昭和62(行ウ)7 所得税更正処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成元年10月4日 福島地方裁判所 租税
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【DRY-RUN】○ 主文 本件請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求めた裁判 一 請求の趣旨 1 原告の昭和五九年分所得税について、 賦課決定処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の

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○ 主文本件請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨 1 原告の昭和五九年分所得税について、賦課決定処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 二請求の趣旨に対する答弁主文同旨第二当事者の主張一請求原因 1 (本件土地の譲渡)原告は、昭和五九年五月二九日付売買契約書に基づき、自己が所有する別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)及び本件土地上の立木を、訴外福島県勤労者住宅生活協同組合(以下「勤住協」という。)に対し、五五五九万四八四〇円で売却した。右代金のうち、本件土地の代金は、五四二〇万三八四〇円であつた。 2 (原告の確定申告)原告は、本件土地の譲渡所得の計算に当たり、租税特別措置法(以下「措置法」という。)三四条の二第一項、同条の二第二項三号の規定に基づく特別控除を行い、分離短期譲渡所得の金額を別表第一のとおり、三五二五万三八四〇円とし、その他の所得と併せて別紙第二の「申告額」欄のとおり申告した。 3 (本件各処分)これに対し、被告は、昭和六一年五月一六日付で、別表第二の「原処分額」欄記載のとおり、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行つた(以下「本件各処分」という。)。 4 (不服申立前置)(一) 原告は、昭和六一年五月二七日付で、被告に対し異議申立をしたが、被告は、同年八月二六日付で、これを棄却する旨の決定をした。 (二) 原告は、同年九月二四日付で、国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、国税不服審判所長は、昭和六二年六月二四日付で、これを棄却する裁決をした。 5 よつて、原告は、本件各処分の取消を求める。 二請求原因に対する認否請求原因事実は全て認める。 三抗弁(本件各処分の適法性) 1 措置法三四条の二第一項に規定する特別控 棄却する裁決をした。 5 よつて、原告は、本件各処分の取消を求める。 二請求原因に対する認否請求原因事実は全て認める。 三抗弁(本件各処分の適法性) 1 措置法三四条の二第一項に規定する特別控除の適用が受けられるのは、同条の二第二項に定める「特定住宅地造成事業等のために買い取られる場合」であり、そのうち、同項三号に定める「国土利用計画法二三条一項の規定による届出をし、かつ、同法二四条一項の勧告を受けないで買い取られる場合」というのは、国土利用計画法の定めるところにより、適法な届出をして適法に買い取られる場合に限られる。そして、同法二三条三項は、右の届出をした者はその届出をした日から起算して六週間を経過する日までの間はその届出に係わる土地売買等の契約をしてはならないとしているから、当該届出をした日から起算して六週間を経過する日までの間に締結した土地売買等の契約に基づいて買い取られた土地等は、同法に従つた適法な売買契約に基づいて買い取られた土地等ではないから、これについては前記特別控除の適用は受けられない。そして、右の「土地売買等の契約」には、「予約」を含むとされる(同法一四条一項)。右の「予約」とは両当事者に民事上の債権債務が発生して法的に当事者が拘束される場合を意味し、その取引に関して手付金又は実質的にこれと同様の性質を有する金銭の授受があつたかどうかによつて、その存否が判断される。 2 原告は、昭和五八年九月七日付で、本件土地について、勤住協との連名による同法二三条一項の規定に基づく土地売買等届出書を提出したが、これより以前の昭和五七年一二月一五日に、株式会社福島勤労者ホームセンター(以下「ホームセンター」という。)