主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して金1472万2500円及びこれに対する平成11年10月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,玩具等を展示する資料館を経営していた原告が,資料館に隣接して設置されていた自動販売機(以下「本件自動販売機」という。)から出火した火災により,資料館の展示物等が焼失したと主張して,被告ら補助参加人(以下「補助参加人」という。)から本件自動販売機を購入した被告A株式会社及び同被告から本件自動販売機の貸与を受けてこれを原告に無償で貸与していた被告B株式会社に対し,民法415条(被告Bに対する関係のみ),709条,717条ないし製造物責任法3条に基づき,損害賠償を請求している事案である。 1 争いのない事実等(1) 当事者等ア原告は,広島県安芸郡a町b番地で玩具等を展示するC資料館を経営していた者である。原告は,資料館の建物を,資料館北西の隣家に在住しているDから賃借していた。 イ補助参加人は,本件自動販売機(型式FJ9320S,機番312001067)を製造した会社である。 ウ被告Aは,本件自動販売機を補助参加人から購入して所有していた会社である。 エ被告Bは,被告Aから無償で本件自動販売機の貸与を受けて,これを原告に無償で貸与し,資料館東側に設置させていた会社である。 (2) 本件自動販売機の配置資料館は,別紙配置図(掲載省略)のとおり,南側を正面として玄関があり,北東側の歩車道の区別のある道路(以下「前面道路」という。)に面した敷地内には,資料館に隣接して北側から本件自動販売機,わ 資料館は,別紙配置図(掲載省略)のとおり,南側を正面として玄関があり,北東側の歩車道の区別のある道路(以下「前面道路」という。)に面した敷地内には,資料館に隣接して北側から本件自動販売機,わら葺き小屋の展示物(以下「小屋」という。),看板用こけし(以下「こけし」という。)が前面道路に向けて設置されていた(甲12の3)。 (3) 本件火災の発生平成11年10月17日早朝,資料館北東側の前面道路沿いに設置された本件自動販売機付近から出火し,資料館のうち約80㎡を焼損する火災が発生した(甲12の1ないし4,以下「本件火災」という。)。 2 争点(1) 本件火災の原因は,本件自動販売機からの出火か。 (原告の主張)ア平成11年10月17日午前4時30分ころ,本件自動販売機から出火して隣接する資料館を焼毀し,館内に展示していた資料が焼損するとともに,消火時に浸水し無価値となった。 本件自動販売機は,内部が全焼しているが,外箱は表面の文字やデザイン等がほとんどそのまま残っている。自動販売機内部は,一般人が容易に接触することができない仕組みになっており,外扉は密閉され施錠されているのであるから,内部から発火しない限り外部から火が移って内部が完全に燃焼することはあり得ない。 また,広島大学の学生E及びFの2名が本件自動販売機から出火して同機が炎に包まれているのを発見し,近くの民家や消防署に連絡したこと,発火当時は早朝であり,資料館内外に火の気がなく,他に原因が考えられないことから,火元については,本件自動販売機であることは明らかである。E及びFは,全く偶然に本件自動販売機の出火を発見し,急きょ消火の対応をとったもので,本件自動販売機が炎に包まれ南隣の小屋に燃え移ろうとしているのを発見したときの 自動販売機であることは明らかである。E及びFは,全く偶然に本件自動販売機の出火を発見し,急きょ消火の対応をとったもので,本件自動販売機が炎に包まれ南隣の小屋に燃え移ろうとしているのを発見したときの印象が鮮明かつ深刻であったことは明らかであるし,法廷に出頭して詳細な目撃状況を供述していて,証拠価値が高い。 よって,本件自動販売機が火元であることは確実である。 イ(ア)私的鑑定の結果(甲8)によれば,本件自動販売機内部の電気配線の絶縁劣化による短絡で加熱ないし火花が生じて発火し,扉側面のパッキンが焼損して,その隙間から炎が外部に出て本件自動販売機全体が燃焼したことが本件火災の原因と考えられる。長年の間に,本件自動販売機の内部にゴミや蜘蛛の巣が発生して蓄積したものと思われる。 (イ)また,本件火災の消火活動にあたったG地区消防組合消防本部が作成した火災調査報告書及び火災原因判定書(甲12の1・2,以下「本件判定書」という。)は,消火の直後に火災現場で何らの作為や予断のない段階で行われた調査や事情聴取の結果をもとに作成されたもので,立会人に補助参加人の関連会社の従業員もおり,専門的に事故原因を調査していて,信用性が高い。 本件判定書によれば,本件自動販売機内のプリント基盤付近が火災の熱により著しく変色していることから,本件火災の原因は,本件自動販売機内部の中扉に設置されていたマスターボックス内のプリント基盤のトラッキングであると結論付けている。 まず,本件判定書は,内部構造の問題はさておき,客観的な外部事情から観察・認定された事実により,出火場所を本件自動販売機と判定している。この判定は,客観的な事情及び多年多種類の火災現場を観察した専門的経験に基づき判定されたもので,妥当なものというべきである。次に ら観察・認定された事実により,出火場所を本件自動販売機と判定している。この判定は,客観的な事情及び多年多種類の火災現場を観察した専門的経験に基づき判定されたもので,妥当なものというべきである。次に,本件自動販売機自体の焼損状況を検討し,外部より内部の焼損が強く,プリント基盤付近の焼損の程度が著しいとして,出火場所をプリント基盤付近と判定しており,トラッキングの発生の有無をおいても,内部的焼毀の状況から出火場所を認定したもので,客観的な判定であるというべきである。 (ウ)ここに至れば,被告らが本件自動販売機が出火原因であることを否定するためには,他に放火した者がいたことを主張・立証すべきであるが,それはなされていない。本件自動販売機は,前面道路に面して設置されており,出火推定時刻が午前4時30分ころであったことから,第三者が作為的になした行為を想定し得ないではないが,E及びFの目撃した状況からは,そのような気配はなく,むしろ,同人らは,本件自動販売機から出火し隣の小屋に燃え移ろうとするのを見ているのである。 仮に,何者かが本件自動販売機の商品取出口に物を差し入れて放火したとしても,その場合には取出口内に何らかの炭化物が認められるはずであるところ,炭化物や油臭等の付着は認められないし,第三者が本件自動販売機内の現金や商品を盗もうとしてバール等でこじた形跡も認められない。 よって,第三者による放火等の可能性もない。 ウ資料館の電気料金の推移を見ると,平成11年7月までは1か月あたり5000円ないし6000円であったが,同年8月,9月は1か月あたり約1万円,同年10月は1か月に約1万4000円になっている。他方,本件自動販売機の缶飲料の売上げは急騰しておらず,従前並みであった。 これは,本件自動販 たが,同年8月,9月は1か月あたり約1万円,同年10月は1か月に約1万4000円になっている。他方,本件自動販売機の缶飲料の売上げは急騰しておらず,従前並みであった。 これは,本件自動販売機内部に異常に電気を消費する欠陥が生じたためであると考えられ,本件火災もそれによって出火したと見られる。 エ本件火災の直前ころ,被告Bは,本件自動販売機を平成11年7月8日,同月10日及び同月13日の連続3回も修理を行っている。かかる経過からすれば,本件火災の原因が潜在していたことが強く推定される。 オ被告ら及び補助参加人は,多種多様の書証を提出し,本件自動販売機が内部発火する可能性がないと主張するが,それらはいずれも本件自動販売機に関する本件火災直前又は接近した時期の個別的資料ではなく,一般的抽象的なものにすぎない。 (被告Aの主張)ア本件判定書の事実誤認,理由不備本件判定書は,以下のとおり,著しい事実誤認及び理由不備ないし齟齬があり,信用するに値しない。また,発火の原因が本件自動販売機内にあると推定するにとどまっている。 (ア)本件自動販売機の左側面の焼損については,小屋のわらの炎による延焼と考えるのが合理的である。資料館に燃え移った炎も,本件自動販売機からでは下部から上部に向かっている焼損状況からして不自然である。 むしろ,小屋のわら葺き屋根と資料館の最短距離は1メートルを切っており,燃え落ちたわらが地面で燃焼し,これが風に煽られ資料館に燃え移ったと考えることは十分できる。