平成24年8月31日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成23年(行ウ)第443号特許料納付書却下処分取消請求事件口頭弁論終結日平成24年6月1日判決山口県宇部市<以下略>原告宇部興産株式会社同訴訟代理人弁護士細谷義徳同鈴木健文同補佐人弁理士柳橋泰雄同山村大介同伊 藤 佐保子東京都千代田区霞が関1丁目1番1号被告国同代表者法務大臣滝実処分行政庁特許庁長官岩井良行被告指定代理人二本松 裕 子同髙岡誠司同佐藤一行同大 江 摩弥子同河原研治 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求特許番号1821360号の特許権に係る第17年分特許料納付書について, 特許庁長官がした平成22年8月2日付け手続却下処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,後記特許権の第17年分特許料の追納期間経過後に特許料納付書を提出して特許料及び割増特許料の納付手続をしたのに対し,特 月2日付け手続却下処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,後記特許権の第17年分特許料の追納期間経過後に特許料納付書を提出して特許料及び割増特許料の納付手続をしたのに対し,特許庁長官が同特許料納付書を却下する処分(以下「本件却下処分」という。)をしたことについて,原告が,被告に対し,上記追納期間の徒過には原告の責めに帰することができない理由があると主張し,本件却下処分の取消しを求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1) 原告の有していた特許権原告は,次の特許権(以下「本件特許権」という。)を有していたが,第17年分特許料不納を原因として,平成22年2月17日付けで,その登録の抹消がされた(乙1)。 特許番号第1821360号発明の名称ピペリジン誘導体,その製造方法並びにそれを含む抗ヒスタミン剤出願年月日昭和63年7月15日出願公告年月日平成5年5月20日登録年月日平成6年2月10日(2) 本件却下処分等の経緯ア本件特許権の存続期間は,特許出願の日である昭和63年7月15日から20年を経過する日である平成20年7月15日までであったが,平成12年9月25日及び平成14年4月17日付けで存続期間の延長登録の出願がされ(出願番号2000-700108,2000-700109,2000-700110,2002-700032,2002-700033),平成13年6月20日及び平成15年3月5日に,延長の期間を 5年とする存続期間の延長登録がされ,本件特許権の存続期間は,平成25年7月15日まで延長された(乙1)。 イ平成6年法 平成13年6月20日及び平成15年3月5日に,延長の期間を 5年とする存続期間の延長登録がされ,本件特許権の存続期間は,平成25年7月15日まで延長された(乙1)。 イ平成6年法律第116号による改正前の特許法(以下,上記改正前の特許法を「改正前特許法」という。)107条1項,108条2項によれば,本件特許権の第17年分の特許料の納付期限は,平成21年5月20日であった(平成6年法律第116号附則8条,1条2号参照)。また,改正前特許法112条1項によれば,上記納付期間内に特許料を納付することができないときは,上記期間が経過した後であっても,その期間の経過後6か月以内は,特許料の追納が認められており,上記追納期間の満了日は,平成21年11月20日であった(乙1)。 ウ原告は,上記追納期限である平成21年11月20日までに,所定の特許料及び割増特許料(以下「本件特許料等」という。)を納付しなかった(以下「本件不納付」という。)。これにより,本件特許権は,特許法112条4項に基づき,平成21年5月20日の経過時にさかのぼって消滅したものとみなされた。 エ原告は,平成22年4月12日,特許庁長官に対し,本件特許料等の納付書(以下「本件特許料等納付書」という。)を提出した(甲1)。 オ特許庁長官は,平成22年5月11日,①本件特許権は,第17年分の特許料等が追納期間内に納付されなかったため,平成21年5月20日までをもって消滅している,②原告は,使用していた特許管理システムに欠陥があったため,本件特許権の第17年分の特許料納付期限日が設定されず,納付期限及び追納期限を徒過したものであり,本件不納付につき「その責めに帰することができない理由」があると主張するが,特許権の管理をどのようにするか 許権の第17年分の特許料納付期限日が設定されず,納付期限及び追納期限を徒過したものであり,本件不納付につき「その責めに帰することができない理由」があると主張するが,特許権の管理をどのようにするかは,自己責任の下で行われるものであり,上記事情は原告の内部事情というべきものであって,原告が特許料の納付を確実に行うための他の手段を併用するなどの措置を講じていたと認められない以上, 「その責めに帰することができない理由」があるとは認められず,特許法112条の2第1項による特許権の回復の納付とも認めることができないとして,本件特許料等納付書は却下すべきものと認められる旨の平成22年4月23日付け却下理由通知を発送した(甲2)。 カ原告は,同年6月9日付けで,特許庁長官に対し,①原告は,株式会社日立製作所(以下「日立」という。)の制作した特許管理システムを用いて特許管理を行っており,本件特許権の延長登録通知を受けた際,上記システムに,上記延長期間を正確に入力したが,②平成20年2月19日に本件特許権の第16年分特許料を納付した時点で,上記システム上,本件特許権の特許料は「完納」と設定され,次回納付期限の設定がされなかった,③原告のその後の調査によれば,原告が平成16年に導入した上記システムのバージョンアップ版には,上記バージョンアップ前のシステムとは異なり,延長登録出願(子案件)のみならず,元の特許(親案件)にも延長期間を入力しない限り,次回納付期限の設定は延長前のデータに基づきなされるという変更点があったことが判明したが,上記変更点について,日立から何らの説明も受けていなかったなどの事情を挙げ,本件不納付は,上記システム上の不具合によるものであって,原告の責めに帰することのできない事由によるものであるとする弁明書を,陳述書 について,日立から何らの説明も受けていなかったなどの事情を挙げ,本件不納付は,上記システム上の不具合によるものであって,原告の責めに帰することのできない事由によるものであるとする弁明書を,陳述書とともに提出した(甲3)。 キ特許庁長官は,原告に対し,平成22年8月2日,上記弁明書によっても,同年4月23日付け却下理由通知で通知した却下理由は解消されないとして,本件納付書を却下する処分(本件却下処分)をし,同年8月10日付けで手続却下の処分書を発送した(甲4)。 