損失補償額を限度とする。ただし,個別案件の融資の時期,金額については,金融経済情勢等勘案し,- 4 -その都度,本件各金融機関及び訴外会社が協議により決定する。 第2条(融資比率)前条の融資限度額に対する本件各金融機関の融資比率は,横浜銀行が50%,みずほ銀行及び川崎信用金庫がそれぞれ25%とし,それぞれ分担融資する。 第3条(融資条件)この協定に基づく本件各金融機関の訴外会社に対する融資条件は,次の各号による。 ( )使途は,訴外会社の定款に定める業務に関する資金とする。 ( )期間,償還方法,利率及び利息の支払方法は別に差入れる借入証 書及び借入申込書に記載のとおりとする。 第4条(融資形式)1項融資の は,訴外会社の定款に定める業務に関する資金とする。 ( )期間,償還方法,利率及び利息の支払方法は別に差入れる借入証 書及び借入申込書に記載のとおりとする。 第4条(融資形式)1項融資の形式は,証書貸付又は手形貸付とする。 ,,,2項訴外会社は本件各金融機関に対しあらかじめ銀行取引約定書あるいは信用金庫取引基本契約証書を,また融資の都度,借入証書及び借入申込書を差入れるものとする。 3項訴外会社は,前項の約定書及び証書の各条項を遵守する。 第5条(損失補償)1項この協定に基づく本件各金融機関の訴外会社に対する融資につい,,,て本件各金融機関が損失を被った場合川崎市は次項以下によりその損失を補償するものとする。 (「」。)2項訴外会社がこの協定に基づく借入債務以下本債務という- 5 -について,本件各金融機関の催告にもかかわらず,その最終弁済期限後3か月を経過しても,本債務全額(利息を含む。以下同じ)。 を弁済しなかったときは,本件各金融機関は川崎市に対し,その被った損失の補償を請求する。 3項本件各金融機関は,訴外会社が解散等によって期限の利益を失っ,,た場合は本債務全額についてその期限が到来したものとみなして前項により川崎市に損失の補償を請求するものとする。 4項川崎市は,前2項により本件各金融機関から損失補償の請求を受けたときは,遅滞なく損失補償金を本件各金融機関に交付する。この場合,損失補償として交付する金額は本債務残高と交付の日までの未払利息及び遅滞利息の合計額とする。 第6条(報告・計画書の提出)訴外会社は各事業年度ごとに,過年度の決算報告書,当該年度の事業計画及び資金計画を本件各金融機関に提出するものとする。 第7条(協定の有効期限)この協定は,平成6年5月10日から平成 計画書の提出)訴外会社は各事業年度ごとに,過年度の決算報告書,当該年度の事業計画及び資金計画を本件各金融機関に提出するものとする。 第7条(協定の有効期限)この協定は,平成6年5月10日から平成7年3月31日まで効力を有するものとする。ただし,この契約期間満了の1か月前までに当事者のいずれか一方から解約の意思表示をしないときは,さらに1年間同一条件をもって延長させるものとし,以後もまた同様とする。 第8条(その他)この協定に定めた事項の変更,その他必要と認められる事項については,その都度,本件各金融機関,訴外会社及び川崎市が協議のうえ決定- 6 -するものとする。 ウ本件各金融機関は,訴外会社に対し,設備資金及び事業資金等として,平成6年5月19日に1億円(横浜銀行が5000万円,みずほ銀行及び川崎信用金庫がそれぞれ2500万円,同年11月15日に6億円(横)浜銀行が3億円,みずほ銀行及び川崎信用金庫がそれぞれ1億5000万円,平成7年3月24日に1億円(横浜銀行が5000万円,みずほ銀))(。 行及び川崎信用金庫がそれぞれ2500万円を貸し付けた合計8億円以下「本件貸付」という。甲73の2。 )( )その後の経緯 ア訴外会社は平成7年9月7日付けで川崎市長に対し以下の内容の訴,,「外会社事業資金借入れに伴う金融機関への経営指導念書の提出方依頼について」と題する書面(甲79)を提出した。 「当社事業資金の借入債務について川崎市の損失補償がなくなったことから,借入条件等について協調融資団の代表幹事銀行の横浜銀行ほかと協議をしてまいりましたが,今後の融資について信用融資(無担保)で川崎市から経営指導念書を差入れることで合意しましたので念書の発行方よろしくお願い申し上げます。 なお,念書については,本件各金融機 協議をしてまいりましたが,今後の融資について信用融資(無担保)で川崎市から経営指導念書を差入れることで合意しましたので念書の発行方よろしくお願い申し上げます。 なお,念書については,本件各金融機関にそれぞれ発行していただきたく併せてお願い申し上げます」。 イ川崎市は,同年9月25日付けで本件各金融機関に対し,以下の内容の「訴外会社事業資金借入に対する指導育成について」と題する書面(甲51,83)を提出した。なお,その後も川崎市はこれと同旨の文書を本件- 7 -各金融機関に対して定期的に差し入れた(甲52ないし57,84ないし88。 )「川崎市におきましては,平成7年度からの訴外会社の事業資金借入については,自治省からの通達により,その損失補償を見合わせることにいたしました。 つきましては,誠に勝手なお願いとは存じますが,同社の借入金債務に関し,川崎市は貴行に対し,ご迷惑をおかけしないよう,同社の経営に関し充分な指導・監督を行う所存でございますので,貴行のご融資に関し,何卒格別なるご高配を賜りますようお願い申し上げます」。 ウ訴外会社は,本件貸付後も,本件各金融機関から借入れを行い,借入元本総額は最終的に54億円に達したが,川崎市は,上記のとおりの方針により,前記( )アの特別会計予算のほかには予算措置をとらなかった(乙 24,29。 )( )訴外会社の破産 川崎市は,平成16年1月26日,横浜地方裁判所川崎支部に対し,訴外会社に対して本件協定に基づく求償権等を有する債権者として,同社の破産(),,手続開始の申立てをするとともに甲69保全管理命令の申立てを行い同裁判所は,同日,訴外会社につき保全管理人による管理を命じる旨の決定をした(乙25。 )同裁判所は,同年3月12日午後5時,訴外会社を破産者とする するとともに甲69保全管理命令の申立てを行い同裁判所は,同日,訴外会社につき保全管理人による管理を命じる旨の決定をした(乙25。 )同裁判所は,同年3月12日午後5時,訴外会社を破産者とする旨決定し(甲70,同年7月6日及び同年12月14日に開催された債権者集会を)経て(負債総額は約68億円と報告された,同日,破産財団をもって破。)- 8 -産手続の費用を支弁するのに不足すると認め,破産手続を廃止する旨決定した(乙26,27。 )( )本件和解契約 ア川崎市と本件各金融機関は協議の上,平成16年12月27日,訴外会社に対する事業資金の融資に関する損失補償について,以下のとおり和解した(本件和解契約。乙31,32。なお,訴外会社は,本件貸付後,)本件各金融機関との間でその弁済期を変更する旨の合意を繰り返していたが,みずほ銀行に対しては平成14年11月1日,横浜銀行及び川崎信用金庫に対しては平成15年5月1日に期限の利益を喪失し,既にそれぞれ(,,,,の債務については弁済期が到来していた甲58 73の2 乙24。 )第1条本件協定の規定に基づく損失補償に係る損失の額の確定日は,訴外会社の破産廃止の決定の日とする。 第2条川崎市は,本件各金融機関の訴外会社に対する事業資金の融資に関する損失補償として,横浜銀行に対し金4億5000万円,みずほ銀行に対し金2億2500万円,川崎信用金庫に対し金2億2500万円の支払義務があることを認め,これらを和解成立日から1か月以内に,本件各金融機関の指定する各口座に振り込む方法により支払う。 第3条本件各金融機関は,川崎市に対し,本件に関するその余の請求を放棄- 9 -する。 第4条川崎市と本件各金融機関との間には,本件に関し,本和解条項に定めるほ 座に振り込む方法により支払う。 第3条本件各金融機関は,川崎市に対し,本件に関するその余の請求を放棄- 9 -する。 第4条川崎市と本件各金融機関との間には,本件に関し,本和解条項に定めるほか,何らの債権債務の存在しないことを相互に確認する。 第5条本件和解費用は,各自の負担とする。 イ平成17年1月7日,上記アの合計9億円(本件損失補償金)について支出命令が発令され,同月14日に支出された(乙33。 )( )住民監査請求及び監査の結果(甲72,73) 原告は,同年3月7日,川崎市監査委員に対し,本件損失補償金の支出は財政援助制限法3条が禁止する保証契約の脱法的支払であって違法,不当な公金の支出であるとして,本件協定の締結責任者であるA元市長及び本件協定に基づく現実の支払責任者であるB市長に対し,損害賠償請求を行うことを求めて,住民監査請求をした(以下「本件監査請求」という。 。)川崎市監査委員は,同年4月26日付けで,原告に対し,原告の上記監査請求のうちA元市長に対し損害賠償請求をすることを求める部分については監査請求期間を徒過し,地方自治法242条2項ただし書にいう「正当な理由」も認められないとして却下し,その余の請求については,監査委員4名の意見が一致せず合議が整わなかった旨の監査結果を通知した。 第3 争点 本件監査請求は,監査請求期間を遵守してされたものかどうか。 また,本件監査請求が監査請求期間後にされたとすれば,この点について原- 10 -告には地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由があるかどうか。 本件協定は財政援助制限法3条に反する違法なものであるかどうか。 また,本件損失補償金が支出されたことについて,A元市長及びB市長は市に対し損害賠償をすべき義務があるかどうか,本件各金融機関は市に対し 本件協定は財政援助制限法3条に反する違法なものであるかどうか。 また,本件損失補償金が支出されたことについて,A元市長及びB市長は市に対し損害賠償をすべき義務があるかどうか,本件各金融機関は市に対し本件損失補償金を不当利得として返還すべきかどうか。 第4争点に関する当事者の主張 争点1(監査請求期間の遵守等)について【被告の主張】( )監査請求期間の起算点について ア(ア)住民監査請求は財務会計上の行為又は怠る事実を対象として行われるものであり,行為についての監査請求は,当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過したときは,これをすることができないものとされている(地方自治法242条2項本文。 )そして,ここにいう行為とは,支出負担行為,支出命令及び支出(狭義)という個々の具体的な財務会計上の行為をいうから,監査請求期間はこれらの各行為ごとに当該行為のあった日から各別に計算される(最高裁判所平成14年7月16日第三小法廷判決。 ),,また上記の行為のあった日とは一時的行為について当該行為の日を行為の終わった日とは継続的行為について当該行為が終わった日を指すところ,契約の締結行為は一時的行為であるから,これを対象とする監査請求は契約締結日から1年内に監査請求しなければならない(最高裁判所平成14年10月15日第三小法廷判決。 )- 11 -(イ)原告は,①本件協定を締結したこと(支出負担行為)及び②その履行行為としての支払(支出命令)が違法であるとして,本件監査請求をしている。 しかしながら,上記①についていえば,本件協定の締結は支出負担行為たる契約の締結行為であり,その効力が継続性を有しているとはいえ一時的行為であって,1年の監査請求期間は契約の締結日から起算される。したがって,本件協定が締結されたのは平 件協定の締結は支出負担行為たる契約の締結行為であり,その効力が継続性を有しているとはいえ一時的行為であって,1年の監査請求期間は契約の締結日から起算される。したがって,本件協定が締結されたのは平成6年5月10日であるから,原告が本件監査請求をした平成17年3月7日には既に1年以上が経過していることになる。 また,上記②については,支払自体は同年1月14日(支出命令は同月7日)にされているが,支出負担行為の違法を理由とする履行行為についての監査請求は支出負担行為のときから計算されるべきであるから,この点についての監査請求も①の場合と同様に監査期間を経過した後にされたものということになる。 (ウ)以上のとおり,本件監査請求はいずれも監査請求期間が経過した後にされたものであるから,原告は適法な監査請求を経ておらず本件訴えはいずれも不適法である。 イ原告は,A元市長のした支出負担行為(本件協定の締結)に関して,最高裁判所平成9年1月28日第三小法廷判決(以下「平成9年最判」という)を援用して,職員の違法な財務会計行為によって地方公共団体が被。 った損害の補てんを求める監査請求期間は,地方公共団体に当該職員に対する実体法上の請求権が発生し,これを行使することができることになっ- 12 -た日を基準として起算すべきであると主張する。 しかし,上記主張は以下のとおり失当である。 (ア)地方自治法242条2項本文が1年間の監査請求期間を定めた趣旨は,普通地方公共団体の機関,職員の行為について,いつまでも争い得る状態にしておくことは法的安定性の見地から見て好ましくないことによる。 支出負担行為について,支出命令,支出(狭義)がされて損害補てんの監査請求をし得るまで監査請求をし得るとすれば,本件事案のように支出負担行為時から相当長期を経過しても 見て好ましくないことによる。 支出負担行為について,支出命令,支出(狭義)がされて損害補てんの監査請求をし得るまで監査請求をし得るとすれば,本件事案のように支出負担行為時から相当長期を経過してもなお支出負担行為を争い得ることとなり,法的安定性を害し,法が1年の監査請求期間を定めた趣旨に反する。 (イ)住民監査請求制度は,違法・不当な財務会計上の行為又は怠る事実について予防・是正を監査委員に請求する権能を住民に与え,また,住民訴訟は違法な財務会計上の行為について予防・是正を裁判所に請求する権能を住民に与えるものであるが,これらの予防・是正の請求を損害の補てんの請求に限定しているわけではない。 すなわち,広義の支出は,支出負担行為,支出命令,支出(狭義)という一連の手続で行われるが,住民は,支出(狭義)がされた上での損害補てんの監査請求しか行えないわけではなく,支出負担行為がされる前においてもその防止を求める監査請求ができるし,支出負担行為がされれば,支出命令がなされる前であってもその是正を求める監査請求ができ(地方自治法242条1項,これにより抜本的な解決を図ること)- 13 -ができる。 住民は,監査請求においてその請求が認められなければ住民訴訟を提起することになるが,住民訴訟手続においても,支出負担行為について監査請求を経由していれば,本件協定締結当時の平成14年法律第4号による改正前の地方自治法(以下「旧地方自治法」ないし「旧法」という)242条の2第1項4号により「当該行為の相手方に対する法律。 関係不存在確認」の訴えを提起できるし,そうでなくとも同項1号により当該支出負担行為に基づく支出命令や支出の差止めの訴え等を提起することができ,これにより抜本的な解決を図ることができる。そしてこれら訴訟の継続中に,支出命令や支 きるし,そうでなくとも同項1号により当該支出負担行為に基づく支出命令や支出の差止めの訴え等を提起することができ,これにより抜本的な解決を図ることができる。そしてこれら訴訟の継続中に,支出命令や支出がされた場合には,住民は新たな監査請求を行うまでもなく,当該職員に対する損害賠償の訴えないしは当該行為の相手方に対する不当利得返還の訴えに,訴えを変更することができる。 上記のとおり本件で問題となる広義の支出についていえば,支出命令や支出(狭義)がされて当該職員に対する損害補てんの請求ができるようになる時期まで支出負担行為についての監査請求を許容しなければ住民監査請求制度の目的に反することにはならないし,そのように解しなければ住民監査請求,住民訴訟に関する住民の利益を不当に害することになるわけではない。 (ウ)原告が引用する平成9年最判の事案は,財務会計上の行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とする住民監査請求について判示したものであ- 14 -り,本件監査請求は損失補償金の支出が違法・不当な公金の支出に該当するとしてされているものであって,事案を異にする。上記最判は,住民監査請求をする余地がないにもかかわらず,監査請求期間が進行するのは不合理であることを理由とするものであり,本件のように本件協定締結時に住民監査請求ができた場合にまで適用される法理ではない。 なお,原告は,除斥期間に関する最高裁判決を引用するが,監査請求期間について判断したものではないから,原告の主張を裏付けるものではない。 ウまた,支出命令についての監査請求期間についていうと,前記アで述べ,,,たとおり地方自治法242条2項本文の監査請求期間は支出負担行為支出命令,支出(狭義)について,それぞれの行 はない。 ウまた,支出命令についての監査請求期間についていうと,前記アで述べ,,,たとおり地方自治法242条2項本文の監査請求期間は支出負担行為支出命令,支出(狭義)について,それぞれの行為のあった日から各別に計算されるが,この理は,支出負担行為,支出命令,支出(狭義)に対する各監査請求がそれぞれ別個の監査請求としてされる場合に限って成立する。 すなわち,例えば,ある支出負担行為が違法であるとしてされる支出の防止を求める監査請求と,当該支出がされた後に支出をした職員に対する損害賠償若しくは相手方に対する返還請求すべき旨の監査請求は,少なくとも後者の監査請求において支出負担行為の違法のみ主張されている場合には同一の監査請求と考えるべきである。 このような場合,支出負担行為については,既に監査請求期間を経過して監査請求をし得ないのに,支出命令,支出(狭義)に対する監査請求であるとして,支出負担行為の違法をその監査請求で審査できるとすれば,- 15 -支出負担行為の監査請求期間の起算点を実質的に支出(狭義)の日とすることになり,地方自治法242条2項本文の期間制限の趣旨に反することになってしまい,不合理である。 本件監査請求のうち,本件損失補償金の支出命令に係る監査請求(前記ア(イ)の②)は,専ら支出負担行為たる本件協定の締結行為の違法を理由とするものであるから,上記の理由により,同監査請求は監査請求期間を徒過してされたものと解すべきであり,不適法というべきである。 ( )「正当な理由」の有無について 原告は,A元市長がした支出負担行為(本件協定の締結)との関係では,仮に本件監査請求が監査請求期間後のものであるとしても地方自治法242条2項ただし書にいう「正当な理由」があると主張している。 しかし,上記の「正当な理由」とは,当 為(本件協定の締結)との関係では,仮に本件監査請求が監査請求期間後のものであるとしても地方自治法242条2項ただし書にいう「正当な理由」があると主張している。 しかし,上記の「正当な理由」とは,当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができたと解されるときから相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断されるべきものである(最高裁判所平成14年9月12日第一小法廷判決。 )本件協定の締結については,議会で債務負担行為の議決を得ており,議会の議事録,予算書を閲覧すれば誰でもこれを知ることができるし,本件協定の締結に係る決裁文書及び契約書も情報公開手続によりその内容を誰でも知ることができる。また,原告は,別件住民訴訟における平成15年7月16日付け準備書面(乙34)をもって,本件協定の締結が違法であるとの主張を行っており,その時点において上記支出負担行為の存在及び内容を知って- 16 -いた。 原告は,現実の損害が発生したことが分からなければ監査請求ができない旨を主張するが,上記「正当な理由」の有無に係る「相当な期間」は「当該行為を知ることができたと解されるとき」から起算されるものであり,現実の損害が発生したときから起算されるものではない。 以上のとおり,本件監査請求には「正当な理由」があるとはいえない。 【原告の主張】( )監査請求期間の起算点について ア本件監査請求は,平成17年1月にされた支出命令及びその支出行為を基本にしていえば,地方自治法242条2項本文所定の監査請求期間の要件を満たしている。 イ(ア)被告は,A元市長のした支出負担行為(本件協定の締結)についての監査請求期間は当該行為がされた平成6年5月10日から起算される 治法242条2項本文所定の監査請求期間の要件を満たしている。 イ(ア)被告は,A元市長のした支出負担行為(本件協定の締結)についての監査請求期間は当該行為がされた平成6年5月10日から起算されると主張している。 しかし,職員の違法な財務会計行為によって地方公共団体が被った損害の補てんを求める監査請求期間は,地方公共団体の当該職員に対する実体法上の請求権が発生し,これを行使することができることになった日を基準として起算すべきである(平成9年最判。同最判の事案は,)地方公共団体の首長個人に対する損害賠償請求権の行使を怠る事実に関する事案であるが,当該損害賠償請求権はいまだ発生していないという事実にかんがみ,監査請求の対象となるべき右損害賠償請求権の行使を怠る事実も存在しないと判示した。 - 17 -損害賠償請求権は発生しているが怠る事実は存在しないという事案とは異なり,損害賠償請求権そのものが発生していない場合には,怠る事,,実の相手方に対するものであろうと当該職員に対するものであろうとこれを地方公共団体が行使することも,また住民が代位行使することも不可能である。平成9年最判は,損害賠償請求権の行使を求める監査請求の申立期間は,当該請求権が成立したときから起算されるという当然の法理を確認したものであって,この法理は怠る事実に固有のものではない。 したがって,地方自治法242条2項にいう「当該行為のあった日」とは,当該行為によって直ちに損害が発生するという関係が存在しない場合は,損害の発生時点をいうと解すべきである。 本件では平成17年1月14日に市収入役が合計9億円を本件各金融機関に支払ったことによって損害が具体的に発生したのであるから,A元市長のした支出負担行為(本件協定の締結)を理由として損害の補てんを求める本件監査請求 1月14日に市収入役が合計9億円を本件各金融機関に支払ったことによって損害が具体的に発生したのであるから,A元市長のした支出負担行為(本件協定の締結)を理由として損害の補てんを求める本件監査請求の起算点は上記日時であり,本件監査請求はそれから1年内にされているから適法である。 (イ)被告は,平成9年最判の射程範囲は極めて限定的であると主張するようであるが,地方自治法242条2項と同様に「不法行為のとき」,を起算点とする除斥期間の規定(民法724条後段)について,近年の最高裁判決が伝統的な下級審判決や通説に反して損害発生時説を採用するに至っていることは,本件においてもしんしゃくされるべきである。 被告がいう法的安定性という概念は,権利主張の客観的可能性の要件- 18 -を前提として初めて許容されるものである。監査請求期間や除斥期間の起算点に関する最高裁判決が損害発生説を採用したことは,権利主張の客観的可能性を重視すべきであるとしたものである。 (ウ)被告が主張するように,旧法242条の2第1項4号には「当該,行為若しくは怠る事実の相手方に対する法律関係不存在確認の請求」という訴訟類型を認める規定があった。しかし,同条同項の柱書には,1号請求(当該行為の差止請求)の要件について「当該行為により普通,地方公共団体に回復の困難な損害を生ずるおそれがある場合に限る」という厳格な制限が規定されていた(この制限は改正法によって除去された。 )本件に即していえば,川崎市が損失補償契約の履行を迫られる現実的危険性が発生していなければ,市に「損害が生ずるおそれ」そのものが否定され,1号請求は認められないこととなる。 そして,4号後段の法律関係不存在確認請求によれば,損害発生の蓋然性や回復困難性の有無にかかわらず,同じ目的を達することができる 生ずるおそれ」そのものが否定され,1号請求は認められないこととなる。 そして,4号後段の法律関係不存在確認請求によれば,損害発生の蓋然性や回復困難性の有無にかかわらず,同じ目的を達することができるというのであれば,1号請求に特別の要件を設定した趣旨は没却されることになる。したがって,旧法上の法律関係不存在確認請求は1号請求を適法ならしめる程度の要件が存在した場合に初めて,確認の利益ないし争訟の成熟性等の訴訟要件の具備が認められると解釈されるべきである。 そうすると,本件においては,住民としては旧法上の法律関係不存在確認請求をすることができたことを理由にして,本件協定締結の日を起- 19 -算点として監査請求期間を考えるべきであるなどとはいえない。 ウなお,被告は,B市長のした支出命令についての監査請求期間は本件協定締結日から起算すべき旨を主張するが,この点は争う。 ( )「正当な理由」の有無について アA元市長のした支出負担行為(本件協定の締結)との関係では,仮に本件監査請求が監査期間経過後にされたものであるとすれば,その点については法242条2項ただし書所定の「正当な理由」がある。 すなわち,本件協定書は,その第5条の規定からして,融資金につき本件各金融機関が損失を被った場合に市がその損失を補償するというもので,具体的には,訴外会社が弁済期限後3か月を経過した時点で債務を完済しないときは,市は本件各金融機関の請求に対し,遅滞なく損失補償金。 ,,を交付するというものであるすなわち支出負担行為である本件協定はそれを締結したこと自体から直ちに市に支払義務が発生するものではない。 