から金銭借用の名目で本件土地の代金の一部三〇〇〇万円を受領しており、そのことにより、同日までに、原告と勤住協との間 一二月一五日に、株式会社福島勤労者ホームセンター(以下「ホームセンター」という。)から金銭借用の名目で本件土地の代金の一部三〇〇〇万円を受領しており、そのことにより、同日までに、原告と勤住協との間で、本件土地の売買予約がなされているものと認められた。その理由は以下のとおりである。 (一) 勤住協の理事長Aは、昭和五七年二月ころ、ホームセンターの代表取締役Bに対し、宅地開発を目的とした本件土地を含む福島市渡利絵馬平地区の用地取得の事務一切を委任し、これに基づき、ホームセンターが勤住協の代理人として各地権者との交渉と用地の取りまとめを行つていた。 (二) ホームセンターの取締役のCは昭和五七年四月ころから原告と用地買収に関する折衝を行い、原告は、右用地買収に同意し、同年五月ころ、国土利用計画法二三条一項の規定に基づく福島県知事への届出書に署名・押印した。 (三) 原告は、昭和五七年二月二五日発行の福島建設工業新聞等により、遅くとも昭和五七年一二月一五日までには、本件土地の買主が勤住協であり、ホームセンターはその代理人であることを認識していた。 (四) 買収に同意した原告は、本件土地の代替地として福島市<地名略>の土地外二筆の山林(合計三万一二七九平方メートル、以下「本件代替地」という。)をDから取得することとし、その取得代金二五〇〇万円を調達する必要があつた。そこで、原告は、本件土地の譲渡代金のうちの三〇〇〇万円を事前に受け取る方法を選び、同年一二月一五日に勤住協の代理人であるホームセンターから右三〇〇〇万円を受領したのである。 (五) 原告は、右三〇〇〇万円について、ホームセンター又はCが、勤住協とは無関係に原告に対し本件代替地取得代金を貸し付けたものであるとの主張をする(後記四2)。しかし、右三〇〇〇万円の授受の際、その返還債務と本件土地売 〇〇万円について、ホームセンター又はCが、勤住協とは無関係に原告に対し本件代替地取得代金を貸し付けたものであるとの主張をする(後記四2)。しかし、右三〇〇〇万円の授受の際、その返還債務と本件土地売買代金債務とを相殺する旨の特約がなされ、実際に原告と勤住協との間に本件土地の売買契約が成立した昭和五九年五月二九日に右相殺がなされた。このことは、右三〇〇〇万円の授受につき、ホームセンターが勤住協の代理人であつたことを示すものである。また、右三〇〇〇万円については「利息をつけない」旨の特約がされ、返還時期についての合意もされなかつたこと、売買契約不成立の場合にはその返還をしない旨の特約がされたことを考慮すると、右三〇〇〇万円が、消費貸借契約に基づき授受されたということはできない。 (六) したがつて、右三〇〇〇万円の授受がされた昭和五七年一二月一五日には、本件土地の売買について、原告及び勤住協を法的に拘束する合意、すなわち「予約」が成立し、その後、昭和五八年九月七日付で国土利用計画法に定める届出がされたことになる。 3 よつて、本件土地は、国土利用計画法に定める適法な届出をして適法に買い取られたものではないから、措置法三四条の二第一項、同条の二第二項三号による一五〇〇万円の特別控除の適用はなく、右の適用を認めないことを理由とする本件各処分は適法である。 四抗弁に対する認否及び原告の憲法違反の主張 1 (一)抗弁1の主張は、争う。 (二) (憲法違反の主張)(1) 農地法の場合には、農業委員会等の許可を経ない売買契約は、無効であるとされるが(同法三条四項)、許可を条件とする売買等の契約は有効とされる。ところが、国土利用計画法二三条一項の規定に違反する土地売買等の契約は、有効であるとされながら、同法二三条三項が、同法一二条により規制区域とされた土 項)、許可を条件とする売買等の契約は有効とされる。ところが、国土利用計画法二三条一項の規定に違反する土地売買等の契約は、有効であるとされながら、同法二三条三項が、同法一二条により規制区域とされた土地以外の土地についてまで、同法一五条一項各号に掲げる事項を総理府令で定めるところにより届出をした日から起算して六週間を経過する日までの間売買等の契約締結(同法一四条一項により「予約」を含む。)を禁止しているのは、右農地法との均衡を失する。 (2) 国土利用計画法に従つた正式な売買契約が成立するまでの間は、当事者を法的に拘束する合意を成立させ得ないとするならば、企画、測量を含め、莫大な資金を事前に費消する大規模な宅地開発に着手することができなくなる。