ク原告は,特許庁長官に対し,同月30日付けで,本件却下処分につき,行政不服審査法に基づく異議申立てをしたが,特許庁長官は,平成23年3月17日付けで,特許法112条の2第1項に規定する「その責めに帰 することができない理由」とは,通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を払ってもなお追納期間内に納付をすることができなかった場合を意味すると解されるところ,本件特許権の第17年分特許料納付手続において,原告が特許権者として通常期待される注意を払っていたとは認められず,「その責めに帰することができない理由」があるとは認められないとして,上記異議申立てを棄却する旨の決定をし,同決定は,同月18日に原告に送達された(甲6,乙2)。 ケ原告は,同年7月20日,本件訴訟を提起した。 2 争点本件特許料等を追納期間内に納付することができなかったことについて,原告に,平成23年法律第63号による改正前の特許法112条の2(以下「特許法112条の2」という。)第1項所定の「その責めに帰することができない理由」が認められるか。 3 争点に対する当事者の主張(原告の主張)(1) 特許法112条の2第1項の「その責めに帰すること 」という。)第1項所定の「その責めに帰することができない理由」が認められるか。 3 争点に対する当事者の主張(原告の主張)(1) 特許法112条の2第1項の「その責めに帰することができない理由」とは,通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしてもなお避けることができないと認められる事由により追納期間内に納付できなかった場合をいうものと解される。 (2) 原告における特許管理の方法及び本件不納付に至る具体的事情は次のとおりである。 ア原告は,コンピュータを使用した特許管理システムにより特許管理を行っており,特許料納付については,①毎月,当月から3か月後の暦月の1か月間に納付期限が到来する特許権を,年金納付対象案件として検索し,②上記検索により抽出された各案件について,特許料納付の要否を判断し,納付が必要であると判断した案件については,特許管理システム上の年金 納付書出力機能により年金納付書を自動作成して出力する(なお,上記出力により,特許管理システム上,年金納付対象案件の今年度分の納付データに納付日が設定されるとともに,次回分の納付データが新たに作成され,次回納付期限日が更新されることになる。)という方法により管理している。 イ原告は,上記特許管理システムとして,日立の制作した「MC4」との名称のソフトウェアを採用していた(以下,「MC4」による特許管理システムを「原告旧システム」という。)。 ウ原告旧システムにおいて,延長登録出願があった場合,延長登録出願は,延長される元案件の特許(以下「親案件」という。)に対するいわゆる「子案件」として登録され,延長登録があった場合には,延長期間を子案件に入力することにより,親案件にも延長データが反映される仕組みになっていた。原告は,本件 以下「親案件」という。)に対するいわゆる「子案件」として登録され,延長登録があった場合には,延長期間を子案件に入力することにより,親案件にも延長データが反映される仕組みになっていた。原告は,本件特許に関し,平成13年6月26日及び平成15年3月11日に期間延長通知を受けたことから,原告旧システムにおいて,本件特許の「子案件」に延長期間を入力し,これにより,原告旧システム上,本件特許の満了日は,親案件及び子案件ともに平成25年7月15日と表示されることになった。 エ原告は,平成16年,「MC4」の後継ソフトウェアである「MC5」との名称のソフトウェアを導入し,特許管理システムのバージョンアップを行い(以下,「MC5」による特許管理システムを「原告新システム」といい,原告における原告旧システムから原告新システムへの移行を「本件移行」という。),原告旧システム内のデータを原告新システム内に移行した。 本件移行作業は,データ移行対応表(甲10)に基づき,日立の制作したデータ移行ツールを用いて行われ,「権利満了日」のデータを含むデータ移行が正常に実施されていることを日立及び原告が確認した。これによ って,本件特許の権利満了日は,原告新システムにおいても,平成25年7月15日と表示されることになった。 オしかし,原告新システムにおいては,原告旧システムとは異なり,子案件への延長期間の入力により,親案件における権利満了日の表示が期間延長を反映していたとしても,これとは別に親案件においても延長期間を入力しない限り,次回納付期限及びその有無については,延長前のデータを用いて判定する仕組みとなっていた。そのため,本件特許については,権利満了日が平成25年7月15日と表示されていたにもかかわらず,特許料等の次回納付期限及 限及びその有無については,延長前のデータを用いて判定する仕組みとなっていた。そのため,本件特許については,権利満了日が平成25年7月15日と表示されていたにもかかわらず,特許料等の次回納付期限及びその有無が,延長前のデータを用いて判定されてしまい,平成20年2月19日に第16年分の年金を納付した時点で,本件システム上「完納」と設定され,「次回納付期限日」及び「次回納付予定期限日」がブランクとなった。このため,原告は,本件特許の本来の年金納付期限日及び追納期限を徒過してしまったものである。 なお,原告は,延長登録に係る入力方法の変更点について,日立から全く説明を受けていなかった。 (3) 上記(2)の経緯によれば,原告は,次のとおり,特許管理の各場面において,通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしていたことが明らかである。 ア特許管理方法選択の場面特許管理方法選択の場面においては,具体的事情の下,原告が採り得る選択肢の中で,原告がその選択に通常期待される注意を尽くしていたかが検討されるべきであるところ,原告が1000件以上の特許を保有し,かつ,多数の国内外特許出願を行っていることからすれば,人手による特許管理は不可能であり,コンピュータ・プログラムによる特許管理を選択せざるを得ない。そして,原告がコンピュータ・プログラムの自社制作を行っていないことからすれば,第三者の制作したコンピュータ・プログラム に基づく特許管理システムを利用する以外に管理のための合理的な手段はない。そうすると,原告には,「どのような特許管理システムを導入するか」という選択肢しか残されていないことになるところ,原告は,日立という信頼性に関し定評のある業者のシステムを選択し,導入しているのであるから,この点にお は,「どのような特許管理システムを導入するか」という選択肢しか残されていないことになるところ,原告は,日立という信頼性に関し定評のある業者のシステムを選択し,導入しているのであるから,この点において,通常期待される注意を尽くしていたといえることは明らかである。 