よって焼けた方向に本件自動販売機があったことだけで,出火元を本件自動販売機とするのは事実誤認である。 また,本件判定書は,本件自動販売機を出火元としながら,左側の焼損は地金が露出するほどではないため 向に本件自動販売機があったことだけで,出火元を本件自動販売機とするのは事実誤認である。 また,本件判定書は,本件自動販売機を出火元としながら,左側の焼損は地金が露出するほどではないため,燃え落ちたわらが付近に落下したための塗料の焼損と考えるのが自然であると判断しており,かかる点からしても理由不備である。 (イ)本件自動販売機のプリント基盤は,それ自体及び環境において,トラッキングの発生をもたらす要因は存在しないし,プリント基盤における発火が延焼に至ることも考えられず,本件自動販売機のプリント基盤におけるトラッキング及び出火の可能性が客観的に認められないにもかかわらず,本件判定書は,トラッキングの原因となる電圧,絶縁物,湿度・結露及びじんあい・電解質の状況を,本件自動販売機において具体的に検討すらしていない。 また,本件自動販売機のプリント基盤について,トラッキング現象との関係で重要な要素である樹脂素材がガラスエポキシ樹脂であるのにフェノール樹脂と誤認し,これを前提とした上で,プリント基盤がトラッキングを起こし発火したとしか考えられないとの強引な判断を行っている。 (ウ)本件自動販売機は,テレビ・冷蔵庫などの家電製品とは構造的・電気的要因において同質性を有しないにもかかわらず,本件判定書は,かかる差異を認識せずに,本件自動販売機につき家電製品と同列にトラッキングの発生の危険性を論じるという誤りを犯している。 本件判定書が推定するようなプリント基盤のトラッキングによる発火という事故例は,補助参加人において今まで1件もなく,火災統計にもない。 (エ)以上のように,本件判定書は,対象となる本件自動販売機に関する基本的な事実誤認があるだけでなく,出火原因についても科学的な視点からの検討不足 おいて今まで1件もなく,火災統計にもない。 (エ)以上のように,本件判定書は,対象となる本件自動販売機に関する基本的な事実誤認があるだけでなく,出火原因についても科学的な視点からの検討不足が明らかである。 イ E及びFの目撃証言が信用できないこと(ア)本件自動販売機を含めた資料館の管理者で同地の状況に精通しているHは,近隣の住民であるIより「資料館が火事よ。」と言われ,自宅より資料館の方を見ると,小屋から火が出始めた様子で小屋の屋根の先が燃えているのを目撃したと証言する。また,Hは,1.2mほどしかない資料館建物と本件自動販売機の間を通ってこけしの南東側にある井戸まで行ったのであるが,小屋の屋根については炎が立ち上がるように燃えていたとしながら,本件自動販売機については熱いという感じはせず,炎や煙が出ていたか否かについては記憶にないと証言している。 これらHの目撃証言は,Hが本件自動販売機の裏を通過する時点において本件自動販売機が全く燃えていなかったことを示すものであり,これより後の消防車の到着時には本件自動販売機は炎に包まれていたのであるから,本件自動販売機は,小屋の出火後にその延焼で燃えたものというべきである。 (イ)E及びFは,本件自動販売機のみが最初に燃え,その後に隣の小屋に延焼したと証言し,Hの証言と著しく食い違うが,本件自動販売機から出火したと認められる客観的状況が存在しないこと,E及びFは本件自動販売機の燃焼をことさら誇張し,本件自動販売機が最初に燃えていたと強調しており,本件各証拠から明らかになる全体的状況からすれば極めて客観性を欠くことから,信用できないというべきである。 ウ電気料金資料館に隣接して設置されている自動販売機は,平成11年7月13日,それまで12 かになる全体的状況からすれば極めて客観性を欠くことから,信用できないというべきである。 ウ電気料金資料館に隣接して設置されている自動販売機は,平成11年7月13日,それまで12種の飲料しか扱えない自動販売機(以下「旧自動販売機」という。)であったのを20種扱える本件自動販売機に変更したのであるから,資料館の電気料金の推移は,この変更に伴うものであり,何ら異常な上昇とはいえない。 また,原告の主張する電気料金は,資料館で使用される電気料金と一括して請求されたものであるから,本件自動販売機がそのうちいかなる割合の電気を使用したのかについては判別ができない。 エ本件自動販売機の修理履歴(ア)資料館東側に設置されていた旧自動販売機は,平成11年7月に入り立て続けに調子が悪くなり,同月3日には商品が出ず,同月10日には商品がたくさん出るとのことで修理を要した。 原告は,本件自動販売機につき連続3回修理が行われたと主張し,同月8日に本件自動販売機を修理したとするが,資料館の日誌(甲16の2)では同日欄に「自販故障」とあるだけであり,実際には同月10日に旧自動販売機の修理がされたのである。 (イ)修理直後,原告より,旧自動販売機は調子が悪くなっていること,12種類の缶飲料しか入らない機種であること,機種が古く見栄えが悪いことを理由に,より多種類の缶飲料が入る自動販売機に交換したい旨の要請を受けた。そこで,被告Aは,同月13日に本件自動販売機に取り替え,旧自動販売機を同月21日に処分した(乙13,14)。よって,原告主張の同月13日の修理は,日誌に「自動販売機取替」と記載されていること(甲16の4)から明らかなように,単に旧自動販売機から本件自動販売機への取替え作業が行われたにすぎない。 14)。よって,原告主張の同月13日の修理は,日誌に「自動販売機取替」と記載されていること(甲16の4)から明らかなように,単に旧自動販売機から本件自動販売機への取替え作業が行われたにすぎない。 (ウ)同年9月10日,本件自動販売機は,盗難・いたずらにより背面下部の網が取り除かれたので,網を取り付ける修理を行った(乙5,6)。よって,同日の修理も,外部者のいたずらによる付属品取外しに対応したものにすぎず,修理履歴(乙5)から明らかなように,本件自動販売機につき電気関係での故障は一切ない。 また,本件火災直前においても,本件自動販売機は,何ら不具合や異常が認められなかったのであり,この点からも本件自動販売機が内部発火したとは考えにくい。 オその他本件火災の約1か月前の平成11年9月10日に,本件自動販売機背面下部の網カバーをいたずらで取り外されたことがあったことからも,本件火災の原因が放火である可能性を否定できない。 また,本件判定書によっても,配線の絶縁劣化等による短絡が本件火災の原因でないのは明らかであり,私的鑑定の結果(甲8)は採用できない。 (被告Bの主張)ア本件自動販売機は,鋼板で覆われた物であり,その表面が発火物となることはない。本件自動販売機を火元として延焼が生じるには,前面電照板(プラスチックカバー)が溶解により火玉化して落下し火種となることしか考えられないが,本件自動販売機は北東を向いており,南隣の小屋へ延焼することは考えられない。 また,本件自動販売機中扉裏面への酸素供給口が下方の商品取出口しかなく,燃焼後の気体が排出される場所がないことから,容易に中扉裏面で大炎が生じるとは考えがたい。 むしろ,本件自動販売機外箱の左側面(南側)が著しく 裏面への酸素供給口が下方の商品取出口しかなく,燃焼後の気体が排出される場所がないことから,容易に中扉裏面で大炎が生じるとは考えがたい。 むしろ,本件自動販売機外箱の左側面(南側)が著しく焼損しているが,右側面の焼損はそれほど顕著でないことを考えれば,小屋あるいはその付近を火元とし(たばこの投捨て等が仮定できる。),そこから本件自動販売機や資料館に延焼していったと考えるのが自然である。 イ(ア)本件火災の原因を本件自動販売機内のプリント基盤がトラッキングを起こしたためと推定した本件判定書の判断は,科学的に見て全く信用するに足りないものであり,本件自動販売機内のプリント基盤でトラッキングが起こる可能性は科学的に認められず,その他電気系統の短絡も認められないのであって,本件自動販売機から出火したと認めることができないことは,被告Aの主張のとおりである。 (イ)このことは,Hの証言とも一致する。 