平成29年8月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(ワ)第19912号損害賠償請求事件中間判決の口頭弁論終結日平成27年12月7日終局判決の口頭弁論終結日平成29年5月29日判決 原告第一電気株式会社 同訴訟代理人弁護士下村文彦 同佐藤慎 同松田一彦 同水倉友理 同訴訟復代理人弁護士斧原崇皓 被告株式会社三井造船昭島研究所 同訴訟代理人弁護士豊寿昌 同伊藤献 同訴訟復代理人弁護士野澤賢太郎 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,2億円及びこれに対する平成25年8月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(以下,特に断らない限り,当審の中間判決〔以下,単に「中間判決」といい,その判決書写しは別添のとおり〕において用いられた略語は,本判決においてもそのまま用いる。) 1 事案の要旨⑴ 本件は,中間判決別紙目録記 決〔以下,単に「中間判決」といい, その判決書写しは別添のとおり〕において用いられた略語は,本判決においてもそ のまま用いる。) 1 事案の要旨⑴ 本件は,中間判決別紙目録記載の各特許出願(本件出願1ないし4)の特許請求の範囲に記載された発明(本件発明1ないし4)について,平成14年11月26日に原被告間で共同出願契約(本件契約)が締結され,同目録記載の各出願日 にそれぞれ本件出願1ないし4(本件各出願)がされたところ,原告が,被告が本件契約上の義務に違反して,出願審査請求をしないまま審査請求期間を徒過し,原告の本件発明1ないし4(本件各発明)について特許を受ける権利を失わせた旨主張して,被告に対し,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求(本件各請求)として,2億円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成25年8月20 日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。原告は,本件各出願に係る損害について,いずれも2億円を上回るから,これらの各損害の賠償請求は選択的併合の関係にあって,本件各請求は一部請求であると主張している。 ⑵ 当審において,平成28年2月19日,本件各請求に関し,本件各請求中, 被告が本件出願1及び2について出願審査請求をしなかったことを内容とする債務不履行に基づく損害賠償請求の原因(数額の点は除く。)は理由がある(被告が本件出願3及び4について出願審査請求をしなかったことを内容とする債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償の原因は理由がない)旨の中間判決がされた。 ⑶ 本判決は,中間判決を前提として,被告が本件出願1及び2について出願審 査請求をしなかったことによる損害賠償額(損害額のほか,過失相殺及び損益相殺を含む。)に関す の中間判決がされた。 ⑶ 本判決は,中間判決を前提として,被告が本件出願1及び2について出願審 査請求をしなかったことによる損害賠償額(損害額のほか,過失相殺及び損益相殺を含む。)に関するもののみについて審理した結果,本件各請求の当否について,当裁判所の終局的な判断を示すものである。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実,当裁判所に顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,書証番号は,特記しな い限り枝番の記載を省略する。) 本件の前提事実は,中間判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の「2 前提事実」を引用するほか,以下のとおりである。 ⑴ 本件覚書の取り交わし原告と被告は,平成19年10月1日,次のアないしカの内容を含む「DDVC試験機の維持管理に関する覚書」と題する合意書(本件覚書)を取り交わした(甲 10)。 ア原告と被告は,DDVC試験機の維持管理について本件覚書を交わす(前文。なお,「DDVC」とは,「DirectDriveVolumeControl」の略で,高速二軸試験機の駆動・制御方式につき,「制御性を持ったポンプによるシリンダー内容積の直接制御」をする方式を指す〔甲6〕。)。 