令和4(ワ)3847 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年3月23日 大阪地方裁判所
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令和5年3月23日判決言渡同日原本受領裁判所書記官令和4年(ワ)第3847号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和5年2月10日判決 原告コモライフ株式会社同代表者代表取締役同訴訟代理人弁護士石井義人同牟田口卓也同岩村明生 同岡田健一同井上雄太同補佐人弁理士杉本勝徳同辻󠄀 忠行 被告有限会社MAKIスポーツ同代表者取締役同訴訟代理人弁護士石田琢磨同補佐人弁理士原田寛主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 被告は、原告に対し、3776万1332円及びこれに対する令和3年10月 21日から支払済みに至るまで年3パーセントの割合による金員を支払え 第2 事案の概要本件は、海外から商品名を「REFRESHRING」とする商品(以下「本件商品」という。)を輸入しようとした原告が、本件商品について関税法に基づき税関長に対して被告の有する特許権侵害を理由とする認定手続を求める申立てをしていた被告に対し、当該特許権に係る特許に無効原因があるにもかかわらず、 被告が前記の申立てを行った行為により、本件商品が同法69条の11第1項9号に掲げる物品に該当すると認定され、原告が本件商品を輸入することができず損害を る特許に無効原因があるにもかかわらず、 被告が前記の申立てを行った行為により、本件商品が同法69条の11第1項9号に掲げる物品に該当すると認定され、原告が本件商品を輸入することができず損害を被ったとして、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償3776万1332円及びこれに対する不法行為の後の日である令和3年10月21日から支払済みに至るまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求 める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲げていない事実は、争いのない事実又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者原告は、日用品雑貨の企画及び販売等を業とする株式会社である。 被告は、健康器具の製造及び販売等を業とする有限会社である。 (2) 被告の保有する特許権被告は、次の特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有している(以下、本件特許の特許請求の範囲請求項1に係る発明を「本件発明1」と、請求項2に係る発明を「本件発明2」といい、これ らを総称して「本件各発明」という。)。なお、本件特許の特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、明細書及び図面を「本件明細書」という。)の記載は別紙「特許公報」(甲1の1)のとおりである。 ア特許番号特許第3763840号イ出願日平成17年6月27日(以下「本件出願日」という。) ウ登録日平成18年1月27日 エ発明の名称トレーニング器具(3) 構成要件本件各発明の構成要件は、次のとおり分説される。 ア本件発明1A ほぼ並行状で相対向している一対の第1グリップ部と、 B 該第1グリップ部それぞれの両端部同士を接続し、第1グリップ部相互の間隔 構成要件は、次のとおり分説される。 ア本件発明1A ほぼ並行状で相対向している一対の第1グリップ部と、 B 該第1グリップ部それぞれの両端部同士を接続し、第1グリップ部相互の間隔に比し狭くしてほぼ並行状に相対向している一対の第2グリップ部とによってC 全体を平面からみてほぼ横長矩形枠を呈した一体のループ状に形成して成り、 D 第1グリップ部は直線状もしくは緩やかな曲線状に形成され、E 第2グリップ部は正面からみて弓形に湾曲され、中央部分が相互に近接するように平面からみて矩形枠の内方に向かってやや窄まり状に形成されていることを特徴とするF トレーニング器具。 イ本件発明2G 第1グリップ部は、第2グリップ部との接続部位が丸みを帯びている略矩形状を呈し、その矩形枠内に手首あるいは足首が挿入可能になっている請求項1に記載のトレーニング器具。 (4) 被告による輸入差止めの申立て 被告は、令和2年6月、税関長に対し、関税法69条の13第1項に基づき、本件商品について、本件特許権を侵害するとして、税関長の認定手続を求める申立てを行った(以下「本件申立て」という。)。本件申立ては、同月4日から令和6年6月3日までを有効期間として受理された。 (5) 原告の行為等 ア原告は、令和3年10月14日、神戸税関水島税関支署長(以下「水島税 関支署長」という。)に対し、本件商品1536点について、輸入申告を行った(甲4)。 イ水島税関支署長は、同月21日、原告に対し、前記輸入申告について、同条の12第1項に基づき、本件商品が、本件特許権を侵害すると思料されるとして、同条の11第1項9号に掲げる輸入してはならない貨物に該当するか否かを 認定するための手続を 前記輸入申告について、同条の12第1項に基づき、本件商品が、本件特許権を侵害すると思料されるとして、同条の11第1項9号に掲げる輸入してはならない貨物に該当するか否かを 認定するための手続を執る旨を通知した(甲4)。 水島税関支署長は、同年11月18日、本件商品について、本件特許権を侵害するとして、同号の物品に該当すると認定した(甲6。以下「本件認定」という。)。 ウ本件認定の結果、原告は、本件商品を国内に輸入することができなかった。 2 争点 (1) 本件申立てについて不法行為の成否(本件特許に関する無効原因の有無)(争点1)(2) 損害の発生及びその額(争点2)第3 争点についての当事者の主張 1 本件申立てについて不法行為の成否(本件特許に関する無効原因の有無) (争点1)(原告の主張)本件各発明は、別紙「主張一覧表」記載の「無効理由1」~「無効理由3」の各「原告の主張」欄に記載のとおり、新規性又は進歩性が欠如している。そのため本件特許には無効原因がある。それにもかかわらず、被告は本件申立てを行い、 その結果本件認定がなされ、原告は本件商品を輸入することができなくなった。 本件申立ては、違法に原告の財産処分権を制限するものであるから、被告の原告に対する不法行為が成立する。 (被告の主張)否認ないし争う。 原告が主張する無効理由には理由がなく、本件各発明に新規性及び進歩性が認 められることは、別紙「主張一覧表」記載の「無効理由1」~「無効理由3」の各「被告の主張」欄に記載のとおりである。 したがって、本件特許は有効であり、被告が行った本件申立てについて、不法行為は成立しない。 2 損害の発生及びその額(争点2) (原告の主張) 「被告の主張」欄に記載のとおりである。 したがって、本件特許は有効であり、被告が行った本件申立てについて、不法行為は成立しない。 