令和7年2月20日判決言渡 令和6年(行ケ)第10037号特許取消決定取消請求事件 口頭弁論終結日令和6年11月20日判決 原告 大建工業株式会社 原告 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 上記両名訴訟代理人弁理士 前田亮 佐敷京子 藤本知志 被告 特許庁長官 同指定代理人 土屋真理子 居島一仁 加藤範久 海老原えい子 主文 1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由(注)本判決で用いる略語の定義は、本文中で別に定めるほか、次のとおりである。 本件決定 :特許庁が異議2022-701134号事件について令和6年3月14日にした決定 本件特許 :原告らを特許権者とする特許第7072781号(発明の名称:木質複合材及び床材。甲7) 本件発明 :本件特許に係る発明の総称。各請求項に係る発明は、請求項の番号に対応して「本件発明1」などという。 本件訂正 :原告らの令和5年10月31日付け訂正請求書(甲16) 7)本件発明 :本件特許に係る発明の総称。各請求項に係る発明は、請求項の番号に対応して「本件発明1」などという。 本件訂正 :原告らの令和5年10月31日付け訂正請求書(甲16)による訂正本件明細書 :本件特許に係る明細書及び図面(甲7)甲1公報 :特開2002-225002号公報(甲1)甲1発明 :甲1公報に記載された発明(発明の名称:木質積層材及びそ の製造方法)甲4公報 :特開平10-249817号公報(甲4)甲5公報 :特開2003-94411号公報(甲5)甲6公報 :特開平11-58330号公報(甲6。本件決定における甲7) 乙1公報 :特開昭和62-5808号公報(乙1)本件出願日 :令和3年9月9日第1 請求 本件決定のうち、本件特許の請求項1から3までに係る特許を取り消した部分を取り消す。 第2 事案の概要本件は、特許異議の申立てに対する特許取消決定の取消訴訟である。争点は、進歩性の判断の誤りである。 1 特許庁における手続の経緯等(争いがない)⑴ 原告らは、発明の名称を「木質複合材及び床材」とする発明について、令 和3年9月9日(本件出願日)、特許出願をし、令和4年5月13日、本件 特許に係る特許権の設定登録を受けた(請求項の数3)。 ⑵ 本件特許につき、同年11月17日、特許異議の申立てがなされ、特許庁は、同事件を異議2022-701134号事件として審理した。 ⑶ 原告らは、令和5年10月31日、本件特許の特許請求の範囲の訂正を求める本件訂正を請求した。 ⑷ 特許庁は、令和6年3月14日、「特許第7072781号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のと 31日、本件特許の特許請求の範囲の訂正を求める本件訂正を請求した。 ⑷ 特許庁は、令和6年3月14日、「特許第7072781号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。特許第7072781号の請求項1~3に係る特許を取り消す。」との本件決定をし、その謄本は、同月25日、原告らに送達された。 ⑸ 原告らは、同年4月18日、本件決定の取消しを求めて本件訴えを提起した。 2 本件発明の内容等⑴ 本件訂正後の特許請求の範囲(請求項の数3)の記載は、以下のとおりである(下線部は訂正箇所)。 【請求項1】合板の代替材として用いられる木質ボードと、2.7㎜以上の厚さを有する中密度繊維板とが接合一体化された木質複合材であって、上記木質ボードは、繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなり、 上記木質ボードの密度が400kg/㎥以上550kg/㎥以下であり、上記木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.20㎜以上0.50㎜以下、上記繊維方向に沿った長さが40㎜以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が15㎜以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がなく、且つ上記繊維方向がランダムに配向されていることを特徴とす る木質複合材。 【請求項2】請求項1の木質複合材において、木質ボードの木質小薄片は、長さが20mm 以下、幅が5mm 以下の細長形状であることを特徴とする木質複合材。 【請求項3】 請求項1又は2の木質複合材からなり、中密度繊維板が表側になるように施工されることを特徴とする床材。 、幅が5mm 以下の細長形状であることを特徴とする木質複合材。 【請求項3】 請求項1又は2の木質複合材からなり、中密度繊維板が表側になるように施工されることを特徴とする床材。 ⑵ 本件明細書本件明細書の記載は、別紙「特許公報」(甲7)の【発明の詳細な説明】及び各図面のとおりである。 3 本件決定の理由等⑴ 本件決定は、本件訂正を認めた上で、別紙「異議の決定」(写し)のとおり、本件発明は、甲1発明に基づき、本件発明1については甲4公報又は甲5公報記載の各技術事項を適用することにより、本件発明2については甲5公報記載の技術事項を適用することにより、本件発明3については甲4公報 又は甲5公報記載の各技術事項及び周知技術を適用することにより、いずれも当業者が容易に発明をすることができたものであると判断した。 なお、原告らは、本件訴訟において、本件決定の認定・判断のうち、次の点を争っている。①甲1発明と本件発明1から3までに共通する相違点1から3までの各認定、②これらの相違点に係る容易想到性判断、③甲1発明と 本件発明2との相違点4に係る容易想到性判断。 他方、原告らは、❶甲1発明の認定、❷甲1発明と本件発明1から3までに共通する一致点の認定、❸前記相違点4の認定、❹甲1発明と本件発明3との相違点5の認定及びこれに係る容易想到性判断については争っていない。 そこで、以下においては、本件決定のうち、甲1発明の認定と相違点1か ら4までに関する認定・判断部分の要旨についてのみ記載する。 ⑵ 甲1発明の認定甲1公報には、以下の甲1発明が記載されている。 「 2枚以上の木質材料を接着積層して製造される、フローリング材、壁材などの基材として、木質材料を接着積層した木質積 ⑵ 甲1発明の認定甲1公報には、以下の甲1発明が記載されている。 「 2枚以上の木質材料を接着積層して製造される、フローリング材、壁材などの基材として、木質材料を接着積層した木質積層材が用いられ、木質材料としては、合板に加え、パーティクルボード (PB)、配向性ストランドボード(OSB)などの合成木質材も用いられている、木質積層材であって、接着積層する木質材料の種類は、従来、木質積層材の素材として用いられてきたパーティクルボード(PB)、中密度繊維板(MDF)、配向性ストランドボード(OSB)を任意に用いうるものであり、 実施例として、12㎜厚OSBに接着剤を塗布し、2.7㎜厚MDFを載せ、コールドプレスした木質積層材。」⑶ 一致点及び相違点の認定【一致点】合板の代替材として用いられる木質ボードと、2.7㎜以上の厚さを有す る中密度繊維板とが接合一体化された木質複合材であって、上記木質ボードは、繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなる木質複合材(OSBが繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなることは技術常識である。)。 【相違点1】本件発明は、「上記木質ボードの密度が400kg/㎥以上550kg/㎥以下であ」るのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。 【相違点2】本件発明は、「上記木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.20㎜以 上0.50㎜以下、上記繊維方向に沿った長さが40㎜以下、上記繊維方 向と直交する方向に沿った幅が15㎜以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がな」いのに対し、甲1発明は 上0.50㎜以下、上記繊維方向に沿った長さが40㎜以下、上記繊維方 向と直交する方向に沿った幅が15㎜以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がな」いのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。 【相違点3】本件発明は、「上記繊維方向がランダムに配向されている」のに対し、 甲1発明はそのように特定されていない点。 【相違点4】本件発明2は、「木質ボードの木質小薄片は、長さが20mm 以下、幅が5mm 以下の細長形状である」のに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。 ⑷ 各相違点の容易想到性ア相違点1甲1公報には、OSBの密度について「400kg/㎥以上550kg/㎥以下」等の特定の密度とすることを阻害する記載はなく、当該特定の密度が本件発明の進歩性が肯定されるものとなるような技術的意義を有するもの ともいえない。