土地の所有者から、最終的な段階で売買契約の締結を拒否されたり、法外な裏金を要求される可能性があるからである。 (3) したがつて、届出から六週間を経過する日までの間の売買等の契約締結(「予約」を含む。)を禁止する右規定は、不合理な規定で、憲法二九条に違反するものであり、右規定に違反した売買契約であつても、措置法三四条の二第一項、同条の二第二項第三号による特別控除が受けられる。 2 同2の事実のうち、本件土地について、昭和五八年九月七日付で国土利用計画法二三条一項の届出がされたこと、原告が昭和五七年一二月一五日にホームセンターのCから三〇〇〇万円を受領したことは認め、同日までに原告と勤住協との間で売買予約が成立したことは否認する。右三〇〇〇万円は、ホームセンター又はC個人が、勤住協とは無関係に、原告との間の消費貸借契約に基づき、交付したものである。 (一) 同2(一)の事実は否認する。 勤住協のAは、Cらに対し、本件土地を含む福島市渡利絵馬平地区全部の地上げが可能ならば、その地区の土地を買い上げる旨を約 貸借契約に基づき、交付したものである。 (一) 同2(一)の事実は否認する。 勤住協のAは、Cらに対し、本件土地を含む福島市渡利絵馬平地区全部の地上げが可能ならば、その地区の土地を買い上げる旨を約したにすぎない。そして、右地区の土地所有者全員から買収についての同意が得られたのは昭和五八年五月であつたから、本件三〇〇〇万円の貸付がなされた昭和五七年一二月一五日当時に、勤住協とホームセンターとの間で、地上げについての委任契約が成立したということはない。 (二) 同(二)の事実のうち、原告が昭和五七年五月に福島県知事に対する届出書に署名・押印した事実は認め、その余の事実は否認する。原告は、開発に同意したにすぎず、本件土地の買収に同意したものではない。 (三) 同(三)の事実は否認する。福島建設工業新聞の記事は、いわゆる観測記事にすぎず、昭和五七年一二月ころの絵馬平地区の開発はいまだ模索の段階であつて、当時、ホームセンターが勤住協の代理人として行動していたということはありえない。 (四) 同(四)の事実のうち、原告が、本件代替地を取得する契約を締結したため、その代金を調達する必要があつたことは認め、その余の事実は否認する。 原告の代理人Eは、Cの説明から、本件土地について、国土利用計画法に定める届出が昭和五七年五月になされたと考え、同年九月には、都市計画法に定める開発許可がなされているものと早合点をして、本件代替地取得の契約をしてしまつた。ところが、右届出がまだなされていないことを知り、本件代替地取得の代金支払いに苦慮し、Cに相談した。Cは、ホームセンター側の手続の遅延から原告に迷惑をかけており、そのために原告の反感を買つたのでは全体の買収ができなくなることから、原告に対し三〇〇〇万円を無利息で貸すことにしたのである。 (五) 同(五)の事実のう ー側の手続の遅延から原告に迷惑をかけており、そのために原告の反感を買つたのでは全体の買収ができなくなることから、原告に対し三〇〇〇万円を無利息で貸すことにしたのである。 (五) 同(五)の事実のうち、本件土地の代金債務と、三〇〇〇万円の返還債務とが相殺された旨の主張は、否認する。 原告と勤住協との間で、売買契約がなされた当日、原告は契約どおりの売買代金を勤住協から受け取り、そのうち三〇〇〇万円をホームセンター若しくはCに返済したのである。 三 〇〇〇万円を受領した際に、Cとの間で無利息とする旨の合意をしたのは、右(四)の事情によるものであり、また、売買契約不成立の場合には、右三〇〇〇万円の返還をしない旨の特約は、当事者双方とも、その文言どおり履行を強制するものとは考えていなかつた。 (六) 同(六)の主張は、争う。 3 同3の主張は、争う。 五原告の憲法違反の主張に対する被告の反論 1 国土利用計画法二三条が、一定規模以上の土地売買等の契約の事前の届出制を制定したのは、行政が土地取引の過程に積極的に介入することにより、投機的な土地取引及び地価の高騰による国民生活の弊害を除去し、適正かつ合理的な土地利用の実現を図ることを目的としているのであつて、その立法目的は合理的である。 2 また、右規定の定める届出制は、規制区域内の土地取引の許可制だけでは、全国的な規模での地価高騰に適切・妥当に対処することができないために設けられたものである。そして、届出義務に違反したとしても、罰則(同法四八条)の適用はあるものの、取引そのものの効力には影響せず、取引を中止すべきことの勧告や右勧告に従わなかつたときの氏名の公表(同法二六条)といつた比較的緩やかな規制をするに留まつている。