2 損害の発生及びその額(争点2) (原告の主張)(1) 保管料関係費用原告は、本件申立てにより、本件商品を輸入することができず、本件商品が廃棄されるまでの間、既に発注済みであった本件商品を保税地域に留め置かざるを得なくなった。同期間において、次のとおり本件商品を保管するための保管料等 の費用が発生した。 ア本件商品1536点分について 7000円イ本件商品1440点分について 2万1300円(2) 処分費用原告は、本件申立てにより、本件商品を輸入することができず、本件商品を廃 棄処分する必要が生じ、8万6273円の処分費用が発生した。 (3) 逸失利益原告は、本件申立てにより、令和3年10月21日以降、本件商品を輸入することができず、本件商品を国内で販売することにより得られるはずの利益を得ることができなくなった。 原告は、同年11月から令和5年12月までの間に、少なくとも本件商品5万1376個の販売を予定していた。当該販売により原告に生じる利益は、合計3764万6759円を下らない。 そのため、原告には、逸失利益として同額の損害が生じた。 (4) 損害額合計 以上のとおり、本件申立てにより、原告には、少なくとも前記各費用及び逸失 利益の合計3776万1332円の損害が生じた。 (被告の主張)否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件申立てについて不法行為の成否(本件特許に関する無効原因の有無) (争点1)(1) 原告は、本件特許には無効原因があり、それにもかかわらず被告が本件申立てを行 当裁判所の判断 1 本件申立てについて不法行為の成否(本件特許に関する無効原因の有無) (争点1)(1) 原告は、本件特許には無効原因があり、それにもかかわらず被告が本件申立てを行った行為が不法行為に該当すると主張する。そこで、以下、本件特許に原告が主張する無効理由1~3が存在するかについて検討する。 (2) 認定 本件明細書、甲7公報及び甲8公報には以下の記載がある。 ア本件明細書の記載(ア) 技術分野「本発明は、筋肉ストレッチトレーニング…等を行う場合等に使用され、人体に対する対象使用部位、使用態様その他の選定によって各種・多様に使用可能な トレーニング器具に関するものである。」(【0001】)(イ) 発明が解決しようとする課題「…従来のトレーニング器具は、形状自体がドーナッツ型もしくは円形型であり、これらを両手で把持した際の幅間隔が常に一定の長さとなるため、例えば部位が異なる筋力トレーニングに対応させるよう幅間隔の異なる大きさのものが必 要な場合には、直径の異なるものをいくつか用意しなければならなかった。…また、従来のこのようなリング型のトレーニング器具では、手・腕、足・脚等のマッサージやトレーニングだけに限られるのが主であって、これら以外の身体部分の筋肉ストレッチトレーニング…等に使用するには不便であり、この他の体力チェック…等としての使用を考えると、それへの応用は困難である等の問題点を有して いた。」(【0003】) (ウ) 課題を解決するための手段「…本発明に係るトレーニング器具にあって、一対の第1グリップ部1aと、この第1グリップ部1a相互の間隔に比し狭い間隔の第2グリップ部1bとは、使用者が両手で持つ把持部位を当該第1グリップ部1aも 「…本発明に係るトレーニング器具にあって、一対の第1グリップ部1aと、この第1グリップ部1a相互の間隔に比し狭い間隔の第2グリップ部1bとは、使用者が両手で持つ把持部位を当該第1グリップ部1aもしくは第2グリップ部1bのいずれかを選択して変えることで、両手で把持した際の両手幅間隔が変え られる。」「また、直線状もしくは緩やかな曲線状に形成された第1グリップ部1a、および正面からみて弓形に湾曲され、中央部分が相互に近接するように平面からみて矩形枠の内方に向かってやや窄まり状に形成されている第2グリップ部1bは、両手で持ったときのグリップ性を向上させると共に、湾曲部分を備えた第2グリップ部1bの凹凸形状によって、使用者の身体各部位に対する押し当 て、持ち上げ、反らし等の多面的なトレーニング、ストレッチ等を可能にさせる。 …」(【0006】)(エ) 発明の効果「本発明によれば、両手で把持する際に、一対の第1グリップ部1aと、これよりも間隔の狭い第2グリップ部1bとのいずれかを選択して把持することで把 持する両手の幅間隔を変えることができ、両手使用による各種のトレーニング、ストレッチ時の各身体部位に対する増強、弛緩作用等を有効にし、…グリップ性も向上するのである。しかも、使用形態を種々に工夫し、例えば押し・引き・捻り、身体に当てる部位の選択、当てる方向、使用時の姿勢その他によって手・腕、足・脚以外の各身体部分のトレーニング・ストレッチを可能にし、筋肉ストレッ チトレーニング、筋力アップトレーニング、身体マッサージ、さらには体力チェック…等としても多用途に使用することができる。」(【0007】)「…第2グリップ部1bの弓形湾曲形状は、その山部分によって身体各部を選択して押し当てることで例えば首部や腰部のストレッ は体力チェック…等としても多用途に使用することができる。」(【0007】)「…第2グリップ部1bの弓形湾曲形状は、その山部分によって身体各部を選択して押し当てることで例えば首部や腰部のストレッチ、車椅子に乗った状態でのリハビリトレーニング、椅子を使うか仰臥もしくは起立した状態での背中への マッサージ等の多面的なトレーニングを可能にすると共に、逆に第2グリップ部 1bをその谷部分として身体各部位にあてがい、第1グリップ部1aを把持して持ち上げるように使用できる。」(【0009】)【図1】 【図2】(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。 イ甲7公報の記載(邦訳は甲15)(ア) 発明の名称「三頭筋をエクササイズするためのウエイトリフティング装置」(イ) 発明の背景 「本発明は概してウエイトリフティング器具に関する。より詳細には、本発明は、三頭筋の筋肉を分離(isolate)するための改善されたエクササイズ装置に関する。」(ウ) 従来技術の記述「特定の筋肉グループを分離するための多様な種類のバーベル機材およびダン ベル機材が知られている。…これらの装置は一般に大きな欠点を有する。1つの大きな欠点は、比較的長いバーを有するすべてのバーベル装置はバランスをとることが困難であることである。…したがって、重りを使用しない装置もいくつか考え出されている。…これらの大型の高価なフィットネス・マシンは本格的なボディビルダーに対しては限定的な有効性しか有さず…本格的なボディビルダーに よって使用されることは稀である。…三頭筋運動器具に関連する別の一般的な問 題は、三頭 マシンは本格的なボディビルダーに対しては限定的な有効性しか有さず…本格的なボディビルダーに よって使用されることは稀である。…三頭筋運動器具に関連する別の一般的な問 題は、三頭筋を働かせるのに使用されるほとんどの器具が手のひらを上に向けることを必要とすることである。このようなタイプのハンド・ポジションは、特に重い重りを持ち上げながら肘を内側で維持することを困難にする。」