令和3(行ウ)13 保険医療機関指定取消処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年2月17日 札幌地方裁判所
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判決文本文13,995 文字)

判決 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 処分行政庁が原告医療法人社団Aに対し令和3年1月14日付けでした保険医療機関の指定取消処分を取り消す。 2 処分行政庁が原告Bに対し令和3年1月14日付けでした保険医の登録取消処分を取り消す。 3 被告は,原告医療法人社団Aに対し,722万4086円及び令和3年7月9日から上記各処分がいずれも取り消される日まで,1日当たり4万3258円の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,処分行政庁が,令和3年1月14日付けで,原告医療法人社団A(以下「原告法人」という。)に対し保険医療機関の指定取消処分(以下「本件処分1」という。)を,原告Bに対し保険医の登録取消処分(以下「本件処分2」といい,本件処分1と合わせて,「本件各処分」という。)をそれぞれ行ったところ,原告らが,本件各処分の通知には,行政手続法(以下「行手法」という。)14条1項本文の趣旨に照らして著しい理由不備があり違法である旨主張して,本件各処分の取消しを求め,また,処分行政庁は行手法14条1項本文の趣旨を考慮することなく漫然と本件各処分をしており,職務上尽くすべき注意義務に違反したと主張して,国家賠償法1条1項に基づき損害の賠償を求める事案である。 2 関係法令等の定め 別紙「関係法令等の定め」のとおり 3 前提事実以下の事実は当事者間に争いがないか,後掲括弧記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。 ⑴ 当事者ア原告法人は,医療法人社団AC歯科との名称の医療機関(以下「本件医療機関」という。)を は当事者間に争いがないか,後掲括弧記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。 ⑴ 当事者ア原告法人は,医療法人社団AC歯科との名称の医療機関(以下「本件医療機関」という。)を開設し,平成16年10月1日付けで本件医療機関につき,保険医療機関の指定を受けた。 医師である原告Bは,平成4年4月16日,保険医の登録を受け,本件各処分当時,本件医療機関で診療に従事していた。 イ処分行政庁は,健康保険法(以下「法」という。)80条に基づいて行う保険医療機関等の指定の取消し及び法81条に基づいて行う保険医等の登録の取消しに係る厚生労働大臣の権限の委任を受けた者である(法205条1項及び同法施行規則159条1項5の2号)。 ⑵ 本件各処分処分行政庁は,令和3年1月14日付けで,本件各処分を行い,本件処分1につき「保険医療機関の指定の取消について」とする通知(以下「本件通知1」という。)を原告法人に,本件処分2につき「保険医の登録の取消について」とする通知(以下「本件通知2」といい,本件通知1と合わせて「本件各通知」という。)を原告Bに,それぞれ送付した(甲1,2)。 第3 争点及び当事者の主張 1 争点本件の争点は,本件各処分における本件各通知の処分理由の記載が行手法14条1項に照らし適法といえるか否か並びに国家賠償法1条1項の違法の有無及び損害の額である。 2 当事者の主張 ⑴ 理由提示の不備について(被告の主張)ア本件処分1は,法80条1号ないし3号及び6号に基づくものであるところ,本件通知1では,本件処分1の根拠となる適用法条として上記条項が示されている。そして,これらの適用法条に該当する具体的な事実については,本件通知1の別紙において,保険医療 に基づくものであるところ,本件通知1では,本件処分1の根拠となる適用法条として上記条項が示されている。そして,これらの適用法条に該当する具体的な事実については,本件通知1の別紙において,保険医療機関及び保険医療養担当規則(以下「療養担当規則」という。)等に反する事実については該当条文が付されたうえでその違反の態様が記載されており,その他の事実についてはその内容と問題となる行為の態様が記載されている。 イ本件処分2は,法81条1号及び3号に基づくものであるところ,本件通知2では,本件処分2の根拠となる適用法条として上記条項が示されている。そして,これらの適用法条に該当する具体的な事実については,本件通知2の別紙において,療養担当規則等に反する事実については該当条文が付されたうえでその違反の態様が記載されており,その他の事実については,その内容と問題となる行為の態様が記載されている。 