【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 被告人弁護人長砂鹿蔵同下田三子夫提出の上告趣意書第一点は『原審判決の理由 に於て説示せられたる事実の認定に依れば(一)被
主 文 本件上告を棄却する。 理 由 被告人弁護人長砂鹿蔵同下田三子夫提出の上告趣意書第一点は『原審判決の理由 に於て説示せられたる事実の認定に依れば(一)被告人は金融機関C農業会D支部 の金融課長に就任し同支部の金融に関する業務を担当せること(二)其金融業務に 関し法定の除外事由なきに不拘鳥取県E組合に対し製塩事業の設備費として同組合 に交付せられたる封鎖支払による国庫補助金参拾七万円を同支部に預け入れた上現 金にて支払方同組合事務担当者より懇請せられ之を承諾せること(三)依つてF地 方専売局長発行に係る該補助金の支払通知書を鳥取県郡家郵便局に呈示せしめて同 郵便局から現金参拾七万円を受領せしめたこと(四)前記金額の内参拾弍万弍干円 を同支部扱の同郡G農業会の当座預金口座に現金扱として振込み更に之を同支部に 於て前記E組合の当座預金勘定に振込ましめたこと(五)以上の行為は封鎖支払に 基いて生した金融機関の預金を金融緊急措置令第参条第弍項の規定に依らすして現 金以外の封鎖支払に非さる支払を為したものである以上の如き事実認定の下被告人 の所為は金融緊急措置令第一条第一項第二条第十一条に該当するものと断し法律を 適用せるものである前示法律の適用に於て指摘せられたる同令第一条第一項に依れ ば封鎖預金は同令第三条第二項の規定に依るの外其支払を禁止すると共に同第二項 に於ては其支払の方法を(1)現金に依る支払、(2)現金以外の封鎖支払に非さ る支払、(3)封鎖支払の三者に限定し其分類及限度等は命令に委任せられたると ころ同第一項に「第一条の規定は左に掲くる者か金融機関に対し有する預金其他の 債権に付ては之を適用せす」と定め金融機関を同令第一条の適用より除外せるか故 に結局は封鎖預金を金融機関か金融機関に非さる第三者に支払する場合に於てのみ 同 左に掲くる者か金融機関に対し有する預金其他の 債権に付ては之を適用せす」と定め金融機関を同令第一条の適用より除外せるか故 に結局は封鎖預金を金融機関か金融機関に非さる第三者に支払する場合に於てのみ 同令第三条第二項に定められたる金融緊急措置令施行規則の制限を受くるものにし - 1 - て其両者か金融機関たる場合には同令の適用なきこと明かであるから原審判決の認 定事実を要約すれば金融機関であるC農業会D支部の金融課長の業務を担当する被 告人か其業務に関し金融機関に非さるE組合に交付せられた封鎖支払に依る国庫補 助金を現金にて支払を受けたる上之を現金扱としてG農業会続いて同支部に振込ま しめたる前示所為か前示条項に該当するものとして同令を適用し処断せるものなる ことに帰着する従つて原審はE組合なるものを非金融機関と認定せるか故にして若 し同組合なるものを金融機関と認定せらるるに於ては前記法令の適用より除外せら るるを以て被告人か金融課長たるの業務上取扱ひたる前示所為が同条項に該当し抵 触する余地なきことは明かにして同令所定の罪を構成せざるものである果して然ら ばE組合なるものは金融機関である町村農業会と別個独立に金融機関に非さるや右 E組合なるものの組織と内容を詳かにし其法律上の性格を究明する必要があるE組 合なるものは八頭郡下弍拾参町村の農業団体か塩の自給自足を計る為め各所属組合 員の要望に依り農業団体法第一一条第四号「会員に必要なる農業用物資の購買又は 加工若くは生産に関する施設」及町村農業会規則第二条目的事業八 「農業用設備 其他会員に必要なる設備利用に関する施設」等の法規に基き各組合員より薪壱把の 供出に対し塩四合を還元配給する予定の下に八頭郡弐拾参の各町村農業会か別個に 製塩設備を自営するに代へ共同に設備を供へ共同に利用する為め設けられたる共同 利用施設にして之をH組 