「本発明は、バランスをとることの問題を有意に低減する中央に位置する重りプレート固定手段を有する。…本発明は、複数のハンド・ポジションおよび間隔 を可能にする三頭筋伸展装置を開示する。」(エ) 発明の概要「本発明は、三頭筋をエクササイズするためのウエイトリフティング装置を提供することにより従来技術の短所を解消する。装置が、両側にあるハンドルを備える中央の重り支持セクションを有し、各ハンドルが複数の握持位置を有する。 装置が頭部の後方で保持され得、三頭筋を分離およびエクササイズするために繰り返し頭部の上に延在させられ得る。重り支持セクションが多数の重りプレートを受け入れることができ、重りプレートを中央位置で固定的に保持するためのクランプ機材を有する。この装置を用いることにより多数の他のエクササイズも容易になる。」 (オ) 詳細な説明「…装置が、バー・ハンドル組立体および支持クランプ組立体である2つの主要構成要素を有する。バー10が、好適には、鉄の棒の単一の中実部片または素管を曲げることにより形成される。…バー10が、第1グリップ部分16を各々有する2つの相互に対向するハンドル延在部分12と、2つの副グリップ部18、 20とを有する。…バー10の最終構成が、この組み合わせの組立体に、横方向および縦方向の両方にお ップ部分16を各々有する2つの相互に対向するハンドル延在部分12と、2つの副グリップ部18、 20とを有する。…バー10の最終構成が、この組み合わせの組立体に、横方向および縦方向の両方においてハンドル延在部分12の間に位置する重心を有させる、という特徴を有する。この特徴は非常に重要である。その理由は、これにより、結果として生じるようなねじり荷重を使用者の手首に作用させることなく使用者がハンドル12を握持してバー10を持ち上げることが可能となるからであ る。…バー10が重り支持プラットフォーム26に平行である水平部分24を有 し…。」「ハンドル延在部分が、各々、バーの水平部分から約20°の斜角で延在し、その結果、第1グリップ部分がバーの水平部分からオフセットされる平面内に位置することになる。第1グリップ部分が互いに平行であり、副グリップ部が第1グリップ部分からバーの水平部分まで互いの方へと内側に延在する。」 「重り支持プラットフォーム26および解除可能なクランプ手段28が支持クランプ組立体を形成する。バー10が中央に位置する重り支持プラットフォーム26に固定され、中央に位置する重り支持プラットフォーム26がバー10と同じ材料で作られ得る。プラットフォーム26をバー10に取り付けることが、好適には、繰り返しの使用後にまたは重いウエイトリフティング中に装置1の故障 を引き起こす可能性がある単一である応力点または複数である応力点を排除するために、溶接によって達成される。…重りまたは重りプレート40をプラットフォーム26上で位置決めするのに直立ポスト38が使用される。…直立ポスト38は中央に位置し…クランプ部材28がポスト38の周りで固定的に留められ、それにより重りをプラットフォーム26上に固着す トフォーム26上で位置決めするのに直立ポスト38が使用される。…直立ポスト38は中央に位置し…クランプ部材28がポスト38の周りで固定的に留められ、それにより重りをプラットフォーム26上に固着する。」 【図1】 【図2】 【図3】 (以下、甲7公報記載の発明について【図2】の方向を「正面」、【図3】の方向を「平面」という。)ウ甲8公報の記載 (ア) 考案の名称「静的トレーニング用器具」 (イ) 実用新案登録請求の範囲「二点で折り曲がった部材1と2の間に、はしご状に3、4、5、6の部材が取り付けられたトレーニング器具」(ウ) 考案の詳細な説明「本考案は、筋力を増加させるために静的トレーニング(アイソメトリック) を行なう時、それを助ける器具である。」「従来、筋力増加を目的とするトレーニングとしては、動的トレーニングと静的トレーニングが行われてきた。動的トレーニングには、バーベル、ダンベル等の重量物を運動負荷とするウエイトトレーニング…がある。しかし、ウエイトトレーニングは、…多くの器具や広いトレーニング場が必要であるし…危険でもあっ た。…これら動的トレーニングに比べ静的トレーニングは、負荷を重量物やバネによらないため、安全性の高いことはよく知られている。」「使用する時は、…4図のように、胸の前で3と6を持ち、これを最大努力において数秒間、引っぱり、もしくは、押しつける…。5図も同様であるが、4と5を使うため幅が狭くなり、関節の角度に変化をつけることができ効果が一層高 くなる。」「さらに、3と4、3と5、1と2、それぞれの間隔を適当にとることによって、関節の角度に一層変化をもたせることができる。」「10図の斜視 に変化をつけることができ効果が一層高 くなる。」「さらに、3と4、3と5、1と2、それぞれの間隔を適当にとることによって、関節の角度に一層変化をもたせることができる。」「10図の斜視図のように、円弧状にしてもほぼ同様に使用でき…。また、3、4、5、6の間に部材を追加し、さらに間隔に変化をつけることができ…。」 【1図~3図】 【10図】(図10) (以下、「2図」の方向を平面とする。)(3) 無効理由1についてア原告は、甲7公報の記載からバー10を抽出し、別紙「主張一覧表」の「無効理由1」の「原告の主張」欄記載の構成a~gを有するとして、これを引用発明(甲7発明)とし、本件各発明は甲7発明の構成を全て備える、本件各発明の 構成要件Fが甲7発明の構成fと相違するとしても、バー10を用いてトレーニングすることは可能であるから相違点は軽微である旨主張する。 しかし、甲7公報の記載から、バー10のみを分離して独立の運動器具としての発明と理解することは相当でない。すなわち、前記(2)イ認定のとおり、甲7公報には、従来のバーベル機材およびダンベル機材において、比較的長いバーを 有する装置はバランスをとることが困難であり、重りを使用しない装置は本格的なボディビルダーに対しては限定的な有効性しか有さないとの欠点や、三頭筋を働かせるのに使用されるほとんどの器具が手のひらを上に向けることを必要とするが、このようなタイプのハンド・ポジションは、特に重い重りを持ち上げながら肘を内側で維持することを困難にするとの欠点があったこと、甲7公報記載の 発明は、三頭筋をエクササイズするためのウエイトリフティング装置を提供することにより従来技術の短所を解消するものであり ら肘を内側で維持することを困難にするとの欠点があったこと、甲7公報記載の 発明は、三頭筋をエクササイズするためのウエイトリフティング装置を提供することにより従来技術の短所を解消するものであり、バランスをとることの問題を有意に低減する中央に位置する重りプレート固定手段を有し、複数のハンド・ポジションおよび間隔を可能にする三頭筋伸展装置を開示すること、装置は、バー・ハンドル組立体および支持クランプ組立体である2つの主要構成要素を有するこ と、重り支持プラットフォーム26および解除可能なクランプ手段28が支持クランプ組立体を形成し、バー10が、中央に位置する重り支持プラットフォーム26に固定されること、プラットフォーム26をバー10に取り付けることが、好適には、故障を引き起こす可能性を排除するために、溶接によって達成されること、重り又は重りプレート40をプラットフォーム26上で位置決めするのに 直立ポスト38が使用され、クランプ部材28がポスト38の周りで固定的に留 められ、それにより重りをプラットフォーム26上に固着することが記載される。 