平成12(行ウ)9 損害賠償代位請求等

裁判年月日・裁判所
平成16年1月29日 新潟地方裁判所
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判決文本文36,851 文字)

平成16年1月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成12年(行ウ)第9号損害賠償代位請求事件(以下「甲事件」という。)平成13年(行ウ)第3号損害賠償代位請求事件(以下「乙事件」という。)平成14年(行ウ)第7号怠る事実の違法確認請求事件(以下「丙事件」という。)(口頭弁論終結日平成15年11月6日)判決 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 甲事件(1) 請求ア甲事件・乙事件被告株式会社A(以下「被告A」という。),同B株式会社(以下「被告B」という。),同株式会社C(以下「被告C」という。),同株式会社D(以下「被告D」といい,被告B及び被告Cと併せて「被告JV3社」ということがある。)及び甲事件被告E(以下「被告E」という。)は,新潟県a郡a村(以下「a村」という。)に対し,連帯して,7273万円並びにこれに対する被告D及び被告Eについては平成12年8月6日から支払済みまで,被告A及び被告Bについては同月8日から支払済みまで,被告Cについては同月22日から支払済みまで,いずれも年5分の割合による金員を支払え。 イ被告A及び被告Eは,a村に対し,連帯して,120万3627円及びこれに対する被告Eについては平成12年8月6日から支払済みまで,被告Aについては同月8日から支払済みまで,いずれも年5分の割合による金員を支払え。 ウ訴訟費用は,被告A,被告B,被告C,被告D及び被告Eの負担とする。 エ仮執行宣言(2) 被告A,被告B,被告C及び被告Dの答弁(本案前の答弁)ア甲事件に係る訴えをいずれも却下する。 イ訴訟費用は,原告F,同G,甲事件・乙事件原告H,同I,同J及び同Kの負 言(2) 被告A,被告B,被告C及び被告Dの答弁(本案前の答弁)ア甲事件に係る訴えをいずれも却下する。 イ訴訟費用は,原告F,同G,甲事件・乙事件原告H,同I,同J及び同Kの負担とする。 (3) 被告らの答弁(本案の答弁)ア甲事件に係る原告らの請求をいずれも棄却する。 イ訴訟費用は,原告F,同G,甲事件・乙事件原告H,同I,同J及び同Kの負担とする。 2 乙事件(1) 請求ア被告A,被告B,被告C,被告D及び乙事件被告L(以下「被告L」という。)は,a村に対し,連帯して,50億5449万1400円並びにこれに対する被告B,被告C,被告D及び被告Lについては平成13年3月8日から支払済みまで,被告Aについては同月9日から支払済みまで,いずれも年5分の割合による金員を支払え。 イ被告A及び被告Lは,a村に対し,連帯して,7681万1373円及びこれに対する被告Lについては平成13年3月8日から支払済みまで,被告Aについては同月9日から支払済みまで,いずれも年5分の割合による金員を支払え。 ウ訴訟費用は,被告A,被告B,被告C,被告D及び被告Lの負担とする。 エ仮執行宣言(2) 被告A,被告B,被告C及び被告Dの答弁(本案前の答弁)ア乙事件に係る訴えをいずれも却下する。 イ訴訟費用は,原告F,同G,甲事件・乙事件原告H,同I,同J及び同Kの負担とする。 (3) 被告らの答弁(本案の答弁)ア乙事件に係る原告らの請求をいずれも棄却する。 イ訴訟費用は,原告F,同G,甲事件・乙事件原告H,同I,同J及び同Kの負担とする。 3 丙事件(1) 請求ア丙事件被告新潟県a郡a村長(以下「被告a村長」という。)が,被告A,被告 訴訟費用は,原告F,同G,甲事件・乙事件原告H,同I,同J及び同Kの負担とする。 3 丙事件(1) 請求ア丙事件被告新潟県a郡a村長(以下「被告a村長」という。)が,被告A,被告B,被告C及び被告Dに対して,連帯して2827万0686円の支払いを求める請求を怠る事実が違法であることを確認する。 イ訴訟費用は,被告a村長の負担とする。 (2) 答弁ア丙事件に係る原告らの請求を棄却する。 イ訴訟費用は,原告F,同G,丙事件原告M,同Nの負担とする。 第2 事案の概要甲事件及び乙事件は,a村の住民である原告らが,a村が建設したa村生涯学習センター(愛称 b。以下「b」という。)の建設工事に関し,施工監理を行った被告A及び建設工事を請け負った被告JV3社がa村に無断で設計変更等を行った結果,設計書記載の建築材料・工法と実際の施工に齟齬が生じているから上記被告らには債務不履行があり,この債務不履行によりa村は監理施工業務委託契約及びb建物の建設工事請負契約の代金相当額の損害を被ったと主張し,①被告A及び被告JV3社に対し,地方自治法242条の2第1項4号(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下同じ。)後段に基づいて,a村に代位して債務不履行に基づく損害賠償請求をするとともに,②a村の村長の地位にあった被告E及び被告Lに対し,上記損害賠償請求権の行使を怠ったことによりa村に損害を生じさせたとして,同号前段に基づいて,a村に代位して,損害賠償を求めるものである。なお,甲事件は,bのうち,茶道館の建設に関するものであり,乙事件は,茶道館以外の建設に関するものである。 丙事件は,a村の住民である原告らが,bの建設状況等を調査するためにa村が支出した費用(以下「本件間接費用」という。)も被告A 関するものであり,乙事件は,茶道館以外の建設に関するものである。 丙事件は,a村の住民である原告らが,bの建設状況等を調査するためにa村が支出した費用(以下「本件間接費用」という。)も被告A及び被告JV3社の債務不履行による損害に含まれるにもかかわらず,これを被告a村長が被告A及び被告JV3社に損害賠償請求しないのは財産の管理を違法に怠るものであると主張し,地方自治法242条の2第1項3号に基づき,上記怠る事実が違法であることの確認を求めるものである。 1 前提となる事実(以下の事実のうち,証拠等を掲記したもの以外は当事者間に争いのない事実である。)(1) 当事者ア原告らはいずれもa村の住民である。 イ被告Aは,建物の設計,監理業務などを業とする株式会社である。 ウ被告JV3社は,いずれも建築工事,土木工事の施工,請負等を業とする株式会社である。 エ被告Eは平成4年12月から平成12年12月14日まで,被告Lは同月15日から現在まで,それぞれa村長の職にあったものである。〔弁論の全趣旨〕(2) b建設に至る経緯について平成3年,a村は,a村にc発電所が立地することから交付される電源立地促進対策交付金を財源として総合文化スポーツ施設の総合整備計画を策定した。 平成5年には,上記の総合文化スポーツ施設が生涯学習施設と名称を変更し,平成6年には,b基本計画が策定された。 (3) bに係る施工監理契約について被告Aは,平成7年7月21日,a村との間でbの設計業務委託請負契約を締結し,設計図書を作成した。〔弁論の全趣旨〕被告Aは,平成9年8月1日,a村との間で,上記設計に基づくb建設工事の施工監理委託契約(以下「本件施工監理契約」という。)を締結し,bの建設工事の し,設計図書を作成した。〔弁論の全趣旨〕被告Aは,平成9年8月1日,a村との間で,上記設計に基づくb建設工事の施工監理委託契約(以下「本件施工監理契約」という。)を締結し,bの建設工事の施工監理を担当した。 (4) bに係る建設工事請負契約について被告JV3社は,a村との間で請負契約(以下「本件建設請負契約」という。)を締結し,bの建設工事及び外構工事を行った。 (5) bに関する問題の提起について〔甲13,19,37,46,弁論の全趣旨〕平成12年5月に,bの茶道館に関する情報公開請求,これに続く住民監査請求がされ,bの茶道館の畳が当初の設計において想定されていたものより品質の劣るものが使用されていることが判明し,その他にも,当初設計書と実際の施工で仕様が変更されている箇所が多数存在することが判明し,このことがマスコミに取り上げられるなど,大きく報道された。 また,電源立地促進対策交付金を所管する経済産業省及び会計検査院は,bに関する調査を行い,会計検査院は,平成12年度決算検査報告において,bの建設に関して交付された電源立地促進対策交付金のうち2億6054万4985円について,事業の実施が不適切で交付目的に反するなどとした。そして,これをうけて,経済産業省は,a村に対し,電源立地促進対策交付金のうち2億6047万4882円及びこれに対する加算金8001万6838円の合計3億4049万1720円の返還を求め,a村は,平成13年12月25日に返還金2億6047万4882円を,平成14年1月7日に加算金8001万6838円をそれぞれ支払った。 (6) a村と被告A及び被告JV3社との和解契約についてa村と被告A及び被告JV3社は,平成14年3月29日,b建設工事等について以下の内容が記 001万6838円をそれぞれ支払った。 (6) a村と被告A及び被告JV3社との和解契約についてa村と被告A及び被告JV3社は,平成14年3月29日,b建設工事等について以下の内容が記載された合意書(乙ク2)による和解契約(以下「本件和解契約」という。)を締結した。 ア (第1条)a村,被告A及び被告JV3社がこの合意に至るまでの主たる経過は下記のとおりである。 記次の(ア)ないし(エ)の事項を踏まえて,a村は,被告A及び被告JV3社に対して,(オ)の請求を,また,被告A及び被告JV3社は,a村に対して(カ)の主張をし,a村,被告A及び被告JV3社は,(キ)のとおり協議をした。 (ア) 会計検査院報告書(平成13年12月国会に報告された「会計検査院による平成12年度決算検査報告書」)の内容(イ) 関連訴訟事件a 住民訴訟事件(本件甲事件)の請求の趣旨・原因b 住民訴訟事件(本件乙事件)の請求の趣旨・原因(ウ) a村の行った調査a a村発注の「a村生涯学習センター「b」に係る設計出来高調査業務報告書」(平成12年9月7日財団法人O)の内容b a村が独自に調査を行い,経済産業省へ報告をした内容(エ) 経済産業省の調査「新潟県a村生涯学習センター「b」に関する問題について(調査報告書)」(平成13年9月経済産業省)の調査内容(オ) a村が被告A及び被告JV3社に対して主張した請求内容a a村が国に対して支払った交付金の返還金相当額3億4049万1720円の支払いb bに係る瑕疵部分全ての修補(修補しない部分については,修補に代わる損害賠償)c a a a村が国に対して支払った交付金の返還金相当額3億4049万1720円の支払いb bに係る瑕疵部分全ての修補(修補しない部分については,修補に代わる損害賠償)c a村に発生した本件間接費用全額の補填(カ) 被告A及び被告JV3社がa村に主張した内容bに関する紛争については,a村,被告A及び被告JV3社ともに三者三様の責任があったといえるから,三者が各責任割合に応じて,相応の負担をすべきである。 (キ) a村,被告A及び被告JV3社は,会計検査院の報告書等から総合的に判断し,a村においては発注者としての記録管理不備等善管注意義務不足があり,被告Aにおいては一部設計に関する図面等の完成度不足や施工監理者としての監理不足があり,被告JV3社においては一部に竣工図の手直し不足や被告Aを通じてa村との連絡調整の不足があるなど,三者三様に責任があったことを認めた。 また,a村と被告JV3社はその責任の程度について,a村,被告A及び被告JV3社間では,被告Aが主でa村と被告JV3社が従であるとの認識を示す一方,被告Aはこれに対し異論を示していた。 以上の経緯のもと,a村の村長の「村の財政面での損失を最小限にしたい」という要請のもとに,交付金返還という事態に至ったことを重視し,問題の全面的かつ早期の解決を最優先課題とし,再三誠実に協議を行い,その結果,当事者間において本合意に至った。 イ (第2条)a村,被告A及び被告JV3社は,前記アの経過を斟酌した上で,被告A及び被告JV3社が,a村に対して,一切の解決金として,連帯して金3億4364万1165円(①a村が国に対して支払った電源立地促進対策交付金の返還額及び②b茶道館の瑕疵部分の修補に代える清算金の A及び被告JV3社が,a村に対して,一切の解決金として,連帯して金3億4364万1165円(①a村が国に対して支払った電源立地促進対策交付金の返還額及び②b茶道館の瑕疵部分の修補に代える清算金の合計額)を支払うことを約し,この金員を平成14年5月31日限り,a村の指定する銀行口座に振り込む方法で支払う。 ウ (第3条)被告A及び被告JV3社は,a村に対して,別紙1(本件合意書の対象たる紛争)の各事業のうち,b茶道館の瑕疵部分の修補として,被告A及び被告JV3社の費用負担により,連帯して,別紙2(瑕疵部分についての修補内容及び修補に代わる精算金)のとおり,修復工事をする(修補しない部分については清算金314万9445円を支払う。)。 エ (第4条)a村,被告A及び被告JV3社は,別紙1の紛争に関し,a村,被告A及び被告JV3社との間には,本件和解契約に定める以外に相互に何らの債権債務のないことを確認する。ただし,被告A及び被告JV3社は,別紙1の事業に関する経年検査については,今後も誠実に対応する。 オ (追記)被告A及び被告JV3社は,a村に対して,a村監査委員事務局平成14年1月22日受付第2号の平成14年1月21日付けのa村職員措置請求書三2記載のbアリーナの水滴の落下につき原因究明に努め,被告A及び被告JV3社の費用負担により連帯して修繕工事をする。 (7) 和解契約の履行について〔乙イ6ないし8,乙キ3,4〕本件和解契約に基づく金銭の支払い及び瑕疵の修補は平成14年5月30日までになされ,本件和解契約に基づく義務は履行された。 2 争点(1) 被告A及び被告JV3社は,本案前の答弁として,甲事件及び乙事件に係る原告らの監査請求(以下,甲事件に係る監査請求を「 日までになされ,本件和解契約に基づく義務は履行された。 2 争点(1) 被告A及び被告JV3社は,本案前の答弁として,甲事件及び乙事件に係る原告らの監査請求(以下,甲事件に係る監査請求を「本件甲監査請求」といい,乙事件に係る監査請求を「本件乙監査請求」という。)は監査請求期間を徒過した不適法なものであり,甲事件及び乙事件に係る訴えは,適法な監査請求を経ていないから不適法であると主張し,原告らは,本件監査請求が不適法であるとの被告A及び被告JV3社の主張を争う。 したがって,「甲事件及び乙事件に係る訴えが適法な監査請求を前置しているか否か」が争点となる(争点1)。 (2) 原告らは,甲事件及び乙事件において,被告A及び被告JV3社には本件施工監理契約ないし本件建設請負契約の債務不履行があるとして,a村に代位して前記の損害賠償請求をするのに対し,被告A及び被告JV3社は,本件和解契約の締結及びそれに従った履行により,a村の被告A及び被告JV3社に対する損害賠償請求権は消滅したと主張する。 また,原告らは,甲事件及び乙事件において,被告E及び被告Lが,被告A及び被告JV3社に対する損害賠償請求を違法に怠り,これによりa村に損害を与えたとして被告E及び被告Lに損害賠償請求をするのに対し,被告E及び被告Lは,本件和解契約締結により損害賠償請求権を行使していないという状態は存在していないか又はa村に損害が発生していないから,被告E及び被告Lが損害賠償請求権の行使を違法に怠りa村に損害を与えたことはないと主張する。 さらに,原告らは,丙事件において,本件間接費用も被告A及び被告JV3社の債務不履行による損害に含まれるにもかかわらずこれを被告a村長が被告A及び被告JV3社に損害賠償請求しないのは財産の管理を違法に怠るも 原告らは,丙事件において,本件間接費用も被告A及び被告JV3社の債務不履行による損害に含まれるにもかかわらずこれを被告a村長が被告A及び被告JV3社に損害賠償請求しないのは財産の管理を違法に怠るものであると主張するのに対し,被告a村長は,本件和解契約により調査費用等についても解決済みであるから,調査費用等を被告A及び被告JV3社に対して請求しないことが財産の管理を違法に怠るものであるということはできないと主張する。 これらの被告らの主張に対し,原告らは,本件和解契約が無効であると主張し,被告A,被告JV3社,被告E及び被告Lの上記主張を争う。 したがって,「本件和解契約の有効性」が争点となる(争点2)。 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(甲事件及び乙事件に係る訴えが適法な監査請求を前置しているか否か)について(被告A及び被告JV3社の主張)bは平成11年3月29日に検査の上,a村に引き渡されているが,本件甲監査請求及び本件乙監査請求は,いずれも上記引渡しから1年以上経過した平成12年6月1日及び平成13年1月23日に行われているから,本件甲監査請求及び本件乙監査請求は,いずれも地方自治法242条2項所定の監査請求期間を徒過した不適法なものであり,甲事件及び乙事件に係る訴えは,いずれも適法な監査請求の前置を欠く不適法な訴えである。 (原告F,同G,甲事件・乙事件原告H,同I,同J及び同Kの主張)本件甲監査請求及び本件乙監査請求は,いずれもa村が被告A及び被告JV3社に対して有する債務不履行に基づく損害賠償請求権を行使しないという財産の管理を怠る事実に係る住民監査請求であり,このような怠る事実に係る住民監査請求については,地方自治法242条2項の監査請求期間の制限の規定の適用を受けな 基づく損害賠償請求権を行使しないという財産の管理を怠る事実に係る住民監査請求であり,このような怠る事実に係る住民監査請求については,地方自治法242条2項の監査請求期間の制限の規定の適用を受けないから,本件甲監査請求及び本件乙監査請求は適法な監査請求であり,甲事件及び乙事件に係る訴えは適法な監査請求を前置した適法な訴えである。 (2) 争点2(本件和解契約の有効性)について(原告らの主張)本件和解契約は,下記アのとおり,a村の被告A及び被告JV3社に対する権利の放棄にすぎず,かかる権利の放棄は無効というべきであるし,仮に,本件和解契約を法的にも和解と評価できるとしても,下記イのとおり,本件和解契約は無効である。 ア本件和解契約は,下記(ア)のとおり,被告A及び被告JV3社に対する権利の放棄にすぎず,このような権利の放棄は,下記(イ)及び(ウ)のとおり,無効である。 (ア) 民法695条及び地方自治法96条1項12号の「和解」に該当するというためには,当事者間の互譲が存在しなければならない。 しかし,被告A及び被告JV3社は,自らに責任があること自体は争っておらず,a村にも責任があったと主張して責任の限定,債務の減額を求めていたのに対し,本件和解契約では,かかる被告A及び被告JV3社の主張を認めて,責任の限定及び債務の減額を認めている。 そうすると,本件和解契約は,a村が一方的に譲歩したものであって「和解」の要件である互譲が存在しないのであるから,法的には,単なる権利の一部放棄,債務の一部免除の合意(免除契約)に該当するにすぎないというべきである。 (イ) 住民訴訟の目的及び性格にかんがみると,地方自治法242条の2第1項4号に基づく代位請求訴訟が係属している場合において, 免除の合意(免除契約)に該当するにすぎないというべきである。 (イ) 住民訴訟の目的及び性格にかんがみると,地方自治法242条の2第1項4号に基づく代位請求訴訟が係属している場合において,地方公共団体の長が住民訴訟の目的を妨げるような権利の放棄を行うことは許されず,権利の放棄は無効というべきである。 もとより,権利の放棄は,地方自治法96条1項10号が議会の議決事項と規定していることにかんがみれば,議会に一定の裁量権が与えられていることは否定できないが,そのなされた経緯,意図,放棄した権利の内容,放棄による影響や派生効果等の諸般の事情に照らして妥当性を欠く場合には,議会の裁量権を逸脱するものとして違法無効であるというべきである。 本件では,上記(ア)のような経緯に照らすと,権利の放棄は妥当性を欠くから,本件和解契約による権利の放棄は無効というべきである。 (ウ) 地方公共団体は,法令に違反してその事務を行ってはならず(地方自治法2条16項前段),法令に違反して行った地方公共団体の行為は無効とされるのである(同条17項)から,権利の放棄が法令に違反する場合は無効である。 そして,地方公共団体は,最少の経費で最大の効果を上げるようにしなければならず(同条14項),その財政の健全な運営に努め(地方財政法2条1項),その目的を達成するため必要かつ最少の限度を超えて経費を支出してはならない(同法4条1項)とされ,地方公共団体の財産は,常に良好の状態においてこれを管理し,その所有の目的に応じてもっとも効率的にこれを運営しなければならない(同法8条)のであるから,当該権利の放棄が地方財政の健全性を害するものであるときには,当該権利の放棄は,これらの規定に反する違法な行為である。 そして, にこれを運営しなければならない(同法8条)のであるから,当該権利の放棄が地方財政の健全性を害するものであるときには,当該権利の放棄は,これらの規定に反する違法な行為である。 そして,本件和解契約による権利の放棄は地方財政の健全性を害するから,無効というべきである。 イ仮に本件和解契約を法的にも和解と評価できるとしても,以下のとおり,本件和解契約のうち,被告A及び被告JV3社に対する損害賠償請求権を放棄する部分は無効というべきである。 (ア) 地方自治法96条1項12号によると,地方公共団体の長は,議会の議決があった場合に初めて執行機関として和解を締結する権限が付与され,和解内容の決定については地方公共団体の長に一定の裁量権が認められると解されるが,地方公共団体の長が法令に違反する和解を締結したときは,当該和解は違法無効になるというべきである。また,前記ア(イ)と同様の基準で裁量権の逸脱又は濫用の有無が判断されるべきである。 (イ) 本件和解契約のうち,被告A及び被告JV3社が連帯してa村に対して3億4049万1720円(電源立地促進対策交付金のa村の国に対する返還金相当額及びb茶道館の瑕疵修補に代える清算金の合計額)を支払う旨の部分には無効事由は存在しないというべきであるが,本件和解契約のその余の部分(本件和解契約に係る合意書の第3条及び第4条部分)は,a村の被告A及び被告JV3社に対する損害賠償請求権の大半を放棄することを実質的に意味するので,下記(ウ)の理由から,無効というべきである(一部無効)。 (ウ) 地方公共団体は,前記ア(ウ)のとおり,その事務を処理するに当たって,最少の経費で最大の効果を上げるようにしなければならない(地方自治法2条14項)などの義務を負っているのであるから,和解 (ウ) 地方公共団体は,前記ア(ウ)のとおり,その事務を処理するに当たって,最少の経費で最大の効果を上げるようにしなければならない(地方自治法2条14項)などの義務を負っているのであるから,和解が地方財政の健全性を害するものであるときは,当該和解契約の締結はこれらの規定に反する違法な行為であると解される。そして,問題とされた行為が,その性質,これに至る経緯,当該地方公共団体と相手方双方の利益,法的安定性などを総合勘案して,地方自治法2条14項等の趣旨を著しく損い,社会通念上も著しく妥当性を欠くと認められる場合には,地方自治法2条14項等は民法91条のいわゆる強行法規の性格を有するというべきであり,又は民法90条の公序の内容をなすものと解すべきであるから,私法上も無効になるというべきである。 a これを本件についてみると,まず,本件和解契約は,その経緯において,①急きょ招集されたa村臨時議会において提案され,極めて短時間に議決された突然の和解であること,②被告A及び被告JV3社との間の交渉は秘密裏に行われていること,③当初,a村の担当職員は本件間接費用も被告A及び被告JV3社に対して請求する旨説明していたのに,このような説明と異なる本件和解契約が締結されていること,④村長である被告Lのみが交渉に臨んでおり,建築の専門家やa村職員を同行していないこと,⑤本件和解契約に係る審議を行ったa村臨時議会はわずか3日前に招集され,議案書の写しが交付されないまま突然議案が提案されるなど,唐突な提案であったこと,⑥本件和解契約に至った経緯や理由の具体的な説明がないこと,⑦議決を急ぐ必要はないにもかかわらず,a村議会において十分な審議が行われないまま議決されたこと,⑧本件和解契約の意図・目的は原告らの訴訟遂行を妨げるところにあることに照ら 具体的な説明がないこと,⑦議決を急ぐ必要はないにもかかわらず,a村議会において十分な審議が行われないまま議決されたこと,⑧本件和解契約の意図・目的は原告らの訴訟遂行を妨げるところにあることに照らし,無効事由があるというべきである。 b また,本件和解契約におけるa村と被告A及び被告JV3社との双方の利益を検討すると,以下のとおり,a村の利益が犠牲にされ,被告A及び被告JV3社を一方的に利するものであるから,無効というべきである。すなわち,①本件和解契約は,a村が国に返還した電源立地促進対策交付金の返還金相当額の損害賠償と茶室の瑕疵の一部の補修及び補修に代わる解決金の支払い並びにbアリーナの修繕工事を除き,被告A及び被告JV3社の瑕疵担保責任及び債務不履行責任を全て免除するものであり,不当に被告A及び被告JV3社を利するものである。②和解の基礎となる損害の積算方法は,個別に当初の予定価格と現在時価を評価し,両者の比較による価値上昇分と価値減少分とを個別に算出し,これを積み重ねるという手法を採用しており,結果的に,b工事全体では,完成した工作物の価値は増加しており,損害はないことを前提として本件和解契約を締結しているが,そもそも一つの施設の建設工事について当初設計と設計変更部分とを比較して全体として価値が増加していれば損害がないとの考え方は不合理である。③和解の基礎となる損害の積算金額も明確な根拠がなく,全体として価値が増加したとの結論を導くために意図的な数字あわせが行われていると推測される。④瑕疵の金銭的評価と修理費用の算定が困難であることが本件和解契約に至った理由の一つとされているが,a村が社団法人Pや財団法人Oに瑕疵の金銭的評価を依頼すれば可能だったのであるから,理由として不合理である。⑤本件和解契約は経済産業省の 難であることが本件和解契約に至った理由の一つとされているが,a村が社団法人Pや財団法人Oに瑕疵の金銭的評価を依頼すれば可能だったのであるから,理由として不合理である。⑤本件和解契約は経済産業省の報告書(甲13)を踏まえて成立したものであるが,そもそも同報告書は瑕疵のすべてを把握したものではなく,多数の瑕疵を見逃したものであった。⑥本件和解契約の第4条では,「本条項に定める以外に相互に何らの債権債務のないことを確認する。」と規定され,今後新たな瑕疵が表面化した場合にa村が修繕費用等を負担しなければならず,不合理である。⑦被告Aに対し,施工監理業務契約額の損害を免責する必要がないのに,免責を行っており,不合理である。⑧本件間接費用も損害に含まれるのに,理由なくこれを免責しているのは不合理である。⑨本件和解契約に係る合意書にはa村の責任の内容として,記録管理の不備等「善管注意義務不足」があったことが記載されているが,このような善管注意義務不足があったとしても被告A及び被告JV3社の責任を軽減させる理由にはならないのであるから,このような善管注意義務不足を理由として被告A及び被告JV3社の責任を軽減させているのは不合理である。⑩被告JV3社には,a村建設工事請負約款18条1項の違反があったのであるから,安易な妥協をすべきではなかった。⑪本件和解契約は,経済産業省の報告書(甲13)の「変更項目評価一覧」の表に準拠しないなど不合理な理解に基づいて締結されている。⑫被告Lは,本件和解契約に係る審議が行われた議会において,平成14年4月分の給与50パーセントの減俸の提案をし,可決されているが,被告L自ら,本件和解契約の不備を自認し責任をとったものである。⑬本件和解は,大半の損害が補填されず,また,今後新たな瑕疵が表面化した場合にa村の負担によ セントの減俸の提案をし,可決されているが,被告L自ら,本件和解契約の不備を自認し責任をとったものである。⑬本件和解は,大半の損害が補填されず,また,今後新たな瑕疵が表面化した場合にa村の負担による補修を余儀なくされるなど,村の財政の健全性を害するものであり,また,村民による不正追及に幕を引き,業者をかばうものであり,a村に深刻な悪影響をもたらすものである。 (被告a村長の主張)本件和解契約は,下記アの考え方に従って締結されたもので,下記イの交渉の経緯にかんがみても本件和解契約には合理性が認められ,本件和解契約が無効であるということはできない。 ア本件和解契約においては,以下のような考え方に従い,損害額が算定された。 まず,bに関しては,当初の設計図書と現況との間に多くの変更事項が認められたが,この点については,a村や新潟県が調査を先行し,経済産業省や会計検査院がこの調査を踏まえて結論を導き出していることから,a村,被告A及び被告JV3社は,経済産業省の報告書において変更項目として記載されているものが損害額算定の前提となる変更部分であり,その変更内容であるとの共通の認識に立つこととした。 そして,上記の経済産業省の報告書や会計検査院審査による変更部分の評価は,国がa村に対して交付した電源立地促進対策交付金のうちどの範囲で返還を求めるべきかとの観点からなされたものであり,その交付金申請の趣旨どおりに行われたか否かの観点から返還部分が決せられているのに対し,請負契約の履行により完成したものに瑕疵があった場合の損害賠償額の問題は,これと次元を異にする。すなわち,請負契約において問題となる瑕疵は,完成された仕事が契約で定められた内容どおりではなく,使用価値若しくは交換価値を減少させる欠点があるか,又は当事 害賠償額の問題は,これと次元を異にする。すなわち,請負契約において問題となる瑕疵は,完成された仕事が契約で定められた内容どおりではなく,使用価値若しくは交換価値を減少させる欠点があるか,又は当事者があらかじめ定めた性質を欠くなど不完全な点を有することをいう。また,民法634条2項の瑕疵修補に代わる又は瑕疵修補とともにする損害賠償請求における「損害」とは,履行利益をいい,瑕疵修補に代わる損害賠償請求の場合は,目的物に瑕疵があることによってその物の客観的な交換価値が減少したことによる損害(完全な物の価値と瑕疵ある物の価値の差額)を意味する。a村は,このような考え方を前提として,当初の設計図書と現況との間の変更事項につき,個別に当初の予定価額と現在時価を評価し,両者の比較による価値上昇分と価値減少分を個別に算出し,これを積み重ねるという手法により損害額を算出した。 具体的には,b全体では,完成した工作物の価値は増加しており,損害がないことになるが,bは,本館,茶道館及び陶芸館の3つの部分に分かれるところ,b問題は茶道館の畳の問題に端を発したこと,また,茶道館のみを取り上げると価値が減少していることから,その価値減少分を特別に損害として認め,被告A及び被告JV3社は,この茶道館について生じた減価を賠償することになった。 また,a村が国に返還した電源立地促進対策交付金3億4049万1720円の取扱いは微妙となるが,紛争の早期解決の観点からも被告A及び被告JV3社側が譲歩し,上記の茶道館に係る損害賠償とは別に,上記返還金相当額をa村に支払うこととした。 イ本件和解契約に係る交渉において,a村は,下記(ア)の請求をし,これに対し,被告A及び被告JV3社は,下記(イ)の反論をし,a村は,下記(ウ)の事情から譲歩することと 支払うこととした。 イ本件和解契約に係る交渉において,a村は,下記(ア)の請求をし,これに対し,被告A及び被告JV3社は,下記(イ)の反論をし,a村は,下記(ウ)の事情から譲歩することとした。 (ア) a村の請求a村は,前記アの考え方に従い,価値減少部分を瑕疵とみなして,被告JV3社に対し瑕疵部分の修補及び修補に代わる損害賠償を請求した。 また,a村が国に対して返還した電源立地促進対策交付金3億4049万1720円及びa村に発生した本件間接費用の全額の補填も請求した。 (イ) 被告A及び被告JV3社の反論これに対し,被告JV3社は,施工監理業者である被告Aの指示・監理のもとに施工したものであり,設計・監理業者である被告Aの責任こそが重く,その責任が問われてしかるべきであって,施工監理業者の指示どおりに施工した被告JV3社が責任を問われるいわれはなく,また,施工監理業者との意思疎通を欠き,かつ,記録管理に不備のあったa村の責任も重いと反論した。 なお,被告Aは,a村の請求及びこのJV3社の反論に対しても異議を唱えた。 (ウ) a村の譲歩の要因a 会計検査院報告書(甲14)において,a村については,設計内容の変更のあることを認識したにもかかわらず,設計変更,工事費の見直し,契約変更等の適切な手続をとらなかったこと,実施設計図書を紛失していることが,被告Aについては,同社が無断設計変更し,かつ,これを竣工図に反映させていなかったこと,不適切な設計図が認められることなどといった指摘がなされているが,被告JV3社については,特にその落ち度の指摘がなかった。 b 被告JV3社は,基本的には,監理業者である被告Aの指示に基づいて施工していると思われ, となどといった指摘がなされているが,被告JV3社については,特にその落ち度の指摘がなかった。 b 被告JV3社は,基本的には,監理業者である被告Aの指示に基づいて施工していると思われ,したがって,被告JV3社との関係においては,瑕疵修補や電源立地促進対策交付金返還等の請求の前提である「瑕疵」が認められるか否か微妙であると考えられた。 c 早期解決のために,瑕疵の有無に関する評価の争いに踏み込むことなく,相違部分を全て差額化して対処することが妥当と考えられた。 d 修補に代わる損害賠償とは,目的物に瑕疵があることによって,その物の客観的価値(交換価値)が減少したことによる損害,すなわち完全な物の価値と瑕疵ある物の価値との差額であるところ,本件の場合,当初設計図書の要求より価値の高い工事がなされている部分も多くあり,価値が増加した部分を全く無視して損害額を算定することには,当事者間に不公平が生ずる。 e 本件は全国的にも注目される事件となっていることなどから,問題の全面的かつ早期の解決を最優先課題とすべきであるとの認識で当事者が一致した。 (被告A及び被告JV3社の主張)a村からの和解案に対する被告A及び被告JV3社の反論等は以下のとおりであり,交渉の経緯にかんがみると,本件和解契約が無効であるなどということはできない。 ア a村からの和解案に対する被告A及び被告JV3社の考え被告A及び被告JV3社は,a村が国に返還した電源立地促進対策交付金3億4049万1720円は,交付金申請の趣旨に反する工事相当と評価され算出された金額であり,bに係る請負契約上の瑕疵を原因とする損害賠償額の問題と性格を異にするから,上記金額相当額を被告A及び被告JV3社において補填することは拒絶し の趣旨に反する工事相当と評価され算出された金額であり,bに係る請負契約上の瑕疵を原因とする損害賠償額の問題と性格を異にするから,上記金額相当額を被告A及び被告JV3社において補填することは拒絶した。 イ被告JV3社の固有の主張と異議の内容(ア) 被告JV3社は,仮に瑕疵の修補ないし修補に代わる損害賠償責任があるとしても,a村が会計検査院から決定された金額については,設計変更の処理の手続面の不備を原因とするもので,一方,会計検査院の査定では,完成した建物全体としては,当初より価値の高いものができているとの判断がされており,a村が国に返還した電源立地促進対策交付金3億4049万1720円を填補することには相当の抵抗感を抱いていた。 (イ) b建設において設計変更が多くなった理由は,設計事務所の特記仕様書等へ記入されている情報が不足していたり,使用材料の品質等の指示が明確でなかったり,図面間の不整合等設計図書の完成度が低いため,施工に際し,仕様やディテールの見直しが必要であったことによる。設計変更は,通常の場合でも相当数生じるはずのものであるが,本件で問題が大きくなったのは,変更が多くあったにもかかわらず,正規に設計変更手続を行わなかったためであり,a村,被告A,被告JV3社のそれぞれに変更手続を厳格に行うという認識が不足していたことによるものである。 このことは,一次的には施工監理を委託された被告Aの責任であり,被告JV3社は,主な責任は同被告にあると主張していたが,業務を委託した村や連絡調整が不足していた点では被告JV3社にも応分の責任があるなど,三者三様に責任があると考え,被告JV3社は,その旨の主張をした。 ウ被告Aの固有の主張と異議の内容(ア) 被告Aは,①a村の指示,承認なしに は被告JV3社にも応分の責任があるなど,三者三様に責任があると考え,被告JV3社は,その旨の主張をした。 ウ被告Aの固有の主張と異議の内容(ア) 被告Aは,①a村の指示,承認なしに設計変更をしたことはないし,村が被告Aに対して責任を追及することは本末転倒で,村自らの技術・理解能力不足がそもそもの原因である,②a村は,設計変更によって当初見積より施工価格が増加するのは議会の承認手続等を要するので困るなどと言って変更手続をしなかったのであるから,責任はa村にある,③a村は設計変更によって差引増価した建造物の便益を受益しているのであって,a村に損害はなく,かえって不当利得(3336万1872円相当)が生じていると主張し,a村からの請求を拒んだ。 (イ) また,被告JV3社の主な責任が施工監理を委託された被告Aの責任であるとの主張に対し,強く異議を唱えていた。 エ本件和解契約を締結した事情被告A及び被告JV3社としては,本件和解契約締結時,平成12年5月に問題が発生してから約1年8か月が経過し,各々の営業活動に影響を与えたり,三者三様にて本来負担すべき責任割合に関する合意に達するには長期間の協議が予想され,また,その責任を金額で表すとしても,設計事務所はその監理報酬を全額否認されたとはいえ,その責任割合を金額で評価することは非常に困難であり,かつ,その責任割合の主張を譲歩しないとa村との間の和解が事実上不可能な状態であった。その上,a村があくまでも国に支払った返還金相当額等を解決金として支払うことを強く被告A及び被告JV3社に要請してきたことから,被告A及び被告JV3社は,a村との問題の早期解決を図ることを優先すべきであるとの判断をせざるを得なかった。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(甲事件及び乙 及び被告JV3社に要請してきたことから,被告A及び被告JV3社は,a村との問題の早期解決を図ることを優先すべきであるとの判断をせざるを得なかった。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(甲事件及び乙事件に係る訴えが適法な監査請求を前置しているか否か)について(1) 地方自治法242条1項は,普通地方公共団体の住民が当該普通地方公共団体の違法,不当な財務会計上の行為又は怠る事実につき監査請求をすることができるものと規定しているところ,同条2項本文(以下「本件規定」という。)は,上記の監査請求の対象事項のうち行為については,これがあった日又は終わった日から1年を経過したときは監査請求をすることができないものと規定している。これは,財務会計上の行為は,たとえそれが財務会計法規に違反して違法であるか,又は財務会計法規に照らして不当なものであるとしても,いつまでも監査請求ないし住民訴訟の対象となり得るとしておくことは,法的安定性を損ない好ましくないことから,監査請求をすることができる期間を限定するものである。これに対し,上記の対象事項のうち怠る事実についてはこのような期間制限は規定されておらず,住民は怠る事実が現に存する限りいつでも監査請求をすることができるものと解される。これは,本件規定が,継続的行為について,それが存続する限りは監査請求期間を制限しないこととしているのと同様に,怠る事実が存在する限りはこれを制限しないこととするものと解される。 しかしながら,いかなる場合にも上記の原則を貫かなければならないと解すべきものではなく,本件規定の法意に照らして,その例外を認めるべき場合もあると考えられる。すなわち,監査請求が実質的には財務会計上の行為を違法,不当と主張してその是正等を求める趣旨のものにほかならないと解されるにもかかわらず 法意に照らして,その例外を認めるべき場合もあると考えられる。すなわち,監査請求が実質的には財務会計上の行為を違法,不当と主張してその是正等を求める趣旨のものにほかならないと解されるにもかかわらず,請求人において怠る事実を対象として監査請求をする形式を採りさえすれば,上記の期間制限が及ばないことになるとすると,本件規定の趣旨を没却することになるものといわざるを得ない。そして,監査請求の対象として何を取り上げるかは,基本的には請求をする住民の選択に係るものであるが,具体的な監査請求の対象は,当該監査請求において請求人が何を対象として取り上げたのかを,請求書の記載内容,添付書面等に照らして客観的,実質的に判断すべきものである。 このような観点からすると,怠る事実を対象としてされた監査請求であっても,特定の財務会計上の行為が財務会計法規に違反して違法であるか又はこれが違法であって無効であるからこそ発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実をその対象とするものである場合には,当該行為が違法とされて初めて当該請求権が発生するのであるから,監査委員は当該行為が違法であるか否かを判断しなければ当該怠る事実の監査を遂げることができないという関係にあり,これを客観的,実質的にみれば,当該行為を対象とする監査を求める趣旨を含むものとみざるを得ず,当該行為のあった日又は終わった日を基準として本件規定を適用すべきものである(最高裁昭和62年2月20日第二小法廷判決・民集41巻1号122頁参照)。これに対し,怠る事実については監査請求期間の制限がないのが原則であり,上記のようにその制限が及ぶというべき場合はその例外に当たることにかんがみれば,監査委員が怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとして り,上記のようにその制限が及ぶというべき場合はその例外に当たることにかんがみれば,監査委員が怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には,上記第二小法廷判決の場合と異なり,当該怠る事実を対象としてされた監査請求は,本件規定の趣旨を没却するものとはいえず,これに本件規定を適用すべきものではない(最高裁平成14年7月2日第三小法廷判決・民集56巻6号1049頁参照)。 (2) これを本件についてみると,証拠(甲4,11)によれば,本件甲監査請求は,b内に建設された茶室の建設工事契約には,施工業者である被告JV3社の債務不履行があり,a村は被告JV3社に対する損害賠償請求権を有すると主張して,被告JV3社に対する損害賠償請求を行うことを求めるものであること,本件乙監査請求は,bの建設工事に係る設計,施工及び施工監理契約(本件甲監査請求の対象とされた茶室を除く。)には債務不履行があり,a村は被告A及び被告JV3社に対する損害賠償請求権を有すると主張して,被告A及び被告JV3社に対する損害賠償請求を行うことを求めるものであることが認められる。 このとおり,本件甲監査請求及び本件乙監査請求の対象事項は,a村が被告Aないし被告JV3社に対する損害賠償請求権の行使を怠る事実とされているところ,当該損害賠償請求権は,被告Aの本件施工監理契約ないし被告JV3社の本件建設請負契約の債務不履行により発生したというのである。そうすると,本件甲監査請求及び本件乙監査請求に理由があるか否かを検討するためには,監査委員は,a村が被告A及び被告JV3社と本件施工監理契約及び本件建設請負契約を締結したこ 生したというのである。そうすると,本件甲監査請求及び本件乙監査請求に理由があるか否かを検討するためには,監査委員は,a村が被告A及び被告JV3社と本件施工監理契約及び本件建設請負契約を締結したことやその契約内容,被告A及び被告JV3社に債務不履行があるか否かといった事項を検討せざるを得ないものの,a村の上記契約締結や支出行為が財務会計法規に違反する違法なものであったとされて初めてa村の被告A及び被告JV3社に対する損害賠償請求権が発生するものではなく,被告A及び被告JV3社に債務不履行があるか否かを確定しさえすれば足りるのであるから,本件甲監査請求及び本件乙監査請求は,a村の契約締結等が財務会計法規に違反して違法か否かを判断しなければならないものではない。 したがって,本件規定は監査請求期間を制限している趣旨に反するものではなく,本件甲監査請求及び本件乙監査請求には,本件規定の適用がないものと解すべきである。 (3) 以上のとおり,本件甲監査請求及び本件乙監査請求には,監査請求期間に関する本件規定の適用はなく,本件甲監査請求及び本件乙監査請求は適法な監査請求というべきである。 したがって,甲事件及び乙事件に係る訴えが適法な監査請求を前置しているということができる。 2 争点2(本件和解契約の有効性)について(1) 本件では,前記第2の1(6)及び(7)のとおり,a村と被告A及び被告JV3社との間で本件和解契約が締結され,本件和解契約に従った履行がなされているところ,本件和解契約が私法上の効力を有するのであれば,これによりa村の被告A及び被告JV3社に対する損害賠償請求権が消滅することとなる。そこで,原告らの各請求が認められるためには,本件和解契約が私法上無効であるとされなければならない。 以下,本件和 りa村の被告A及び被告JV3社に対する損害賠償請求権が消滅することとなる。そこで,原告らの各請求が認められるためには,本件和解契約が私法上無効であるとされなければならない。 以下,本件和解契約が私法上無効とされるか否かについて検討する。 (2) 証拠《証拠略》及び弁論の全趣旨によると,本件和解契約締結に至る経緯及びa村と被告A及び被告JV3社との間の交渉経過については,以下の事実が認められる。 ア bが当初設計と異なる仕様で完成されているという問題は,平成12年5月上旬ころからマスコミ等に取り上げられ(特に,b茶道館の畳が当初設計で想定されていた畳と比べ,品質が相当劣っていたことが大きく報道された。),同月11日及び同年6月1日には住民監査請求がされた(なお,6月1日にされた住民監査請求は本件甲監査請求である。)。そこで,a村は事実関係を確認する必要があると考えたが,a村には調査確認を行うことのできる専門的能力を有する者がいなかったため,同年7月7日,bの設計図と現況の相違の調査を財団法人Oに依頼し,同年9月7日に,財団法人Oからa村に「a村生涯学習センター「b」に係る設計出来高調査業務報告書」が提出された。同報告書において,当初設計書と実際に完成したものとの相違点(設計変更されている点)などが明らかにされた。 その後,平成13年1月1日にa村の職員5名に新潟県の職員1名を加えた6名で構成される「b問題対策室」がa村に設置され,新潟県の技術職員6名程度の支援を受けながら出来高を精査する業務を行った。 もともと,bの建設工事に関しては,①被告Aとの設計業務委託契約による成果品として,同社から提出された設計図書(下記イ(ア)aの社団法人Pの報告書で「A0設計図書」とされているもの。以下「A0設計図書」と と,bの建設工事に関しては,①被告Aとの設計業務委託契約による成果品として,同社から提出された設計図書(下記イ(ア)aの社団法人Pの報告書で「A0設計図書」とされているもの。以下「A0設計図書」という。),②A0設計図書をもとにa村において部内調整が行われ,修正が行われた設計図書(同報告書で「A1設計図書」とされているもの。以下「A1設計図書」という。),③平成11年3月に工事が完成し,a村が工事完成を確認するために検査を行い,引渡しを受けた際に提出された竣工図書(同報告書で「C竣工図」とされているもの。以下「C設計図書」という。)が作成された。しかし,A0設計図書は現存しておらず,A1設計図書は,その設計図と設計(内訳)書とが整合していないことが判明し,C設計図書は,現況と相違していることが判明した。そこで,b問題対策室では,設計当初から現況までを比較することができる設計図書として,①A1設計図書をもとに,精査・問題点の修正を行い,発注時点の設計図書として整合性をとった設計図書(当初設計図書に該当し,下記イ(ア)aの社団法人Pの報告書で「A設計図書」とされているもの。以下「A設計図書」という。),②工事の途中における現場打ち合わせ簿,指示書,施工承認図等によりA設計図書ないしA1設計図書に書き込みながら作成される変更設計図書(同報告書で「B設計図書」とされているもの。以下「B設計図書」という。),③現況を正確に再現した現況図(同報告書で 「C”設計図書」とされているもの。 以下「C”設計図書」という。)を作成するなどし,調査を行った。そして,調査内容をその都度国に対して口頭や書類提出の形で報告した。これらが後述の経済産業省や会計検査院の調査報告の基礎的な資料となった。 なお,a村は,経済産業省からの求めに応じて,a村の了解す 調査内容をその都度国に対して口頭や書類提出の形で報告した。これらが後述の経済産業省や会計検査院の調査報告の基礎的な資料となった。 なお,a村は,経済産業省からの求めに応じて,a村の了解する設計図書と現況の相違点及び金額上の差異を設計変更調査表(以下「本件設計変更調査表」という。)として報告した。本件設計変更調査表は,A設計図書,B設計図書及びC”設計図書に基づき,設計変更箇所についての変更金額を積算したものであり,変更箇所毎に,使用されることとなっていた,あるいは,使用されたものについて,それぞれ県単価,市販されている物価版や見積により積算を行って算定したものである。そして,a村の調査によると,茶道館については,現況の価値は当初設計に比べて692万2778円減少しているものの,本館では1407万9041円,陶芸館では265万4112円,外構では796万8353円それぞれ増加し,b全体では1777万8729円増加しているとされている(なお,いずれの金額も,諸経費分23.32パーセントを加え,請負比率及び消費税額を考慮した金額である。)イ bに関する問題については,経済産業省と会計検査院がそれぞれ調査を行い,報告書が発表された。 (ア) 経済産業省は,a村からの調査報告を得て,さらに,平成13年6月に社団法人Pに対して,建設工事に関する専門的立場から,電源立地促進対策交付金の交付決定内容と現状の比較について,工事変更内容及び金額面の評価に関し調査を委託した。社団法人Pは,本件設計変更調査表等について技術的観点からその内容の調査・検討を行い,同年9月に「平成13年度電源立地推進調整(電源地域振興指導事業)に関する委託業務報告書」を提出した。経済産業省は,これらを踏まえ,同年9月に「新潟県a村生涯学習センター「b」 の調査・検討を行い,同年9月に「平成13年度電源立地推進調整(電源地域振興指導事業)に関する委託業務報告書」を提出した。経済産業省は,これらを踏まえ,同年9月に「新潟県a村生涯学習センター「b」に関する問題について(調査報告書)」と題する報告書にまとめた。 a 社団法人Pの上記報告書によると,同協会の調査内容は,①電源立地促進対策交付金執行における適切性を確認すること,②本件設計変更調査表の変更理由の妥当性を検証すること,③積算内容の妥当性を検証すること,④現場の確認を行い検証することであった。 社団法人Pは,本件設計変更調査表の変更項目248項目に関し,それぞれの変更内容が適切であるかどうかについて,(a)発注者が承認又は了解しており,変更内容が妥当又は適切と考えられるもの(なお,設計図書の訂正ですむような,軽微な変更・相違もこれに含む。),(b)発注者が承認,了解又は了承したもので,(a)又は(c)に該当しないもの(たとえば,工事費を増額してまで機能の向上を図る必要のないと考えられるもの。)又は発注者の承諾,了解及び了承はないが,機能上必要と考えられるもの,(c)変更の妥当性がないと判断されるもの又は設計図書どおり施工すべきものの3つに分けた。その結果,(a)に該当するものが122か所,(b)に該当するものが114か所,(c)に該当するものが12か所とされた。 b これをうけて,経済産業省の報告書は,茶道館について,現状の茶道館が交付決定の前提となる事業内容の要求水準を満たしているとは考え難く,また,変更点・相違点もずさんな手続のみで処理されたものがほとんどであり,結論として,茶道館については,交付目的に沿って事業が適切に行われたと判断することはできないとしている。また,茶道館以外の工事について 点・相違点もずさんな手続のみで処理されたものがほとんどであり,結論として,茶道館については,交付目的に沿って事業が適切に行われたと判断することはできないとしている。また,茶道館以外の工事について,上記aの社団法人Pの(a),(b),(c)の区分に従い,同(a)については,変更に伴う費用の増減ともに認め,同(b)については,変更に伴い増額されたものについては認めず,減額されたものについては事業費を減額すべきものし,同(c)については,当初の工事目的が実現されていないものとして工事費相当額について減額すべきものと判断し,その結果,直接工事費で1億2000万円程度について問題があるとしている。 (イ) 会計検査院は,b建設事業が電源立地促進対策交付金の交付目的に添って適切に実施されているか否かについて,検査を行い,その検査結果について,平成12年度決算検査報告において報告した。 会計検査院の上記報告において,以下のとおり,b建設工事及び施工監理業務の実施が不適切であると指摘された。なお,a村が国に返還した交付金は,会計検査院が不適切と指摘した金額に加算金を加えたものとほぼ同額である。 a b建設工事についてb建設工事について,会計検査院は,下記(a)及び(b)のとおり指摘し,b茶道館等事業費2億0489万8665円(交付金相当額1億9454万4985円)について,事業の施行が不適切と認めた。 (a) b茶道館について茶道館に係る交付申請時の設計図書には,木造建築に不可欠な軸組図や詳細図がないなど必要な情報が網羅されていなかったり,設計図面間に不整合があったりしているため内容が読みとれないなどの問題点が多数あった。さらに,設計図面又は仕様書と工事費の概算とが異なっていて や詳細図がないなど必要な情報が網羅されていなかったり,設計図面間に不整合があったりしているため内容が読みとれないなどの問題点が多数あった。さらに,設計図面又は仕様書と工事費の概算とが異なっていて,整合性が取れていないものも多数あった。 たとえば,畳については,設計書では,畳1畳当たり1万2800円と高級品に相当する経費が計上されているのに,特記仕様書においては普及品であるJIS規格品が示されていた。また,建物の構造材である柱についても,設計書では,1平方メートル当たり68万6000円と相当高品質の材料に相当する経費が計上されているのに,設計図面では杉の無垢材と指定していて一般住宅で使用される程度の仕様となっていた。 そして,実際の出来形においては,これらの畳及び柱を含めて,特記仕様書,設計図面及び設計図と合わない品質又は質感の劣る材料によって施工されているほか,設計図書上の意図が明確なものについても質感に劣る安価な材料に変更されているものなどが計46項目あった。 したがって,茶道館(これに係る直接工事費6380万2698円)は,事業の実施が不適切であり交付金の交付目的に添った施設とはなっていないと認められた。 (b) b本館及び陶芸工房についてb本館及び陶芸工房については,窓のペアガラスの厚さを8ミリメートルから6ミリメートルに変更したものや,フローリングの材質をナラからカバザクラに変更したものなど,106項目の出来形が竣工図と相違していた。 そして,このうち102項目(これらに係る直接工事費8402万5219円)については,設計変更することにより機能が向上するなど,その内容及び理由は妥当であるが,工事費を精査の上,変更契約により減額すべきもので うち102項目(これらに係る直接工事費8402万5219円)については,設計変更することにより機能が向上するなど,その内容及び理由は妥当であるが,工事費を精査の上,変更契約により減額すべきものであったと認められた。 また,4項目(これらに係る直接工事費1342万3590円)については,機能・品質が低下するなど設計を変更する妥当性がないものと認められた。 したがって,b本館及び陶芸工房については,一部の施工が竣工図等と相違した安価なものや低品質なものとなっているなどしており,その施工が不適切と認められる。 b 施工監理業務委託について施工監理業務の受託者は,対象工事の適正な履行を確保するため,発注者の指示により施工監理を行う必要があり,また,建築工事の施工過程において各種の設計変更を行う必要が生じた場合には,発注者との間において相互の意思を書面により確認しながら施工監理を行う方法をとるべきである。 しかし,本件契約の特記仕様書においては,a村と施工監理業者との間の具体的な指示方法,報告の手段や報告事項の処理について,明確に取り決められていなかった。このため,実際の施工監理においても,施工監理業者が相当の部分についてa村に無断で設計を変更した上その内容を報告していなかったり,a村がその内容を承知していたもののその後の指示又は設計変更等の処理を怠っていたりしていたものが多数見受けられる状況となっている。 したがって,前記aのとおり,b本館等の建築工事において,竣工図等と出来形との間に多数の相違箇所が生じているなどしており,本件施工監理契約の額7801万5000円(交付金6600万円)は,その目的を達していないと認められる。 ウ a村は,経済産業省及び会 と出来形との間に多数の相違箇所が生じているなどしており,本件施工監理契約の額7801万5000円(交付金6600万円)は,その目的を達していないと認められる。 ウ a村は,経済産業省及び会計検査院の調査報告は,電源立地促進対策交付金制度の観点から行われたものの,①専門家が時間をかけて網羅的・組織的・丁寧に調査したこと,②その調査機関が中立公正な国家機関及びこれに準ずるものであること,③内容上,不合理な点はないこと,④a村も調査に加わり,調査過程の合理性を理解していること,⑤調査はオープンであり,国会も関与・監視しており,当然に国会における質疑に耐えられる精度の内容であったはずであることなどから,十分信頼に値すると考えた。 a村は,bの全ての建物等に関して設計図と現況との相違点及び瑕疵との評価が確定した時点で被告A及び被告JV3社に対して損害賠償請求をするとの方針であり,損害賠償請求の前提となる事実関係については,上記の理由から,経済産業省や会計検査院の調査に基本的に準拠することとし,ただし,経済産業省及び会計検査院の調査は,電源立地促進対策交付金の観点からの報告であり,請負契約上の瑕疵担保責任とは異なる視点から報告がされていることに留意することとしていた。被告Lは,平成12年11月19日にa村村長選挙で当選し,同年12月15日にa村長に就任したが,話し合いによる解決が可能ならばその方法をとるとの方針を示していた。 a村は,上記の方針に従い,経済産業省から,a村に交付金を返還させるとの方針が出された平成13年12月ころ,最終的に,①a村が国に返還する交付金相当額(3億4049万1720円)の支払い,②茶道館の瑕疵部分全ての修補とこれに代わる損害賠償金の支払い及び③本件間接費用に相当する金額の全額の支払いを被告 ,最終的に,①a村が国に返還する交付金相当額(3億4049万1720円)の支払い,②茶道館の瑕疵部分全ての修補とこれに代わる損害賠償金の支払い及び③本件間接費用に相当する金額の全額の支払いを被告A及び被告JV3社に求めることとし,その旨被告A及び被告JV3社に対して申し入れを行った。 a村が,最終的に上記の請求を行うこととした理由は,①経済産業省の調査結果等国の一連の調査結果では,電源立地促進対策交付金制度の観点から,茶道館については問題があるとしている一方,本館,陶芸工房,外構工事については,建物全体として問題はないと評価していること,②交付金の返還額は,国の公平な判断のもとで決定されたものであり,契約内容と異なった工事を適正な処理をせずに施工したことにより発生したものとして,その相当額を求めるのが妥当であり,返還額が3億4000万円余りと多額であり,a村の財政的観点から村民に負担を強いることは絶対に避ける必要があると考えられたこと,③設計図書と現況の相違が直ちに請負契約上の「瑕疵」と同義であるとはいえず,どこまで被告A及び被告JV3社に対して損害賠償請求ができるのかが不透明と考えられたこと,④現況建物のうち,茶道館については,茶道館単体として契約積算金額を下回っていたことや,形状に不都合はなく使用目的を満たしているものの,契約時の設計における材料と出来形における材料に相違があることからその差額相当額の請求が相当と考えられること,⑤現況建物のうち,本館,陶芸工房については,いずれも契約積算金額を上回り,使用目的を満たしているので,これに関するものは請求しないこと,⑥間接費用に関しては,設計どおりに工事をすれば発生しなかった損害であるから,これを請求すべきこと,⑦被告A及び被告JV3社が主張するように,a村においても設計 ,これに関するものは請求しないこと,⑥間接費用に関しては,設計どおりに工事をすれば発生しなかった損害であるから,これを請求すべきこと,⑦被告A及び被告JV3社が主張するように,a村においても設計変更手続等において不適切な取扱いがあったことなどである。 エ a村の上記提案に対し,被告A及び被告JV3社は,そもそも,a村が国に返還すべき上記金額は,国がa村に交付した電源立地促進対策交付金のうち,交付金申請の趣旨に反する工事に相当する額として算出されたものであり,請負契約の瑕疵を原因とする損害賠償額の問題と性格を異にすると主張し,上記返還金相当額を被告A及び被告JV3社がa村に支払うことを拒絶した。 オまた,被告JV3社は,以下のとおりの主張をした。 (ア) 仮に,b建設に係る請負工事の瑕疵担保責任として,瑕疵の修補ないし修補に代わる損害賠償としてしかるべき相当の責任があるとしても,上記の返還金額は,設計変更の処理という手続面の不備を原因とするものであり,また,会計検査院の査定では,完成した建物全体としては,当初の設計よりも価値の高いものができているとの判断が出されていることから,上記の返還金額相当額を被告JV3社がa村に支払うことには強い抵抗感を抱いている。 したがって,被告JV3社に相当な責任があるとしても,損害額にして多くても数千万円程度であり,a村が主張するような損害額に達するものとは到底考えられない。 (イ) 建築工事であれ,土木工事であれ,実際の施工の際には設計図より詳細な施工図を書いて施工するが,その「納まり」や使用する側の「使い勝手」,「条件の変更」等の理由から,通常,設計変更は相当数生ずるものである。 bの建設工事に関して設計変更が多くなった理由の最大の原因は,経済産業省及び会計検査院 その「納まり」や使用する側の「使い勝手」,「条件の変更」等の理由から,通常,設計変更は相当数生ずるものである。 bの建設工事に関して設計変更が多くなった理由の最大の原因は,経済産業省及び会計検査院の報告書でも指摘されているとおり,「設計事務所の特記仕様書等へ記入されている情報が不足していたり,使用材料の品質等の指示が明確でなかったり,図面間の不整合等設計図書の完成度が低いため,施工に際し,仕様やディテールの見直しが必要であった。」ことによると考えられる。 (ウ) 本件で問題が大きくなったのは,上記のとおり変更が多くあったにもかかわらず,正規に設計変更手続を行わなかったためであり,a村,被告A及び被告JV3社のそれぞれに設計変更手続を厳格に行うという認識が不足していたことによると考えられる。 