【DRY-RUN】○ 主文 本件訴えを却下する。 訴訟費用は、原告らの負担とする。 ○ 事実及び理由 請求の趣旨 1 被告は、神戸市に対して、金一〇〇万円及びこれに対する平成二年三月一〇日 から支払済みまで年五分の割合
○ 主文本件訴えを却下する。 訴訟費用は、原告らの負担とする。 ○ 事実及び理由請求の趣旨 1 被告は、神戸市に対して、金一〇〇万円及びこれに対する平成二年三月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は、被告の負担とする。 二請求原因 1 原告らは、神戸市の区域内に住所を有する。 2 被告は、平成元年一一月一九日まで神戸市長であったものであり、その間、神戸市長として、左記の新交通六甲アイランド線建設事業につき、神戸市予算の支出を命ずる権限を有していた者である。 3 新交通六甲アイランド線建設事業の概要(一) 新交通六甲アイランド線の建設新交通六甲アイランド線の計画路線は、JR西日本住吉駅(起点)から東進して住吉川右岸線沿いに南下し、阪神魚崎駅、東部第二工区、六甲大橋を経由して六甲アイランド(終点)に至るもので、その延長は約四・六キロメートルである。全線複線高架構造で、駅は内陸部に三駅(住吉、魚崎、魚崎南)、六甲アイランドに三駅(六甲島北、六甲島中央、六甲島南)を予定している。右の計画路線のうち、後記の各区域を通過する部分は、住吉川右岸線の道路上に建設されることになっている。この部分の高架構造物は鉄骨造の単柱橋脚によって支えられ、幅約七・五メートル、高さ約九ないし二一メートルであり、駅は魚崎駅と魚崎南駅である。 (二) 住吉川右岸線の整備住吉川右岸線を浜手幹線(国道四三号線)からJR西日本まで延長約一〇九〇メートルにわたり、一般部の幅員を一五メートルに、立体交差部の幅員を一五ないし二二メートルに拡幅し、中央を車道とし、両側を歩道として整備する。 二住吉駅南線の整備住吉駅前広場(南側)から住吉川右岸線まで延長約四四〇メートルにわたり、幅員を丸ないし一三メートルに拡幅し、整備する。 (四) 住吉川公園の再整備 、両側を歩道として整備する。 二住吉駅南線の整備住吉駅前広場(南側)から住吉川右岸線まで延長約四四〇メートルにわたり、幅員を丸ないし一三メートルに拡幅し、整備する。 (四) 住吉川公園の再整備浜手幹線から住吉川河口部までの延長約四三〇メートルに及ぶ区間、約五五〇〇メートルについて住吉川公園を再整備する。 (五) JR西日本住吉駅周辺の整備新交通駅舎の設置、駅前広場の整備、JR西日本駅舎の橋上化、住吉駅線・住吉駅南線の整備等である。 4 一部事業の重大かつ明白な違法性右新交通六甲アイランド線建設事業のうち、住吉川右岸線に当たる神戸市<地名略>、二丁目、三丁目、四丁目及び同区<地名略>、二丁目、五丁目の各区域内における、高架構造物及び駅舎の建設並びにこれに附帯する街路及び公園の整備等に関する事業(以下「本件事業」という。)は、次に述べる理由により、重大かつ明白な違法があって施行することが許されないものであった。 (一) 住吉川河川軸景観等の破壊(1) 背後に六甲の山なみをひかえ、前面に大阪湾を臨も神戸にあって、住吉川は南北に延びる豊かな空間と優れた眺望自然景観を造り出している。 住吉川の沿線は、その主要部分が風致地区に指定されてきたことともあいまって、自然的調和のとれた得難い住環境を形成している。 このような貴重な空間・景観・環境は、過密都市にあって代替性のない高い公共的価値を有しているのであって、それは地域社会全般の共有財産として享受され、かつ、後世の国民に継承されるべきものであり、長期的かつ広域的視野に立って、その特性を失うことなく保全・管理されなければならない。 (2) しかるに、本件事業は、前記のとおり住吉川右岸線に高架構造物や駅舎を築造するものであって、これらの工作物により、河川空間を遮断し、眺望・景観を破壊し、自然的調和のとれ されなければならない。 (2) しかるに、本件事業は、前記のとおり住吉川右岸線に高架構造物や駅舎を築造するものであって、これらの工作物により、河川空間を遮断し、眺望・景観を破壊し、自然的調和のとれた住環境を根底から変貌させるものである。 本件事業は、住吉川河川軸景観の保全と育成を定めた神戸市都市景観形成基本計画や自然環境及び文化環境の保全を事業者の責務と定めた神戸市民の環境を守る条例に反するばかりでなく、開発はいかなる理由による場合でも、自然環境の保全に優先するものでないことをうたった自然保護憲章に背き、自然環境の適正な保全を地方公共団体の責務と定めた自然環境保全法(二条、九条、一〇条)にも違反するものであって、その違法性は重大かつ明白であると言わなければならない。 (二) 倚松庵(旧谷崎潤一郎邸)の変容(1) 住吉川右岸線に接して、訴外A所有の倚松庵と呼ばれる旧谷崎潤一郎邸が存在した。倚松庵は、木造瓦葺二階建居宅(実測床面積一階九六・七六平方メートル、二階五三・二〇平方メートル)であった。故谷崎潤一郎が同邸において名作「細雪」の執筆を開始した関係で、同邸のたたずまいや造作並びに同邸もしくはその近傍から見た住吉川沿線の街並みや眺望・景観が作品の随所に描かれており、「細雪」の高い文学的価値と相まって、同邸は貴重な文学遺跡となっているとともに、住吉川沿線一帯の文化環境を高める役割を果たしていた。 (2) しかるに、本件事業は、右倚松庵の取毀しおよび移築を余儀なくさせたものであり、同邸を大幅に変容させ、その貴重な文学遺跡的価値を著しく低下させ、周辺の文化的環境を損ったものである。 本件事業は、前記神戸市民の環境を守る条例に定められた文化環境保全についての事業者の責務に違背するばかりでなく、文化財の適切な保存をなすべき地方公共団体の任務(文化財保 化的環境を損ったものである。 本件事業は、前記神戸市民の環境を守る条例に定められた文化環境保全についての事業者の責務に違背するばかりでなく、文化財の適切な保存をなすべき地方公共団体の任務(文化財保護法三条)にも反するもので、明白かつ重大な違法があると言わなければならない。 (三) 河川管理の支障住吉川は天井川で、過去に大水害を発生させた経緯がある。また、国道二号線から阪神電鉄に至る間の右岸線が部分的に崩壊し、堤体がえぐり取られたこともある。 右の経緯に照らすと、住吉川右岸線の道路上に高架構造物を築造することは、杭打ちにより堤防ののり眉に亀裂が生じたり、地震等の影響によって工作物と堤防との接触面に間隙を生じ、堤防漏水やパイピング現象が発生する可能性も予測され、護岸・防災上重大な危険を生ずるおそれがある。これらの危険について十分な対策を講じることなく強行された本件事業には、明らかに重大な違法がある。 (四) 騒音振動による生活・健康破壊住吉川右岸線の沿道地域は、その大部分が風致地区に指定され、静かな住宅街を形成している。しかるに、本件事業による建設工事及び新交通線の供用により、地域の環境が破壊されたばかりでなく、原告らを含む沿道住民が七〇ホン前後の騒音と大型トラック並みの振動に暴露され、その生活や健康が侵害されるに至った。 このような沿道住民の人格侵害の危険に対し、適正な予測と必要な防止対策を講じることなく施行された本件事業には、明らかに重大な違法がある。 (五) 住民無視とアセスメントの形骸化本件事業は、沿道住民の意思を無視し、かつ、アセスメントの結論を待たずに事業計画を先行させたものであり、事実上、アセスメントを形骸化させたものであって、これらの手続面にあいても重大かつ明白な違法がある。 5 公金支出の違法性前記のとおり、本件事業に重大か 論を待たずに事業計画を先行させたものであり、事実上、アセスメントを形骸化させたものであって、これらの手続面にあいても重大かつ明白な違法がある。 5 公金支出の違法性前記のとおり、本件事業に重大かつ明白な違法が存する以上、かかる違法な事業に対して公金の支出を命ずることも違法であって許されないことは自明の理である。 