これらの記載からすると、甲7公報記載の発明において、重り支持プラットフォーム26を含む支持クランプ組立体はバー10とともに装置の主要構成要素であり、バー10は溶接等の方法によりプラットフォーム26に固定され、バー10は重り支持プラットフォーム26等と物理的に一体であることが前提となっていると いえる。また、甲7公報記載の発明は、従来のバーベル機材等における、比較的長いバーを有する装置はバランスをとることが困難であり、重りを使用しない装置は本格的なボディビルダーに対しては限定的な有効性しか有さないとの欠点を解消するため、バランスをとることの問題を有意に低減する中央に位置す る装置はバランスをとることが困難であり、重りを使用しない装置は本格的なボディビルダーに対しては限定的な有効性しか有さないとの欠点を解消するため、バランスをとることの問題を有意に低減する中央に位置する重りプレート固定手段を有し、複数のハンド・ポジションおよび間隔を可能にする三 頭筋伸展装置を提供するものであり、バー10は支持クランプ組立体と一体となって作用効果を奏するといえる。そして、バー10のみが独立してウエイトリフティング・エクササイズにおける運動器具としての作用効果を発揮することは、甲7公報には記載も示唆もされていない。 以上によれば、三頭筋運動器具の発明に関する甲7公報の記載から、その部材 の一つにすぎないバー10のみを抽出して独立の運動器具としての引用発明(甲7発明)と理解することはできず、本件各発明の構成要件Fと甲7発明の構成fは明らかに相違する。 イ前記アに述べたところからすれば、運動器具の発明ではない甲7発明を引用発明として抽出した上、トレーニング器具の発明である本件各発明と対比し、 甲7発明の構成を全て備える同一の発明であるとして、本件各発明は新規性を欠くとする原告の主張は認められない。 ウ原告の主張について(ア) 被告は、甲7公報記載の発明について、別紙「主張一覧表」の「無効理由1」の「被告の主張」欄のh~tの構成を備える(以下、被告主張の構成を備 える発明を「甲7発明(被告)」という。なお、甲7発明(被告)における「メ インハンドル部分16」及び「代替の把持領域18,20」は、それぞれ、「第1グリップ部分16」及び「副グリップ部18,20」と同義と解されるから、そのように言い換えることがある。)として、少なくとも、本件各発明と甲7発明(被告)とは、次の①及び② 0」は、それぞれ、「第1グリップ部分16」及び「副グリップ部18,20」と同義と解されるから、そのように言い換えることがある。)として、少なくとも、本件各発明と甲7発明(被告)とは、次の①及び②の相違点がある旨主張するところ、原告は、下記相違点①につき、後行発明である本件各発明が、先行発明である甲7発明(被告) に包含されるから、新規性は否定される、下記相違点②につき、本件各発明の第2グリップ部に係る「弓形」には台形等の円弧状でないものも含まれ、甲7発明(被告)のバー10の副グリップ部18、20及び水平部分24の台形状に折曲した形状が「弓形に湾曲」したものに含まれるとして、これらは相違点とはいえない旨を主張する。 ① 本件各発明は、重り支持部分を備えないのに対し、甲7発明(被告)は、重り支持部分を備える点(以下「相違点①」という。)② 本件各発明の第2グリップ部は、ほぼ並行状で、正面から見て弓形に湾曲されているのに対し、甲7発明(被告)のバー10の副グリップ部18、20は、第1グリップ部分16から、水平部分24まで、互いに内側に向かって延 び、一方の副グリップ部18、20から、水平部分24、他方の副グリップ部18、20まで、正面から見て、台形に折曲している点(以下「相違点②」という。)(イ) しかし、相違点①について、前記アのとおり、甲7公報記載のバー10は、それ自体が運動器具の発明であるとは認められないから、バー10の構成が甲7発明(被告)に含まれるからといって、本件各発明が甲7発明(被告)に包 含されるとはいえない。 したがって、相違点②について判断するまでもなく、被告主張の相違点について相違点とはいえないとして本件各発明と甲7発明(被告)が同一であるとする原告の主張は採用できない。 (4 るとはいえない。 したがって、相違点②について判断するまでもなく、被告主張の相違点について相違点とはいえないとして本件各発明と甲7発明(被告)が同一であるとする原告の主張は採用できない。 (4) 無効理由2について ア原告は、甲7公報の記載からバー10を抽出した甲7発明を主引用発明と して、公知技術(甲8、9)を適用することにより、本件各発明は、当業者が容易に発明することができる旨主張する。 しかし、前記(3)アのとおり、甲7公報の記載から、部材の一つにすぎないバー10のみを分離して独立の運動器具の発明と理解することは相当でなく、トレーニング器具の発明である本件各発明とは技術的内容・性質の異なる甲7発明を主 引用発明として、本件各発明が進歩性を欠如する旨の原告の主張は認められない。 イ前記(3)ウのとおり、被告は、本件各発明と甲7発明(被告)を対比すると、少なくとも、相違点①及び②が相違する旨主張するところ、原告は、被告主張の相違点を前提としても、相違点に係る本件各発明の構成は、公知技術(甲8、9)から容易想到である旨主張するので、以下、検討する。 ウ容易想到性の検討(ア) 相違点①(本件各発明は、重り支持部分を備えないのに対し、甲7発明(被告)は、重り支持部分を備える点)について前記(3)アのとおり、甲7公報記載の発明は、ウエイトリフティング装置として、バー10に重り支持部分(重り支持プラットフォーム26、クランプ部材2 8、直立ポスト38)を固定し、重り又は重りプレート40を重り支持プラットフォーム26に固着して使用することを前提とした発明である。すなわち、バー10は、重り支持プラットフォーム26等により形成される支持クランプ組立体と物理的に一体となって作用効果を奏するも 持プラットフォーム26に固着して使用することを前提とした発明である。すなわち、バー10は、重り支持プラットフォーム26等により形成される支持クランプ組立体と物理的に一体となって作用効果を奏するものであるし、バー10が独立して運動器具としての作用効果を発揮することは、甲7公報に記載も示唆もされていな いから、甲7公報に接した当業者に、甲7公報記載の発明から重り支持部分を取り外す動機付けがあるとは考え難い。したがって、相違点①に係る本件各発明の構成は甲7発明(被告)から容易想到であるとはいえない。 これに対し、原告は、甲7公報の明細書に溶接前の単独のバー10が記載されていること、甲7発明(被告)は重りのついた状態でも本件各発明と同様の作用 効果を奏すること、バー10の状態でも一定の三頭筋エクササイズの効果は得ら れるところ、よりエクササイズの幅を広げる目的で甲7発明(被告)から重り支持部分を取り外す動機付けはあることを根拠として、甲7発明(被告)から重り支持部分を取り外すことは容易想到である旨主張する。