平成31年3月20日判決言渡 平成30年(ネ)第10060号損害賠償等請求控訴事件(原審:東京地方裁判所・平成29年(ワ)第14142号) 口頭弁論終結日平成31年1月30日判決 控訴人(第1審原告)株式会社JUICEDESIGN 訴訟代理人弁護士上山浩 田口洋介 若松牧 森下欣文 被控訴人(第1審被告)AppleJapan合同会社 代表者代表社員アップルサウスアジアピーティーイーリミテッド 訴訟代理人弁護士北原潤一 米山朋宏 佐志原将吾 訴訟代理人弁理士中村佳正 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人に対し,1億2960万円及びこれに対する平成29年5月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じて,被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要(略語は特に断らない限り原判決の例による。) 1 事案の要旨本件は,発明の名称を「入力制御方法,コンピュータ,および,プログラム」とする特許第5935081号の特許権(本件特許権)を有する控訴人が,被控訴人によるスマートフォン製品の輸入・販売が本件特許権を侵害すると主張して,被控訴人に対し,民法709条に基づく損害賠償金498億4168万3808円(特許法102条3項により算定される損害額。対象期間は平成28年5月20日から平成29年3月31日まで)の一部である5400 控訴人に対し,民法709条に基づく損害賠償金498億4168万3808円(特許法102条3項により算定される損害額。対象期間は平成28年5月20日から平成29年3月31日まで)の一部である5400万円,特許法65条1項に基づく補償金63億7162万3600円(対象期間は平成28年3月14日から同年5月19日まで)の一部である5400万円,及び弁護士費用相当額2160万円の合計1億2960万円,並びにこれに対する平成29年5月2日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は,本件特許には乙8文献に基づく新規性欠如の無効理由が存すると認められるとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。そこで,控訴人は,原判決を不服として,本件控訴を提起した。 なお,後記2(1)のとおり,控訴人は,原審の口頭弁論終結後である平成30年6月13日,本件特許の明細書及び特許請求の範囲について訂正(以下「本件訂正」という。)を求める訂正審判を請求し,その後,この訂正を認める審決(以下「本件訂正審決」という。)が確定した。 2 前提事実(証拠を掲記した以外の事実は,当事者間に争いがない。)(1) 控訴人の特許権 控訴人は,次の特許権(本件特許権。以下,本件訂正後の本件特許の明細書及び図面を「本件明細書」という。)を有している。 ア特許番号特許第5935081号イ発明の名称入力制御方法,コンピュータ,および,プログラムウ出願日平成25年4月18日エ優先日平成24年4月18日オ優先権主張国日本国カ登録日平成28年5月20日なお,控訴人は,平成30年6月13日,特許庁に本件訂正を求める訂 エ優先日平成24年4月18日オ優先権主張国日本国カ登録日平成28年5月20日なお,控訴人は,平成30年6月13日,特許庁に本件訂正を求める訂正審判を請求し,特許庁は,同年8月9日,本件訂正を認める審決(本件訂正審決)をした(甲23,24)。その後,本件訂正審決は確定した(弁論の全趣旨)。 (2) 特許請求の範囲の記載本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項3の記載は,次のとおりである(以下,同請求項に係る発明を「本件発明」という。なお,下線は本件訂正に係る箇所を示す。)「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置であって,表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を,直接的または間接的に検出する力入力検出手段と,前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段と,前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ,前記力入力検出手段により検出された前記力入力に応じて,当該表示対象以外の表示態様を変更することにより,当該表示対象を相対的に変更させ,当該変更結果を当該表示対象に対する入力として記憶部に記憶させる変更手段 と,を備えたことを特徴とする情報処理装置。」(3) 本件発明の構成要件本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件A」のようにいう。下線は本件訂正に係る箇所を示す。)。 H 表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置であって,A 表示画面にスライド は本件訂正に係る箇所を示す。)。 H 表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置であって,A 表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を,直接的または間接的に検出する力入力検出手段と,B 前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段と,C 前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ,D 前記力入力検出手段により検出された前記力入力に応じて,当該表示対象以外の表示態様を変更することにより,E 当該表示対象を相対的に変更させ,F 当該変更結果を当該表示対象に対する入力として記憶部に記憶させる変更手段と,G を備えたことを特徴とする情報処理装置。 (4) 被控訴人の行為被控訴人は,業として,別紙被告製品目録記載の各製品(以下,「被告製品1」などといい,併せて「被告各製品」という。)を輸入し,日本国内において販売している。 なお,日本国内における被告各製品の販売開始日は次のとおりである。 