したがって,違法な支出負担行為に基づいて市がA元市長に対して損害賠償請求権を取得するのは,現実に損害が発生した場合に限られるから,損害の発生(現 体から直ちに市に支払義務が発生するものではない。 したがって,違法な支出負担行為に基づいて市がA元市長に対して損害賠償請求権を取得するのは,現実に損害が発生した場合に限られるから,損害の発生(現実の支出)を待って支出負担行為を行った者の責任を追及する場合,これが当該行為(本件協定の締結)の日から1年を経過した後になることには「正当な理由」がある。 イ被告は「正当な理由」の有無に係る「相当な期間」は,当該行為を知る,ことができたと解されるときから起算されるものであり,現実の損害が発生したときから起算されるものではないと主張する。 - 20 -しかし,本件監査請求は抽象的一般的に事前予防として損失補償金の支出差止めを求めているのではなく,具体的な損失の発生を捉えて監査請求を行っているのであって,抽象的一般的に違法な支出負担行為を捉えて監査請求を行うのとは別に,上記のような具体的な損失を捉えて監査請求をする途が保障されていなければならない。被告の主張は失当である。 争点2(本件損失補償金の支出の違法性の有無等)について【原告の主張】( )訴外会社の設立及び破たんに至る経緯について ア東京湾内には,港湾法2条2項にいう特定重要港湾として東京港,横浜港,川崎港及び千葉港があるが,川崎港及び千葉港は東京港及び横浜港と比べてコンテナ埠頭等の施設の整備状況が全く異なっており,入港するコンテナ船の数も1隻当たりの積荷も少なく,実際にも,川崎港にコンテナ埠頭が必要であるという需要もなかった。 訴外会社が設立されるに際して,マーケットリサーチ(市場調査)を行い,その需要見込につき検討した形跡はなく,審議会での審議等も希望的推測に基礎を置く非実践的検討に終始している。すなわち,訴外会社は川崎港におけるコンテナ事業の実態把握も,調査分析もなく 調査)を行い,その需要見込につき検討した形跡はなく,審議会での審議等も希望的推測に基礎を置く非実践的検討に終始している。すなわち,訴外会社は川崎港におけるコンテナ事業の実態把握も,調査分析もなく設立されたもので,その破たんは必至であった。訴外会社の財務状態の悪化は偶発的なものではなく,構造的・不可避的なものである。したがって,訴外会社はその設立自体が誤りであり,その点に公益性,公共性を認めることはできない。 イ訴外会社は,設立後,毎年赤字が継続し,早晩倒産に至ることは明らか- 21 -であった。原告としても,川崎市の訴外会社に対する支援の差止めを求めて住民監査請求を繰り返したが,川崎市は,訴外会社の事業は継続可能であるとか,好転する見通しがある等として,訴外会社に対する支援を継続し,累積赤字を増大させ,市財政の損失額を増大させた。原告は,平成14年12月24日,川崎市が訴外会社の株主として会社整理開始の申立てをしないという怠る事実が違法であることの確認を求めて,住民監査請求をしたところ,川崎市は,その失政を自認し,訴外会社の破産申立てを行うに至ったのである。 ( )財政援助制限法の立法趣旨等について ア財政援助制限法が,日本国憲法の制定に先だって急ぎ制定された背景に被告が指摘するような事情があったことは,あえて争わない。 しかし,日本国憲法83条以下の規定により,大日本帝国憲法が許容していた「法令或ハ予算外」の財務処理を禁止するという原則が確立されたにもかかわらず財政援助制限法は廃止されなかったばかりか,昭和38年の地方自治法の改正に併せて,自治大臣の債務保証適格法人指定権の導入(3条の改正)など適宜の修正を施しつつ,現在まで維持されている。したがって,財政援助制限法は既にその目的を達して意義を失っているとする被告の主 改正に併せて,自治大臣の債務保証適格法人指定権の導入(3条の改正)など適宜の修正を施しつつ,現在まで維持されている。したがって,財政援助制限法は既にその目的を達して意義を失っているとする被告の主張は失当である。 財政援助制限法を一般法として存置しつつ,公有地拡大推進法(25条,地方道路公社法(28条)等の個別法により保証契約の「解禁」が)されているのが現状である。財政援助制限法の意義が消滅し,公的債務保証は特別な制限を受けるべきものでないという原則が存在するとすれば,- 22 -上記の個別立法は意味を失う。 イ財政援助制限法3条は,政府や地方公共団体が会社その他の法人の「債務については,保証契約をすることができない」として保証契約を原則的に禁止し,例外として「財務大臣(地方公共団体のする保証契約にあっては,総務大臣)の指定する会社その他の法人の債務」の保証については,これを許容している。 すなわち,訴外会社が,川崎市から債務保証を適法に受けるためには,自治大臣(平成6年当時)による財政援助制限法3条の指定を受ける必要があった。 訴外会社は,平成6年当時も,その後も自治大臣に対し同法3条の指定,,申請を行なっておらず当然のことながら自治大臣の指定を受けておらずまた,実質的にも同指定を受けるだけの高度の公益性を有していない。A元市長も本件各金融機関もこの事実を認識していながら,あえて違法な本件協定を締結したのである。 ウまた,自治省は平成6年4月26日付自治財第20号事務次官通知において「第三セクターの債務に係る損失補償契約等の債務負担行為の設定,は,将来の財政への影響も十分考慮して慎重に行うこと(甲80)とし」て,警鐘を鳴らしているが,本件協定はその直後に杜撰な検討のもとに締結されたもので,A元市長の責任は免れない。そ 担行為の設定,は,将来の財政への影響も十分考慮して慎重に行うこと(甲80)とし」て,警鐘を鳴らしているが,本件協定はその直後に杜撰な検討のもとに締結されたもので,A元市長の責任は免れない。その後も,川崎市は上記通知にもかかわらず,本件各金融機関に対して経営指導念書を安易に発行し続けたのである。 ( )本件協定の性質 - 23 -,「」本件協定は形式上財政援助制限法の規制を避けるためあえて債務保証といわず「損失補償」という文言を用いて脱法的な工夫を試みているが,以下のとおり,契約内容を具体的に検討すれば,その実質的内容においてまぎれもなく法の禁止する保証契約に当たる。 ア本件各金融機関の訴外会社に対する融資限度額は,川崎市の特別会計予算に定める損失補償額を限度とする(第1条)とされ,これを受けて川崎市が川崎市議会の議決を得て確定したその限度額は9億円であるから,この金額は訴外会社の本件各金融機関からの債務総額の約6分の1にすぎない。したがって,本件の損失補償額は主たる債務額の限度を超えることはなく,その実体は保証契約と同一である。 また,本件協定の目的,態様も,本件各金融機関の融資金について,本件各金融機関が「損失を被った場合」に市がその「損失を補償」するというもので,その実質において保証契約と同一である。 イまた,被告は,本件協定の場合は主債務者の債務不履行があった場合に直ちに履行責任が生じるわけではなく,損害が確定する必要がある旨を主張している。 しかし,本件協定にあっては「損失補償」の用語を使いつつも訴外会,社(主たる債務者)が弁済期限後3か月を経過した時点で債務を完済しないときは川崎市は本件各金融機関の請求に対し「遅滞なく損失補償金を交付する」となっており,正に主たる債務の遅滞がその支払要件となっている たる債務者)が弁済期限後3か月を経過した時点で債務を完済しないときは川崎市は本件各金融機関の請求に対し「遅滞なく損失補償金を交付する」となっており,正に主たる債務の遅滞がその支払要件となっているのであり,その実質は保証債務にほかならない。 ( )損失補償契約の違法性について - 24 -ア被告は,本件協定は損失補償契約である旨を主張するが,仮に,本件協定が損失補償契約であったとしても,損失補償契約も財政援助制限法により禁止されていると解すべきである。 イ地方自治法199条7項は,第1文で損失補償を含む「財政的援助を与えているもの」が監査対象になる旨を規定し,これを受けて第2文において「借入金の元金又は利子の支払を保証しているもの」についても「ま,た同様とする」旨を規定している。 損失補償は,債務保証と異なり債務者に対する求償権を当然には伴わない,最終的な出捐である。したがって,相手方に対する地方公共団体の関与の密接性はむしろ,債務保証の場合よりも強いとみるべきであるからこそ,地方自治法199条は監査権の対象として,まず損失補償先を挙げ,これに次いで債務保証を挙げているのである。 すなわち,財政援助制限法が保証契約を制限していることは,当然のこととして保証契約よりも公的主体の関与の密接性が高い損失補償契約の制限を含むのである。 ウ被告は,求償権行使につき,保証債務の場合は契約上の明文がなくても行使できるが,損失補償の場合は明文規定がなければ求償権行使はできないとして,その違いを強調するが,これは保証債務以上に損失補償のリスクが大きいことを自白する主張にほかならない。法律上の大小関係に例えれば,求償権に係る保証債務の要件は当然にこの大小関係に包摂されるものである。したがって,損失補償の法的性格も,その限りにおいては,一部求 いことを自白する主張にほかならない。法律上の大小関係に例えれば,求償権に係る保証債務の要件は当然にこの大小関係に包摂されるものである。したがって,損失補償の法的性格も,その限りにおいては,一部求償権行使のできる場合のそれは保証債務のそれと同一といってよい。 - 25 -エ被告が援用する昭和29年の自治省行政課長回答(乙53)は,信用保証協会に対する損失補償の可否に関するものであった。 ,,信用保証協会はその設立について主務大臣の認可を要するのみならず業務方法書の作成・変更についても,その認可を要し(信用保証協会法8条,33条,主務大臣は協会に対し役員の解任権を含む広汎な監督権を)有している。すなわち地方道路公社や土地開発公社なみの法的規制を受ける団体である。このような特殊な団体に対する財政的援助の可否の議論をただちに一般論として用いるのは不適切である。 むしろ「新自治用語辞典」には「行政実例によれば,損失補償につ,,いては,財政援助制限法3条の規制するところではないとし,会社その他の法人に対して地方公共団体が損失補償契約を締結することはできると解している。このようなことから形式上は禁止されていない損失補償契約に名を借りて,実質上は債務保証を行っているというのが,現実の姿であるといわれている。これは明らかに一種の脱法行為と認めざるを得ない」。 と指摘されている。 ( )本件協定の効力等について ア上記のとおり,本件協定は財政援助制限法3条の禁止する保証契約の脱法であり,同条は公の秩序を構成するものであるから,民法90条の規定のみならず,地方自治法2条16項及び17項の規定に照らしても,本件協定は無効である。 ,,被告は最高裁判所昭和62年5月19日第三小法廷判決を引用するが同最判の事案は,競争入札に付すべきところ のみならず,地方自治法2条16項及び17項の規定に照らしても,本件協定は無効である。 ,,被告は最高裁判所昭和62年5月19日第三小法廷判決を引用するが同最判の事案は,競争入札に付すべきところを随意契約によって町有地を- 26 -売却したというものであり,随意契約を制限する規定(地方自治法234条2項,同法施行法令167条の2)は執行機関を拘束する内部規範であって,その違反の効果が契約の相手方に当然に及ぶとはいえないものであった。財政援助制限法3条の規定は,対外的な行為を禁止する規定になっており,契約の相手方からみてもその意味も一義的に明確である。この条項の違反は,公序良俗違反として当然と無効と解すべきもので,上記最判の射程が及ぶものではない。 イ本件協定が無効である以上,支出命令はその要件(地方自治法232条,),の4第1項同法施行令160条の2第1号を欠く違法なものであるし支出行為もまた違法である。 ( )両市長の責任及び本件各金融機関の不当利得 A元市長は本件協定を締結した責任者であるし,また,B市長は本件協定が違法,無効であってこれを履行する義務がないことを認識してしかるべきであったのに,これを漫然と履行したのであるから,両市長は,職務上の義務(地方自治法138条の2)に違反するものとして責任を免れない。 また,本件各金融機関は,適法な原因なく本件損失補償金の支払を受けたものであって,その全額が不当利得である。 【被告の主張】( )訴外会社の事業の公共性及び公益性について ア川崎港は,石油コンビナートに代表される製造業を中心とする重厚長大,,型産業に貢献する工業港としてわが国の高度経済成長を支えるとともに川崎市経済・産業の発展,雇用の創出などに多大な貢献をしてきた。 - 27 -しかしながら,経済 る製造業を中心とする重厚長大,,型産業に貢献する工業港としてわが国の高度経済成長を支えるとともに川崎市経済・産業の発展,雇用の創出などに多大な貢献をしてきた。 - 27 -しかしながら,経済・産業活動のボーダレス化や,生産機能の空洞化の進行など,産業構造や貿易構造が大きく転換するに至り,川崎港においても,工業港としての機能のみでは将来にわたる発展が望めないことから,商港機能の強化が求められることとなった。