ウ本件各通知においては,本件各処分の根拠となる適用法条及び療養担当規則等ごとに対象となる行為及びその違反又は不正の態様が示され,その適用関係が明らかにされており,その記載自体から当該処分の名宛人において,いかなる事実関係に基づき,いかなる法規を適用して不利益処分がなされたのかを知ることが可能であり,不服申立ての便宜を与えるのに十分な理由提示がされている。どの患者のいつの歯科診療を指摘しているのかについて逐一記載する必要性はない。 したがって,本件各通知は行手法14条1項本文の定める理由提示の要件を満たすものであり,適法であることは明らかである。 (原告らの主張)ア本件各処分は不利益処分であり,行手法14条1項の趣旨に照らせば, 理由提示が十分でない行政処分は違法となる。 そして,行手法14条 かである。 (原告らの主張)ア本件各処分は不利益処分であり,行手法14条1項の趣旨に照らせば, 理由提示が十分でない行政処分は違法となる。 そして,行手法14条1項の趣旨からすれば,不利益処分において求められる理由の提示は,処分の相手方において処分の原因となる事実を具体的に知り得る程度に特定して記載しなければならない。 イ本件各通知に記載されている医療機関の事故及び保険医の事故について,各項目の列記はあるものの,誰に対する治療を指摘しているのか,またいつの治療なのかなど,具体的事実が不明である。 本件各処分は,原告らにおいて保険診療ができなくなり,歯科医院の運営が事実上ほぼ困難になるという重大な処分である。しかし,本件各通知には,抽象的事項の指摘はあるものの,誰に対する診療について問題にしているのか,いつの診療を問題にしているのか,本件各通知から了知することができない。 本件各処分の理由は,事実関係について,通知書の記載中で記載されておらず,不服申立ての便宜という趣旨からすると極めて不十分なものである。 ウしたがって,本件各処分は,いずれも著しい理由の不備があり違法である。 ⑵ 国家賠償法1条1項の違法の有無について(原告らの主張)本件各処分はいずれも理由提示に不備があり違法である。 処分行政庁は,行手法14条1項本文の趣旨を考慮することなく,漫然と本件各処分をしたのであり,職務上尽くすべき注意義務に違反した過失がある。 (被告の主張)本件各処分は適法であるから,国家賠償法上違法となる余地はない。 ⑶ 原告法人に生じた損害について(原告の主張) 本件各処分により,原告らは保険医療機関の指定 )本件各処分は適法であるから,国家賠償法上違法となる余地はない。 ⑶ 原告法人に生じた損害について(原告の主張) 本件各処分により,原告らは保険医療機関の指定及び保険医の登録に係る各取消しの効力発生日の翌日である令和3年1月23日から現在まで保険診療ができなくなった。その結果,過去2年分の損益計算書から計算して,1日当たり4万3258円の損害が生じており,同日から訴え提起の日である同年7月8日までの間に,722万4086円の損害が生じた。 (被告の主張)争う。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実,後掲括弧記載の各証拠及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 ⑴ 本件の経緯(乙7〔2,3頁〕)ア処分行政庁は,令和元年11月27日,原告法人に対し,個別指導を実施したところ,①診療報酬を請求している有床義歯のバーについて,歯科技工納品書に一部加筆した形跡が見られたため,原告Bへ質問したところ,「私が書き足しました」と回答があったこと,②診療録と予約簿の診療日に不一致が見られ,予約簿に記載がない日に受診したとして診療録に記載があったことから,原告Bへ質問したところ,「予約簿に記載がない患者は来ていない」と回答があったこと,③傾向的な多数歯の充填が見られたことについて,原告Bから「実際には1ブロックしかやっていないと思う」と発言があったこと,④1年位前から不正な請求を行っていた旨の発言があったことから,持参した関係書類を精査する必要が生じたが,時間内に確認を終えることができなかったため,原告Bの了解を得て,診療録,予約簿及び歯科技工関係書類の一部について写しを取得し,個別指導を中断した。 イ処分行政庁は,上記診療録 じたが,時間内に確認を終えることができなかったため,原告Bの了解を得て,診療録,予約簿及び歯科技工関係書類の一部について写しを取得し,個別指導を中断した。 イ処分行政庁は,上記診療録等の写しを精査した結果,診療報酬の請求に 関し,不正又は著しい不当が疑われるとして,個別指導を再開せず,監査を行うこととした。 ウ処分行政庁が,令和2年2月5日から同月7日の間に63名に対し患者調査を実施したところ,調査に応じた16名のうち8名について,以下のような事象が認められた。 