a村には建築工事の専門家が不在であったことから,設計事務所である被告Aへ施工監理を委託していたため,被告Aが設計変更を指示することによりa村も了知したことになるはずであったが,a村と被告Aとの間で権限や変更手続が明確にされておらず,a村も「全てを被告Aに委託したわけではない」と主張したため,結局被告Aの行った変更の約3分の1が村に正式に伝わっていなかったとの結果になったものである。被告JV3社も施工監理者である被告Aの指示に従って施工したとはいえ,a村との間で連絡調整を十分行うべきであったことも否定できない。しかし,被告Aからa村に設計変更の一部が報告されなかったり,a村が正規の手続を行わなかったことで問題が大きくなったといわざるを得ない。 カ他方,被告Aは,以下のとおりの主張をした。また,被告JV3社が主な責任は施工監理を委託された被告Aにあると主張したことに対し,強く異議を唱えた。 (ア) 被告Aは,a村の指示 い。 カ他方,被告Aは,以下のとおりの主張をした。また,被告JV3社が主な責任は施工監理を委託された被告Aにあると主張したことに対し,強く異議を唱えた。 (ア) 被告Aは,a村の指示・承認なくして設計変更をしたことはないし,a村が被告Aに対して責任を追及することは本末転倒であり,a村自らの技術・理解能力不足がそもそもの原因である。 (イ) a村は,「設計変更によって当初見積より施工価格が増加するのは議会の承認手続等がいるので困る」等と言って変更手続をしなかったのであり,交付金の返還は設計変更の処理という手続面の不備を原因とするのであるから,a村に原因がある。 (ウ) a村は設計変更によって差引増価した建造物の便益を受益しているのであって,a村には損害はなく,かえって不当利得が生じている。 キ上記のa村の提案並びに被告A及び被告JV3社の主張について,平成13年12月ころから平成14年3月下旬ころにかけて,a村の担当者と被告A及び被告JV3社の担当者の間で協議を行い,それと並行して,平成14年1月以降,a村の代理人弁護士と被告A及び被告JV3社の代理人弁護士との間で十数回にわたり,意見交換や協議を行った。 その結果,a村,被告A及び被告JV3社は,本件和解契約の第1条に記載されているとおり,三者がそれぞれ責任を有することを認め,平成14年3月29日,本件和解契約を締結した。 なお,本件和解契約の締結については,同月28日,a村議会で地方自治法96条1項12号所定の議決が行われた。 (3) 以上の事実を前提に本件和解契約の私法上の効力の有無を検討する。 アまず,原告らは,被告A及び被告JV3社は,自らに責任があることは争っておらず,a村にも責任があったとして責任の限定,債務の減 以上の事実を前提に本件和解契約の私法上の効力の有無を検討する。 アまず,原告らは,被告A及び被告JV3社は,自らに責任があることは争っておらず,a村にも責任があったとして責任の限定,債務の減額を求めていたのに対し,本件和解契約は被告A及び被告JV3社の責任を限定し,債務の減額を認めたものにすぎず,和解の要件である互譲が存在しないから,そもそも民法695条及び地方自治法96条1項12号の「和解」には該当せず,権利の一部放棄,債務の一部免除にすぎないと主張するので,この点について判断する。 前記(3)ウのとおり,a村は和解交渉の当初,①a村が国に返還する交付金相当額(3億4049万1720円)の支払い,②茶道館の瑕疵部分全ての修補とこれに代わる損害賠償金の支払い及び③本件間接費用に相当する金額の全額の支払いを被告A及び被告JV3社に求めることとし,その旨被告A及び被告JV3社に対して申し入れを行ったが,被告A及び被告JV3社は,前記(2)エないしカのとおりの主張をし,a村が国に返還すべき金額は,電源立地促進対策交付金の趣旨に反する工事に相当する額として算出されたものであり,請負契約の瑕疵担保責任と性格を異にし,瑕疵担保責任としての瑕疵の修補に代わる損害賠償としてはそのような高額にならない(被告JV3社においては,せいぜい数千万円である旨主張していた。)などと主張して,損害賠償金額について争っていた。これに対し,本件和解契約では,a村が国に返還した金額全額を被告A及び被告JV3社がa村に解決金として支払うとされているのであるから,この点について,被告A及び被告JV3社が譲歩していることは明らかである。 そうすると,和解の要件である互譲が存在しないから本件和解契約は民法695条及び地方自治法96条1項12号の「和解」 の点について,被告A及び被告JV3社が譲歩していることは明らかである。 そうすると,和解の要件である互譲が存在しないから本件和解契約は民法695条及び地方自治法96条1項12号の「和解」には該当せず,権利の一部放棄,債務の一部免除にすぎないとの原告らの主張を採用することはできない。 イ次に,原告らは,本件和解契約が法的にも和解と評価できるとしても,本件和解契約は,①被告A及び被告JV3社が連帯してa村に対し3億4049万1720円(電源立地促進対策交付金のa村の国に対する返還金相当額及びb茶道館の瑕疵修補に代える清算金の合計額)を支払う旨の部分と,②その余の部分(本件和解契約に係る合意書の第3条及び第4条部分)に分けられることを前提とした上で,上記①部分は有効であるが,上記②部分は無効であると主張し,本件和解契約の一部が無効になると主張する。 しかし,本件和解契約は,b建設に係るa村と被告A及び被告JV3社との間の紛争を包括的に解決するものであり,前記の交渉経緯に照らしても,被告A及び被告JV3社が電源立地促進対策交付金の返還額の全額をa村に支払うという譲歩をする一方,a村は当初請求していた本件間接費用の支払いを求めないという譲歩をするなど上記①部分及び②部分は不可分一体のものであり,上記②の部分のみが無効となり,上記①部分は有効であるなどということができないことは明らかである。 したがって,本件和解契約は全体として一つの和解契約と理解すべきであり,以下,このような理解に立って本件和解契約が私法上無効となるかどうかについて検討する。 ウ原告らは,本件和解契約が地方財政の健全性を害するから本件和解契約は①公序良俗違反として無効となるかあるいは,②地方自治法2条14項等に違反して無効になると主張 どうかについて検討する。 ウ原告らは,本件和解契約が地方財政の健全性を害するから本件和解契約は①公序良俗違反として無効となるかあるいは,②地方自治法2条14項等に違反して無効になると主張する。 (ア) 原告らは,地方公共団体は,最小の経費で最大の効果を上げるようにしなければならないとする地方自治法2条14項,地方公共団体はその財務の健全性に努めなければならないとする地方財政法2条1項,地方公共団体の経費は,その目的を達成するための必要かつ最少の限度を超えて,これを支出してはならないとする同法4条1項,地方公共団体の財産は,常に良好の状態においてこれを管理し,その所有の目的に応じてもっとも効率的に,これを運用しなければならないと定める同法8条等に違反することを理由に,本件和解契約が無効であると主張している。しかしながら,これらの規定は,地方公共団体の財務を規律するものであるが,地方公共団体と第三者との間の契約関係を直接規律するものではなく,また,いずれも抽象的な規定にすぎないから,これらの規定の違反の有無が直接地方公共団体と第三者との間の契約関係を無効とする効力を有すると解することは地方公共団体と取引を行う者の取引の安全を害することとなり,ひいては,地方公共団体が行う私法上の取引に重大な支障を与える結果となりかねない。 したがって,かかる規定は,地方公共団体の財務会計職員の行為規範となるにすぎず,地方公共団体と第三者との間の契約の効力を直接無効とするまでの効力はないというべきである。そして,このように解したとしても,上記各規定は,地方公共団体の財務会計職員に対する財務会計法規の一部を構成するという意味を有するため,これに違反した財務会計職員は,地方自治法243条の2の賠償責任等の制裁が課されるのであるから, 上記各規定は,地方公共団体の財務会計職員に対する財務会計法規の一部を構成するという意味を有するため,これに違反した財務会計職員は,地方自治法243条の2の賠償責任等の制裁が課されるのであるから,上記各規定が制定された趣旨を没却するものとはならない。 もっとも,地方公共団体の締結した契約が公序良俗に違反するといえる場合には,民法90条により当該契約は無効になり得るから,以下,このような観点から,本件和解契約が公序良俗に違反し,無効といえるかについて検討する。 (イ) 原告らは,本件和解契約は不合理であるから公序良俗に違反し無効となると主張するが,本件和解契約の合理性を検討するに当たっては,本件和解契約の前提となっているa村の被告A及び被告JV3社に対する損害賠償請求権の有無・性質を考える必要がある。 本件において,a村の有する請求権として考えられるものは,被告Aとの間の本件施工監理契約(委任契約と考えるのが一般的と思われる。)に基づく損害賠償請求権や被告JV3社との間の本件建設請負契約に基づく瑕疵担保責任としての修補に代える損害賠償請求権などであるが,仮に,上記各損害賠償請求権が明白に存在するにもかかわらず合理的な理由なくa村がその一部を放棄する内容の和解契約を締結したならば,そのような和解契約は地方公共団体の財政の健全性を著しく害するものであり,公序良俗に違反し,無効となると解することができる。 しかし,本件では,前記のとおり,被告A及び被告JV3社から反論がされている。そして,施工の段階で当初の設計から仕様が変更され,結果的に当初の設計と仕様の異なるものが完成しているということが問題とされているのであるから,本件施工監理契約との関係では,被告Aが仕様の変更についてa村に説明を行い,その了 計から仕様が変更され,結果的に当初の設計と仕様の異なるものが完成しているということが問題とされているのであるから,本件施工監理契約との関係では,被告Aが仕様の変更についてa村に説明を行い,その了解を得ているのであれば,本件施工監理契約に基づく義務の違反があったということはできないし,また,本件建設請負契約との関係では,注文主であるa村ないし施工監理者である被告Aからの指示に基づいて仕様を変更して建設したのであれば,本件建設請負契約に不完全履行ないし瑕疵担保の問題は生じないこととなり,a村の被告A及び被告JV3社に対する請求権は法的に認められないこととならざるを得ない。 そして,証拠《証拠略》によると,経済産業省から委託を受けた社団法人Pがまとめた報告書には,設計変更が行われた247か所(変更項目のうち,本館のアリーナ屋根を除く。)のうち,a村が承認(文書で承認したもの)・了解(口頭で了解したもの)したものが163か所であり,変更箇所のうちおよそ3分の2の部分はa村の承認・了解のもとに行われていたとの報告が行われていることが認められる。