- 1 -主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求被告が,原告に対し,平成14年5月15日から同年7月1日にかけて行った別表3の「3-1」ないし「3-3」の文書にかかる情報部分公開処分のうち,根拠条文「6条1号」又は「6条1号,5号」の理由により非公開とした部分をいずれも取り消す。 第2事案の概要 事案の要旨上福岡市の住民である原告が,埼玉県上福岡市情報公開条例(平成9年12月24日上福岡市条例19号。以下「本件条例」という)に基づき,被告に対し「上福。 ,岡市が当事者になった平成9年度以降の訴訟の概要が分かる資料(訴訟費用の明細を含む」に関する情報公開請求をしたところ,被告は,平成14年5月15日から7)月1日にかけて別表3の「3-1」ないし「3-3」の文書中非公開部分を除くものにつき,原告に対し,部分公開処分(以下「本件各処分」という)をしたが,原告。 が,被告に対し,本件各処分中非公開部分の取消しを求めた事案である。 ,,,()本件の争点は原告が被告に対し本件訴訟において公開を求める各情報文書(以下「本件情報」又は「本件文書」ということがある)が,本件条例の非公開事。 由に該当するか否か,本件条例6条1号,5号該当性である。 本件条例の定め本件処分当時における本件条例の関連規定は,次のとおりである。 「第1条(目的)この条例は,市民に対し情報の公開を求める権利を保障するとともに,情報の公開に関し必要な事項を定めることにより,市政に対する市民の理解と信頼を深め,市民参加を促進し,もって透明性を確保した民主的市政の一層の推進に寄与することを目的とする。 第2条(定義)この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。 を深め,市民参加を促進し,もって透明性を確保した民主的市政の一層の推進に寄与することを目的とする。 第2条(定義)この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。 (1)実施機関市長,教育委員会,選挙管理委員会,公平委員会,監査委員,農業委員会,固定資産評価審査委員会及び議会をいう。 (2)情報実施機関の職員が職務上,作成し,又は取得した文書,図画及び写真並びにフィルム,磁気テープ等から出力され又は採録されたもので,決裁又は供覧等の手続が終了し,かつ,実施機関が管理しているものをいう。 (3)情報の公開実施機関がこの条例の規定(第14条の規定を除く)により,情報の閲覧。 - 2 -に供し,又はその写しを交付することをいう。 第3条(実施機関の責務)実施機関は,市民の情報の公開を求める権利が十分に尊重されるようこの条例を解釈し,運用するとともに,情報の管理及び検索体制の確立に努め,個人に関する情報が保護されるよう最大限の配慮をしなければならない。 第4条(利用者の責務)この条例の定めるところにより情報の公開を受けたものは,これによって得た情報をこの条例の目的に則して,適正に使用しなければならない。 第5条(情報の公開を請求できるもの)次に掲げるものは,実施機関に対し,情報の公開(第5号に掲げるものにあっては,そのものの有する利害関係に係る情報の公開に限る)を請求することが。 できる。 (1)市内に住所を有する者(2)ないし(5)省略第6条(公開しないことができる情報)実施機関は,次の各号の一に該当する情報が記録されているときは,当該情報の公開をしないことができる。 (1)個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く)。 であって,特定の個人が識別され,又は識別され得るも 当する情報が記録されているときは,当該情報の公開をしないことができる。 (1)個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く)。 であって,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの。ただし,次に掲げる情報を除く。 ア法令又は条例(以下「法令等」という)の規定により,何人でも閲覧。 