7名について,歯周病検査,歯周基本治療(スケーリング又はスケーリング・ルートプレーニング)を受けたことはない旨回答があったが,診療報酬が請求されている。 5名について,レジン充填の処置を受けたことはない旨回答があったが,う蝕歯即時充填形成,充填,歯科充填用材料の診療報酬が請求されている。 1名について,回答があった診療日数より診療報酬が請求されている日数の方が多い。 2名について,受診していない月に診療報酬が請求されている。 ⑵ 監査についてア処分行政庁は,上記⑴の経緯を踏まえ,令和元年12月25日,同月26日及び令和2年8月26日ないし28日,原告らに対し,法78条1項に基づく監査を実施した(乙7)。 イ監査においては,原告Bの聴取調書が作成されており,令和2年8月27日に作成された聴取調書によれば,①全く行っていない保険診療について診療報酬を請求したこと(以下「架空請求」という。)について,「(診療録を提示しながら)」「初診の翌日以降,4日間連日で再診料等を診療報酬請求されていますが,これらの日の予約簿にはこの患者の氏名の記載がないため,全て来院の事実はないにもかかわ 。)について,「(診療録を提示しながら)」「初診の翌日以降,4日間連日で再診料等を診療報酬請求されていますが,これらの日の予約簿にはこの患者の氏名の記載がないため,全て来院の事実はないにもかかわらず,再診料,充形,レジン充填にかかる費用を請求したということですか。」という問いに対し「はい,間違いありません。」と原告Bが回答した(乙7〔31頁〕)。 また,「何故こういう診療報酬請求になっているのですか。具体的にお聞かせください。」との問いに対し,原告Bは,「患者さんが来院していないにもかかわらず,少しでも診療報酬請求の点数をアップさせるために行ったものです。」と述べた(乙7〔37頁〕)。 原告Bは,監査において,上記のように,①架空請求の事実を認めていた。 ウ同聴取調書によれば,原告Bは,②実際に行った保険診療に架空の保険診療を付け増して診療報酬を請求したこと(以下「付増請求」という。)について,「歯科技工納品書に書き足されて診療報酬請求されているものは,実態と異なる請求内容であったということで間違いないですか。」という問いに対し,「はい,間違いありません。」と述べ,②付増請求の事実を認めていた(乙7〔34頁〕)。 エまた,原告Bは,③実際に行った保険診療について保険点数の高い別の診療に振り替えて診療報酬を請求したこと(以下「振替請求」という。)について,「鉤の部位や個数が歯科技工納品書と一致しないものは,全て実態と違う診療報酬請求をしたということですか。」という問いに対し,「はい,その通りです。」と述べ,「何故このような診療報酬請求をしたのですか。」という問いに対し,「技工料の赤字を補てんするため,診療報酬請求の点数をアップするためです。」と述べ,③振替請求の事実も認めていた(乙7〔36頁〕)。 「何故このような診療報酬請求をしたのですか。」という問いに対し,「技工料の赤字を補てんするため,診療報酬請求の点数をアップするためです。」と述べ,③振替請求の事実も認めていた(乙7〔36頁〕)。 オ ④領収書の交付,その他の事故(以下「その他の事故」という。)について,原告Bは,個別指導の前は,明細書の発行を行っていなかった旨述べ(乙7〔24,28頁〕),「原告法人が算定要件を満たしていないにもかかわらず,診療報酬請求を行っていた事実を認めますか。」という問いに対し,「はい,認めます。」と述べた(乙7〔45~46頁〕)。 カ令和2年8月28日付けの開設者・保険医の弁明・意見書には,原告B の弁明・意見として,「悪いこと,いけないことと知りつつ記載致しました事,深く深くお詫び申し上げます。言い訳や言い逃れる事は一切ございません。御指摘頂いたすべての事が事実でございます。」との記載がある(乙7〔15頁〕)。また,動機について,原告Bは,「運転資金に困っていたため,診療報酬請求の点数をアップさせたかった。悪いことだとはわかっていた。」と説明していた(乙7〔9頁〕)。 ⑵ 聴聞手続についてア処分行政庁は,令和2年11月18日,原告らに対し,不利益処分の原因となる事実が記載された別紙が添付された聴聞通知書(以下,本件処分1に係る聴聞通知書を「本件聴聞通知書1」といい,本件処分2に係る聴聞通知書を「本件聴聞通知書2」といい,合わせて「本件各聴聞通知書」という。)を送付した(乙9,10)。 本件各聴聞通知書の別紙には,不利益処分の原因となる事実として,本件各通知と同様の適用条項及び違反事実が記載されていた。 イ処分行政庁は,令和2年12月14日,本件各処分に関して,行手法13条1項1号に基 通知書の別紙には,不利益処分の原因となる事実として,本件各通知と同様の適用条項及び違反事実が記載されていた。 