令和4(ネ)10066 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和5年12月27日 知的財産高等裁判所 3部 判決 原判決変更 東京地方裁判所 令和2(ワ)14630
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判決文本文110,213 文字)

令和5年12月27日判決言渡 令和4年(ネ)第10066号損害賠償請求控訴事件(原審東京地方裁判所令和2年(ワ)第14630号) 口頭弁論終結日令和5年10月26日判決 控訴人 スターゼン株式会社 上記訴訟代理人弁護士 弓削田博同 河部康弘 同 平田慎二 上記訴訟代理人弁理士 河部秀男 上記補佐人弁理士 平木康男 同 藤田節 同 田中夏夫 同 漆山誠一 被控訴人 滝沢ハム株式会社 同 訴訟代理人弁護士 新田裕子 同 海老原輝 同 前田葉子 同 日野英一郎 同 家村洋太 同 奥田崇仁 同 補佐人弁理士 豊岡静男 同 廣瀬文雄 主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、控訴人に対し、315万7627円及びこれに対する令和2年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 控訴人のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は 人は、控訴人に対し、315万7627円及びこれに対する令和2年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を 支払え。 3 控訴人のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを50分し、その1を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。 5 この判決の第2項は、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、控訴人に対し、2億2101万0589円及びこれに対する令和2年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は、原審において、発明の名称を「特定加熱食肉製品、特定加熱食肉製品の製造方法及び特定加熱食肉製品の保存方法」とする特許権(特許第519 2595号。以下「本件特許権」といい、その特許を「本件特許」という。特許公報は別紙のとおりである。)を有する訴外株式会社シンコウフーズ(以下「シンコウフーズ」という。)から本件特許の独占的通常実施権を付与された控訴人が、被控訴人が製造、販売している原判決別紙被控訴人各製品目録記載のローストビーフ(以下、同目録記載1の製品を「被控訴人製品1」、同目録 記載2の製品を「被控訴人製品2」といい、これらを総称して「被控訴人各製 品」という。)の製造方法が、同特許権の特許請求の範囲請求項1の発明に係る特許の技術的範囲に属するとして、被控訴人に対し、民法709条及び特許法102条2項に基づき、特許権侵害の損害賠償として2億2101万0589円及びこれに対する不法行為の日の後である令和2年1月31日から支払 範囲に属するとして、被控訴人に対し、民法709条及び特許法102条2項に基づき、特許権侵害の損害賠償として2億2101万0589円及びこれに対する不法行為の日の後である令和2年1月31日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合に よる遅延損害金を請求する事案である。 原審が、本件特許の請求項1に係る発明の特許は乙12記載の発明(乙12発明)に基づき特許無効審判により無効とされるべき事由があるとして、控訴人の請求を棄却したところ、控訴人がその取消しを求めて本件控訴を提起した。 控訴人は、当審において、本件特許の請求項5の発明に係る特許に基づく請求を追加する訴えの変更をし、これに対し、被控訴人は、同請求項の発明に係る特許につき、特許無効審判により無効とされるべきであるとする抗弁を提出した。 被控訴人は、令和5年4月17日に行われた当審第4回口頭弁論期日におい て、消滅時効の主張を援用した。 なお、後記被控訴人が申し立てた本件特許についての無効審判請求の審決取消訴訟の確定により、控訴人は本件特許の請求項1に係る主張を、被控訴人は、同請求項1に係る対抗主張(原審における争点⑵)をそれぞれ撤回した。 2 前提事実、争点(なお、当審において被控訴人各製品の販売数量、利益率に つき争いがなくなった。)及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正し、後記3及び4のとおり当審における当事者の主な補充主張を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中、第2の2ないし4(原判決2頁20行目から23頁23行目)に記載のとおりであるから、これを引用する(なお、原判決は、本件特許の請求項1に係る発明を「本件発明」としているが、請求項1と訂 正後の請求項5の相違が後記⑴ 2頁20行目から23頁23行目)に記載のとおりであるから、これを引用する(なお、原判決は、本件特許の請求項1に係る発明を「本件発明」としているが、請求項1と訂 正後の請求項5の相違が後記⑴のとおりの下線部分のみであり、その部分につ き後記⑵のとおり充足性に争いがないことに照らし、そのまま本件特許の訂正後の請求項5に係る発明を指すものとして「本件発明」を読み替える。)。 ⑴ 原判決2頁25行目の「(以下」から同頁26行目の「という。)」までを削り、同3頁9行目の冒頭から同4頁8行目の末尾までを次のとおり改める。 「⑷ 被控訴人は、平成31年4月8日、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明についての特許につき無効審判を請求し、特許庁は、これを無効2019-800030号として審理した(以下、『本件無効審判』という。)。 シンコウフーズは、令和2年7月6日に訂正請求書を提出し、同日 付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、5について請求項ごとに訂正すること(以下、『本件訂正』という。)を求めた。 特許庁は、本件無効審判について、令和3年2月8日、結論を『特許第5192595号の特許請求の範囲を令和2年7月6日付け訂正 請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、5について訂正することを認める。特許第5192595号の請求項1、2に係る発明についての特許を無効とする。特許第5192595号の請求項3、4、5に係る発明についての審判請求は、成り立たない。』とする審決(以下『本件審決』という。)をした(甲172)。 シンコウフーズ及び被控訴人は、それぞれ本件審決の取り消しを求めて審決取消訴訟を提起した(当庁令和3年(行ケ)第 成り立たない。』とする審決(以下『本件審決』という。)をした(甲172)。 シンコウフーズ及び被控訴人は、それぞれ本件審決の取り消しを求めて審決取消訴訟を提起した(当庁令和3年(行ケ)第10038号、同第10040号)が、知財高裁は、令和5年2月6日、シンコウフーズ及び被控訴人それぞれの請求を棄却する旨の判決をした。これに対しシンコウフーズ及び被控訴人が上告受理申立てをしたが、最高裁 は、令和5年9月21日、上告不受理決定をした(甲228、229、 当裁判所に顕著)。 ⑸ 本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項5の記載は、以下のとおりである(以下、請求項5に記載された発明を『本件発明』という。 また、本件特許権に係る明細書を『本件明細書』という。なお、本件明細書には『脱酸素材』と記載され、乙12等には『脱酸素剤』と記 載されているが、これらは同じ意味と解される。)。 『特定加熱食肉製品をスライスする工程と、スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程と、当該酸素化する工程の後、炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく、スライスされた特定加熱食肉製品を 非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み、上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元 型ミオグロビンが34%以上となる割合となっていることを特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法であって、特定加熱食肉製品がローストビーフであることを特徴とする特定加熱食 ビンが50%未満、還元 型ミオグロビンが34%以上となる割合となっていることを特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法であって、特定加熱食肉製品がローストビーフであることを特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法。』同請求項を分説すると、以下のとおりとなる(以下、分説された構成要件の符号に従い、『構成要件A』などという。下線部は、本件特 許の請求項1の特許請求の範囲の記載と異なる部分であり、以下『下線部』という。)。 A 特定加熱食肉製品をスライスする工程と、B スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程と、 C 当該酸素化する工程の後、炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガ ス置換をすることなく、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み、D 上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限 界以下の条件下で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合(以下「本件ミオグロビン割合」といい、3種のミオグロビンが占める割合を「ミオグロビン割合」という。)となっていること E (構成要件A~D)を特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法であって、F 特定加熱食肉製品がローストビーフであることを特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法。」⑵ 同4頁9行目の「⑸」を「⑹」と、同5頁3行目の「⑹」を「⑺」と、同 頁5行目の「⑺」を「⑻」とそれぞれ改め、同頁8行目の末尾の次を改行し、次のとおり加え 加熱食肉製品の製造方法。」