することができるとされている情報イ公表することを目的として実施機関が作成し,又は取得した情報ウ法令等の規定に基づく許可,免許,届出その他これらに相当する行為に際して実施機関が作成し,又は取得した情報であって,公開することが公益上必要と認められるもの(2)ないし(4)省略(5)市又は国等の機関が行う検査,監査,取締りの計画,争訟及び交渉の方針,入札の予定価格,試験の問題,職員の身分取扱いその他の事務事業に関する情報であって,当該事務事業の性質上,公開することにより,当該事務事業の公正かつ適正な執行を著しく困難にするおそれがあると認められるもの(6)省略第8条(情報の部分公開等)実施機関は,公開の請求に係る情報に第6条又は前条に規定する情報が記録されている場合において,その部分を容易に,かつ,当該情報の趣旨を損なわない程度に分離することができるときは,その部分を除いて当該情報の公開をしなければならない。 省略」 基本的事実関係(証拠等の摘示のない事実は,争いのない事実である)。 - 3 -(1)当事者原告は,上福岡市内に住所を有する同市の住民であり,被告は,本件条例2条1号所定の実施機関である上福岡市長である。 (2)本件各処分の経緯等ア原告は平成13年10月31日被告に対し本件条例9条に基づき上,,,,「福岡市が当事者になった平成9年度以降の訴訟の概要が分かる資料(訴訟費用の明細を含む」 本件各処分の経緯等ア原告は平成13年10月31日被告に対し本件条例9条に基づき上,,,,「福岡市が当事者になった平成9年度以降の訴訟の概要が分かる資料(訴訟費用の明細を含む」の情報公開請求をした。 )上記請求に対し,上福岡市には訟務担当課がなく,情報公開担当の総務部推進室でも詳細が把握できていなかったことから,その日は,原告に帰宅してもらい,その後,上記推進室は道路課,下水道課をはじめ,教育委員会等上福岡市全庁にわたって原告の上記請求について問い合わせた。その結果,平成13年11月5日になり,道路課においてさいたま地裁川越支部平成××年(ワ)(「」。)第×××号所有権移転登記抹消登記手続等請求事件以下第1事件というが,下水道課においてさいたま地裁平成××年(ワ)第×××号損害賠償請求事件(以下「第2事件」という)が係争中であることが判明した(弁論の全。 趣旨。 )そこで,上福岡市職員は,原告に対し,情報公開請求書の日付の補正を依頼し,原告は,平成13年11月5日付けで,被告に対し,道路課と下水道課に分けて「上福岡市が当事者になった平成9年度以降の訴訟の概要が分かる資,料(訴訟費用の明細を含む」の情報公開請求をした(以下,道路課に関する)情報公開請求を「本件公開請求1」といい,下水道課に関する情報公開請求を「本件公開請求2」といい,包括して「本件各公開請求」という。甲1の1,1の2。 )イ本件公開請求1につき,被告は,同月20日付けで,原告に対し,対象となる情報としては,①訴訟代理人選任起案,②弁護料支払起案,③同支出負担行為書,④同支出命令書,⑤資料提出起案,⑥準備書面,⑦答弁書,⑧証拠資料が存在するとしたうえ,上記①,②,⑤の各情報は,本件条例6条1号に該当し,上記③ないし⑧の各情報は,本件 起案,③同支出負担行為書,④同支出命令書,⑤資料提出起案,⑥準備書面,⑦答弁書,⑧証拠資料が存在するとしたうえ,上記①,②,⑤の各情報は,本件条例6条1号に該当し,上記③ないし⑧の各情報は,本件条例6条5号に該当するとして,情報非公開決定をした(別表1の「1-1」参照。甲2の1。 )本件公開請求2についても,同様に,被告は,同日付けで,原告に対し,対象となる情報としては,①訴訟代理人選任起案,②弁護料支払起案,③同支出負担行為兼支出命令書,④資料送付起案,⑤準備書面,⑥答弁書が存在するとしたうえ,上記①,②,④の各情報は,本件条例6条1号に該当し,上記③ないし⑥の各情報は,本件条例6条5号に該当するとして,情報非公開決定をした(別表2の「2-1」参照。甲2の2。 ),,,,ウ原告は上記処分を不服として平成14年1月11日付けで被告に対し本件条例13条1項に基づき,異議を申し立てた。 被告は,同条2項に基づき,同日,上福岡市情報公開・個人情報保護審査会に諮問したところ,同審査会は,同年4月22日付けで,本件第1事件における訴訟代理人選任起案,弁護料支払起案,支出負担行為書,支出命令書,本件- 4 -第2事件における訴訟代理人選任起案,弁護料支払起案,支出負担行為兼支出命令書については,訴訟代理人の当該事業に関する情報である口座情報及び相手方当事者等の個人情報に該当する部分は非公開とすべきであるが,これを除き公開することができるという内容の答申をした(甲3の1,3の2。 )被告は,上記答申に従い,同年5月13日付けで,本件第1事件に関する,訴訟代理人の選任起案,弁護料支払起案,支出負担行為書及び支出命令書を非公開とした処分の一部を取り消し(甲3の1,同様に,本件第2事件に関す)る,訴訟代理人選任起案,弁護料支払起案,支 に関する,訴訟代理人の選任起案,弁護料支払起案,支出負担行為書及び支出命令書を非公開とした処分の一部を取り消し(甲3の1,同様に,本件第2事件に関す)る,訴訟代理人選任起案,弁護料支払起案,支出負担行為兼支出命令書を非公開とした処分の一部を取り消す旨の各決定をした(甲3の2。 )エ被告は,上記異議決定を踏まえて,平成14年5月13日付けで,原告に対し,本件公開請求1につき,別表1の「1-2」の内容の情報非公開決定をし(乙6,同様に,本件公開請求2につき,別表2の「2-2」の内容の情報)非公開決定をした(乙7。そして,上福岡市は,同月15日,原告に対し,)新たな部分公開を実施し,写しを交付した(乙1の1ないし4,2の1ないし3。 )オ取下事件の情報部分公開について原告は,本件各第2処分後も,上福岡市に対し,本件各公開請求に対する対応に関する疑問を提示したうえ,民事訴訟法91条による閲覧制度と情報公開について市の考え方を5月31日までに文書で回答し,下水道課において取下げで終了した訴訟(以下「取下事件」という)に関する情報についても公開。 するように申し出た。 上福岡市は,取下事件について,原告に資料の一覧を示し,原告が希望する資料を確認し,その後公開することを約し,被告は,平成14年5月30日付けで,原告に対し「民事訴訟法第91条による閲覧制度と情報公開について,回答と題する書面乙9を交付し取下事件については別表3の ()」(),,「」,,-3の内容で当該情報を部分公開することを約したことから同年7月1日原告に対し,その写し(乙3の1ないし10)を交付した(弁論の全趣旨。 )(3)本件で原告が公開を求めている情報の範囲本件訴訟の口頭弁論終結当時,公開されていない情報は,別表3の「3-1 7月1日原告に対し,その写し(乙3の1ないし10)を交付した(弁論の全趣旨。 )(3)本件で原告が公開を求めている情報の範囲本件訴訟の口頭弁論終結当時,公開されていない情報は,別表3の「3-1」ないし「3-3」の非公開部分に記載されたとおりである。原告は,この非公開とされた部分中,根拠条文6条1号,5号を掲げたもの全部の公開を求めた(原告は,別表3の文書中非公開根拠事由が条例6条2号とされた訴訟代理人の口座情報は公開を求めていない。 。) 当事者の主張(1)本件条例6条1号該当性についてア被告別表3において非公開の根拠条文として「6条1号」又は「6条1号,6条5号」を掲げた文書は,いずれも本件条例6条1項1号ただし書アに該当しないから,本件条例6条1号の非公開事由に該当する。 (),,,ア民訴法91条92条は憲法82条の裁判公開の原則を維持しながら- 5 -一定の要件の下に個人や法人の情報等の保護が認められるとするもので,何人も無条件に訴訟記録を閲覧謄写できるとは規定していない。訴訟記録全部の閲覧及び謄写は最終的には裁判所により,裁判公開の原則と個人情報並びに法人情報等プライバシー保護とのバランスをとりながら裁判所の執務等も踏まえ,独自に判断されることとなる。 原告は,訴訟記録は,民訴法91条により何人も閲覧できる情報であることから,本件情報は,本件条例6条1項1号ただし書アに該当し,保護の対象となる個人情報に該当しないと主張するが,訴訟記録においても,民訴法91条2項以下において公開を禁止した弁論の場合は,当事者及び利害関係を疎明した第三者以外は閲覧できず,訴訟記録の写しの請求も当事者及び利害関係を疎明した第三者以外認めていないことからすれば,すべて全面公開されているというわけではない。また,民訴 当事者及び利害関係を疎明した第三者以外は閲覧できず,訴訟記録の写しの請求も当事者及び利害関係を疎明した第三者以外認めていないことからすれば,すべて全面公開されているというわけではない。