基き各組合員より薪壱把の 供出に対し塩四合を還元配給する予定の下に八頭郡弐拾参の各町村農業会か別個に 製塩設備を自営するに代へ共同に設備を供へ共同に利用する為め設けられたる共同 利用施設にして之をH組合と称せるはI農業会の共同製塩事業たることを表明する 為め町村農業会弐拾参団体の名称を一々羅列するの繁雑を避け単に便宜上弐拾参団 体の名称に代へE組合なる単一名を仮用せるに過きすして飽くまで町村農業会弐拾 参団体か其主体であり全然組合の実質を有するものでない仮に製塩事業を共同の目 的とすることに依り組合の実質を有するものとするも其類型を求むれは民法上の組 合にして全く任意組合であり法定組合の如く法人格を有するものと異なる従て民法 上の組合は組合を組成せる各組合員か組合事業の主体にして組合員を離れて之れと - 2 - 別個に抽象的単一人格を構成せさると同様E組合は之を組成する町村農業会弐拾参 団体か製塩事業の各主体にして共同なることに依り組合の本質に変更を来し主体の 地位に変動を生するものでない以上自給製塩事業はI農業会弐拾参団体の共同利用 施設にしてE組合の事業主体は各弐拾参団体の各農業会であり別な団体に非さるこ とは既に述へたところである従て製塩事業の設備費として交付せられたる封鎖支払 に依る国庫補助金はE組合の名に依り交付せられたりと雖も製塩事業の事業主体に 交付せられたものであるから其交付を受くる主体はI農業会弐拾参箇の各農業団体 にして町村農業会は何れも金融機関なるを以て金融機関であるC農業会D支部の金 融課長を担当する被告人か其業務上I農業会弐拾参農業団体を事業主体とするE組 合事務担当者の懇請を受け支払人である金融機関郡家郵便局より封鎖支払に因る支 払通知書を以て現金の支払を受け之を同支部に受入れ更に之をG農業会又同支部の 各当座預金口座或は勘定に転々振込ましめたり E組 合事務担当者の懇請を受け支払人である金融機関郡家郵便局より封鎖支払に因る支 払通知書を以て現金の支払を受け之を同支部に受入れ更に之をG農業会又同支部の 各当座預金口座或は勘定に転々振込ましめたりとするも本来金融機関の金融業務と して取扱ひたるに過きされは国庫補助金の交付を受ける事業主体か金融機関である 町村農業会たる以上金融緊急措置令第三条第一項に依り同令第一条の適用を除外せ られ其適用を受けさるか故に被告人の前示所為は何れも同令違反に依る同令第一一 条所定の犯罪を構成せさるものにして無罪なるに不拘同令所定の犯罪に問擬し処断 せるは原審裁判所か法律を不当に適用する違法あるものなれば原審判決を破毀し無 罪を言渡さるへきものである』と言うに在る 然しながら府県農業会など地方農業会の金融業務担当者が封鎖支払の方法によつ て国庫補助金を交付せられた事業主から封鎖支払に非さる方法によつてその支払を 受けたき旨の依頼を受けて承諾し之を封鎖支払に基いて生じた農業会の預金として 受入れた上金融緊急措置令第三条第二項の規定によらずして之を現金以外の封鎖支 払に非ざる方法による支払をなしたものと認むべき場合には同令第一条の違反罪を 構成するものと解するのが相当である。今本件について之をみると原審が認定した - 3 - 事実は判文上稍々正確を欠く憾みがあるけれども、原判決に挙示せられてゐる証拠 を綜合しつゝ之を按じてみると、原審の確定した事実は要するに被告人は金融機関 であるC農業会D支部の金融課長としてその業務に関し、法定の除外事由がないの に、鳥取県E組合に対し製塩事業の設備費として同組合に交付せられた封鎖支払に よる国庫補助金三十七万円に付て、同組合事務担当者からこれを同支部に預け入れ た上、現金にて支払われたいとの懇請を受けたので之を承諾の上、偶々F地方専売 局長発行にかゝる、該 合に交付せられた封鎖支払に よる国庫補助金三十七万円に付て、同組合事務担当者からこれを同支部に預け入れ た上、現金にて支払われたいとの懇請を受けたので之を承諾の上、偶々F地方専売 