⑵ 同4頁9行目の「⑸」を「⑹」と、同5頁3行目の「⑹」を「⑺」と、同 頁5行目の「⑺」を「⑻」とそれぞれ改め、同頁8行目の末尾の次を改行し、次のとおり加える。 「⑼ 控訴人は、令和2年6月12日に、本件訴えを提起した。 ⑽ 被控訴人は、本件発明の構成要件C、E及びFのうちの下線部に関する部分について、被控訴人各製品の製造方法(被控訴人方法)につきその 充足性を明らかに争わない。」⑶ 同5頁13行目の冒頭から同頁15行目の末尾までを次のとおり改める。 「 イ被控訴人方法は、構成要件C(当該酸素化する工程の後、炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包 材に密封する工程)を充足するか(争点1-2)」 ⑷ 同5頁21行目の冒頭から同頁23行目の末尾までを次のとおり改める。 「⑵ 本件特許は、以下の無効理由によって、特許無効審判により無効にされるべきか(争点2)ア無効理由1(公知発明(鎌倉山パストラミビーフ)に基づく進歩性欠如)(争点2-1) イ無効理由2(公知発明(DCSローストビーフ)に基づく進歩性欠如)(争点2-2)ウ無効理由3(乙178(特公昭59-15014号公報)に基づく進歩性欠如)(争点2-3)エ無効理由4(乙179(特開平9-172949号公報)に基づく 進歩性欠如)(争点2-4)オ無効理由5(乙180(特公昭58-29069号公報)に基づく進歩性欠如)(争点2-5)」⑸ 同5頁24行目の冒頭から末尾までを「⑶ 無効理由6(明確性要件違反)(争点2-6)」と、同頁25行目の冒頭から末尾までを「⑷ 無効理由7 号公報)に基づく進歩性欠如)(争点2-5)」⑸ 同5頁24行目の冒頭から末尾までを「⑶ 無効理由6(明確性要件違反)(争点2-6)」と、同頁25行目の冒頭から末尾までを「⑷ 無効理由7 (実施可能要件違反)(争点2-7)」と、同頁26行目冒頭から末尾までを「⑸ 無効理由8(サポート要件違反)(争点2-8)」と、同6頁1行目の「争点6」を「争点3」とそれぞれ改める。 ⑹ 同6頁2行目の「争点7」を「争点4」と改め、同行目の末尾の次を改行し、次のとおり加える。 「⑻ 消滅時効(争点5)」⑺ 同6頁24行目の冒頭から同頁26行目の末尾までを次のとおり改める。 「イ被控訴人方法は、構成要件C(当該酸素化する工程の後、炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に 密封する工程)を充足するか(争点1-2)」 ⑻ 同10頁14行目の「3つ」を「三つ」と改め、同頁24行目の冒頭から同15頁10行目の末尾までを削り、同頁11行目の冒頭から末尾までを「⑵無効理由6(明確性要件違反)(争点2-6)」と、同17頁8行目の「肉食」を「肉色」と、同頁10行目の冒頭から末尾までを「⑶ 無効理由7(実施可能要件違反)(争点2-7)」と、同頁12行目及び同頁20行目の各「前 記⑶」をいずれも「前記⑵」とそれぞれ改める。 ⑼ 同18頁21行目の冒頭から末尾までを「⑷ 無効理由8(サポート要件違反)(争点2-8)」と改める。 ⑽ 同22頁10行目の「⑹」を「⑸」と、同行目の「争点6」を「争点3」と、同23頁1行目の「⑺」を「⑹」と、同行目の「争点7」を「争点4」 と、同頁18行目の「弁護士費用」を「弁護士・ ⑽ 同22頁10行目の「⑹」を「⑸」と、同行目の「争点6」を「争点3」と、同23頁1行目の「⑺」を「⑹」と、同行目の「争点7」を「争点4」 と、同頁18行目の「弁護士費用」を「弁護士・弁理士費用」とそれぞれ改める。 3 当審における被控訴人の主な補充主張(構成要件充足性に関し)被控訴人は、本件発明の特許に基づき、被控訴人の販売する内容量の異なるスライスしたローストビーフ製品(以下、「別件被控訴人各製品」という)に ついての製造販売等の差止めを求めた事件(当庁令和4年(ネ)第10055号事件。以下、「別件訴訟」という。)の原判決(甲A34。以下、「別件原判決」という。)が、別件被控訴人各製品が本件発明の方法により製造されたものであることを認めた点につき、当審において、以下のとおりの反論をする。 ⑴ 争点1-1(被控訴人方法は、構成要件B(還元型ミオグロビンをオキシ ミオグロビンに酸素化する工程)を充足するか)についてア原判決は、本件特許の請求項1の発明について、被控訴人方法の構成要件Bの充足を基本的に認めたところ、本件発明の構成要件Bについての争点も本件特許の請求項1に係るものと同じであるので、以下、原判決の構成要件Bの充足性の判断についての誤りを述べる(構成要件C、Dについ ても同様である。)。 本件特許の特許請求の範囲、本件明細書の段落【0023】及び【0024】の記載には、「酸素化する工程」は独立した工程として、独立した作用効果を生じさせることが記載されているのであって、他の工程の内容に応じて、「酸素化する工程」を変更するなどという発想は、特許請求の範囲にも、本件明細書上にも全く存在しないから、「その後の脱酸素化の工程と あいまって、同製品が所望の色調となる」 工程の内容に応じて、「酸素化する工程」を変更するなどという発想は、特許請求の範囲にも、本件明細書上にも全く存在しないから、「その後の脱酸素化の工程と あいまって、同製品が所望の色調となる」ための工程であるとの別件原判決の理解は誤りである。 同じ行為であっても、他の工程次第では、「酸素化する工程」に該当する場合と該当しない場合が発生することになるから、このような不安定な権利範囲の解釈が許されるべきではない。 イ本件明細書の段落【0022】ないし【0024】、【0047】及び【0054】の記載に基づけば「酸素化する工程」は、特定加熱食肉製品のスライス面が紫赤色から鮮赤色に変化するために必要十分な時間、少なくとも15ないし30分以上、スライス面を酸素にさらす工程であると理解すべきである。 別件原判決の認定及び判断は誤りであり、被控訴人方法は本件発明の構成要件Bを充足しない。 ⑵ 争点1-2(被控訴人方法は、構成要件C(当該酸素化する工程の後、炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材 に密封する工程)を充足するか)ア本件特許の請求項3及び4は、別紙特許公報の特許請求の範囲記載のとおりであるところ、「密封する工程」の終了後に真空引きを行うことから、請求項1の「密封する工程」は、本件発明の実施者が工程を追加できることが想定され、脱酸素後においても実施者の支配が及んでいることを前提 としている。 このような本件特許の特許請求の範囲の記載及び本件明細書の段落【0038】の記載に鑑みれば、本件発明が、実施者の支配領域内で「密封する工程」を終わらせることで、消費者に本件発明で規定さ このような本件特許の特許請求の範囲の記載及び本件明細書の段落【0038】の記載に鑑みれば、本件発明が、実施者の支配領域内で「密封する工程」を終わらせることで、消費者に本件発明で規定される優れた色調を訴求する機会を与えるものであることは明らかである。 イ前記のとおり、結果的に酸素が検出限界以下になればよいとの原判決の 考え方は誤っており、これを前提にすると、別件被控訴人各製品は、販売先への納品後の、概ね包装後26時間から少し経過した後にはじめて検出限界である0.1%に達している以上(乙36、45頁)、被控訴人の支配が及ぶ状況で、酸素濃度が検出限界以下に達しておらず、被控訴人方法は構成要件Cを充足しない。 ⑶ 争点1-3(被控訴人方法は、構成要件D(ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっていること)を充足するか)について ア所定のミオグロビン割合の充足の時点に関する判断の誤り別件原判決が、「本件発明においては、酸素濃度が検出限界以下に達している期間において、本件ミオグロビン割合が満たされる時点があれば足りる」と判断したことは、本件明細書の段落【0056】の【表1】に示されている結果と矛盾する。表1において、脱酸素材の鉄系比率が42. 9%である例は、「酸素濃度が検出限界以下に達している期間において、本件ミオグロビン割合が満たされる時点」(「D+1」、「D+2」の時点)がある以上、本件発明の技術的範囲に属するが、段落【0044】の記載からすれば、「D+3」の時点で褐変することになり、 おいて、本件ミオグロビン割合が満たされる時点」(「D+1」、「D+2」の時点)がある以上、本件発明の技術的範囲に属するが、段落【0044】の記載からすれば、「D+3」の時点で褐変することになり、短時間に褐変が生じる例が本件発明の技術的範囲に属するという理解は、段落【0009】の記 載に真っ向から反する。 別件原判決の「本件発明においては、酸素濃度が検出限界以下に達している期間において、本件ミオグロビン割合が満たされる時点があれば足りる」との解釈は本件明細書の記載と整合しないばかりか、その前提も誤っているから不合理である。 本件明細書の段落【0042】ないし【0044】の記載及び【表1】 (段落【0058】)における、非鉄系脱酸素材のみを使用する場合、あるいは鉄系脱酸素材の割合を37.5%とした場合によれば、肉色を鮮赤色に長期に亘って維持することができるという本件発明の効果は、その間、各ミオグロビンの量が特許請求の範囲の記載で特定される所定割合になっていることにより実現されていると解されるから、構成要件Dを充足する には、製品の販売以降、製品として販売されている間、包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、常に、各ミオグロビンの割合が構成要件D所定の割合(本件ミオグロビン割合)になることが必要と解するべきである。 イミオグロビン割合の測定方法に関する判断の誤り別件原判決は「SCE方式を用いると認識できたといえる」としている が、SCE方式で測定したからといって包材の影響を排除できるわけではなく、また、SCI方式を採用したとしても予めフィルム越しで白色校正を行うことでフィルムの影響を抑えることができるため包材の影響はSCI方式を用いない理由とはならず、別件原判決の判断は失当である。 正反射光 、SCI方式を採用したとしても予めフィルム越しで白色校正を行うことでフィルムの影響を抑えることができるため包材の影響はSCI方式を用いない理由とはならず、別件原判決の判断は失当である。 正反射光を含んで測定すると、表面状態に関係なく、素材そのものの色 の評価となるといわれており(甲59)、SCI方式(正反射光込み)は、表面の光沢度やテクスチャーなどの微細形状に依存しない、色材そのものの反射率を測定することができるので、その特性を生かして、生産現場で品質管理や調色用途に広く使用されている(乙73ないし75)ように、SCI方式についてもメリットが存在するから、本件発明の構成要件Dに 係るミオグロビンの誘導形態の割合を算定するため吸光度を測定する際 にSCE方式とSCI方式のいずれかを用いることが明らかとはいえない。 