イ日常的な管理の場面原告は,原告の主張(2)アのとおり,特許管理システムを用いて「次回納付期限日」の設定を定期的に検索し,特許料を納付することとしていたところ,このような管理方法は,本件システムの設計からみてごく自然な,通常の方法である。 ウ本件移行について(ア) 仮移行作業について原告は,原告の主張(2)エのとおり,原告旧システムから原告新システムへの仮移行作業において,データコピー自体が正常に実施されていることを確認しており,延長登録出願特許も仮移行作業の対象として含めた上で,上記特許を含めた各特許権の「権利満了日」のデータが,原告旧システムの「権利満了日」欄から原告新システムの「権利満了日」欄に問題なくデータ移行されていることを確認している。 (イ) 本件移行に伴う確認について原告新システムへの移行は,「MC4」から「MC5」へのソフトウェアのバージョンアップに伴うものであり,バージョンアップとは,機能の向上や不具合の修正を目的とするものであって,基本的な操作方法は通常変更されず,もし変更があった場合には,ソフトウェア制作者から,その旨告知がされるものである。本件において,バージョンアップ時に,基本的な操作性に変更がなく,日立から特段の指摘もなかった以 上,原告が積極的に操作方法等の確認を行うべきものではない。もし,この点の確認を求めるとすれば,それは,マニュアル記載事項の全てを ,基本的な操作性に変更がなく,日立から特段の指摘もなかった以 上,原告が積極的に操作方法等の確認を行うべきものではない。もし,この点の確認を求めるとすれば,それは,マニュアル記載事項の全てを確認することを要求するのと同義であり,明らかに不当である。 (ウ) 「稼働確認」について被告は,本件移行後のデータに基づき実際にシステムを稼働させて正確な期間管理がされているか否かの確認をすることが必要であると主張する。しかし,年金管理に関し稼働確認を行うということは,例えば未来の日付を少なくとも1年毎に入力し,全特許の年金管理に問題が生じていないか確認する作業を行うということであるが,バージョンアップにより,延長登録特許案件の年金管理方法について変更があった旨の報告を一切受けていない状況の下で,上記のような作業を行うことは,合理性,効率性などの観点からみて不可能である。 (エ) 本件特許権の「特殊性」について被告は,本件特許が延長登録された特殊な特許権であることから,原告新システムにおいて適切に管理できることを特に確認すべきであったと主張する。しかし,延長登録された特許権であっても,本件システム上設定された権利満了日を検索することにより管理される点では他の特許権と同様であり,何ら特別なところはない。この点について確認を求めることは,マニュアルに記載されている情報を全て確認すべきということと同義であり,特許権者に過剰な注意を求めるものである。 (4) 以上のとおり,原告は,特許管理の各場面において注意を尽くしていたところ,これにもかかわらず,本件不納付は,原告新システムの瑕疵という,原告が避けることのできない事由により発生したものである。 すなわち,上記(2)オのとおり,原告新シス て注意を尽くしていたところ,これにもかかわらず,本件不納付は,原告新システムの瑕疵という,原告が避けることのできない事由により発生したものである。 すなわち,上記(2)オのとおり,原告新システムにおいて,特許管理画面における「期間満了日」の表示と,特許の年金納付を管理する場合の「期間満了日」は,何らの連動性もなかったものであるが,特許権者にとって極め て重要な問題である権利満了日がシステム上適切に表示されているにもかかわらず,上記表示が年金管理上は無意味な情報であることは,特許管理システムとして明らかにおかしい。また,少なくとも,期間満了日が特許権者にとって極めて重要な情報である以上,「期間満了日」の表示とシステム管理上の「期間満了日」が異なっているような場合には,警告を表示するなどの措置が執られていなければならないはずであるのに,「MC5」ではこのような措置は一切執られていなかった。したがって,「MC5」には,特許管理システムとして明らかな瑕疵があったというべきである。 原告は,上記(2)オのとおり,この点につき日立から何ら説明を受けていなかった。なお,後日,日立からの説明により,日立から交付された「MC5」のマニュアルを参照することによって,延長登録案件については,親案件への入力が別途必要となることを把握できることが判明したが,日立からの何らの説明なく,マニュアルを交付されたことのみをもって,膨大な量の情報が極めて複雑に記載されているマニュアルを読み解き,上記の点を把握することなど,およそ不可能であり,上記の点を要求することは,通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意以上の注意を要求することに他ならない。 (5) したがって,本件不納付は,「MC5」の瑕疵によって発生したものであり,原 を要求することは,通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意以上の注意を要求することに他ならない。 (5) したがって,本件不納付は,「MC5」の瑕疵によって発生したものであり,原告には,上記瑕疵についての認識可能性がなかったから,本件不納付は,原告が通常の注意力を有する当事者として通常期待される注意を払っていたにもかかわらず,原告の責めに帰することのできない理由によって発生したものである。 (6) 原告は,本件不納付を平成20年3月30日に認識し,同年4月12日に本件特許庁長官に対し本件特許料等納付書を提出しているのであるから,本件特許料等納付書は,特許法112条の2第1項に基づく特許料等の納付として認められるべきものである。よって,本件却下処分には,特許法11 2条の2第1項の解釈を誤り,かつ,重大な事実誤認に基づいた明らかな違法があるため,取り消されるべきである。 (7) 被告の主張に対する反論等ア被告は,本件特許権の第16年分の特許料納付データを原告新システムに入力する際に,画面表示上,本件特許権の権利満了日が平成25年7月15日と表示されているにもかかわらず,次回納付期限欄がブランク(完納)と表示されていることの矛盾に気付くべきであったと主張するが,特許料納付のために原告が行う具体的作業は前記(2)アのとおりであって,一つ一つの特許データを開いて,その表示内容を確認する機会はなく,また,そのような作業は人為的ミスを誘発する危険性を含むものであって不合理である。 