【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 当審における訴訟費用は被告人の負担とする。 理 由 弁護人進藤寿郎の上告趣意第一点について。 所論は、原判決が単に所
主文 本件上告を棄却する。 当審における訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 弁護人進藤寿郎の上告趣意第一点について。 所論は、原判決が単に所持を奪うことをもつて窃盗なりと断定し、不法領得の意思のない被告人の行為を窃盗罪と断定したことが論旨引用の判例に反するというのである。 よつて按ずるに、およそ窃盗罪の成立には不正領得の意思あることを必要とし、そして不正領得の意思とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいうのであること当裁判所の判例とするところであり(昭和二六年(れ)第三四七号同年七月一三日第二小法廷判決参照)、この点所論の通りである。 そこで、原判決が認めた事実は被告人が単に他人の所持を奪つただけの事実であるか或は他人の物を窃取した事実であるかについて、原判決の趣旨を考えてみるに、およそ判決がその事実認定の部において被告人は他人の所持保管にかかる他人所有の動産数点を窃取したものであるとの趣旨を判示した以上はそのいわゆる窃取は不法領得の意思をもつて為されたものであるとの趣旨を示したものと解するのを相当とする。原判決を見るに本件第一審判決が、被告人がAに対して金借を申出で拒絶せられたのをふくみ、判示工事作業場において同人の所持保管にかかる同人その他の者の所有のじよれん九挺、川舟一雙その他の物件を窃取した事実を認定したのに対し、原判決は「第一審判決の掲げる証拠及びこれに対する被告人の主張弁解などを熟読し、経験則に照らしてその内容を検討綜合するときは、挙示の証拠はいずれも信を措くに足り、これを綜合判断することによつて、第一審判決認定の盗難事実- 1 -は勿論、それが被告人の所犯なりと断定するに難くない、よつて原判決が挙示の 検討綜合するときは、挙示の証拠はいずれも信を措くに足り、これを綜合判断することによつて、第一審判決認定の盗難事実- 1 -は勿論、それが被告人の所犯なりと断定するに難くない、よつて原判決が挙示の証拠により本件窃盗を被告人の犯行と認定したのは正当である。」との趣旨を判示して第一審判決を肯認しているのである。従つて原判決に右第一審判決の事実認定を是認して被告人の犯行を窃盗の犯行(窃取)なりと認めた趣旨が示されており、そして前示の理由により、この窃盗の犯行という文言にはそれが不法領得の意思をもつてなされたものという趣旨も現わされていると解するのを相当とする。原判決は、この点についても、ハツキリ「窃取」という文言を用いて疑義の起る虞のないようにした方がよかつたと思われるが原判決は決して被告人が不法領得の意思なくして単に他人の所持を奪つた事実を肯認したものではないと解するに足り、従つて、所論の判例と相反する判断をしたものだということはできない。論旨は理由がない。 同第二点について。 所論は、第一審判決引用の証拠によつては、第一審判決の判示事実殊に不法領得の意思を認めることができない、従つて第一審判決を肯認した原判決には事実の誤認がある、という主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。 (記録を調べると、第一審判決挙示の証拠によつて、金に困つていた被告人が判示昭和二六年二月一三日午後九時頃判示a川護岸工事作業場において判示Aの所持保管する同人等所有のじよれん九挺、作業器具百十数点、ゴム長靴三足、三つ鍬一挺、鉄棒四本等並びに川舟一雙(価格計二万数千円)を自己の手中に収めそのまま右川舟一雙に右雑品全部を積載しつつ被告人が右川舟を相当長い時分に亘つて操縦して持ち来り右作業器具の中一二点を右作業場現場より約二五町下流まで運搬した上附近 計二万数千円)を自己の手中に収めそのまま右川舟一雙に右雑品全部を積載しつつ被告人が右川舟を相当長い時分に亘つて操縦して持ち来り右作業器具の中一二点を右作業場現場より約二五町下流まで運搬した上附近の川岸の藪の中に投げ置き、又、右川舟を右作業場現場より約一里三四丁下流の川岸の藪中に繋留しておいた事実を認めることができる。〔尤も被告人が持つて来た他の被害物件の所在は判らない。〕右の事実自体によつて、被告人が判示の- 2 -川舟その他の物件についての判示Aの所持を侵し自己の所持に移すに当つては、これらの物件の権利者を排斥しこれを自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用又は処分する意思即ち不正領得の意思であつたことを推認することができる。そして第一審判決認定の事実は不正領得の意思以外の部分についても同判決挙示の証拠によりこれを認めることができ、この第一審判決を肯認した原判決には事実誤認はない。)同第三点について。 所論は量刑不当の主張であつて刑訴法四〇五条の上告理由に当らない。 その他記録を調べても刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。 よつて刑訴法四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。 昭和三〇年九月二七日最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官垂水克已裁判官島保裁判官河村又介裁判官小林俊三裁判官本村善太郎- 3 - 裁判官本村善太郎
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