また,1966年にコンテナ運送が実用化されて以降,世界的なコンテナリゼーションの急速な進展により,わが国の産業活動及び市民生活に必要な消費財,中間財のほとんどがコンテナ輸送の形態をとっていることなども踏まえ,市民の豊かな消費生活の実現と,川崎市産業活動の活性化・国際競争力を支えるコンテナ輸送の受け入れ拠点として,コンテナターミナルの整備が求められた。地元港運業界においても,川崎港の発展と川崎港における自らの事業活動は密接不可分であり,地元港運事業者の就労の場を確保するといった面からもコンテナ事業の推進が求められていた。 人や物資の輸送を担う港湾はインフラとして極めて重要であり,低コストで安定的な輸送サービスの供給が求められる。海上輸送及び港湾物流サービスは,その利用者が不特定多数に及び,船会社によって運ばれる貨物の需要者は川崎市民全般,さらに首都圏住民に及んでいることから,港湾事業は公共性の高い公益事業である。 イ川崎市としては,コンテナターミナルの整備を決定するに当たって,荷主・船社のヒアリング,経済動向の予測等の様々なデータに基づき,その成立可能性について多方面からの調査・検討を実施し,これらを踏まえ,港湾法3条の3の規定に基づき,学識経験者,地元経済関係者,川崎市議会議員,港湾関係者等で構成される川崎港港湾審議会,さら き,その成立可能性について多方面からの調査・検討を実施し,これらを踏まえ,港湾法3条の3の規定に基づき,学識経験者,地元経済関係者,川崎市議会議員,港湾関係者等で構成される川崎港港湾審議会,さらには運輸大臣- 28 -の諮問機関である港湾審議会の審議を経て,昭和58年8月改訂の川崎港港湾計画(乙8)において,昭和65年を目標年次として東扇島地区に公共コンテナふ頭を整備することを正式に位置付けた。 平成8年4月に供用開始した川崎港コンテナターミナルは,目標数値は下回るものの,平成11年末までは取扱貨物量を伸ばしていき,地元企業の事業活動を支えるとともに,市民生活関連物資を取り扱う重要な都市基盤施設として機能してきたが,わが国港湾が相対的にその地位を低下させている状況下において,訴外会社は開業以来,厳しい経営状況を強いられてきた。 ウ以上のとおり,コンテナターミナルの整備は,十分な調査・検討が行われ,公益性・公共性の有無を合理的に判断して実施されたものであり,実際にも様々な効果を川崎市ひいては川崎市民にもたらしたのである。 ( )本件協定締結の経緯,理由 ,,ア川崎市はコンテナターミナル供用開始前の訴外会社には収入源がなく経営基盤が脆弱であったため,その必要な資金を調達するために当時の川崎市のシンジケート団の代表幹事であった横浜銀行に訴外会社の事業説明を行うとともに,融資の協力要請を行った。横浜銀行からは,みずほ銀行(当時の第一勧業銀行)及び川崎信用金庫と協調体制をとれば融資は可能であるが,訴外会社は担保を供することができないから,川崎市の損失補償が必要であるとの回答があった。 イ川崎市としては,公益性,公共性の高いコンテナターミナル事業を推進するためには,訴外会社の設立が必要不可欠であること,また,同社の運- 29 ,川崎市の損失補償が必要であるとの回答があった。 イ川崎市としては,公益性,公共性の高いコンテナターミナル事業を推進するためには,訴外会社の設立が必要不可欠であること,また,同社の運- 29 -営には事業資金の調達が必要であることから,これを受け入れ,川崎市特別会計予算に定める損失補償額を限度として損失補償を行うことにした。 ウ川崎市は,上記損失補償を行うために,平成6年第1回川崎市議会定例会において「仮称C株式会社の事業資金借入れに伴う金融機関等に対する損失補償」に係る限度額9億円の債務負担行為の設定を内容とする平成6年度川崎市港湾整備事業特別会計予算案を提出し,同年3月29日,同予算案は賛成多数で可決された。 エ川崎市は,上記議決を得て,訴外会社の設立日である同年5月10日に本件各金融機関と本件協定を締結したのである。 ( )財政援助制限法の制定経緯及びその趣旨について ア地方公共団体の会社その他の法人に対する保証契約は財政援助制限法により原則として禁止されているところであるが,損失補償契約については同法の規制するところではないとされ,かえって,会社その他の法人のために地方公共団体が損失補償契約を締結し,債務を負担することは地方自治法においても予定されているところである(同法199条7項,221条3項。そして,上記損失補償契約は現実に多くの地方公共団体におい)て締結されている。 イ(ア)財政援助制限法は,戦後間もない昭和21年9月25日に占領軍総司令部の圧倒的な影響の下で,国策会社の活動を停止させ,その復活を阻止するために制定されるに至ったものであり,その趣旨も政府等の行う財政運営を予算として一元的に取り扱うことにあった。 すなわち,占領軍総司令部は種々の覚書(メモランダム)を発して,- 30 -わが国の財政運 に制定されるに至ったものであり,その趣旨も政府等の行う財政運営を予算として一元的に取り扱うことにあった。 すなわち,占領軍総司令部は種々の覚書(メモランダム)を発して,- 30 -わが国の財政運営に強く関与しており,その一つとして昭和21年4月3日に発せられた「政府保証債及び借入金に関する司令部覚書」と題する覚書(乙48)が財政援助制限法制定の契機となっている。 戦前の日本政府は,国策会社等に対して積極的な財政援助を与えるため,予算によらないで国策を遂行することができる予算外国庫制度を多用していたところ,上記覚書は戦前の日本経済を支えてきたこれら国策会社の活動を停止させ,その復活を阻止しようとする占領軍総司令部の意図に基づくものである。 (イ)昭和21年月30日,石橋湛山大蔵大臣は,衆議院本会議におい て,財政援助制限法に関する提出理由の説明を行い「国策)會社其,(ノ他ノ法人等ニ對シマシテ,法令或ハ豫算外契約ニ基ク各種ノ財政援助」,,「,」ヲ與ヘてきたが終戦に伴い此ノ財政援助ハ之ヲ廢止或ハ制限するとし,説明の最後に占領軍総司令部からの覚書が発せられていることを付け加えている(乙51。 )このように,財政援助制限法の趣旨は,国会(ないし地方議会)の議決に基づかない財政援助の廃止・制限にあったのであり,財政援助を全般的に制限しようとしていたものでない。 昭和25年7月28日に行われた大蔵委員会においても「農業協同,組合に必要な所要資金を県会の決議によって,いざ損害が生ずるおそれ,」がある場合県でその損害を負担するのだということを決議した場合にメモランダム(占領軍総司令部の覚書)に反するかという質問に対し,政府委員が「公共団体においてそういうことをおやりになっても,決,- 31 -してこれはメモランダ のだということを決議した場合にメモランダム(占領軍総司令部の覚書)に反するかという質問に対し,政府委員が「公共団体においてそういうことをおやりになっても,決,- 31 -してこれはメモランダムには触れないのではと思っております」と,。 公共団体の議決を経た財政援助について,是認する答弁をしている(乙52。 )ウそもそも,国にあっては憲法の制定により,また地方公共団体にあって,()は地方自治法の制定によりすべて財政については国会ないし地方議会の議決に基づくことになった。 上記イの経緯からすれば,財政援助制限法は既にその目的を達して意義を失っているものであり,たんに同法が存在していることから形式的に保証契約に限って制限されているにすぎない。したがって損失補償契約については同法により制限されているとは解されないのである。 そして,上記の財政援助制限法に関する政府の解釈を背景に,同法制定後に制定された地方自治法において,同法199条7項及び同法221条3項で地方公共団体が損失補償契約を締結することを予定し,また昭和29年5月12日の「損失補償については,財政援助制限法3条の規制する」(。 ところではないとの自治省行政課長回答がされているのである乙53なお,原告は,上記回答は信用保証協会に対する損失補償契約に限られるかのように主張しているが,そのような限定的なものでないことはその文言から明らかである。 。)原告は,昭和38年に財政援助制限法の改正がされていることを指摘するが,これは旧3条の「大蔵大臣」の下に「地方公共団体のする保証契(約にあっては,自治大臣」との文言を加えたもので,各省大臣間の権限)配分を変更したにすぎない。これは,財政援助制限法が廃止されずに残っ- 32 -ていたため,昭和35年に「自治庁設置法の 契(約にあっては,自治大臣」との文言を加えたもので,各省大臣間の権限)配分を変更したにすぎない。これは,財政援助制限法が廃止されずに残っ- 32 -ていたため,昭和35年に「自治庁設置法の一部を改正する法律」により自治大臣が置かれることになったことから,昭和38年の地方自治法改正に当たって関係規定整備の一環としてされたものである。公有地拡大推進法等の規定も,形式的に財政援助制限法が残っているために個別的に除外規定を設けているにすぎない。 エ本件協定は,予算の一環として債務負担行為についての市議会の議決を経ており,財政援助制限法が意図する国会(ないし地方議会)の議決に基づかない財政援助でもなく,財政援助制限法に反することはない。 そして,このような解釈に基づき,全国的に地方公共団体の損失補償契約は広く行われているのである。 ( )保証契約と損失補償契約の相違について ア損失補償契約は,保証契約と異なり主たる債務の存在を前提としない独立の契約であって,損害担保的な役割を果たすものである。損失補償は,保証債務が主たる債務と同一性を有し,債務者の債務不履行につき全責任を負うのと異なり,その本質上損害が生じて初めてこれを補てんするというものであり,債務者が破産したとか,そこまでに至らなくとも客観的に債権の回収がほとんど見込めないとかいう事態となって,初めて損失が生,。 じたことになりこの段階に至ってからその損失を補てんするものであるこのように損失補償契約は保証契約とは内容,効果において異なる契約である。 上記のような私法上の損害担保との位置付けで地方公共団体が行う損失補償契約は,財政援助の一手段として,例えば対象となる事業の持つ公益- 33 -的事情から採算上の問題がある場合や地方公共団体からの損失補償がなければ条件のよい の位置付けで地方公共団体が行う損失補償契約は,財政援助の一手段として,例えば対象となる事業の持つ公益- 33 -的事情から採算上の問題がある場合や地方公共団体からの損失補償がなければ条件のよい融資を受けることが困難となるような特定の事業の安定又は発展を奨励・助成するために締結する契約であるとされている。 本件協定も,訴外会社が行うコンテナターミナル事業が多大の公益性,公共性を有し,川崎市の産業活動を活性化するための重要な施策であったことから,川崎市が地元海運業者とともに訴外会社を支えることは当然のことであり,そのために必要不可欠な措置として締結されたものである。 イ原告は,損失補償契約の場合は求償権を行使できないから保証契約以上にリスクが大きく,保証契約と同様に財政援助制限法により禁止されていると主張する。 しかし,損失補償契約については,民法459条,462条の規定の適用はないため,学説上では当然には求償権を行使し得ないとする説が一般的であるが,損失補償により債権者が損失の補てんを受けた場合に,当該損失補償の対象となった債権を当該債権者が保有し続ける合理的理由はなく,損失補償契約の趣旨からして,損失補償が実行された場合にはその対象となった債権は地方公共団体に移転する旨の合意がされていると解することも十分可能である。また,いずれにしても,損失補償が実行されるのは損失の確定すなわち損失補償の対象となった債権の回収見込みがなくなった場合であり,法的に求償権を行使し得ても回収の見込みはなく,この点からリスクの大小を論ずることはできない。むしろ,リスクを比較する,,のであれば損失補償契約では損失の確定を必要条件としているのに対し保証契約の場合には債務者のたんなる履行遅滞によって債務者が履行しな- 34 -かった債務のすべてについて リスクを比較する,,のであれば損失補償契約では損失の確定を必要条件としているのに対し保証契約の場合には債務者のたんなる履行遅滞によって債務者が履行しな- 34 -かった債務のすべてについて責任を負うものであることを考えるべきであり,この点を考えれば損失補償契約が保証契約よりリスクが高いとはいえない。 ( )本件協定が損失補償契約であることについて ア本件協定は,その5条において「損失補償」を行うとされ保証契約でないことは文言上から明らかであるし,同条で川崎市が損失を補償するのは「本件各金融機関が損失を被った場合」に限定されており,金融機関の損失確定が必要条件とされている。