甲1発明の木質ボードの密度は、木質小薄片とする樹種の選択、接着に用いるバインダの材料の選択及びバインダ量、圧縮の程度等により調節することができるものであり、数値範囲を最適化・好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮であるから、これを400kg/㎥以上550kg/㎥と特定することは、当業者が適宜なし得たことである。 イ相違点2(ア) 「細長形状に大きさと形状が均質に揃っている」ことの技術的意味について本件明細書【0013】及び【0054】(以下、特記しない限り、【 】内の数字は、本件明細書の段落番号を示すものとする。)の記 載から、「木質小薄片」が「細長形状に大きさと形状が均質に揃って いる」こととは、「厚さt」、「繊維方向寸法d1(長さ)」及び「繊維直交方向寸法d2(幅)」が、 すものとする。)の記 載から、「木質小薄片」が「細長形状に大きさと形状が均質に揃って いる」こととは、「厚さt」、「繊維方向寸法d1(長さ)」及び「繊維直交方向寸法d2(幅)」が、「狭い範囲内に収まってい」ることや、「ばらつきが小さ」いことなど、「一定範囲内にある」ことをいうものと理解することができる。なお、上記段落には、「1種類の大きさの・・・」との記載があるが、上記理解をふまえれば、特定 の(1種類の)数値の寸法を指すものではなく、「一定範囲内」と同様の意味と理解するのが妥当といえる。 (イ) 甲4公報には、次の技術事項(以下「甲4技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「 ストランドSiに、接着剤を塗布し、複層に積層し、ホットプレ スして板状に成形した配向性ストランドマットSMにおいて、ストランドを、厚さが0.3㎜、幅が8㎜、長さが24㎜とすること。」(ウ) 甲5公報には、次の技術事項(以下「甲5技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「 建築材料として使用される、木片Fを熱可塑性樹脂によって結着し た芯層(3)と、木質分を熱硬化性樹脂によって結着した表層(2)および/または裏層(4)とからなる木質板(1)において、芯層は木片を熱可塑性樹脂によって結着したものであり、木片はサイズとしては好ましくは厚さ0.1~5㎜、長さ1~50㎜、幅0.5~20㎜のものであり、表裏層は木質分を熱硬化性樹脂によって結着したものであり、木 質分としては木粉または木片が使用され、該木片は、好ましくは厚さ0.2~0.5㎜、長さ6~12㎜、幅0.5~2.5㎜のものが使用され、表層(2)および/または裏層(4)は木質分を熱可塑性樹脂によって結着して緻密な構造とするので 用され、該木片は、好ましくは厚さ0.2~0.5㎜、長さ6~12㎜、幅0.5~2.5㎜のものが使用され、表層(2)および/または裏層(4)は木質分を熱可塑性樹脂によって結着して緻密な構造とするので、軽量でも寸法安定性良く高強度が得られること。」 (エ) そして、甲6公報の「原木を細片化してこれを再構成するために、原 木から切り出した製材品のように節等による欠陥が存在せず、性能が安定してより均質な強度が得られる」との記載に照らせば、甲1発明においても、ストランドを、厚さが0.3㎜、幅が8㎜、長さが24㎜程度とすれば、その過程において節部分は除かれて「節部分がな」い小薄片となるものと認められる。 (オ) そうすると、甲1発明において、甲4技術事項又は甲5技術事項を参照して、木質小薄片の表裏面間の厚さ、繊維方向に沿った長さ及び繊維方向と直交する方向に沿った幅を、それぞれ、厚さ0.20㎜以上0. 50㎜以下、長さ40㎜以下、幅15㎜以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がないものとすることは、当業者が容易になし得 たことである。 ウ相違点3【0036】の記載に照らすと、本件発明1における「上記繊維方向がランダムに配向されている」ことは、繊維方向が基準方向に配向されず、繊維方向が基準方向に対してある程度(例えば20°程度)より傾いてい る状態とも理解できる。 甲4公報の図7に記載されたストランドマットにおいて、繊維方向が基準方向に対してある程度傾いて配置されており「ランダムに配向されている」といえる。 また、甲5公報において、木片、特に芯層用原料混合物M2は、配向さ せる工夫等が特段なされることなく高所から落下している様子が示されており、木片の配置に配 ダムに配向されている」といえる。 また、甲5公報において、木片、特に芯層用原料混合物M2は、配向さ せる工夫等が特段なされることなく高所から落下している様子が示されており、木片の配置に配向性のない木質ボードであることが推認できる。 そうすると、甲4技術事項及び甲5技術事項も、「上記繊維方向がランダムに配向されている」ものといえるから、相違点3は実質的な相違点ではなく、仮に実質的な相違点としても当業者が容易に想到し得るも のである。 エ相違点4本件発明2は、木質ボードの木質小薄片について、本件発明1よりもさらに限定して、長さが20mm 以下、幅が4mm 以下の細長形状としたものであるところ、甲1発明において、OSBの木片のサイズを決定するに当たり、甲5技術事項の芯層において好適とされる「厚さ0.1~5mm、長さ1~5 0mm、幅0.5~20mm」との範囲の中から、「厚さ0.20mm 以上0. 5mm 以下、長さが20mm 以下、幅5mm 以下」の細長形状を選択し、本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 4 原告ら主張の決定取消事由原告らは、取消事由として、甲1発明に基づく本件発明1から3までの各発 明について進歩性判断の誤りを主張している。なお、前記のとおり、本件発明3固有の相違点である相違点5について容易想到性が認められることについて争いはない。具体的な争点は、次のとおりである。 ⑴ 相違点1から3までを一つの相違点と認定しなかった誤り⑵ 相違点1の容易想到性判断の誤り ⑶ 相違点2の容易想到性判断の誤り⑷ 相違点3の容易想到性判断の誤り⑸ 相違点4の容易想到性判断の誤り第3 当事者の主張 1 相違点1から3までを 容易想到性判断の誤り ⑶ 相違点2の容易想到性判断の誤り⑷ 相違点3の容易想到性判断の誤り⑸ 相違点4の容易想到性判断の誤り第3 当事者の主張 1 相違点1から3までを一つの相違点と認定しなかった誤りについて (原告らの主張)⑴ 本件発明の「木質ボード」の相違点1に係る構成(以下「密度に係る構成」という。)、相違点2に係る構成(以下「木質小薄片の寸法等に係る構成」という。)及び相違点3に係る構成(以下「配向に係る構成」という。)は、以下のとおり、これら3つの発明特定事項の組み合わせにより、高強度で寸 法安定性や表面性に優れるという、本件発明の技術的課題の解決手段として 重要な技術的意義を有している。 この点を否定する本件決定の判断は、いずれも誤りである。 ア 「木質ボード」の強度(ア) 本件明細書の【図7】は、「密度に係る構成」、「木質小薄片の寸法等に係る構成」及び「配向に係る構成」により、使用される用途や要求 される性能に応じて、「曲げヤングが1.5~4.0GPa」までの範囲の「木質ボード」を製造できることを示している。 このような「木質ボード」は、ラワン合板の代替材として使用できないとはいえず、曲げヤングが「縦5.3GPa」、「横5.2GPa」であるラワン合板と比較して同様の強度といえるものではないと直ちに はいえない。 (イ) また、実験成績証明書(甲20)の実験例1と比較実験例1、比較実験例3をそれぞれ比較すると、木質ボードの強度の向上には、「密度に係る構成」、「配向に係る構成」も寄与する。 イ 「木質ボード」の寸法安定性 実験成績証明書(甲20)によれば、「木質小薄片の寸法等に係る構成」が寸法安定性に寄与すること 「密度に係る構成」、「配向に係る構成」も寄与する。 イ 「木質ボード」の寸法安定性 実験成績証明書(甲20)によれば、「木質小薄片の寸法等に係る構成」が寸法安定性に寄与することに加え、木質小薄片の繊維方向を基準方向に配向した「比較実験例3」は木質小薄片の繊維方向がランダムに配向されている「実験例1」と比較して寸法安定性(変化率及び異方性)に劣ることから、「配向に係る構成」は、木質ボードの「異方性」の有無に影響し、 寸法安定性の向上に寄与する。 ウ 「木質ボード」の平滑性(表面性)実験成績証明書(甲20)によれば、「木質小薄片の寸法等に係る構成」だけでなく、「密度に係る構成」も、「実験例1」と「比較実験例1」の比較からみて、木質ボードの平滑性(表面性)の向上に寄与する。 エ各構成の技術的意義、各構成相互の技術的関係 「密度に係る構成」の技術的意義と「木質小薄片の寸法等に係る構成」及び「配向に係る構成」との密接な関連性は、【0004】ほかの【背景技術】、【0027】から【0031】までと本件明細書の【図7】を含む【発明を実施するための形態】に記載されている。 また、【0056】及び本件明細書の【図7】には、「配向に係る構成」 の技術的意義が記載され、「密度に係る構成」、「木質小薄片の寸法等に係る構成」及び「配向に係る構成」の相互の技術的関係も記載されている。 ⑵ 以上のとおり、本件決定において認定された相違点1から3までは、互いに関連し、ひとまとまりの手段として機能し、相乗効果を奏するものであるから、ひとまとまりの相違点として認定して判断しなければならないもので あって、前記各構成の技術的意義の判断を誤り、各相違点を個別に認定した本件決定の認定は誤り し、相乗効果を奏するものであるから、ひとまとまりの相違点として認定して判断しなければならないもので あって、前記各構成の技術的意義の判断を誤り、各相違点を個別に認定した本件決定の認定は誤りである。 このような相違点の認定の誤りは、容易想到性が区々に判断され、本来であれば進歩性が認められる発明の進歩性が否定される結果を生じ得るものであるから、結論に影響を及ぼす重大な誤りである。 なお、「密度に係る構成」、「木質小薄片の寸法等に係る構成」及び「配向に係る構成」をひとまとまりの手段とする相違点は、甲1発明から当業者が容易に想到し得たものではない。 (被告の主張)⑴ 本件発明の「密度に係る構成」、「木質小薄片の寸法等に係る構成」及び 「配向に係る構成」の技術的意義は、本件決定が認定したとおりであり、誤りはない。 ⑵ 本件明細書には、「密度に係る構成」、「木質小薄片の寸法等に係る構成」及び「配向に係る構成」の相互の技術的関係について、記載も示唆もされていない。 したがって、実験成績証明書(甲20)は採用されるべきではない。 また、実験成績証明書(甲20)に記載された実験結果は、単に「木質ボードの密度」が本件発明の範囲外であれば強度と平滑性に劣り、「木質小薄片の寸法等」が本件発明の範囲外であれば強度と平滑性に劣り、「木質小薄片の配向」により、配向方向と直交方向において強度と寸法安定性(吸放湿時の長さ変化率)に差が生じることが理解できるにとどまり、「密度に係る 構成」、「木質小薄片の寸法等に係る構成」及び「配向に係る構成」という3つの発明特定事項を組み合わせることにより、格別の技術的意義があるとまで理解することはできない。 ⑶ したがって、本件決定の相違点の認定に誤り 薄片の寸法等に係る構成」及び「配向に係る構成」という3つの発明特定事項を組み合わせることにより、格別の技術的意義があるとまで理解することはできない。 ⑶ したがって、本件決定の相違点の認定に誤りはない。 2 相違点1の容易想到性判断の誤りについて (原告らの主張)⑴ 甲1公報は、「木質材料」(木質ボード)を複数接着積層するときに水性エマルジョン接着剤を用いるという技術思想を有する発明に関するものであって、「木質材料」そのものを工夫することや、その密度に関する記載や示唆がない。なお、「木質小薄片の寸法等に係る構成」を採用した場合に「密 度に係る構成」が得られることを示す記載等もない。 ⑵ 本件発明の「密度に係る構成」が、木質ボードの強度及び平滑性(表面性)の向上に寄与するという技術的意義を有することは、前記1(原告らの主張)⑴ア、ウのとおりである。 そして、本件明細書の【図7】から、甲1発明の木質積層材を構成する 「木質材料」として任意に用い得るパーティクルボード(PB)、中密度繊維板(MDF)、配向性ストランドボード(OSB)は、いずれも本件発明の「密度に係る構成」よりも高い密度とすることで、初めて木質ボードとしての特性が担保されることを理解することができる。換言すると、これら従来の木質ボードは、合板の代替材として用いられる程度の強度(剛性)を確 保するためには、「密度に係る構成」よりも密度を高くする必要がある。一 方、低密度で軽い本件発明の「木質ボード」は、合板の代替材として用いられる程度の十分な強度(剛性)を確保することができる。 一般に、密度を下げると強度が低下する等の性能低下を招くため、甲1発明で用い得るPB、MDF及びOSBにおいて、密度を小さいものに改変することは、当業 分な強度(剛性)を確保することができる。 一般に、密度を下げると強度が低下する等の性能低下を招くため、甲1発明で用い得るPB、MDF及びOSBにおいて、密度を小さいものに改変することは、当業者であれば通常は考えないから、技術常識や阻害要因の有無 にかかわらず、甲1発明において「密度」を適宜好適化する動機付けはない。 ⑶ したがって、甲1発明の木質ボードを「密度に係る構成」とすることは当業者が適宜なし得たとする本件決定の判断は、発明の課題及びその解決手段という観点を欠き、甲1公報の文脈に沿うものではなく、本件発明の明細書、特許請求の範囲又は図面の文脈に沿ってその内容を曲解するという、後知恵 に陥るものである。 (被告の主張)甲1発明の木質ボードのような木材薄片集成板について、「密度」を使用目的に合わせて任意に決定することができること、密度が0.40g/㎤よりも小さい等、密度が小さすぎると強度が不十分となり得ること、逆に0.65g /㎤より大きい等、密度が大きすぎると重量が増加して取扱いが困難になることは、本件出願日前における技術常識である(乙2の【0014】、乙3の【0017】及び【0019】、乙4の【0013】)。 そして、木質ボードの密度は、木質小薄片とする樹種の選択、接着に用いるバインダの材料の選択及びバインダ量、圧縮の程度等により調節することがで きるものである。 したがって、甲1発明において、技術常識を踏まえ、用途に応じて「密度」を最適化し、強度と重量を考慮して本件発明の「密度に係る構成」の程度とすることは、当業者が通常の創作能力を発揮して適宜なし得た事項である。 3 相違点2の容易想到性判断の誤りについて (原告らの主張) ⑴ 甲1公報は、「木質材料」(木質ボード)を ることは、当業者が通常の創作能力を発揮して適宜なし得た事項である。 3 相違点2の容易想到性判断の誤りについて (原告らの主張) ⑴ 甲1公報は、「木質材料」(木質ボード)を複数接着積層するときに使用する水性エマルジョン接着剤を特定する発明に関するものであって、「木質材料」を構成する「構成材料」(木質小薄片)を工夫することや、その寸法に関する記載も示唆もない。 また、甲1公報には、低密度で高強度な(軽くて強い)木質ボードを得る という本件発明の技術的思想及びその解決手段について、記載も示唆もない。 ⑵ 甲1公報と甲4公報又は甲5公報との間には、課題の共通性や作用・機能の共通性が認められないから、甲1公報に甲4公報又は甲5公報の記載事項を適用する動機付けはない。 ⑶ したがって、甲1発明において、甲4技術事項及び甲5技術事項を参照し て「木質小薄片の寸法等に係る構成」とすることは当業者が適宜なし得たとする本件決定の判断には、前記2(原告らの主張)⑶と同様の誤りがある。 (被告の主張)⑴ 甲1公報は、「木質材料」として、「従来、木質積層材の素材として用いられてきたパーティクルボード(PB)、配向性ストランドボード(OS B)」などを任意に用い得るものであるところ、これらのボードが厚み、幅、長さを有する木片を構成成分とすることは自明であるから、甲1発明には、「木質材料」を構成する「構成材料」が記載されているといえる。 ⑵ 木質ボードを構成する木片の寸法(厚み、幅、長さ)が、平滑性等の木質ボードの特性に影響することは技術常識であり(甲2の【0006】、乙2 の【0003】、乙3の【0003】)、甲1発明は木質材料を構成する木片の寸法に関して特定の値とするものではないから、かかる木片の寸法 に影響することは技術常識であり(甲2の【0006】、乙2 の【0003】、乙3の【0003】)、甲1発明は木質材料を構成する木片の寸法に関して特定の値とするものではないから、かかる木片の寸法は、当業者が木質積層材の種類や用途等に応じて、適宜好適化し得るものである。 ⑶ したがって、甲4公報又は甲5公報記載の各寸法を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 なお、本件明細書では、「木質小薄片の厚さ、長さ及び幅はいずれも平均 値」(【0016】、【0029】、【0030】)とされ、「木質小薄片の寸法等に係る構成」に係る厚さ、長さ及び幅の数値範囲は絶対値ではなく平均値であるから、その範囲は絶対値よりも広いものとなる。 4 相違点3の容易想到性判断の誤りについて(原告らの主張) ⑴ 甲1公報は、「木質材料」(木質ボード)を複数接着積層するときに使用する水性エマルジョン接着剤を特定する発明に関するものであって、「木質材料」を構成する「構成材料」について記載も示唆もないから、その「配向」をランダムとすることについて、記載も示唆もない。 ⑵ 被告が指摘する甲1発明のパーティクルボード(PB)は、一般に、構成 材料の形状及び寸法が揃っていないため、繊維方向がランダムであり、そもそも一方向に配向させることができない。本件発明に係る「繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片」は、パーティクルボード(PB)の構成材料とは大きく相違する。 ⑶ 甲4公報には、ストランドの「繊維方向がランダムに配向されている」技 術的事項について、記載も示唆もない。甲4公報の【図7】から「ランダムに配向されている」と認定することはできない。 また、甲5公報には、芯層及び表裏層を構成する「 ダムに配向されている」技 術的事項について、記載も示唆もない。甲4公報の【図7】から「ランダムに配向されている」と認定することはできない。 また、甲5公報には、芯層及び表裏層を構成する「木片」の「配向」について、記載も示唆もない。 ⑷ 甲1公報と甲4公報又は甲5公報との間には、課題の共通性や作用・機能 の共通性が認められないから、甲1公報に甲4公報又は甲5公報の記載事項を適用する動機付けはない。 ⑸ したがって、甲4技術事項及び甲5技術事項も「上記繊維方向がランダムに配向されている」ものといえるから、相違点3は実質的な相違点ではなく、仮に実質的な相違点としても当業者が容易に想到し得たとする本件決定の判 断には、前記2(原告らの主張)⑶と同様の誤りがある。 (被告の主張)⑴ 甲1発明は、接着積層する木質材料として、配向性ストランドボード(OSB)とともにパーティクルボード(PB)も任意に選択することができるものであるところ、パーティクルボード(PB)は繊維方向をそろえずに積層接着して作成されるボードであるから、甲1公報には、木質材料を「繊維 方向がランダムに配向されている」とすることの契機となり得る情報について、記載ないし示唆されているといえる。 甲1発明において、2.7㎜厚MDFに接着積層される木質積層材の素材を接着積層する木質材料として、任意に選択することができる素材の中から、パーティクルボード(PB)のような「繊維方向がランダムに配向されてい る」ものを選択することは、甲1公報の文脈にも沿ったものというべきであり、当業者が容易になし得たことである。 ⑵ 甲4公報及び甲5公報にランダム配向された木質ボードが記載されていることは、本件決定のとおりである。 5 相違点4の容易 にも沿ったものというべきであり、当業者が容易になし得たことである。 ⑵ 甲4公報及び甲5公報にランダム配向された木質ボードが記載されていることは、本件決定のとおりである。 5 相違点4の容易想到性判断の誤りについて (原告らの主張)本件発明2は甲1発明及び甲5技術事項から当業者が容易に発明をすることができたとの判断は誤りである。 (被告の主張)争う。原告らは、本件発明2について実質的な主張を行うものではない。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明について本件明細書の記載(別紙「特許公報」参照)によれば、本件発明について、次の記載があると認められる。 ⑴ 技術分野 本件発明は、木質複合材、それを用いた床材に関するものである。(【0 001】)⑵ 背景技術一般に、既存の木質ボードとしてラワン合板等の南洋材合板はよく知られており、広く利用されているが、近年入手が難しくなってきている。OSB、PB(パーティクルボード)及びMDFには、それぞれ、OSBは強度が高 いものの表面性が十分ではない、PB(パーティクルボード)は価格が安いが寸法安定性や強度が十分ではない、MDFは表面性がよいものの寸法安定性が十分ではないとの問題がある上、いずれも南洋材合板と比較して密度が大きい難がある。(【0002】~【0004】)このように、原料の安定性に加え、強度、重量、表面性、さらに寸法安定 性といった複数の要素を満足する木質ボートが存在していないのが現状である。(【0005】)⑶ 発明が解決しようとする課題先行技術文献に示される木質ボードには、それぞれ、木材薄片の厚さや大きさを表面層と芯層とで異ならせているため、製造時には2種類の木材薄 片を用意す 】)⑶ 発明が解決しようとする課題先行技術文献に示される木質ボードには、それぞれ、木材薄片の厚さや大きさを表面層と芯層とで異ならせているため、製造時には2種類の木材薄 片を用意する必要があり、製造や管理に手間がかかる、木質ボードの表面に凹凸が生じ、表面平滑性を確保できない、基材を2次加工するために手間がかかるだけでなく、基材と繊維層との2重構造となるために、ボードの厚さを小さくすることに限度があり、吸湿による寸法変化を抑制することもできない等の問題がある。(【0010】~【0012】) 本発明の目的は、多数の木質薄片を積層する構造の木質ボードに改良技術を施すことにより、1種類の大きさの木質薄片のみを用いて、高強度で寸法安定性や表面性に優れ、製造の容易な木質ボードに加え、その木質ボードを用いた床材のための複合材が得られるようにすることにある。(【0013】) ⑷ 課題を解決するための手段 ア上記の目的を達成するために、この発明では、木質薄片の厚さを含む大きさを微小な範囲に限定し、その多数の木質小薄片を集合状態で積層して木質ボードとするようにした。 具体的には、この発明は、木質ボードと2.7㎜以上の厚さを有する中密度繊維板(MDF)とが接合一体化された木質複合材であり、この 木質ボードは、繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなり、その木質小薄片は、本件発明1では、上記表裏面間の厚さが0.20㎜以上0.50㎜以下、上記繊維方向に沿った長さが40㎜以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が15㎜以下であることを特徴として構成される(木 質小薄片の厚さ、長さ及び幅はいずれも平均値である。)。(【0014】~【0016】 た長さが40㎜以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が15㎜以下であることを特徴として構成される(木 質小薄片の厚さ、長さ及び幅はいずれも平均値である。)。(【0014】~【0016】)本件発明2は、本件発明1の木質複合材において、木質ボードの木質小薄片は、長さが20mm 以下、幅が5mm 以下の細長形状であることを特徴とする。このことで、木質ボードの寸法安定性及び表面性がさらに向 上する。(【0019】)本件発明3は、本件発明1又は本件発明2の木質複合材からなり、その中密度繊維板(MDF)が表側になるように施工されることを特徴とする床材である。(【0020】)イ 〔注:実施例〕上記木質ボードA内において、多数の木質小薄片1,1, …は、その繊維1a,1a,…に沿った方向である繊維方向(長さ方向)が基準方向に配向されていてもよいが、この繊維方向の配向性は必須ではなく、繊維方向がランダムに配向されていてもよい。尚、繊維方向(長さ方向)が基準方向に配向されているとは、木質ボードA内において、全ての木質小薄片1,1,…の繊維1a,1a,…が正確に同一方向を向いて いること、換言すると、配向された木質小薄片1,1,…の繊維方向が互 いに平行になっていることを限定しない。一部の木質小薄片1,1,…として、繊維方向が基準方向に対してある程度(例えば20°程度)傾いている木質小薄片1,1,…が含まれていてもよい。(【0036】)ウ 〔注:実施例〕木質小薄片1,1,…は、節部分が除去されており、ばらつきがなくて細かい範囲内の大きさのものに保たれているので、マット A1全体で均質になり、このことによって木質ボード1の強度のばらつきがなくなる。一般に大きなストランド(切削片)を用いるストランドボー なくて細かい範囲内の大きさのものに保たれているので、マット A1全体で均質になり、このことによって木質ボード1の強度のばらつきがなくなる。一般に大きなストランド(切削片)を用いるストランドボードは強度を大きくすることができるのに対し、本件発明ではストランド(切削片)よりも薄い木質薄片(切削後木質薄片)を粉砕によりさらに小さくした木質小薄片1によって木質ボードAの均質性と強度とを兼ねてい る。(【0048】)⑸ 発明の効果アこの発明の木質ボードは、1種類の大きさの木質小薄片のみで構成され、その木質小薄片は、極めて薄く均一な厚さに揃ったものになり、長さ及び幅も一定範囲内にある。そのため、木質ボードは均質なものとなり、強度 が高くなるだけでなく、吸放湿による反りが発生し難くなり、南洋材合板と同程度の良好な寸法安定性が得られる上に、表面に大きな凹凸は生じず、表面性に優れたものとなる。また、均一な大きさの多数の小薄片を集合させて積層するので、木質ボードの製造も容易となる。 そして、このような木質ボードにMDFが接着一体化されて木質複合 材となるので、木質ボードにMDFを接着するだけでよく、よって木質複合材を容易に製造することができる。(【0017】、【0018】、【0022】)イ 〔注:実施例〕本件明細書の【図4】は、木質小薄片を概略的に示す拡大斜視図である。木質ボードAは、1種類の木質小薄片1,1,…のみ で構成され、その木質小薄片1,1,…の厚さtが極めて薄く、0.2 0~0.50㎜という狭い範囲内に収まっているので、多数の木質小薄片1,1,…は厚さtのばらつきが小さくて均一な厚さtに揃ったものになる。また、木質小薄片1,1,…の繊維方向寸法d1(長さ)及び繊維直交方向寸法d いう狭い範囲内に収まっているので、多数の木質小薄片1,1,…は厚さtのばらつきが小さくて均一な厚さtに揃ったものになる。また、木質小薄片1,1,…の繊維方向寸法d1(長さ)及び繊維直交方向寸法d2(幅)も一定範囲内にあるので、木質ボードAは大きさが一定範囲内に揃った木質小薄片1,1,…が集合して均質なも のとなる。そのため、木質ボードAの強度が高くなるだけでなく、吸放湿による反りが発生し難く、南洋材合板と同程度の良好な寸法安定性が得られる。また、多数の木質小薄片1,1,…が均一な大きさに揃っているので、通常のOSBのように木質ボードAの表面に大きな凹凸が生じることはなく、木質ボードAは表面性に優れたものとなる。