平成13(行ケ)1 裁決取消請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成14年1月29日 仙台高等裁判所 秋田支部
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判決文本文9,573 文字)

平成14年1月29日判決言渡平成13年(行ケ)第1号裁決取消請求事件 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求平成13年6月24日執行のA町長選挙における選挙の効力に関する審査の申立てについて,被告が同年9月28日付けでした裁決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,A町長選挙で当選とされたものの,1票差で次点となった候補者からの異議の申出に基づきA町選挙管理委員会(以下「A町選管」という。)により選挙無効とされた原告が,これを不服として被告に審査の申立てをしたが,棄却する裁決を受けたため,その取消しを求めた事案である。 1 争いのない事実及び証拠(文末に掲記のもの)により容易に認められる事実(1) A町選管は,平成13年6月24日執行のA町長選挙について,原告の有効得票数が1475票,訴外B候補の有効得票数が1474票であるとして,原告を当選人と決定した。 (2) 公職選挙法49条1項3号は,選挙の当日疾病,老衰等のため歩行が困難であると見込まれる選挙人の投票については,政令で定めるところにより不在者投票管理者の管理する投票を記載する場所において行わせることができる旨規定し,これを受けた政令である公職選挙法施行令は,選挙人が都道府県選挙管理委員会(以下「都道府県選管」という。)の指定する老人ホームに入所中の場合はその長が不在者投票管理者となるものとし(同施行令55条3項2号),不在者投票用紙の請求については,選挙の期日の前日までに,登録されている選挙人名簿の属 に入所中の場合はその長が不在者投票管理者となるものとし(同施行令55条3項2号),不在者投票用紙の請求については,選挙の期日の前日までに,登録されている選挙人名簿の属する市町村の選挙管理委員会(以下「選管」という。)の委員長に対して選挙人自ら請求することができることとし(同施行令50条1項),当該施設において投票をしようとする場合は請求の際にその旨を申し立てなければならないとするとともに(同条2項),当該施設の長が選挙人の依頼を受けたときは,自ら又はその代理人によって,選挙人に代わって投票用紙を請求し,当該施設で投票する旨の申立てをすることができるとしている(同条4項)。 特別養護老人ホームCは,上記の都道府県選管(被告)の指定を受けた施設であるが,従来から,入所者の依頼を受けないまま,入所者全員分についてA町選管に不在者投票用紙の請求と,当該施設で投票する旨の申立てをしており,本件選挙についても同様であった(争いがない。)。 (3) 公職選挙法48条は,選挙人が身体の故障又は文盲のため候補者の氏名を自署できないときは,投票管理者に申請して代理投票をさせることができ(1項),投票管理者は,代理投票の申請があったときは,投票立会人の意見を聴いて,補助者2名を定め,1名に選挙人の指示する候補者の氏名を記載させ,もう1名をこれに立ち会わせなければならないとしている(2項)。 ところが,Cにおける投票は,入所者の申請に基づくことなく,54名の入所者全員につき2名の看護婦を補助者とし,両名において入所者の意思を確 としている(2項)。 ところが,Cにおける投票は,入所者の申請に基づくことなく,54名の入所者全員につき2名の看護婦を補助者とし,両名において入所者の意思を確認して候補者の氏名を代筆するのを常態としており,本件選挙についても,平成13年6月20日,同様のやり方で実施された(乙1ないし5)。 (4) 訴外B候補は,平成13年7月3日,A町選管に対し,Cにおいて実施された不在者投票の手続等に問題があるとして,本件選挙の無効及び原告の当選無効を主張し,異議の申出をした(甲1,乙23)。 (5) A町選管は,平成13年7月28日,Cの施設長が入所者の個々の依頼を確認しないまま54名全員分の不在者投票用紙等の請求を行ったのは公職選挙法施行令50条4項の明文の規定に違反していることと,最終的に投票意思を表明することができなかった5名につき白票で投票されたことの確認が取れなかったことを指摘した上で,正規の手続がとられていればこの5名は不在者投票の請求者として現われるものではなく,5票について完全に白票として投じられたことの確認も取れないとして,この5名について異議申出人の不正疑惑の可能性となり得ることは否定できず,票差が1票であることから選挙結果に異動を及ぼす虞があると判断し,本件選挙を無効とした(甲1,乙23)。 (6) 原告は,平成13年8月10日,A町選管の決定について,手続違反は形式的なものであって秋田県内の高齢者福祉施設に一般的なことであり,また,白票であることを確認していないとの証言は誤りであるなどとして,被告に審査 て,手続違反は形式的なものであって秋田県内の高齢者福祉施設に一般的なことであり,また,白票であることを確認していないとの証言は誤りであるなどとして,被告に審査の申立てをした(甲2の2,弁論の全趣旨)。 (7) 被告は,平成13年9月28日付けで,A町選管が問題にした5名の投票については白票であったと認められるが,Cにおける不在者投票の申込み,代理投票の手続等についての手続規定違反が著しく,不在者投票の手続全体に重大な瑕疵があること,投票の実態としても,2名の補助者の幅広い投票への関与が投票行為に影響したおそれがあり,9名の寝たきり入所者については家族の意思による投票と評価することができるなど,選挙人自身による投票であると確定することが甚だ難しいこと,入所者中少なくとも20名の者については意思表示能力に疑問があること,そして票差が1票であることからすれば,これらの選挙手続の違法が選挙の結果に影響を及ぼすことが明らかであるとして,審査の申立てを棄却した(甲2の2)。 2 争点とこれについての当事者の主張の概要本件選挙について,選挙の規定に違反することがあり,それが選挙の結果に異動を及ぼす虞があるかどうか(公職選挙法205条1項)が本件の争点であって,これについての当事者の主張の概要は次のとおりである。 (1) 選挙規定違反(原告の主張)① 不在者投票について生活様式が多様化した現代社会においては,選挙権の行使が最大限保障されるよう,不在者投票制度については柔軟な解釈運用が求められる。Cにおいて, いて生活様式が多様化した現代社会においては,選挙権の行使が最大限保障されるよう,不在者投票制度については柔軟な解釈運用が求められる。Cにおいて,投票する意思のない者についてまで不在者投票用紙の請求がなされ,代理投票の手続がとられたとしても,白票を投ずれば選挙の結果には影響を及ぼさない。むしろ,入所者の精神状態は日々変化しており,事前に投票意思を確認することはそれ自体困難であり,投票行為の際に入所者の状態を日常的によく把握している看護婦に意思を確認させながら投票させることが最も適切であり,選挙権の保障にもかなう。Cにおける不在者投票制度の実態は,秋田県内の大方の施設の実態である。 ② 自書者の存在について不在者投票実施記録には,Cの入所者54名全員につき代理投票が実施されたことになっているが,実際には自書した者がいたとしても,自書が本来であるから投票行為に不正があったことにはならない。 ③ 補助者の関与について声を出して候補者名を確認することが不適切だとすれば,代理投票は事実上困難となる。補助者の関与による投票を実質上原則とせざるを得ないのがほとんどの特別養護老人ホームの実態であり,法の規定を厳密に遵守すると,高齢者の選挙権行使の保障が失われてしまう危険がある。選挙人と日常的に接している補助者の幅広い助力によって選挙人の意思が尊重され,選挙権が擁護されることになる。 ④ 寝たきりの入所者の投票について寝たき 日常的に接している補助者の幅広い助力によって選挙人の意思が尊重され,選挙権が擁護されることになる。 ④ 寝たきりの入所者の投票について寝たきりの入所者との的確な意思疎通は,家族等心情的に強い絆で結ばれている者を介して初めて可能になるのであり,家族を通じて意思を確認することが不適切とはいえない。 (被告の主張)① Cにおける手続規定違反Cの投票管理者であるDは,入所者の依頼を受けずに入所者全員について不在者投票用紙の請求等をしたばかりでなく,明示的には立会人も補助者も定めず,投票立会人として行動していたEの意見を聴くこともなく,看護婦2名に補助させて代理投票を行わせた。ベッドにおける投票についても,入所者の家族が立ち会っている状態を放置し,投票の秘密保持に注意を払うことはなかった。投票できない入所者の投票用紙等も,選管に返還せずに白票として投票させている。 結局,Cにおいては,手続の意義が理解されないまま,選挙人の意思に基かず,選挙人の意思を確認することなく投票が実施され,代理投票は,投票管理者及び投票立会人の関与がないまま,全て2人の看護婦の判断で行われたものであり,その手続的瑕疵は重大なものである。 ② 公職選挙法の解釈原告は,選挙規定については選挙権保護の観点から柔軟な解釈が求められると主張する。確かに,社会の変化に伴って選挙規定も改正される必要があり,その結果,不在者投票や代理投票等の規定が整 については選挙権保護の観点から柔軟な解釈が求められると主張する。確かに,社会の変化に伴って選挙規定も改正される必要があり,その結果,不在者投票や代理投票等の規定が整備され,より多くの選挙人の選挙権の行使の実現が図られている。しかし,こうして定められた手続規定について柔軟な解釈を行うことは,場合によっては恣意的な運用を生じさせ,選挙の公正確保が不可能になる。特に,代理投票は秘密投票主義の例外であり,厳格な運用が要請される。 (2) 選挙能力と選挙結果に影響を及ぼす虞(原告の主張)被告は,選挙人の能力を問題にするが,その判断時点,判断者,審査の対象者,基準,判断の客観性と科学性,日々変化する高齢者についての判断方法,能力がないとする判断についての不服申立て方法が明らかではない。 Cの入所者に対する調査も,的確な意思疎通は看護婦や家族等心情的に強い絆で結ばれている者であって初めて可能になるのであり,被告の行った秋田県職員による短時間の調査には信頼性がない。 (被告の主張)選挙人の能力の判断は,当該施設の投票管理者に委ねられており,不在者投票用紙等の請求の依頼を受けたときと,代理投票の申請があったときに判断されるべきことである。日々高齢者と接している投票管理者にとって,判定は困難なこととは思われず,また,判断手法や判断基準を一律に定めることは困難であり,適当でもない。本件では,そもそも不在者投票用紙等の請求の依頼も代理投票の申請も顧慮されないまま投票が実施されたのであり, 判断基準を一律に定めることは困難であり,適当でもない。本件では,そもそも不在者投票用紙等の請求の依頼も代理投票の申請も顧慮されないまま投票が実施されたのであり,原告の選挙能力の判断に関する主張は問題となり得ない。 高齢者の選挙権の行使も,判断能力を備えた高齢者自身の意思に基づくものでなければならないが,被告が平成13年9月13日Cで行った調査では,54名の入所者中,意思疎通が可能な者16名,呼びかけには反応するが意思疎通がかなり困難と思われる者11名,意思疎通が不可能な者16名,眠っていたこと等により調査不能であった者11名であった。入所者の診断書からも,入所の際,既に意思疎通が困難な者が存在したことが明らかである。 上記の呼びかけには反応するが意思疎通がかなり困難と思われる者11名,意思疎通が不可能な者16名,合計27名の全員が,本件選挙が執行された同年6月24日の時点で,選挙の意義を理解し,自ら管理者に対して代理投票を申請したと考えることには無理がある。 また,寝たきりのため投票場所に来ることができなかった9名については,家族が来所していた4名は投票を行い,家族が来ていない5名については投票ができないとして白票で投票されている。また,投票した4名についても,家族が候補者名をあげ,これを補助者が入所者に確認して代理投票が行われており,入所者自身による投票と評価できるかは疑問である。 第3 当裁判所の判断 1 不在者投票に関する選挙規定違反について本件に関連する公職選挙法及び公職選挙法施行令の定める不在者投票につい り,入所者自身による投票と評価できるかは疑問である。 第3 当裁判所の判断 1 不在者投票に関する選挙規定違反について本件に関連する公職選挙法及び公職選挙法施行令の定める不在者投票についての規定は上述したとおりであり,施設内での不在者投票が認められるための要件は,選挙の当日「歩行が困難であること」が見込まれることだけである。 不在者投票用紙の請求及び当該施設における投票の申立ては,選挙人自らするのが本則であり,当該施設の長が行うのは選挙人の依頼を受けたときである。 したがって,投票の実施日には投票の意思があったとしても,その前に選挙人が自ら不在者投票用紙の請求等をせず,当該施設の長にその依頼もしていない場合には,不在者投票を行うことができない。 Cにおいては,従来から,入所者の依頼を受けないまま,入所者全員分についてA町選管に不在者投票用紙の請求と,当該施設で投票する旨の申立てをしており,本件選挙についても同様であったことは上述したとおりであり,これは,公職選挙法施行令50条4項に明らかに違反するものである。 