数値限定されている特許請求の範囲について、数値を測定する方法が複数あるにもかかわらず、明細書においていずれの測定方法によるべきか明らかにされていない場合、そのいずれの方法によって測定しても、特許請 求の範囲に記載の数値を充足する場合でない限り、特許権侵害を構成しないと判断されるから、本件では、構成要件Dについては、SCE(正反射光除去)方式及びSCI(正反射光込み)方式のいずれによっても各種ミオグロビンの割合の数値を充足する必要がある。 別件原判決が引用する証拠においてはSCI方式での測定が行われて おらず、また、測定したのも消費期限日に購入した商品であり、商品の販売時点での構成要件Dの充足性について何ら立証が行われていないから、構成要件Dを充足するとした判断が誤っていることは明らかである。 4 当審における当事者の主な主張(無効理由、その他)⑴ 争点2-1(無効理由1(公知発明(鎌倉 いて何ら立証が行われていないから、構成要件Dを充足するとした判断が誤っていることは明らかである。 4 当審における当事者の主な主張(無効理由、その他)⑴ 争点2-1(無効理由1(公知発明(鎌倉山パストラミビーフ)に基づく 進歩性欠如))について〔被控訴人の主張〕ア本件発明は、本件特許の出願前に製造販売され、公然実施された商品「鎌倉山パストラミビーフ」に示された発明(以下、その発明を「パストラミビーフ発明」という。)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができ たものである。 被控訴人は、遅くとも本件特許の出願日前である平成20年(2008年)頃には、鎌倉山パストラミビーフを販売しており(乙181の1)、当業者であれば、同製品を外部から観察し又は同製品を分析することによって、その製法を認識できた。 イ鎌倉山パストラミビーフは加熱食肉製品である(乙181の1のとおり、 「保存温度」が10℃、「賞味期間」が25日間)。平成20年(2008年)当時の食品衛生法第19条及び同法施行規則第21条第1号ウにおいて、加熱食肉製品である旨の表示は義務付けられていたから、当業者は、本製品が加熱食肉製品であることを認識できた。 同製品は、被控訴人各製品と同等の製造ライン(乙97ないし98の2 の2)によって製造され、食肉であるパストラミビーフが、スライスされた状態で包装されているところ(乙181の1)、当業者にとって、食肉を酸素の存在下でスライスしてトレイ内に並べて包装することは周知であるから(甲117、乙12、163、179、182)、当業者であれば、本製品を外部から観察することによって、その製造方法に、スライスする 工程が存在し、また、これをトレイ上に並べる工程が存在し、こ ら(甲117、乙12、163、179、182)、当業者であれば、本製品を外部から観察することによって、その製造方法に、スライスする 工程が存在し、また、これをトレイ上に並べる工程が存在し、これらの工程が酸素の存在下で行われることを認識できた。 同製品には、非鉄系の脱酸素材であるオキシーターY(乙183)が封入されており(乙181の1)、ガスバリア性を有する包材で密封されているところ(乙181の1)、当業者であれば、脱酸素材が使用されている以 上、これに必要なガスバリア性を有する包材で密封する工程が存在することは認識でき、包材を分析してガスバリア性が存在する包材であることも確認できた。 さらに同製品は、被控訴人各製品と同等の製造ラインによって製造をされており、ガス置換包装の手段を用いずに、非鉄系脱酸素材を使用してい る。当業者であれば、同本製品の開封前に、包材内の気体を分析することによってこれを認識することができた。 ウパストラミビーフ発明の内容は、以下のとおりである。 a 酸素の存在下で加熱食肉製品をスライスする工程と、b 酸素の存在下でスライスされた加熱食肉製品をトレイ上に並べる工 程と、 c 炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく、スライスされた加熱食肉製品を非鉄系脱酸素剤と共にガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含むe ことを特徴とする加熱食肉製品の製造方法であって、f 加熱食肉製品がパストラミビーフであることを特徴とする加熱食肉 製品の製造方法。 エ本件発明とパストラミビーフ発明との対比の結果は、以下のとおりである。 <一致点>A 酸素の存在下で食肉製品をスライスする工程と、 B 酸素の存在下でスライスされた食肉製品をトレ エ本件発明とパストラミビーフ発明との対比の結果は、以下のとおりである。 <一致点>A 酸素の存在下で食肉製品をスライスする工程と、 B 酸素の存在下でスライスされた食肉製品をトレイ上に並べる工程とを含み、C 炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく、D スライスされた食肉製品を非鉄系脱酸素剤とともにガスバリア性を有する包材に密封する E ことを特徴とする食肉製品の製造方法。 <相違点1>本件発明の食肉製品は「特定加熱食肉製品」の「ローストビーフ」であるのに対し、パストラミビーフ発明では、「加熱食肉製品」の「パストラミビーフ」である点。 <相違点2>本件発明では、還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程が設けられているのに対し、パストラミビーフ発明では、「酸素の存在下でスライスされた食肉製品をトレイ上に並べる工程」は含むが、還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程の存在が 明確ではない点。 <相違点3>本件発明では、「上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、所定のミオグロビン割合となっている」のに対し、パストラミビーフ発明では、酸素濃度が検出限界以下の条件下に おけるミオグロビンの種類の割合が特定されていない点。 オ相違点1の容易想到性につき、賞味(消費)期限を延長するために、スライスをした食肉製品に対し、非鉄系脱酸素材を使用してガスバリア性を有する包材に密封することは周知技術である。なお、特定加熱食肉製品であるか加熱食肉製品であるか否かは、肉の中心部の加熱温度及び加 熱時間によって定まるところ(甲1、13の 用してガスバリア性を有する包材に密封することは周知技術である。なお、特定加熱食肉製品であるか加熱食肉製品であるか否かは、肉の中心部の加熱温度及び加 熱時間によって定まるところ(甲1、13の2、52)、加熱温度及び時間の変更により加熱食肉製品を特定加熱食肉製品とすることは当業者が適宜設計できる事項であり、加熱食肉製品を特定加熱食肉製品に置換することは設計事項に過ぎない。 パストラミビーフよりもローストビーフの方が高級なイメージが強く 消費者への訴求力が高いため(乙117)、当業者であればパストラミビーフをローストビーフに変更することも容易である。 さらに、ローストビーフを消費者の購入意欲を増加させる生肉本来の赤身を呈する状態にすることは当業者において周知の課題であり、退色又は変色が抑えられる方法は、スライスした加熱食肉製品のローストビ ーフであろうと特定加熱食肉製品のローストビーフであろうと共通である(乙163)。 また、消費者の志向を考えれば、発色剤の使用は好ましくないことも周知であった(甲162、乙14、16、17、18、191)。 これらの点からすれば、消費者の嗜好・志向を受けて、発色剤を使用せ ずに生肉本来の赤身を呈する状態にするために、「加熱食肉製品」である 「ローストビーフ」を「特定加熱食肉製品」の「ローストビーフ」に変更する動機もあった。 したがって、「加熱食肉製品」である「パストラミビーフ」を「特定加熱食肉製品」である「ローストビーフ」に変更することは当業者が適宜設計できる事項であることは明らかである。 カ相違点2の容易想到性については、以下のとおりである。 (ア) 相違点2の「酸素化する工程」について、空気と短時間接触するものを含むとした場合 計できる事項であることは明らかである。 カ相違点2の容易想到性については、以下のとおりである。 (ア) 相違点2の「酸素化する工程」について、空気と短時間接触するものを含むとした場合パストラミビーフ発明においても、「スライスされた食肉製品をトレイ上に並べる工程」で空気と短時間接触するから、相違点2の「酸 素化する工程」を備えていることになり、相違点2は存在しない。 また、パストラミビーフ発明の製造ラインは、被控訴人各製品とほぼ同等の製造ライン(乙97ないし98の2の2)によって製造されており、その製法に、酸素の存在下で食肉製品をスライスし、スライスされた食肉製品をトレイ上に並べる工程とを含むところ、パストラミ ビーフ発明のパストラミビーフを特定加熱食肉製品であるローストビーフに変更する場合には、酸素の存在下でローストビーフをスライスしてトレイ上に並べる工程において、還元型ミオグロビンが酸素に触れてオキシミオグロビンとなる以上、「還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」も存在することとなり、かかる観点か らも相違点2は存在しない。 (イ) 仮に、相違点2の「酸素化する工程」が、還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化するために、意図的にある程度以上の必要十分な時間をとる工程であると解した場合乙13には、冷蔵庫に肉などのミオグロビンを含む赤色の食品を保 存する場合、食品が冷却される前に貯蔵空間の酸素を減少させると、 食品が紫赤色に変色するが、例えば1時間程度は酸素濃度を低下させないことで、食品に含まれるミオグロビンのうち、還元状態にあるミオグロビンをオキシミオグロビンに変化させて、食品を鮮やかな赤色とし、その後酸素濃度を減少させることにより 時間程度は酸素濃度を低下させないことで、食品に含まれるミオグロビンのうち、還元状態にあるミオグロビンをオキシミオグロビンに変化させて、食品を鮮やかな赤色とし、その後酸素濃度を減少させることにより、メト化を抑えて食品の劣化を抑え、食品の鮮やかな赤色を維持しながら、長期保存を可能 にする技術が記載されており、パストラミビーフ発明においても、色択の変化防止という課題はあるから、その課題を解決するために、乙13に記載された技術を適用することは、当業者が容易に想到することである。 キ相違点3の容易想到性につき、本件特許の出願日当時、メトミオグロ ビンの割合をできるだけ低い状態に抑え、オキシミオグロビンの割合をできるだけ高く維持して鮮赤色の食肉を維持することが、消費者等へ訴求する観点からは望ましいことは技術常識であった。また、相違点3のパラメータが臨界的な意義を示すことについて本件明細書は何の説明もしておらず、また、このパラメータに収めるために特別な操作を行わ なければならないことも示されていない。このようなパラメータを適宜設定することが当業者にとって設計事項であることは明白である。 