イ本件覚書の対象となるDDVC試験機は以下のとおりである(1項)。 ① ブリヂストン殿向け高速2軸試験機② ブリヂストン殿向け45KN型フェンダー試験機③ ブリヂストン殿向け80KN型フェンダー試験機④ シバタ工業殿向け50KN型フェンダー試験機 ウ原告,被告ともにDDVC試験機に関する技術資料を維持管理するとともに,技術水準の維持および技術の研鑽に努める(3項)。 エ DDVC試験機のトラブルあるいはバー フェンダー試験機 ウ原告,被告ともにDDVC試験機に関する技術資料を維持管理するとともに,技術水準の維持および技術の研鑽に努める(3項)。 エ DDVC試験機のトラブルあるいはバージョンアップに対して,原告は被告の要請に基づき,速やかに(1週間程度)対応策,見積書,技術資料などを提出し,原告,被告共に客先の信頼を損なわないよう,誠意ある対応をする(4項)。 オ被告は,原告におけるDDVC試験機/維持管理体制の整備費用として,原告に250万円を支払う。また,被告は,原告における維持管理体制の維持費用として,原告に次年度以降3年間にわたり,毎年50万円を支払う。ただし,支払方法については,別途協議する(5項。本件金員)。 カ本件覚書の有効期間は,本件覚書成立日から3年間とする。ただし,本件覚 書の有効期間が終了した後,再度協議し,必要に応じ新たに覚書を交わすこととす る(8項)。 ⑵ 本件金員の支払被告は,原告に対し,平成20年3月17日,本件覚書5項第1文に基づく金員として250万円を,同項第2文に基づく金員として50万円を,平成21年1月30日,同文に基づく金員として50万円を,平成22年1月25日,同文に基づ く金員として50万円をそれぞれ支払った(甲14)。 3 争点本件の争点は,中間判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の「3争点(損害賠償額に関する点を除く。)」を引用するほか,以下のとおりである。 ⑴ 損害賠償額 原告が本件各発明について特許を受ける権利を喪失したことにより発生した損害額はいくらか(争点4)。 ⑵ 過失相殺本件各出願について審査請求期間内に出願審査請求がされなかったことに関し,原告にも過失があるか(争点5)。 る権利を喪失したことにより発生した損害額はいくらか(争点4)。 ⑵ 過失相殺本件各出願について審査請求期間内に出願審査請求がされなかったことに関し,原告にも過失があるか(争点5)。 4 争点に対する当事者の主張⑴ 争点1ないし3について中間判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の「4 争点に対する当事者の主張」のとおりであるから,これを引用する。 ⑵ 争点4(損害賠償額)について 【原告の主張】原告は,本件各発明について特許を受ける権利を喪失したことにより,本件各出願に基づく特許権の取得により得べかりし利益相当額の損害を被った。本件各出願に基づく特許権が成立していれば,当該特許権の価値はいずれも2億円を上回るから,損害額は本件各出願それぞれについて少なくとも2億円を下らない。 すなわち,原告は,三菱重工業株式会社(以下「三菱重工」という。)から本件 各出願に基づく特許権を譲渡して欲しい旨の申入れを受け,同社に対して2億円程度で売却する旨の提案をしたところ,同社とはその方向での話が進んでいたが,本件各出願が取り下げたものとみなされたことが発覚したことから,その話がなくなったものである。また,原告の被った損害の額は,本件各出願に基づく特許権を活用することによって得ることができたはずの事業収益の見込額とされるべきであ るところ,本件各発明に基づく高速二軸試験機,その他本件各発明を実施可能な試験機(疲労試験,耐震試験,振動試験等の試験機)に対しては高い需要が存在していたから,本件各出願に基づく特許権を取得できていた場合,他社と共同して事業展開し,多大な収益に結び付く蓋然性が高かった。そうすると,本件各出願に基づく特許権の適正な価額は,いずれも2億円を下回ることはない ,本件各出願に基づく特許権を取得できていた場合,他社と共同して事業展開し,多大な収益に結び付く蓋然性が高かった。そうすると,本件各出願に基づく特許権の適正な価額は,いずれも2億円を下回ることはないから,本件各発明に ついて特許を受ける権利を喪失したことによる損害は,それぞれ2億円を下回ることはない。 【被告の主張】三菱重工が本件各出願に基づく特許権を2億円で買い受けるという話には客観的根拠がない。