6 監査請求、差止請求訴訟の提起と神戸市の損害(一) 原告らは、昭和六二年三月二日、神戸市監査委員に対し、本件事業に関する工事代金支出の停止等を求める住民監査請求を行った。これに対し、同監査委員は、原告らに対し、同月一四日、原告らの右措置請求は住民監査請求の対象事項に該当しない旨を通知した。 (二) そこで、原告らは、同年四月一一日、神戸市長を相手として本件事業への神戸市予算の支出の差止めを求める住民訴詮を提起した(神戸地方裁判所昭和六二年(行ウ)第一七号)。 (三) 被告は、右訴訟の係属中である平成元年一〇月二〇日に、神戸市長として、本件事業に対し、一億六一〇〇万円の支出命令をなし、神戸市に対し右同額の損害を与えた。 よって、原告らは、被告に対し、地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき、神戸市に代位して、前記損害金のうち一〇〇万円の賠償金及び遅延損害金を神戸市に対し支払うことを求める。 三被告の本案前の主張 1 原告らは、本訴につき監査請求の手続を経ていない。 2 仮に、本訴提起に必要な監査請求は、原告らが昭和六二年三月二日に神戸市監査委員に対してした本件事業に関する神戸市長の工事代金支出の停止等を求める措置請求で足りるとしても、右監査の結果が原告らに通知されたのは同月一四日であるから本訴の出訴期間は右同日から三〇日後(地方自治法二四二条の二第二項一号)である昭和六二年四月一三日までとなるところ、被告に対する本訴が提起され 監査の結果が原告らに通知されたのは同月一四日であるから本訴の出訴期間は右同日から三〇日後(地方自治法二四二条の二第二項一号)である昭和六二年四月一三日までとなるところ、被告に対する本訴が提起されたのは平成二年三月九日であるから、本訴は、出訴期間経過後に提起されたものであって、不適法である。 3 本件事業に関して神戸市が平成元年一〇月二〇日に支出した金員は、第一工区橋面工事(その三)の一億八六八四万二〇〇〇円であるところ、その支出の中に原告ら主張の一〇〇万円を特定しうる項目はない。右橋面工事は多岐にわたっているのに、原告らは、どの工事の支出を損害と主張するのかを明らかにしない。 四本案前の主張に対する原告らの反論 1 適法に公金支出の差止めを求めた住民は、新たな監査請求をすることなく、右公金の支出による損害賠償請求をすることができる。殊に、本件では、原告らがした支出差止めの措置請求に対し、監査委員は、工事の内容やその違法性についてまともに検討せず、監査の対象に当たらないとして却下したのであるから、再度監査請求をしても、支出された工事代金額相当の損害について工事の内容やその違法性にわたって監査がなされるとは考えられない。 2 本訴の出訴期間は、行政事件訴訟法一五条、二〇条の類推適用により、公金支出の差止請求の訴訟が提起された時点で判断されるべきである。違法な公金支出の差止めを求める住民としては、その違法な支出が強行された場合に、これを放置することはありえず、原状の回復を求める意思であることは、差止請求の訴訟を提起した時点で明白であり、その後になされた支出行為については、いつでも損害賠償を請求することができるとするのが条理上も当然である。 3 仮に、本件損害賠償請求自体について出訴期間が問題になるとしても、公金の支出について監査請求をなすべき た支出行為については、いつでも損害賠償を請求することができるとするのが条理上も当然である。 3 仮に、本件損害賠償請求自体について出訴期間が問題になるとしても、公金の支出について監査請求をなすべき期間である一年と監査の結果の通知後出訴すべき期間である三〇日の合計の期間、すなわち、公金の支出から一年と三〇日以内に提訴されていれば、出訴期間の要件を充たしたというべきである。 