たんにある債権が弁済を受ける時期が到来したのに弁済されないということのみでは,いまだ損失とは観念されないから,本件協定が損失補償契約であることは明らかである。 イ(ア)原告は,本件協定に定める損失補償の限度額が,本件各金融機関がした訴外会社に対する融資金額を超えていないことをもって,その実質は保証契約と同一であると主張する。 しかしながら,保証契約においては,保証債務は主たる債務と同一性を有するので,債務者が履行しなかった債務のすべて(利息,違約金,損害賠償等を含む)について責任を負うことになるのに対し,損失補。 償契約は,損失の一定割合又はその一部とすることができるものであって,主たる債務の限度額を超えていないことをもって,保証契約であるということはできない。 (イ)原告は本件協定書5条が主債務の履行遅滞を支払要件としているとして,本件協定は実質的に保証契約である旨主張する。 しかし,本件協定5条2項に規定する「3か月を経過しても本債務を- 35 -弁済しなかったとき」の3か月とは,損失補償を実行するべき事態に陥ったとき,支出のための予算化等,支 約である旨主張する。 しかし,本件協定5条2項に規定する「3か月を経過しても本債務を- 35 -弁済しなかったとき」の3か月とは,損失補償を実行するべき事態に陥ったとき,支出のための予算化等,支出に必要な諸手続に時間を要することを考慮して,相当な期間を設定したものである。この点は,本件協定の実行経緯をみても,訴外会社の借入れに対する弁済期日が,みずほ銀行については平成14年11月1日に,横浜銀行及び川崎信用金庫については平成15年5月1日に到来していたものの,訴外会社の破産廃止の日である平成16年12月14日を損失の確定日とし,その後,損失補償を実行しているのであり,訴外会社の履行遅滞が支払要件となってはいないことからも明らかである。 ( )本件協定の効力について そもそも,法令に違反して契約が締結されたとしても,当該契約は直ちに無効とはならない(最高裁判所昭和62年5月19日第三小法廷判決。本)件協定は,前記( )のとおり,コンテナターミナル事業に当たって,十分な 調査・検討が行われたものであるとともに,訴外会社への損失補償も公益性・公共性を有するものであって,市長としての裁量を濫用又は逸脱するものではなく,もとより一見明白に違法であるとは認められない。また,本件各金融機関は,本件協定の締結前にも川崎市と土地開発公社等に関して損失補償契約を締結しており,本件各金融機関が本件協定を法令上許されないものであると認識していたとはいえないし,本件協定は債務負担行為の市議会の議決を経る等して適正な手続を履践している。 したがって,本件協定は私法上無効であるとはいえない。 ( )本件損失補償金支出の適法性 - 36 -上記のとおり,本件協定は財政援助制限法3条に違反しておらず,川崎市はこれを履行する立場にあり,本件損失補償金の は私法上無効であるとはいえない。 ( )本件損失補償金支出の適法性 - 36 -上記のとおり,本件協定は財政援助制限法3条に違反しておらず,川崎市はこれを履行する立場にあり,本件損失補償金の支出は議会の議決を得る等して適正な手続を経て行われており,適法な支出である。 第5当裁判所の判断 争点1(監査請求期間の遵守等)について( )前記第2,2( )及び( )のとおり,本件損失補償金については,本件協 定の締結(支出負担行為)が平成6年5月10日,本件和解契約の締結が平,,()成16年12月27日支出命令が平成17年1月7日支出狭義の支出が同月14日に行われている。そして,前記第2,2( )のとおり,本件監 査請求は同年3月7日にされている。 ( )支出命令及び支出についての監査請求について ア支出負担行為,支出命令及び支出は,特定の支出するために行われる一連の行為ではあるが,互いに独立した財務会計上の行為であって,地方自治法242条2項本文所定の監査請求期間は,それぞれの行為のあった日から各別に計算すべきものである(最高裁判所平成14年7月16日第三小法廷判決・民集56巻6号1339頁参照。したがって,上記によれ)ば,本件における支出命令及び支出についての監査請求は,それぞれの行為がされた日から地方自治法242条2項本文所定の期間内にされたものといえる。 イ被告は,上記監査請求は,専ら支出負担行為(本件協定の締結)の違法を理由とするものであり,このように契約の締結が違法,不当であることを専らの理由としてその履行行為について監査請求をする場合には,その- 37 -監査請求期間は支出負担行為たる契約がされた日を起算点とすべきである旨主張する。 しかしながら,上記のとおり,地方自治法では特 理由としてその履行行為について監査請求をする場合には,その- 37 -監査請求期間は支出負担行為たる契約がされた日を起算点とすべきである旨主張する。 しかしながら,上記のとおり,地方自治法では特定の支出を行うについて,それが適切に行われるように支出負担行為,支出命令及び支出という一連の段階的な手続を要求しており,それぞれが独立した行為と解される以上は,それぞれの行為についての監査請求期間はそれぞれの行為のあった日又は終わった日を基準として算定すべきものと解するのがもっとも自然な解釈であり,被告がいうように,当該監査請求においてどのような行為が違法,不当な事由として主張されているかによって監査請求期間の起算点を異にすると解すべき根拠はないものというべきである。 ウ被告は,上記のような場合には,監査請求期間の起算点を支出負担行為の時点としないと,支出負担行為の監査請求期間の起算点を実質的に支出の日とすることになり,期間制限を設けた法の趣旨に反することになると主張する。 しかし,上記のとおり,支出負担行為,支出命令及び支出はそれぞれ独立した財務会計上の行為と解されるから,支出命令及び支出についての監査請求は直接的にはこれら各行為の違法,不当を問題としているのであって,これらの各行為を違法,不当ならしめる事由として支出負担行為の違法,不当が主張されているとしても,この点に変わりはない。ただ,支出命令及び支出が違法,不当であるかどうかということと,それに先行する支出負担行為の違法性とは無関係ではないし,支出負担行為が違法である場合に後行の支出命令及び支出がいわばその違法性を承継して違法になる- 38 -という場合もあり得ることから,そのような場合には上記の審査において支出負担行為について違法性が審査されるにすぎない。 被告の主張は,上記 及び支出がいわばその違法性を承継して違法になる- 38 -という場合もあり得ることから,そのような場合には上記の審査において支出負担行為について違法性が審査されるにすぎない。 被告の主張は,上記のように先行する支出負担行為の違法が後行の支出命令及び支出の違法,不当に一定の影響を与えることを前提として,その一方で,そのような主張が可能となるのは支出負担行為についての監査請求期間内に支出命令及び支出についての監査請求がされた場合に限定されるというに等しいものである。しかしながら,再三述べるように,支出負担行為,支出命令及び支出をそれぞれ独立した財務会計上の行為とし,支出負担行為の違法は支出命令及び支出を違法,不当ならしめる事情として主張されているものと理解する以上は,その監査請求期間もそれぞれの行為ごとに起算されると解するのが筋であって,被告が指摘するような問題点は,先行する支出負担行為の違法が後行の支出命令及び支出にどのような場合に,どのような影響を与えるかという問題として検討されるべきことと思われる。支出負担行為についての監査請求期間は経過しているにもかかわらず,その違法性について蒸し返し的に争われる余地があるとしても,それを理由として支出命令及び支出の監査請求期間の起算点を支出負担行為時と解すべき必然性はないし,そのように解しなければ期間制限を設けた法の趣旨に反するとまでは解し得ない。 エ以上のとおり,被告の主張は採用できず,支出命令及び支出に係る本件監査請求は,監査請求期間内にされたものとして適法というべきである。 ( )支出負担行為(本件協定の締結)についての監査請求について ア本件協定の締結は平成6年5月10日にされているから,この締結日を- 39 -起算点とすれば,本件監査請求は監査請求期間を経過した後にされたも 為(本件協定の締結)についての監査請求について ア本件協定の締結は平成6年5月10日にされているから,この締結日を- 39 -起算点とすれば,本件監査請求は監査請求期間を経過した後にされたものというべきであるが,原告は,支出がされた日(平成17年1月14日)を起算点とすべき旨主張する。 イそこで検討すると,住民監査請求は,財務会計上の行為又は怠る事実を対象として行われるものであるところ,当該行為についての監査請求は,当該行為のあった日又は終わったから1年を経過したときは,これをすることができないものとされている(地方自治法242条2項本文。そし)て,ここにいう当該行為のあった日とは一時的な行為のあった日を,当該行為の終わった日とは継続的な行為についてその行為が終わった日を,それぞれ意味するものと解される。本件監査請求においては,本件協定の締結がその対象となる行為とされており,同契約の締結行為は一時的行為というべきであるから,これを対象とする監査請求は契約締結の日を基準として同項本文の規定を適用すべきである(最高裁判所平成14年10月15日第三小法廷判決・判例時報1807号79頁参照。 )ウ(ア)原告の上記主張は,財務会計上の行為がされても損害が発生していなければ,監査請求において損害を補てんするため必要な措置を講じることを請求したり,その後の住民訴訟において当該職員に対して損害賠償の請求(又は賠償命令)をすることを求めることができないという点を根拠としている。 (イ)しかし,監査請求においては,その対象である財務会計上の行為又は怠る事実を特定して,必要な措置を講ずべきことを請求すれば足り,措置の内容等を具体的に明示することは必須ではなく,仮に,執るべき- 40 -措置内容等が具体的に明示されている場合でも,監査委員 は怠る事実を特定して,必要な措置を講ずべきことを請求すれば足り,措置の内容等を具体的に明示することは必須ではなく,仮に,執るべき- 40 -措置内容等が具体的に明示されている場合でも,監査委員は監査請求に理由があると認めるときは,明示された措置内容に拘束されずに必要な措置を講ずることができる(最高裁判所平成10年7月3日第二小法廷判決・裁判集民事189号1頁参照。すなわち,監査請求は,財務会)計上の行為又は怠る事実を対象としてされるものであって,監査委員に求める措置が,当該行為の防止,是正,怠る事実を改めること及び損害のてん補のいずれであるかによって,監査請求の対象が異なるというわけではない。 また,監査請求を前置してされる住民訴訟についてみても,その対象とする財務会計上の行為又は怠る事実について監査請求を経ていると認められる限り,監査請求において求めていた具体的措置とは異なる内容の請求をすることも許されると解されるから,この点からも監査請求の期間を住民訴訟で求める請求の内容ごとに考える必要があるとは解されない。 (ウ)原告は,支出負担行為がされた時期を基準にすると,当該職員に損害賠償請求(賠償命令)することを求めることができず,そのような請求をする機会が保障される必要がある旨を主張する。 しかしながら,住民訴訟制度の目的は,住民が納税者としての立場から,地方公共団体が違法な財務会計上の行為によって損害を被ることを防止し,あるいは被った損害を回復する手段を設け,これによって地方公共団体が適正な財務会計処理を行うことを保障する点にある(監査請求制度も,その対象が不当な財務会計上の行為を含む点を除けば,同趣- 41 -旨の制度であるということができる。 。)このような制度趣旨からすると,監査請求及び住民訴訟において,契約 (監査請求制度も,その対象が不当な財務会計上の行為を含む点を除けば,同趣- 41 -旨の制度であるということができる。 。)このような制度趣旨からすると,監査請求及び住民訴訟において,契約の締結行為の当否,適否を争うことができるとされているのも,その後に予定された契約の履行により地方公共団体が損害を被ることを防止したり,あるいは被った損害を回復するためであって,契約の締結時において,履行行為の差止めや法律関係の不存在確認(旧法下)を求めることができれば,契約が締結された結果として発生した損害について当該職員に対する損害賠償請求等を求める機会が保障されることが必須の要請とまでは解されない。もとより,監査請求の可否とは関わりなく,当該地方公共団体は当該契約に起因して損害が発生すれば,当該職員に対して損害賠償等の請求をなし得るわけであるし,その請求が行われないときには当該請求を怠る事実についての監査請求や住民訴訟の提起も可能なのであるから,上記のように解することによって特段の不都合があるとも認められない。 (エ)また,原告は,平成9年最判(最高裁判所平成9年1月28日第三小法廷判決・民集51巻1号287頁)を上記主張の根拠として指摘している。 