また,共同出願人であった被告は三菱重工と競業関係にあったから, 被告がその契約に承諾する可能性はなく,実現可能性がない話である。 本件各発明は,技術的に不完全・未完成であり,従来の技術に比して優位性はなかった上,本件各発明が用いられる高速二軸試験機の市場は限定されており,その後の発展も見込めない状況であったから,本件各出願に基づく特許権の価値は僅少であった。 ⑶ 争点5(過失相殺)について【被告の主張】原告は,A弁理士に出願審査請求を行うように連絡した後,その進捗状況についてA弁理士や被告に問合せをしておらず,本件各出願の状況についてさほど関心を有していなかったのであるから,本件各出願について審査請求期間内に出願審査請 求がされなかったことに関し,原告にも過失があり,少なくとも3割程度の過失相 殺が認められるべきである。 【原告の主張】本件契約においては,本件各出願に関する手続は被告が行うものとされており,原告に出願審査請求の進捗状況について問合せをすべき義務はないから,原告に過失は存しない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1ないし3について当裁判所の判断は,中間判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」のとおりであるから,これを引用する。 すなわち しない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1ないし3について当裁判所の判断は,中間判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」のとおりであるから,これを引用する。 すなわち,被告が本件出願1及び2について審査請求期間内に出願審査請求をし なかったことについて,原告は,被告に対し,平成17年10月31日(本件出願1の審査請求期間の末日)を経過した時点及び同年11月14日(本件出願2の審査請求期間の末日)を経過した時点でそれぞれ,債務不履行に基づく損害賠償請求権を取得し,かつ,その消滅時効は完成していないと判断される(なお,これらとそれぞれ選択的併合の関係にある不法行為に基づく損害賠償請求については,次の 2において検討する。)が,本件出願3及び4に係る債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。 2 争点4(損害賠償額)について⑴ 損害額の検討の手法上記1のとおり,被告が本件出願1及び2について審査請求期間内に出願審査請 求をしなかったことについて,原告は,被告に対し,平成17年10月31日又は同年11月14日を経過した時点で債務不履行に基づく損害賠償請求権を取得した。原告は,上記債務不履行により,本件発明1及び2について特許を受ける権利を失ったから,上記債務不履行に基づく損害の額は,上記各時点における上記各特許を受ける権利の適正な価額である。本件出願1及び2について,審査請求期間内 に出願審査請求がされていれば特許権の設定登録を受けられた高度の蓋然性があっ たことは上記1(引用に係る中間判決)において説示したとおりであるから,上記特許を受ける権利の適正な価額は,本件出願1及び2に基づく特許権が成立した場合における当該特許権の適正な評価額ということになる。 上記1(引用に係る中間判決)において説示したとおりであるから,上記特許を受ける権利の適正な価額は,本件出願1及び2に基づく特許権が成立した場合における当該特許権の適正な評価額ということになる。 そして,本件契約(甲2)において,原告及び被告は,本件各発明についての特許を受ける権利及び本件各発明に基づいて得られる特許権を共有とし,その持分を 原告・被告各2分の1とする(1条)とされているから,原告の損害額は,本件出願1及び2に基づく特許権の適正な価額の2分の1となる(なお,原告は,被告が本件発明1及び2についての特許を受ける権利の共有持分2分の1を放棄した旨主張するが,これを認めるに足りる証拠は存しない。また,本件出願1及び2に基づく特許権が成立した場合を想定する以上,被告が審査請求期間内に出願審査請求を したとの仮定のもとで検討すべきであって,被告が実際には出願審査請求をしなかったことをもって,特許を受ける権利が全て原告に帰属することになったとみなすことは,相当でない。)。 