ア被告製品1及び2 平成27年9月25日 イ被告製品3及び4 平成28年9月16日ウ被告製品5及び6 平成29年9月22日(甲30)エ被告製品7 平成29年11月3日(甲31)オ被告製品8及び9 平成30年9月21日(甲32)(5) 被告各製品の構成等被告各製品の構成等について,控訴人は,原判決別紙被告製品説明書(原告主張)のとおりと主張するのに対し,被控訴人は,同別紙被告認否書のとおり認否するので,これを引用する。 (6) 本件特許の優先日前の公知文献原判決「事実及び理由」第2の1(6)(3 書(原告主張)のとおりと主張するのに対し,被控訴人は,同別紙被告認否書のとおり認否するので,これを引用する。 (6) 本件特許の優先日前の公知文献原判決「事実及び理由」第2の1(6)(3頁22行目~4頁2行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 争点及びこれに対する当事者の主張本件の争点及びこれに対する当事者の主張は,次のとおり改め,後記4のとおり,当審における当事者の追加ないし補充主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」第2の2及び3(4頁3行目~24頁14行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決4頁5行目の「構成要件G」を「構成要件A,B及びG」と改め,同頁6行目冒頭から同頁7行目末尾までを削る。 (2) 原判決4頁8行目の「ウ」を「ア」と,同9行目の「エ」を「イ」と,同10行目の「オ」を「ウ」と,同11行目の「カ」を「エ」と,それぞれ改める。 (3) 原判決4頁11行目の末尾に改行の上,「オ被告各製品は構成要件Hを充足するか(争点1-7)」を加える。 (4) 原判決4頁19行目の冒頭から6頁19行目の末尾までを削る。 (5) 原判決6頁20行目の「(3)」を「(1)」と改め,以下項番号を2ずつ繰り上げる。 (6) 原判決9頁3行目の「0026」を「0031」と改める。 (7) 原判決11頁16行目冒頭から同頁21行目末尾までを削る。 4 当審における当事者の主張(1) 争点1-6(被告各製品は構成要件Fを充足するか)について〔控訴人の主張〕ア構成要件Fの意義(ア)「当該変更結果」(構成要件F)とは,「当該表示対象」に対して力入力がされたことに「応じて,当該表示対象以外の表示態様を変更する 〔控訴人の主張〕ア構成要件Fの意義(ア)「当該変更結果」(構成要件F)とは,「当該表示対象」に対して力入力がされたことに「応じて,当該表示対象以外の表示態様を変更することにより」(構成要件D),「当該表示対象を相対的に変更させ」(構成要件E)た結果を意味する。また,「入力」(構成要件F)とは,「力入力検出手段」(構成要件A)により検出された当該表示対象に対する「力入力」(構成要件A)を意味する。 したがって,「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として記憶部に記憶させる」(構成要件F)は,特許請求の範囲の記載の文脈から,当該変更結果を,当該表示対象に対する力入力の入力結果として,記憶部に記憶させること,との意味であることが明らかである。 (イ) これを本件明細書記載の実施例(段落【0035】及び【0062】並びに【図8】~【図10】に則して説明すると,以下のとおりである。 表示要素「B」(「当該表示対象」(構成要件F)に相当する。)に対して力入力がされると,当該力入力に応じて,表示要素「B」が属していた「WINDOW1」が表示要素「A」及び「C」とともに相対的に右方向に遷移し(換言すると,表示要素「B」が相対的に左方向に遷移し),それに伴い表示領域の左側から「WINDOW2」が遷移してくる。そして,力入力を終了すると,表示要素「B」が「WINDOW2」に属している状態が表示される。 すなわち,表示要素「B」が属しているWINDOWを「WINDO W1」から「WINDOW2」に変更させた結果が,「当該表示対象を相対的に変更させ」た結果に相当する。そして,「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として記憶部に記憶させる」とは,上記変更結果を,表示要素「A」や「C」等に対する力入力の結 が,「当該表示対象を相対的に変更させ」た結果に相当する。そして,「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として記憶部に記憶させる」とは,上記変更結果を,表示要素「A」や「C」等に対する力入力の結果としてではなく,表示要素「B」に対する力入力の結果の情報として,記憶部に記憶させる,という意味である。 (ウ) 本件訂正審決も,本件発明と乙10文献記載の発明との間の「相違点6」に関する判断に当たり,「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として記憶部に記憶させる」とは,「(背景の変更などの)変更結果を,(フォルダYに保存することなどの)表示対象に対する情報として記憶することを意味している」と述べているところ,これは控訴人の上記主張と整合する。 イ被告各製品は構成要件Fを充足すること原判決別紙被告製品説明書(原告主張)38頁に記載のとおり, 被告各製品のiOSホーム画面には,メール,カレンダー,写真,カメラ等の複数のアイコンが表示されているところ,これらのアイコンが「表示対象」(構成要件C等)に相当する。そして,いずれかのアイコンに指を接触させ,更にプレス(構成要件A等の「力入力」に相当する。)すると,プレスしたアイコン以外の部分がデフォーカス状態に変化し,当該アイコンだけが明瞭に表示された状態になる。 当該被告製品説明書(原告主張)38頁記載の図1-3及び1-4は,カメラアイコンをプレスした場合の画面で,カメラアイコン以外の部分がデフォーカス状態に変化し,カメラアイコンだけが明瞭に表示された状態になっている。図1-4の表示画面が表示されている状態でディスプレイから指を離しても,図1-4の画面が表示された状態が維持される。また,図示していないが,カメラアイコン以外のアイコンをプレスした場合にも, 当該アイコ 示画面が表示されている状態でディスプレイから指を離しても,図1-4の画面が表示された状態が維持される。また,図示していないが,カメラアイコン以外のアイコンをプレスした場合にも, 当該アイコンについて同様の表示がされる。 以上によれば,図1-3及び1-4が示す変更結果(カメラアイコン以外がデフォーカス表示されている状態)は,メール,カレンダー,写真等のアイコンに対してではなく,カメラアイコンに対してプレス操作がされた入力結果として,換言すると,カメラアイコンに対するプレス操作による力入力結果の情報として記憶部に記憶されていることが明らかである。 