また,民訴法91条以下の条文は,憲法82条による裁判公開の原則を受けて制定されたものであるが,この裁判公開の原則も,裁判官全員一致によって裁判の公開が公序良俗に反すると決定された場合には非公開とされており,裁判の公開により,個人の尊厳ないしプライバシー権の侵害が回復不可能な場合には,裁判の公開が後退すると解されており,民訴法91条2項以下,同法92条も同様に,他の法益(プライバシー権その他法益)との調整のために設けられた規定である。 (イ)裁判所での訴訟記録の閲覧及び謄写の可否は,裁判所が裁判公開の原則と個人情報等プライバシー保護の見地から独自の判断で行うものであるが,本件条例による個人情報の公開・非公開の決定は,同条例1条の目的,趣旨と個人のプライバシーよりさらに広い範囲の個人情報の保護との調整規定である同条6条1号に該当するか否かで判断されるものであり,それぞれの制度趣旨を異にするものである。 なお,本件条例6条1号本文の原則は,一度侵害されたプライバシーの回復は,困難であり,侵害された個人は計り知れない損害を被ることから,プライバシー保護の規定が必要であるが,何をもってプライバシーであるか確定することは困難であることから,より客観的な基準として定められたものである。 (ウ)また,市と市民との裁判において,民訴法91条に基づき,利害関係がある者に訴訟記録の写しを交付することは甘受できるであろうが,情報公開条例に基づき,市が利害関係のない者に対し訴訟記録の写しまで交付することについては,個人情報ないしプライバシーの開示がなされることに照らせば, 録の写しを交付することは甘受できるであろうが,情報公開条例に基づき,市が利害関係のない者に対し訴訟記録の写しまで交付することについては,個人情報ないしプライバシーの開示がなされることに照らせば,市民感情にも反するというべきである。 (エ)法令上閲覧可能情報が開示することができる情報として取り扱われているのは,法令等により何人でも閲覧等をすることが定められている公簿(不動産登記簿,商業登記簿,著作権登録原簿等)の謄本等が公文書の一部であるときは,その部分について何人も容易に入手できる個人情報であるからであり,そのため,閲覧等を利害関係人に限定しているものや一定期間のみ認めているものを含まないと解される。また,法令等に何人でもと規定されて- 6 -いても,請求の目的が法令又は運用等により制限され,実質的に閲覧を認めるという趣旨でないときは,法令上閲覧可能な情報に該当しないというべきである。 (オ)本件条例による情報公開とは,情報を閲覧に供し,又はその写しを交付することをいい(本件条例2条3号,民訴法91条2項による写しの交付)には,利害関係事由の疎明という要件の具備が必要であり,何人にも訴訟記録の写しを交付しているわけではない。 以上の事情に照らせば,訴訟当事者の住所,氏名等の個人に関する情報を含む当該訴訟記録は,裁判所から現に閲覧制限を受けているか否かにかかわらず,本件条例6条1号アに該当しないというべきである。 イ原告(ア)被告が本件6条1号に該当するとして非公開とした情報は,上福岡市の訴訟相手方の住所・氏名等であり,訴訟記録に記載された情報であるところ,民訴法91条1項は「何人も,裁判所書記官に対し,訴訟記録の閲覧,を請求することができる」としており,また,同条2項及び同法92条は訴訟記録の閲覧制限を設けているものの 載された情報であるところ,民訴法91条1項は「何人も,裁判所書記官に対し,訴訟記録の閲覧,を請求することができる」としており,また,同条2項及び同法92条は訴訟記録の閲覧制限を設けているものの,本件請求に関する訴訟記録では上記条項により閲覧制限されている事実もない。さらに,起案書等に記載された個人情報は,訴訟記録から容易に知ることが可能な情報であり,保護すべき個人情報とも言い難い。 (イ)したがって,本件情報は,本件条例6条1号ただし書アに該当する情報であるから,これを非公開とした本件各処分は違法である。 (ウ)被告は,民訴法91条1項の閲覧については,その閲覧を制限する規定(民訴法92条等)が存在することを理由に,本件文書は,本件条例6条1号ただし書アに該当しないと主張するが,同号の判断の対象となるのは,本件各公開請求の対象となる情報であって,訴訟記録一般ではないのであり,本件のように何ら閲覧制限がされていない訴訟記録に記載された本件情報については,何人も閲覧することができるのであるから,本件条例6条1号ただし書アに該当することは明白であり,同号を根拠としてなされた本件各処分は違法である。 (エ)憲法82条により裁判公開の原則が定められた趣旨は,訴訟過程を公開し,公衆の監視下におくことにより,裁判の公正さを担保することにあると解され,民訴法91条1項において訴訟記録の閲覧等を定めたのも,上記憲法の趣旨に基づくものであるところ,その目的を達するには,公開窓口を裁判所に限定する必然性はなく,むしろ多くの行政機関に広げることが望ましいというべきである。その意味で,本件条例のもとで訴訟記録を含む訴訟関連資料を公開することは,憲法が定める裁判公開原則の趣旨・目的に合致するものであり,一概に裁判公開制度と本件条例の制度の目的が異なると いうべきである。その意味で,本件条例のもとで訴訟記録を含む訴訟関連資料を公開することは,憲法が定める裁判公開原則の趣旨・目的に合致するものであり,一概に裁判公開制度と本件条例の制度の目的が異なるとはいえない。仮に本件条例による情報公開制度と裁判公開制度の趣旨・目的が異なるとしても,本件条例のもとで公開請求がなされた情報の公開・非公開の判定は,本件条例に基づき行われなければならないのであり,そうすると,- 7 -本件情報が本件条例の非公開事由に該当しない場合には,全て公開されるべきである。 被告は,民訴法による訴訟記録については,閲覧にとどまらず,写しの交付を求めるためには,利害関係事由の疎明が必要であるとされているのに対し,本件条例では,公開される情報について,請求者が要求すれば,実施機関は写しを交付しなければならない点が異なるとの主張をするが,市を当事者とした訴訟の帰趨は,市の財政状態や行政運営能力に影響を及ぼすのであり,住民に直接影響を及ぼすものであるから,民訴法91条2項の利害関係を有するというべきである。 (2)本件条例6条5号該当性についてア被告(ア)第1事件及び第2事件の文書のうち,裁判所に提出されていない文書を公開することは,訴訟の一方当事者である市の訴訟活動の重要な秘密を明らかにすることになり,現在係属中の市の訴訟追行の著しい障害となることは明らかである。 (イ)また,裁判所に提出済みの準備書面,答弁書及び証拠資料についても,これらは訴訟活動中に作成される書面であることから,これらが作成された意図,訴訟上の請求の趣旨及び原因その他争点との論理的関係を理解した上でなければ,それらの文書の正確な趣旨を理解することができず,これらをそのまま公開することは,相手方当事者以外の住民等において誤解を生ずるおそれが十 趣旨及び原因その他争点との論理的関係を理解した上でなければ,それらの文書の正確な趣旨を理解することができず,これらをそのまま公開することは,相手方当事者以外の住民等において誤解を生ずるおそれが十分にあり,その結果,市と訴訟代理人との信頼関係及び協力関係を損なうなど市の訴訟追行に著しい支障をきたすおそれがある。 (ウ)したがって,上記文書は本件条例6条5号に規定する市が行う争訟に関する情報であって,当該事務事業の性質上,公開することにより当該事務事業の公正かつ適正な執行を著しく困難にするおそれがあると認められるものに該当する。 (エ)原告は,裁判所に提出済みの答弁書,準備書面は,何人でも閲覧でき,当該訴訟において裁判所での閲覧制限もされていないことから,本件条例6条5号に該当しないと主張するが,裁判所での閲覧には一定の限度があること,裁判所での閲覧等と情報公開条例による閲覧謄写はそれぞれ別の制度であることからすれば,原告の主張は理由がない。 イ原告本件条例6条5号に該当するとされている情報のうち,資料提出起案と資料送付起案を除く各文書は,いずれも裁判所に提出され,当該訴訟の訴訟記録として裁判所に保管されているところ,訴訟記録については,民訴法91条1項により,何人も閲覧することができる情報であるから,これを本件条例に基づき公開したとしても,当該事務事業の執行に著しい支障を及ぼすおそれはないから,本件条例6条5号に該当しない。 ,,また裁判所に提出されていない資料提出起案及び資料送付起案についても起案の対象となった資料が既に裁判所に提出されていることを担当職員が認め- 8 -ているのであって,これらの起案書はその対象となった資料が訴訟記録として提出され当該裁判所において「何人も」閲覧することが可能であることからすれば,上福岡 されていることを担当職員が認め- 8 -ているのであって,これらの起案書はその対象となった資料が訴訟記録として提出され当該裁判所において「何人も」閲覧することが可能であることからすれば,上福岡市において,当該情報を非公開とする法的利益は認められない。 