また、均 一な大きさの多数の木質小薄片1,1,…を集合させて積層するので、その製造も容易となる(【0029】、【0054】)。 【図4】 ウ本件明細書の【図7】は、本件発明に係る木質ボードAの特性を他の材 料のボードと比較して例示したものであり、木質ボードAは、曲げヤング、吸放湿時の長さ変化率、平滑性がラワン合板程度に大きく、ラワン合板に 比べ寸法安定性での異方性や表面性における色調・色均質性が優れている。 また、木質ボードAは、OSBに比べ、曲げヤングが縦横に均一であり、寸法安定性での異方性や表面性における平滑性、色調・色均質性が良好である(【0056】)。 【図7】 2 甲1発明及び本件発明との相違点の認定について証拠(甲1、7、12、16、17)及び弁論の全趣旨によれば、甲1発明の内容及び甲1発明と本件発明との相違点1から5までについては、本件決定 が認定したとおりであると認められる。 3 相違点1から3までを一つの相違点と認定し び弁論の全趣旨によれば、甲1発明の内容及び甲1発明と本件発明との相違点1から5までについては、本件決定 が認定したとおりであると認められる。 3 相違点1から3までを一つの相違点と認定しなかった誤りについて⑴ 原告らは、本件決定において個別に認定された相違点1から3までに係る本件発明の各構成は、発明の技術的課題の解決手段として、互いに関連するひとまとまりの手段として機能し、相乗効果を奏するものであるから、一つ の相違点として判断しなければならない旨主張する。 ⑵ 本件明細書には、前記1の各記載を含め、「高強度で寸法安定性や表面性に優れ、製造の容易な」木質ボード及びこれを用いた床材のための複合材と いう発明の技術的課題(前記1⑶)の解決手段として、①「木質小薄片の寸法等に係る構成」のうち木質小薄片の厚さ、長さ及び幅の数値範囲の構成を有する木質ボード(前記1⑷ア)とその奏する効果(前記1⑸ア)、②「密度に係る構成」及び「木質小薄片の寸法等に係る構成」を有するが、「配向に係る構成」については繊維方向の配向性は必須ではなく、ランダムに配向 されていてもよいとされる木質ボードA(前記1⑷イ、ウ、⑸ウ、本件明細書【0027】、【0050】)とその奏する効果(前記1⑸イ、ウ)については記載されている。しかし、「密度に係る構成」及び「配向に係る構成」の効果は、本件発明の効果として示されていない(そもそも、本件訂正前の特許請求の範囲には、「密度に係る構成」も「配向に係る構成」も含まれて いなかったものである。)。また、「密度に係る構成」、「木質小薄片の寸法等に係る構成」及び「配向に係る構成」が、それぞれ単独で奏する効果を超えて、互いに関連するひとまとまりの手段として機能し、相乗効果を奏することを示す記載 また、「密度に係る構成」、「木質小薄片の寸法等に係る構成」及び「配向に係る構成」が、それぞれ単独で奏する効果を超えて、互いに関連するひとまとまりの手段として機能し、相乗効果を奏することを示す記載もない。 ⑶ また、本件明細書における発明の効果の記載がこのようなものである場合 に、本件訴訟提起後である令和6年5月24日付けで作成された実験成績証明書(甲20)を参酌すべきか否かという点を措くとしても、実験成績証明書(甲20)には、実験結果として、①本件発明1に含まれる実験例1と比べて、木質ボードの密度が「密度に係る構成」よりも低い比較実験例1は強度及び表面性(平滑性)に劣ること、②「木質小薄片の寸法等に係る構成」 よりも木質小薄片の厚さが厚く、幅が長い比較実験例2は強度がやや劣り、表面性(平滑性)に劣ること、③木質小薄片がランダムではなく一配向に配向している、すなわち「配向に係る構成」を有しない比較実験例3は、強度と寸法安定性が、配向方向については優れているが直交方向については劣ること(すなわち異方性を有すること)が示されているにとどまる。この実験 結果を前提としても、「密度に係る構成」を採用した場合には強度及び表面 性(平滑性)を向上させること、「木質小薄片の寸法等に係る構成」のうち厚さ及び幅の数値範囲は、数値が小さいものを採用した場合の方が数値が大きいものよりも強度及び表面性(平滑性)を向上させること、「配向に係る構成」を採用した場合は、配向方向と直交方向における各強度と寸法安定性に差が生じなくなること(異方性を有しないこと)までは認められるものの、 各構成が単独で奏する効果がそれぞれ個別に示されているにとどまり、各構成が組み合わさることにより一定の相乗効果が発生することを示すものとまでは認め 方性を有しないこと)までは認められるものの、 各構成が単独で奏する効果がそれぞれ個別に示されているにとどまり、各構成が組み合わさることにより一定の相乗効果が発生することを示すものとまでは認められない。 ⑷ 以上のとおり、本件明細書の記載のほか、実験成績証明書(甲20)を参酌したとしても、相違点1から3までに係る本件発明の各構成が互いに関連 するひとまとまりの手段として機能し、相乗効果を奏するものとは認められない。 したがって、相違点1から3までを一つの相違点と認定すべきであるとの原告らの前記主張は、その前提が認められないから採用することはできず、本件決定の相違点の認定に誤りがあるとはいえない。 4 相違点1の容易想到性判断の誤りについて⑴ 原告らは、甲1発明の木質ボードを「密度に係る構成」とすることは当業者が適宜なし得たとする本件決定の判断は、誤りである旨主張する。 ⑵ 本件発明の木質ボード及びその製造方法に関する技術分野(配向性ストランドボード(OSB)、パーティクルボード(PB)、MDF等。【000 4】参照)に関する先行技術文献には、別紙「先行技術文献の記載事項」の記載がある。 そして、甲1発明は、フローリング材(床材)等の基材として用いられ、配向性ストランドボード(OSB)、パーティクルボード(PB)等の木質材料を用いる木質積層材の発明であるところ、①特開平6-312411号 公報(乙4)の【0013】には、方向性木材薄片集成板(OSB)の密度 は0.40~0.65g/㎤(400~650kg/㎥)とするのが好ましく、密度がこの範囲より小さい場合は板の強度が不十分になり、大きい場合は材料全体の重量が増加して取扱い難くなること、床材として使用する場合、曲げヤン g/㎤(400~650kg/㎥)とするのが好ましく、密度がこの範囲より小さい場合は板の強度が不十分になり、大きい場合は材料全体の重量が増加して取扱い難くなること、床材として使用する場合、曲げヤング係数(本件明細書の【図7】、【0056】等)において、強度の指標として用いられている。)は、低すぎると曲げたわみがJASの規定値 よりも大きくなり、高すぎると歩行時に必要とする適度の弾性が不足することが記載され、②特開平7-186113号公報(乙2)の【0014】、特開平11-58332号公報(乙3)の【0017】及び【0019】には、密度は0.40~0.65g/㎤が好適であるが、木質板の使用目的に合わせて任意に決定すればよいこと、密度と強度及び重量は上記①記載の関 係にあることが記載されている。 これらの先行技術文献の記載によれば、上記①、②の記載事項は、本件出願日当時、当業者に周知であったと認められる。 また、甲1発明の木質材料(木質ボード)の密度は、木質小薄片とする樹種の選択、接着に用いるバインダの材料の選択及びバインダ量、圧縮の程度 等により、適宜調節することができるものである(本件決定、弁論の全趣旨)。 ⑶ そうすると、フローリング材などの基材として用いられる木質積層材の発明である甲1発明において、用途に応じ、木質材料(木質ボード)の密度の数値を好適化し、400kg/㎥から650kg/㎥の範囲内、さらには「密度に 係る構成」である400kg/㎥以上550kg/㎥以下の範囲内とすることは、用途に応じて適宜調節することができる、木質材料の密度の数値範囲の好適化であって、当業者が容易に想到することができたと認められる(なお、本件明細書の記載をみても、「400kg/㎥以上550kg/㎥以下」との数値が臨界的 ることができる、木質材料の密度の数値範囲の好適化であって、当業者が容易に想到することができたと認められる(なお、本件明細書の記載をみても、「400kg/㎥以上550kg/㎥以下」との数値が臨界的意義を有するとは認められない。)。 ⑷ 原告らは、甲1公報に「木質材料」そのものを工夫することや密度に関す る記載や示唆がない、「密度に係る構成」よりも密度が高い従来の配向性ストランドボード(OSB)、パーティクルボード(PB)等の密度を低くすることの動機付けがない、発明の課題及びその解決手段という観点や甲1公報の文脈からみて、容易想到とはいえない旨主張する。 しかし、既に述べたとおり、甲1発明を「密度に係る構成」とすることは、 甲1発明と技術分野を共通にする先行技術文献に記載された木質材料の密度に関する数値の範囲内における好適化であるから、甲1公報に記載や示唆がなくとも当業者において容易想到であり、動機付けがあることも明らかであるから、原告らの前記主張はいずれも採用することができない。 ⑸ したがって、本件決定の相違点1の容易想到性判断に誤りはない。 5 相違点2の容易想到性判断の誤りについて⑴ 原告らは、甲1発明の木質ボードを「木質小薄片の寸法等に係る構成」とすることは当業者が適宜なし得たとする本件決定の判断は、誤りである旨主張する。 ⑵ 別紙「先行技術文献の記載事項」のとおり、特開平7-186113号公 報(乙2)の【0003】及び特開平11-58332号公報(乙3)の【0003】には、木質薄片を用いた配向性ストランドボード(OSB)あるいは木材薄片や木質繊維等を利用した木質板において、原材料の寸法が小さくなるに従い、得られるものは均質になり、表面も平滑になるが、強度、剛性は低下し 薄片を用いた配向性ストランドボード(OSB)あるいは木材薄片や木質繊維等を利用した木質板において、原材料の寸法が小さくなるに従い、得られるものは均質になり、表面も平滑になるが、強度、剛性は低下し、密度は増加する傾向があり、逆に大きくすると、木材本来が 持っている強度、密度に近づいて行くが、そのようなものは不均質で、表面の凹凸も大きくなることが記載されている。このような原材料の寸法とこれを用いて得られる木質ボードの均質性、平滑性、強度、剛性及び密度との定性的な関係は、本件出願日時点において技術常識であったと認められる。 なお、配向性ストランドボード(OSB)が、「繊維方向に沿った」表裏 面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化 されてなることは、技術常識であると認められる(本件決定、弁論の全趣旨)。 ⑶ 次に、特開昭62-5808号公報(乙1公報)には、木材細長片を任意の方向に配向してなる配向部と無配向部とを備えた木片板状体の製造方法に関する発明に関し、実験例において、木材細長片を長さ2.5~30.0㎜ (平均長さ15㎜)、幅0.5~2.5㎜(平均幅1.5㎜)、厚み0.2㎜~1㎜(平均厚み0.5㎜)とする記載がある。 同公報の記載からみて、この数値は、実験例において、木片板状体の製造に一般的に採用される寸法の一つとして選択されたものと認められる。 ⑷ また甲4公報にはストランド(木質薄片)の寸法に関し、「厚さが0.3 ㎜、幅が8㎜、長さが24㎜」との数値が記載されている(甲4公報の【0009】、甲4技術事項)。当該記載は、この数値のストランド(配向性ストランドボード(OSB)の原材料)は高速気流中に浮かせた場合に気流の速度とほとんど同じ速度で飛び、長軸方向 いる(甲4公報の【0009】、甲4技術事項)。当該記載は、この数値のストランド(配向性ストランドボード(OSB)の原材料)は高速気流中に浮かせた場合に気流の速度とほとんど同じ速度で飛び、長軸方向が気流方向を向く配向性が得られたというもので、甲4公報記載の発明(ストランドを高速気流中に飛ばし、 一定方向に配向する配向工程を経る配向性ストランドマットの製造方法、【請求項1】)の基となった知見を述べたものである。 さらに、甲5公報には熱可塑性樹脂によって結着した芯層及び表裏層からなる木質板の木質分の木片の寸法に関し、「厚さ0.1~5㎜、長さ1~50㎜、幅0.5~20㎜」、「厚さ0.2~0.5㎜、長さ6~12㎜、幅 0.5~2.5㎜」との各数値(甲5技術事項)が記載されている。当該記載は、サイズの異なる木片を順次散布し、異なる性質を有する芯層と表裏層を一体化して木質板を形成する甲5公報記載の発明(甲5公報の【0004】~【0006】及び【0008】)において、好ましい木質分の数値として掲げられたものである。 甲4公報及び甲5公報におけるこれらの数値は、甲1発明とは技術思想を 異にする木質板製造方法に関するものではあるが、いずれも合成木質材の構成材料(木質薄片、木片)の寸法の数値として選択され得る数値を示したものということができる。 その他、木質板を製造する場合に用いる構成材料の厚さ、長さ及び幅について、前記したものも含め、本件出願日前に公表されていた公開特許公報又 は特許公報に掲げられていた数値は別表のとおりであり、発明の課題や製造方法等の技術的事項の相違にもかかわらず、概ね一定の範囲にあることが認められる。 ⑸ しかるところ、フローリング材、壁材などの基材として用いられる木質積 値は別表のとおりであり、発明の課題や製造方法等の技術的事項の相違にもかかわらず、概ね一定の範囲にあることが認められる。 ⑸ しかるところ、フローリング材、壁材などの基材として用いられる木質積層材の発明である甲1発明において、原材料の寸法とこれを用いて得られる 木質材料(木質ボード)の均質性、平滑性、強度、剛性及び密度との間に前記⑵の定性的な関係があるとの技術常識を踏まえ、用途に応じて原材料の寸法の数値を好適化することは、通常、当業者の通常の創作能力の範囲内の事項であると考えられる。 そして、本件発明1における「木質小薄片の寸法等に係る構成」の数値で ある、厚さ0.20㎜以上0.50㎜以下、長さ40㎜以下、幅15㎜以下(いずれも平均値)という数値は、いずれも別表に掲げられた構成材料の寸法の数値の範囲と整合するものであって、甲1発明において、本件発明1の数値を採用することについて阻害要因も見当たらない。したがって、本件発明1に係る木質小薄片の寸法の数値は、当業者が通常の創作能力を発揮する ことにより容易に想到することができたものと認めるのが相当である(なお、本件明細書の記載をみても、「木質小薄片の寸法等に係る構成」の数値範囲が臨界的意義を有するとは認められない。)。 ⑹ 原告らは、甲1公報に「木質材料」を構成する「構成材料」(木質小薄片)を工夫することや、本件発明の技術的思想及びその解決手段についての記載 も示唆もないから、容易想到とはいえない旨主張する。 しかし、既に述べたとおり、甲1発明を「木質小薄片の寸法等に係る構成」の数値とすることは、発明に係る物の用途に応じた数値範囲の好適化であり、甲1公報に原告ら指摘の記載や示唆がなくとも、当業者には容易に想到することができたと認められるから 質小薄片の寸法等に係る構成」の数値とすることは、発明に係る物の用途に応じた数値範囲の好適化であり、甲1公報に原告ら指摘の記載や示唆がなくとも、当業者には容易に想到することができたと認められるから、原告らの前記主張は採用することができない。 原告らは、乙1公報について、同公報記載の数値は平均値の2倍程度の寸法の木質材料を用いるものであるところ、本件発明の「木質小薄片の寸法等に係る構成」は「大きさと形状が均質に揃う」構成をも有し、2倍程度の寸法の木片までは含まれないものであるから、乙1公報の記載から進歩性は否定されないとも主張し、甲23にはこれに沿うような記載がある。 しかし、本件発明の木質小薄片の「細長形状に大きさと形状が均質に揃う」とは、本件明細書の記載(【0013】~【0017】、【0054】)によれば、木質小薄片の厚さが「狭い範囲内」にあって「ばらつきが小さくて均一な厚さに揃」い、長さ及び幅が、「一定範囲内にある」ことであって、「木質小薄片の寸法等に係る構成」の数値(平均値)の範囲内であれば充足 される。当該「狭い範囲内」が具体的にどの範囲の数値を指すのかについては、本件明細書には何ら記載がない。したがって、本件発明1の「大きさと形状が均質に揃う」ことの意味は、木質小薄片の形状が、本件発明1に示された木質小薄片の数値の範囲内で揃っていることをいうものと解されるところ、当該数値が当業者の通常の創作能力の発揮により選択することができる 範囲の数値であると認められることは前記のとおりである。したがって、乙1公報の特定の数値の記載により本件発明の進歩性が否定されるわけではないから、原告らの前記主張は採用することができない。 原告らは、「細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がない」との構成要件は、本件 特定の数値の記載により本件発明の進歩性が否定されるわけではないから、原告らの前記主張は採用することができない。 原告らは、「細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がない」との構成要件は、本件明細書【0040】記載の「木質小薄片製造工程P2」を 経て達成されるものであるとも主張しているが、本件発明を根拠なく実施例 に限定して解釈するものであり、理由がない。 なお、「節部分がない」との構成については、別紙「先行技術文献の記載事項」の特開平11-58330号公報(甲6)の記載から、原木を細片化した細片化木材を用いた再構成材が通常有する構成であると認められ、甲1発明が備えているか、少なくとも「木質小薄片の寸法等に係る構成」の数値 とすることにより備えるものと認められる。 ⑺ したがって、相違点2に係る構成は、甲1発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に想到することができるものであるから、相違点2が容易想到であるとする本件決定の判断は、結論において誤りはない。 6 相違点3の容易想到性判断の誤りについて ⑴ 原告らは、甲1発明の木質ボードを「配向に係る構成」とすることは当業者が適宜なし得たとする本件決定の判断は、誤りである旨主張する。 ⑵ 別紙「先行技術文献の記載事項」の乙1公報、特開平7-186113号公報(乙2、【0014】)、特開平6-312411号公報(乙4、【0008】)、特開2020-6542号公報(乙5、【0013】)の記載 によれば、配向性ストランドボード(OSB)において、原材料が配向性を有するもの、配向がランダムであるものは、いずれも広く知られており、用途に応じて当業者が適宜選択し得るものであったと認められる。 なお、本件明細書にも、繊維方向に配向するかランダムに配向す 配向性を有するもの、配向がランダムであるものは、いずれも広く知られており、用途に応じて当業者が適宜選択し得るものであったと認められる。 