イ被告は,本件システムに不具合があったとしても,それは日立の過失によるものであり,原告の過失と同視されると主張するが,争う。 そもそも,債務の履行については,債権者・債務者間の公平の観点から,信義則上 テムに不具合があったとしても,それは日立の過失によるものであり,原告の過失と同視されると主張するが,争う。 そもそも,債務の履行については,債権者・債務者間の公平の観点から,信義則上,原則として履行補助者の過失は本人の過失と同視されるが,特許料の納付行為は,何らかの債権債務を前提とした履行行為ではないから,このような考え方を準用する前提を欠く。また,日立は原告の特許管理に使用する道具を提供した者にすぎず,原告の特許管理における履行補助者ではない。さらに,特許権者が第三者に特許料の納付という特許管理事務そのものを委託していた場合には,特許権者が自ら遂行できる行為を第三者に委託していたのであるから,当該第三者の不注意を特許権者の不注意と同視されてもやむを得ない面があるが,本件は,原告が自ら特許管理自体を行っていたのであり,上記特許管理に用いる道具(本件システム)に瑕疵があったという事案であるから,日立の過失を原告の過失と同視することはできないというべきである。 ウなお,特許法112条の2第1項の「その責めに帰することができない 理由」については,平成23年法律第63号によって,「期間内に特許料及び割増特許料を納付することができなかったことについて正当な理由があるとき」と改正されたが,上記改正法に基づく手続の運用指針をまとめたガイドライン案(甲11の2)において,特許庁は,「期間徒過の原因となった事象が,システムの不具合又はシステムの構造が当該システムの利用者である出願人等が想定し得ないものであったこと・・・により発生したものであるといえる場合」には,「通常の注意力を有する者であっても,その事象の発生を回避することは困難である」として,「当該システムの選定及びシステム導入のための作業が適切であるといえない場合 したものであるといえる場合」には,「通常の注意力を有する者であっても,その事象の発生を回避することは困難である」として,「当該システムの選定及びシステム導入のための作業が適切であるといえない場合を除き,出願人等が当該事象の発生を回避するための措置を講じていなかったことをもって,相応の措置を講じていなかったものとはされません。」と記載している。したがって,特許庁は,不納付の原因がシステムの不具合等にある場合には,通常の注意力を有する者であってもこれを回避することが困難であることを自ら認めているのであるから,上記改正前の特許法112条の2第1項においても,システムの不具合等を原因とする場合には,その責めに帰することができない理由があることを認めているものというべきである。 (被告の主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) 特許法112条の2第1項の解釈について特許法112条の2は,同法112条4項の規定によって消滅したものとみなされた特許権についても,原特許権者の「その責めに帰することができない理由」によって特許追納期間内に特許料等を納付することができなかったときは,一定の期間内に限り,特許料等の追納を認めることで,当該特許権が回復される場合があることを規定したものである。この規定は,パリ条約5条の2第2項の規定に基づき,特許法112条1項による救済の更なる 救済として平成6年法律第116号によって新たに設けられたものであって,拒絶査定不服審判や再審の請求期間を徒過した場合の救済の条件や他の法律との整合性,特許権の管理は特許権者の自己責任の下で行われるべきものであること,失効した特許権の回復を無期限に認めると第三者に過大な監視負担をかけることなどを考慮して,その条件が定められたものである。上記立 ,特許権の管理は特許権者の自己責任の下で行われるべきものであること,失効した特許権の回復を無期限に認めると第三者に過大な監視負担をかけることなどを考慮して,その条件が定められたものである。上記立法趣旨を踏まえ,同条1項にいう「その責めに帰することができない理由」とは,「通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしてもなお避けることができないと認められる事由により追納期間内に納付できなかった場合」をいうものと解するのが相当であり,特許庁においては,同項の要件該当性に関し,追納期間に特許料を納付することができなかった原因やこれを回避することの可能性の有無等について,厳格に判断しているところである。 (3) 原告が追納期間を徒過したことにつき「その責めに帰することができない理由」は存しないことア仮移行作業について特許管理システムのバージョンアップを行う場合,仮移行作業を行うのが通常であり,これは,通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意である。そして,特許権の納付期限に係るデータは,特許権者にとって,権利消滅に直結する重要なものであり,かつ,延長登録がされた特許権は,存続期間の点において通常案件とは異なる例外的な性質を有するものであるから,特許権者は,上記仮移行作業において,延長登録された特許権に関し,適切なシステム設計がされているかどうか,また,特許料の納付期間に関するデータが適切に移行されているかどうかを確認してしかるべきである。 日立からの回答書によれば,原告新システムでは,子案件に延長期間を入力しても,親案件における権利満了日の表示は,延長期間を反映しない というのであるから,原告が延長登録特許に関し上記確認を行っていたとすれば,原告がこの点を認識し,日立に指摘することも可能であった も,親案件における権利満了日の表示は,延長期間を反映しない というのであるから,原告が延長登録特許に関し上記確認を行っていたとすれば,原告がこの点を認識し,日立に指摘することも可能であったはずである。したがって,原告が,延長登録された特許権を仮移行作業の対象に含めることを怠り,又は,原告が,延長登録された特許権を仮移行作業の対象に含めていたが,仮移行が正確に行われたことを点検・確認していなかったとすれば,これらの点で,原告が「通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意」を尽くしていたとはいえないことになる。 イ稼働確認について原告が,仮移行作業において延長登録特許を対象に含め,そのデータが新システムに移行されたことを確認したとしても,これだけでは「通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしている」というには足りず,移行後のデータに基づき実際にシステムを稼働させて正確な期間管理がされているか否かの確認をすることが必要であるというべきである。 