したがって、パストラミビーフ発明のパストラミビーフを特定加熱食肉製品であるローストビーフへと構成を変更する場合において、技術常識であった優れた肉色の維持との課題について、これが解決されている とする割合を設定することは、当業者が適宜なし得る設計事項である。 〔控訴人の主張〕ア被控訴人の主張するパストラミビーフ発明の認定は誤りである。 そもそも、乙181の1の「要望したサンプルの導入決定報告」は、平成20年(2008年)5月9日のものであるのに対し、伊藤ハムが 「ローストビーフの店鎌倉山パストラミビーフ」を発売したと そもそも、乙181の1の「要望したサンプルの導入決定報告」は、平成20年(2008年)5月9日のものであるのに対し、伊藤ハムが 「ローストビーフの店鎌倉山パストラミビーフ」を発売したとする日 本食糧新聞の記事(乙181の2)は、平成18年(2006年)3月27日のものであり、発売がサンプルの導入決定報告よりも2年も前となっている。乙181の1の鎌倉山パストラミビーフが、乙181の2の記事で言及されている実際に販売されたパストラミビーフであると認定するのは不自然である。このように、乙181の1の鎌倉山パスト ラミビーフが販売されていたという証拠は提出されていないから、鎌倉山パストラミビーフの構成が公知となることもない。 また、被控訴人が主張する、上記製品が被控訴人各製品と同等の製造ライン(乙97ないし98の2の2)によって製造されているとする点について、被控訴人は一切証拠を提出していないから、パストラミビー フ発明が構成a及びbを有しているかは不明である。 そもそも、乙181の1の公知性が立証されておらず、仮に公知性があるとしても、乙181の1には鎌倉山パストラミビーフの包材のガスバリア性能について一切記載はないから、前記鎌倉山パストラミビーフがガスバリア性を有する包材で密封されているか不明である。また、そ の鎌倉山パストラミビーフがガス置換をしていないことについて、被控訴人は一切証拠を提出していない。 イ相違点1(加熱食肉製品と特定加熱食肉製品)について、容易想到ではない。 パストラミビーフは(甲197)は、塩漬、乾燥、燻製などの工程を 経るものであるのに対し、特定加熱食肉製品のローストビーフは、乾燥や燻製の工程を経ずに低温で調理するものである。両者は製造方法が全く異なるために食 甲197)は、塩漬、乾燥、燻製などの工程を 経るものであるのに対し、特定加熱食肉製品のローストビーフは、乾燥や燻製の工程を経ずに低温で調理するものである。両者は製造方法が全く異なるために食べた時の味覚も異なる上、パストラミビーフのように乾燥・燻製という殺菌工程がなく、十分な熱も加えない特定加熱食肉製品のローストビーフ、それもスライスされたローストビーフは、生肉に 近く細菌が繁殖しやすいから、「当業者であればパストラミビーフをロ ーストビーフに変更することも容易である」といえないことは明らかである。 市販のパストラミビーフは、いずれも発色剤(亜硝酸塩)が含まれているが、亜硝酸塩によって発色する食肉製品と、オキシミオグロビンによって発色している特定加熱食肉製品では退色の原理が全く異なる。 乙163の方法は、「食肉加工品の原料肉にアルカリ製剤の溶液を注入し」というもので、特定加熱食肉製品の規格(段落【0002】)に反し、加熱食肉製品と特定加熱食肉製品に共通の退色又は変色が抑えられる方法ではないから、「退色又は変色が抑えられる方法は、スライスした加熱食肉製品のローストビーフであろうと特定加熱食肉製品のロース トビーフであろうと共通である」などとは全く記載されていない。 仮に、発色剤の使用に否定的な消費者の志向があったとしても、本件特許に係る発明まで、スライスされた特定加熱食肉製品の肉色を維持する方法がない以上、加熱食肉製品を特定加熱食肉製品に変更する動機付けはない。 ウ相違点3(ミオグロビン割合)は容易想到ではない。 亜硝酸塩を使用することによってニトロソミオグロビンが発色しているパストラミビーフと、オキシミオグロビンによって発色している特定加熱食肉製品では退色の原理が全く異なる。そもそも 容易想到ではない。 亜硝酸塩を使用することによってニトロソミオグロビンが発色しているパストラミビーフと、オキシミオグロビンによって発色している特定加熱食肉製品では退色の原理が全く異なる。そもそもミオグロビン割合そのものが問題にならない加熱食肉製品を、発色原理の全く異なる特定 加熱食肉製品に置き換えてミオグロビン割合を調整することを容易に想到できるはずがない。 ⑵ 争点2-2(無効理由2(公知発明(DCSローストビーフ)に基づく進歩性欠如))について〔被控訴人の主張〕 ア本件発明は、本件特許の出願日前に公然実施された「DCSローストビ ーフ」に示された発明(以下「DCSローストビーフ発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 被控訴人は、遅くとも本件特許の出願日前である平成19年(2007年)頃には、DCSローストビーフを販売しており(乙184、185(380gが乙185の1、760gが乙185の2)、185の3・4・5)、 当業者であれば、同製品を外部から観察し又は同製品を分析することによって、その製法を認識できた。 イ DCSローストビーフは加熱食肉製品のローストビーフである(同製品のラベルより。乙185の1・2)。同製品は、被控訴人各製品とほぼ同等の製造ライン(乙97ないし98の2の2)によって製造され、食肉であ るローストビーフが、トレイ内にスライスされた状態で包装されているところ(乙185の1・2)、当業者にとって、食肉を酸素の存在下でスライスしてトレイ内に並べて包装することは周知であるから(甲117、乙12、163、179、182)、当業者であれば、本製品を外部から観察することによって、その製造方法に、スライスする工程が存在し、また スしてトレイ内に並べて包装することは周知であるから(甲117、乙12、163、179、182)、当業者であれば、本製品を外部から観察することによって、その製造方法に、スライスする工程が存在し、また、こ れをトレイ上に並べる工程が存在し、これらの工程が酸素の存在下で行われることを認識できた。 同製品には、非鉄系の脱酸素材であるエージレスGLSが封入されており(乙185の1・2、186の1)、ガスバリア性を有する包材で密封されているところ、当業者であれば、脱酸素材が使用されている以上、これ に必要なガスバリア性を有する包材で密封する工程が存在することは認識でき、包材を分析してガスバリア性が存在する包材であることも確認できた。 さらに、同製品は、酸素による劣化を抑制する手段として、ガス置換包装の手段を用いずに、非鉄系脱酸素材を使用している。当業者であれば、 本製品の開封前に、包材内の気体を分析することによってこれを認識する ことができた。 ウ以上によれば、DCSローストビーフ発明の内容は、以下のとおりである。 a 酸素の存在下で加熱食肉製品であるローストビーフをスライスする工程と、 b 酸素の存在下でスライスされた加熱食肉製品であるローストビーフをトレイ上に並べる工程と、c 炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく、スライスされた加熱食肉製品であるローストビーフを非鉄系脱酸素剤と共にガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含む e ことを特徴とする加熱食肉製品であるローストビーフの製造方法であって、f 加熱食肉製品がローストビーフであることを特徴とする加熱食肉製品の製造方法。 エ本件発明とDCSローストビーフ発明との対比の結果は、以下のとおり ーストビーフの製造方法であって、f 加熱食肉製品がローストビーフであることを特徴とする加熱食肉製品の製造方法。 エ本件発明とDCSローストビーフ発明との対比の結果は、以下のとおり である。 <一致点>A 酸素の存在下でローストビーフをスライスする工程と、 B 酸素の存在下でスライスされたローストビーフをトレイ上に並べる工程とを含み、 C 炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく、D スライスされたローストビーフを非鉄系脱酸素剤とともにガスバリア性を有する包材に密封するE ことを特徴とする食肉製品の製造方法。 <相違点1> 本件発明の食肉製品は「特定加熱食肉製品」の「ローストビーフ」であ るのに対し、DCSローストビーフ発明では、「加熱食肉製品」の「ローストビーフ」である点。 <相違点2>本件発明では、還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程が設けられているのに対し、DCSローストビーフ発明では還元 型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程が設けられているかが不明な点。 <相違点3>本件発明では、「上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が 検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっている」のに対し、DCSローストビーフ発明では、酸素濃度が検出限界以下の条件下におけるミオグロビンの種類の割合が特定されていない点。 オ相違点1の容易想到性については、以下のとおりである。なお、周知技術や根拠は、前記⑴と同様である。 素濃度が検出限界以下の条件下におけるミオグロビンの種類の割合が特定されていない点。 オ相違点1の容易想到性については、以下のとおりである。なお、周知技術や根拠は、前記⑴と同様である。 消費者の嗜好・志向を受けて、発色剤を使用せずに生肉本来の赤身を呈する状態にするために、「加熱食肉製品」である「ローストビーフ」を「特定加熱食肉製品」である「ローストビーフ」に変更することは当業者が適 宜設計できる事項であることは明らかである。 カ相違点2の容易想到性については、以下のとおりである。なお、根拠は前記⑴と同様である。 相違点2は存在しないか、仮に相違点であるとしても、ローストビーフ発明においても、色沢の変化防止という課題を解決するために、乙13に 記載された技術を適用することは容易である。 キ相違点3の容易想到性については、以下のとおりである。なお、根拠は前記⑴と同様である。 ローストビーフ発明のローストビーフを特定加熱食肉製品であるローストビーフへと構成を変更する場合に、技術常識であった優れた肉色の維持との課題が解決されているとする割合を設定することは設計事項で ある。 〔控訴人の主張〕ア被控訴人の主張するDCSローストビーフ発明の認定は誤りである。 乙185の1・2の写真や、ドトールで販売されている「ミラノサンド」(乙185の3~6)に使用されているローストビーフが、乙184のD CSローストビーフかどうかは不明であり、乙184のDCSローストビーフが販売されていたかどうかは不明である。