原告は,Cにおいては,平成7年7月19日の第17回参議院通常選挙のときまでは入所者の投票意思を確認して不在者投票用紙の請求を行っていたが,投票意思を示さなかった入所者から投票日になぜ投票させないかと異議を申し立てられたため,以後の選挙からは病気などの入院者を除いて入所者全員の投票用紙を請求してきたもので,これは,A町だけでなく,F町,G村,H町の特別養護老人ホームなど高齢者福祉施設共通の実態であると主張する。しかし,投票意思を示さず,不在者投票用紙の請求等を依頼しなかった入所者 で,これは,A町だけでなく,F町,G村,H町の特別養護老人ホームなど高齢者福祉施設共通の実態であると主張する。しかし,投票意思を示さず,不在者投票用紙の請求等を依頼しなかった入所者が不在者投票ができないのは,選挙規定に則した当然の結果であり,投票させないことに入所者から異議があったからといって選挙規定に反する扱いが適法になることはない。また,仮に,選挙規定に反する扱いが広く行われている実態があるとしても,それによってその扱いが適法になることもない。 原告は,不在者投票制度については,選挙権の行使が最大限保障されるよう,柔軟な解釈運用が求められると主張し,本件についても,高齢者の選挙権の行使が保障されるべきであるとして,Cにおける扱いでもなお適法と主張するかのようである。確かに,不在者投票制度の構築にあたっては,社会状況の変化に対応してより多くの選挙人の選挙権の行使が可能になるように配慮する必要があり,平成9年12月の法改正においても不在者投票事由の緩和等が行われたところである。しかし,選挙法は手続規定であり,いったん定められた制度の運用について,選挙権の行使の実現のみを考慮して明文の規定に反した運用を是認することは,選挙規定を無視した多様な取り扱いをもたらし,ひいては選挙の公正を害する結果になるものであって,是認することはできない。 2 代理投票に関する選挙規定違反について代理投票に関する公職選挙法48条の定めは上述したとおりであり,代理投票(代筆投票)が認められる要件は,選挙人が身体の故障又は文盲のため,候補者の氏名を自書できないことであって,自筆投票の原則(同法46条1項) 定めは上述したとおりであり,代理投票(代筆投票)が認められる要件は,選挙人が身体の故障又は文盲のため,候補者の氏名を自書できないことであって,自筆投票の原則(同法46条1項)に対する例外である。自筆投票が原則とされているのは,秘密投票主義の建て前からであるが,身体の故障又は文盲のために自書することができない者が政治参加の能力がないとすることはできないことから,これらの者についても投票の機会を与えるために例外として認められた制度である。したがって,その手続には相当の厳格性が要請されることになる。 Cにおいては,上述したとおり,入所者の申請に基づくことなく,54名の入所者全員につき2名の看護婦を補助者とし,両名において入所者の意思を確認して候補者の氏名を代筆するのを常態としており,本件選挙についても,平成13年6月20日,同様のやり方で実施された。施設長であるDは,当時,法令の定める選挙規定については代理投票を含めてほとんど知識はなく,事務担当者に任せきりであり,投票の実施日には投票場所には座っていたものの,投票管理者としての役割については全く自覚がなく,入所者から代理投票の申請を受けることも,自書能力について判断することも,投票立会人の意見を聴くこともなく,投票場所まで来れずに自室で投票した者について同席していた家族を排除する等投票の秘密保持に配慮することもなく,全て2人の看護婦に任せていたこと,2人の看護婦は,本件選挙の際も,従来の選挙の際と同様に,2人で適宜分担して入所者の意思を聞いたり,投票用紙に候補者を代筆したりしたもので,少なくとも入所者の1人は自書したこと,寝たきりの 看護婦は,本件選挙の際も,従来の選挙の際と同様に,2人で適宜分担して入所者の意思を聞いたり,投票用紙に候補者を代筆したりしたもので,少なくとも入所者の1人は自書したこと,寝たきりの入所者9名についてはそれぞれの居室に赴いて投票を実施したが,家族が来所していた4名については家族から伝えられた本人の意向を2人の看護婦が本人に確認して代理投票が行われ,家族が来ていなかった5名については投票意思が確認できなかったため,投票用紙はそのまま事務担当者に戻され,白票として投票されたことが認められる(甲3,乙1ないし5,28,証人I)。 なお,2人の看護婦は,代理投票に関する法の規定については知識がなく,習得する機会もなかったため,投票の秘密保持に対する配慮が欠けるなど客観的には法の規定に適合してはいなかったが,可能な限り入所者の意思を選挙に反映させるのが自分たちの職責と考えて,誠実に行動したことが認められる(甲3,乙4,5,証人I)。 