局長発行にかゝる、該封鎖支払通知書が誤つてJ農業会宛になされてるたのを利用 して、之を指定局たる鳥取県郡家郵便局に呈示して同郵便局から金融機関宛払によ る現金三十七万円の交付を受け該金員の内別途組合に立替仮払をしてあつた金三万 八千円を控除した残額金三十三万二千円に付て之を同支部扱いの同郡G農業会の当 座預金に現金預金として振込み、更に之を同支部に於て前記H組合の当座預金に振 替えて、以て封鎖支払に基いて生じた金融機関であるC農業会の封鎖預金をH組合 の為、法定の方法に依らないで、現金支払以外の封鎖支払に非ざる支払を為したも のであると云うに在つて毫も該預金が所論のように八頭郡内二十三箇町村の町村農 業会自からの直営にかる製塩事業の助成金として発生したものであることを認定し たものではない。又判示組合が民法上の任意組合に属し従て各町村農業会を離れて 別個独立の法人格を有しないことも所論の通りであるけれども原審は本件の預金が 町村農業会を離れた別個独立の事業主体である判示E組合のものであることを確定 した上被告人に判示罪責を負わせたものであることが明かであつて預金封鎖の如く 資金流通上の統制を所期する法令に在つては苟も社会経済上独立の事業主体たる地 位を有しその地位に於て預金関係を有するものの如きにあつてはたとへ法人格を有 せざるも之を同法令の統制の対象として扱う趣旨と解するのを相当とするから、原 審が所論法条の適用上組合の預金をその構成員たる各町村農業会のそれと離れて別 個独立に成立し得るものと判示して之に所論のごとき法定の除外事由なきことを認 - 4 - めた上冒頭説示の理由により判示罪責を肯認 所論法条の適用上組合の預金をその構成員たる各町村農業会のそれと離れて別 個独立に成立し得るものと判示して之に所論のごとき法定の除外事由なきことを認 - 4 - めた上冒頭説示の理由により判示罪責を肯認したのは相当であつて、毫も所論のよ うに法令を不当に適用した違法はないものと解すべきである。よつて所論は理由が ない。 同上告趣意書第二点は「前段所論の如く自給製塩事業の設備費として封鎖支払に 依る国庫補助金を受けたる事業主体かI農業会即ち弐拾参農業団体である金融機関 に非すして仮にH組合なるものを金融機関に属せさる団体即ち別個の非金融機関に 属する団体と解すへきものとするも被告人は金融機関であるC農業会D支部の金融 課長として業務上支払人である金融機関郡家郵便局より封鎖支払に依る国庫補助金 を現金を以て支払を受けたりと謂ふにあれは金融機関の業務上D支部に受入れたる ものにして金融緊急措置令第一条第一項の規定は金融機関か封鎖支払を同令第三条 第二項の規定に依らすして支払ひすることを禁止せるものにして金融機関か封鎖支 払を現金を以て受入るることを禁止せるものに非さるが故に被告人の右所為は同令 違反の犯罪を構成するものでない尤も此点に関しては原審判決の理由に於ける事実 の認定は明瞭を欠き同所為を以て本件犯罪の対象とせるや否やは不明である若し同 所為を犯罪の対象より除外し事実の認定上其径路を判示する為め事実の説明に附加 せるものとすれは弁護人の所見と同一にして素より当然である更に同郵便局より受 領せる現金参拾七万円の内金参拾参万弐千円を同支部扱のG農業会の当座預金口座 に現金扱として振込み更に同支部に於てE組合の当座預金勘定に振込ましめとある は事実の説明上明確を欠くので判示せられたる事実の認定を本件記録に基き演繹す れば被告人は郡家郵便局より現金参拾七万円を受領せしめたる上C農業 込み更に同支部に於てE組合の当座預金勘定に振込ましめとある は事実の説明上明確を欠くので判示せられたる事実の認定を本件記録に基き演繹す れば被告人は郡家郵便局より現金参拾七万円を受領せしめたる上C農業会D支部の 仮勘定整理帳へ記入して同支部に受入れ後右参拾七万円の内金参拾参万弐千円をG 農業会のE組合の略称E組合の当座預金口座に帳簿上の振替に依り振込み更に右G 