被控訴人が製造する乙184のDCSローストビーフが販売されていたという証拠は提出されていないから、前記DCSローストビーフの構成が公知となることもない。 同製品は、被控訴人各製品 。被控訴人が製造する乙184のDCSローストビーフが販売されていたという証拠は提出されていないから、前記DCSローストビーフの構成が公知となることもない。 同製品は、被控訴人各製品とほぼ同等の製造ライン(乙97~98の2の2)によって製造されているとする点について、被控訴人は一切証拠を提出していないから、DCSローストビーフ発明が構成a及びbを有しているかは不明である。また、ガスバリア性を有する包材を用いているかも不明である。 乙185の1・2の写真は不鮮明であり、写真を見ても、その脱酸素剤がエージレスGLSであるかは不明である。 また、被控訴人は、前記DCSローストビーフがガス置換をしていないことについて、一切証拠を提出していない。 イ相違点1及び3は容易想到でない。この点については、前記⑴と同じで ある。 ⑶ 争点2-3(無効理由3(乙178(特公昭59-15014号公報)に基づく進歩性欠如))について〔被控訴人の主張〕ア本件発明は乙178(特公昭59-15014号公報、以下「乙178公報」といい。そこに記載の発明を「乙178発明」という。)に、乙16、 17、192、163、162、12、193、194、甲117、乙13、195及び乙24の1に記載された公知技術及び周知技術を適用して当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ乙178公報(特許請求の範囲第1項、1頁1~2欄、3頁6欄、例4、第5表)には、ハム・ソーセージ・ウインナーなどの加工食品のガス充填 包装(ガスフラッシュパック)に替えて脱酸素パックを有効に使用する発明が記載されており、脱酸素パックとは、通気性フィルムの袋内にアスコルビン酸などの脱酸素性有機化合物の水溶液を含浸し ス充填 包装(ガスフラッシュパック)に替えて脱酸素パックを有効に使用する発明が記載されており、脱酸素パックとは、通気性フィルムの袋内にアスコルビン酸などの脱酸素性有機化合物の水溶液を含浸した繊維シートと第一鉄塩などの水溶液を含浸した繊維シートとの積層圧着構造のものであり、400ccの密封空気中の酸素濃度を、72時間で0.1~0.2%、 96時間で0.01%以下とすることができることが記載されている。 ウ乙178発明の内容は、以下のとおりである。 c ハムなどの加工食品を非鉄系の脱酸素剤とともに非通気性の袋に入れる工程を含むe ことを特徴とするハムなどの加工食品の包装方法。 エ本件発明と乙178発明とを対比の結果は、以下のとおりである。 <一致点>C’ 食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程を含む、E’ ことを特徴とする食肉製品の製造方法。 <相違点1> 本件発明では、食肉製品は特定加熱食肉製品のローストビーフであるのに対し、乙178発明では加熱食肉製品のハムなどの加工食品である点<相違点2>本件発明では食肉製品をスライスしているのに対し、乙178発明で はスライスしているか否か不明である点<相違点3>本件発明では、構成要件Bに「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」を含むのに対し、乙178発明では、「食肉製品を非通気性の袋に入れる工 程」は含むが、還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程は記載されていない点<相違点4>本件発明では、構成要件Dに「上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該 オキシミオグロビンに酸素化する工程は記載されていない点<相違点4>本件発明では、構成要件Dに「上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材 内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、所定のミオグロビン割合となっている」のに対し、乙178発明ではミオグロビンの種類の割合は記載されていない点オ相違点1の容易想到性については、以下のとおりである。 乙178発明ではハムなどの食肉加工品を、ガス充填包装に替えて、本 発明の脱酸素パックを使用するというものであり、ハムやソーセージなどは食肉加工品の例として挙げられたものにすぎない。乙178公報の第5表の食肉加工品の備考欄には、色沢の変化防止が挙げられており、脱酸素パックは加工食品に対し、ガスフラッシュ方式に替えて有効に使用することができたと記載されていることから、乙16、17、192、163、 162及び12を参照した当業者であれば、ハムやソーセージなどの食肉 加工品はミオグロビンが重要な役割を果している食肉製品であると認識し、乙178発明のハムなどの食肉加工品として、特定加熱食肉製品のローストビーフを採用することは容易に想到することである。 また、消費者の嗜好・志向を受けて、発色剤を使用せずに生肉本来の赤身を呈する状態にするために、乙178発明のハムなどの食肉加工品とし て、特定加熱食肉製品のローストビーフを採用することは容易に想到することである。 さらに、特定加熱食肉製品のローストビーフが、ハムやソーセージなどの食肉加工品より高級感があり消費者に対して訴求することは周知の事実である。 カ相違点2の容易想到性については、以下のとおりである。 乙193の1及び194によ ハムやソーセージなどの食肉加工品より高級感があり消費者に対して訴求することは周知の事実である。 カ相違点2の容易想到性については、以下のとおりである。 乙193の1及び194によれば、ハムをガス充填包装する際に、スライスしてトレイにいれて密封することは周知であるから、相違点2は実質的な相違点とはいえず、仮に相違点だとしても周知技術を適用して、容易に想到し得ることである。 なお、特定加熱食肉製品のローストビーフを採用した場合においても、乙163、12及び甲117によれば、スライスされたローストビーフを容器内に配置して密封する技術は周知であるから、相違点2の容易想到性に変わりはない。 キ相違点3の容易想到性については、以下のとおりである。根拠は前記⑵ と同様である。 乙178発明においても、「非通気性の袋に入れる工程」で空気と短時間接触するから、相違点3の「酸素化する工程」を備えていることになり、相違点3は存在しない。 また、乙178発明においても、色沢の変化防止という課題はあるから、 その課題を解決するために、乙13に記載された技術を適用することは容 易に想到し得ることである。 ク相違点4の容易想到性については、以下のとおりである。根拠は前記⑵と同様である。 乙178発明のハムなどの食肉加工品として、特定加熱食肉製品のスライスされたローストビーフを採用し、「酸素化する工程」を適用すれば、ロ ーストビーフは、保存状態において、鮮やかな赤色を維持し、容器を開封して酸素に曝すとオキシミオグロビンの鮮紅色を呈することになるから、相違点4は、乙178発明に、前記周知技術及び公知技術を適用することにより実現するものである。 〔控訴人の主張〕 ア乙178公報 曝すとオキシミオグロビンの鮮紅色を呈することになるから、相違点4は、乙178発明に、前記周知技術及び公知技術を適用することにより実現するものである。 〔控訴人の主張〕 ア乙178公報は、食品一般についての脱酸素パックの発明にすぎず、ミオグロビン割合のコントロールによる特定加熱食肉製品の肉色の維持など一切検討していない。この乙178公報から、商品の流通段階でも特定加熱食肉製品のオキシミオグロビンによる鮮赤色を維持して消費者に訴求することを目的とする本件発明にはたどり着けない。発色原理・安全性 の両面から、加熱食肉製品を特定加熱食肉製品に置き換えることは容易でない。 イ被控訴人の主張する乙178発明の認定も、相違点の認定も誤りである。 乙178公報は、広く食品一般に対し、「前述の従来の諸欠点を全く有さず、ガスフラッシュ方式の炭酸ガスを用いる利点と脱酸素剤の持つ優れた 徐酸素能力の利点とを兼ね備えた全く新奇な脱酸素パックを発明する」(68頁)ものである。本件発明のように、スライスするとすぐに褐変してしまい商品としての価値が損なわれるという特定加熱食肉製品特有の欠点を課題とするものではないどころか、肉色の維持を目的とするものですらないから、本件発明を想到するための主引用発明として不適切である。 乙178公報には、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をする ことなく、」ということは一切記載されていないから、この点は相違点になる。また、乙178公報の脱酸素パックの非通気性の袋及び脱酸素剤では、「当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下」になっていないから、この点も相違点となる。 ウ相違点1について、容易想到ではない。 乙178発明は、脱酸素パックに関する発明であり、 、「当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下」になっていないから、この点も相違点となる。 ウ相違点1について、容易想到ではない。 乙178発明は、脱酸素パックに関する発明であり、乙178公報の78頁第5表に記載されているものだけでも、納豆、凍豆腐、パン粉、・・・、ハム・ソーセージ・ウィンナー、・・・粉末ジュースなど、ありとあらゆる食品に対する利用が想定されている。これほど用途が多様であり、かつ、食品そのものの発明ですらない乙178発明を主引用発明として、食品の内 容をあえて特定加熱食肉製品にする動機付けは存在しない。 乙16、17、192の記載は、「食肉製品として、ハム類やソーセージ類とローストビーフとが等価に置換可能である」などとするものではない。 亜硝酸塩を使用することによってニトロソミオグロビンが発色している加熱食肉製品と、オキシミオグロビンによって発色している特定加熱食肉 製品では退色の原理が全く異なることから、「退色又は変色が抑えられる方法は、スライスした加熱食肉製品のローストビーフであろうと特定加熱食肉製品のローストビーフであろうと共通である」といえないことは明らかである。 エ相違点2について、容易想到ではない。 乙178発明から本件発明に到達するためには、相違点1を克服し、特定加熱食肉製品とする必要があるから、単に食肉をスライスする工程を容易に想到できるかではなく、特定加熱食肉製品をスライスする工程を容易に想到できるかを検討しなければならない。 本件発明のようにスライス後も長期保存できることを前提に、特定加熱 食肉製品をスライスする工程を想到することは、非常に困難であったとい うべきである。 オ相違点4について、容易想到ではない。 乙178発 も長期保存できることを前提に、特定加熱 食肉製品をスライスする工程を想到することは、非常に困難であったとい うべきである。 