しかしながら,上記最高裁判決は,財務会計上の行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とする監査請求について,上記請求権が財務会計上の行為がされた時点においてはいまだ発生しておらず,又はこれを行使することができない場合には,実体法上の請求権が発生し,これを行使する- 42 -ことができることになった日を基準として地方自治法242条2項の規定を適用すべき旨を判示したものである。すなわち,上記判決は怠る事実に係る監査請求について同条項の 生し,これを行使する- 42 -ことができることになった日を基準として地方自治法242条2項の規定を適用すべき旨を判示したものである。すなわち,上記判決は怠る事実に係る監査請求について同条項の適用関係を明らかにしたものであ,,()り本件のように本件協定の締結という財務会計上の行為当該行為が監査請求の対象とされた場合について判断したものではない。 原告は,同判決は,怠る事実に固有のものではないと主張するが,同判決は,上記のとおり,怠る事実に係る請求権が発生しておらず,又は行使することができない場合には,監査請求の対象となる怠る事実が存在しないため,その監査請求期間については上記判示のとおりに解すべきであると判示しているのであって,財務会計上の行為(当該行為)を対象とする監査請求の場合には,当該行為は既に存在しており,監査請求の対象とし得るのであるから,この二つの場合を同一に論じることはできない。 (オ)そして,原告の主張によった場合,原告が主張するように,地方自治法242条2項にいう「当該行為のあった日」とは,当該行為によって直ちに損害が発生するという関係が存在しない場合は損害の発生時点をいうと解するか,一つの契約締結行為について,求める措置の内容に応じて,契約締結日から1年間と,当該職員に対する損害賠償請求権が発生した日から1年間という二つの監査請求期間があると解するほかはないように思われるが,このような解釈は同条項の「当該行為のあった日から1年」との文言と大きく乖離することになり,困難というべきである。 - 43 -(カ)なお,上記のことを本件についてみると,本件協定が締結された時点では,現実に川崎市が本件各金融機関に損失補償することになるかどうか,また,いつの時点でいかなる金額を支出することになるのかは未 (カ)なお,上記のことを本件についてみると,本件協定が締結された時点では,現実に川崎市が本件各金融機関に損失補償することになるかどうか,また,いつの時点でいかなる金額を支出することになるのかは未確定であったが,住民としては,旧法下においても,その履行の差止めや契約の相手方に対する法律関係の不存在確認を求めて監査請求ないし住民訴訟をすることが可能であったものと考えられる。この点,差止めの訴えについては,その時点での訴外会社の経営状況等にもよるが,既に本件協定が締結されており,その補償限度額が9億円という高額であることからすれば一応適法な訴えと解されるし,法律関係不存在確認の訴えについては,これができないとする理由はないものと思われる(この点,原告は回復困難な損害が生ずるおそれがある場合にのみ同訴えが許されると主張するが,そのように解すべき根拠はない。 。)エ以上のとおり,本件協定の締結を対象とした監査請求は,その締結日である平成6年5月10日から1年以内にすべきであって,本件監査請求は期間を徒過してされたものである。 ( )正当な理由の有無について ア地方自治法242条2項ただし書にいう「正当な理由」の有無は,当該行為が秘密裡にされた場合には,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力を持って調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,また,当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁判所昭和63年4月22日第二小法廷判決・裁判集民事1- 44 -54号57頁参照。そして,このことは,当該行為が秘密裡にされた場)合に限らず,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足 判集民事1- 44 -54号57頁参照。そして,このことは,当該行為が秘密裡にされた場)合に限らず,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合も同様であると解されるから,この場合には,上記正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁判所平成14年9月12日第一小法廷判決・民集56巻7号1481頁参照。最高裁判所平成14年9月17日第三小法廷判決・裁判集民事207号111頁参照。 )イこれを本件についてみると,少なくとも,原告代表者Dは,平成15年4月18日付けで,川崎市長に対し,本件協定書及びその関係書類について行政文書の開示請求をし,川崎市長は同年5月2日付けで全部開示の通知をしており(甲47,48,原告は,川崎市長に対し訴外会社の株主)として同社の会社整理の申立てをしないという怠る事実が違法であることの確認を求めた別件住民訴訟(当庁平成15年(行ウ)第23号)を提起,()し当該訴訟で提出した平成15年7月16日付け準備書面( )乙34 において本件協定が財政援助制限法3条に違反する旨主張していたと認められるから,これから1年半以上を経過してされた本件監査請求が,上記相当な期間内にされたものということはできない。したがって,本件監査請求に地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由があるというこ- 45 -とはできない。 原告は,違法な支出負担行為に基づき市が損害賠償請求権を取得するのは,現実に い。したがって,本件監査請求に地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由があるというこ- 45 -とはできない。 原告は,違法な支出負担行為に基づき市が損害賠償請求権を取得するのは,現実に損害が発生した場合に限られるから,支出負担行為を行った者の責任を追及することが損害発生の後になることには正当な理由がある旨主張するが,上記( )で述べたところによれば,このような理由により監 査請求を控えることに正当な理由があるということはできない。 ( )小括 以上のとおり,本件訴えは,支出命令及び支出に係る部分は適法な監査請求を経たものであるが,本件協定の締結に係る部分は適法な監査請求を経たものということはできない。したがって,A元市長に対して損害賠償請求をするよう求める訴えは不適法である。 争点2(本件協定の適法性等)について( )「本件協定が財政援助制限法3条に違反するかどうか」について 本件損失補償金に係る支出命令が違法であるかどうかを判断する前提として,本件協定の締結が財政援助制限法3条に違反するかどうかについて検討する。 ア財政援助制限法3条の趣旨について(ア)財政援助制限法3条は「政府又は地方公共団体は,会社その他の,法人の債務については,保証契約をすることができない」と規定して。 いる。 被告は,同法の制定経緯に照らすと,同条は戦前にみられた国策会社の活動を停止させ,その復活を阻止しようとする占領軍総司令部の意向- 46 -に沿ったものであり,その趣旨としては,政府等の行う財政運営を予算として一元的に取り扱い,国会ないし地方議会の議決に基づかない財政援助を廃止ないし制限することにあった旨主張する。 確かに,証拠(乙48ないし50)によれば,財政援助制限法の制定に先立って,昭和21年4月3日付けで実質的 ,国会ないし地方議会の議決に基づかない財政援助を廃止ないし制限することにあった旨主張する。 確かに,証拠(乙48ないし50)によれば,財政援助制限法の制定に先立って,昭和21年4月3日付けで実質的な指令ともいうべき「政府保証債及び借入金に関する司令部覚書」が発せられ,その中で,政府又はその他一切の行政官庁による債務の保証が原則として禁じられ,金融的援助は補助金の形式によってのみ行うべき等のことが示されてお,,り同覚書を受けて財政援助制限法が制定されたこと等にかんがみると同法は占領軍総司令部の意向を反映したものであったといえるし,原告もこの点を特に争ってはいない。 そして,同法の提案理由として石橋大蔵大臣は「政府は従来法令の,規定に依って設立致しました会社その他の法人等に対しまして,法令或いは予算外契約に基づく各種の財政援助を与えまして,もってその事業の遂行を円滑ならしめ,国策の完遂を図って参ったのであります。しかし今や終戦に伴いまして戦後財政再建の必要を生じましたので,その一つの方途と致しまして,国庫負担の累増を防止致したいと考えるのであります。しかしてそれと同時に,これによりまして戦後における国民経済の民主的再建のために企業の自主的活動を促進致すことの一助とも致したいのであります」と説明しており(乙51,財政援助制限法が。 )制定された背景に,いわゆる国策会社の活動を停止させ,その復活の防止を図るという意図のあったことがうかがえる。 - 47 -また,同法1条及び2条の規定をみると,1条は「会社その他の法人は,他の法令又は定款にかかはらず,政府の所有する株式又は出資に対して,政府以外の者の所有する株式又は出資に対すると同一の条件を以て,利益又は剰余金の配当又は分配をしなければならない」とし,2。 条1項は「政府は,他の かかはらず,政府の所有する株式又は出資に対して,政府以外の者の所有する株式又は出資に対すると同一の条件を以て,利益又は剰余金の配当又は分配をしなければならない」とし,2。 条1項は「政府は,他の法令又は契約にかかはらず,会社その他の法人に対し,毎事業年度における配当又は分配することができる利益又は剰余金の額を払込済株金額又は出資金額に対して一定の割合に達せしめるための補給金は,これを交付しない」というものであって,このよう。 な政府による法人に対する支援は,戦前における国策会社に対してとられたものであるから,1条及び2条はこのような支援策を廃止する趣旨のものと理解することができる。 (イ)同法3条も以上のような背景の下に制定されたものであるが,同条は,政府又は地方公共団体が法人の債務を保証することを原則的に禁止するとしているのであって,国会ないし地方議会の議決に基づけば保証契約の締結を許容するというものではない。前記司令部覚書は,政府等による債務の保証を禁止するとともに,法人等に対する経済的な援助は,,補助金の形式によってのみ行うものとしておりこの点を捉えて被告は同条の趣旨は国会又は地方議会の議決に基づかない財政援助の廃止及び,,制限にあると主張するのであるが同条の規定は上記のとおりであって必ずしも被告の主張に沿うものとはなっていないし,石橋大蔵大臣は,財政援助制限法案の提出理由として被告が主張するような説明はしてお,,らず上記のように財政再建のために国庫負担の累増を防止することと- 48 -企業の自主的活動の促進ということを挙げているのみである。 もともと保証契約は,その契約締結の際には保証人が将来負うことになる負担の有無及び程度が明らかでなく,また,保証人の負担が,主債務者が主債務を履行するかどうかという保証人 とを挙げているのみである。 もともと保証契約は,その契約締結の際には保証人が将来負うことになる負担の有無及び程度が明らかでなく,また,保証人の負担が,主債務者が主債務を履行するかどうかという保証人が必ずしも関知し得ない事情により左右されるという性質を有するものである。そして,保証契約を政府や地方公共団体が行うということは,当面の支出を伴わずに一定の経済的な効果を上げ得ることから,ともすれば安易に流れやすいという弊害も否定はできない。このような保証契約の性質とともに上記石橋大蔵大臣の説明や財政援助制限法3条の文言に照らすならば,同条は政府又は地方公共団体の不確定な債務がむやみに増加することを防止し,もって財政の健全化を図ることを一つの重要な目的としていたものと認めるのが相当である。 (ウ)被告は,同条の趣旨を,前記のように,国会又は地方議会の議決に基づかない財政援助を廃止し,あるいは制限する点にあったとし,日本国憲法及び地方自治法の制定により,すべて財政は国会ないし地方議会の議決に基づくことになったことから,財政援助制限法は既にその目的を達して意義を失っている旨主張する。 しかしながら,上記(イ)のとおり,同条の趣旨を被告が主張するように限定して理解すべき根拠はないのであって,その主張は一面的にすぎて採用できないし,そのような理由で同法が既に存在意義を失ったものであるということはできない。