なお,当該結果が記憶部に記憶されていることは,所定の力でカメラアイコンをプレスしている間は図1-3が表示され続け,図1-4が表示された後は指を離しても図1-4が表示され続けることから,明らかである。 メールアプリケーションにおけるリンク表示操作,メッセージアプリケーションにおけるリンク表示操作,並びに,Safariアプリケーションにおけるリンク表示操作及びお気に入りアイコン操作についても同様である。 したがって,被告各製品は構成要件Fを充足する。 〔被控訴人の主張〕ア構成要件Fの意義について控訴人は,構成要件Fの意義について,「当該変更結果(表示対象に対する力入力に応じて,当該表示対象以外の表示態様を変更することにより,当該表示対象を相対的に変更した結果)を当該表示対象に対して力入力がされた変更結果として記憶部に記憶させる変更手段」と捉えている。 しかし,構成要件Fは,「当該変更結果を『当該表示対象に対して力入力がされた変更結果として』記憶部に記憶させる」とは規定していない。 このように,構成要件Fの意義に関する控訴人の主張は,構成要件Fの文言に明らかに反している。 変更結果を『当該表示対象に対して力入力がされた変更結果として』記憶部に記憶させる」とは規定していない。 このように,構成要件Fの意義に関する控訴人の主張は,構成要件Fの文言に明らかに反している。また,その具体的な記憶態様も不明である。 イ被告各製品は構成要件Fを充足しないこと(ア) 本件明細書には,構成要件Fの「当該表示対象に対する入力として」 の意義に完全に整合する記載はないから,本件明細書の記載を参酌しても,構成要件Fの「当該表示対象に対する入力として」の意義は理解不能である。 したがって,被告各製品は,構成要件Fの「当該表示対象に対する入力として」を充足しない。 (イ) 仮に,本件訂正審決が指摘した本件明細書の段落【0035】及び【0062】の記載を最大限善解すると,構成要件Fの「当該変更結果を『当該表示対象に対する入力として』記憶部に記憶させる変更手段」とは,「表示対象に対する力入力に応じて,当該表示対象以外の表示態様を変更することにより,当該表示対象を相対的に変更したときに,『当該表示対象のデータ(ファイル)に対する引数を伴ったコマンドを確定・実行し,当該表示対象のデータ(ファイル)の背景のデータ(フォルダ等)との相対的な関係を定める属性情報(当該表示対象のファイルが,背景となるどのフォルダに格納されているかといった情報)を書き換えて』記憶部に記憶させる変更手段」を意味すると解される。 これを被告各製品についてみると,例えば,iOSホーム画面において,カメラアプリのアイコンをプレスすると,カメラアプリのアイコンの色が灰色に変化し,更にプレスすると,カメラアプリのアイコンの色が元に戻るとともに,その周囲には,カメラアプリのアイコンと一体をなす半透明の枠が現れ,プレスの力に応じて当該半透 ラアプリのアイコンの色が灰色に変化し,更にプレスすると,カメラアプリのアイコンの色が元に戻るとともに,その周囲には,カメラアプリのアイコンと一体をなす半透明の枠が現れ,プレスの力に応じて当該半透明の枠の大きさが変化し,カメラアプリのアイコン及び当該半透明の枠(以下,これらを併せて単に「カメラアプリのアイコン」という。)以外の領域がデフォーカス状態に変化する。しかし,上記変化があったときに,カメラアプリのアイコンのデータ(ファイル)に対する引数を伴ったコマンドを確定・実行し,カメラアプリのアイコンのデータ(ファイル)の背景のデータ(フォルダ等)との相対的な関係を定める属性情報(カメラアプリ のアイコンのファイルが,背景となるどのフォルダに格納されているかといった情報)を書き換えてメモリに記憶させていることを示す証拠は全くない。 ウ小括以上によれば,被告各製品は少なくとも構成要件Fを充足しないから,本件発明の技術的範囲に属しない。 (2) 争点1-7(被告各製品は構成要件Hを充足するか)について〔控訴人の主張〕被告各製品では,ディスプレイのバックライトに圧力を感知する容量性センサーを組み込むことで,表示画面,すなわちタッチパネルへの接触操作において,力入力,すなわち圧力を伴うか否か,によって異なる処理を行えるようになっており,これにより操作入力の多様性を高めているといえる。 また,被告各製品はスマートフォンであるから,情報処理装置に当たる。 したがって,被告各製品は構成要件Hを充足する。 〔被控訴人の主張〕争う。 (3) 争点2-2(乙8文献に基づく新規性欠如)について〔控訴人の主張〕ア構成要件A及びHについて乙8文献記載の発明では,ユーザが検知器32 被控訴人の主張〕争う。 (3) 争点2-2(乙8文献に基づく新規性欠如)について〔控訴人の主張〕ア構成要件A及びHについて乙8文献記載の発明では,ユーザが検知器32に触れた操作を検知できるにとどまり,接触操作において力入力を伴うか否かを区別できるようになっていない。 なお,乙8文献の段落【0053】の「検知器32は,感圧方式, 電磁誘導方式, 静電容量方式等のセンサ」との記載は,様々な方式が存在するタッチセンサーの一つとして,感圧方式のものも利用可能であること,すなわち,感圧方式のタッチセンサーにより,接触の有無(及び接触の位置) を検知することができると述べているにすぎず,単なる接触操作と区別して力入力を検知できることを意味しない。 したがって,乙8文献には,「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた」(構成要件H)ことも,「オブジェクトの力入力を,直接的または間接的に検出する」(構成要件A)ことも開示されていない。 イ構成要件D及びEについて構成要件D及びEは,「力入力」を伴うことが検出された場合の動作を特定するものである。しかし,上記アのとおり,乙8文献記載の発明は,力入力を伴うか否かを検出できるようになっていない。 したがって,乙8文献には,「前記力入力検出手段により検出された前記力入力に応じて,当該表示対象以外の表示態様を変更すること」(構成要件D)も,「当該表示対象を相対的に変更させ」(構成要件E)ることも開示されていない。 ウ構成要件Fについて本件明細書の段落【0035】及び【0062】の記載によれば,構成要件Fの「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として記憶部に記憶」とは,ア ていない。 