なお、本件明細書にも、繊維方向に配向するかランダムに配向するかは、いずれでもよいと記載されている(【0036】、【0045】)。 ⑶ また、乙1文献には、原材料が配向性を有する場合、配向方向の機械的強度は大きく、配向方向に直行する方向の機械的強度は小さいという問題点があることと、この問題点を解決するために配向がランダムな無配向部を形成する製造方法が記載されている。配向性の有無により木質ボードの性質がこのように変化することは、実験成績証明書(甲20)にも「木材の性質上、 その繊維方向と平行な方向については「強度」及び「寸法安定性」が高く、 直行方向についてはこれらの性能が劣るというのが一般的な認識である。」とあるとおり、本件出願日当時の技術常識であったと認められる。 そして、甲1公報に配向性に関する記載がないことから、甲1発明の配向性ストランドボード(OSB)は、配向性を有するもの、ランダム配向とするもののいずれも、除外するものではない。 ⑷ そうすると、フローリング材、壁材などの基材として用いられる木質積層材の発明であり、「繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片」を「木質ボード」の材料とする点は本件発明と一致し、配向性の有無を特定するものではない甲1発明において、前記⑶の技術常識を踏まえ、用途に応じてランダムな配向とすることは、当業者にとって容易であったと 認められる。 ⑸ 原告らは、甲1公報に「木質材料」を構成する「構成材料」(木質小薄片)及びその「配向」をランダムとすることについて、記載も示唆もないから、容易想到とはい 易であったと 認められる。 ⑸ 原告らは、甲1公報に「木質材料」を構成する「構成材料」(木質小薄片)及びその「配向」をランダムとすることについて、記載も示唆もないから、容易想到とはいえない旨主張する。 しかし、既に述べたとおり、甲1発明を「配向に係る構成」とすることは、 発明に係る物の用途に応じた好適化であるから、甲1公報に原告ら指摘の記載や示唆がなくとも、当業者は容易に想到することができたと認められ、原告らの前記主張は採用することができない。 原告らは、甲1発明に用いられるパーティクルボード(PB)はそもそも配向に適さないランダムな構成材料であると主張するが、甲1発明は配向性 ストランドボード(OSB)も用いるものであり、「繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片」を「木質ボード」の材料とする点は本件発明と一致するものであるから、原告らの前記主張は、前記⑷の認定を左右するものではない。 また、原告らは、甲4公報及び甲5公報の記載等について主張するが、前 記⑷の認定を左右するものではない。 ⑹ したがって、相違点3に係る構成は、甲1発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に想到することができるものであるから、相違点3が容易想到であるとする本件決定の判断は、結論において誤りはない。 7 相違点4の容易想到性判断の誤りについて前記したところによれば、本件発明2に係る「厚さ0.20mm 以上0.5 0mm 以下、長さ20mm 以下、幅5mm 以下」の細長形状を選択し、相違点4に係る本件発明2の構成とすることも、当業者が通常の創作能力を発揮することにより容易に想到することができたものと認められるから、相違点4が容易想到であるとする本件決定の判断は、結論 選択し、相違点4に係る本件発明2の構成とすることも、当業者が通常の創作能力を発揮することにより容易に想到することができたものと認められるから、相違点4が容易想到であるとする本件決定の判断は、結論において誤りはない。 8 小括 以上によれば、甲1発明と本件発明1との相違点1から3まではいずれも容易想到であるから、本件発明1に進歩性は認められない。本件発明1を引用する本件発明2に固有の相違点4も容易想到であるから、本件発明2にも進歩性は認められない。そして、本件発明1又は本件発明2を引用する本件発明3に固有の相違点5に容易想到性が認められることについては当事者間に争いはな い。結局、本件発明は、その全てについて進歩性が認められない。 9 結論以上のとおり、本件決定の甲1発明に基づく本件発明の進歩性判断に誤りはなく、原告ら主張の取消事由は認められないから、原告らの請求は理由がない。 よって、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官清水響 裁判官菊池絵理 裁判官頼晋一 (別紙特許公報写し、異議の決定書写し省略) (別紙)先行技術文献の記載事項 <特開平11-58330号公報(甲6)>【0002】 【従来の技術】住宅建築分野において用いられる木質系構造用材は、金属等と同様に構造計算対象となる材料、つま 行技術文献の記載事項 <特開平11-58330号公報(甲6)>【0002】 【従来の技術】住宅建築分野において用いられる木質系構造用材は、金属等と同様に構造計算対象となる材料、つまり機械的強度保証が必要な重要建築材料である。 【0003】近年、良質な大径木の供給が少なくなりつつあり、原木よりの製材品に代わって、木材小片を木目方向に略配向させて積層・接着した配向ストランドボード(OSB)や、長尺木細片を配向させて積層・接着したOSL(Oriented StrandLumber)、PSL(ParallelStrandLumber)等の木質系再構成材を木質系構造用材として活用することが多くなりつつある。これらの細片化木材を用いた再構成材は、原木を細片化してこれを再構成するために、原木から切り出した製材品のように節等による欠陥が存在せず、性能が安定してより均質な強度が得られるという有用な特徴を持つ。 <特開昭62-5808号公報>(乙1公報。発明の名称:木片板状体の製造方法)〔1頁右欄2行~2頁左上欄3行〕(イ)産業上の利用分野本発明は建築物や家具等の構成部材に適したパーティクルボードや木片セメント板等 の木片板状体、特に、木材細長片を任意の方向に配向してなる配向部と無配向部とを備えた木片板状体の製造方法に関するものである。 (ロ)従来技術とその問題点従来、木材細長片と結合材とを混合してなる混合物を、前記木材細長片が一定の方向に向くように散布、配向し、コール板上に堆積させた後、加圧成形してなる木片板状体 の製造方法としては、例えば(中略)が知られている。 しかしながら、従来の製造方法は、すべての木材細長片を一定の方向に向くように配向させるものである 圧成形してなる木片板状体 の製造方法としては、例えば(中略)が知られている。 しかしながら、従来の製造方法は、すべての木材細長片を一定の方向に向くように配向させるものであるので、配向方向の機械的強度は上がるものの、配向方向に直行する方向の機械的強度が小さい。このため、従来の製造方法による木片板状体の周辺部に、切削加工や釘打ち加工を行うと、木材細長片の配向方向に沿って割れが生じやすく、突部等の切削加工を必要とする床材等の基材に使用できないという問題点があった。 〔3頁左上欄9行~18行〕さらに、フォーミングマット5の無配向部5bを形成するスリット板6bは、その下端部からコール板4上に堆積した木材細長片までの垂直距離b2を、木材細長片1の平均長さ寸法ℓ以上としであるが、好しくは平均長さ寸法ℓの2倍以上が良い。 したがって、スリット板6b間を通過する木材細長片は、スリット板6を通過してか らコール板上に堆積するまでの落下途中において、その配向がランダムになるので、無配向部を形成する。 〔3頁右上欄15行~左下欄4行〕なお、本発明にかかるスリット板の配置は、前述の実施例のものに限らず、スリット板の下端部からコール板上に堆積して最上面に位置する木材細長片の平均長さ寸法以上 から平均寸法長さ寸法の半分以下へ順次変えることにより、木材細長片の配向度を徐々に変えることもでき、強度の急変を避けることもできる。又、木片板状体を使用する場所に応じ、適宜、上記垂直距離をかえ、配向部と無配向部とを設ければよい。 〔3頁左下欄7行~14行〕実験例1 木材細長片としては、ラワン剥ぎ芯丸太をドラムフレーカで切削することにより、長さ2.5~30.0mm(平均長さ15mm)、幅0.5~2.5mm 〔3頁左下欄7行~14行〕実験例1 木材細長片としては、ラワン剥ぎ芯丸太をドラムフレーカで切削することにより、長さ2.5~30.0mm(平均長さ15mm)、幅0.5~2.5mm(平均幅1.5mm)、厚み0.2mm~1mm(平均厚み0.5mm)のものからなり、かつ、平均長さ15mmのものが全体量の25%(個数)含まれるものを使用した。 <特開平7-186113号公報>(乙2。発明の名称:表面化粧木質板) 【0002】【従来の技術】近年、木材資源の不足や、森林の保護が問題となってきており、森林伐採は今後ますます困難になることは明らかである。したがって、原木を大量に使用して製造される合板などの板材は、その供給が不安定あるいは供給不足となり、価格も高騰することが予想される。このため、従来廃材とされていた木材薄片を利用したO SBと呼ばれる方向性木材薄片集成板が合板に代わって用いられつつある。 