Hは,本件火災の発生を知らされた直後に資料館の方を見たところ,小屋の屋根が燃えているのを認めたが,本件自動販売機が燃えていたかは憶えていないとし,すぐさま本件自動販売機の裏を通って水道のところに行った際にも,小屋の屋根が燃えているのは憶えているが,本件自動販売機が燃えていたかは憶えていないと証言する。 Hは,小屋の屋根まで視界に入れていたにもかかわらず,本件自動販売機が燃えていたかを憶えていないということからすると,この時点で本件自動販売機が燃えていなかったことは明らかである。 (ウ)これに対し,E及びFは,小屋に火が移る時点で既に本件自動販売機全体が燃えていたと証言し,Hの証言と大きく異なるが,Hの証言の方がより状況に合致し,信用性が高いというべきである。 (補助参加人の主張)ア本 ,小屋に火が移る時点で既に本件自動販売機全体が燃えていたと証言し,Hの証言と大きく異なるが,Hの証言の方がより状況に合致し,信用性が高いというべきである。 (補助参加人の主張)ア本件判定書及び目撃証言の信用性(ア)本件判定書は,本件自動販売機のプリント基盤における電圧を考慮せず,水分,電解質等のトラッキングの発生条件についても一切注意を払わず,プリント基盤の材質に関しても,非常にトラッキングが起こりにくく燃焼しにくいガラスエポキシ樹脂が使用されているにもかかわらず,フェノール樹脂が使用されているとの誤った前提の下で,出火原因につき,本件自動販売機のマスターボックス内のプリント基盤がトラッキングを起こし発火したとしか考えられないと断定している。しかし,本件判定書は,トラッキングの意味を正しく理解しておらず,本件自動販売機に関する客観的状況に基づいてトラッキング発生の可能性,トラッキング発生のために必要な諸条件の存否を具体的に検証することのないまま,全く非科学的な推論のみで,誤った結論に到達しているといえる。 他にも,本件判定書は,白く変色していることをもって高温で燃焼した痕跡であるとし,その痕跡とプリント基盤の位置が一致することによりプリント基盤からの発火を推認しているが,実際には,その白い変色の箇所にプリント基盤は位置しておらず,誤った判断であることが明らかである。 (イ)すなわち,本件判定書は,①中扉裏面右端の電気配線付近が白色に,同部分に対応する中扉断熱材表部が楕円にナスビ色に変色しており,これは,ごく狭い範囲で高温になった証拠で,この部分に湾曲し炭化した基盤があること,②焼損した配線上部のアルミニウムが融解しており,融点が660℃のアルミニウムの融解が著しく,高温の火源が付近にあったこと ごく狭い範囲で高温になった証拠で,この部分に湾曲し炭化した基盤があること,②焼損した配線上部のアルミニウムが融解しており,融点が660℃のアルミニウムの融解が著しく,高温の火源が付近にあったことが考察され外部の熱によるものとは考えられないこと,③プリント基盤はアークや火花の高温にさらされると表面にトラッキング現象を生じ火災に発展する危険があること,④プリント基盤の焼損が特に著しいことを挙げ,プリント基盤のトラッキング現象が出火原因とする。 しかし,①④一般的に白く変色した部分が一番高温であった部分であるが,本件自動販売機内部で最も白くなっている部分は,何も部品のついていない箇所である。また,②アルミニウム製と認定したギヤードモーターは,融点が520℃のアルミダイキャスト製である。しかも,2つのモーターのうち上段のものは全く融解していない。他方,商品取出口付近の孔の横にあるアルミ製名板の融解変形があり,ここのほうが高温であったと認められる。③プリント基盤の材質は,本件判定書記載のフェノール樹脂の積み重ねではなく,格段に耐トラッキング性の高いガラスエポキシ材で,難燃性の物質である。そして,基盤はABS樹脂製のボックス内に格納されており,トラッキングの原因の埃,湿気等が付着することは到底考えられない。 また,トラッキングによるグラファイト化が進んでいれば,プリント基盤の制御する自動販売機の動作に機能障害が生じ,電気的異常が表われるはずであるが,本件自動販売機には本件火災前に異常が認められなかった。 (ウ)本件判定書が極めて安易にトラッキングが原因と推定した背景には,家電製品等に関してトラッキングを原因とする火災の発生事案が存在するという認識があるものと思われる。 しかし,家電製品等に関するトラッキン めて安易にトラッキングが原因と推定した背景には,家電製品等に関してトラッキングを原因とする火災の発生事案が存在するという認識があるものと思われる。 しかし,家電製品等に関するトラッキングの発生可能性を,そのまま本件自動販売機に当てはめることは,根本的に間違っている。 家電製品においては,機器自体の特性から非常な高電圧が使用され,存置される環境のゆえに湿度・結露を回避できず,必ずしも対トラッキング性の良好ではない絶縁物が使用され,構造上密閉性を欠くことからじんあい等の付着が著しいなど,トラッキング発生の条件が全てそろっており,高電圧による静電気がホコリを一層吸収し,その結果溜まった綿ボコリがトラッキング及びグラファイト化による発火の直接的な燃焼物になるという面すら存する。 これに対し,缶飲料の自動販売機は,電圧も低く,湿度・結露,じんあい等の付着の面でも劣悪な環境にはなく,絶縁物も対トラッキング性の良好なものが使用されている。なかでも,本件自動販売機内でプリント基盤が存するマスターボックス及び冷温表示切替えボックス内に関しては,トラッキングと発火の客観的要因が決定的に存在せず,家電製品と同一に論ずる余地は全くない。 (エ)結局,本件判定書の記載内容は全く信用できず,本件火災の原因を認定する際の判断材料としての価値をおよそ有しない。しかも,本件判定書の作成経緯も,通常の場合と異なり,製造者である補助参加人に対する確認や協議等の手続を経由しなかったことから,火災の専門家である消防士が作成したものといっても,証拠としての価値は低い。 補助参加人の確認している過去の自動販売機の火災事例でも,本件判定書が結論づけるようなプリント基盤のトラッキングによる発火事例は1件もない。 (オ)また, 拠としての価値は低い。 補助参加人の確認している過去の自動販売機の火災事例でも,本件判定書が結論づけるようなプリント基盤のトラッキングによる発火事例は1件もない。 (オ)また,E及びFの証言は,その内容が変遷しあるいは矛盾しているにとどまらず,Hの証言により小屋が燃えだした段階で本件自動販売機は未だ燃えていなかったものと認められるから,同人らの証言の信用性は失われている。 イその他(ア)本件自動販売機の客観的焼損状況及びHの証言から,小屋からの延焼により本件自動販売機が焼損したとの事実が相当程度の可能性で認められるが,百歩譲って本件自動販売機から発火したものとの前提に立つとしても,本件自動販売機は,建物の外に置かれており,不特定多数の人間がこれに接触することができたのであって,放火という外部的な発火原因が存在した可能性は相当高いものと認められ,直ちに本件自動販売機自体の欠陥から生じたものと推認できるわけではない。事実,過去における同種自動販売機の火災事故例のうち大多数は放火を原因とするものであり,室内に置かれているテレビ,冷蔵庫の場合とは決定的に異なる。 (イ)補助参加人は,本件自動販売機と同種の缶飲料の自動販売機をここ10年間で120万台以上生産しているが,プリント基盤が関係する事故例は,いたずら等の外部要因によるものを除き2件しかなく,しかも,その2例は,交流100V電源の入口となるフィルター回路における過電圧(落雷によるものと推定される。)を原因とするものと,バッテリーの問題によると推定されるものであって,本件判定書が推定するような事故例はない。 また,消防庁の統計上も,多数の火災例が認められるテレビ,冷蔵庫,電熱器等の家電製品とは異なり,自動販売機による火災は平成元年以降全く であって,本件判定書が推定するような事故例はない。 また,消防庁の統計上も,多数の火災例が認められるテレビ,冷蔵庫,電熱器等の家電製品とは異なり,自動販売機による火災は平成元年以降全く認められない。 (ウ)自動販売機一般の安全性と,個々の製品の欠陥の有無とは別問題であるといっても,本件自動販売機については,電気配線の切断や電気的溶痕が存在しないことからして,電気配線の短絡は考えられないのであり,本件判定書がいうプリント基盤のトラッキングによる発火も実際には考えられないことからして,本件自動販売機からの発火原因を想定し得ず,一般的安全性に加えて個別具体的な製品としても欠陥が存在しなかったことが十分に推認される。 