また、許可制において設けられている土地利用目的や地価に関する規制(同法一六条)と比 きことの勧告や右勧告に従わなかつたときの氏名の公表(同法二六条)といつた比較的緩やかな規制をするに留まつている。また、許可制において設けられている土地利用目的や地価に関する規制(同法一六条)と比較して、届出制では基準が緩やかで(同法二四条)、弾力的な運用が期待されている。しかも、勧告に基づき土地取引が中止された場合の救済措置も規定されている(二七条)。以上の点を考慮すると、同法の定める届出制は、右立法目的を達成するための手段として、必要かつ合理的なものである。 3 なお、農地法においては、農業委員会等の許可を条件とする権利が認められているが、条件付権利を認めるか否かは、当該法律の趣旨に照らして検討するべきである。農地法のもとでは、許可を受けずに締結された農地売買契約上の買主の権利が転々譲渡しうるとしても、同法の規制の直接の目的ではない。しかし、右のごとき条件付権利の転々譲渡が投機的土地取引として地価高騰の一因となつた事実に鑑みると、地価高騰の抑制を目的とする国土利用計画法においては、予約を含めた事前の土地売買等を規制する必要があり、それを規制したとしても、農地法との均衡を失することにはならない。 第三証拠関係(省略)○ 理由一請求原因1ないし3の各事実は、当事者間に争いがない。 二ところで、被告は本件土地の譲渡所得については、措置法三四条の二第一項、同条の二第二項三号の規定に基づく特別控除は認められない旨主張するので、検討する。 (昭和五七年一二月一五日の売買予約の成立について) 1 抗弁2の事実のうち、本件土地について、昭和五八年九月七日付で国土利用計画法二三条一項の届出がなされたこと、原告が昭和五七年一二月一五日にホームセンターのCから三〇〇〇万円を受領したこと、同2(二)の事実のうち、原告が昭和五七年五月に福島県知事に対 七日付で国土利用計画法二三条一項の届出がなされたこと、原告が昭和五七年一二月一五日にホームセンターのCから三〇〇〇万円を受領したこと、同2(二)の事実のうち、原告が昭和五七年五月に福島県知事に対する届出書に署名・押印したこと、同2(四)の事実のうち、原告が、本件代替地を取得する契約を締結したため、その代金を調達する必要があつたこと、以上の事実は、いずれも当事者間に争いがない。 2 右の争いのない事実と成立に争いのない乙第六号証、同第八号証、同第一〇ないし第一二号証(ただし、同第一〇号証については、後記措信しない部分を除く。)、原本の存在とその成立に争いのない乙第七号証、同第九号証、同第一五号証の一ないし三、調査嘱託の結果、証人F、同Eの各証言(ただし、いずれも後記措信しない部分を除く。)を総合すると以下の事実が認められる。 (一) ホームセンターの代表取締役Bらは、昭和五六年ころに、勤住協の理事長Aに対し、本件土地を含む福島市渡利絵馬平地区の土地をホームセンターにおいて買収する事務を担当するから、勤柱協において宅地開発を行つてはどうかとの話をもちかけた。勤住協は、昭和五七年二月ころに、右宅地開発を行う旨理事会で決定したうえ、ホームセンターに対して右地区内の土地の買収事務を委託するとともに、同年三月には日栄地質測量設計事務所に対し報酬額約二億二五〇〇万円で測量等の業務を委託した。 (二) ホームセンターのCらは、同年四月ころから、原告及び原告の代理人であるEに対し本件土地を売却するように交渉し始め、原告は、同年五月には右売却に同意することとし、国土利用計画法二三条一項の届出書に署名・押印した。 (三) 右Eは、右Cから本件土地の真の買主が勤住協であることを明らかにされなかつたものの、右(一)のとおり絵馬平地区の宅地開発を勤住協において行う旨 土利用計画法二三条一項の届出書に署名・押印した。 (三) 右Eは、右Cから本件土地の真の買主が勤住協であることを明らかにされなかつたものの、右(一)のとおり絵馬平地区の宅地開発を勤住協において行う旨を報じた同年二月二五日付の福島建設工業新聞により、その頃、右の買主が勤住協であることを知つた。 (四) 原告は、右(二)のとおり本件土地の売却に同意したため、その代替地をDから買い受けることとし、同年八月本件代替地について国土利用計画法に定める届出をした。 (五) Eは、右代替地取得費二五〇〇万円を調達するため、同年一二月一五日に、Cから三〇〇〇万円を受領したうえ、同月一七日に本件代替地についての売買契約を締結して、右代金を支払つた。 (六) EがCから受領した三〇〇〇万円は、ホームセンターないしBにおいて朝鮮銀行から借入れた資金の一部であるが、右借入れについては、勤住協の理事長のAが朝鮮銀行との間で保証する旨の契約をした。 (七) 右三〇〇〇万円の授受がなされた際に、EとCとの間に取り交わされた「金銭借用証書」には、不動文字で「但し別紙土地売買予約承諾書にもとづき、不動産売買契約を締結した時点で売買代金の一部として相済されても異議ありません。」との記載があつた。また、E及びCは、右三〇〇〇万円には、利息を付けない旨の特約をしてその旨を右金銭借用証書に記載するとともに、本件土地の売買契約が確実になされるものとするため、「本売買契約が不成立の場合、右借用金は返済しない」旨の特約をして、その旨を右金銭借用証書に記載した。 (八) その後、昭和五九年五月二九日に、Eと勤住協との間で本件土地についての売買契約書が作成され、売買代金の支払いがなされた。右支払いの際には、勤住協は、東邦銀行笹谷支店の自己宛小切手二通(額面三〇〇〇万円と二五七二万九〇〇〇円) に、Eと勤住協との間で本件土地についての売買契約書が作成され、売買代金の支払いがなされた。右支払いの際には、勤住協は、東邦銀行笹谷支店の自己宛小切手二通(額面三〇〇〇万円と二五七二万九〇〇〇円)を用意し、これをホームセンターのCらに交付し、Cらは右小切手のうち額面三〇〇〇万円のものを手元に留保して、もう一通をEに交付した。 3 右の認定に反する証拠について検討する。 (一) 前掲乙第一〇号証によれば、Cは、昭和六一年八月五日の福島税務署の調査に対し、勤住協のAからは、福島市渡利絵馬平地区の土地四〇数万坪全部を買収可能な状態にしたならば、それを勤住協において買い上げようとの話があつたにすぎず、ホームセンターが、自己の責任と資金により右地区の土地の取りまとめをしたものであるとの供述をしたことが認められる。 しかし、前掲乙第八号証によれば、Aは、昭和六二年五月一三日の国税副審判官の質問に対し、右地区内の一人の地権者の反対もないように用地買収を行うようにホームセンターに依頼したと述べたことが認められる。そして、前示2(一)のとおり、勤住協が昭和五七年三月ころに日栄地質測量設計事務所に対し二億二五〇〇万円もの多額の報酬額で測量等の業務を委託したことを考慮すると、勤住協は同年二月ころ、右地区内の全ての用地買収が可能となるとの見通しのもとに、その用地買収事務をホームセンターに依頼したと認定するのが相当であり、右Cの福島税務署の調査に対する供述は惜信することができない。 (二) 証人Eは、昭和五九年五月二九日の売買契約時まで本件土地の買主が勤住協であることを知らなかつたとの証言をする。 しかし、同証人は、Cらが本件土地の売買の交渉に来た際、Cらはいわゆる「地上げ業者」であつて、他に真の買受人がいると思つたとの証言をし、また、勤住協が絵馬平地区の開発を行う なかつたとの証言をする。 しかし、同証人は、Cらが本件土地の売買の交渉に来た際、Cらはいわゆる「地上げ業者」であつて、他に真の買受人がいると思つたとの証言をし、また、勤住協が絵馬平地区の開発を行う旨報じた昭和五七年二月二五日付福島建設工業新聞を同月ころに見たとの証言もしているのであるから、Eは、Cらが交渉に来た時に、真の買主が勤住協であることを知つていたと推認するのが妥当であり、昭和五九年五月二九日まで右事実を知らなかつた旨の右証言は措信することができない。 (三) 証人Fは、昭和五九年五月二九日の売買契約の後に、Eが代金全額を現金で受け取り、その中からCに三〇〇〇万円を返済し、残りを東邦銀行笹谷支店で預金したとの証言をする。 また、証人Eは、Cから、売買代金を全額現金で受領して、三〇〇〇万円をCに返済した後、残りを東邦銀行笹谷支店の自己宛小切手にして同支店で預かつてもらつたとの証言をする。 しかし、前掲乙第一一号証によれば、Cは、昭和六二年四月二一日の国税副審判官の質問に対し、昭和五九年五月二九日の代金支払いの際には、東邦銀行笹谷支店の自己宛小切手と現金で支払つたと述べたことが認められ、東邦銀行笹谷支店の自己宛小切手は勤住協の側で用意したと認めるべきであるうえ、右F及びE証人の証言によると、EはCから受け取つた現金のうち、三〇〇〇万円をすぐ同人に返済したことになるが、そのような行為は不合理であり、前示調査嘱託の結果に照しても、右各証言は措信することができない。 (四) そして、ほかに右2の認定を覆すに足る証拠はない。 