しかし、前示のとおり、甲7公報には、バー10が単独で運動器具としての作用効果を奏することは何ら開示されていない。仮に甲7発明(被告)が本件各発明と同様の作用効果を奏す るとして、甲7発明(被告)は、ウエイトリフティング装置として、バー10に固定された重り支持部分を構成する重り支持プラットフォーム26に重り又は重りプレート40を固着して使用することを前提とした発明であるから、よりエクササイズの幅を広げる目的で重りを取り外して使用する可能性はあるとしても、重り支持部分全体を取り外す動機付けがあるとはいえない。したがって、原告の 主張は採用できない。 (イ) 以上のとおり、相違点②について判断するまでもなく 外して使用する可能性はあるとしても、重り支持部分全体を取り外す動機付けがあるとはいえない。したがって、原告の 主張は採用できない。 (イ) 以上のとおり、相違点②について判断するまでもなく、被告主張の相違点を前提としても、相違点に係る本件各発明の構成に至ることが容易であるという原告の主張は採用できない。 (5) 無効理由3について ア甲8発明の構成前記(2)ウのとおり、甲8公報の記載によれば、甲8発明は、次のとおりの構成を有する(争いがない。)。 a 甲8公報の図10のとおり、部材1、2、3及び6で構成される矩形枠中に部材4及び5がはしご状に取り付けられたトレーニング器具であること b 第2グリップ部相当部(部材1、2)の中央部分が相互に近接するように窄まり状に形成されていないことイ相違点甲8発明の構成について部材1及び2が本件各発明の第2グリップ部に相当し、本件各発明と甲8発明を対比すると、以下の①´及び②´の点が相違することは、 当事者間に争いがない。 ①´ 本件各発明の第2グリップ部は、中央部分が相互に近接するように平面からみて矩形枠の内方に向かってやや窄まり状に形成されているのに対し、甲8発明の第2グリップ部相当部の中央部分が相互に近接するように窄まり状に形成されていない点(以下「相違点①´」という。)②´ 甲8発明は、部材1、2、3及び6で構成される矩形枠中に部材4及び 5がはしご状に取り付けられているのに対し、本件各発明にははしご状に取り付けられた部材が存在しない点(以下「相違点②´」という。)ウ容易想到性(ア) 原告は、相違点①´について、当業者が、甲8発明に甲7発明の第2グリップ相当部(副グリップ部18、20)の窄まり形状を適用すること 在しない点(以下「相違点②´」という。)ウ容易想到性(ア) 原告は、相違点①´について、当業者が、甲8発明に甲7発明の第2グリップ相当部(副グリップ部18、20)の窄まり形状を適用することは、各発 明の技術分野、課題及び作用効果の共通性等から容易に想到し得ると主張する。 しかし、前記(2)ウ認定の甲8公報の記載からすると、甲8発明は、外側に配置された部材3及び6のみならず、内側に配置された部材4及び5を持ち、持ち手の幅を狭くして関節の角度に変化をつけ、トレーニング効果を高めて使用することが想定された器具である。このような甲8発明において、部材1及び2の中 央部分を相互に近接するような窄まり形状の構成に変更する場合、持ち手である部材4及び5が握りにくくなり、部材1及び2の円弧状の面を床面に接地させる使用例(甲8公報の8図)が想定されている甲8発明において床面への接地部分の幅が細くなり不安定となるという問題が生じる。そのため、甲8発明において、このような構成へ変更することについての動機付けは認められず、むしろ阻害要 因があるといえる。 そうすると、当業者にとって、甲8発明を引用発明として相違点①´に係る本件各発明の構成に至ることが容易であるとは認められない。 (イ) また、原告は、相違点②´について、甲8発明から部材4及び5を取り除くに当たり、第2グリップ相当部(部材1、2)を補強するとの課題があり、 甲7発明(バー10)における第2グリップ相当部の中央部分を窄めることによ り補強するとの甲7発明の課題が共通するから、甲8発明に甲7発明を適用することは容易である旨主張する。 しかし、甲8発明は、外側に配置された部材3及び6のみならず、内側に配置された部材4及び5を持ち、持ち手の幅を狭くして 課題が共通するから、甲8発明に甲7発明を適用することは容易である旨主張する。 しかし、甲8発明は、外側に配置された部材3及び6のみならず、内側に配置された部材4及び5を持ち、持ち手の幅を狭くして関節の角度に変化をつけ、トレーニング効果を高めて使用することが想定された器具である。このような甲8 発明において、部材4及び5を取り除く構成を採用する動機付けは認められず、むしろ阻害要因があるといえる。そもそも、甲8発明は、危険性等の課題がある動的トレーニング(動的トレーニングには、バーベル、ダンベル等のウエイトトレーニングがある。)が有する課題解決を目的とする安全性の高い静的トレーニングに使用される器具に関する発明であり(前記(2)ウ(ウ))、動的トレーニング に該当する甲7公報記載の発明と課題及びその技術思想等が共通しているとは認められない。 そうすると、当業者にとって、甲8発明を引用発明として、相違点②´に係る本件各発明の構成に至ることが容易であるとは認められない。 2 まとめ 以上より、原告が主張する無効理由1~3はいずれも認められず、本件各発明について無効原因があるとはいえない。したがって、被告が本件特許権に基づいて行った本件申立てが違法なものであるとは認められず、本件申立てについて、不法行為は成立しない。 3 結論 以上から、争点2について判断するまでもなく、原告の請求は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官武宮英子 裁判官杉 裁判長裁判官武宮英子 裁判官杉浦一輝 裁判官布目真利子 【別紙】主張一覧表無効理由1本件出願日前に頒布された米国特許第US6196951 号明細書(甲7。以下「甲7公報」という。)に記載された発明(発明の内容に関する当事者の主張が異なるため、原告主張にかかる甲7公報記載の発明につき、以下「甲7発明」という。)に基づく本件各発明の新規性欠如原告の主張被告の主張本件各発明は、甲7発明の構成要件を全て備える同一の発明であり、新規性を有さない(特許法29条1項3号)。 争う。 甲7公報記載の発明の構成バー10(甲7発明)は、次の構成a~gを有し、重り支持プラットフォーム26に溶接で取り付けられる旨が記載されている。三頭筋エクササイズを行うについては、重り支持プラットフォームがないバー10の状態においても一定の効果は得られるのであり、甲7公報記載の発明は、バー10という発明に、重り支持プラットフォーム及び重りを追加した発明と考えられる。甲7公報には、溶接前の単独のバー10が記載されているから、バー10が甲7公報記載の発明の一部であるとしても、重り支持プラットフォーム26とは独立した構造をもったものとして、それぞれ分離して発明を読み取り、甲7発明としてバー10を抽出し、引用発明とすることができる。