五当裁判所の判断 1 監査請求について地方自治法二四二条の二第一項は、「前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第三項の規定による監査委員の監査の結果に・・・・・・不服があるとき・・・・・・は、・・・・・・同条第一項の請求に係る違法な行為・・・・・・につき、訴えをもって次の各号に掲げる請求をすることができる。」と規定して、当該公金支出についての監査請求がなされた場合には、法二四二条の二第一項各号に規定する訴えを提起することができると規定しているから、普通地方公共団体の住民が特定の公金の支出を違法な行為としてその差止めの監査請求をし、その結果に不服のあるときは、新たに監査請求をしなくても、当該公金が支出されたことを理由とする損害賠償請求の訴えを提起することができる。 本件事業にかかる神戸市長の公金の支出について、原告らがさきに差止めの監査請求をして却下されたことは、当事者間に争いがないから、本件損害賠償請求の訴えは、監査請求前置の要件を充たしているというべきである。 2 出訴期間について右のように、原告らが本件損害賠償請求の訴えを提起するについて、新たな監査請求は要しないことを前提として、地方自治法が住民訴訟について出訴期間を定めた趣旨を考えると、本件のような事案の出訴期間は、住民が当該公金の支出があったことを知りえた日から三〇日とするのが相当である。けだし、 ないことを前提として、地方自治法が住民訴訟について出訴期間を定めた趣旨を考えると、本件のような事案の出訴期間は、住民が当該公金の支出があったことを知りえた日から三〇日とするのが相当である。けだし、右の解釈によれば、支出があったことを住民が知りえたときには、監査の手続も終了していることになるから、右支出にかかる損害賠償請求の訴えは、そのときから三〇日以内に提起すべきものとするのが同法二四二条の二第二項一号の法意に適うものというべきである。原告らは、本訴の出訴期間は、行政事件訴訟法一五条、二〇条の類推適用により、公金支出の差止請求の訴訟が提起された時点で判断されるべきであると主張するけれども、公金支出差止めの請求は神戸市長に対する訴えであるのに対し、本件請求は、神戸市に代位して被告個人に損害賠償を請求するものであって、右各条を類推する余地はない(最高裁昭和五八年七月一五日判決参照)。原告らはまた、支出のときから一年と三〇日以内に提訴すれば足りるとも主張するけれども、支出後の監査請求は必要がないのに、これが必要であることを前提とする同法二四二条二項所定の一年をつけ加えるのは筋が通らない。 本件について見るに、本件事業の性質上、支出が殊更に隠れてなされたとは考えられないところ、前記請求原因事実によれば、原告ら主張の公金が支出されたのは平成元年一〇月二〇日というのであるから、原告らはその頃に支出の事実を知ることができたというべきであるし、本訴は行政事件訴訟法一九条により、神戸市長を被告とする公金支出差止請求事件(当庁昭和六二年(行ウ)第一七号事件、本訴に併合後、平成二年九月五日取下げ)に併合して提起されたものであるところ、右事件の第一三回口頭弁論期日である平成二年一月一七日に、右事件の被告である神戸市長の訴訟代理人において、本件事業の総事業予算 併合後、平成二年九月五日取下げ)に併合して提起されたものであるところ、右事件の第一三回口頭弁論期日である平成二年一月一七日に、右事件の被告である神戸市長の訴訟代理人において、本件事業の総事業予算八八億〇〇六九万六〇〇〇円はすべて執行したと陳述したのであるから、原告らは遅くともこの時には支出の事実を知ることができたことになる。そうすると、平成二年三月九日に提起された本訴は、いずれにしろ三C日の出訴期間経過後になされたことになる。 3 結論よって、本件訴えを不適法として、主文のとおり判決する。 (裁判官林泰民岡部崇明井上薫)
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