ここで,特許権の適正な価額は,損害額算定の基準時における特許権を活用した事業収益の見込みに基づいて算定されるべきものである(最高裁平成17年(受) 第541号平成18年1月24日第三小法廷判決・裁判集民事219号329頁)。そうすると,本件において,上記債務不履行に基づく損害額は,平成17年10月31日又は同年11月14日を経過した時点における本件出願1及び2に基づく特許権を活用した事業収益の見込みに基づいて算定されることとなる。 ⑵ 検討 ア本件発明1及び2の内容について本件明細書1及び2の記載内容並びに本件発明1及び2の技術分野は,前記1(引用に係る中間判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の「2 ア本件発明1及び2の内容について本件明細書1及び2の記載内容並びに本件発明1及び2の技術分野は,前記1(引用に係る中間判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の「2争点2(特許権取得の蓋然性)について」の「⑴ 本件出願1に係る特許権取得の蓋然性について」の「ア本件発明1について」及び「⑵ 本件出願2に係る特許 権取得の蓋然性について」の「ア本件発明2について」)のとおりであり,ま た,本件発明1及び2の構成要件を分説すると,前記前提事実(引用に係る中間判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の「2 前提事実」の「⑷ 本件各発明」の「ア本件発明1について」の「(ア)」及び「(イ)」並びに「イ本件発明2について」の「(ア)」ないし「(オ)」)のとおりである。 イ本件各出願に基づく特許権の三菱重工との売買契約等について 原告は,三菱重工から本件各出願に基づく特許権を譲渡して欲しい旨の申入れを受け,同社に対して2億円程度で売却する旨の提案をしたところ,同社とはその方向での話が進んでいた旨主張し,原告代表者の陳述書(甲29)や平成18年7月12日の会議(原被告の関係者及びA弁理士が出席)の会議記録(甲31)における原告代表者の発言には同主張に沿う部分があるが,実際に2億円程度での売却が 実現する蓋然性があったことを裏付ける客観的証拠は一切提出されておらず,他にこれを認めるに足りる的確な証拠はないから,上記主張は採用の限りでない。 また,原告は,三菱重工から本件各発明に基づく事業展開の申込みがあったと主張し,その根拠として新日本エコ・システム株式会社に対する御見積書(甲15)を提出する。しかし,そもそも同証拠には部品の一覧が記載されているのみであ り,その製品の具 展開の申込みがあったと主張し,その根拠として新日本エコ・システム株式会社に対する御見積書(甲15)を提出する。しかし,そもそも同証拠には部品の一覧が記載されているのみであ り,その製品の具体的な構成は不明であるから,本件各発明との関係も不明であって,三菱重工から本件各発明に基づく事業展開の申込みがあったことを裏付けるものとは認められず,他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない(そもそも,原告が甲第15号証の見積りの前提であるとしている仕様書〔甲25〕では,加振試験装置はDDVC方式ではなく,従来技術であるサーボ弁を用いる仕様とされている 〔甲25・3,4頁〕。)。そうすると,原告の上記主張も採用の限りでない。 ウ本件発明1及び2の実施品について本件発明1及び2の実施品が存在するのであれば,本件出願1及び2に基づく特許権を活用した事業収益の見込みを推認させ得る可能性があるから,かかる観点から原告が指摘する製品について検討する。 (ア) 株式会社ブリヂストン(ブリヂストン)に納入した高速二軸試験機(甲6な いし8,32,33)についてブリヂストンに納入した高速二軸試験機の具体的な構成は不明であり,本件発明1及び2の実施品であることを窺わせる証拠はない。むしろ,本件発明1の構成要件1D1は,「前記加振用液圧シリンダ機構はピストンロッドを共通にする複シリンダ構成をなし,」というものであるが,甲第6号証のスライド18(5丁目)を 見ると,同試験機の高速小振幅用駆動部は複シリンダ構成を採用していないから,同構成要件を充足しない。また,本件発明1の構成要件1D2は,「各シリンダのロッド側液室には前記定加圧部による加圧力並びにこれと平衡する圧力を導入しつつ」であり,同構成要件1D3aは,「ヘッド側液室に 構成要件を充足しない。