上記報告書は,経済産業省から委託を受けた中立的な立場にある社団法人Pによる調査の結果であり,このような調査結果があることは本件和解契約に大きな影響を与えるものであるということができるところ,上記が事実であれば,a村が承認・了解していた3分の2の変更部分については,本件施工監理契約に基づく義務違反であるとか本件建設請負契約に不完全履行や瑕疵担保の責任は生じないこととなる。そうすると,被告A及び被告JV3社の主張にも一定の理由があることになる。 また,①前記(2)イ(イ)のとおり,会計検査院は,実際の出来形と設計図面とに食い違いがあることを問題とし,それに従って交付金の返還額が決定さ V3社の主張にも一定の理由があることになる。 また,①前記(2)イ(イ)のとおり,会計検査院は,実際の出来形と設計図面とに食い違いがあることを問題とし,それに従って交付金の返還額が決定されているところ,a村が承認ないし了承したものについて変更手続がとられていれば,交付金の返還という問題は生じなかったと考えられるのであるから,a村が国に返還した交付金の全額について損害賠償請求が認められるとは限らないし,②前記(2)アのとおり,a村の調査によって,bについては,当初設計よりも価値の高いものが建設されているとされていること,前記のとおり,設計変更についてはa村が承認・了解していた箇所も多く存在することに照らすと瑕疵の修補に代える損害賠償請求がどの範囲で認められるかは不確定であるというべきである。さらに,③これら①,②の点をさらに調査し,a村の損害賠償請求権の範囲を明らかにするには相当の時間と費用を要し,しかも,調査費用の全額を被告A及び被告JV3社に対し請求できるとは限らないというべきである。 これらの事情のもとで,本件和解契約は,a村が国に返還した全額の支払いを被告A及び被告JV3社から受けるという譲歩を引き出しているのであるから,上記の交渉経緯,被告A及び被告JV3社の主張に一定の理由があることに照らして,本件和解契約が公序良俗に違反するといえないことは明らかである。 そうすると,本件和解契約が公序良俗に反し無効であるとは認められない。 (ウ) 以上のほか,原告らは,本件和解契約の不合理性を縷々主張し,本件和解契約が無効であると主張するが,以下のとおり,いずれも原告らの主張を採用することはできない。 a まず,原告らは,前記第2の3(2)(原告らの主張)イ(ウ)aの①,③,⑤ないし⑧の 件和解契約が無効であると主張するが,以下のとおり,いずれも原告らの主張を採用することはできない。 a まず,原告らは,前記第2の3(2)(原告らの主張)イ(ウ)aの①,③,⑤ないし⑧のとおり主張するが,これらは,いずれも本件和解契約締結に係るa村議会の議決手続の不当性を主張するものにすぎない。そして,証拠《証拠略》によると,本件和解契約については,平成14年3月28日のa村議会議員の全員協議会において説明の上,同日開催されたa村議会において,可決されたことが認められ,本件和解契約を締結するためのa村議会の議決は有効に行われているというべきであり,原告らが主張する事実が存在するとしても本件和解契約が公序良俗に違反して無効ということができないことは明らかである。 b 次に,原告らは,前記第2の3(2)(原告らの主張)イ(ウ)aの②,④において,a村の本件和解契約の交渉が秘密裏に行われたこと,村長である被告Lのみが交渉に臨んだことを理由に本件和解契約が無効であると主張するようであるが,そもそも,和解交渉は公開されるべき性質のものではないから,和解交渉の内容が逐一公開されなかったことをもって本件和解契約が無効であるということができないのは明らかである。また,前記(2)に認定したとおり,a村は,経済産業省や会計検査院の調査結果を踏まえて,法律の専門家である弁護士に依頼しながら和解協議を行ったのであるから,原告らの上記主張を採用することはできない。 c また,原告らは,前記第2の3(2)(原告らの主張)イ(ウ)bの③のとおり,和解の基礎となる損害の積算金額に明確な根拠がなく,全体として価値が増加したとの結論を導くために意図的な数字あわせをしていると主張し,具体的には,A1設計書を精査して作成されたA設計書における積 ,和解の基礎となる損害の積算金額に明確な根拠がなく,全体として価値が増加したとの結論を導くために意図的な数字あわせをしていると主張し,具体的には,A1設計書を精査して作成されたA設計書における積算が不合理であると主張する。 しかし,証拠《証拠略》及び弁論の全趣旨によると,A1設計書には,設計図と設計(内訳)書とが整合していないなどの問題があったため,a村は,精査・問題点の修正を行いA設計書を作成したこと,その金額については,図面に基づいて部位毎に数量を求め,新潟県土木部建築工事設計単価表中の「単価の決定方法について」を用いて,県単価,市販されている物価資料,見積の順位で,設計内訳書により積算を行い算定していること,原告らが指摘する変更箇所については,県単価及び市販されている物価資料により積算することが困難であったことから,見積により積算を行っていることが認められる。 原告らは,見積金額が過大であると主張するようであるが,県単価及び市販されている物価資料により積算することが困難な場合には,業者の見積により積算を行うのが相当というほかない。また,原告らが主張するように,a村に損害が発生していない旨の結論を導くため意図的に数字合わせの積算をしたことを認めるに足る証拠はない。 以上のとおり,積算手続は適正になされているのであるから,本件和解が公序良俗に反するとはいえない。 d さらに,原告らは,前記第2の3(2)(原告らの主張)イ(ウ)bの②のとおり,和解の基礎となる損害の積算方法は,個別に当初の予定価格と現在時価を評価し,両者の比較による価値上昇分と価値減少分とを個別に算出し,これを積み重ねるという手法を採用しており,結果的に,b工事全体では,完成した工作物の価値は増加しており,損害はな 定価格と現在時価を評価し,両者の比較による価値上昇分と価値減少分とを個別に算出し,これを積み重ねるという手法を採用しており,結果的に,b工事全体では,完成した工作物の価値は増加しており,損害はないことを前提として本件和解契約を締結しているが,そもそも一つの施設の建設工事について当初設計と設計変更部分とを比較して全体として価値が増加していれば損害がないとの考え方は不合理であると主張する。 本件和解契約においては,前記第2の1(6)のとおり,b茶道館については,瑕疵の修補及び修補しない部分について修補に代える清算金の支払いを行うものとされているが,その他の部分(本館,陶芸館,外構)については,瑕疵の修補は問題とされず,a村が国に対して返還した電源立地促進対策交付金額相当額の支払いを行うこととされている(なお,アリーナの雨漏りについては,別途補修することが合意されている。)。 ところで,bに関する問題は,前記(2)イの経済産業省の報告書及び会計検査院の検査報告においても指摘されているとおり,元々の設計図書に問題があったことなどから,設計変更が多数必要となり,実際にも多数の設計変更が行われているにもかかわらず,これに必要な手続が履践されていなかったため,正規の手続を経て作成(正規の手続による変更を含む。)された設計図書と実際の施工に齟齬が生じているということにあり,bが建築物として当然に備えているべき品質を欠き,建築物としての使用ができないというものではない(なお,アリーナの雨漏りについては,前記のとおり,別途補修することが合意されているので,ここでは除外する。)。しかも,前記のとおり,その設計変更の多数はa村もこれを承知しているものであり,前記(2)イ(ア)のとおり,社団法人Pの調査によっても変更する妥当性が とが合意されているので,ここでは除外する。)。しかも,前記のとおり,その設計変更の多数はa村もこれを承知しているものであり,前記(2)イ(ア)のとおり,社団法人Pの調査によっても変更する妥当性がないと判断されるもの又は設計図書どおりに施工すべきとされたもの(前記(2)イ(ア)aの(c))は248か所中12か所にすぎない。 そうすると,a村の被告A及び被告JV3社に対する損害賠償請求権の有無及びその範囲という観点から本件をみた場合(なお,本件和解契約を締結するに当たり,このような法的な請求権が存在するか否かが最も重要な考慮要素となることは多言を要しない。),設計図書と実際の施工を比較して相違するもののうち価値が減少している部分のみを取り出して損害賠償請求することは困難であるとのa村の判断(前記(2)ウ)にも一定の合理性があるというべきであり,a村が国に返還した電源立地促進対策交付金に相当する全額の填補を受けていることに照らすと,本件和解契約が不合理な手法,考え方に基づくものとはいえない。 したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。 e その他,原告らは,本件和解契約の内容が不合理であるとして,前記第2の3(2)(原告らの主張)イ(ウ)bの①及び④ないし⑬の主張をするが,本件和解契約に一定の合理性のあることはすでに説示したとおりであり,a村の犠牲のもとに被告A及び被告JV3社を利するものであるということはできないから,原告らの上記主張を理由に,本件和解契約が公序良俗に反し無効であるということはできず,原告らの主張はいずれも採用することができない。 オ以上のとおり,本件和解契約は有効であり,本件和解契約に従った義務の履行によりa村の被告A及び被告JV3社に対する請求権は消滅している。 ,原告らの主張はいずれも採用することができない。 オ以上のとおり,本件和解契約は有効であり,本件和解契約に従った義務の履行によりa村の被告A及び被告JV3社に対する請求権は消滅している。 したがって,原告らの甲事件,乙事件に係る被告A及び被告JV3社に対する請求には理由がなく,丙事件に係る請求にも理由がないというべきである。 (4) 甲事件及び乙事件に係る被告E及び被告Lに対する請求について以上のとおり,a村は,被告A及び被告JV3社との間で交渉の結果,本件和解契約を締結し,本件和解契約に基づく義務の履行を受けるなど,その損害賠償請求権を行使しているのであるから,被告E及び被告Lが,被告A及び被告JV3社に対する損害賠償請求権を違法に怠ったということはできない。 したがって,甲事件及び乙事件に係る被告E及び被告Lに対する請求に理由がないことは明らかである。 第4 結論以上のとおり,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 新潟地方裁判所第2民事部裁判長裁判官犬飼眞二裁判官外山勝浩裁判官加藤聡

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