また,個々の製品における欠陥の存在といっても,長期間にわたり大量の製品を対象として事故例を把握することにより個々の製品における欠陥の有無も統計的に明らかにできるはずであるが,上記のように,これまで補助参加人が製造・出荷してきた大量の自動販売機について,本件で想定しうるような欠陥の存在が認められないから,個別製品としての本件自動販売機に欠陥が存在しないことも十分に推認できる。 (エ)また,本件自動販売機の客観的焼損状況は,正面から見て右側の外部塗装が焼毀せずにほぼそのまま残っているが,左側の塗装はほぼ完全に焼損しており,小屋あるいはその近辺から出火して本件自動販売機に延焼したものと見られる。 なお,自動販売機が外部からの放火により焼損した場合でも,外部塗装等が燃え残り内部がより激しく燃えるということも珍しくない。 (2) 被告らの製造物責任(製造物責任法3条)の成否(原告の主張)本件自動販売機は,被告Aが製造元である補助参加人から買い受けて所有権を取得し,これを ということも珍しくない。 (2) 被告らの製造物責任(製造物責任法3条)の成否(原告の主張)本件自動販売機は,被告Aが製造元である補助参加人から買い受けて所有権を取得し,これを被告Bに貸与して被告Aの製品の缶飲料を販売させていた。 また,本件自動販売機には「○○○○」等の文字が表示されていた。 よって,被告らが本件自販機を流通に置いていたことは明らかであり,被告らは,製造物責任法上の製造業者等に該当する。 (被告Aの主張)ア原告は,被告Aが本件自動販売機に「○○○○」と表示していたことを理由に製造物責任法2条3項3号の「製造業者等」に該当するとするが,かかる表示があっても,消費者は,その自動販売機で取り扱われる缶飲料がL株式会社あるいはその関連会社である被告Aの製品であると認識し,信頼するにとどまり,それを超えて被告Aが自動販売機を製造したりその製造に深く関与したと認識し,信頼することは,経験則に照らしてあり得ない。実際,被告Aは,本件自動販売機の出火原因となりうる部分の設計・製造に何ら関与しておらず,技術的安全性を検討する十分な能力はない。 また,被告Aは,被告Bに本件自動販売機を無償で貸しており,本件自動販売機の取引自体からは利益を得ておらず,缶飲料の取引により利益を上げているにすぎない。 イよって,被告Aは,本件自動販売機につき,同法2条3項3号の製造業者等にあたらない。 (被告Bの主張)被告Bは,本件自動販売機を業として製造・加工又は輸入した者でもなければ,製造業者として氏名等を表示した者でも製造業者と誤認させるような氏名等を表示した者でもなく,実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者でもない。 よって,被告Bは,製造物責任法 製造業者として氏名等を表示した者でも製造業者と誤認させるような氏名等を表示した者でもなく,実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者でもない。 よって,被告Bは,製造物責任法2条3項にいう「製造業者等」にはあたらない。 (補助参加人の主張)本件自動販売機につき製造物責任法上の「製造業者等」に該当するのは,被告らではなく補助参加人である。また,そもそも本件自動販売機は,平成5年12月に製造され,出荷されたものであり(乙1等),平成7年1月1日の同法施行後にその製造業者等が引き渡した製造物には該当せず,同法の適用を考慮する余地はない。 すなわち,本件自動販売機は,被告らによって平成11年7月13日に資料館入口脇の沿道に設置されたが,それ以前の同年6月には,被告Aによって,異常点検,清掃及び塗装等の作業が行われている。しかし,同法の「製造・加工」は,新たな物品を作り出し又は新しい属性を付加することをいい,修理,設置及び点検は,これにはあたらない。したがって,本件自動販売機に対する同法適用の有無は,補助参加人による出荷時期をもって判断すべきであり,本件自動販売機には同法は適用されないのである。 (3) 被告らの債務不履行責任(民法415条)及び不法行為責任(民法709条)の成否(原告の主張)被告Bは,本件自動販売機を絶えず点検し安全性を確認すべき業務上の注意義務があるにもかかわらず,これを怠って本件火災を発生させたから,契約上の安全配慮義務違反による損害賠償責任がある。 また,被告らは,安全性を欠く本件自動販売機を資料館に設置することで本件火災を発生させたから,不法行為に基づく損害賠償責任がある。 (被告Aの主張)争う。 (被告Bの主張) 告らは,安全性を欠く本件自動販売機を資料館に設置することで本件火災を発生させたから,不法行為に基づく損害賠償責任がある。 (被告Aの主張)争う。 (被告Bの主張)本件自動販売機の設置に関する被告Bと原告の間の法律関係は,継続的缶飲料販売契約に付随した使用貸借と考えられる。かかる法律関係の場合,貸主である被告Bは,本件自動販売機に異常・欠陥があった場合にこれを保守・点検する義務を負うことまではあり得るとしても,それを超えて結果責任に近いような抽象的義務を負うことはないというべきである。 本件自動販売機については,本件火災直前に何らの不具合も認められず,被告Bに具体的な安全配慮義務違反があったとは認められない。 (4) 被告らの工作物責任(民法717条)の成否(原告の主張)ア本件自動販売機は,土地に長期間固定的に取り付けられており,土地の工作物とみなすことができる。 イ(ア)出火当時の占有者は誰かというのは被告側の事情であるが,本件自動販売機を設置した被告Bが占有者であることは明白であり,また,被告Aも本件自動販売機の外箱に「○○○○」等の表示をなし,主として被告Aの缶飲料を販売していること等を考慮すると,本件自動販売機は,被告らが共同して占有していたものとみなすべきである。 (イ)本件自動販売機の管理及び鍵の所持については,缶飲料詰替え作業用の外扉の開閉部分の鍵と,内部の機械部分の点検・修理のための機械壁開閉の鍵が別に存在し,原告が管理していたのは詰替え作業用の外扉鍵だけである。 もし,専門的技術に疎い原告が機械壁の鍵を所持していると,機械部分に接触しどのような事態が発生するかもしれないから,被告Bが原告にこれを渡すはずがない。 ウしたがって,被 ある。 もし,専門的技術に疎い原告が機械壁の鍵を所持していると,機械部分に接触しどのような事態が発生するかもしれないから,被告Bが原告にこれを渡すはずがない。 ウしたがって,被告らは,本件自動販売機の占有者として,本件自動販売機の保存上の瑕疵から発生した本件火災につき,工作物責任を負う。 また,少なくとも被告Aは,本件自動販売機の所有者としての無過失責任を負うことは明白である。 (被告A及び補助参加人の主張)ア工作物責任は,当該工作物の占有者が損害を負った場合に所有者に責任を追及できることを認めた規定ではない。したがって,民法717条1項の「他人」とは,工作物の占有者及び所有者以外の者をいい,占有者自身は「他人」にあたらない(東京高等裁判所昭和49年10月28日判決・判例時報766号51頁参照)。 被告Aは,上記争いのない事実等のとおり,被告Bに本件自動販売機を無償で貸与しており,さらに,原告は,被告Bから本件自動販売機を転借していた。そして,被告Aは,被告Bに被告Aの商品を販売し,原告は,被告Bから購入した被告Aの商品を本件自動販売機に納めて販売していた。 また,本件自動販売機には,外扉の鍵と商品見本入替用の中扉の鍵があり,外扉鍵を使って外扉を開くことにより,防水シートが掛けられた中扉裏面及び中扉断熱材表部が現れる。中扉裏面にはコイン収納ボックスがあり,売上金はここから回収することになる。原告が出火箇所と主張するプリント基盤を格納する赤白のボックスも,中扉裏面に備えられているものであり,外扉鍵により開錠することにより目前に現れるものである。そして,中扉断熱材表部を開くことにより缶飲料を収納する庫内が現れ,缶飲料の収納ができる。また,中扉鍵により外扉と中扉との施錠を外すと, あり,外扉鍵により開錠することにより目前に現れるものである。そして,中扉断熱材表部を開くことにより缶飲料を収納する庫内が現れ,缶飲料の収納ができる。また,中扉鍵により外扉と中扉との施錠を外すと,外扉裏面と中扉正面商品展示部が現れる。中扉鍵は,本件自動販売機内に引っかけられていた。 