4 そうすると、原告の代理人であるEは、勤住協から土地買収の事務委託を受けたホームセンターに対し、買主が勤住協であることを知りながら、本件土地の売却について同意し、昭和五七年一二月一五日に、ホームセンターから三〇〇〇万円を であるEは、勤住協から土地買収の事務委託を受けたホームセンターに対し、買主が勤住協であることを知りながら、本件土地の売却について同意し、昭和五七年一二月一五日に、ホームセンターから三〇〇〇万円を受領したことになる。そして、前示2(六)ないし(八)のとおり、右三〇〇〇万円は、ホームセンターないしBが朝鮮銀行から借り入れて調達し、「金銭借用証書」と引き換えにEに交付されたものではあるが、ホームセンターないしBの債務については、勤住協の理事長であるAが朝鮮銀行との間で保証契約をしたうえ、右「金銭借用証書」には、本件土地の「売買代金の一部として相済されても異議ありません」との記載をし、さらに、本件土地の売買契約が成立しない場合には、その三〇〇〇万円の返済はしない旨の特約までして、本件土地の売買契約が確実に成立するようにしたのである。したがつて、ホームセンターのなした右三〇〇〇万円の交付には、勤住協のAが自ら保証債務を負うことで資金獲得に協力し、勤住協と原告との間の本件土地の売買代金の中から確実にその回収をさせることとしたのであるから、実質的には、将来勤住協と原告との間に成立すべき本件土地売買代金の前払いとしての性格を有していたというべきであつて、右三〇〇〇万円の交付によつて、原告と勤住協とは、ともに将来本件土地の売買契約を成立させるべき拘束を受けたというべきで、その時点で売買予約が成立したものと解するのが相当である。 なお、原告は、Eが、国土利用計画法に定める届出がまだなされていないことを知り、本件代替地取得の代金支払いに苦慮し、Cに相談したところ、Cが、無利息で本件の三〇〇〇万円を貸したものであるとの主張をする(当事者の主張四2(四))。しかし、証人Eは、その証人尋問の際にも、右届出は昭和五七年五月になされたものと思つているとの証言をしてい が、無利息で本件の三〇〇〇万円を貸したものであるとの主張をする(当事者の主張四2(四))。しかし、証人Eは、その証人尋問の際にも、右届出は昭和五七年五月になされたものと思つているとの証言をしていることに徴すると、他に特段の証拠もないから、Eが右三〇〇〇万円の授受の際に右届出がなされていないことを知つていたとは認め難い。また、税理士で右三〇〇〇万円の授受に立ち会つた証人Fの証言によると、右三〇〇〇万円の授受の際に、E側も、ホームセンター側も、本件土地の売買について措置法三四条の二第一項に規定する特別控除が受けられるか否かの点について意識していなかつたことが窺われる。そうすると、右三〇〇〇万円の授受の際に、授受当事者は、本件土地の売買代金の前払いを受けることに抵抗感はなかつたはずで、授受当事者としても右三〇〇〇万円が実質的に売買代金の前払いであるとの認識であつたというべきである。 右認定に反する証人E及びFの各証言は、措信しない。 5 以上の検討によれば、原告と勤住協との間には、昭和五八年九月七日付の国土利用計画法の届出がなされる前である昭和五七年一二月一五日に売買予約が成立していたものである。したがつて、本件土地は、国土利用計画法に定める適法な届出をして適法に買い取られたものではないから、措置法三四条の二第一項、同条の二第二項三号による特別控除の適用はなく、右の適用を認めないことを理由とする本件各処分はいずれも適法である。 三なお原告は、国土利用計画法二三条三項が、同法一二条により規制区域とされた土地以外の土地についてまで、同法一五条一項各号に掲げる事項を総理府令で定めるところにより届出をした日から起算して六週間を経過する日までの間売買等の契約締結(同法一四条一項により「予約」を含む。)を禁止しているのは、憲法二九条に違反する旨主張す 掲げる事項を総理府令で定めるところにより届出をした日から起算して六週間を経過する日までの間売買等の契約締結(同法一四条一項により「予約」を含む。)を禁止しているのは、憲法二九条に違反する旨主張するので、この点について検討する。 1 財産権は、それ自体に内在する制約があるほか、立法府が社会全体の利益を図るために加える規制により制約を受けるが、右規制が憲法二九条二項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によつて制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して決すべきものである。