そして,本件において,原告が,延長登録出願案件について,特許料納付年月日を入力した際に,次回納付年月日が正確に画面表示されるか否かについて原告新システムの稼働確認を行っていたとすれば,期間満了日まで数年残されているにもかかわらず,特許料の「次回納付期限」欄がブランクになってしまう矛盾に気付き,「期間満了日」の表示と「次回納付期限」の表示が連動していないことを発見することができたはずであり,これにより,本件不納付を回避することができたものということができる。 原告は,稼働確認の具体的内容について明らかにしていない上,上記矛盾に気付いていなかったのであるから,上記稼働確認を行っていなかったものと推認されるのであって,この点で,原告は,「通常の注 原告は,稼働確認の具体的内容について明らかにしていない上,上記矛盾に気付いていなかったのであるから,上記稼働確認を行っていなかったものと推認されるのであって,この点で,原告は,「通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意」を尽くしていないものというべきである。 ウ新システムについて特許管理システムは,期間徒過が権利の消滅に直結するものであるから, このようなシステムのバージョンアップを実施した場合には,システム提供者から提供されたマニュアルを確認し,マニュアルを確認しても分からない場合には,バージョンアップ前後における操作方法や管理方法の相違について確認等を行うべきである。しかるに,原告が日立に対し,原告旧システムと新システムとの操作方法等の相違点につき,質問,確認等を行った形跡は認められないのであるから,この点で,原告は,「通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意」を尽くしていないものというべきである。なお,本件移行時において,延長登録特許の親案件に延長期間を適切に入力していれば,原告新システム自体は正常に機能していたと解されるのであり,原告新システム自体に不具合があったわけではないのであるから,上記不具合の存在を前提とする原告の主張は理由がない。 エ第16年特許料納付時について特許等に関する手続に従事する者にとって,特許料納付期限に関するデータが権利の消滅に直結する重要なものであることは周知の事実であるから,特許権者は,特許料の納付データを特許管理システムに入力した際に,上記入力によって更新された次回納付年月日のデータ確認を一連の作業として行うのが通常である。すなわち,原告は,第16年分の特許料納付データを原告新システムに入力した際に,本件特許権の権利満了日が「平 上記入力によって更新された次回納付年月日のデータ確認を一連の作業として行うのが通常である。すなわち,原告は,第16年分の特許料納付データを原告新システムに入力した際に,本件特許権の権利満了日が「平成25年7月15日」と画面表示されているのを確認したというのであるから,これと同時に,次回特許料納付年月日の画面表示も確認するべきであり,これにより,次回納付年月日がブランクになっているという矛盾に気付いてしかるべきである。原告が上記のような確認を行っていなかった,または行ったにもかかわらず上記矛盾に気付かなかったとすれば,この点で原告は「通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意」を怠ったものというべきである。 オ日立の過失について 特許料の管理体制の構築は自己責任の下に行われるものであるところ,当事者から特許料の納付管理に関する業務の委託を受けた者にその責めに帰することができない理由があるといえない場合には,「その責めに帰することができない理由」には当たらないと解すべきである。特許権者は,特許料の納付について,特許権者自身が自ら又は雇用関係にある被用者に命じて行うほか,特許料の納付管理事務を第三者に委託して行うこともできるところ,特許権者は,いずれの形態を採用するか,また第三者に委託する場合にどのような者を選定するかについて,自己の経営上の判断に基づき自由に選択することができるのであって,特許権者自らの判断に基づき,第三者に委託して特許料の納付を行わせることとした以上,委託を受けた第三者にその責めに帰することができない理由があるといえない状況の下で追納期間を徒過した場合には,特許料112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」があるとはいえないからである。 本件において,仮 ができない理由があるといえない状況の下で追納期間を徒過した場合には,特許料112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」があるとはいえないからである。 本件において,仮に,日立が,①本件移行に当たり本件特許に係るデータを原告新システムに適切に移行せず,②本件移行に当たり,原告新システムの稼働確認を実施したにもかかわらず,延長登録特許において「期間満了日」と「次回納付期限日」が連動していないことを発見できず,③本件システムのバージョンアップに伴い,年金管理方法の変更点を原告に説明せず,④不具合のある原告新システムを提供したとすれば,これらの各点にそれぞれ過失が認められるのであり,日立にその責めに帰することができない理由があるとは認められない。したがって,原告にも,「その責めに帰することができない理由」があるとは認められないことになる。 (4) したがって,本件特許料等納付書の却下は適法である。 第3 当裁判所の判断 1 前記前提となる事実に加え,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 原告における特許管理体制ア原告は,平成12年,特許管理のため,財団法人日本特許情報機構からの委託を受けて株式会社日立製作所(日立)が開発し,上記財団法人が販売する商品である「特許管理システムMCⅣ」(MC4)との名称のソフトウェアを導入した(甲7)。 イ原告は,上記アのソフトウェアにより構築した特許管理システム(原告旧システム)を使用して特許管理を行っていた(甲7)。 (2) 原告新システムへの移行ア原告は,平成15年ころ,原告旧システムに代えて,日立が開発し,株式会社日立情報システムズ(以下「日立情報システムズ」という。)が受託販売す 7)。 (2) 原告新システムへの移行ア原告は,平成15年ころ,原告旧システムに代えて,日立が開発し,株式会社日立情報システムズ(以下「日立情報システムズ」という。)が受託販売する「特許管理システムPALNET/MC5」(MC5)との名称のソフトウェアによるシステム(原告新システム)を導入することとし,同年9月ころ,原告旧システムから原告新システムへの移行作業に着手した(甲7)。 