したがって、本件各発明は、甲7公報のウエイトリフティング装置1全体と対比するのではなく、バ のとして、それぞれ分離して発明を読み取り、甲7発明としてバー10を抽出し、引用発明とすることができる。したがって、本件各発明は、甲7公報のウエイトリフティング装置1全体と対比するのではなく、バー10と対比すべきである。 甲7公報記載の発明は、「バー・ハンドル部分」と「重り支持部分」を主要構成要素とする発明であり、甲7公報の「発明の詳細な説明」の冒頭の記載からすると、バー10が重り支持プラットフォーム26に固定されることが明らかにされている。バー・ハンドル部分(バー10)は独立した発明ではない(バー10は甲7公報記載の発明の他の部分と直接関係し、技術的に独立していない。)。仮にバー10が単独で使用可能であるとしても甲7公報記載の発明の一部にすぎず、新規性判断の対象となる引用発明とはならない。 バー・ハンドル部分(バー10)のみを本件各発明と対比することは不適切であり、甲7公報記載の発明全体を対比して行わなければならない。 aほぼ並行状で相対向している一対の第1グリップ部分16と、hバー・ハンドル部分(バー10)と重り支持部分から成る上腕三頭筋運動器1であって、iバー・ハンドル部分(バー10)は、2つの相互に対向するハンドル延在部分12及び2つの相互に対向する水平部分24を備え、j各ハンドル延在部分12は、水平部分24から約20度の角度で延び、k各ハンドル延在部分12は、メインハンドル部分16及び2つの代替の把持領域18、20を備え、l2つのメインハンドル部分16は、直線状で、パッド付きスリーブ22を備え、互いに並行であり、m代替の把持領域18、20は、平面から見て、メインハンドル部分16から、水平部分24まで、互いに内側に向かって延び、n一方の代替の把持 ド付きスリーブ22を備え、互いに並行であり、m代替の把持領域18、20は、平面から見て、メインハンドル部分16から、水平部分24まで、互いに内側に向かって延び、n一方の代替の把持領域18、20から、水平部分24、他方の代替の把持領域18、20まで、正面から見て台形に折曲し、oメインハンドル部分16と代替の把持領域1b該第1グリップ部分16それぞれの両端部同士を接続し、第1グリップ部分16相互の間隔に比し狭くしてほぼ並行状に相対向している一対の第2グリップ部とによってc全体を平面からみてほぼ横長矩形枠を呈した一体のループ状に形成して成り、d第1グリップ部分16は直線状に形成され、e第2グリップ部は、正面からみて弓形に湾曲され、中央部分が相互に近接するように平面からみて矩形枠の内方に向かってやや窄まり状に形成されているfウエイトリフティング装置1のバー10g第1グリップ部分16は、第2グリップ部との接続部位が丸みを帯びている略矩形状を呈し、その矩形枠内に手首あるいは足首が挿入可能になっている。 8、20との接続部位が平面から見て鋭角状を呈し、pバー・ハンドル部分(バー10)は、平面から見て略矩形状を呈し、q重り支持部分は、重り支持プラットフォーム26、クランプ部材28、支柱38及び重り40から成り、r支柱38の周りに、クランプ部材28、重り40、重り支持プラットフォーム26の順に重ねて、支柱38にクランプ部材28及び重り支持プラットフォーム26を固定し、s重り支持プラットフォーム26とバー・ハンドル部分(バー10)とを、重り支持プラットフォーム26が2つの相互に対向する水平部分24の中央に位置するよう固定した、t ォーム26を固定し、s重り支持プラットフォーム26とバー・ハンドル部分(バー10)とを、重り支持プラットフォーム26が2つの相互に対向する水平部分24の中央に位置するよう固定した、t上腕三頭筋運動器1。 本件各発明と被告主張の甲7公報記載の発明との相違点①被告主張の相違点①につき、本件各発明と甲7発明のバー10を対比すべきであるから、被告の主張は失当である。仮に相違点①を考慮するとしても、甲7公報記載の発明はバー10に重り支持部分を加えた発明であり、先行発明が「バー10+重り支持部分」という構成要件であって、後行発明が「バー10」という構成要件であった場合、バー10という発明部分は先行発明に包含されるものとして、新規性が否定されるべきである。 相違点①本件発明1は、重り支持部分(甲7公報記載の発明の構成要件h、q、r、s)を備えないのに対し、甲7公報記載の発明は、重り支持部分を備える点②被告主張の相違点②につき、「弓形」には台形等の円弧(円の一部)状でないものも含まれるから、台形山状に折曲したものも「弓形」に湾曲したものに含まれ、甲7公報記載の発明も「弓形」に湾曲しているといえる。 相違点②本件発明1の第2グリップ部は、ほぼ並行状で、正面から見て弓形に湾曲されているのに対し、甲7公報記載の発明の「代替把持領域18、20」は、メインハンドル部分16から、水平部分24まで、互いに内側に向かって延び、一方の代替の把持領域18、20から、水平部分24、他方の代替の把持領域18、20まで、正面から見て台形に折曲している点。 ③被告主張の相違点③につき、甲7公報記載の発明は広義には「トレーニング器具」であり、本件各発明との相違点ではない。 相違点③本件発明1は「トレー 、正面から見て台形に折曲している点。 ③被告主張の相違点③につき、甲7公報記載の発明は広義には「トレーニング器具」であり、本件各発明との相違点ではない。 相違点③本件発明1は「トレーニング器具」であるのに対し、甲7公報記載の発明は「上腕三頭筋運動器1」である点。 本件各発明の新規性欠如の有無甲7発明における「第1グリップ部分16」と「第2グリップ部」は、それぞれ、本件各発明における「第1グリップ部分」と「第2グリップ部」に相当し、本件各発明の構成要件A~F は甲7発明の構成a~fと、本件発明2の構成要件Gは甲7発明の構成gと、それぞれ一致する。 本件各発明の構成要件Fは「トレーニング器具」であるのに対し、甲7発明の構成fは「ウエイトリ本件発明1と甲7公報記載の発明には、上記相違点があるから、本件発明1は甲7公報記載の発明と同一ではない。本件発明2は、本件発明1の全ての構成を備え、さらに限定したものであるから、本件発明2は甲7公報記載の発明と同一ではない。したがって、本件各発明には新規性が認められる。 また、本件各発明の請求項記載の「弓形」は「弦とその上に張る弧とで囲んだ円の一部分」を意味し、 フティング装置1の(部品である)バー10」である点は相違するが、相違点は軽微であり、バー10を用いて本件各発明と同様のトレーニングが可能である。本件各発明の「第2グリップ部」を台形状にするとトレーニング効果を得られないとの被告の主張は根拠がないものである。したがって、バー10もトレーニング器具といえるから、甲7発明の構成fは本件各発明の構成要件Fを満たす。 よって、本件各発明は、甲7発明の構成を全て備える同一の発明である。 台形状のものは含まれない。本件各発明の「第2グリップ部」を台形状に の構成fは本件各発明の構成要件Fを満たす。 よって、本件各発明は、甲7発明の構成を全て備える同一の発明である。 台形状のものは含まれない。本件各発明の「第2グリップ部」を台形状にすると、「第2グリップ部」を身体に押し当てて動かしても背骨や腰にフィットせず、トレーニング効果を得ることができない(乙2、3、本件明細書の図10、11、15)。 