農業会の当座預金口座よりC農業会D支部の右略称E組合の当座預金勘定に同様の 方法に依り振替へたる事実を説明せるものにして判示事実中「同支部扱」とあるは - 5 - 右支部の仮勘定整理帳へ記入して一応同支部に受入れ後預金操作の行はれたる事実 関係を表現せるものの如く又「現金扱として」とあるは本来封鎖支払に属すへきも のなるに不拘之を表示せすして全然自由支払に属するものの如く処置せる事実関係 を表現せるものと認めらる而して是等弐箇の行為か以て封鎖支払に基いて生した金 融機関の預金を金融緊急措置令第三条第二項の規定に依らすして現金以外の封鎖支 払に非さる支払を為したものと認定し処断したのだから該行為か果して同令所定の 行為に該当し同令違反となるや否やを検討する必要がある金融緊急措置令第一条に 依り金融機関の封鎖預金の支払は第三条第二項に依り三つの枠内に於て命令の定む るところに従ひ支払せらる此三つの枠は(一)現金に依る支払(二)現金以外の封 鎖支払に非さる支払(三)封鎖支払に依る支払にして(一)は現金を以て自由支払 に依り放出せらるるもの(二)、(三)は何れも封鎖預金を認証小切手又は封鎖支 払票に依り引出又は支払を認めらるるものにして此両者は同一金融機関内又は甲金 融機関より乙金融機関に転することあるも終始金融機関の預金として存在するもの なれは結局預金名義者に変動を生するものであるか是等三つの枠に分け各枠に入れ らるへき のにして此両者は同一金融機関内又は甲金 融機関より乙金融機関に転することあるも終始金融機関の預金として存在するもの なれは結局預金名義者に変動を生するものであるか是等三つの枠に分け各枠に入れ らるへき支払の種類及限度は命令の定むるところに依り金融緊急措置令の眼目を為 すものにして其目的は金融市場に於ける通貨の膨脹を防止し通貨の安定を期するに あれは同令の運用も其制定の目的に鑑み適正に解釈すへきものである右の如き封鎖 預金の支払に対する制限は金融機関か封鎖預金を金融機関に非さる第三者に支払す る場合に限られたるものにして金融機関と金融機関との間にありては其適用を受け さることは既に縷々説明せるところ然るに被告人の前示行為は本件国庫補助金を現 金にて支払を受けC農業会D支部の仮勘定に受入れたるものを共儘同支部の略称E 組合の当座預金勘定に振替べきものを一旦G農業会の右E組合の当座預金口座に振 込み後同支部の当座預金勘定に振替たるものにして一見無用のことを為したるの観 ありと雖も啻に両金融機関の間に於ける帳簿上の金融操作にして現金が直接にも間 - 6 - 接にも全然授受せられたるものならさるか故に形式的にも金融機関たるC農業会D 支部と同しくG農業会の間に於ける金融業務上の事務的行為にして所謂非金融機関 である第三者を介在せるものならさると共に実質的には両金融機関の間に於て振込 み又は振替へ等の帳簿上の金融操作を為したるに過きすして現実に現金が授受せら れ又は現金の所在に変動を来せるものならす或は現金か所謂非金融機関と仮定する 略称E組合の事務担当者に交付せられ瞬間的にも之を経由してG農業会に振込まれ たるときは前示(一)現金に依る支払に該当するか故に同令違反を否定し得さるも 被告人の前示行為は全然現金の授受乃至異動を伴はさるものにして現金は初め同支 部に受入れたる儘依然同支部の G農業会に振込まれ たるときは前示(一)現金に依る支払に該当するか故に同令違反を否定し得さるも 被告人の前示行為は全然現金の授受乃至異動を伴はさるものにして現金は初め同支 部に受入れたる儘依然同支部の仮受勘定又は当座勘定に預金として存在し爾来今日 に至るまで継続せるのみならす何等預金名義者に変りはないから前示(二)、(三) の何れにも該当せさることは前叙説明に依り明かなるところ又同令の適用を回避す る為めに行はれたるものに非さることは直ちに原状に復帰せることに依り明かであ る之を要するに現金の支払を受けたる後尚同令第二条の所謂封鎖支払に基き生した