また,本件発明1の構成要件1D2は,「各シリンダのロッド側液室には前記定加圧部による加圧力並びにこれと平衡する圧力を導入しつつ」であり,同構成要件1D3aは,「ヘッド側液室に加振液圧を導入して」というものであるが,同試験機に係る「BS免振ゴム試験機鉛直軸暫定仕様書」(乙7 5・3,4丁目)を見ると,一方のシリンダに加圧力が加わり,他方のシリンダに加振液圧が加わる構成となっているから,同構成要件を充足しない。 さらに,同試験機は,被告が平成14年8月4日に納入したものであるが(乙77),その後に被告が落札した横浜ゴム株式会社(以下「横浜ゴム」という。)に対する高速二軸試験機には,後述のとおり本件発明1及び2は使用されておらず, これは,被告が原告の子会社からの提案を受けた結果である(甲28,乙59)。 そして,本件発明1及び2がその後の他の高速二軸試験機に使用されたことを窺わせる証拠もないから,ブリヂストンに対する高速二軸試験機の存在が,本件出願1及び2に基づく特許権を活用した事業収益の見込みを的確に推認させるものとはいえない。 (イ) 横浜ゴムから落札した高速二軸試験機(乙59)について本件発明1の構成要件1D1は,「前記加振用液圧シリンダ機構はピストンロッドを共通にする複シリンダ構成をなし,」というものであるが,被告が横浜ゴムから落札した高速二軸試験機は複シリンダ構成を採用していないから(乙59の1・3丁目),同構成要件を充足せず,本件発明1の実施品とは認められない。また, 同試験機が本件発明2の実施品であることを認めるに足りる証拠はない。 (ウ) レール溶接部疲労試験機(甲35,49,53)について原告は,原告が公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下「鉄道総研」と 本件発明2の実施品であることを認めるに足りる証拠はない。 (ウ) レール溶接部疲労試験機(甲35,49,53)について原告は,原告が公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下「鉄道総研」という。)から発注を受けたレール溶接部疲労試験機が本件発明1の実施品であると主張する。本件発明1の構成要件1D2は,「各シリンダのロッド側液室には前記定加圧部による加圧力並びにこれと平衡する圧力を導入しつつ」というものであり,同構 成要件1D3aは,「ヘッド側液室に加振液圧を導入して」というものであるが,同試験機の油圧システム回路図_4(甲35の2・2丁目)によれば,複シリンダのロッド側液室に加振液圧が導入され,ヘッド側液室に加圧力が導入されており,本件発明1と逆の構成になっているから,同試験機は同構成要件を充足しない。そうすると,同試験機は本件発明1の実施品とはいえない。 また,本件発明1を活用した事業収益の見込みは,平成17年10月31日(本件出願1の審査請求期間の末日)を経過した時点において認められるものである必要があるが,同試験機に係る請負契約は平成26年11月19日に締結されたものであり,このように損害算定基準時点から9年以上も経過した後の契約に係る試験機が存在するとしても,このことが同時点における本件出願1に基づく特許権を活 用した事業収益の見込みを的確に推認させるものとはいえない。 (エ) 高架水槽用振動試験機(甲36)について原告は,高架水槽用振動試験機が本件発明2の実施品である旨主張する。しかし,そもそも,本件発明2の構成要件2Aは,「供試体に垂直荷重を加えながら水平振動を付加する加振装置のスライド機構において」というものであるが,高架水 槽用振動試験機において垂直荷重を加えながら水平振動を付 本件発明2の構成要件2Aは,「供試体に垂直荷重を加えながら水平振動を付加する加振装置のスライド機構において」というものであるが,高架水 槽用振動試験機において垂直荷重を加えながら水平振動を付加する必要は考え難い上,御見積書(甲36)をみても,その部品の一覧が記載されているのみであり,その構成は明らかではないから,同試験機が本件発明2の実施品であるとは認められない。 (オ) 高速移動載荷試験装置(甲50)について 原告は,鉄道総研軌道技術研究部が開発中の高速移動載荷試験装置において,本 件発明1を実施することができる旨主張する。しかし,同装置の製作は9年程度で実施されるものとされており(甲50・2頁),原告がその根拠とする回路図(甲51)と同装置との関係も明らかではないから,同装置が本件発明1の実施品であるとは認められないし,同装置において本件発明1を実施することが可能というのみでは,本件出願1に基づく特許権を活用した事業収益の見込みを的確に推認させ るものとはいえない。 (カ) 小括以上のとおり,原告が指摘する製品は,いずれも本件出願1及び2に基づく特許権を活用した事業収益の見込みを的確に推認させるものとはいえない。 エ原告提出の私的鑑定書(甲30,48)の評価について 原告は,本件各出願に基づく特許権を活用した事業収益の見込みについての原告の主張を裏付けるものとして私的鑑定書(甲30,48)を提出している。しかしながら,まず,甲第30号証は,本件出願3及び4を含めた本件各出願に基づく特許権の価値を算出したものであり,かつ,原告が単独の権利者であることを前提とするものであるから,そもそも本件とは前提を異にするものである。また,同号証 は,結局のところ,本件各発明の技術的価値を 権の価値を算出したものであり,かつ,原告が単独の権利者であることを前提とするものであるから,そもそも本件とは前提を異にするものである。また,同号証 は,結局のところ,本件各発明の技術的価値を離れてDDVC方式全般についての市場規模等からその価値を論じているにすぎないから,本件各出願に基づく特許権を活用した事業収益の見込みを的確に立証するものとは認められない。 次に,甲第48号証は,ブリヂストンに納入した高速二軸試験機が本件発明1及び2の実施品であり,レール溶接部疲労試験機が本件発明1の実施品であることを 前提とするものであるが,前記ウ(ア)及び(ウ)において検討したとおり,同試験機等が本件発明1及び2の実施品であるとは認められない上,その存在が本件出願1及び2に基づく特許権を活用した事業収益の見込みを的確に推認させるものとはいえないから,その前提を欠くものである。また,同号証は,結局のところ,本件各発明の技術的価値を離れてDDVC方式全般や油膜浮上方式のスライド機構全般につ いての市場規模等からその価値を論じているにすぎないから,本件各出願に基づく 特許権を活用した事業収益の見込みを的確に立証するものとは認められない。 したがって,いずれの私的鑑定書も原告の主張を裏付けるものとはいえない。 オ民訴法248条による相当な損害額の認定について以上のとおり,本件出願1及び2に基づく特許権の適正な価額が本件各請求に係る債務不履行に基づく損害として認められるものの,本件出願1及び2に基づく特 許権を活用した事業収益の見込みについて的確に認定するに足りる証拠は存せず,したがって,本件出願1及び2に基づく特許権の適正な価額を認定することは困難である(その他原告がるる主張するところは,本件出願1及び2に基づく特許 の見込みについて的確に認定するに足りる証拠は存せず,したがって,本件出願1及び2に基づく特許権の適正な価額を認定することは困難である(その他原告がるる主張するところは,本件出願1及び2に基づく特許権を活用できる可能性がある技術分野における市場規模を指摘しているにすぎず,これをもって本件出願1及び2に基づく特許権を活用した事業収益の見込みとはいえな い。)。そうすると,本件は,損害が生じたことが認められる場合であり,かつ,損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときであると認められるから,民訴法248条に従い,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき,相当な損害額を認定すべきである。 そこで検討するに,前記前提事実⑴及び⑵のとおり,原告と被告は本件覚書を取 り交わし,被告は原告に対してそれに従って合計400万円を支払ったことが認められる。さらに,証拠(甲11,乙5の6,乙7ないし9)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,新たに次の(ア)ないし(ウ)の内容を含む「DDVC試験機等の維持管理に関する覚書」と題する合意書を提案したことが認められ,同合意書において被告が支払うこととされていた額は合計900万円である。 (ア) 本覚書は,原被告間において平成19年10月1日付けで締結され,平成22年9月30日をもって終了した「DDVC試験機の維持管理に関する覚書」に関し,原告・被告が次条に規定するDDVC試験機等の維持管理を協力して被告の納入先に提供する必要があることを確認し,新たに原告において維持管理に必要な体制の構築,整備及び維持を行うために必要な条件を規定するものである(1項)。 (イ) 原告,被告ともにDDVC試験機等の維持管理に必要な社内の体制(以下 「社内体制」という。)