オ相違点4について、容易想到ではない。 乙178発明では、そもそも包材内の酸素濃度を検出限界以下の条件にできていないから、測定自体ができず、本件ミオグロビン割合を達成することは不可能である。 そもそも、ミオグロビン割合そのものが問題にならない加熱食肉製品を、発色原理の全く異なる特定加熱食肉製品に置き換えてミオグロビン割合を調整することを容易に想到できるはずがない。 ⑷ 争点2-4(無効理由4(乙179(特開平9-172949号公報)に基づく進歩性欠如))について 〔被控訴人の主張〕ア本件発明は乙179(特開平9-172949号公報。以下「乙179公報」といい。そこに記載の発明を「乙179発明」という。)に記載の発明に、乙17、192、163、162、12、21、195、24の1、乙14、22及び26に記載された公知技術及び周知技術を適用 して当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ乙179公報には、請求項2、3、段落【0001】及び実施例1の記載があるところ、これらによれば、乙179発明は以下のとおり認定できる。 a 生鮮食品である牛肉をスライスする工程と、 b スライスされた牛肉をトレイ上に並べる工程と、c スライスされた牛肉を鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含むe ことを特徴とする生鮮食品である牛肉の製造方法。 ウ本件発明と乙179発明とを対比すると、一致点及び相違点は以下の とおりである。 <一致点>A’ 食肉製品をスライスする工程と、C’ スライスされた食肉製 製造方法。 ウ本件発明と乙179発明とを対比すると、一致点及び相違点は以下の とおりである。 <一致点>A’ 食肉製品をスライスする工程と、C’ スライスされた食肉製品を脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含むE’ ことを特徴とする食肉製品の製造方法。 <相違点1>本件発明では食肉製品は特定加熱食肉製品のローストビーフであるのに対し、乙179発明では生鮮食品である牛肉である点<相違点2>本件発明では構成要件Bに「スライスされた特定加熱食肉製品にお ける還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」を含むのに対し、乙179発明では「牛肉をトレイ上に並べる工程」は含むが、還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程は記載されていない点<相違点3> 本件発明では脱酸素材は非鉄系であるのに対し、乙179発明では鉄系である点<相違点4>本件発明では構成要件Dに「上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包 材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、所定のミオグロビン割合となっている」のに対し、乙179発明ではミオグロビンの種類の割合は記載されていない点エ相違点1の容易想到性については、以下のとおりである。 乙179公報には、生肉を収納した容器内に酸素捕捉材を収納して酸 素を除去し、生肉中のメトミオグロビン及び/又はオキシミオグロビン を還元型ミオグロビンとした状態で保存し、保存後に良好な肉色を呈示させることが記載されており、生の牛肉及び特定加熱食肉製品のローストビーフは、ミオグロビンが重要な役割を果して色調改善の効果が良好に発揮されることは自明 とした状態で保存し、保存後に良好な肉色を呈示させることが記載されており、生の牛肉及び特定加熱食肉製品のローストビーフは、ミオグロビンが重要な役割を果して色調改善の効果が良好に発揮されることは自明であるから、乙17、192、163、162及び12を参照した当業者であれば、乙179発明の生鮮食品である牛肉 を、特定加熱食肉製品のローストビーフに置換することは容易に想到することである。 さらに、特定加熱食肉製品のローストビーフが、ハムやソーセージなどの食肉加工品より高級感があり消費者に対して訴求することは周知の事実である。 オ相違点2の容易想到性については、以下のとおりである。 相違点2は相違点ではないか、仮に相違点であるとしても、乙179発明においても、保存後に良好な肉色を呈示させるという課題を解決するために、乙13に記載された技術を適用することは容易である。 カ相違点3の容易想到性については、以下のとおりである。 乙14には、脱酸素剤効果によって生肉の変質を防止するとともに無酸素状態下においてもあざやかな赤味を保持する生肉の保存方法とすることを目的として、生の牛ひき肉をエージレスG-200(CO2発生型非鉄系脱酸素剤)と共に非通気性の包材で密封包装して5℃で冷蔵保存し、13日間赤色の状態で保存する方法の技術が記載されている。 また、乙21及び26によれば、鉄等を用いた酸素吸収剤は食品包装後の金属探知機による異物混入試験を行うことができないこと、酸素を吸収するとともに炭酸ガスを発生する機能を付与できることなどの理由から、有機物を主剤とする脱酸素剤が使用されていることが記載されている。 そうすると、乙179発明において、保存後に良好な肉色を呈示させる という課題を解決する ることなどの理由から、有機物を主剤とする脱酸素剤が使用されていることが記載されている。 そうすると、乙179発明において、保存後に良好な肉色を呈示させる という課題を解決するために、乙14記載の技術を適用し、脱酸素材をCO2発生型の非鉄系脱酸素材にすることは容易に想到し得ることである。 キ相違点4の容易想到性については、以下のとおりである。 相違点4は、乙179発明に、前記周知技術及び公知技術を適用するこ とにより実現するものである。 〔控訴人の主張〕ア乙179発明は、生肉を還元型ミオグロビンの赤紫色に留めておくことを目的とするものであり、特定加熱食肉製品をオキシミオグロビンの鮮赤色を保つことを目的とする本件発明にはたどり着けないし、発色原 理・安全性の両面から、生肉を特定加熱食肉製品に置き換えることは容易でない。その理由の詳細は以下のとおりである。 イ被控訴人の主張する乙179発明の認定及び相違点の認定は誤りである。 乙179公報には、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換を することなく、」ということは一切記載されていないから、この点は相違点になる。 ウ相違点1の容易想到性については以下のとおりである。 牛生肉をあくまで還元型ミオグロビンの状態に置いて保存後に鮮赤色を呈するようにする乙179発明と、特定加熱食肉製品のローストビー フの保存中の色を鮮赤色に保つ本件発明とでは技術的思想が全く異なり、乙179発明を出発点に、本件発明に到達することが容易といえないことは明らかである。 エ相違点3の容易想到性については以下のとおりである。 乙179発明(段落【0004】、【0005】の記載)は、一刻も早く 酸素を吸収して、ミオグロビンを還元型の状態に保 は明らかである。 エ相違点3の容易想到性については以下のとおりである。 乙179発明(段落【0004】、【0005】の記載)は、一刻も早く 酸素を吸収して、ミオグロビンを還元型の状態に保とうという技術的思 想であることが分かる。一般に、非鉄系脱酸素材は鉄系脱酸素材よりも酸素吸収速度が穏やかであるから、乙179発明の技術的思想と、鉄系脱酸素材を非鉄系脱酸素材に置き換えるという技術的思想は相いれず、相違点3を克服することには阻害事由が存在するというべきである。 オ相違点4の容易想到性については、以下のとおりである。 乙179発明(段落【0005】の記載)は、オキシミオグロビンを還元型ミオグロビンのままにすることが好ましいとする発明である。実際、乙179公報の実施例では、いずれも還元型ミオグロビンの割合が最終的に97%以上となっている(実施例1~4【表1】【表3】【表5】)。これは、オキシミオグロビン割合が3%を下回るということであるから、 オキシミオグロビンを12%以上として鮮赤色を保つ本件ミオグロビン割合とは全く異なる。このような発想は、オキシミオグロビンの割合を一定以上とする発想とは真逆であるから、乙179発明を出発点に相違点4を想到することは容易ではない。 ⑸ 争点2-5(無効理由5(乙180(特公昭58-29069号公報)に 基づく進歩性欠如))について〔被控訴人の主張〕ア本件発明は乙180(特公昭58-29069号公報。以下「乙180公報」といい、そこに記載の発明を「乙180発明」という。)発明に、乙179、17、192、163、162、12、13、195及び24の 1に記載された公知技術及び周知技術を適用して当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ という。)発明に、乙179、17、192、163、162、12、13、195及び24の 1に記載された公知技術及び周知技術を適用して当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ乙180公報の特許請求の範囲第1項(アスコルビン酸等からなる鮮度保持剤)、実施例3の記載によれば、乙180発明の内容は以下のとおりである。 b 生鮮食品である牛肉をトレイ上に並べる工程と、 c 牛肉を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含むe ことを特徴とする生鮮食品である牛肉の製造方法。 ウ本件発明と乙180発明との対比<一致点> C’ 食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含む、E’ ことを特徴とする食肉製品の製造方法。 <相違点1>本件発明では食肉製品は特定加熱食肉製品のローストビーフであるの に対し、乙180発明では生鮮食品である牛肉である点<相違点2>本件発明では食肉製品をスライスしているのに対し、乙180発明ではスライスしていない点<相違点3> 本件発明では構成要件Bに「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」を含むのに対し、乙180発明では、「生鮮食品である牛肉をトレイ上に並べる工程」は含むが、還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程は記載されていない点 <相違点4>本件発明では構成要件Dに「上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、所定のミオグロビン割合となっている」のに対し、乙180発明ではミオグロビンの種類の割合は記 肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、所定のミオグロビン割合となっている」のに対し、乙180発明ではミオグロビンの種類の割合は記載さ れていない点 エ相違点1の容易想到性については、以下のとおりである。 