第3当裁判所の判断本件において被告の行った非公開処分の相当性を判断するについては別表3の3,,「-1「3-2「3-3」に掲げられた各文書件名ごとにその性質を考え,その当」,」,否を考えるのが相当である。そこで,以下個別に検討する。 別表3の「3-1」の番号1ないし4の文書(訴訟代理人選任起案,訴訟委任状,,,)(,弁護料支払起案支出負担行為書支出命令書の非公開部分相手方当事者の住所氏名)について乙1の1ないし4によれば,上記文書は上福岡市が被告となった道路課所管の訴訟にかかる訴訟代理人の選任,弁護料支払に関する資料と認められ,被告は,相手方当事者の氏名,住所等が個人に関する情報が記載された文書としてその部分を条例6条1項に該当するとして非公開としたものである。上福岡市を相手としての訴訟を提起することは,普通,上福岡市との間に一定の債権債務等の存否をめぐる争いがあることを示すものであり,その情報は本件条例6条1号本文の個人に関する情報に該当するというべきである。 しかし,民訴法91条1項は「何人も,裁判所書記官に対し,訴訟記録の閲覧を請求することができる」としていることから,この個人情報は,条例6条1号ただし。 「,」書アにいう法令等の規定により何人でも閲覧することができるとされている情報に当たるのではないかが問題となるので検討する。 ,,,本件条例は6条各号に公開しないことができる行政情報を列挙し1号本文では「個人に関する情報であって,特 閲覧することができるとされている情報に当たるのではないかが問題となるので検討する。 ,,,本件条例は6条各号に公開しないことができる行政情報を列挙し1号本文では「個人に関する情報であって,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」とした上,同号ただし書アないしウに定める情報はこれから除かれる旨,すなわち,それらは公開しなければならない情報とする規定方式を採用している。本件条例がこのような規定方式を採用したのは,行政情報の公開請求権は,いわゆるプライバシーの権利を中核とする個人情報の保護の利益と調和するように定められなければならないところ,いわゆるプライバシーの権利の概念は,法的にも社会通念上も必ずしも確立されていないものであるとの認識から,個人の権利利益の十全な保護を図るため,とりあえず特定の個人を識別できる情報は原則として不開示とすることとした上,このような規定方式では,本来保護する必要性のない情報までも非公開情報に含まれる結果になることから,これらを除外する趣旨でただし書を設け,公知の情報等個人に関する情報の不開示情報から除かれるべきものを列挙するという形式(いわゆる個人識別型)の方が判断の客観性を確保することができ,合理的であると判断したものと判断される。 このような本件条例6条1号の趣旨から「法令等の規定により,何人でも閲覧す,ることができるとされている情報(本件条例6条1号ただし書ア)とは,何人に対」,,しても例外なく公にされている情報であることが必要というべきでありその判断は個人のプライバシー保護の見地から慎重になされるべきである。 これを本件についてみるに,民訴法91条1項によれば何人も訴訟記録の閲覧を請- 9 -求し得るのが原則であるが,同条2項は「公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録の閲覧請求は,当事 れるべきである。 これを本件についてみるに,民訴法91条1項によれば何人も訴訟記録の閲覧を請- 9 -求し得るのが原則であるが,同条2項は「公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録の閲覧請求は,当事者及び利害関係を疎明した第三者に限り請求し得る」としており,訴訟記録の謄写や正本等の交付も当事者及び利害関係を疎明した第三者に限り請求し得るとしている(同条3項。また,秘密保護のため閲覧等の制限の規定(民訴法9)2条)もある。そして,口頭弁論の公開の禁止や秘密保護のための閲覧等の制限はいかなる訴訟においても潜在的に想定されるものであり,情報は一度開示されるとその効果を覆すことは不可能であり,訴訟記録の謄写は利害関係のない第三者には許容さ,,れないこととなっていることに照らすと訴訟記録の閲覧によって把握し得る情報は不動産登記簿や商業登記簿等に記載されている情報(これらは常に何人も閲覧や謄写請求できる形で公にされている)等とは異なり,条例6条1号ただし書アの「法令。 