日本国憲法及び地方自治法が制定された後も,同条は原則として保証契約を禁止するという文言のまま今日まで- 49 -有効な条文として存在しているのであって,政府又は地方公共団体によるこれに反する行為が許容されるとか,議会の議決を経た保証契約は同条に反しないなどと解することは困難である。 イ次に,本件協定の内容について検討する。 (ア)本件協定の内 政府又は地方公共団体によるこれに反する行為が許容されるとか,議会の議決を経た保証契約は同条に反しないなどと解することは困難である。 イ次に,本件協定の内容について検討する。 (ア)本件協定の内容は,前記第2,2( )イのとおりである。 aまず,本件協定では,川崎市が訴外会社の債務を保証するとの文言は用いられておらず,同協定に基づく本件各金融機関の訴外会社に対する融資について,本件各金融機関が損失を被った場合に川崎市が当該損失を補償するものとされ,形式的には損失補償としての構成を基調としている(5条1項。 )b上記規定にいう「損失」が何を指すのかは明文では示されていないが,上記のように「融資について「損失を被った場合」とされてお」り,川崎市が補償として交付する金額が本件協定に基づく訴外会社の借入債務残高と交付の日までの未払利息及び遅滞利息の合計額とされている(同条4項)ことからすれば,上記「損失」が本件各金融機関が訴外会社から返済を受けられないことによって被る損害,すなわち未収貸付金を想定していることは明らかである(そして,前記第2,2( )のとおり,川崎市は本件協定に基づき現実に本件各金融機関に 総額9億円を支払ったのであるが,この金額は平成6年5月19日,同年11月15日及び平成7年3月24日にされた本件貸付の元本8億円に弁済期からの利息を加えた額であるとされている。甲77。 )cそして,いかなる場合に川崎市に上記損失を補償すべき義務が生じ- 50 -るかをみると,本件各金融機関からの催告にもかかわらず,訴外会社,,が最終弁済期限後3か月を経過しても弁済しなかった場合あるいは訴外会社が解散等により期限の利益を失った場合に本件各金融機関が川崎市に損失の補償を請求するものとされ(5条2項,3項,その)場合 ,が最終弁済期限後3か月を経過しても弁済しなかった場合あるいは訴外会社が解散等により期限の利益を失った場合に本件各金融機関が川崎市に損失の補償を請求するものとされ(5条2項,3項,その)場合には川崎市は遅滞なく損失補償金を交付するものとされており(同条4項,訴外会社に債務の不履行があった場合に本件各金融機)関からの請求によって損失補償義務が生じることになっている。 上記の点について,被告は,本件協定5条2項の「3か月を経過しても本債務全額を弁済しなかったとき」の3か月とは,予算措置を講じる等のために相当な期間を設定したものであり,実際に本件損失補償金を支払った経緯に照らしても訴外会社の履行遅滞が損失補償の要件とはなってはいない旨を主張する。 しかし,上記の「3か月の期間」についての被告の主張は,本件協定5条2項の文言をそのように理解することは困難であるし,仮に,被告の主張を前提とすれば,訴外会社が最終弁済期限を徒過すれば直ちに川崎市は損失補償のための予算措置等に着手する必要があるということになって,かえって被告の主張の趣旨に沿わないように思われる。また,現実に,本件各金融機関が訴外会社の履行遅滞にもかかわらず速やかに川崎市に損失の補償を求めなかったとしても,本件協定上,本件各金融機関にそのような請求義務があるとまでは解されないから,この点も上記認定を左右するものではない。 dこのようにみてみると,確かに本件協定は損失補償という用語を用- 51 -い,それに沿うかのような形式,体裁がとられているが,その実質的な内容は「毎年度川崎市特別会計予算に定める損失補償額(1条)」を貸付限度とする債務の保証(根保証)と特段の差異はないものといえる。このような内容の本件協定を保証契約というか,損失補償契約というかは,ある意味では呼び方 別会計予算に定める損失補償額(1条)」を貸付限度とする債務の保証(根保証)と特段の差異はないものといえる。このような内容の本件協定を保証契約というか,損失補償契約というかは,ある意味では呼び方,用語の問題であり,その法律構成を,主債務者が弁済をしない場合に,第三者が主債務者に代わって履行をするといっても(保証契約,未収貸付金を損失として,主債務)者が弁済しない場合に第三者がその損失を補てんするといっても損,(失補償契約,その実質に特段の変わりがあるとは認め難い。 )(イ)被告は,損失補償契約と保証契約とは法的性質が異なり,本件協定は損失補償契約であるから,保証契約と同視することはできない趣旨を主張する。 しかし,一般的に損失補償契約ないし損害担保契約といわれる契約には種々の形態,内容のものがあるのであって,これを抽象化して保証契約との異同を論じることは,本件においてあまり意味のあることではない。要は,本件協定がいかなる実質的な内容を有しているのか,また,それゆえに財政援助制限法が規定する「保証契約」に該当しないと解し得るのかということなのであるから,このような観点から被告が指摘する点を検討してみる。 aまず,被告は,損失補償契約は保証契約とは異なり,損害が生じて初めて補てんすべき義務が生じるものであり,主債務者が破産したとか,客観的に債権の回収がほとんど見込めない場合になって初めて損- 52 -害,ひいては損失補償義務が生じる旨主張する。 しかし,本件協定では,既に述べたとおり,訴外会社が本件各金融機関からの催告にもかかわらず,最終弁済期後3か月内に債務全額を弁済しなかったり(5条2項,解散等により期限の利益を失った場)合(同条3項)に,本件各金融機関は川崎市にその被った損失(未収貸付金及び利息)の補償を請求し, ず,最終弁済期後3か月内に債務全額を弁済しなかったり(5条2項,解散等により期限の利益を失った場)合(同条3項)に,本件各金融機関は川崎市にその被った損失(未収貸付金及び利息)の補償を請求し,その場合,川崎市は遅滞なく損失補償金を本件各金融機関に交付する(同条4項)とされている。したがって,川崎市が損失補償金を交付するについて,本件各金融機関の訴外会社に対する貸付債権が回収不能といった状況にあることが要件とされているわけではないし,その補償すべき金額も,川崎市特別会計予算に定める損失補償額を限度とするという制約はあるものの,訴外会社が弁済すべき金額と異なるものではない。してみれば,上記指摘の観点からして,本件協定をもって保証契約とは異なる実質を有する契約であるということは困難である。 b次に,被告は,損失補償契約は主たる債務の存在を前提としない独立の契約であると主張する。 確かに,一般に損失補償契約ないし損害担保契約と呼ばれる契約の中には主たる債務の存在を前提としないものも存在するが,本件協定,,「」,は上記のとおり訴外会社が主債務全額を弁済しなかったとき川崎市は本件各金融機関に「主債務残高と利息の合計額」を補償するものとされており,訴外会社の債務,すなわち主たる債務の存在することが前提となっていることは明らかである。 - 53 -被告の上記主張は,川崎市が本件協定に基づいて負担する損失補償債務が付従性のないものであることを指摘するものとも考えられる。 本件協定はこの点について明確な定めを欠いているが,本件協定を締結するに至った経緯や本件協定全体の趣旨に照らすならば,成立における付従性についていえば,本件協定においては,訴外会社に対する融資がなければ本件各金融機関に損失が発生することはなく,損失補償義務が発生す に至った経緯や本件協定全体の趣旨に照らすならば,成立における付従性についていえば,本件協定においては,訴外会社に対する融資がなければ本件各金融機関に損失が発生することはなく,損失補償義務が発生することもないし,また,川崎市は,訴外会社が「主債務全額を弁済しなかったとき(5条2項)に本件各金融機関に損」失を補償するものとされていることに照らすならば,主たる債務につき無効,取消事由が存する場合でも損失補償義務があるとするのが当事者の意思であるとは考え難い。 また,民法448条との関係についてみても,川崎市は訴外会社が弁済しなかった額を損失として補償するという以上,損失補償義務の内容が訴外会社の債務よりも重くなることはないし,本件協定においては,訴外会社に対する融資額は,毎年度川崎市特別会計予算に定める川崎市の損失補償額を限度とするとされており,川崎市が関知しないところで同市が損失補償をすべき訴外会社に対する融資額が増大するということもない。 なお,被告は,保証契約では,保証人は主債務者が履行しなかったすべての債務について責任を負うが,損失補償契約は,損失の一定割合又はその一部について責任を負うとすることができ,主債務の限度額を超えないからといって,実体は保証契約であるということはでき- 54 -ないと主張するが,保証契約にあっても,いわゆる一部保証は許容され得るものであるから,被告の主張は当を得ない。 以上のとおり,付従性の観点からみても本件協定が保証契約とは異なる実質を有するという根拠は見いだし難い。 cなお,求償権の点については,被告も本件協定に基づく損失補償金について訴外会社に求償できないとは主張していない(前記第2,2( )のとおり,川崎市は本件協定に基づく求償権を有するとして訴外 会社の破産手続開始の申立てを行っている 本件協定に基づく損失補償金について訴外会社に求償できないとは主張していない(前記第2,2( )のとおり,川崎市は本件協定に基づく求償権を有するとして訴外 会社の破産手続開始の申立てを行っている。 。)d以上によれば,被告の指摘する点を検討してみても,本件協定が保証契約とは異なる契約であるとするだけの実質的な根拠はないものというべきである。 ウ地方公共団体における実務上の扱い等について(ア)以上のように,本件協定は典型的な民法上の保証契約とはいえないにしても,その内容,実質において同契約と特段に異なるところはないものというべきである。 ところで,川崎市及び本件各金融機関は本件協定において債務保証という文言を避け「損失補償」という文言を使用し,本件各金融機関に,生じた損失を補てんするという法形式をとっており,これによれば,上記当事者は保証契約ではなく,損失補償契約を締結しようとの意図であったものと認められる。そして,被告が指摘するように,本件協定のような内容,形式でもって地方自治体が法人の債務について損失補償契約を締結することは,本件の場合だけではなく全国的に広く行われている- 55 -ものと認められる(甲78,乙35,42,54。 )そこで,このような取扱いが財政援助制限法の許容するところであるかどうかを検討する。 (イ)ある法人が公共性,公益性の高い事業を行う場合で,当該事業が本来的には地方公共団体が行うにふさわしいものである等の一定の事情がある場合に,地方公共団体が当該事業を支援する目的で,一定の責任を負うことを約したとしても,そのこと自体は特に不当なことではないと。 ,,いえるそしていわゆる第三セクター方式で設立した法人等について上記のような支援を必要とする場合が少なくないことも容易に推測される。 また としても,そのこと自体は特に不当なことではないと。 ,,いえるそしていわゆる第三セクター方式で設立した法人等について上記のような支援を必要とする場合が少なくないことも容易に推測される。 また,財政援助制限法3条ただし書は「財務大臣(地方公共団体の,する保証契約にあっては,総務大臣)の指定する会社その他の法人の債務については,この限りでない(本件協定締結当時は大蔵大臣及び。」自治大臣の指定)と規定しており,財政援助制限法も一定の場合に地方公共団体が法人の債務について保証契約を締結することを許容しているといえる。 しかしながら,実際には上記指定制度は活用されておらず,その一方で,自治省行政課長による昭和29年5月12日付けの「損失補償につ,。」いては財政援助制限法3条の規制するところではないものと解するという回答(自丁行発第65号。乙53)があること等と相まって,地方公共団体においては広く上記のような損失補償契約が締結されており,本件においても同様の事情から本件協定が締結されたものと考えら- 56 -れる。 (ウ)上記のように,地方公共団体が保証契約ないし損失補償契約を行う実際的な必要があることは否定できないとして,その場合に,現に財政援助制限法3条が有効な法律として存在し,政府又は地方公共団体の不確定な債務の増加を防止し,財政の健全化を図るという目的に一定の合理性が認められる以上,地方公共団体がこれに反してよいとする理由は見いだしにくい。同条は,上記のように,そのただし書において例外的に保証契約を許容する余地を認めているのであって,必要があるならばこの手続に則って総務大臣の指定を受けるのが筋であって,この指定を受けずに,実質的に保証契約と変わるところのない契約を損失補償契約と称して締結するということは,同条の規 のであって,必要があるならばこの手続に則って総務大臣の指定を受けるのが筋であって,この指定を受けずに,実質的に保証契約と変わるところのない契約を損失補償契約と称して締結するということは,同条の規制を潜脱するものといわざるを得ない。 