乙180公報には、食品は、遊離酸素により悪変し、風味の飛散、変色等が発生するので、この遊離酸素を除去するために脱酸素剤が使用されつつあることが記載され、保存テストとして牛肉の色変化が記載されている。 赤紫色や鮮紅色はミオグロビンによるものであることは明らかであるか ら、生の牛肉及び特定加熱食肉製品のローストビーフは、ミオグロビンが重要な役割を果して色調改善の効果が良好に発揮されることは自明であり、乙17、192、163、162及び12を参照した当業者であれば、乙180発明の生鮮食品である牛肉を、特定加熱食肉製品のローストビーフに置換することは容易である。 さらに、特定加熱食肉製品のローストビーフが、ハムやソーセージなどの食肉加工品より高級感があり消費者に対して訴求することは周知の事実である。 オ相違点2の容易想到性については、以下のとおりである。 乙180公報ではスライスしていない牛肉が使用されており、乙192 の段落【0062】には「・・・整形された部分肉を切断、スライスし、ブロック肉や薄切り肉とする。」と記載され、生の牛肉ハムをスライスして使用することは周知であるから、乙180発明の生鮮食品である牛肉を、スライスしてトレイに並べるようにすることは容易に想到できる。 なお、乙180発明の生鮮食品である牛肉を、特定加熱食肉製品のロー ストビーフに置換した場合においても、乙163、12及び甲117によ てトレイに並べるようにすることは容易に想到できる。 なお、乙180発明の生鮮食品である牛肉を、特定加熱食肉製品のロー ストビーフに置換した場合においても、乙163、12及び甲117によれば、スライスされたローストビーフを容器内に配置して密封する技術は周知であるから、相違点2の容易想到性に変わりはない。 カ相違点3の容易想到性については、以下のとおりである。 乙180発明においても、「牛肉をトレイ上に並べる工程」で空気と短時 間接触するから、相違点3の「酸素化する工程」を備えていることになり、 相違点3は存在しない。 また、変色防止や褐変防止という課題を解決するために、乙13に記載された技術を適用することは容易に想到することである。 キ相違点4の容易想到性については、以下のとおりである。 相違点4は、乙180発明に、前記周知技術及び公知技術を適用するこ とにより実現するものである。 〔控訴人の主張〕ア乙180発明は生肉を還元型ミオグロビンの赤紫色に留めておくことを目的とするものであり、特定加熱食肉製品をオキシミオグロビンの鮮赤色を保つことを目的とする本件発明にはたどり着けない。また、発色原理・ 安全性の両面から、生肉を特定加熱食肉製品に置き換えることは容易でない。 イ被控訴人の主張する乙180発明の認定及び相違点の認定は誤りである。 乙180公報の146頁には、「外側の積層フィルムを取り除くと本発 明の鮮度保持剤(B)(D)を用いたものは短時間で赤紫色から鮮紅色に変化した・・・。」と記載されており、乙180発明は、牛生肉をあくまで還元型ミオグロビンの状態に置いて保存後に鮮赤色を呈するようにする発明であるから、特定加熱食肉製品のローストビーフの保存中の色を鮮 化した・・・。」と記載されており、乙180発明は、牛生肉をあくまで還元型ミオグロビンの状態に置いて保存後に鮮赤色を呈するようにする発明であるから、特定加熱食肉製品のローストビーフの保存中の色を鮮赤色に保つ本件発明とでは技術的思想が全く異なり、乙180発明を出発点に、 本件発明に到達することが容易といえないことは明らかである。 乙180公報には、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく、」ということは一切記載されていないから、この点は相違点になる。 ウ相違点1の容易想到性については、以下のとおりである。 乙180発明(同公報143頁左欄の記載)の目的は鮮度保持のみにあ るから、特定加熱食肉製品のローストビーフの保存中の色を鮮赤色に保つ本件発明とでは技術的思想が全く異なり、乙180発明を出発点に、本件発明に到達することが容易といえないことは明らかである。 エ相違点2の容易想到性については、以下のとおりである。 乙180発明から本件発明に到達するためには、相違点1を克服し、特 定加熱食肉製品とする必要があるから、単に食肉をスライスする工程を容易に想到できるかではなく、特定加熱食肉製品をスライスする工程を容易に想到できるかを検討しなければならない。 被控訴人提出の証拠を見ても、特定加熱食肉製品であることを明示し、スライスしても長期間保存できるとした技術文献は提出されていないから、 本件明細書の段落【0002】のような問題は、当業者にとって極めて困難な課題であったといえ、本件発明のようにスライス後も長期保存できることを前提に、特定加熱食肉製品をスライスする工程を想到することは、非常に困難であったというべきである。 オ相違点4の容易想到性については、以下のとおりである。 のようにスライス後も長期保存できることを前提に、特定加熱食肉製品をスライスする工程を想到することは、非常に困難であったというべきである。 オ相違点4の容易想到性については、以下のとおりである。 乙180発明は、牛生肉をあくまで還元型ミオグロビンの状態に置いて保存後に鮮赤色を呈するようにする発明であり、保存中に鮮赤色を保つためにオキシミオグロビンの割合を一定以上とする発想とは真逆であるから、乙180発明を出発点に相違点4を想到することは容易ではない。 ⑹ 争点2-6(無効理由6(明確性要件違反))について 原判決摘示の当事者双方の主張を整理し、当審における主張を付加すると、以下のとおりである。 〔被控訴人の主張〕ア本件発明の構成要件Bの「酸素化する工程」は、酸素濃度も酸素にさらす時間も規定されていないが、本件明細書に記載された1時間程度空気中 にさらすものであるか、空気と短時間接触するものを含むのか不明である。 イ構成要件Bにおいては、酸素濃度も酸素にさらす時間も規定されていない。そうすると、ごくわずかの量の還元型ミオグロビンを酸素化してオキシミオグロビンにするものも含むと解することも可能である。 しかし、本件明細書の段落【0008】の「・・・スライスした後の褐変を防止して優れた肉色を維持した特定加熱食肉製品及びその製造方法を提 供することを目的・・・とする。」という課題に対し、構成要件Dのミオグロビン割合は、本件発明の課題の解決に不可欠のものであると解される(段落【0042】ないし【0044】)ところ、上記【表1】及び【表2】を参照しても、オキシミオグロビンは少なくとも50%程度になっていなければ、脱酸素化後12%以上を維持することは困難と解されるから、段落 【 いし【0044】)ところ、上記【表1】及び【表2】を参照しても、オキシミオグロビンは少なくとも50%程度になっていなければ、脱酸素化後12%以上を維持することは困難と解されるから、段落 【0023】に「30~90分、好ましくは50~70分、より好ましくは60分の処理時間とする」と記載され、実施例1では「冷蔵庫内で1時間保存する」と記載されているものと解される。 しかしながら、これらの時間は空気中にさらした場合の時間であり、構成要件Bでは酸素化する場合の酸素濃度は規定されていないから、さらす 時間も特定されないはずである。本件発明において、酸素化する工程とは、スライスする工程と包材に密封する工程とは別の工程であり、スライスする工程及び包材に密封する工程と関連付けて検討することは誤りである。 本件明細書の記載を考慮し、技術常識を基礎としても、特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほど不明確である。 ウ本件発明は、構成要件Dの「所定のミオグロビン割合となっている」状態が、「ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下」の全ての期間で満足する必要があるのか、一時期だけ満足するものを含むのかが不明である。 構成要件Dは、「包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下」で時間が経 過しても、各ミオグロビンの割合は上記範囲内にあるものと解され、また、 構成要件Dのミオグロビン割合は、本件発明の課題の解決に不可欠のものである。 しかしながら、実施例1の【表1】の一部の箇所では、ミオグロビンの割合は上記範囲内から外れている。請求項2には、「上記非鉄系脱酸素材とともに鉄系脱酸素材を37.5%以下(非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の 合計 施例1の【表1】の一部の箇所では、ミオグロビンの割合は上記範囲内から外れている。請求項2には、「上記非鉄系脱酸素材とともに鉄系脱酸素材を37.5%以下(非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の 合計量を100%)の割合で使用する・・・」と記載されているから、請求項1の発明は【表1】に示された、鉄系脱酸素材を50.0%及び42.9%の割合で使用するものを含むことは明らかであり、本件発明も同様である。 つまり、【表1】は、本件発明に、「包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下」であっても各ミオグロビンの割合が上記範囲を逸脱するものも含ま れることを示している。 エしたがって、本件発明の特許には、特許法36条6項2号(明確性要件)の違反がある。 〔控訴人の主張〕ア本件発明の特許請求の範囲には、「酸素化する工程」について時間に関す る限定は一切なされていない。また、本件明細書の段落【0023】には、好ましい態様を記載しているだけで、酸素化の時間を限定していない。 それどころか、段落【0023】に続く【0024】は、「また、酸素化の処理条件については、使用する肉の種類や部位、個体差によるミオグロビン総量の違いにより条件を設定することができる。例えば、酸素化処理 は、特定加熱食肉製品の断面におけるスライス直後の紫赤色が鮮赤色に変化する状態を目視により確認し、十分に赤色を呈した段階で処理を終了しても良い。」として、酸素化の処理条件は適宜設定でき、時間ではなく目視確認によることさえできるとしている。 このことから、本件発明で重要なのは最終的に所定のミオグロビン割合 に到達させることであって、本件発明の「酸素化する工程は、本件明細書 に記載された1時間程度空気中にさらすものである」などと限定解釈できないことは は最終的に所定のミオグロビン割合 に到達させることであって、本件発明の「酸素化する工程は、本件明細書 に記載された1時間程度空気中にさらすものである」などと限定解釈できないことは明らかである。 よって、本件発明の構成要件Bの酸素化する工程は、1時間程度空気中にさらすものも、空気と短時間接触するものも含まれることは、当業者にとって明確である。 イ本件発明が特定加熱食肉製品をガスバリア性を有する包材で密封する発明である以上、「ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下」は、半永久的に続くことになる。