イ処分行政庁は,令和2年12月14日,本件各処分に関して,行手法13条1項1号に基づき聴聞手続を実施した。 ウ聴聞手続においては,本件各聴聞通知書の記載に基づき,予定される処分の内容及びその根拠となる法令の条項並びにその原因となる事実について説明が行われた。この説明を受けた原告Bは,返還金が生じることに関して「こちらは全面的に返還する気があるので,もしよろしければ猶予いただきたいのですが,そのことは,その通知が来てから申し上げればよろしいのでしょうか。」などの発言をしたほかは,本件各処分の原因となる事実については,意見を述べなかった(乙11)。 ⑶ 本件各通知の記載ア本件通知1について(甲1) 本件通知1では,本件処分1の理由について「健康保険法第70条第 1項の保険医療機関又は保険薬局の責務及び同法第72条第1項の保険医又は保険薬剤師の責務に違反し,かつ,療養の給付等に関する費用の請求について不正があった事実が別紙のとおり判明し,さらに,健康保険法以外の医療保険各法においても同様の事実が判明し,健康保険法第80条第1号,第2号,第3号及び第6号の保険医療機関の指定の取消に該当するため。」と記載されている。 本件通知1の別紙には,「不利益処分の原因となる事実」について,令和元年12月25日,同月26日,令和2年8月26日,同月27日及び同月28日に実施した監査の結果判明した事実として,原告法人の事故に関し,保険医療機関及び保険医療担当規則違反の事実として,第2条の3及び第2条の4関係として,①架空請求をしていたこととして,歯科初診料等,歯科再診料等の記載があり した事実として,原告法人の事故に関し,保険医療機関及び保険医療担当規則違反の事実として,第2条の3及び第2条の4関係として,①架空請求をしていたこととして,歯科初診料等,歯科再診料等の記載があり,②付増請求をしていたこととして,歯科再診料,歯科疾患管理料等の記載があり,③振替請求をしていたこととして,小臼歯の鋳造鉤(二腕鉤)を大臼歯の鋳造鉤(二腕鉤)としていたとの記載があり,④保険診療と認められないものを保険診療を行ったものとして診療報酬を不正に請求していたとして,健康診断を目的として受診しているにもかかわらず,歯科初診があったものとして歯科初診料を不正に請求していたとの記載があり,⑤第5条の2関係として,患者に領収証の計算の基礎となった項目ごとに記載した明細書を交付していなかったと記載されている。 そのほか,高齢者の医療の確保に関する法律の規定による療養の給付等の取扱い及び担当に関する基準違反,その他の事故及び保険医の事故についても,同様の形式で不利益処分となる事実が記載されている。 また,本件通知1の別紙には,「不利益処分に係る適用条項及び適用される処分基準等」として,本件で適用された条項及び処分基準が示されており,適用される処分基準等として,「監査要綱(平成7年12月2 2日付け保発第117号厚生省保険局長通知別添2 最終改正:平成20年9月30日付け保発第0930008号厚生労働省保険局長通知)における行政上の措置の基準「故意に不正又は不当な診療報酬の請求を行ったもの」に該当する。」との記載がある。 イ本件通知2について 本件通知2では,本件処分2の理由について「健康保険法第72条第1項の保険医又は保険薬剤師の責務に違反し,かつ,健康保険法以外の医療保険各 がある。 イ本件通知2について 本件通知2では,本件処分2の理由について「健康保険法第72条第1項の保険医又は保険薬剤師の責務に違反し,かつ,健康保険法以外の医療保険各法においても同様の事実が別紙のとおり判明し,健康保険法第81条第1号及び第3号の保険医の登録の取消に該当するため。」と記載されている。 本件通知2の別紙には,前記ア及びと同様の記載がされている。 2 判断⑴ 行手法14条1項本文が,不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして,同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,上記のような同項本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである(最高裁平成21年(行ヒ)第91号同23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁参照)。 ⑵ 上記の見地に立って,前記認定の本件事実関係のもと,本件各処分について検討する。 本件各処分は,保険医療機関の指定及び保険医の登録の各取消処分である。 