等の規定により,何人でも閲覧することができるとされている情報」には当たらないと解するのが相当である。 そうすると,上記文書中相手方当事者の氏名,住所について記載された部分は個人識別情報であり,条例6条1号該当として非公開とした被告の処分に違法はない。 別表3の「3-1」の番号5(資料提出起案と資料)について弁論の全趣旨によれば,上記文書は訴訟準備のため上福岡市の代理人となった弁護士の依頼により上福岡市が作成した資料及び起案文書で,被告は条例6条1号,5号に該当する情報として非公開としたことが認められる。 ところで,上記文書は,裁判所に未だ提出されておらず,その意味で上福岡市の内部資料に止まる文書であり,このような訴訟用の資料ではあるがいまだ裁判所に提出されていないものについて, ことが認められる。 ところで,上記文書は,裁判所に未だ提出されておらず,その意味で上福岡市の内部資料に止まる文書であり,このような訴訟用の資料ではあるがいまだ裁判所に提出されていないものについて,これを公開することは,訴訟の一方当事者である上福岡市の訴訟活動に関する重要な秘密を明らかにすることにつながるものであり,相手方が不当な目的でこれを利用するなど係属中の訴訟に不利益を及ぼしたりするおそれがあると認められる。そこで,上記文書については,これを公開することは訴訟事務の適正な執行を著しく困難にするおそれがあり,条例6条5号に該当するとして非公開とした被告の判断に違法はない。なお,上記文書については相手方当事者の住所,氏名記載部分は同時に条例6条1号の非公開事由に該当することは,1に述べたところから明らかである。 別表3の「3-1」の番号6ないし8(現に係属中の訴訟の訴状,答弁書,当事者双方の準備書面,書証,証拠説明書等)について弁論の全趣旨によれば,上記文書は訴訟の相手方や上福岡市が作成した準備書面や書証,呼出状等の裁判所に提出された訴訟書類の写しで,被告は条例6条1号,5号に該当する情報として非公開としたことが認められる。 民訴法91条1項は「何人も,裁判所書記官に対し,訴訟記録の閲覧を請求することができる」と定めるが,一方,同条3項は「訴訟記録の謄写や正本等の交付等」。 を請求し得る者を当事者及び利害関係を疎明した第三者に限って認めている。これは裁判の公開の趣旨をより徹底するためすべての人に記録閲覧の請求権を認めるが,一方訴訟記録には私人の様々なプライバシー等に関わる情報も記載されているから,無関係の第三者により興味本位に訴訟記録の謄写がされ写しが流布するようなことがないようにとの意図も含まれているものと解される。 - 10 - 人の様々なプライバシー等に関わる情報も記載されているから,無関係の第三者により興味本位に訴訟記録の謄写がされ写しが流布するようなことがないようにとの意図も含まれているものと解される。 - 10 -ところで,本件条例による情報の公開は,情報を閲覧に供し,又はその写しを交付することにより行うと定められているが(本件条例2条3項,甲1の1によれば,)原告は「写しの交付」による方法で上記文書の公開を請求したことが認められる。しかし,訴訟記録の謄写は民訴法上は当事者又は利害関係ある第三者に限り認められているものである。また,訴訟当事者は,民訴法92条の秘密保護のための閲覧等制限決定の有無に関わりなく,訴訟により知り得た相手方当事者や事件関係者の秘密をみだりに漏洩してはならない法律上の義務を負っていると解せられる。そこで,訴訟に無関係な第三者でも情報公開制度を利用して訴訟記録の写しを入手し得るとなると,民訴法91条3項の趣旨に反し,ことに訴訟が係属中のときは不必要な混乱をもたらすおそれを否定できず,ひいては被告の訴訟事務の適正な執行を著しく困難にするおそれがあるというべきである(なお,単に上福岡市の住民であることの一事をもっては利害関係ある第三者とは到底いえない。そこで,上記文書については,これを。)「写しの交付」により公開することは訴訟事務の適正な執行を著しく困難にするおそれがあり,条例6条5号に該当するとしてこれを非公開とした被告の判断に違法はない。なお,上記文書については相手方当事者の住所,氏名記載部分等は同時に条例6条1号の非公開事由に該当することは,1に述べたところから明らかである。 