ウ構成要件Fについて本件明細書の段落【0035】及び【0062】の記載によれば,構成要件Fの「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として記憶部に記憶」とは,アイコンA等の表示対象が置かれているフォルダがXであるかYであるか等の変更結果を,そのアイコンA等に対する情報として記憶することを意味する。 これに対し,乙8文献記載の発明において,記憶されているのは単に経路図全体が移動した結果にすぎない。また,乙8文献には,その結果が「自車位置マーク」に対する情報として記憶されていることを示す記載はない。 そもそも,乙8文献記載の発明では,「自車位置マーク」は1つしかないから,変更結果を特定の表示対象に関連付けて記憶しておく必要がない。 したがって,乙8文献には,「当該変更結果を当該表示対象に対する入 力として記憶部に記憶させる」(構成要件F)ことは開示されていない。 〔被控訴人の主張〕争う。 (4) 争点2-4(乙10文献に基づく新規性欠如)について〔被控訴人の主張〕ア仮に,被告各製品が構成要件Fを充足し,本件発明の技術的範囲に属するとしても,乙10文献には,次のとおり,構成要件A~Hの全てが開示されているから,本件発明は新規性を欠く。 イ本件訂正審決が判断したとおり,乙10文献記載の発明と本件発明とは,次の点で一致する。 「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置であって(構成要件H),表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を,直接的または間接的に検出する力入力検出手段と(構成要件A),前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手 H),表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を,直接的または間接的に検出する力入力検出手段と(構成要件A),前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段と(構成要件B),前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ(構成要件C),前記力入力検出手段にて検出された前記力入力に応じて,当該表示対象以外の表示態様を変更することにより(構成要件D),当該表示対象を相対的に変更させる(構成要件E)変更手段と,を備えたことを特徴とする情報処理装置(構成要件G)。」したがって,乙10文献には,構成要件A~E,G及びHが開示されている。 ウまた,被告各製品が構成要件Fを充足するといえる一方で,乙10文献に構成要件Fが開示されていないといえる理由は存しない。換言すると, 仮に,被告各製品が構成要件Fを充足すると仮定すると,乙10文献にも構成要件Fが開示されているということになる。 エよって,仮に,被告各製品が構成要件Fを充足すると仮定すると,乙10文献には構成要件A~Hの全てが開示されているといえる。 〔控訴人の主張〕ア構成要件Fについて乙10文献の段落【0083】及び【0104】の記載並びに【図6】に開示されている乙10発明は,ディスプレイ33と【図2】記載のリモコン50を一体化することにより,ディスプレイ33を押すことで,リモコン50に設けられたキースイッチ52を操作可能としたものである。 そして,乙10発明において,記憶する必要がある情報は,スクロール後に表示されている地図の情報そのものであり,それを表示シンボル60に対する情報として記憶することは記載されていないし,その必要性もない。なぜなら,地図のスクロール方向を指示 ある情報は,スクロール後に表示されている地図の情報そのものであり,それを表示シンボル60に対する情報として記憶することは記載されていないし,その必要性もない。なぜなら,地図のスクロール方向を指示するための手段,すなわちリモコンの操作ボタンと同様の役割を担うにすぎない表示シンボル60に関する情報として,変更後の地図の表示内容がどうなっているかということは,ナビゲーション装置にとって何ら必要のない情報だからである。 本件訂正審決も,上記と同様の判断をしている。 したがって,乙10文献に構成要件Fは開示されていない。 イ構成要件Hについて乙10文献の段落【0083】及び【0104】の記載によれば,乙10発明では,いずれかの表示シンボル60の上でディスプレイ33を押した場合に初めて,地図のスクロール処理が行われる。これに対し,ディスプレイ33上に表示されている9つの矢印の表示シンボル60のいずれかに接触操作をしただけでは,地図のスクロールはもちろん,その他の処理も何ら行われない。換言すると,ドラッグアンドドロップ,フリック,ス ライド等の接触操作により,地図のスクロール処理と異なる処理を行うことは,乙10文献には開示も示唆もされていない。 以上によれば,乙10文献には,力入力をすることにより地図のスクロール処理を行うことだけが開示されており,「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行う」ことは開示されていない。 したがって,乙10文献に構成要件Hは開示されていない。 第3 当裁判所の判断 1 裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。なお,事案に鑑み,争点1-6から判断する。 2 被告各製品は構成要件Fを充足するか(争点1-6)について(1) 本件明細書には 裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。なお,事案に鑑み,争点1-6から判断する。 2 被告各製品は構成要件Fを充足するか(争点1-6)について(1) 本件明細書には次の記載がある(甲1,25。図8~10は別紙本件明細書図面参照。)。 ア技術分野及び背景技術【0001】本発明は,入力制御方法,コンピュータ,および,プログラムに関する。 【0002】近年,スマートフォンや,リトグラフ(石板)状のコンピュータや,タブレット端末などのハンドヘルドデバイス等の様々な形態のコンピュータが開発されている。これらのハンドヘルドデバイスでは,従来型の携帯電話やノートパソコン等に備えられていた操作ボタンやマウスやキーボード等の入力手段の代わりに,タッチパネルを備えていることが多い。 