原告は,被告Bから本件自動販売機の外扉鍵の交付を受け,資料館の管理を委託していたHに直接所持させて商品の詰替えや売上金の回収等を行わせていた。したがって,外扉鍵を保有していた原告が,本件自動販売機に対する事実上の支配を有していたものといえる。 イよって,原告は,民法717条1項の「他人」にあたらないから,被告Aに対する請求は主張自体失当であり,本件自動販売機が「土地の工作物」にあたるかの問題を論ずるまでもない。 ウなお,原告は,被告Aも本件自動販売機を共同占有していると主張するが,Lの表示をもって占有と認められないのはいうまでもない。 確かに,被告Aも,被告Bに本件自動販売機を無償で貸与することで再間接占有をしていることは認めるが,あくまで再間接占有にすぎない。上記のように原告が本件自動販売機を管理していたことが明らかであるから,かかる場合にまで直接占有者である原告が間接占有者ないし所有者に対して工作物責任を追及しうるとすると,設置先は利益のみ得て損害は他人に転嫁することになり,損害の公平な分担という不法行為制度の趣旨に著しく反する。 よって,工作物責任においては,間接占有者兼所有者である被告Aは,直接占有者及び間接占有者に本件自動販売機の設置・保存の瑕疵がないことが立証されない限り,工作物責任すら問われるべき地位にはない。 (被告Bの主張)ア(ア)本件自動販売機は,土地への接着の程度が軽微であり,土地の 本件自動販売機の設置・保存の瑕疵がないことが立証されない限り,工作物責任すら問われるべき地位にはない。 (被告Bの主張)ア(ア)本件自動販売機は,土地への接着の程度が軽微であり,土地の工作物とはいえない。仮に,本件自動販売機が土地の工作物にあたるとしても,本件火災のような延焼火災の場合,民法717条にも失火責任法が適用され,工作物の設置・保存について重過失がない限り,工作物の占有者は賠償責任を負わない。 (イ)仮に,トラッキング現象に起因してプリント基盤から出火し本件火災が発生したとしても,過去に自動販売機のプリント基盤からの出火事例が存在せず,トラッキング現象自体が必ずしも一般的に認知された現象ではないことから,被告Bには,本件火災が発生する予見可能性がなかった。 したがって,被告Bには,本件自動販売機の設置・保存に重過失はない。 イ(ア)被告Bは,本件自動販売機を原告に無償で貸与し,外扉鍵を原告に預けており,その合鍵を持っていなかった。原告は,被告Bから缶飲料を購入して自ら缶飲料の詰替え作業を行い,本件自動販売機による缶飲料の売上げは,原告の売上げとなっていた。なお,原告は,Hに缶飲料の詰替えや商品管理,売上管理等を委託して行っており,外扉鍵はHが所持していた。 したがって,本件自動販売機を事実上支配し占有していたのは原告である。 (イ)よって,被告Bに対する民法717条1項に基づく請求は理由がない。 (5) 損害(原告の主張)ア本件火災により焼損した資料物件の購入価額の総計は,844万5000円である。これらの物件は,一種の文化的資料で骨董品的要素も有し,稀少価値を持つものであるから,通常の商品と異なり再取得が困難で,その焼損直前の価格は,少なくとも取得 価額の総計は,844万5000円である。これらの物件は,一種の文化的資料で骨董品的要素も有し,稀少価値を持つものであるから,通常の商品と異なり再取得が困難で,その焼損直前の価格は,少なくとも取得価額を上回ることは確実であり,購入価額の倍額の1689万円と評価されるべきである。 イ原告は,資料館の開館に際し,資料展示のために大幅な改装・電気工事を行い,陳列棚・陳列ケース等の設置,看板やこけしの取付けを行い,合計350万円を要している。 また,本件火災後の処理のため,家屋解体処分費35万円,焼損物件処分費15万円の合計50万円を負担した。 以上の合計は400万円である。 ウ資料館は,単に資料を公開・展示するのみならず,原告が子供たちに伝承遊びを紹介し実際に体験させるもので,人気が次第に高まり,テレビ,ラジオや雑誌等に多数紹介され,その功績は高く評価されていた。 よって,その無形財産的価値は300万円以上と評価されるべきである。 エアないしウの合計は2389万円となる。 このうち,原告が契約していた火災保険から916万7500円の保険金を受領したから,これを控除すると,残額は1472万2500円となる。 よって,原告は,被告らに対し,損害賠償金1472万2500円及び本件火災が発生した日である平成11年10月17日より支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 仮に,上記損害がそのまま認められないとしても,民事訴訟法248条を適用して,相当と認められる損害を認定すべきである。 (被告らの主張)アり災証明証添付のり災物品の内訳書(甲3)については,具体的に業者に価格を評価・鑑定してもらったものではない。資料館自体も平成6年から開設 る損害を認定すべきである。 (被告らの主張)アり災証明証添付のり災物品の内訳書(甲3)については,具体的に業者に価格を評価・鑑定してもらったものではない。資料館自体も平成6年から開設しているにすぎず,原告が資料品の購入を開始した時期を最大限遡っても,約25年前からにすぎない。原告自身,保険会社に対してり災物品内訳書に記載した価格を提示し,保険会社から提示された損害見積額に何ら異議を申し立てていない。 かかる事実を前提とすれば,り災品の価値がり災物品内訳書記載の価格の倍額の1689万円で資料館の無形財産的価値が300万円以上にのぼるとは認められない。 イ原告は,資料館開設費として350万円,火災処理費用50万円の合計400万円の損害を被ったと主張するが,これらの損害の発生も認められない。 そもそも損害とは,不法行為時の価格であり,資料館の備品購入価格やこけし設置費用等が損害額となるものではない。したがって,資料館開設費を損害額に算入すること自体失当である。また,資料館開設費に関する原告の供述は一定しておらず,領収書もなく,備品にはり災物品内訳書に記載の陳列ケース,書棚及びスチール書棚が含まれている。よって,資料館開設費に関する原告の供述は全く信用できない。 原告は,火災処理費用50万円の証拠として領収書(甲34の1・2)を提出しているが,M産業と原告の間には不動産取引及び合鍵作りの取引以外は取引がないと認められるから,これが火災処理費用発生の証拠とは認められない。 ウ原告は,既にり災証明証記載の物件の取得価格844万5000円を大きく上回る916万7500円を保険会社から受領しているところ,り災物品内訳書記載の価格は購入価格であり,しかも原告の言い値にすぎないから,記載された価格自 載の物件の取得価格844万5000円を大きく上回る916万7500円を保険会社から受領しているところ,り災物品内訳書記載の価格は購入価格であり,しかも原告の言い値にすぎないから,記載された価格自体が物品の滅失時の交換価格を上回っていると思われ,原告にはさらに賠償を受けうる損害はない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)について(1)ア上記争いのない事実等及び証拠(甲4の1ないし4,12の1・2・4・5,乙3,丁11)並びに弁論の全趣旨によれば,本件火災後の本件自動販売機の外面の状態は,正面に向かって右側面には,外箱の塗装がほとんど残っており,熱による塗装の融解や焼損がほとんど見られないこと,背面には,下部の機械室(冷却ユニット)から右側(南側)を中心に焦げた跡や煤の付着が見られるが,機械室には,一部融解・炭化が認められるだけで表面的な焼損にとどまっており,他の部分と比較して全体的に焼損の程度が軽度であること,左側面には,著しく白色に変化した焼損が認められ,外箱の塗装がほとんど残っていないが,地金は露出しておらず,外部からの炎で熱せられた跡であると考えられること,正面は,電照板が融解・燃焼して全部消失しており,特に左側(南側)が著しく焼損しているが,下方の商品取出口付近には外箱の塗装がやや残っており,右側(北側)の操作パネル・コイン投入口付近も熱により融解しているのみで塗装も残り,焼損していないこと,他方,本件自動販売機の内部は,中扉裏面の右側(南側)を中心に激しく焼損しており,これに対応するように中扉断熱材表部及び中扉表面も激しく焼損していることが認められる。 