そして、裁判所としては、立法府がした右比較考量に基づく判断を尊重すべきものであるから、立法の規制目的が右のような社会的理由ないし目的に出たとはいえないものとして公共の福祉に合致しないことが明らかであるか、又は規制目的が公共の福祉に合致するものであつても規制手段が右目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが明らかであつて、そのため立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合に限り、当該規制立法が憲法二九条二項に違背するものとして、その効力を否定できるものと解するのが相当である(最高裁昭和五九年(オ)第八〇五号同六二年四月二二日大法廷判決・民集四一巻三号四〇八頁参照)。 2 国土利用計画法二三条が、一定規模以上の土地売買等の契約(同法一四条により「予約」を含む。)を行おうとする者に対し、届出義務を課し、右届出をした日から起算して六週間を経過する日までの間、その届出に係わる土地売買等の契約を禁止しているのは、土地の投機的取引及び地価の高騰が国民生活に大きな弊害を生ぜしめたことに鑑み、その弊害を除去し、かつ、適正かつ合理的な土地利用を確保するため、全国にわたり土地 る土地売買等の契約を禁止しているのは、土地の投機的取引及び地価の高騰が国民生活に大きな弊害を生ぜしめたことに鑑み、その弊害を除去し、かつ、適正かつ合理的な土地利用を確保するため、全国にわたり土地取引の規制の強化を図ることを目的としていることは当裁判所に顕著な事実であり、右立法目的は公共の福祉に副うものと解される。 3 またその規制の方法についてみるに、国土利用計画法は、右の立法目的の達成のため、右届出に係わる予定対価の額が、届出の基準となる価額に照らし著しく適正を欠くか、又は、利用目的が土地利用基本計画等に適合しない等の要件に該当すると認めるときは、都道府県知事は土地売買等の契約締結の中止勧告等をなし(同法二四条)、右勧告に従わない者に対しては、その旨及び勧告の内容を公表することができるとしている(同法二六条)にとどまるのであつて、このような規制は、規制区域外の土地の売買等の取引の自由を一般的には是認しつつ、法定の面積以上の土地の売買等に限定して、右のような勧告、公表等の比較的緩やかな規制手段により右立法目的を達成しようとするものである。そして、右規制対象の契約には予約をも含むものであるが、これは右のような緩やかな手段で右立法目的を達成するためには、所管官庁が右の勧告をなすか否かの判断を行う前に、当事者を拘束する土地売買等の契約(「予約」を含む。)を成立せしめることが相当でないと考えられるからである。 4 原告は、右の規制により、企画、測量を含め、莫大な資金を事前に費消する大規模な宅地開発に着手することができなくなるとの主張をする。しかし、事前に多額の資金を費消することが開発業者にとつて危険であるということがいえるとしても、右危険は、一般の企業が負担する危険と変わりがないと考えられるうえ、そのことによつて大規模な宅地開発が不可能になる に多額の資金を費消することが開発業者にとつて危険であるということがいえるとしても、右危険は、一般の企業が負担する危険と変わりがないと考えられるうえ、そのことによつて大規模な宅地開発が不可能になるとはいえず、土地高騰、濫開発の規制等という公共の目的に徴し、右規制(なお、所有権者等の権利者が売却を規制される期間は六週間に過ぎない。)が明らかに不合理であるということはできない。 また、原告は、右規制が、許可を条件とする売買契約を有効とする農地法との均衡を失するとの主張をする。しかし、農地法と国土利用計画法とでは、その立法目的を異にすることは、両法の目的規定に照らし明らかであつて、立法目的の異なる農地法の規制手段との相違点をとらえて、国土利用計画法の右規制が不合理であるということはできない。 5 以上の検討によれば、届出をした日から起算して六週間を経過する日までの間の土地売買等の契約の締結を禁止した国土利用計画法の前記規定は、その規制目的が公共の福祉に合致しているうえ、その規制手段が右目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが明らかであるということはできないのであるから、当該規制立法は、憲法二九条二項に違反するものではない。 四よつて、本件各処分は適法で、これが違法であることを前提とする原告の請求は失当であるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官小林茂雄大内捷司都築政則)別紙物件目録、別表第一、第二(省略)

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