本件各処分の結果,原告らは保険診療ができなくなるという不利益を負うところ,いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては,健康保険,国民健康保険等を利用しないで病院で受診する者はほとんどいないと考えられることからすると,本件各処分は,原告ら 不利益を負うところ,いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては,健康保険,国民健康保険等を利用しないで病院で受診する者はほとんどいないと考えられることからすると,本件各処分は,原告らにとって重大な不利益を科すものといえる(最高裁平成14年(行ヒ)第207号同17年7月15日第二小法廷判決・民集59巻6号1661頁参照)。 したがって,本件各処分の理由を通知するにあたっては,いかなる事実にどのような法条を適用して当該処分がされたかを具体的に記載することが必要であると解される。 ⑶ 本件各通知の記載について前記認定のとおり,本件各通知には,不利益処分の根拠となる適用法条及び関連規則又は基準ごとに,対象となる行為及びその違反又は不正の態様が示され,その適用関係が明らかにされている。 たとえば,本件通知1には,原告らが行ったとされる歯科初診料等の請求が,実際には行っていない保険診療を行ったものとして請求した架空請求であることや,実際には小臼歯の鋳造鉤(二腕鉤)であるのにそれを保険点数の高い大臼歯の鋳造鉤(二腕鉤)として診療報酬を請求したことが不正請求であること,これらの請求が保険医療機関及び保険医療養担当規則第2条の3及び第2条の4に違反するものであって,法70条1項に違反し,法80条の定める取消事由に該当すること及び処分基準の「故意に不正又は不当な診療報酬の請求を行ったもの」に該当するとして本件処分1がされたことが具体的に記載されている。なお,関係法令等の定めによれば,故意に不正又は不当な診療報酬の請求を行った場合に行われる処分は,保険医療機関の指定及び保険医の登録の各取消処分のみである。 以上のことは,他の違反事実及び本件通知2についても同様である。 したがって,本件各通知の記載自体から 求を行った場合に行われる処分は,保険医療機関の指定及び保険医の登録の各取消処分のみである。 以上のことは,他の違反事実及び本件通知2についても同様である。 したがって,本件各通知の記載自体から,処分の名宛人である原告らにお いて,いかなる事実関係に基づき,いかなる法規を適用して不利益処分がされたかを知ることができる上,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するという観点に照らしても,本件各通知は,行手法14条1項本文の趣旨に反するものではない。 なお,原告らは,本件各通知の記載は,対象となる患者や診察の日時等の特定を欠くものであって,有効な不服申立てが困難であり,不服申立ての便宜を与えるという行手法14条1項本文の趣旨に照らし,理由提示に不備があると主張する。しかし,本件各通知の記載において,不利益処分の原因となる事実関係及び適用法条が示されており,理由提示に不備がないことは前述のとおりである。また,本件においては,個別指導,監査及び聴聞等の事前の手続を通じ,原告らにおいて具体的な処分の理由となる事実を了知し,その事実を認めていたと認められる。そのような本件事実関係のもとにおいて,不服申立てが困難であるという原告らの主張はなおさら採用できず,対象となる患者や日時等を逐一通知に記載する必要性はないというべきである。 ⑷ 国家賠償法上の違法及び損害について以上検討のとおり,本件各通知の記載に理由提示の不備はなく,本件各処分は適法であると認められるから,処分行政庁が本件各処分を行ったことに国家賠償法上の違法は認められない。 したがって,その余の点について検討するまでもなく,原告法人の損害賠償請求は認められない。 第4 結論以上によれば,原告らの請求はいずれも理由が 国家賠償法上の違法は認められない。 したがって,その余の点について検討するまでもなく,原告法人の損害賠償請求は認められない。 第4 結論以上によれば,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官中野郎 裁判官間明宏充 裁判官田中大地 (別紙関係法令) 健康保険法第70条1項(保険医療機関又は保険薬局の責務)保険医療機関又は保険薬局は,当該保険医療機関において診療に従事する保険医又は当該保険薬局において調剤に従事する保険薬剤師に,第72条第1項の厚生労働省令で定めるところにより,診療又は調剤に当たらせるほか,厚生労働省令で定めるところにより,療養の給付を担当しなければならない。 第72条1項(保険医又は保険薬剤師の責務)保険医療機関において診療に従事する保険医又は保険薬局において調剤に従事する保険薬剤師は,厚生労働省令で定めるところにより,健康保険の診療又は調剤に当たらなければならない。 