令和6(わ)138 強盗殺人

裁判年月日・裁判所
令和7年9月24日 横浜地方裁判所
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判決文本文3,124 文字)

- 1 -主 文被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中400日をその刑に算入する。 横浜地方検察庁で保管中の包丁1本(令和6年領第1330号符号1)を没収する。 理由 【罪となるべき事実】被告人は、自身が勤務する「A」の店長であり、遠縁の親族でもあったB(当時33歳)に対し、かねてより募らせていた恨みを晴らすために同人を殺害した上、その後の逃走資金等のために店内の金品を強取しようと考え、令和5年9月15日午後4時48分頃から同日午後5時10分頃までの間に、横浜市a区bc丁目d番e号fビル1階「A」店内において、同人に対し、殺意をもって、その胸部等を多数回包丁(令和6年領第1330号符号1)で突き刺し、よって、その頃、同所において、同人を前胸部刺創による心臓・大動脈損傷による失血により死亡させて殺害した上、同人管理の現金21万7546円及びトートバッグ1個(時価約500円相当)を強取した。 【事実認定の補足説明】 1 本件では客観的な事実関係に概ね争いはないが、弁護人は、被害者殺害前における財物奪取の意思の有無及びその程度を争い、被告人には殺人罪と窃盗罪が成立するにとどまると主張する。 2 被告人は、本件前日夜から当日までの間に、断続的に「殺人犯逃亡したら罪重くなる」、「名古屋ホテル」、「新幹線予約やり方」、「三重県行き方新幹線」、「強盗放火殺人量刑」、「逃亡犯以外と見つからない」などと検索しており、犯行前の時点において、被害者殺害後に名古屋方面に新幹線を利用して逃走することを想定していたことがうかがわれる。また、本件前日の被告人の預金残高が1000円余りしかなく、他に相応の所持金があった 、犯行前の時点において、被害者殺害後に名古屋方面に新幹線を利用して逃走することを想定していたことがうかがわれる。また、本件前日の被告人の預金残高が1000円余りしかなく、他に相応の所持金があったことをうかがわせる事情もないことか - 2 -らすれば、当時の被告人は、資金を調達しなければそのような方法で逃走することはできない状況にあったといえる。このような状況下で、被告人は、被害者を殺害し店舗を去った約1分後に、被害金のうち19万円余りを自己の銀行口座に入金し、これを費消しながら新幹線で名古屋まで移動し、ホテルに宿泊するなどした。被告人は、被害金を用いて事前の検索履歴と合致する行動を円滑に実行していることからすれば、犯行前から逃走資金等として店舗内の現金を持ち去ることを計画していたと考えるのが自然かつ合理的である。このような財物奪取の意思・計画を認める内容の捜査段階における被告人の供述は、当時の状況や事実経過とよく整合しており、信用性が高いといえる。 これに対し、弁護人は、被告人が事前に財物奪取を計画していたのであれば券売機内の金銭(証拠上、券売機内には千円紙幣38枚のほか、硬貨多数枚があったと認められる。)を持ち去っていないのは不自然であると主張するが、実際に強取した額の大きさ等に照らすと、何ら不自然とはいえない。また、弁護人は、捜査段階における被告人の供述の信用性について、供述態度や内容の変遷等を指摘して種々の主張をするが、いずれも表現の差異程度のもので変遷と評価すべきものはないし、取調べ映像から確認できる供述態度等を踏まえても、信用性に疑いを生じさせる事情はない。 以上によれば、被害者殺害前における財物奪取の意思を認めることができる。 3 なお、弁護人は、被害者殺害前における財物奪取の意思が認められたとしても、本 、信用性に疑いを生じさせる事情はない。 以上によれば、被害者殺害前における財物奪取の意思を認めることができる。 3 なお、弁護人は、被害者殺害前における財物奪取の意思が認められたとしても、本件は殺害の主たる目的が被害者に対する怨恨にあるため、強盗殺人罪は成立しないなどとも主張するが、被害者殺害前において財物奪取の意思がある以上、強盗殺人罪の成立が認められる。そして、被告人は現に被害者を死亡させた状況を利用して被害者管理の現金等を持ち出したのであるから、殺害行為と財物奪取との間に因果関係があることも明らかである。 【量刑の理由】被告人は、被害者の不意を突いて一方的に包丁で襲いかかり、致命傷となった前 - 3 -胸部刺創の深さは、心臓、肺、肝臓を貫く約20センチメートルにも及び、遺体には53か所もの刺切創が確認されたことなどに鑑みると、本件は、強固な殺意に基く執拗かつ残虐な犯行というほかない。被告人は、前日に包丁を購入し、ボディーソープや着替えも持参するなどして犯行に及び、犯行後には返り血を洗い流して着替えた上で、店内から当面の逃走等に充てる現金を奪って想定通りに名古屋方面に逃亡するなどしたのであって、殺害と財物奪取のいずれについても一定の計画性が認められる。被害者の苦痛や恐怖は計り知れず、妻や幼い子供を残して命を奪われたその無念さはもちろんのこと、被害者の妻や兄、両親らの悲嘆も察するに余りある。その兄が被害者参加人として厳罰を望む心情も当然のこととして理解できる。 なお、本件の動機・経緯に関し、被告人は被害者から種々の嫌がらせを受けて恨みを募らせていた旨を以前から供述していたところ、公判において、その中には、口淫や手淫を命じられるなどの性被害があった旨を述べるに至り、公判でこれを初めて供述した理由として、気持ちが悪く を受けて恨みを募らせていた旨を以前から供述していたところ、公判において、その中には、口淫や手淫を命じられるなどの性被害があった旨を述べるに至り、公判でこれを初めて供述した理由として、気持ちが悪くて言えなかった、金銭のことばかりが審理されることに不満を感じたなどと述べている。しかし、被告人に対しては、起訴前に実施された精神鑑定中の問診を含め、動機・経緯に関する聴取が長期間にわたり重ねて行われているし、被告人自身も検察官の取調べを通じて強盗殺人の成否が問題になることを認識していた。このような中、被告人は、財物奪取の意思について否認に転じる一方で、性被害という恨みの存在を補強する内容を新たに供述し始めたことなどに照らすと、その供述をにわかに信用することはできない。また、いずれにしても、親族の口利きによって住居の提供も受けながら働いていた中、嫌がらせといっても差し迫った状況があったわけでもないのに、周囲に相談することなく、最悪の手段を選択して一定の計画を練った上で凶行に至った点について強い非難を免れない。 そして、強盗殺人罪の量刑傾向に照らすと、酌量減軽の上で有期懲役刑に処すべき事案は、最も軽い部類に属するものに限られる。本件は、殺害の点について一定の計画性を備えた執拗かつ残虐な態様による強盗殺人であるから、いかに恨みを中 - 4 -心とする経緯・動機を考慮し、公判において被告人が述べた後悔や反省の言葉、情状証人として出廷した被告人の母親の心情等を踏まえたとしても、酌量減軽を相当とするような最も軽い部類の事案と評価することはできない。 よって、被告人を無期懲役に処するのが相当と判断した。 (求刑:無期懲役・没収)令和7年9月24日横浜地方裁判所第2刑事部 裁判長裁判官丹羽敏彦 裁判 よって、被告人を無期懲役に処するのが相当と判断した。 (求刑:無期懲役・没収) 令和7年9月24日 横浜地方裁判所第2刑事部 裁判長 裁判官 丹羽敏彦 裁判官 世森ユキコ 裁判官 沼田真志

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