さらに、甲7公報記載の発明が「三頭筋運動」を目的とするものであることは認めるが、本件各発明は「トレーニング器具」であるのに対し、甲7公報記載の発明は「上腕三頭筋運動器」であり、両者は文言上同じではないし、本件各発明は各種のトレーニング、ストレッチ等の多用途の使用が可能であるのに対し、甲7公報記載の発明の用途は「三頭筋運動」に限られ、両者の差異は大きい。 無効理由2甲7発明に基づく本件各発明の進歩性欠如原告の主張被告の主張本件各発明は、甲7発明を主引用発明として、公知技術(甲8、9)を適用することにより当業者が容易に発明することができる(特許法29条2項)。 甲7公報記載の発明に甲8の発明又は甲9の発明を適用することには、動機付けがなくかつ阻害要因が存在する。したがって、本件各発明は、甲7公報記載の発明から容易に想到し得るとはいえず、進歩性が認められる。 本件各発明と甲7発明との相違点 本件各発明はトレーニング器具であるのに対し、甲7発明はトレーニング器具(ウエイトリフティング装置1)の部品であるバー10である点 前記無効理由1の「甲7公報記載の発明の構成」欄の被告の主張のとおり、甲7公報記載の発明からバー10のみを抽出して本件各発明と対比することは不適切である。 また、本件各発明と甲7公報記載の発明の相違点は、 1の「甲7公報記載の発明の構成」欄の被告の主張のとおり、甲7公報記載の発明からバー10のみを抽出して本件各発明と対比することは不適切である。 また、本件各発明と甲7公報記載の発明の相違点は、前記無効理由1の「被告の主張」欄の相違点①~③と同じ(ただし、「本件発明1」とあるのを「本件各発明」と読み替える。)である。 容易想到性甲7発明を前提として、重りを戴置せずにストレッチに用いる矩形枠状の発明が特許出願前から公知であるから(甲8、9)、当業者は、甲7発明に、重りを載置せずに矩形枠状の器具をトレーニング器具とするアイデアを適用して、単独でストレッチ用のトレーニング器具を想到することは容易である。 本件発明1は甲7公報記載の発明から容易に想到し得ない。本件発明2は、本件発明1の全ての構成を備え、さらに限定したものである。したがって、本件発明2も甲7公報記載の発明から容易に想到し得ない。 被告主張の相違点①について 甲7公報の明細書には溶接前の単独のバー10が記載され、甲7公報からバー10を抽出することは可能であるから、甲7発明から本件各発明を想起することは容易である。また、甲7発明(バー10)を用いることにより、本件明細書の図6から図24のいずれの運動も可能であって、甲7発明は、重りのついた状態でも本件各発明と同様の作用・効果を奏する。甲7記載の発明は、従来技術であるバー部分と重り部分の2つの要素により成り立っているバーベル装置につき、バーが長いことによってバランスをとることが困難であるとの問題点を解消するため、バーを短くした上で、三頭筋運動器具によるエクササイズを実現するためのもので、三頭筋のエクササイズを行うには、重り支持プラットフォームがないバー10の状態でも一定の効果は得られるのであり、 ため、バーを短くした上で、三頭筋運動器具によるエクササイズを実現するためのもので、三頭筋のエクササイズを行うには、重り支持プラットフォームがないバー10の状態でも一定の効果は得られるのであり、よりエクササイズの幅を広げることを目的として、甲7発明から重り支持部分を取り外すことの動機付けはある。 ①相違点①について(重り支持部分を取り外すことが想定されていないこと) 甲7公報の「発明の詳細な説明」の冒頭の記載からすると、バー10が重り支持プラットフォーム26に固定され、バー・ハンドル部分と重り支持部分は甲7公報記載の発明の主要構成要素で不可分一体であることが明らかであり、重り支持部分を取り外す動機付けがない。また、甲7公報記載の発明は、重りを上げ下げ等することで上腕三頭筋の筋力アップを図る「上腕三頭筋運動器」であるが、重り支持部分を取り外すと、三頭筋運動の効果が大幅に減少するため、重り支持部分を取り外すことには阻害要因がある(原告主張のエクササイズ方法は「重り」を取り外す根拠とはなり得ても、「重り支持部分」を取り外す根拠にはならない。)。さらに、甲7公報記載の発明は、重り支持部分を取り外すと支柱38等が障害となり本件明細書の図10、11及び15のように身体に押し当てて使用することは困難であるし、重り支持部分を有する状態で本件明細書の図6から図24までの全ての運動を行うことはできない。甲7公報記載の発明から重り支持部分を取り外すことは、当業者が容易に想到し得ない。 被告主張の相違点②について本件各発明における「並行」とは「並び行くこと」であり(甲18、27)、甲7発明における「代替の把持領域18、20」は並び行くように設けられている(「並ぶ」には「隣り合う」との意味も含まれる。)から、互いに おける「並行」とは「並び行くこと」であり(甲18、27)、甲7発明における「代替の把持領域18、20」は並び行くように設けられている(「並ぶ」には「隣り合う」との意味も含まれる。)から、互いに内側に延びているからといって、本件各発明との相違点は存在しない。 また、「弓形」には「台形山状」のものは含まれないとしても、甲8の図10には第2グリップ部相当部が正面視で円弧状のものが記載されているから、これを甲7発明(バー10)に適用することで、相違点②に係る本件各発明の構成に至ることは容易である。甲7発明及び甲8記載の発明は複数の把持位置を設ける点で課題が共通するため、組み合わせる動機付けはある。 三頭筋をエクササイズするための改善されたウエイトリフティング装置を提供するとの甲7公報記載の発明の目的からすると、重り支持部分を取り除いた上で、初心者向けのウエイトリフティング装置を作り、かつ、より使用者がハンドル部分を持ちやすいように円弧状に形状を変形させることは、当業者にとって容易である。また、甲8の図10の部材4、5は、複数の把持位置を設定することにより、手で持ったときの関節の角度に変化をつけることでトレーニング効果に変化を与えるためのものであるから、これらの部材を取り除くことにより脆弱になるとはいえず、トレーニング効果が失われることは事実としても、むしろ、発明の目的からすれば、これらの部材を取り除き、器具の大きさを小さくすることは容易想到である。 ②相違点②について(「代替の把持領域18、20」を並行状とすることが困難であること) 甲7公報記載の発明の「代替の把持領域18、20」を並行状にするには、a.メインハンドル部分16の長さを ②相違点②について(「代替の把持領域18、20」を並行状とすることが困難であること) 甲7公報記載の発明の「代替の把持領域18、20」を並行状にするには、a.メインハンドル部分16の長さを短くするか、b.水平部分24の間隔を広くするか、の2択となる。この点、a.メインハンドル部分16の長さを短くするとなると、メインハンドル部分16を手で把持できなくなってしまうから阻害要因がある。一方、b.水平部分24の間隔を広くすると、水平部分24と固定された重り支持プラットフォーム26を大きくしなければならないが、重り支持プラットフォーム26を大きくする動機付けはない。