第80条(保険医療機関又は保険薬局の指定の取消し)厚生労働大臣は,次の各号のいずれかに該当する場合においては,当該保険医療機関又は保険薬局に係る第63条第3項第1号の指定を取り消すことができる。 一保険医療機関において診療に従事する保険医又は保険薬局において調剤に従事する保険薬剤師が,第72条第1項(第85条第9項,第85条の2第5項,第86条第4項,第110条第7項及び第149条において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき(当該違反を防止するため,当該 する保険薬剤師が,第72条第1項(第85条第9項,第85条の2第5項,第86条第4項,第110条第7項及び第149条において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき(当該違反を防止するため,当該保険医療機関又は保険薬局が相当の注意及び監督を尽くしたときを除く。)。 二前号のほか,保険医療機関又は保険薬局が,第70条第1項(第85条第9項,第85条の2第5項,第86条第4項,第110条第7項及び第149条において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき。 三療養の給付に関する費用の請求又は第85条第5項(第85条の2第5項及び第86条第4項において準用する場合を含む。)若しくは第110条第4項(これらの規定を第149条において準用する場合を含む。)の規定による支払に関する請求について不正があったとき。 (4号及び5号省略)六この法律以外の医療保険各法による療養の給付若しくは被保険者若しくは被扶養者の療養又は高齢者の医療の確保に関する法律による療養の給付,入院時食事療養費に係る療養,入院時生活療養費に係る療養若しくは保険外併用療養費に係る療養に関し,前各号のいずれかに相当する事由があったとき。 (7号以下省略)第81条(保険医又は保険薬剤師の登録の取消し)厚生労働大臣は,次の各号のいずれかに該当する場合においては,当該保険医又は保険薬剤師に係る第64条の登録を取り消すことができる。 一保険医又は保険薬剤師が,第72条第1項(第85条第9項,第85条の2第5項,第86条第4項,第110条第7項及び第149条において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき。 (2号省略)三この法律以外の医療保険各法又は高齢者の医療の確保に関する法律による診療又は調剤に関し,前二号のいずれかに相当する事 9条において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき。 (2号省略)三この法律以外の医療保険各法又は高齢者の医療の確保に関する法律による診療又は調剤に関し,前二号のいずれかに相当する事由があったとき。 (4号以下省略) 国民健康保険法第40条(保険医療機関等の責務)保険医療機関等又は保険医若しくは保険薬剤師(健康保険法第64条に規定する保険医又は保険薬剤師をいう。以下同じ。)が,国民健康保険の療養の 給付を担当し,又は国民健康保険の診療若しくは調剤に当たる場合の準則については,同法第70条第1項及び第72条第1項の規定による厚生労働省令の例による。 2 前項の場合において,同項に規定する厚生労働省令の例により難いとき又はよることが適当と認められないときの準則については,厚生労働省令で定める。 保険医療機関及び保険医療養担当規則第2条の3(適正な手続の確保)保険医療機関は,その担当する療養の給付に関し,厚生労働大臣又は地方厚生局長若しくは地方厚生支局長に対する申請,届出等に係る手続及び療養の給付に関する費用の請求に係る手続を適正に行わなければならない。 第2条の4(健康保険事業の健全な運営の確保)保険医療機関は,その担当する療養の給付に関し,健康保険事業の健全な運営を損なうことのないよう努めなければならない。 第5条の2(領収証等の交付)保険医療機関は,前条の規定により患者から費用の支払を受けるときは,正当な理由がない限り,個別の費用ごとに区分して記載した領収証を無償で交付しなければならない。 2 厚生労働大臣の定める保険医療機関は,前項に規定する領収証を交付するときは,正当な理由がない限り,当該費用の計算の基礎となつた項目ごとに記載 て記載した領収証を無償で交付しなければならない。 2 厚生労働大臣の定める保険医療機関は,前項に規定する領収証を交付するときは,正当な理由がない限り,当該費用の計算の基礎となつた項目ごとに記載した明細書を交付しなければならない。 3 前項に規定する明細書の交付は,無償で行わなければならない。 