イ原告は,上記移行作業を日立情報システムズに委託して行うこととした。 上記移行作業は,データ移行ツールによって行われることとなっており,具体的には,①日立情報システムズが原告に対し移行対応表を交付して移行テストを行い,②上記移行テストによるエラーがあればこれを原告に報告し,③原告において上記エラー報告を検討・協議した上で,日立情報システムズに対し対応・修正を指示し,④日立情報システムズにおいて上記指示に基づく修正作業等を行い,⑤データの仮移行作業を行い,⑥本移行作業を行うという手順で進められた(甲7,12)。 ウ日立情報システムズは,上記イの移行作業に当たり,原告に対し,作業①において,原告新システムの仕様書(甲12添付の資料2)における原告旧システムからの変更点,各テーブルの対応関係,各テーブル内の移行対応関係等を示した移行対応表(甲12添付の資料1)を,作業②におい て,エラーの内容に関するエラー報告書(甲12添付の資料3)を,作業④において,原告の指示に基づき行った修正作業等に関する修正報告書(甲12添付の資料4)を各交付した(甲12)。 エ原告は,原告新システムへの移行に当たり,原告新システムに関するマニュアルを受領した(甲7,9)。なお,甲9は,上記マニュアルの一部である。 (3) 原告新 各交付した(甲12)。 エ原告は,原告新システムへの移行に当たり,原告新システムに関するマニュアルを受領した(甲7,9)。なお,甲9は,上記マニュアルの一部である。 (3) 原告新システムにおける特許管理体制,本件不納付ア原告は,原告新システムを使用して,毎月,当月から3か月後の暦月1か月間に次回納付期限日が到来する特許権を年金納付対象案件として検索し,検索結果画面に表示された特許権のうち,特許料等の納付を要すると判断したものにつき,原告新システムにおける年金納付書出力機能を用いて年金納付書を作成し,特許庁にオンライン送信することにより,特許料等を納付するという方法で特許料納付管理を行っていた(甲13)。 イ原告は,平成20年2月19日,本件特許権につき,原告新システムを利用して第16年分の特許料を納付した(弁論の全趣旨)。 ウ前記前提事実(2)アのとおり,本件特許権の存続期間は,延長登録により平成25年7月15日までとなっていたから,第16年分特許料納付後の次回特許料納付期限日(第17年分特許料納付期限日)は平成21年5月20日であり,原告新システムにおいて,同日が次回納付期限日として設定されるべきであったが,第16年分特許料納付により,原告新システム上,本件特許につき,完納コードが「完納(1)」に設定され,次回納付期限日は設定されなかった。そのため,本件特許権の第17年分特許料納付期限が近付いても,原告が上記アのとおり年金納付対象案件を検索した際に本件特許権は検索結果に表示されず,原告が第17年分の特許料納付手続を執らないまま,納付期限日及び追納期限日が経過した(甲5,弁論の全趣旨)。 エ原告は,平成22年3月30日,本件特許の関連出願情報の提供を受けて本件特許権の登録情 許料納付手続を執らないまま,納付期限日及び追納期限日が経過した(甲5,弁論の全趣旨)。 エ原告は,平成22年3月30日,本件特許の関連出願情報の提供を受けて本件特許権の登録情報を閲覧した際に,本件特許権が第17年分特許料不納により登録抹消となっていることに気付いた(甲3)。 2 特許料112条の2第1項「その責めに帰することができない理由」の存否(1) 特許法112条の2第1項の立法趣旨等に鑑み,同項所定の「その責めに帰することができない理由」とは,通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしてもなお避けることができないと認められる事由により追納期間内に納付できなかった場合をいうものと解するのが相当である。 (2)ア前記第3の1(3)ウのとおり,本件不納付は,原告の使用する特許管理システム上,本件特許につき,第16年分特許料納付により,特許料を完納した旨のコードが設定され,次回納付期限日(第17年分特許料納付期限日)が設定されなかったことに起因するものと認められる。 イそこで,本件特許につき,上記のとおり完納コードが「完納」に設定され,第17年分の特許料納付期限が設定されなかったことに関し,通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしてもなお避けることができないと認められる事由によるものかどうかにつき検討する。 (ア) この点,原告は,前記原告の主張(2)オ及び(4)のとおり,本件特許の第17年分特許料納付期限が設定されなかったのは原告新システムの瑕疵によるものであると主張する。 そして,その瑕疵の内容は,原告新システムにおいては,延長登録を,元の登録を「親案件」とする「子案件」として処理するものであり,この点は原告旧システムと異ならないが,「子案件」への延長期間 。 そして,その瑕疵の内容は,原告新システムにおいては,延長登録を,元の登録を「親案件」とする「子案件」として処理するものであり,この点は原告旧システムと異ならないが,「子案件」への延長期間の入力により,「親案件」における「権利満了日」の表示が期間延長を反映していたとしても,これとは別に「親案件」においても延長期間を入力しない限り,次回納付期限及びその有無については,延長前のデータを用いて判定する仕組みとなっている点で原告旧システムとは異なり,この 点に瑕疵があるというものである。 (イ) そこで,まず,原告新システムにおいて,原告が主張するように登録期間の延長が親案件に対する子案件として処理されているのかについて検討する。 a 原告新システムのマニュアル(甲9)110頁以下の「親子処分修正」の項目をみても,分割出願,変更出願(実用新案法10条参照),補正却下後の新出願,親出願の権利処分による法的関連子の権利処分(例えば,本意匠の放棄による類似意匠の放棄)についての記載はあるものの,登録期間の延長を親子案件として取り扱う旨の記載はない。 b また,原告新システムの仕様書(甲12添付の資料2)を見ると,原告新システムの「出願」テーブル中には,原告旧システムにおける「期間延長期間」に対応する項目として「延長年月日」が挙げられており(上記資料19頁の項番81),他に,延長登録期間を入力すべきようなテーブル又は項目は見出せない(なお,「フラグエリア2」テーブルに,「期間延長期間の入力日」欄が存在することが認められるが〔同資料39頁の項目39〕,延長登録期間そのものを入力すべき項目であるとは認められない。)。また,上記仕様書には,上記「延長年月日」の説明として,「期間延長の期間(年月日)。出願時=延長を求める期 同資料39頁の項目39〕,延長登録期間そのものを入力すべき項目であるとは認められない。)