る金融機関の預金即ち封鎖預金たることを認めるとしても同令第三条第二項に該当 するものでない金融緊急措置令の運用上金融機関に於ける金融操作の便宜の為め封 鎖預金と其の他の預金との区別に従ひ封鎖支払、自由支払、認証支払等の記号を附 するものの如きも是等は取払上の便宜に出てたるものにして金融関係当局の一通牒 文に基くものなれは全然同令の内容を為すものならさると共に之等記号を附せさる ことを以て原審か事実の認定に於て「現金扱」なる字句を判示せるものとせは金融 機関の間に在りては封鎖支払なるものか存せさることを忘れたると是等支払の取扱 上の区別を通貨自体の性質上の区別の如く誤解せるものである。 本件記録中被告人は前示行為に付き当時金融緊急措置令違反を自認せるか如き供 述を為せるものありと雖も素より被告人は専門家にあらさるを以て法律上の智識を 有せさるか故に斯る誤解を生したりとするも為めに被告人の前示行為に対する責任 - 7 - を加重せさると共に本件事犯の成否を左右するものでない。 以上所論に依り被告人の本件認定事実に表現せられたる行為は何れも金融緊急措 置令所定の前記条項に該当せす従て同令に違反せさるを以て同令所定の犯罪を構成 せさる 共に本件事犯の成否を左右するものでない。 以上所論に依り被告人の本件認定事実に表現せられたる行為は何れも金融緊急措 置令所定の前記条項に該当せす従て同令に違反せさるを以て同令所定の犯罪を構成 せさるに依り全然無罪なるに不拘原審裁判所は法律を不当に適用し即ち擬律の錯誤 に依り有罪の判決を与へたる違法あるを以て原審判決を破毀し無罪を言渡さるへき ものであると云うに在る。 然しながら原審が被告人の判示行為を金融緊急措置令 違反に問擬した所以のものは曩に第一点に関して説明したように、被告人が判示H 組合の封鎖支払に因る助成金を同組合の為現金化する趣旨の下に、偶々該封鎖支払 指図書が金融機関である郡農業会名義に誤つて指図せられていたのを奇貨とし、金 融機関に対する支払が現金払を可能とする同措置令の統制方式を利用して、先ず指 定郵便局から現金に因る適法な支払を受けた上之を順次所論摘録のような振替又は 振込の方法によつて結局金融機関に非ざる判示H組合の為現金預金化せしめた一聯 の目的行為が金融緊急措置令の防止せむと欲する資金統制上の要求に背馳するもの と認めたが為に外ならない。されば被告人の採つた各個の措置が仮に所論のように 適法な金融機関相互間の金融操作の形において行われてゐたとしても、之を以て判 示被告人の所為か同令違反に触れない除外事由に該当していると即断することは許 されない畢竟所論は被告人の為した一聯の目的行為を故らに分断し、その各々の形 式に仮託して、その所為を適法なりとなすもので金融緊急措置令の法意を曲解する ものたるに帰着し理由がない。 同上告趣意書第三点は「更に本件国庫補助金は本来製塩事業の設備費としてE組 合に対し封鎖支払を以て交付せられたるものなることは原審判決の事実の認定に於 て判示せるところ其事業主体が町村農業会と別個独立のH組合に属するか或は金融 緊急措置 補助金は本来製塩事業の設備費としてE組 合に対し封鎖支払を以て交付せられたるものなることは原審判決の事実の認定に於 て判示せるところ其事業主体が町村農業会と別個独立のH組合に属するか或は金融 緊急措置令第八条に規定せられたる所謂金融機関に属せさるものとすれは同令第三 条第一項の適用なきか故に同令第一条第一項に依り同令第三条第二項の適用を受け - 8 - 封鎖支払として現金の支払を受け得さるものなりと雖も該補助金の支払通知書を発 行せるF専売支局長がJ農業会と謂ふ団体か右E組合の名を以て製塩事業を行ふも のと誤認し其支払通知書に受取人をJ農業会と記載し又支払通知書の提示を受けた る支払人郡家郵便局に於ては右J農業会はC農業会D支部の略称と解し所謂金融機 関に属するを以て封鎖支払であるか右制限は金融機関に適用なき為め現金即ち自由 支払を為せるものである被告人は右D支部の金融課長であるから偶支払通知書の誤 