Cにおける投票は,以上に述べたとおり,代筆投票であったというだけで,それ以外の法の定める手続は全く無視されており,法の定める代理投票とは異質なもので公職選挙法46条1項,48条に明らかに違反するものである。 原告は,選挙人と日常的に接している看護婦の幅広い助力によって高齢者の選挙権が擁護されることになるのであり,寝たきりの入所者との意思疎通についても,家族等心情的に強い絆で結ばれている者を介して初めて可能になるとして,上記のようなCにおける投票もなお代理投票として適法と主張するかのようである。しかし,代理投票は,上述したとおり,自筆投票の例外として規 る者を介して初めて可能になるとして,上記のようなCにおける投票もなお代理投票として適法と主張するかのようである。しかし,代理投票は,上述したとおり,自筆投票の例外として規定されているにとどまり,候補者の氏名の記載以外の点で補助者が選挙人の投票行為を補助することは予定されていないし,選挙法の解釈として明文の規定に反した運用を適法とする余地はないことは,不在者投票について上述したとおりである。 3 選挙能力と選挙の結果に異動を及ぼす虞について公職選挙法は,選挙人の能力について特に規定を置いていない。しかし,11条1号は成年被後見人は選挙権を有しないとしており,また,上述したとおり自筆投票を原則とし,代理投票は自書能力を欠く場合に申請によることとされ,不在者投票は自ら又は施設の長に依頼して不在者投票用紙の請求等を行うものとされていることからすれば,少なくともこれらの行為を自らの意思で行うことができる能力があることが前提とされているといえる。 Cは特別養護老人ホームであり,その入所者については,介護保険法による場合のほか,65歳以上の者であって,身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし,かつ,居宅においてこれを受けることが困難であることを要件とする市町村の措置が入所の要件とされている(老人福祉法11条1項2号,20条の5)。 また,被告の書記が,平成13年9月13日,Cの入所者に対し,① こんにちわ,○○さんですか,② 気分はいかがですか,③ 町長選挙は投票しましたか,自分の名前は書けますかと質問し,その他,日常会話を試みたのに対し,54名の入所者中,( こんにちわ,○○さんですか,② 気分はいかがですか,③ 町長選挙は投票しましたか,自分の名前は書けますかと質問し,その他,日常会話を試みたのに対し,54名の入所者中,(1) 意思疎通が可能でその意思による投票が可能と思われた者15名,(2) 呼びかけには反応するが意思疎通がかなり困難と思われる者11名,(3) ①のあいさつ,呼びかけに反応せず,その意思による投票は不可能と判断される者16名,眠っていたこと等により調査不能であった者11名であったことが認められる(乙11の2,乙27)。入所者の健康診断書にも痴呆の記載が多く見られる(乙12の1ないし22)。 2人の看護婦の判断によっても,入所者54名中,意思確認はほとんど不可能な者が7名,介護者,家族等の助力があっても意思確認することができる時とできない時がある者が18名であったことが認められる(甲4の1,証人G)。 以上のような状況のもとで,法令の規定どおり,不在者投票用紙の請求等が入所者から依頼があった分についてだけなされ,代理投票が入所者から申請があった者だけについてなされ,自室で投票した者について投票の秘密保護に対する配慮から家族の立会が排除されていたとすれば,人数は確定し難いものの,そもそも投票しなかった入所者がいたものと考えられ,あるいは投票意思が明確ではないと判断されて白票として投票された入所者が他にもいたものと考えられる。そして,本件選挙が1票差であったことからすれば,本件の選挙規定違反は選挙結果に異動を及ぼす虞があるといわざるを得ない。 4 結論よって,本件選挙を無効としたA町選管の決定に対する審査請求を棄 挙が1票差であったことからすれば,本件の選挙規定違反は選挙結果に異動を及ぼす虞があるといわざるを得ない。 4 結論よって,本件選挙を無効としたA町選管の決定に対する審査請求を棄却した被告の裁決は相当であり,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所秋田支部裁判長裁判官矢 﨑 正彦裁判官佐藤道明裁判官齋藤大巳

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