。また,上記仕様書には,上記「延長年月日」の説明として,「期間延長の期間(年月日)。出願時=延長を求める期間を記録,登録時=確定した期間に変更する。登録時本項目の期間を原出願の権利満了日に加算する。」と記載されていることが認められる(上記資料19頁の項番81の「説明」欄)。加えて,原告新システムのマニュアル(甲9)を見ると,延長年月日が入力された場合,これがトリガとなって,「権利期間起算日+権利期間年数+延長年月日」により権利満了日が算出・出力されること(甲9「ルールブック」43頁,44頁),「権利維持年金起算日+納付年度」により算出される次回納付期限日が,上記のとおり算出される 「権利満了日」を超えている場合には「完納」コードが「完納(1)」に設定されること(同46頁)が各記載されており,日立情報システムズ作成の原告に対する回答書(甲7。以下「本件回答書」という。)にもほぼ同様の説明がされていること(本件回答書別紙「マニュアルの参照方法」1,2頁)が認められる。 c 以上のマニュアル(甲9),仕様書(甲12の添付資料2)及び本件回答書(甲7)の記載内容によれば,原告新システムにおいて,特許料を完納したか否かの判定は,「権利満了日」欄に表示されている権利満了日が,次回納付期限日を超えているか否かによって行われるものであり,「原出願」テーブルにおける「延長年月日」欄に延長期間のデータが入力されると,上記データが「権利満了日」欄のデータに反映され,「権利満了日」欄に延長後の権利満了日が表示されるとともに,特許料を完納したか否かの判定において,延長後の権利満了日のデータが用いられるものと認められる。また,「原出願」テーブルにお に反映され,「権利満了日」欄に延長後の権利満了日が表示されるとともに,特許料を完納したか否かの判定において,延長後の権利満了日のデータが用いられるものと認められる。また,「原出願」テーブルにおける「延長年月日」欄へのデータ入力は,原告旧システムにおける「期間延長期間」欄の入力に対応するものとされていることが認められ,原告新システムにおいて,「原出願」テーブルにおける上記「延長年月日」欄への入力のほかに,延長期間を入力すべき項目があったことはうかがわれない。 なお,本件回答書には,完納コードの設定に関し,上記マニュアルの「年金納付」欄(甲9「ルールブック」46頁~)において「納付日」が入力された際の参照項目及び出力対象項目に「権利満了日」が含まれていないことから,権利満了日欄のデータは完納コードの設定には用いられない旨の説明をしている部分がある(甲7の別紙「マニュアルの参照方法」3頁)が,上記部分の記載は,次回納付期限日が権利満了日を超えている場合に完納コードが「完納」(1)に設定さ れる旨のマニュアルの前記記載(同46頁,48頁)と整合せず,信用し難いから,これにより上記認定は左右されない。 d そうすると,原告新システムが,上記(ア)でみた原告の主張するような構成のもの(「親案件」と「子案件」の両方に延長期間を入力する必要があり,このうち,「親案件」への延長期間の入力が,原告旧システムと異なり新たに必要となった点である上,「子案件」への延長期間の入力により,「親案件」における「権利満了日」は延長期間を反映したものとなるが,上記「権利満了日」欄の表示は特許料納付期限管理には無関係であるというもの)であるとは認めることができない。 (ウ) 以上のとおりであるが,本件証拠関係からは, を反映したものとなるが,上記「権利満了日」欄の表示は特許料納付期限管理には無関係であるというもの)であるとは認めることができない。 (ウ) 以上のとおりであるが,本件証拠関係からは,原告旧システム及び新システムの内容がその全体にわたって明確になっているものではないところから,以下においては,原告が主張するように,原告新システムにおいても延長登録は子案件として処理され,子案件への入力により親案件の権利満了日の表示が変更されるものであるとした場合について検討する。 a 本件特許については,原告旧システム使用中の平成13年6月20日及び平成15年3月5日に5年の延長登録がなされたものであるところ(乙1),原告は,上記延長登録につき,その都度,原告旧システムにおける本件特許の子案件に適切に入力した旨主張しており,そうであるとすれば,原告旧システムにおける本件特許の親案件には,期間延長の反映された権利満了日である「平成25年7月15日」が表示され,11年分特許料(平成15年1月30付納付)納付後の「次回納付期限日」も適切に表示されていたことになる。 b 平成16年,原告が原告新システムに移行し,本件特許のデータも原告新システムに移行された。 原告新システム移行後も,本件特許の12年分特許料(平成16年1月15日納付),13年分特許料(平成17年2月8日納付),14年分特許料(平成17年12月20日納付),15年分特許料(平成18年12月21日納付),16年分特許料(平成20年2月19日納付)が納付されていることから,これらの「次回納付期限日」は適切に表示されていたものと認められる(甲7,弁論の全趣旨)。 c 原告新システムにおいて「納付日」が入力された場合,年金納付が行われたものとみなされ,権利満了年 から,これらの「次回納付期限日」は適切に表示されていたものと認められる(甲7,弁論の全趣旨)。 c 原告新システムにおいて「納付日」が入力された場合,年金納付が行われたものとみなされ,権利満了年度まで納付した場合(納付日が設定された年金納付レコードの「納付年度」が存続期間の最終年度である場合)には完納コードが「完納」に設定され,次回納付期限日はクリアされるが,そうでない場合には次回納付期限日が設定される仕様になっていることが認められる(甲9の「ルールブック」46ないし48頁)。 d そうすると,平成20年2月19日に納付した16年分特許料の「納付日」を入力した際も,17年分特許料にかかる「次回納付期限日」は本件特許の「権利満了日」(上記aのとおり,原告旧システム下において延長登録につき適切に入力がなされていたとすれば,延長後の権利満了日は平成25年7月15日となる。)よりも前なのであるから,本来であれば,正しく17年分特許料の「次回納付期限日」が設定・表示されるべきものであったと考えられる。 それにもかかわらず,「次回納付期限日」が設定・表示されなかったとすれば,その理由は,本件証拠上明らかではない。 e この点,原告は,前記原告の主張(2)オ及び(4)のとおり,本件特許の第17年分特許料納付期限が設定されなかったのは,子案件への延長期間の入力により,親案件における権利満了日の表示が期間延長を反映していたとしても,これとは別に親案件においても延長期間を入 力しない限り,次回納付期限及びその有無については,延長前のデータを用いて判定する仕組みとなっていたという原告新システムの瑕疵によるものであると主張する。 