記と局員の不知に依り現金の支払を受け同支部の仮勘定に受入れたるものである従 て被告人の右現金の支払を受くる行為は悪意を存せさりしとするも其の結果に於て は誤記と不知の偶合を利用せることは否定し得さるものとするも一旦現金を以てD 支部の仮勘定に受入れたる以上右現金は金融機関に属せさるH組合の自由預金とし て同組合か預金者であり又同支部は其預主である故に封鎖支払と雖も其受取人の為 めに一たび現金化して金融機関の自由預金に受入れられたる以上前来説明せる如く 封鎖支払、自由支払の区別は通貨自体の性質上の区別に非さるを以て既に右受入れ に依り自由預金として存在し同令第二条に所謂封鎖支払に基き生したる金融機関の 預金即ち封鎖預金に非さるか故に同令第一条第一項及第三条第二項の適用を受くへ きものにあらすして自由に現金として其受入及払戻を為し得へきものなれば其後に 於ける被告人の右G農業会の振 生したる金融機関の 預金即ち封鎖預金に非さるか故に同令第一条第一項及第三条第二項の適用を受くへ きものにあらすして自由に現金として其受入及払戻を為し得へきものなれば其後に 於ける被告人の右G農業会の振込又は振替行為が判示理由の如く現金扱なりとする も何れも同令所定の違反に該当するものならす従て同令第十一条の罪を構成せさる に不拘同令第一条、第二条、第十一条に該当するものとして被告人を有罪と断せる 原審判決は罪とならさる行為に刑を科せる違法あるものにして即ち法律を不当に適 用せるものなれは之れを破毀して無罪を言渡さるへきものである」と云うに在る。 然しながら原判示事実の趣意とする所は既に第一、二点に関して説明した通り、 被告人が封鎖預金として預入れたる国庫補助金を偶然の誤記を利用して之を現金化 せしめたる上所期のごとく組合の現金預金に変更せしめた一聯の目的行為を金融緊 - 9 - 急措置令違反に問擬した趣旨と認むべきであるから、よしや指定郵便局から現金の 支払を受けた行為が同令の適用上適法な除外事由に該当し従つてその以後に於ては 専ら組合等の現金預金として順次帳簿上の移動を遂げたに過ぎないこと所論の如く であつたとしても、右の経緯は被告人の判示刑責に些の消長を及ぼすものでないと 解するのが相当である。本論旨も亦被告人の一聯の目的連鎖行為を故らに個々に寸 断して、その上に立つて個々の行為の適法性を主張するものたるに帰着する。原判 決には毫も法律を不当に適用した違法はないから本論旨も亦理由がないと云うべき である。 要するに本件の小切手は金融機関でない事業主体たるE組合の事業資金として同 組合の封鎖預金となるべきものであつたので、自由預金にしてはならないものだつ たのである。然るに被告人はそのことを知りながら色々の手段を用いて右組合の自 由預金にしてしまつたので、その点に於て として同 組合の封鎖預金となるべきものであつたので、自由預金にしてはならないものだつ たのである。然るに被告人はそのことを知りながら色々の手段を用いて右組合の自 由預金にしてしまつたので、その点に於て金融緊急措置令に違反するのである。被 告人の行為は一つ一つの引出行為や預金行為として見れば形式的には同令に反しな いのかも知れないけれども、全体として見れば初めから同令の趣旨に反する結果を 得る目的を以て為された一連の行為であつて、しかも其結果を得たのであるから、 同令違反の犯罪を構成するものと見なければならない。 以上の理由は裁判官全員一致の意見であるので刑事訴訟法第四百四十六条により 主文の通り判決する。 検察官下秀雄関与 昭和二十三年二月十日 最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎 裁判官 井 上 登 裁判官 庄 野 理 一 - 10 - 裁判官 島 保 裁判官 河 村 又 介 - 11 -
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