【0003】この木材薄片を用いた方向性木材薄片集成板は、一般に、原材料となる木材薄片原材料をバインダーで接着し、成形一体化して形成される。その際、原材料の寸法が小さくなるに従い、得られる方向性木材薄片集成板は均一になり、表面も平滑になるが、強度、剛性は低下し、密度は増加する。逆に原材料の寸法を大きくすると、 木材本来が持っている強度、密度に近づいて行くが、このような方向性木材薄片集成板は不均質で、表面の凹凸も大きくなる傾向がある。また、住宅用内装材として用いるためには、表面の化粧性が要求されるため、木材薄片集成板の表面に化粧単板などの表面化粧材を貼着することが必要となる。 【0010】以下、本発明の表面化粧木質材について詳しく説明する。図1は本発明の 請求項1記載の表面化粧木質材の一例を示す 集成板の表面に化粧単板などの表面化粧材を貼着することが必要となる。 【0010】以下、本発明の表面化粧木質材について詳しく説明する。図1は本発明の 請求項1記載の表面化粧木質材の一例を示すものであり、図1中符号1は表面化粧木質板である。この表面化粧木質板1は、芯層となる木材薄片集成板2の両面に、表層となる方向性木材薄片集成板3が積層されて積層木質板6とされ、この積層木質板6の両面に接着皮膜7,7が形成され、さらにこれら接着皮膜7,7の一方に表面化粧材8が貼り付けられたものである。 【0014】さらに、この木材薄片集成板2の厚さは5~13㎜とするのが好ましく、その密度は0.40~0.65g/cm3 とするのが好ましいが、木質板の使用目的に合わせて任意に決定すればよい。密度が0.40g/cm3 より小さいと板の強度が不十分になり、逆に密度が0.65g/cm3 より大きい場合は、材料全体の重量が増加して取扱いが困難になるからである。なお、芯層となる木材薄片集成板2は、木材薄 片の繊維方向が表層の方向性木材薄片集成板3の繊維方向と直交することが望ましい が、ランダムであってもよい。 <特開平11-58332号公報>(乙3。発明の名称:木質板)【0003】木材薄片や木質繊維等を利用した木質板は、一般に、木材薄片や木質繊維等の構成要素をバインダーで接着し、成形一体化して形成される。その際、構成要素 の寸法が小さくなるに従い、得られる木質板は均質になり、表面も平滑になるが、強度、剛性は低下し、密度は増加する傾向がある。逆に構成要素の寸法を大きくすると、木材本来が持っている強度、密度に近づいて行くが、そのような木質板は不均質で、表面の凹凸も大きくなる傾向がある。 【0017】本発明の木質板を製造するには、上 る。逆に構成要素の寸法を大きくすると、木材本来が持っている強度、密度に近づいて行くが、そのような木質板は不均質で、表面の凹凸も大きくなる傾向がある。 【0017】本発明の木質板を製造するには、上記木材薄片にバインダー樹脂を塗布し たものを乾式フォーミングし、それを熱圧成形するのが好ましく、具体的には、まず、バインダー樹脂を塗布した木材薄片を熱圧板上に散布して積層体を作製し、次に、熱圧成形機中でこの積層体に熱圧を加えて熱圧成形する。その熱圧条件は、(中略)が好ましい。このようにして得られる木質板は、密度が0.40~0.65g/cm3 程度、曲げ強さが300~700kg/cm2 程度、曲げヤング係数が30~70t/cm2 程度とすることが好ましい。 【0019】また、特に、上記木材薄片として幅の絶対値が1.00~50.00㎜の範囲のものを用いたものにあっては、木材薄片のカールや折れ曲がりを防止できるため、バインダー樹脂との混合時にバインダー樹脂が木材薄片に均一に付着し易く、しかも成形時の空気の抜けが良好でボイド(泡)の発生を低減できるので、木材薄片の 剝離を防止できるうえ木質板の表面の平滑性を向上できる。また、特に、上記バインダー樹脂として発泡性樹脂からなるものを用いたものにあっては、バインダー樹脂が発泡性樹脂のみからなるものであるので、密度が0.40~0.55g/cm3 程度と低い木質板を得ることができ、しかも木材薄片により均一に塗布でき、剛性を向上させることができる。(略) <特開平6-312411号公報>(乙4。発明の名称:方向性木材薄片集成板)【0008】本発明の方向性木材薄片集成板をなす木材薄片1は、長さが20~100mm、幅が3~50mm、厚さが0.2~0.8mmの範囲内であること 号公報>(乙4。発明の名称:方向性木材薄片集成板)【0008】本発明の方向性木材薄片集成板をなす木材薄片1は、長さが20~100mm、幅が3~50mm、厚さが0.2~0.8mmの範囲内であることが好ましい。 これらの木材薄片としては、アカマツ、カラマツ、エゾマツ、トドマツ、アスペン、ロッジポールパイン等の薄片が好適に用いられるが、樹種は特に限られるものではな い。また、これらの木材薄片1は、図1のように1軸方向に配列させるのみならず、互いに直行する2軸方向に揃えて配列させてもよいし、各々任意の方向に配列させてもよい。柱や梁などの軸材として使用する場合は1軸配向のものが好ましく、面材として使う場合は2軸配向や任意配向のものが好ましい。 【0013】この方向性木材薄片集成板における、木材薄片に対する発泡性バインダー の割合は、木材薄片100重量部に対して10~30重量部とするのが好ましい。さらに、この方向性木材薄片集成板の密度は、0.40~0.65g/cm3 とするのが好ましい。密度が0.40g/cm3 より小さいと、板の強度が不十分になり、逆に密度が0.65g/cm3 より大きい場合は、材料全体の重量が増加して取扱い難くなる。 また、この方向性木材薄片集成板の曲げヤング係数は40~80×102MPaであ るのが好ましい。例えば、この方向性木材薄片集成板を床材としたとき、曲げヤング係数が40×102MPa未満では、曲げたわみがJASの規定値よりも大きくなり、80×102MPaを越えると、歩行時に必要とする適度の弾性が不足するようになる。 <特開2020-6542号公報>(乙5。発明の名称:装飾用化粧材及びその製造方法)【0002】一般に、配向性ストランドボード(OSB)やパーティクルボード(PB)等のチ る。 <特開2020-6542号公報>(乙5。発明の名称:装飾用化粧材及びその製造方法)【0002】一般に、配向性ストランドボード(OSB)やパーティクルボード(PB)等のチップボードは、原料とする木材の樹種や形状等に左右されることなく製造が可能であり、その用途も製造材、建築下地材、化粧材等として広範囲に亘っている。 【0013】 また、着色層における着色チップを含むチップの積み重ね状態は、ある程度の配向性があるもののランダムであるので、同じ製造工程で同じように製造したとしても、表面の模様が装飾用化粧材毎に異なり、他にない唯一無二の意匠が得られる。 以上 別表 単位(mm)発明の名称名称書証厚さ長さ幅備考薄物木質ボード甲20.5 30~50表裏面がMDF層、内部がストランド層の木質ボードにおいて、ストランド層のストランドが外部が荒く、内部が細かく構成されていることを特徴する薄物木質ボードの実施例1の数値配向性ストランドマットの製造方法及びその装置の発明甲40.3 ストランドを高速気流中に飛ばし、一定方向に配向する配向工程等を有する配向性ストランドマットの製造方法が基づく知見の数値表裏層0.2~0.56~120.1~2.5芯層0.5~120~254~8木片板状態の製造方法乙10.2~1(平均0.5)2.5~30(平均15)0.5~2.5(平均1.5)木材細長片と結合材とを混合してなる混合物を複数のスリット板の間から落下させ、順次堆積させた後、加圧成形してなる配向部を有する木片板状体の製造方法の実験例1の数 5)0.5~2.5(平均1.5)木材細長片と結合材とを混合してなる混合物を複数のスリット板の間から落下させ、順次堆積させた後、加圧成形してなる配向部を有する木片板状体の製造方法の実験例1の数値表層0,1~0.520~1002~60芯層0.4~0.820~1002~60木質板乙30.05~0.5(平均0.1~0.45)20~150(平均40~115)1~50(平均10~35)木材薄片をバインダー樹脂により接着一体化した木材薄片集成板からなる木質板の実施例の数値方向性木材薄片集成板乙40.2~0.820~1003~50木材薄片をバインダー樹脂により接着一体化した木材薄片集成板からなる木質板の製造方法発泡バインダーで成型一体化してなる木材薄片集成板において好ましいとされる数値本件発明10.2~0.540以下15以下本件発明20.2~0.520以下5以下甲2 特公平7-41605号公報甲4 特開10-249817号公報甲5 特開2003-94411号公報乙1 特開昭62-5808号公報乙2 特開平7-186113号公報乙3 特開平11-58332号公報乙4 特開平6-312411号公報木片を熱可塑性樹脂によって結着した芯層と、熱硬化性樹脂層によって結着した表裏層からなる木質板の製造方法(芯層の数値は「更に好ましい」とされている数値)木材薄片原材料をバインダーで接着し、成型一体化して形成される木材薄片集板を芯層とし、方向性木材薄片集成板を表層とする積層木質板上の接着皮膜に貼り付けた表面化粧木質板における木材薄片の数値木質板および木質板の製造方法甲5表面化粧木質板乙2 粧木質板における木材薄片の数値木質板および木質板の製造方法甲5表面化粧木質板乙2
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