しかし,本件移行作業に当たり,原告旧システムの「期間延長期間」のデータは,原告新システムの「延長 いて判定する仕組みとなっていたという原告新システムの瑕疵によるものであると主張する。 しかし,本件移行作業に当たり,原告旧システムの「期間延長期間」のデータは,原告新システムの「延長年月日」欄に移行されることが予定されていた(甲12の添付資料1「移行対応表」8頁の項番25)のであるから,原告旧システムにおいて子案件の入力を反映して設定されていた本件特許の親案件の「期間延長期間」データも,原告新システムにおける本件特許の親案件の「延長年月日」欄に移行されることが予定されていたものとみる余地がある。 そうすると,この場合,原告新システムにおいて子案件に入力された延長期間が親案件に反映されるか否かにかかわらず,本件特許における延長期間は,原告旧システムの親案件から原告新システムの親案件に移行されるべきものであったということになる。 (エ) 以上によれば,原告新システムが延長登録について,親案件に対する子案件としての処理をしていない場合であっても,原告が主張するように,原告新システムにおいても登録延長の期間は子案件として処理され,子案件への入力により親案件の権利満了日の表示が変更されるものであるとした場合であっても,本件証拠関係からは,原告新システムに,原告の主張するような内容の瑕疵があったと認めることを認めるに足りる証拠はないというべきこととなる。 そして,このほかに,原告新システムにおける特許料完納の判定方法や,延長期間の入力方法等に関し,証拠(甲7ないし10,12)上,システム上の瑕疵又は不具合というべきような不合理な点を見出すことはできない。 (オ) 以上のとおり,原告新システムに瑕疵が存在することを認め難い。 それにもかかわらず,本件においては,本件特許の第16年分特許料納付により,原 な不合理な点を見出すことはできない。 (オ) 以上のとおり,原告新システムに瑕疵が存在することを認め難い。 それにもかかわらず,本件においては,本件特許の第16年分特許料納付により,原告新システム上,特許料を完納した旨のコードが設定され,次回納付期限日(第17年分特許料納付期限日)が設定されなかったというのであるから,その原因は明らかではなく,延長登録時の原告旧システムへのデータ入力にそもそも誤りがあった可能性や,上記のとおり,原告旧システムの「期間延長期間」欄のデータが原告新システムの「延長年月日」欄に移行されることが予定されていたにもかかわらず,本件特許の上記データが適切に移行されなかった可能性など,その原因としては,種々の事情が考えられるというべきこととなる。 なお,本件移行作業に当たり,日立が原告に交付したエラー報告書(甲12の添付資料3)には,親子案件の法的関連を自動変換できなかった案件として,本件延長登録が挙げられており(上記資料31頁の項目2,3,33,34),「想定値に示す値を設定しようと考えておりますが,この設定値でよいかご確認ください。」との記載とともに,想定値として「30」(国内優先・親。上記資料38頁)と記載されていることが認められるところ,上記エラー報告書に対する原告の指示等による作業報告書(甲12の添付資料4)中には,上記想定値が修正された旨の記載は見受けられない。したがって,本件延長登録が,本件移行時において,上記想定値のとおり,原出願を優先出願とする案件としてデータ移行され,このため,延長前の権利満了日が本件特許の権利満了日として設定された可能性も考えられるところである。 しかし,いずれにしても,本件において,本件特許の第16年分特許料納付により,完納コードが「完納」に設定され,第1 権利満了日が本件特許の権利満了日として設定された可能性も考えられるところである。 しかし,いずれにしても,本件において,本件特許の第16年分特許料納付により,完納コードが「完納」に設定され,第17年分の特許料納付期限が設定されなかった原因を明確に特定するに足りる立証はなく,上記原因が特定されない以上,原告が,上記原因に関し,通常の注意力 を有する当事者が通常期待される注意を尽くしたこと及び上記原因が上記注意にもかかわらず避けることができないと認められる事由に当たることを認めるに足りる主張及び立証もないものといわざるを得ない。 なお,上記原因として考えられる可能性の一つとして,本件移行作業が適切なものではなかった可能性が挙げられることは前記のとおりであるところ,前記第3の1(2)イのとおり,本件移行作業は,原告が日立情報システムズに委託して行われたことが認められる。しかし,本件移行作業に問題があったとしても,上記の点が,受託者の判断に係るものではなく,受託者からの報告に基づき原告が指示した事項に起因するような場合には,上記の点は,委託者である原告自身の過失によるものとみるのが相当であり,原告が,通常の注意力を有する当事者として通常期待される注意を尽くしたものということはできないこととなる。また,上記問題点が,受託者の作業上の誤りなど,受託者の過失によるものとみるべきものであったとしても,原告は,上記移行作業を自ら行い又は第三者に委託するなどのいずれの形態を採用するか,または第三者に委託する場合にどのような者を選択するかについて,自己の判断に基づき自由に選択することができる状況の下で,自己の判断に基づき本件移行作業を第三者に委託することを選択したものである上,前記第3の1(2)ウのとおり,日立情報システムズは, について,自己の判断に基づき自由に選択することができる状況の下で,自己の判断に基づき本件移行作業を第三者に委託することを選択したものである上,前記第3の1(2)ウのとおり,日立情報システムズは,原告に対し,作業の各段階において文書で作業内容を報告していたことが認められるのであるから,上記過失は,原告側で生じたものとみるべきであり,当該過失に起因する事情により追納期間を徒過した場合には,特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」によるものとは認められないものというべきである。 (3) したがって,本件不納付に関し,原告に,特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」があるとは認められない。 3 以上によれば,本件特許料等納付書を,特許法112条の2第1項所定の要件を充たす追納と認めることはできないから,本件特許料等納付書を却下した本件却下処分に取り消すべき違法はない。 第4 結論したがって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官西村康夫 裁判官森川さつき
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