昭和32(う)1841 殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和33年2月24日 東京高等裁判所 破棄自判
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人を懲役二年に処する。      押収にかかる鉈一挺(昭和三二年押第六一一号の一)を没収する      原審並びに当審における訴訟費用は、被告

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判決文本文2,564 文字)

主    文      原判決を破棄する。      被告人を懲役二年に処する。      押収にかかる鉈一挺(昭和三二年押第六一一号の一)を没収する      原審並びに当審における訴訟費用は、被告人の負担とする          理    由  水戸地方検察庁土浦支部検察官検事池田貞二の控訴理由は、末尾に添付する控訴 趣意書と題する書面に記載するとおりである。  ところで、原判決が被告人に対して無罪の言渡をした理由の中、「当裁判所の見 解」の項において、被告人の原審公判廷における供述、被告人の検察官に対する供 述調書(三通)、証人Aの原審第三回公判調書中の供述記載、証人B、同Cの原審 第四回公判調書中の供述記載、証人Dの尋問調書、C、E、F、B、A、Dの司法 警察員に対する各供述調書、医師G作成の鑑定書、司法警察員並びに原審の各検証 調書、押収にかかる鉈一挺、屋根鋏一挺の各存在を綜合して、被告人が昭和三一年 一〇月三一日夜居宅内土間において同部落民であつた屋根職H(当時四一年)に鉈 をもつて斬りつけた結果、頭部切創による左大脳損傷のため、これを即死させるに 至らしめたという事実を認定したが、その判示する行為の動機、態様、行為当時の 事情、状況は、すべて、当審において行つた検証並びに証人尋問の結果に徴してみ ても、決して誤つてはいないということができるのであつて、被告人の所為は、ま さに、Hの急迫不正の侵害に対し、自己の生命身体を防衛するための反撃行為に外 ならなかつたということかできるのである。そこで、原判決に重大なる事実の誤認 かあるとして、(1)Hが屋根鋏を被告人に突きつけて立ち向つたとしても、その 動作は緩慢で一瞬の余裕のない切迫したものではなく、従つて、それには急迫性が 認められないのみならず、(2)真実、被告人に危害を加える意思があつたものと は、とうてい、考 つけて立ち向つたとしても、その 動作は緩慢で一瞬の余裕のない切迫したものではなく、従つて、それには急迫性が 認められないのみならず、(2)真実、被告人に危害を加える意思があつたものと は、とうてい、考えられず、それは単におどかしに過ぎなかつた、しかも(3)被 告人ばそのことを看取していたのであるから、これに対して被告人において防衛行 為に出ずるわけはなく、被告人の鉈をもつて斬りつけた所為は、Hに対する敢行的 殺人行為である、とする所論は、証拠に対する価値判断を誤つた結果、却つて事実 に副わ<要旨>ない主張をするものであつて、もとより採用するわけにはいかない。 しかし、原判決はその認定にかかる事実</要旨>に対して法律を適用するに当り、被 告人の最初の一撃は刑法第三六条第一項に該当する正当防衛行為であり、その一撃 によつて横転した後のHに対する三、四回に亘る追撃的行為は盗犯等の防止及び処 分に関する法律第一条第二項に該当する無処罰行為だとした点は、これら両法条の 解釈適用を誤つた違法あるものといわなくてはならない。そもそも、同一の機会に おける同一人の所為を可分し、趣旨を異にする二つの法律を別々に適用するがごと きことは、立法の目的に副わほい措置であつて、とうてい許されない所である。被 告人はHの急迫不正の侵害に対し、自己の生命身体を防衛するため、鉈をもつて反 撃的態度に出たのであるが、最初の一撃によつて同人が横転し、そのため同人の被 告人に対する侵害的態勢が崩れ去つたわけであるのに、被告人は異常の出来事によ り、甚だしく恐怖、驚愕、興奮且つ狼狽したあまりとはいえ、引きつづき三、四回 に亘り追撃的行為に出たのであるから、被告人のこの一連の行為は、それ自体が全 体として、その際の情況に照らして、刑法第三六条第一項にいわゆる「已ムコトヲ 得ザルニ出デクル行為」とはいえないのであつ 四回 に亘り追撃的行為に出たのであるから、被告人のこの一連の行為は、それ自体が全 体として、その際の情況に照らして、刑法第三六条第一項にいわゆる「已ムコトヲ 得ザルニ出デクル行為」とはいえないのであつて、これは却つて同法条第二項にい わゆる「防衛ノ程度ヲ超エクル行為」に該るものといわなくてはならない。果して 然りとするならば、被告人に対しては無罪の言渡をすべき筋合ではない。しかる に、原判決は論旨第二点において指摘するがごとき法律の解釈適用を誤つた結果、 被告人に対して無罪の言渡をしたのであるから、原判決はこの点において破棄を免 れない。それで、同論旨は理由あるものというべく、刑訴法第三九七条第一項に則 つて、原判決を破棄し、同法第四〇〇条但書に従つて、次のごとく判決する。  原判決が認定した被告人の判示所為は、その挙示する証拠によつて刑法第一九九 条に規定する殺人罪の構成要件に該当することが明らかであるが、その所定刑中有 期懲役を選択する。しかし、該所為は同法第三六条第二項に規定する過剰防衛行為 をもつて論ずべき場合に該るので、その規定する所に従い、その刑を減軽又は免除 することができる。もし、被告人の恐怖、驚愕、興奮且つ狼狽に出た判示所為が宥 恕すべきものと認めることができるならば、その刑を免除するの挙を選ぶことがで きようが、その使用した兇器、その所為の態様等の点から観て、とうてい、宥恕す べきものとはいえないので、その刑を減軽するに止め、同法第六八条第三号を適用 して、右有期懲役刑を減軽した刑期範囲内で、被告人を懲役二年に処すべく、押収 にかかる鉈一挺は被告人が本件犯行の用に供した物であつて、犯人以外の者の所有 に属しないので、同法第一九条第一項第二号第二項本文に従つて、これを没収すべ く、原審並びに当審における訴訟費用は、刑訴法第一八一条第一項本文を適用し て、被 の用に供した物であつて、犯人以外の者の所有 に属しないので、同法第一九条第一項第二号第二項本文に従つて、これを没収すべ く、原審並びに当審における訴訟費用は、刑訴法第一八一条第一項本文を適用し て、被告人をして負担させることとして、主文のように判決する。  (裁判長判事 尾後貫荘太郎 判事 堀真道 判事 荒川省三)

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