イ発明が解決しようとする課題【0005】しかしながら,従来のハンドヘルドデバイスでは,マウスやキーボードや操作ボタン等の入力手段を省略した代わりに,タッチパネル等の入力手段を用いて入力操作を補っていたが,タッチパネル等による入 力方式では入力操作の多様性に限界があった。 【0006】本発明は,上記に鑑みてなされたもので,コンピュータにおける操作入力の多様性を高めることができる,入力制御方法,コンピュータ,および,プログラムを提供することを目的とする。 ウ課題を解決するための手段【0008】…本発明の情報処理装置(コンピュータ)は,表示画面に接触したオブジェクトの摩擦力による入力を,直接的または間接的に検出する摩擦入力検出手段と,前記摩擦入力検出手段により検出された前記摩擦力による入力に応じて,対象データを変更または出力態様を変更する変更手段と,を備えたことを特徴とする。 エ発明の効果【0 摩擦入力検出手段と,前記摩擦入力検出手段により検出された前記摩擦力による入力に応じて,対象データを変更または出力態様を変更する変更手段と,を備えたことを特徴とする。 エ発明の効果【0011】この発明によれば,従来のコンピュータにおいて,操作入力の多様性を高めることができる,入力制御方法,情報処理装置,および,プログラムを提供することができる。 オ図面の簡単な説明【0012】【図8】表示態様変更部102bによる表示領域の遷移処理を説明するための,操作と画面遷移の一例を示す図である。 【図9】図9は,表示領域の遷移処理によって,表示領域がWINDOW1からWINDOW2へ移行する途中の段階の表示画面例を示す図である。 【図10】図10は,表示領域の遷移処理の終了段階の表示画面例を示す図である。 【図14】図14は,摩擦力方向の遷移によって,文字を入力する例を示した図である。 カ発明を実施するための形態【0021】…本実施の形態にかかるコンピュータは,表示手段と,当該 表示手段に対する位置入力手段を備える。利用者は,位置入力手段を介して,表示手段の表示画面上の位置を指定することができる。表示画面上の位置指定によって,利用者は,表示手段に表示される表示要素を指定することができる。なお,表示画面に表示される表示要素は,一つに限らず,アイコン等の表示対象や背景等からなる複数の要素を含む。…【0028】比較的大きな表示画面とマウスを備えたコンピュータでは,表示画面の中に複数のウィンドウを表示させておけるため,ドラッグアンドドロップ時に,表示領域を遷移させる必要がない。しかしながら,比較的小さな表示画面とタッチパネルを備えたコンピュータでは,複数のウィンドウを並列的に表示させておけるほどの表示 るため,ドラッグアンドドロップ時に,表示領域を遷移させる必要がない。しかしながら,比較的小さな表示画面とタッチパネルを備えたコンピュータでは,複数のウィンドウを並列的に表示させておけるほどの表示領域がないため,タッチパネルのスライド操作によって,ドラッグアンドドロップ操作を行うのは難しい。そこで,ドラッグアンドドロップ操作時に,表示領域を遷移させて,表示中のウィンドウから非表示のウィンドウに切り替えて,前者のウィンドウ中の表示対象を後者のウィンドウにドロップすることが考えられる。 しかしながら,その場合にも表示領域を遷移させるためのボタン(例えば,ウィンドウ切り替えスイッチ)が必要になり,利用者は,表示対象を指定する操作とともに当該ボタンを押下しなければならず操作が複雑になるという問題点がある。 【0029】本願発明者は,この問題点に鑑み,画面の遷移やウィンドウの切り替えといった入力操作と,アイコンや文字列等の表示対象の移動させる入力操作を,一つに統合する必要があると考えた。そして,鋭意検討の結果,本願発明者は,接触等における位置入力操作において,位置入力と同時に力入力を行えるよう構成すれば,両者を統合することができることを発見した。すなわち,本願発明によれば,利用者は,位置を指定する際に,入力する力を自由に調整することが可能であるので,一つの入力操作において,力と位置(座標)との2つの入力を行うことができる。例え ば,一方では,力入力によって,画面遷移やウィンドウの切り替えといった操作を行いながら,他方では,位置入力によって,表示対象の移動といった操作を,同時に行うことができる。 【0032】…本実施の形態にかかるコンピュータの一例である情報処理装置100の構成について説明する。…【0033】…情報処理装置100は 示対象の移動といった操作を,同時に行うことができる。 【0032】…本実施の形態にかかるコンピュータの一例である情報処理装置100の構成について説明する。…【0033】…情報処理装置100は,概略的に,情報処理装置100の全体を統括的に制御するCPU等の制御部102,通信回線等に接続されるルータ等の通信装置(図示せず)に接続される通信制御インターフェース部104,検出装置112やタッチパネル114等に接続される入出力制御インターフェース部108,および,各種のデータベースやテーブルなどを格納する記憶部106を備えて構成されており,これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。 【0034】記憶部106に格納される各種のデータベースやテーブル(要素ファイル106a等)は,固定ディスク装置等のストレージ手段であり,各種処理に用いる各種のプログラムやテーブルやファイルやデータベースやウェブページ等を格納する。 【0035】これら記憶部106の各構成要素のうち,要素ファイル106aは,表示画面の表示要素として表示可能なデータを記憶する要素データ記憶手段である。例えば,要素ファイル106aは,アイコンや文字,記号,図形,立体表示対象などの表示対象となるデータを記憶してもよい。 また,要素ファイル106aは,背景となるデータを記憶してもよい。なお,本実施の形態において,背景は,表示対象と比較して下層のレイヤーとして位置づけられる。すなわち,表示対象は,背景上に重畳表示される。 なお,本実施の形態において,表示要素は,複数のウィンドウのうちの一つを構成してもよい。背景は,例えば,デスクトップの背景であってもよく,ウィンドウの背景を規定してもよい。なお,これら表示要素となるデ ータのデータ形式は,画像データや,文字データ等 ちの一つを構成してもよい。背景は,例えば,デスクトップの背景であってもよく,ウィンドウの背景を規定してもよい。なお,これら表示要素となるデ ータのデータ形式は,画像データや,文字データ等に限られず,任意のデータ形式であってもよい。また,後述する制御部102の処理により,移動,回転,拡大・縮小された結果は,要素ファイル106aに反映されてもよい。