平成30(受)1519 未払時間外手当金等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年10月15日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 福岡高等裁判所 平成29(ネ)615
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判決文本文3,222 文字)

- 1 -平成30年(受)第1519号未払時間外手当金等請求事件 令和2年10月15日第一小法廷判決 主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人樋󠄀口隆明ほかの上告受理申立て理由第2及び第3の2について 1 本件は,上告人と期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結して勤務した時給制契約社員である被上告人が,期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)を締結している労働者(以下「正社員」という。)と被上告人との間で,夏期休暇及び冬期休暇(以下「夏期冬期休暇」という。)等に相違があったことは労働契約法20条(平成30年法律第71号による改正前のもの。以下同じ。)に違反するものであったと主張して,上告人に対し,不法行為に基づき,上記相違に係る損害賠償を求めるなどの請求をする事案である。 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 (1) 上告人は,国及び日本郵政公社が行っていた郵便事業を承継した郵便局株式会社及び郵便事業株式会社の合併により,平成24年10月1日に成立した株式会社であり,郵便局を設置して,郵便の業務,銀行窓口業務,保険窓口業務等を営んでいる。 被上告人は,平成22年6月7日,郵便事業株式会社との間で有期労働契約を締結し,同社及び上告人との間でその更新を繰り返して,郵便外務事務(配達等の事務)に従事する時給制契約社員であったが,同25年12月14日,上告人を退職した。 (2) 上告人に雇用される従業員には,無期労働契約を締結する正社員と有期労- 2 -働契約を締結する期間雇用社員が存在し,それぞれに適用される たが,同25年12月14日,上告人を退職した。 (2) 上告人に雇用される従業員には,無期労働契約を締結する正社員と有期労- 2 -働契約を締結する期間雇用社員が存在し,それぞれに適用される就業規則及び給与規程は異なる。 正社員に適用される就業規則において,正社員の勤務時間は,1日について原則8時間,4週間について1週平均40時間とされている。正社員の中には,被上告人と同様の業務に従事する者があるが,正社員は,業務上の必要性により配置転換や職種転換を命じられることがあり,多様な業務に従事している。また,正社員のうちの一定程度の割合の者が課長代理,課長等の役職者となるところ,正社員の人事評価においては,評価項目が多岐にわたり,組織全体への貢献を考慮した項目についても評価されるものとされている。 期間雇用社員に適用される就業規則において,期間雇用社員は,スペシャリスト契約社員,エキスパート契約社員,月給制契約社員,時給制契約社員及びアルバイトに区分されており,それぞれ契約期間の長さや賃金の支払方法が異なる。このうち時給制契約社員は,郵便局等での一般的業務に従事し,時給制で給与が支給されるものとして採用された者であって,契約期間は6か月以内で,契約を更新することができ,正規の勤務時間は,1日について8時間以内,4週間について1週平均40時間以内とされている。そして,時給制契約社員は,担当業務に継続して従事し,郵便局を異にする人事異動は行われず,昇任や昇格も予定されていない。また,時給制契約社員の人事評価においては,担当業務についての評価がされるのみである。 (3) 正社員に適用される就業規則では,郵便の業務を担当する正社員に夏期冬期休暇が与えられることとされている。夏期休暇は6月1日から9月30日まで,冬期休暇は10月1日 がされるのみである。 (3) 正社員に適用される就業規則では,郵便の業務を担当する正社員に夏期冬期休暇が与えられることとされている。夏期休暇は6月1日から9月30日まで,冬期休暇は10月1日から翌年3月31日までの各期間において,それぞれ3日まで与えられる有給休暇である。 これに対し,郵便の業務を担当する時給制契約社員には夏期冬期休暇が与えられない。 3 原審は,郵便の業務を担当する正社員に対して夏期冬期休暇を与える一方- 3 -で,同業務を担当する時給制契約社員に対してこれを与えないという労働条件の相違は労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たり,上記相違によって夏期冬期休暇の日数分の賃金に相当する額の損害が発生したと判断した。所論は,原審のこの判断には法令の解釈適用の誤りがある旨をいうものである。 4(1) 有期労働契約を締結している労働者と無期労働契約を締結している労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たっては,両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく,当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当である(最高裁平成29年(受)第442号同30年6月1日第二小法廷判決・民集72巻2号202頁)ところ,賃金以外の労働条件の相違についても,同様に,個々の労働条件の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当である。 上告人において,郵便の業務を担当する正社員に対して夏期冬期休暇が与えられているのは,年次有給休暇や病気休暇等とは別に,労働から離れる機会を与えることにより,心身の回復を図るという目的によるものであると解され,夏期冬期休暇の取得の可否や取得し得る日数は上記正社員の勤続期間の長さに応じて定まるものとは 暇等とは別に,労働から離れる機会を与えることにより,心身の回復を図るという目的によるものであると解され,夏期冬期休暇の取得の可否や取得し得る日数は上記正社員の勤続期間の長さに応じて定まるものとはされていない。そして,郵便の業務を担当する時給制契約社員は,契約期間が6か月以内とされるなど,繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく,業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれているのであって,夏期冬期休暇を与える趣旨は,上記時給制契約社員にも妥当するというべきである。 そうすると,前記2(2)のとおり,郵便の業務を担当する正社員と同業務を担当する時給制契約社員との間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても,両者の間に夏期冬期休暇に係る労働条件の相違があることは,不合理であると評価することができるものといえる。 したがって,郵便の業務を担当する正社員に対して夏期冬期休暇を与える一方で,郵便の業務を担当する時給制契約社員に対して夏期冬期休暇を与えないという- 4 -労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。 (2) また,上告人における夏期冬期休暇は,有給休暇として所定の期間内に所定の日数を取得することができるものであるところ,郵便の業務を担当する時給制契約社員である被上告人は,夏期冬期休暇を与えられなかったことにより,当該所定の日数につき,本来する必要のなかった勤務をせざるを得なかったものといえるから,上記勤務をしたことによる財産的損害を受けたものということができる。 5 以上と同旨の原審の判断は,いずれも正当として是認することができる。論旨は採用することができない。また,その余の上告受理申立て理由は,上 たことによる財産的損害を受けたものということができる。 5 以上と同旨の原審の判断は,いずれも正当として是認することができる。論旨は採用することができない。また,その余の上告受理申立て理由は,上告受理の決定において排除された。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 ( 裁判長裁判官山口厚裁判官池上政幸裁判官小池裕裁判官木澤克之裁判官深山卓也)

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