イ次に,上記争いのない事実等及び証拠(甲2,12の6ないし8,14,証人E,同F,同H)並びに弁論の全趣旨によれば,E及びFは,平成11年10月17日午前 く焼損していることが認められる。 イ次に,上記争いのない事実等及び証拠(甲2,12の6ないし8,14,証人E,同F,同H)並びに弁論の全趣旨によれば,E及びFは,平成11年10月17日午前4時30分ころ,前面道路を自動車に乗り走行中,付近に街灯がなく暗闇の中,前方に明るくなっている場所があることを発見し,速度を落として注視したところ,本件自動販売機の正面左上部分から出火しているのを目撃したこと,同人らは,自動車を走行させたまま一旦約50m通り過ぎた後,再度確認すべく引き返して本件自動販売機の斜め前に停車し,徒歩で前面道路の歩道部分まで本件自動販売機に近づいたところ,やはり本件自動販売機から炎が出ていることを確認したこと,このときは,最初に発見した時より炎が大きくなり,本件自動販売機前面電照板左上からも炎が出ていたこと,E及びFは,この段階まで,本件自動販売機の正面左上以外の部分から炎や煙が発生したり,本件自動販売機以外の物が燃焼しているのを目撃していないこと,その後,小屋及び資料館への延焼を危惧したE及びFは,資料館に出火の事実を知らせるため玄関戸をたたいて内部へ呼びかけたが,資料館内からの応答がないため,付近の灯りの灯いている民家に連絡したこと,連絡を終え本件自動販売機付近に戻ったところ,本件自動販売機が炎に包まれ,小屋に燃え移ろうとしているのを目撃したことから,119番通報がなされているかを確認する必要があると判断し,再度民家に連絡に赴いたこと,119番通報がされたことを確認した後,本件自動販売機付近に戻ったところ,本件自動販売機の炎は,既に小屋やこけしに延焼しており,付近の住民がバケツリレーによる消火活動を開始したことから,同人らもこれに参加したこと,その後,消防自動車が到着したが,消火活動が開始される前に資料館に延焼し の炎は,既に小屋やこけしに延焼しており,付近の住民がバケツリレーによる消火活動を開始したことから,同人らもこれに参加したこと,その後,消防自動車が到着したが,消火活動が開始される前に資料館に延焼したことが認められる。 上記のとおり,証人E及び同Fは,偶然本件火災の際に前面道路を通りがかっただけで,原告ら本件の関係者とは何らの利害関係もない者であり,また,両名の証言は,内容が相互に概ね一致しているばかりか,本件自動販売機の焼損状況とも矛盾はなく,特に本件火災が発生した初期段階における本件自動販売機の発見状況及び付近民家への通報に至る状況については,証言内容が具体的で詳細であり,しかも,本件火災が消火された直後に行われた消防署員の質問に対する回答から当法廷における証言に至るまで,ほぼ一貫していることから,信用性が相当高いというべきである。 ウ他方,証人Hは,Iから本件火災の発生を知らされ,自宅の玄関先より資料館の方向を見たところ,小屋の屋根が燃えているのを発見したため,消火活動を行うべく急いで本件自動販売機と資料館の間を通ってこけしの南東側にある水道に向かったが,本件自動販売機が燃えていることには気付かなかった旨証言する。 しかしながら,上記認定事実によれば,本件自動販売機は,前面左側から出火し,次第に炎に包まれていったというべきであり,右側面はほとんど焼損がなく,背面の焼損状況も比較的軽度であるというべきであるから,Hが本件自動販売機の後方を右側(北側)から近付いて本件自動販売機及び小屋と資料館との間を通過したときには,未だ本件自動販売機の右側面及び背面には炎がほとんど生じていなかった可能性が高く,加えて,Hは,無我夢中で炎を避けるようにして水道まで急いだというのであり,Hの進行方向からは,本件自動販売機と小屋 ,未だ本件自動販売機の右側面及び背面には炎がほとんど生じていなかった可能性が高く,加えて,Hは,無我夢中で炎を避けるようにして水道まで急いだというのであり,Hの進行方向からは,本件自動販売機と小屋はほぼ同一の方角にあたるから,小屋の屋根の炎か本件自動販売機の炎かを明確に区別できなかった可能性が高く,両証言に必ずしも矛盾はないといえる。 また,証人Hは,本件自動販売機が燃えていたかどうかの記憶がないと証言しているにとどまり,未だ本件自動販売機が燃えていなかったと明言しているわけではないこと,甲第12号証の8は,その記載内容から消防署員の質問に対するHの回答を記載したものであると考えられるところ,それによれば,Hは,本件火災直後には,Iから本件自動販売機が燃えていると言われてその方向を見ると本件自動販売機が炎を上げて燃えており,小屋へ燃え広がっているのを目撃したと回答していることが認められ,これらの事実に照らせば,Hの記憶は,本件火災が発生した日から証人尋問が実施されるまでの2年以上の間に,相当程度減退したものというべきである。 これらの事実を総合すると,証人Hの証言は,にわかに信用できないといわざるを得ない。 エ以上を総合すると,本件自動販売機が外箱を鋼板で覆われているにもかかわらず,外部よりも中扉裏面を中心とする内部の焼損が著しいこと,炎の拡大経過も,まず本件自動販売機の内部から炎が発生し,それが徐々に拡大して本件自動販売機全体を包み,その炎が小屋に延焼したことがそれぞれ認められるから,本件自動販売機は,外部に発生した炎の延焼により焼損したものではなく,内部からの出火によって焼損したものと推認するのが相当である。 そして,本件自動販売機左側面の焼損状況は,小屋に延焼後にそのわら葺き屋根が燃え落ちた炎 た炎の延焼により焼損したものではなく,内部からの出火によって焼損したものと推認するのが相当である。 そして,本件自動販売機左側面の焼損状況は,小屋に延焼後にそのわら葺き屋根が燃え落ちた炎によって熱せられたと認めるのが相当であり,外部からの火が本件自動販売機に延焼したことを示すものではないというべきである。 (2)アこの点,被告ら及び補助参加人は,自動販売機は,家電製品等と異なり,誰でも容易に接近することのできる屋外に設置されているものであるという性質上,放火・いたずらによる出火の可能性を否定できないと主張する。 しかしながら,自動販売機への放火の方法としては,商品取出口,コイン投入口及び背面下部の機械室などの開口部へ直接放火するか,あるいは自動販売機の近辺への放火により延焼させることが考えられるところ,上記(1)で認定した事実に証拠(甲12の2・4・5,乙3)を総合すれば,本件自動販売機の商品取出口には,商品落下の際の破損を防止するためのスポンジの残焼塊があるのみで,他に炭化物や油臭,塗料の付着は認められず,操作パネル(コイン投入口付近)は熱による融解のみで焼損がなく,背面下部の機械室も表面的な焼損にとどまっていること,E及びFが本件自動販売機を発見した当初,炎は,本件自動販売機の前面左上付近のみから出ており,本件自動販売機以外は燃えていなかったことが認められるから,本件自動販売機へ直接放火されたことを示す痕跡はなく,本件自動販売機の近辺から出火したことが窺える事情も認められず,直接の放火や本件自動販売機の近辺への放火が出火原因と認めるに足りる証拠はないというべきである。 その他,本件自動販売機の外箱の焼損状況及び炎の拡大経過等に照らせば,具体的な放火の可能性を認めることはできないというべきであるから,単 出火原因と認めるに足りる証拠はないというべきである。 その他,本件自動販売機の外箱の焼損状況及び炎の拡大経過等に照らせば,具体的な放火の可能性を認めることはできないというべきであるから,単に,本件自動販売機が前面道路に面した屋外に設置されていること,本件火災の発生時刻が人通りの少ない早朝であったことから,放火の可能性が抽象的に存することのみをもって,上記推認を覆すことはできないというべきである。 よって,この点に関する被告ら及び補助参加人の主張は,採用することができない。 イ(ア)また,被告ら及び補助参加人は,本件自動販売機内のプリント基盤は,トラッキングの発生する可能性がほとんどなく,配線の短絡の際に認められる配線の溶断痕等も認められないから,本件自動販売機の内部から出火した可能性がない旨主張する。 (イ)そして,証拠(甲12の1・2・4・5,40,41,乙3,4,7,丁1の1・2,5,6,7の1・2,8,9,11,12,証人K)によれば,本件自動販売機の内部には,配線の溶断痕等の短絡の痕跡はなく,資料館から引かれた電源ケーブルにも短絡等の出火の痕跡がないことから,短絡による発火の可能性は非常に低いこと,本件自動販売機のマスターボックス等の内部のプリント基盤は,耐トラッキング性・自己消火性に優れたガラスエポキシ樹脂製であり,トラッキングが起こる可能性が低いこと,トラッキングが発生するための前提となる水分,電解質及び電圧については,プリント基盤が常に通電し一定の温度を保っていることから,結露による水分がプリント基盤上に存在する可能性が低いこと,プリント基盤の基盤面が縦になるように中扉裏面に設置されていることやプリント基盤をABS樹脂製のボックスに格納していることから,電解質となる埃がプリント基盤上に堆積 盤上に存在する可能性が低いこと,プリント基盤の基盤面が縦になるように中扉裏面に設置されていることやプリント基盤をABS樹脂製のボックスに格納していることから,電解質となる埃がプリント基盤上に堆積する可能性が低いこと,プリント基盤にかかる電圧が8ないし24ボルトであり,トラッキングを発生させるには低い電圧であることがそれぞれ認められ,本件自動販売機のプリント基盤上にトラッキングが発生する可能性が非常に低いことが認められる。 しかし,本件自動販売機内部に設置されている全てのプリント基盤上が具体的にどのような状態であったかを確認することは,もはや不可能であり,本件自動販売機に用いられていたプリント基盤が不良品であった可能性や,整備不良・パッキンの劣化等によって水分や埃が侵入した可能性も完全には否定できない。被告ら及び補助参加人の上記主張は,いずれも異常のない部品を用い,通常予想される程度の経年変化による劣化が生じたことを前提として,トラッキングが発生しないことを立証しているにすぎず,具体的な異常の発生可能性がなかったことを立証するにはなお足りないというべきである。 (ウ)むしろ,証拠(甲12の1・2・4・5,乙3,4,7,丁11)によれば,本件自動販売機内部の中扉裏面には,マスターボックス(赤色)及び冷温表示切替ボックス(白色)のやや右下付近が焼損して白色様に変化し,中扉断熱材表部には同箇所に対応する部分がナスビ色に変化しているなど,同部位が高温になったことを示す変化があること,ABS樹脂製のマスターボックスや冷温表示切替ボックスは完全に消失し,その内部に格納されていたプリント基盤が完全に焼損していることが認められるから,本件自動販売機内で最も高温になった場所の1つに赤白2つのボックス付近が挙げられるというべきであり,同 スは完全に消失し,その内部に格納されていたプリント基盤が完全に焼損していることが認められるから,本件自動販売機内で最も高温になった場所の1つに赤白2つのボックス付近が挙げられるというべきであり,同ボックス内に,プリント基盤のトラッキング等の何らかの異常が発生したために同基盤を保護するためのABS樹脂製のボックスに引火して出火し,炎が広がった可能性が高いというべきである。 なお,被告ら及び補助参加人は,白色様変化が認められ高温になったと認められる中扉裏面部分には何ら部品が存しないと主張する。 確かに,上記認定事実のとおり,厳密にいえば2つのボックスが取り付けられていた部位と白色様変化・ナスビ色変化の認められる部位は完全には一致しないが,同変化のあった部位には配線があるだけで,配線の短絡による出火が想定できない以上,同部位が発火元となって高温に達するとは考えられず,むしろ,2つのボックスが中扉裏面からはがれるようにして右下に移動し,配線の絶縁体とともに燃焼したと解するのが相当であるから,かかる位置の不一致をもって発火元の認定が誤りであるとは認められない。 (エ)また,被告ら及び補助参加人は,本件判定書がプリント基盤の材質やトラッキングの発生可能性についての前提を誤っている点を指摘し,全く信用することができないとする。しかし,本件判定書は,過去に多数の火災を見分してきた火災の専門家である消防本部職員が,本件火災現場や本件自動販売機についての実況見分調書等の資料を総合的に検討して本件火災の原因を判定したものであり,プリント基盤の材質等に関する誤りがあったとしても,本件自動販売機の各部位の焼損状況についての判断や出火場所等についての判断は,十分信用できるものというべきである。 ウ被告ら及び補助参加人は, ト基盤の材質等に関する誤りがあったとしても,本件自動販売機の各部位の焼損状況についての判断や出火場所等についての判断は,十分信用できるものというべきである。 ウ被告ら及び補助参加人は,通常,電気製品に異常が発生する場合には,同機種の他の製品にも不具合が生じるものであるにもかかわらず,統計資料によると,自動販売機内部のトラッキングによる火災は認められず,このことは,本件自動販売機の内部発火を否定するものである旨主張する。 そして,証拠(丁4の1ないし3,12,13,証人K)によれば,平成2年度以降に補助参加人の生産した缶飲料の自動販売機が焼損した事故が59件あるが,そのうち57件は,放火や貰い火等が原因と判定されたこと,内部発火と判定された2件のうち,1件は,プリント基盤上のリチウム電池が内部で短絡を起こし,電解液が基盤上へ流れたことによって基盤上で短絡が起こり,電解液に着火したものと考えられること,もう1件は,自動販売機の内部に起因するものではなく,AC100Vの大元電源に過電圧が繰り返しかかることにより,自動販売機内部の漏電遮断機を介した直後のフィルター回路でフィルター基盤が異常発熱して焼損したものと考えられることが認められ,これらの事実からすると,本件火災以前の約10年間に自動販売機内部のプリント基盤上でのトラッキングを原因とする発火事故が発生していないことが認められる。 しかし,上記説示のとおり,個々の自動販売機の設置環境・整備状況等は異なるのであるから(本件自動販売機について,後記2のとおり平成11年6月15日に重整備されており,本件火災はその4か月後であり,その整備が本件火災の発生と何らかの関連性を有することも,可能性としては否定できない。),他の自動販売機がプリント基盤上でトラッキングを起こし 15日に重整備されており,本件火災はその4か月後であり,その整備が本件火災の発生と何らかの関連性を有することも,可能性としては否定できない。),他の自動販売機がプリント基盤上でトラッキングを起こした事実が存在しないことをもって本件自動販売機から発火する可能性が皆無であると認定することはできないのであって,かかる統計資料によっても(1)の推認を覆すには足りないというべきである。 エさらに,被告ら及び補助参加人は,通常,電気的異常が発生する場合には,動作不良などの異常・故障の前兆があるところ,本件自動販売機には,従前何ら異常が認められなかったのであるから,電気系統の異常ではなく,本件自動販売機の内部発火の可能性が否定されると主張する。 この点,原告は,本件火災直前に電気料金が増加し,修理が連続して行われたことを本件自動販売機の異常として主張するが,証拠(甲6の1・2,7,16の1ないし4,乙2,5,6,12)によれば,平成11年7月13日,12種類の缶飲料を扱える旧自動販売機に代わり,20種類を扱える本件自動販売機が資料館東側に設置されたものであり,同月分の電気料金を境に料金が増加していると認められるから,電気料金の増加は,本件自動販売機に異常が発生していたことを示すものとは認められない。また,証拠(甲16の1ないし4,乙2,5,6)によれば,原告の主張する複数回の修理は,異常が連続して発生した旧自動販売機に対する修理と本件自動販売機への交換を指しており,本件自動販売機に関しては,同年9月10日に背面下部の機械室の網が取り外されていたのを取り付ける修理を行ったのみであるから,何ら本件自動販売機の内部の異常を示すものとは認められない。よって,この点の原告の主張は理由がなく,本件自動販売機は,本件火災直前にも何らの異常は認め いたのを取り付ける修理を行ったのみであるから,何ら本件自動販売機の内部の異常を示すものとは認められない。よって,この点の原告の主張は理由がなく,本件自動販売機は,本件火災直前にも何らの異常は認められなかったというべきである。 しかしながら,製品に何らかの異常動作等の兆候が認められたことをもって電気的異常の存在を推認することはできても,何らの異常動作等の兆候が認められなかった事実から直ちに電気的異常が発生する可能性がなかったと断ずることはできないというべきであるから,本件自動販売機に何ら異常の兆候が認められなかった事実をもっても(1)の推認を覆すことはできないというべきである。 (3) 以上より,本件自動販売機は,その原因を明確に特定することはできないものの,中扉裏面マスターボックスからの出火により焼損したものと推認するのが相当である。 そして,上記争いのない事実等のとおり,原告は,本件自動販売機を資料館東側に設置し,自動販売機として本来の用法に従って使用していたのであり,それにもかかわらず,本件自動販売機の内部から出火したと認められるのであるから,特段の事情の認められない限り,本件自動販売機には,通常有すべき安全性を欠く瑕疵があったものと推認するのが相当である。 そして,本件においては,本件自動販売機の内部の瑕疵により発火したとの推認を覆すに足りる特段の事情は認められないから,本件自動販売機には,内部発火を惹起する瑕疵があったというべきである。 2 争点(2)について証拠(乙1,丁12,証人K)によれば,本件自動販売機は,補助参加人が平成5年12月に生産し,これを被告Aが購入したものであり,平成11年6月15日にJにおいて重整備された後,同年7月13日に旧自動販売機に替えて資料館東側に設置されたこと 自動販売機は,補助参加人が平成5年12月に生産し,これを被告Aが購入したものであり,平成11年6月15日にJにおいて重整備された後,同年7月13日に旧自動販売機に替えて資料館東側に設置されたことがそれぞれ認められる。 ところで,製造物責任法は,同法が施行された平成7年1月1日以降に製造業者等が引き渡した製造物について適用されるところ(同法附則),同法にいう製造とは,原材料に手を加えて新たな製品を作り出すことをいい,加工とは,動産に工作を加え,その本質を保持させつつ新しい属性を加えて価値を付加することを意味すると解するのが相当である。 とすれば,本件自動販売機の既存の性能を維持するための整備・点検や新たな場所への設置は,製造又は加工にあたらないというべきであり,平成11年6月15日に重整備されたことや同年7月13日に資料館東側に設置されたことをもって本件自動販売機に同法を適用することはできず,その他,本件自動販売機が平成7年1月1日以降に製造・加工されたことを認めるに足りる証拠はないから,本件自動販売機には,同法の適用がない。 したがって,同法に基づいた原告の主張は,いずれも失当である。 3 争点(3)についてア被告Bの債務不履行責任について上記争いのない事実等及び証拠(甲9の1ないし22,37,証人H,原告本人)によれば,被告Bは,本件自動販売機を原告に無償で貸与した上で,被告Aの製品である缶飲料を継続的に販売し,原告に缶飲料の販売をさせていたことが認められ,被告Bは,上記継続的売買契約ないし本件自動販売機の使用貸借契約に付随する義務として,瑕疵のない安全な自動販売機を原告に使用させるように配慮する義務を負っていたというべきである。 この点,上記2の認定事実によれば,被告Aは,平成11年7月13 用貸借契約に付随する義務として,瑕疵のない安全な自動販売機を原告に使用させるように配慮する義務を負っていたというべきである。 この点,上記2の認定事実によれば,被告Aは,平成11年7月13日に,旧自動販売機と交換に本件自動販売機を資料館東側に設置したが,それに先立つ同年6月15日に,本件自動販売機を外部の整備業者に委託して重整備を完了させていることが認められる。また,証拠(乙1,2,丁4の1)及び弁論の全趣旨によれば,本件自動販売機は,資料館に設置された後は同年9月10日にいたずらにより背面下部の機械室の網を取り除かれたことによる修理を行ったのみで,電気系統の動作に異常は認められなかったし,本件自動販売機の同型機に異常が発生したとの情報やリコールの届出などの緊急に整備・点検を実施すべき事情も存在しなかったことが認められる。 これらの認定事実に,被告Bが本件自動販売機の製造者ではないために,その内部構造や機械部品等について何ら知識を有しておらず,これを整備・点検する能力を備えていないことを併せ考えれば,同被告は,本件自動販売機が内部出火することを予見することは困難であったというべきであり,したがって,本件自動販売機について,内部出火を起こさないように点検・整備等を行わなかった過失があるとは認めがたい。 よって,同被告の契約上の義務違反は認められず,この点に関する原告の主張は理由がない。 イ被告らの不法行為責任について被告らは,上記のように,内部出火する危険のある本件自動販売機を原告に貸与するなどして,本件火災を発生させたというべきであるが,上記アで説示のとおり,被告らはいずれも製造業者ではなく,機械の仕組みや部品の不良の有無について整備・点検する能力を有していなかったのであり,平成11年6月15日に 災を発生させたというべきであるが,上記アで説示のとおり,被告らはいずれも製造業者ではなく,機械の仕組みや部品の不良の有無について整備・点検する能力を有していなかったのであり,平成11年6月15日に整備業者に委託して重整備した上で資料館東側に設置し,その後何らの異常やその兆候も認められなかった以上は,さらに被告らに本件自動販売機が内部出火を起こさないよう点検・整備すべき注意義務があったとは認められない。 よって,被告らには,本件自動販売機が内部出火したことにつき過失があるとは認められず,この点に関する原告の主張も理由がない。 4 争点(4)について(1) 上記争いのない事実等のとおり,本件自動販売機は,資料館の敷地に接続して固定的に設置されているものであることが認められるから,土地の工作物にあたるというべきである。 ところで,民法717条は,工作物の瑕疵によって「他人」に損害を発生させた場合に,工作物を直接支配し,その設置及び保存につき最も配慮すべき立場にある占有者が,第1次的な責任を負い,これが認められない場合に補完的に所有者が責任を負うと規定しているところ,かかる同条の規定は,当該工作物の所有・占有関係の外にある第三者が工作物の瑕疵によって損害を被った場合を想定し,工作物の設置・保存に関与しなかった被害者を保護しようとするものと解するのが相当であり,したがって,同条1項の「他人」とは,上記のとおり,工作物の所有・占有関係の外にある第三者を指し,工作物の占有者自身は,「他人」にあたらないと解するのが相当である。 (2) この点,上記争いのない事実等と上記3の認定事実及び証拠(丁10)並びに弁論の全趣旨によれば,原告は,缶飲料を被告Bから購入して自ら本件自動販売機に充填する営業形態(セミオペレーション)を採用して この点,上記争いのない事実等と上記3の認定事実及び証拠(丁10)並びに弁論の全趣旨によれば,原告は,缶飲料を被告Bから購入して自ら本件自動販売機に充填する営業形態(セミオペレーション)を採用していたこと,本件自動販売機の外扉の鍵を開ければ商品の充填や売上金の回収が可能であり,同時にマスターボックス等の機械設備を露出させうること,外扉の鍵は原告が同被告から預かった上,これをHに預けて缶飲料の補充及び売上金の回収を行わせていたこと,被告Bは,本件自動販売機の外扉の鍵の合い鍵も所持していなかったこと,同被告では,上記形態による自動販売機の設置の他に,単に自動販売機の設置場所だけを提供してもらい,商品の補充や売上金の回収等を全て同被告が行い,設置先には一定のマージンを支払う形態(フルオペレーション)もあることが認められる。 これらの事実からすれば,原告は,本件自動販売機の主要な部分を支配・管理していたと認めるのが相当であるから,本件自動販売機を直接占有していたというべきであり,被告Bは間接占有者,被告Aは再間接占有者兼所有者であると認めるのが相当である。 (3) したがって,原告は,自ら民法717条の「他人」に該当すると主張して,被告らに対して工作物責任を追及することはできないというべきであり,この点に関する原告の主張は理由がない。 5 結論以上の次第で,その余の争点につき判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第一部裁判長裁判官田中澄夫裁判官小崎賢司裁判官後藤慶一郎は転補のため署名 方裁判所民事第一部裁判長裁判官田中澄夫裁判官小崎賢司裁判官後藤慶一郎は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官田中澄夫
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