例えば,要素ファイル106aのフォルダXに格納されていた表示対象Aが,表示制御によってフォルダYに移動された場合,要素ファイル106aは,制御部102の制御により,表示対象AのデータをフォルダXからフォルダYに移動させて保存する。 【0042】…制御部102は,OS(Operating System)等の制御プログラム,各種の処理手順等を規定したプログラム,および所要データを格納するための内部メモリを有し,これらのプログラム等により,種々の処理を実行するための情報処理を行う。制御部102は,機能概念的に,表示制御部102a,表示態様変更部102b,位置判定部102c,および,力判定部102dを備えて構成されている。 【0043】このうち,表示制御部102aは,要素ファイル102a(判決注:「106a」の誤記と考えられる。)に記憶された要素データに基づいて,タッチパネル114に,複数の表示要素からなる表示画面が表示されるよう制御する表示制御手段である。ここで,表示制御部102aは,…表示態様変更部102bを備えて構成されている。…【0044】また,表示態様変更部102bは,検出された摩擦力等による入力に応じて,対象データを変更または出力態様を変更する変更手段の具体的一形態である。例えば,表示態様変更部102bは,位置判定部102cにより連続的な位置入力が判定された場合と,力判定 力等による入力に応じて,対象データを変更または出力態様を変更する変更手段の具体的一形態である。例えば,表示態様変更部102bは,位置判定部102cにより連続的な位置入力が判定された場合と,力判定部102dにより所定の力が検出された場合との間で,対応する表示要素の変化態様を異ならせるように制御する表示態様変更手段である。本実施の形態において,表示態様変更部102bは,力判定部102dにより所定の力が判定された場合に,位置判定部102cにより判定された入力位置に対応する 表示要素以外の表示要素が,移動(スクロールや,画面遷移等),回転,あるいは,拡大・縮小されるように制御する。より具体的には,表示態様変更部102bは,力判定部102dにより所定方向の力が判定された場合に,位置判定部102cにより判定された入力位置に対応する表示要素以外の表示要素を,その方向(方位性)に対応するように移動,回転,あるいは,拡大・縮小させる。なお,表示態様変更部102bは,位置判定部102cにより判定された入力位置に対応する表示要素については,連続的に入力される位置に保持する。例えば,位置入力開始から位置入力終了まで位置が移動した場合には,表示態様変更部102bは,その指示位置に沿って表示要素を移動させる。一方,位置入力開始から位置入力終了まで位置が同じ位置の場合は,表示態様変更部102bは,その指示位置どおり表示要素を同じ位置に保つ。…【0045】ここで,一例として,表示態様の変更が「移動」の場合には,表示態様変更部102bは,入力位置に対応する表示要素以外の表示要素を,力判定部102dにより右方向の力が判定された場合に右方向に移動させ,左方向の力が判定された場合に左方向に移動させ,上方向の力が判定された場合に上方向に移動させ,下方向の力が 要素以外の表示要素を,力判定部102dにより右方向の力が判定された場合に右方向に移動させ,左方向の力が判定された場合に左方向に移動させ,上方向の力が判定された場合に上方向に移動させ,下方向の力が判定された場合に下方向に移動させてもよい。なお,利用者にとって入力位置にかかる表示要素(例えば,タッチパネル114への接触点の表示要素)が,その他の表示要素に対して相対的に意図した方向に沿って動いているように見えるように,上記とは逆方向に移動制御してもよい。すなわち,表示態様変更部102bは,入力位置に対応する表示要素以外の表示要素を,力判定部102dにより右方向の力が判定された場合に左方向に移動させ,左方向の力が判定された場合に右方向に移動させ,上方向の力が判定された場合に下方向に移動させ,下方向の力が判定された場合に上方向に移動させてもよい。 なお,上記においては,方向は,上下左右の4方向としたが,これに限ら れず,例えば,検出装置112による表示平面方向の360度の全方向の検出に従って,その方向に合わせた表示要素の移動制御を行ってもよい。 …【0057】…次に,このように構成された本実施の形態における情報処理装置100の表示情報処理の一例について,…詳細に説明する。…【0058】なお,以下の処理を始めるにあたって,タッチパネル114には,表示制御部102aの制御により,何らかの表示要素が表示されていることを前提とする。…情報処理装置100は,矩形で示す領域の表示画面を有するタッチパネル114を備えている。…この例では,表示制御部102aは,表示画面上に,矩形の対角線で示す領域の背景「WINDOW1」という表示要素とともに,当該背景上の位置に対応付けて,表示要素「A」,表示要素「B」,および表示要素「C」を重畳表示させてい 02aは,表示画面上に,矩形の対角線で示す領域の背景「WINDOW1」という表示要素とともに,当該背景上の位置に対応付けて,表示要素「A」,表示要素「B」,および表示要素「C」を重畳表示させている。一例として,表示要素「A」,「B」,および「C」は,文字や記号であってもよく,アイコンであってもよい。 【0059】…まず,位置判定部102cは,タッチパネル114に対する接触を検出する…。なお,位置判定部102cは,タッチパネル114への接触を検出しなかった場合…,接触が検出されるまで当該処理を繰り返し実行する。 【0060】位置判定部102cによりタッチパネル114に対する接触が検出された場合…,力判定部102dは,タッチパネル114に対して力Fが入力されたか否かを判定する…。ここで,本実施形態の表示情報処理において,力Fとは,接触による摩擦によって利用者により入力された所定の閾値以上の力を意味する。このことは,力判定部102dが直接,力の量自体を計測することを意味しない。すなわち,…タッチパネル114が筐体に対して非連続的に移動するようメカニカルに構成されている場合,力判定部102dは,タッチパネル114の筐体に対する位置を読み 取ることによって,位置が移動した場合に,当該構成が規定する所定の力F入力があったと擬制してもよい。 【0061】力判定部102dによりタッチパネル114に対する力Fが入力されたと判定された場合…,表示制御部102aの表示態様変更部102bは,タッチパネル114に表示中の表示領域を遷移させる処理を行う…。なお,表示体表変更部(判決注:「表示態様変更部」の誤記と考えられる。)