を構築,整備し ,整備及び維持を行うために必要な条件を規定するものである(1項)。 (イ) 原告,被告ともにDDVC試験機等の維持管理に必要な社内の体制(以下 「社内体制」という。)を構築,整備し,それを維持する。ただし,DDVC試験機等の維持管理に必要な「社内体制」には,以下の要件が含まれる(4項)。 ① 人材,技術,設備の確保② 完成時の図書(完成図書,図面,プログラム記述書,プログラムソースコード等)及びトラブル,点検,改造等に関する図書の保管・管理 ③ 構成部品の供給確保(ウ) 被告は,原告における社内体制を構築,整備するための費用として,本覚書締結後6ヶ月以内に,原告に500万円を支払う。また,被告は,原告における社内体制を維持するための費用として,本年度より5年間にわたり,毎年原告に80万円を支払う(5項)。 本件覚書に基づく支払額400万円及び上記合意書に基づき被告が支払う予定とされていた900万円の合計1300万円は,被告が本件の紛争の解決のために提案した金額であるから,相当な損害額の認定に際して参考とすることができるものである。他方,本件覚書及び上記合意書の記載からすれば,被告がDDVC試験機を納入した納入先との関係で,原告と協力関係を維持する趣旨も含まれていること が認められる。そうすると,被告の提案のうち損害填補の趣旨と解すべき部分(本件各出願に基づく特許権の適正な価額の2分の1に相当する部分)は,上記1300万円の2分の1である650万円と認めるのが相当である。そして,上記650万円は本件各出願に基づく特許権の全てを対象とした価額であり,本件出願1及び2に基づく特許権を対象とした価額はその2分の1とみるべきであるから,本件出 願1及び2に基づく特許権の適正な価額の2分 円は本件各出願に基づく特許権の全てを対象とした価額であり,本件出願1及び2に基づく特許権を対象とした価額はその2分の1とみるべきであるから,本件出 願1及び2に基づく特許権の適正な価額の2分の1に相当する部分は,上記650万円の2分の1である325万円と認めるのが相当である。 したがって,本件各請求のうち,本件出願1及び2に係る債務不履行に基づく損害賠償額として相当であると認められるのは,合計325万円であると認められる(なお,これらとそれぞれ選択的併合の関係にある本件出願1及び2に係る不法行 為に基づく損害賠償請求について,損害が発生したものであるとして検討しても, その損害賠償額として相当であると認められるのは,上記と同様の理由により,合計325万円であると認められる。)。 ⑶ 弁済前記前提事実⑵のとおり,被告は,原告に対し,平成20年3月17日から平成22年1月25日にかけて合計400万円を支払った。同支払について,被告は, 本件調停において,本件調停に係る「支払義務」が観念される場合には上記400万円の既払金はそこから控除されるべき金員である旨述べ,本件訴訟においても,本件各請求に係る損害賠償義務が観念される場合にはその一部弁済である旨主張している。他方,原告も,同支払が損害賠償債務の一部弁済であることを前提としてこれが債務の承認である旨の主張をしていることからすると,上記400万円の支 払は,上記損害賠償債務の弁済であると認められる。 ⑷ 小括そうすると,本件出願1及び2に係る債務不履行に基づく損害賠償債務は,上記400万円の支払によって全て弁済されたと認められるから,本件出願1及び2に係る債務不履行に基づく原告の損害賠償請求は理由がない。また,原告は,上記請 求と選択的 に基づく損害賠償債務は,上記400万円の支払によって全て弁済されたと認められるから,本件出願1及び2に係る債務不履行に基づく原告の損害賠償請求は理由がない。また,原告は,上記請 求と選択的に本件出願1及び2に係る不法行為に基づく損害賠償請求も求めているが,上記と同様の理由により,その損害が存在するとしてもそれもまた全て弁済されたと認められるから,同請求に係るその余の要件を検討するまでもなく,同請求は理由がない。 第4 結論 以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告の本件各請求はいずれも理由がないから,これらを全て棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 嶋末和秀 裁判官 伊藤清隆 裁判官 天野研司
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