第19条の2(健康保険事業の健全な運営の確保)保険医は,診療に当たつては,健康保険事業の健全な運営を損なう行為を行うことのないよう努めなければならない。 第22条(診療録の記載)保険医は,患者の診療を行つた場合には,遅滞なく,様式第一号又はこれに準ずる様式の診療録に,当該診療に関し必要な事項を記載しなければならない。 第23条の2(適正な費用の請求の確保)保険医は,その行つた診療に関する情報の提供等について,保険医療機関が行う療養の給付に関する費用の請求が適正なものとなるよう努めなければならない。 高齢者の医療の確保に関する法律の規定による療養の給付等の取扱い及び担当に関する基準第2条の3(適正な手続の確保)保険医療機関は,その取り扱う療養の給付及び保険外併用療養費に係る療養に関し,厚生労働大臣に対する必要な申請,届出その他の手続並びに療養の給付及び保険外併用療養費に係る療養に要する費用の請求に係る手続を適正に行わなければならない。 第2条の4(後期高齢者医療制度の健全な運営の確保)保険医療機関は,その取り扱う療養の給付及び保険外併用療養費に係る療養に関し,後期高齢者医療制度の健全な運営を損なうことのないよう努めなければならない。 第5条の2(領収証等の交付)保険医療機関は,前条の規定により患者から費用の支払を受けるときは,正当な理 し,後期高齢者医療制度の健全な運営を損なうことのないよう努めなければならない。 第5条の2(領収証等の交付)保険医療機関は,前条の規定により患者から費用の支払を受けるときは,正当な理由がない限り,個別の費用ごとに区分して記載した領収証を無償で交付しなければならない。 2 厚生労働大臣の定める保険医療機関は,前項に規定する領収証を交付するときは,正当な理由がない限り,当該費用の計算の基礎となつた項目ごとに記載した明細書を交付しなければならない。 3 前項に規定する明細書の交付は,無償で行わなければならない。 第19条の2(後期高齢者医療制度の健全な運営の確保)保険医は,診療に当たつては,後期高齢者医療制度の健全な運営を損なう行為を行うことのないよう努めなければならない。 第22条(診療録の記載)保険医は,患者の診療を行つた場合には,健康保険の例により,遅滞なく,診療録に当該診療に関し必要な事項を記載しなければならない。 第23条の2(適正な費用の請求の確保)保険医は,その行つた診療に関する情報の提供等について,保険医療機関が取り扱う療養の給付及び保険外併用療養費に関する療養に要する費用の請求が適正なものとなるよう努めなければならない。 高齢者の医療の確保に関する法律第65条(保険医療機関等の責務)保険医療機関等又は保険医等(健康保険法第64条に規定する保険医又は保険薬剤師をいう。以下同じ。)は,第71条第1項の療養の給付の取扱い及び担当に関する基準に従い,後期高齢者医療の療養の給付を取り扱い,又は担当しなければならない。 保険医療機関等及び保険医等の指導及び監査について(平成20年9月30日付け保発第0930008号厚生労働省保険局長通 従い,後期高齢者医療の療養の給付を取り扱い,又は担当しなければならない。 保険医療機関等及び保険医等の指導及び監査について(平成20年9月30日付け保発第0930008号厚生労働省保険局長通知)第3(監査対象となる保険医療機関等の選定基準) 監査は,次のいずれかに該当する場合に,地方厚生(支)局及び都道府県または厚生労働省並びに地方厚生(支)局及び都道府県が共同で行うものとする。 1 診療内容に不正又は著しい不当があったことを疑うに足りる理由があるとき。 (2項以下省略) 第6 監査後の措置 1 行政上の措置行政上の措置は,健康保険法第80条の規定に基づく保険医療機関等の指定の取消,同法第81条の規定に基づく保険医等の登録の取消(以下「取消処分」という。)並びに保険医療機関等及び保険医等に対する戒告及び注意とし,不正又は不当の事案の内容により,次の基準によって行う。 ⑴ 取消処分地方厚生(支)局長は,保険医療機関等又は保険医等が次のいずれか1つに該当するときには,当該地方厚生(支)局に置かれる地方社会保険医療協議会へ諮問して,取消処分を行う。 なお,地方厚生(支)局長は,地方社会保険医療協議会へ諮問する前に関係資料を添えて厚生労働省保険局長に内議を行う。 ① 故意に不正又は不当な診療を行ったもの。 ② 故意に不正又は不当な診療報酬の請求を行ったもの。 ③ 重大な過失により,不正又は不当な診療をしばしば行ったもの。 ④ 重大な過失により,不正又は不当な診療報酬の請求をしばしば行ったもの。 (以下省略) 主文 重大な過失により,不正又は不当な診療報酬の請求をしばしば行ったもの。 (以下省略)

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