財政援助制限法3条は法人の債務の保証を対象としているが,法人の事業には,公益性の強いものからたんなる営利目的のものまで種々のものがあり,地方公共団体との関わり合いの程度も様々である。地方公共団体が法人の行う事業の内容に関係なく保証契約を締結すれば,同条の目的とする財政の健全化は図られないことから,同条は地方公共団体が保証契約を締結してよい法人の債務であるかどうか,また,保証契約を締結する必要があるかどうかといったことを総務大臣の判断にゆだねたものと解される。そして,それとは別に立法上の措置として,公有地の拡大の推進に関する法律25条,地方道路公社法28条,都市再開発法116条等においては,同条の例外として,地方公共団体が一定の法人- 57 -その他の団体の債務を保証することができる旨が定められているものといえる。 そうすると,総務大臣の指定を受けておらず,特別法において許容す,,べき規定もない法人の債務について財政援助制限法3条本文のとおり地方公共団体は保証契約をしてはならないと解することに特段の不都合があるとは認められない。 被告が,上記アのように財政援助制限法が既に存在理由を失っている,,と主張しているのは同法を存続させるべき理由に乏しいことを根拠に同法3条に規定する「保証契約」の意味するところを限定的に,すなわち典型的な保証契約に限って禁止されていると解すべきであるとの趣旨を含むものと解される。しかしながら,同法をなお存続させるべきか否かは立法政策の問題というべきであるし,前述したよう 限定的に,すなわち典型的な保証契約に限って禁止されていると解すべきであるとの趣旨を含むものと解される。しかしながら,同法をなお存続させるべきか否かは立法政策の問題というべきであるし,前述したように,同法の制定目的に政府又は地方公共団体の不確定な債務の増加を防止し,その財政の健全化を図るといったことも含まれているとすれば,一概に同法の存在理由が乏しいともいい切れないのであって,上記にみたような同法の仕組みからすれば同法3条の「保証契約」を特に限定的に解しなければならないというだけの根拠も認められないというべきである。 (エ)被告は,地方自治法199条7項前段や221条3項の規定を挙げて,地方公共団体が損失補償契約をすることは地方自治法上も認められている旨を主張する。 しかし,財政援助制限法が有効に存続しているとしても,地方公共団体の行うすべての保証契約や損失補償契約が禁止されているわけではな- 58 -いから,地方自治法に被告が指摘するような規定があることは,必ずしも同法が本件協定のような契約を許容しているという根拠にはならない(被告のような論法によれば,同法221条3項の規定から保証契約一般が許容されているということになるが,それが不当であることは明らかであるし,被告もそこまでは主張していない。 。)エ小括以上検討したことからすると,財政援助制限法3条は政府又は地方公共団体が「法人の債務」について「保証契約」をすることを禁じており,ここにいう「保証契約」に民法上の保証契約が含まれることは明らかであるが,前述した同条の趣旨からすると,これに類し同様の機能,実質を有する合意も同条の規制に服するものと解するのが相当である。 ,,,本件協定は民法上の保証契約とはいえないまでもそれと同様の機能実質を有するものであって,同条に と,これに類し同様の機能,実質を有する合意も同条の規制に服するものと解するのが相当である。 ,,,本件協定は民法上の保証契約とはいえないまでもそれと同様の機能実質を有するものであって,同条による規制を潜脱するものというほかはなく,同条に反するものとして違法なものと解するのが相当である。 ( )財政援助制限法3条に違反して締結された契約の効力について 被告は,本件協定が財政援助制限法に違反し,違法であったとしても,これを私法上無効であるということはできない旨主張する。 ア財政援助制限法は,同法3条に違反した契約の効力について具体的な規定を置いていない。 しかしながら,同条は政府又は地方公共団体の法人に対する財政援助に規制を加える観点から,政府又は地方公共団体の外部的行動そのものを制限した規定であるから,たんなる行政内部における手続規定とは解されな- 59 -いし,同条に違反してされた契約の効力に影響を及ぼさない訓示規定ないし注意規定であると解するのも相当でない。したがって,同条は契約の効力を定めた効力規定であると解するのが最も自然な解釈であるというべきである。 イ以上のことからすれば,本件協定は財政援助制限法3条に違反し無効であるというほかはない。 被告は,上記主張の根拠として最高裁判所昭和62年5月19日第三小法廷判決(民集41巻4号687頁)の判示を引用するが,これは,専ら契約方法という手続的な側面から規定された,随意契約の制限に関する法令に違反した契約の効力について判断したものであり,本件とは事案が異なるものであって,同事件において問題となった法令と財政援助制限法3条の性質や趣旨等の相違に照らせば,財政援助制限法3条に反する契約の効力を同様に論じることはできない。 ウしたがって,本件協定は私法上無効であって,本件の において問題となった法令と財政援助制限法3条の性質や趣旨等の相違に照らせば,財政援助制限法3条に反する契約の効力を同様に論じることはできない。 ウしたがって,本件協定は私法上無効であって,本件の支出命令及び支出は,無効な支出負担行為に基づいてされたものとして違法である(なお,本件支出命令及び支出は,直接的には本件和解契約の履行としてされているが,この点については後に触れる。 。)( )B市長の責任について 前記のとおり,本件の支出命令は無効な支出負担行為を前提として発せられたものであり,客観的には違法なものである。 そこで,このような支出命令を発したB市長の責任が問題となるが,この点については,被告が主張しているように,上記支出命令が発せられた平成- 60 -17年1月当時においては,損失補償契約を締結することは財政援助制限法3条に反しない旨の自治省行政課長の回答(乙53)を前提として,そのような理解が広く受け入れられていたといえる。そして,地方公共団体において本件協定のような損失補償契約は広く利用されていたし,裁判例としてもこれを適法とするものがあった(乙43。 )上記のような事情にかんがみるならば,B市長が本件協定を有効なものと考え,これを前提とする支出命令を発したとしても,その責めに帰すことのできない,やむを得ない事情があったものと認めるのが相当であり,その点に故意,過失があったとも認められない。 ( )本件各金融機関に対する返還請求について ア上記のとおり,本件協定は違法,無効なものであり,これを前提とする本件損失補償金の支払は法律上の原因を欠くものである。 しかし,現時点で,川崎市が本件各金融機関に対して既に支払われたこれら本件損失補償金を不当利得として返還を求め得るかということになると,この点については 補償金の支払は法律上の原因を欠くものである。 しかし,現時点で,川崎市が本件各金融機関に対して既に支払われたこれら本件損失補償金を不当利得として返還を求め得るかということになると,この点については重大な疑義があるといわざるを得ない。 イすなわち,証拠(甲1,2,4,23ないし25,32,39,62ないし64,69,75ないし77,89,乙8ないし13,24,37,38,40)及び弁論の全趣旨によれば,従前から,川崎市(川崎港港湾管理者)は,社団法人日本港湾協会及び株式会社野村総合研究所による調査結果等を踏まえ,東京湾におけるコンテナ貨物量が増大することを予測し,川崎港にコンテナターミナルを整備することを計画していたこと,川崎市は,川崎港振興協会内のコンテナ問題検討委員会,川崎港運協会及び- 61 -川崎商工会議所の意見や要望もあって,コンテナターミナルの管理運営は第三セクター方式により設立された株式会社により運営されるのが望ましいと判断して,平成6年5月10日に訴外会社が設立されたこと,訴外会社においては市職員がその取締役及び監査役等を務め,川崎市は,設立後赤字経営が続く同社に対して,荷さばき地使用料,ガントリークレーン使用料,ふ頭用地使用料,荷役機械置場使用料,ゲート関連施設使用料,メンテナンスショップ使用料,電気施設使用料等の減額及び免除を行う等,様々な経営支援を行う一方で,本件各金融機関に対して訴外会社への融資を要請したこと,本件各金融機関は,前記第2,2( )及び( )のとおり, 川崎市との間で本件協定を締結し,同協定及びその後に川崎市が何度にもわたり発行した経営指導念書を前提として,訴外会社に対して本件貸付を含む総額54億円にも及ぶ貸付を実行したことが,それぞれ認められる。 上記のように,訴外会社の設立及びその後の の後に川崎市が何度にもわたり発行した経営指導念書を前提として,訴外会社に対して本件貸付を含む総額54億円にも及ぶ貸付を実行したことが,それぞれ認められる。 上記のように,訴外会社の設立及びその後の運営については川崎市が深く関与しており,同事業は川崎市が主体的に推進してきたものといっても過言ではない。そして,その過程において,本件各金融機関は川崎市からの要請に基づいて,同市との間で本件協定を締結した上で訴外会社への事業資金の貸付けを開始したのであり,川崎市及び本件各金融機関がその効力を疑っていたような形跡はないし,その点につき双方に責められるべき点があったともいえない。加えて,川崎市は本件協定の締結はもとより,本件損失補償金の支払についても市議会の正式な決議を経ており,本件損失補償金は既に本件各金融機関に対して支払済みであって,その総額が9億円という多額に上ることからすれば,その返還を認めることは川崎市を- 62 -信頼して融資を継続してきた本件各金融機関に対して予期しない多大の損害を被らせることになることは明らかである。このような事態は,上記のように,川崎市が主体的に訴外会社への融資を要請し,本件協定を締結して一定の限度までは責任を負う旨を明らかにしてきたことに照らすならば,著しく信義に反することといわなければならない。 以上のような諸事情に照らすならば,本件損失補償金が結局は川崎市民の負担に帰することになることを考慮したとしても,川崎市が本件各金融機関に対して本件損失補償金の返還を求めることは信義則に照らして許されないものと解される。したがって,原告の本件各金融機関に対して本件損失補償金の返還を請求するよう求める訴えも棄却すべきということになる。 ウなお,本件損失補償金は,直接的には本件和解契約を原因として支出されている(前 たがって,原告の本件各金融機関に対して本件損失補償金の返還を請求するよう求める訴えも棄却すべきということになる。 ウなお,本件損失補償金は,直接的には本件和解契約を原因として支出されている(前記第2,2( ))ので,この点について付言する。 本件和解契約が互いの譲歩に基づく民法上の和解契約であるとすれば,本件協定の有効,無効にかかわらず本件各金融機関には不当利得は発生しないということも考えられないではない。この点,もともと本件協定に基づいて川崎市が負担していた損失補償債務の額は,平成6年度川崎市特別会計予算に定められた損失補償額(9億円)を限度とする融資額(実際には総額8億円,未払利息及び遅滞利息の合計額とされており(本件協定)1条,5条4項,それらを合計すると訴外会社の破産廃止決定がされた)時点で10億0965万6164円であったというのであり,その貸付状況等について川崎市と本件各金融機関の間で争いがあったようには見受け- 63 -られないし,川崎市が総額で9億円を下回る損失補償額を主張していたわけでもない。したがって,本件和解契約は,川崎市において何らかの譲歩,,をしたわけではなく本件各金融機関のみが一方的に債権の一部を放棄し支払について猶予を与えるという内容のものである。したがって,本件和解契約は民法上の和解契約としての実質を有するものではなく,本件協定を前提として,その履行方法を合意したにすぎないものと認めるのが相当である。 第6 結論 以上の次第であって,本件訴えのうち,A元市長に対して損害賠償の請求をするよう求める訴えは不適法であるから却下し,B市長に対して損害賠償の請求をするよう求める請求及び本件各金融機関に対して本件損失補償金の返還を求める請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担に る訴えは不適法であるから却下し,B市長に対して損害賠償の請求をするよう求める請求及び本件各金融機関に対して本件損失補償金の返還を求める請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 横浜地方裁判所第1民事部裁判長裁判官河村吉晃裁判官植村京子裁判官高橋心平
▼ クリックして全文を表示