102bは,位置判定部102cにより検出された接触位置に対応する表示要素がある場合は,この表示領域の遷移処理の間,位置判定 。なお,表示体表変更部(判決注:「表示態様変更部」の誤記と考えられる。)102bは,位置判定部102cにより検出された接触位置に対応する表示要素がある場合は,この表示領域の遷移処理の間,位置判定部102cにより検出され更新される接触位置に,当該表示要素を保持し続ける。ここで,図8~図10は,表示態様変更部102bによる表示領域の遷移処理を説明するための,操作と画面遷移の一例を時系列で示す一連の図である。 【0062】図8に示すように,利用者が表示要素「B」上の接触位置で左方向に力Fを加えた場合,表示態様変更部102bは,表示領域の遷移処理を開始する。図9は,表示領域の遷移処理によって,表示領域がWINDOW1からWINDOW2へ移行する途中の段階の表示画面例を示す図である。図9に示すように,表示態様変更部102bは,力Fが検出された時点で表示制御部102aにより表示中であった表示領域(背景の表示要素「WINDOW1」ならびに表示要素「A」,「B」,「C」)を表示画面に対して相対的に移動させ,この移動と連動して別の表示要素「WINDOW2」を表示させる。このとき,図9に示すように,表示態様変更部102bは,力Fが検出された時点での接触位置に対応する表示要素「B」については,表示領域の遷移処理の期間中,位置判定部102dにより更新判定される接触位置に保持しつづける。ここで,図10は,表示領域の遷移処理の終了段階の表示画面例を示す図である。 【0063】図10に示すように,WINDOW1からWINDOW2へ の移行が完了する段階では,表示態様変更部102bは,移行後の背景の表示要素「WINDOW2」を表示するとともに,位置判定部102cにより更新判定される接触位置下に表示要素「B」を重畳表示させる。…【0064】…力判定部 表示態様変更部102bは,移行後の背景の表示要素「WINDOW2」を表示するとともに,位置判定部102cにより更新判定される接触位置下に表示要素「B」を重畳表示させる。…【0064】…力判定部102dは,力Fの入力が持続している場合は…,上述の表示領域の遷移処理を継続して行い,力Fの入力が終了したと判定すると…,表示領域の遷移処理を終了…する。 【0066】…以上の表示情報処理を行うことによって,利用者からみれば,複数のウィンドウ間において,表示要素をドラッグアンドドロップ類似の操作を行わせることができる。 (2) 構成要件Fの意義についてアまず,構成要件Fの「入力」との文言の意味について検討する。 (ア) 本件明細書には,構成要件Fの「入力」の意味を直接定義していると認めるに足りる記載は見当たらない。 他方で,本件明細書には,複数の箇所で「入力」との文言が使用されているところ,例えば,段落【0008】の「摩擦力による入力を,直接的または間接的に検出する」のように「物理的な力を加えること」との意味や,段落【0012】の「図14は,…文字を入力する例を示した図である。」のように「コンピュータに情報を与えること」との意味など,同一の文言であるにもかかわらず文脈によって異なる意味で使用されている。 なお,本件訂正審決は,本件明細書の段落【0035】及び【0062】の記載に基づいて,本件発明の「『当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの(判決注:原文のまま)記憶部に記憶させる』とは,(背景の変更などの)変更結果を,(フォルダYに保存することなどの)表示対象に対する情報として記憶することを意味しているといえる。」と判断しているが,これは構成要件Fの「入力」 は「コンピュータに情報 などの)変更結果を,(フォルダYに保存することなどの)表示対象に対する情報として記憶することを意味しているといえる。」と判断しているが,これは構成要件Fの「入力」 は「コンピュータに情報を与えること」を意味すると解したものといえる。 (イ) この点について,控訴人は,構成要件Fの「入力」は,「力入力検出手段」により検出された当該表示対象に対する「力入力」,すなわち「物理的な力を加えること」を意味すると主張する。 しかし,この解釈は,構成要件H,A及びDでは,「物理的な力を加えること」として「力入力」との文言が明示的に使用されているにもかかわらず,構成要件Fでは敢えて「入力」のように異なる文言が使用されていることと整合しない。 また,構成要件Fの「入力」は,「当該変更結果」,すなわち,「保持された表示対象以外の表示態様を変更することにより,当該表示対象を相対的に変更させた結果」を目的語としていると解し得るところ,この場合に「入力」を「物理的な力を加えること」と解釈することは不自然である。さらに,「として」は,前に置かれた語を受けて,その状態,資格,立場等であることを表す語であるところ,「入力」を「物理的な力を加えること」と解すると,「入力として…記憶させる」との文言が意味するところを理解できないというべきである。 (ウ) 控訴人は,本件訂正審決が「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として…記憶部に記憶させる」とは,「(背景の変更などの)変更結果を,(フォルダYに保存することなどの)表示対象に対する情報として記憶することを意味している」と判断したことを指摘して,当該判断は控訴人の上記主張と整合するとも主張する。 しかし,「物理的な力を加えること」と「コンピュータに情報を与えること」とは別個の概念であるから, ことを意味している」と判断したことを指摘して,当該判断は控訴人の上記主張と整合するとも主張する。 しかし,「物理的な力を加えること」と「コンピュータに情報を与えること」とは別個の概念であるから,構成要件Fの「入力」を「物理的な力を加えること」と解した上で,本件訂正審決の判断のように「コンピュータに情報を与えること」との意味をも有すると直ちに理解するこ とは困難である(物理的な力が加わったことをコンピュータに検出させる場合には,両者の意味が重なっているともいい得るが,本件においては,上記説示のとおり,少なくとも「物理的な力を加えること」と解することは不自然であるから,両者の意味が重なっている場合と断ずることもできない。)。 (エ) 以上によれば,控訴人の主張によっては,構成要件Fの「入力」の意味を一義的に理解することは困難であるというほかない。 イ仮に,構成要件Fの「入力」を,本件訂正審決が判断したように,「コンピュータに情報を与えること」と解したとしても,次のとおり,構成要件Fの意義は依然として不明確であるというべきである。 (ア) 構成要件Fの「当該表示対象」は,構成要件Cの「前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象」をいうと解される。 本件明細書には,この「表示対象」の意味についても,直接定義していると認めるに足りる記載は見当たらないものの,発明の詳細な説明の記載に照らせば,アイコン等(【0021】),アイコンや文字列等(【0029】),アイコンや文字,記号,図形,立体表示対象など(【0035】)がこれに当たるものと解される。 しかし,表示画面にアイコン等を表示させ,利用者が当該表示画面に接触した位置を検出し,当該接触位置に応じて処理を行う入出力装置においては,表示画面に表示するアイコ )がこれに当たるものと解される。 しかし,表示画面にアイコン等を表示させ,利用者が当該表示画面に接触した位置を検出し,当該接触位置に応じて処理を行う入出力装置においては,表示画面に表示するアイコン等のデータそのもの(例えば,スマートフォンの画面に表示されているカメラ様の画像データ)と,当該アイコン等と紐づけされた実体(例えば,カメラアプリケーション)とは,別個のものとされていることが多いと解されるところ,本件明細書の記載を精査しても,本件発明における「表示対象」が具体的にどのようなものであるのかは明らかといえない。 (イ) また,上記ア(イ)のとおり,構成要件Fの「当該変更結果」は,「保 持された表示対象以外の表示態様を変更することにより,当該表示対象を相対的に変更させた結果」と解し得るところ,「相対的に変更させた結果」についても,背景として設定されている画像が移動したピクセル数や,保持された表示対象と重なることとなったアイコン等の有無及びその種類など,さまざまなものがあり得る。 そして,構成要件Fによれば,この「相対的に変更させた結果」は,「当該表示対象」に対する情報として与えるものであるが,ある対象に与え得る情報は,当該対象がアプリケーションかデータかや,その実装方法によっても大きく異なるものと解される。 そうすると,上記(ア)のとおり,「当該表示対象」が具体的に意味するところが明らかでない上に,「相対的に変更させた結果」の意味内容も特定されていないことを考え合わせると,「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として記憶部に記憶させる」の意義も明らかでないというべきである。 (ウ) この点に関し,本件訂正審決は,本件明細書の段落【0035】及び【0062】の記載に基づいて, 示対象に対する入力として記憶部に記憶させる」の意義も明らかでないというべきである。 (ウ) この点に関し,本件訂正審決は,本件明細書の段落【0035】及び【0062】の記載に基づいて,「当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの(判決注:原文のまま)記憶部に記憶させる」とは,「表示要素『B』のデータをフォルダXからフォルダYに移動させて保存することを意味している」と判断した。 しかし,本件訂正審決の説示においても,「表示要素『B』のデータ」がいかなるデータであるのかが具体的に特定されているとはいい難い。 また,本件明細書の段落【0035】記載の「フォルダX」及び「フォルダY」と段落【0062】記載の「WINDOW1」及び「WINDOW2」の関係も明らかでなく,いかなる情報が「相対的に変更させた結果」に該当し,「フォルダXからフォルダYに移動させ」ると理解することになるのかについても具体的な指摘がされているとはいえない。 ウ以上検討したところによれば,結局のところ,構成要件Fの意義は不明確というべきである。 そして,構成要件Fの意義が不明確である以上,被告各製品が構成要件Fを充足すると認めることはできない。 (3) 控訴人の主張について控訴人は,「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として記憶部に記憶させる」とは,当該変更結果が,表示要素「A」や「C」等に対する力入力の結果としてではなく,表示要素「B」に対する力入力の結果の情報として,記憶部に記憶させる,という意味であり,この解釈によれば,被告各製品は構成要件Fを充足すると主張する。 しかし,この控訴人の主張は,構成要件Fの「入力」を「力入力」と解することを前提とするものであるところ,この解釈が採用できないことは, の解釈によれば,被告各製品は構成要件Fを充足すると主張する。 しかし,この控訴人の主張は,構成要件Fの「入力」を「力入力」と解することを前提とするものであるところ,この解釈が採用できないことは,上記説示のとおりである。 (4) 小括以上によれば,被告各製品は,少なくとも構成要件Fを充足すると認めることができないから,その余の構成要件について検討するまでもなく,本件発明の技術的範囲に属するといえない。 第4 結論よって,その余の点について認定,判断するまでもなく,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は結論において相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 鶴岡稔彦 裁判官 高橋彩 裁判官 間明宏充 (別紙)被告製品目録 1 iPhone 6sという名称の付された携帯電話(スマートフォン)。 2 iPhone 6sPlusという名称の付された携帯電話(スマートフォン)。 3 iPhone 7という名称の付された携帯電話(スマートフォン)。 4 iPhone 7 Plusという名称の付された携帯電話(スマートフォン)。 iPhone 8という名称の付された携帯電話(スマートフォン)。 6 iPhone 8 Plusという名称の付された携帯電話(スマートフォン)。 7 iPhoneXという名称の付された携帯電話(スマートフォン)。 8 iPhoneXsという名称の付され iPhone 8 Plusという名称の付された携帯電話(スマートフォン)。 iPhoneXという名称の付された携帯電話(スマートフォン)。 iPhoneXsという名称の付された携帯電話(スマートフォン)。 iPhoneXsMaxという名称の付された携帯電話(スマートフォン)。 (別紙)本件明細書図面 【図8】 【図9】 【図10】
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