別表3の3-2の番号1訴訟代理人選任起案訴訟委任状の非開示部分相「」(,)(手方当事者の氏名,住所)について乙2の1によ することは,1に述べたところから明らかである。 別表3の3-2の番号1訴訟代理人選任起案訴訟委任状の非開示部分相「」(,)(手方当事者の氏名,住所)について乙2の1によれば,上記文書は上福岡市が被告となった下水道課所管の訴訟にかか,,,る訴訟代理人の選任に関する資料と認められるところ被告は相手方当事者の氏名住所等が個人に関する情報が記載された部分を条例6条1号に該当するとして非公開としたものである。そして,この判断は,1で説示したと同様の理由から相当であると認められる。 別表3の「3-2」の番号4(資料送付起案)中,①起案と⑤資料(水害被害状況等2件)について弁論の全趣旨によれば,上記文書は訴訟準備のため上福岡市の代理人となった弁護士の依頼により上福岡市が作成した資料及び起案文書で,被告は条例6条1号,5号に該当する情報として非公開としたことが認められる。 ところで,上記文書は,裁判所に未だ提出されておらず,その意味で上福岡市の内部資料に止まる文書である。そして,2で述べたように,このような訴訟用の資料ではあるがいまだ裁判所に提出されていないものについて,これを公開することは,係属中の訴訟に不利益を及ぼしたりするおそれがあると認められるから,これら文書について条例6条5号に該当するとして非公開とした被告の判断に違法はない(また,相手方当事者の氏名や住所記載部分等は,条例6条1号の非公開事由にも該当すると認められる。 。) 別表3の「3-2」の番号4(①起案と⑤資料を除く,5,6の文書(現に係属)中の訴訟の訴状,答弁書,当事者双方の準備書面,書証,証拠説明書等)について弁論の全趣旨によれば,上記文書は訴訟の相手方や上福岡市が作成した準備書面や書証,呼出状等の訴訟書類の写しで,被告は条例6条1号 訴訟の訴状,答弁書,当事者双方の準備書面,書証,証拠説明書等)について弁論の全趣旨によれば,上記文書は訴訟の相手方や上福岡市が作成した準備書面や書証,呼出状等の訴訟書類の写しで,被告は条例6条1号,5号に該当する情報として非公開としたことが認められる。 - 11 -そして,原告は「写しの交付」による方法で上記文書の公開を請求したことが認められるところ,3で述べたとおり訴訟に無関係な第三者でも情報公開制度を利用して訴訟記録の写しを入手し得るとなると,民訴法91条3項の趣旨に反し,係属中の訴訟に不必要な混乱をもたらすおそれがあり,ひいては被告の訴訟事務の適正な執行を著しく困難にするおそれがあるというべきであるから,上記文書の公開は条例6条5号に該当するとしてこれを非公開とした被告の判断に違法はない(また,相手方当事者の氏名や住所記載部分等は,条例6条1号にも該当すると認められる。 。)「」,,(, 別表3の3-3の文書中番号13ないし9の文書取下事件にかかる訴状答弁書,当事者双方の準備書面,書証,証拠説明書,打合せ記録,弁護士からの照会・回答等)について乙3の1ないし9によれば,上記文書は既に取下げによって終了した訴訟(上福岡市下水道課所管)にかかる訴訟についての相手方当事者や上福岡市が作成した準備書面や書証,呼出状等の訴訟書類の写しや上福岡市と弁護士との打合せ記録や資料で,被告は相手方当事者の氏名や住所の記載された部分や書証(契約書や不動産登記簿謄本)中個人名が記載された部分について条例6条1号に該当するとして非公開としたことが認められる。 よって判断するに,訴訟記録や打合せ記録中の相手方当事者の氏名や住所を記載した部分を条例6条1号該当として非公開としたことは相当であり,その理由は1で述べたところと同様であ したことが認められる。 よって判断するに,訴訟記録や打合せ記録中の相手方当事者の氏名や住所を記載した部分を条例6条1号該当として非公開としたことは相当であり,その理由は1で述べたところと同様である。また,訴訟記録中の書証である契約書等の個人名記載部分などについても条例6条1号該当として非公開(黒塗り)としたことも相当と認められる。 よって,主文のとおり判決する。 さいたま地方裁判所第4民事部裁判長裁判官豊田建夫裁判官都築民枝裁判官菱山泰男
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