したがって、「代替の把持領域18、20」を並行状とすることは当業者が容易に想到し得ない。また、甲7公報の記載によれば、「代替把持領域18、20」はメインハンドル部16から水平部分24まで互いに内側に向かって延びるように設けられているものであって、並び行くように設けられてはいない。 甲7公報記載の発明は、一方の代替の把持領域18、20から、水平部分24、他方の代替の把持領域18、20までは正面から見て台形に折曲しているところ、水平部分24は重り支持プラットフォーム26を固定するため水平な構造となっており、水平部分24を身体に接触させて用いることは想定されていないし、水平部分24を円弧状にするとバー10に重り支持プラットフォームを固定できなくなるから、水平部分24を円弧状とすることには阻害要因がある。また、甲8公報の図10から部材4、5を取り外すとトレーニング器具として使用するには脆弱となり、危険な状態となり得るから、甲8公報の図10から部材4、5を取り外して甲7公報記載の発明に適用することには阻害要因がある。したがって、甲7公報記載の発明の一方の代替の把 て使用するには脆弱となり、危険な状態となり得るから、甲8公報の図10から部材4、5を取り外して甲7公報記載の発明に適用することには阻害要因がある。したがって、甲7公報記載の発明の一方の代替の把持領域18、20から、水平部分24、他方の代替の把持領域18、20までを正面から見て弓形に湾曲させることには動機付けがなく、当業者が容易に想到し得ない。 被告主張の相違点③について甲7公報は三頭筋運動を目的とするものであるが、広義にはトレーニングであり、甲7発明をトレーニング器具として使用させることの動機付けはある。 ③相違点③について(甲7公報記載の発明をストレッチ用のトレーニング器具とする動機付けのないこと) 甲7公報記載の発明は、バー・ハンドル部分と重り支持部分を不可分一体の構成とする上腕三頭筋運動器であり、重りを上げ下げ等することで上腕三頭筋の筋力アップを図る器具であるため、重り支持部分を取り除いてバー・ハンドル部分のみをストレッチ用のトレーニング器具として使用する動機付けがない。また、甲7公報記載の発明全体をストレッチ用のトレーニング器具として用いることは、重りを固定するための支柱38や重り支持部分全体が障害となって困難である。したがって、上腕三頭筋運動器である甲7公報記載の発明をストレッチ用のトレーニング器具として用いることには動機付けがなく、当業者が容易に想到し得ない。 無効理由3(予備的主張)本件出願日前に頒布された実開昭56-19255 号公報(甲8。以下「甲8公報」という。)の図10に記載された発明(以下「甲8発明」という。)に基づく本件各発明の進歩性欠如原告の主張被告の主張本件各発明は、甲8発明と甲7発明(バー10)を組み合わせることにより容易想到である の図10に記載された発明(以下「甲8発明」という。)に基づく本件各発明の進歩性欠如原告の主張被告の主張本件各発明は、甲8発明と甲7発明(バー10)を組み合わせることにより容易想到である(特許法29条2項)。 争う。 甲8発明の構成甲8公報の図10のとおり、部材1、2、3及び6で構成される矩形枠中に部材4及び5がはしご状に取り付けられたトレーニング器具であり、第2グリップ部相当部の中央部分が相互に近接するように窄まり状に形成されていない。 争わない。 本件各発明と甲8発明との相違点本件各発明は、第2グリップ部は正面からみて弓形に湾曲され、中央部分が相互に近接するように平面からみて矩形枠の内方に向かってやや窄まり状に形成されているのに対し、甲8発明は第2グリップ部相当部の中央部分が相互に近接するように窄まり状に形成されていない点被告主張の相違点があることは認める。 相違点は原告主張の点に限られない。 甲8発明は、部材1、2、3及び6で構成される矩形枠中に部材4及び5がはしご状に取り付けられている点でも、本件各発明と相違する。 容易想到性甲7発明において、バー10は独立した使用方法が想定可能である。甲8発明から中間部材(4及び5)を除くにあたっては、第2グリップ部相当部を補強するという課題がある。一方、甲7発明(バー10)の第2グリップ相当部は、重り40の荷重によるモーメントを平面視における内側に向けるために窄められている(第2グリップ部相当部のように、内側に倒れるか外側に倒れるかが一定せず不安定な部材について、内側に傾斜させることで安定させる技術は、椅子や建築物等の多くの建築部材で利用されている周知・慣用技術である)ので、両者は、第2グリップ部及び第2グリップ部相当部を窄めることに 定な部材について、内側に傾斜させることで安定させる技術は、椅子や建築物等の多くの建築部材で利用されている周知・慣用技術である)ので、両者は、第2グリップ部及び第2グリップ部相当部を窄めることについて課題・効果が共通する。 甲8公報の図10には弓形のものが記載されており、甲7発明と甲8発明はトレーニング器具である点で技術分野が共通し、筋力を増加させるために供されるという課題が共通し、作用効果も共通する。また、甲8発明の部材1及び2を窄まり状に形成したとしても、部材4及び5を把持することは可能であるし、トレーニング効果が失われることもない。 甲8発明の部材4及び5は、複数の把持位置を設定することによって、関節の角度に変化をつけ、トレーニング効果に変化を与えるために存在するが、これらを取り除くことによって、よりコンパクトな器具となり、シンプルな製品を作ることは当業者において容易想到である。 甲7公報記載の発明はバー・ハンドル部分(バー10)と重り支持部分を主要構成要素とする発明であり、バー10と重り支持部分は不可分一体であって、甲7公報にはバー10のみを使用したトレーニング方法、使用例の説明も示唆もない。したがって、甲8発明に甲7公報記載の発明を適用する動機付けはない。 甲8発明の部材4及び5は、甲8発明の強度を補強する役割にとどまらず、把持する間隔を変えることによって関節の角度に変化をつけることでトレーニングの効果を高める役割を果たしている。甲8発明の部材1及び2を窄まり状に形成すると、部材1及び2の途中に取り付けられた部材4及び5の長さが短くなり、部材4及び5を把持することが難しくなって、把持する間隔を変えることによるトレーニングの効果が失われるから、部材1及び2を窄まり状に形成する動機付けはなく、 けられた部材4及び5の長さが短くなり、部材4及び5を把持することが難しくなって、把持する間隔を変えることによるトレーニングの効果が失われるから、部材1及び2を窄まり状に形成する動機付けはなく、むしろ阻害要因がある。 したがって、甲8発明に、甲7発明における第2グリップ部相当部の窄まり形状を適用することに強い動機付けがあり、また、甲7発明のパイプの折れ曲がり部に丸みを帯びさせるのは、パイプ状のものを曲げ加工した際にパイプが潰れないようにするための慣用技術であるから、相違点に係る本件発明の構成に至ることは容易である。 以上 (別紙特許公報省略)

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