そうすると、「『ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下』の全ての期間で満足する 必要がある」と解釈すると、半永久的に本件ミオグロビン割合を満たさなければならないことになる。 安定的な化学物質などではない特定加熱食肉製品は時間とともに変化するから、そのような条件を実現することは不可能であり、そのことは当業者にとって自明である。 よって、「『ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下』の全ての期間で満足する必要がある」などという解釈は成り立たず、「『ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下』の一時期だけ満足するもの」であることは、当業者にとって明確である。 本件発明は、「スライスした後の褐変を防止して優れた肉色を維持した特定加熱食肉製品及びその製造方法を提供することを目的とし、また、褐変を防止して優れた肉色を維持したスライスされた特定加熱食肉製品の保存方法を提供することを目的とする」(本件明細書の段 色を維持した特定加熱食肉製品及びその製造方法を提供することを目的とし、また、褐変を防止して優れた肉色を維持したスライスされた特定加熱食肉製品の保存方法を提供することを目的とする」(本件明細書の段落【0008】)ものである。 半永久的に本件ミオグロビン割合を満たす必要はなく、店頭に並んでい て顧客に選ばれるときに優れた肉色であれば、購買意欲を刺激できるから十分であり、当業者であれば「『ガスバリア性を有する包材に密封された状態、かつ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下』の全ての期間で満足する必要がある」などとは考えない。 以上のとおりであり、本件発明に明確性要件違反はない。 ⑺ 争点2-7(無効理由7(実施可能要件違反))について原判決摘示の当事者双方の主張を整理し、当審における主張を付加すると、以下のとおりである。 〔被控訴人の主張〕構成要件Dの所定のミオグロビン割合となっている状態が、全ての期間で 満足する必要があると解されるとすると、本件特許には以下に説明する実施可能要件違反の無効理由がある。 本件明細書の段落【0034】には、非鉄系脱酸素材を使用することにより特定加熱食肉製品に含まれる各ミオグロビンの割合を所望の範囲に制御することができる旨記載され、段落【0036】には、鉄系脱酸素材を補助 的に利用した場合でも、非鉄系脱酸素材を使用すれば各ミオグロビンの割合を所望の範囲に制御することができる旨記載されている。 しかしながら、【表1】における各ミオグロビンの割合は所望範囲内から外れているものがあり、本件明細書を参酌しても、鉄系脱酸素材を50. 0%及び42.9%の割合で使用した場合に、どのようにすれば各ミオグロ ビンの割合を所望範囲内に制御できるのかは不明である。 外れているものがあり、本件明細書を参酌しても、鉄系脱酸素材を50. 0%及び42.9%の割合で使用した場合に、どのようにすれば各ミオグロ ビンの割合を所望範囲内に制御できるのかは不明である。 本件明細書の段落【0008】には、「・・・褐変を防止して優れた肉色を維持して保存する技術は全く知られていなかった。」、段落【0009】には、「上述した目的を達成するため、本発明者等が鋭意検討した結果、・・・所定の手順及び条件にて処理することでスライスされた特定加熱食肉製品にお ける還元型ミオグロビン、オキシミオグロビン及びメトミオグロビンの存 在比を所望の範囲に制御することができ、その結果、長期保存によっても褐変することなく良好な色調を維持できることを見いだし・・・。」と記載されているが、各ミオグロビンの割合を所望範囲内に制御することが出願当時の技術常識であったとも認められない。 よって、本件明細書には、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及 び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるということはできない。 したがって、本件発明の特許には、特許法36条4項1号(実施可能要件)の違反がある。 〔控訴人の主張〕本件特許に係る発明は、請求項2の発明のみが鉄系脱酸素材の使用割合を37.5%以下と規定するだけで、本件発明は、鉄系脱酸素材の割合が高い場合でも必ず本件ミオグロビン割合になるなどとするものではない。 本件明細書の段落【0036】も、「しかし、本工程では、鉄系脱酸素材を 補助的に利用して、包材内の酸素及び特定加熱食肉製品のオキシミオグロビンに結合した酸素を吸収する処理時間を短縮することができる。・・・鉄系脱酸 36】も、「しかし、本工程では、鉄系脱酸素材を 補助的に利用して、包材内の酸素及び特定加熱食肉製品のオキシミオグロビンに結合した酸素を吸収する処理時間を短縮することができる。・・・鉄系脱酸素材は、非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の合計量を100%としたときに37.5%以下とすることが好ましい。鉄系脱酸素材をこの範囲で使用することで、上述した褐変を防止しながら脱酸素処理の時間を短縮できる。」とし て、鉄系脱酸素材の使用はあくまでも補助的なものであり、必須の構成ではないことが明記されている。 このような記載と、【表1】からは、鉄系脱酸素材の割合を37.5%よりも下げれば、確実に本件ミオグロビン割合を満たすことが分かるから、実施可能要件に問題はない。 そもそも、鉄系脱酸素材の割合が50.0%であり、本件ミオグロビン割 合を満たさない特定加熱食肉製品のローストビーフは本件発明の技術的範囲外であるから、実施可能要件とは関係がない。 本件明細書の【表1】からすれば、鉄系脱酸素材の割合を増やせば、本件ミオグロビン割合の範囲内に収まりにくくなるという全体的な傾向が確認できる。当業者であれば、全体的な傾向から、本件ミオグロビン割合に収めや すい適切な鉄系脱酸素材の割合を設定できるから、実施可能であることは明らかである。 したがって、本件発明の特許に実施可能要件違反はない。 ⑻ 争点2-8(無効理由8(サポート要件違反))について原判決摘示の当事者双方の主張を整理し、当審における主張を付加すると、 以下のとおりである。 〔被控訴人の主張〕ア本件明細書の段落【0008】によれば、本件発明の解決すべき課題は、褐変を防止して優れた肉色を維持したスライスされた特定加熱食肉製品の保存方法(製造方法)を提供す 。 〔被控訴人の主張〕ア本件明細書の段落【0008】によれば、本件発明の解決すべき課題は、褐変を防止して優れた肉色を維持したスライスされた特定加熱食肉製品の保存方法(製造方法)を提供するものである。しかしながら、当業者が、本 件発明の全体にわたり、本件発明の課題を解決できると認識できるものとは認められない。 イ本件発明は、構成要件Cにおいて、脱酸素材として非鉄系脱酸素材を使用することを規定するが、非鉄系脱酸素材には炭酸ガスを発生するタイプと、炭酸ガスを発生しないタイプとがあるところ、どちらかのタイプかには限 定されていない。 本件明細書の段落【0032】には、炭酸ガスを発生するタイプを使用することが好ましいとは記載されているが、好ましいとされる理由は、包材の収縮を回避できるというものであり、褐変を防止して優れた肉色を維持するという課題とは関連がない。本件明細書の実施例として記載されている のは、非鉄系脱酸素材として三菱ガス化学社製のエージレス(商品タイプ: GT タイプ)(注:炭酸ガスを発生するタイプ)を使用し、鉄系脱酸素材として三菱ガス化学社製のエージレス(商品タイプ:SA タイプ)を使用して、鉄系脱酸素材の比率を、50.0%、42.9%、37.9%及び0%としたもののみである。 乙14(2頁右上欄6行~左下欄6行)には、炭酸ガスを発生しない型の 脱酸素剤を使用した場合には生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤味が失われて褐変するが、炭酸ガスを発生する脱酸素剤を使用した場合には、酸素濃度が低下しても、同時に炭酸ガス濃度が高まってゆく中では生肉の褐変現象が生じにくく、脱酸素後においても酸素型ミオグロビンの色調であるあざやかに赤い色調に近い赤味を保持することができる旨記載され 濃度が低下しても、同時に炭酸ガス濃度が高まってゆく中では生肉の褐変現象が生じにくく、脱酸素後においても酸素型ミオグロビンの色調であるあざやかに赤い色調に近い赤味を保持することができる旨記載され ている。 そうすると、炭酸ガスを発生するタイプの脱酸素材と、炭酸ガスを発生しないタイプの脱酸素材とでは、褐変を防止して優れた肉色を維持するという課題を解決することへの影響は大きく異なり、炭酸ガスを発生するタイプの脱酸素材を使用した場合に褐変を防止して優れた肉色を維持すること ができるとしても、炭酸ガスを発生しないタイプの脱酸素材を使用した場合に、褐変を防止して優れた肉色を維持することができるとは直ちにいえない。 ウ構成要件B(酸素化する工程)について、空気と短時間接触するものを含むと解される場合には、サポート要件に適合しない。本件明細書の段落【0 042】ないし【0044】の記載によれば、褐変を防止して優れた肉色を維持できるのは、構成要件Dの所定のミオグロビン割合になっているためであると解される。 スライスしたローストビーフでは、還元型ミオグロビンが大部分を占めると解されるから(段落【0022】)、空気と短時間接触しただけでは、還 元型ミオグロビンのごくわずかがオキシミオグロビンに変化するのみであ って、酸素化時のオキシミオグロビンの割合は50%よりはるかに少なく、還元型ミオグロビンの割合は50%以上となる可能性が高いので、【表1】及び【表2】の酸素化時とはかけ離れた割合となる。 したがって、本件発明の酸素化する工程が、空気と短時間接触するものを含む場合には、酸素濃度が検出限界以下になったときに、構成要件Dの各ミ オグロビンの割合の範囲内を維持できないものとなり、本件発明の全体にわたり、課題を解 する工程が、空気と短時間接触するものを含む場合には、酸素濃度が検出限界以下になったときに、構成要件Dの各ミ オグロビンの割合の範囲内を維持できないものとなり、本件発明の全体にわたり、課題を解決することはできない。 エ本件発明の構成要件Bについて、「ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下」の全ての期間で満足する必要があると解される場合については、以下のとおりである。 本件明細書の【表1】では、鉄系比率42.9%の「D+1」と「D+2」及び鉄系比率37.5%と鉄系比率0.0%の「D+1」乃至「D+3」において、所定のミオグロビン割合の条件を満足している。 しかし、鉄系比率42.9%の「D+1」及び「D+2」において、各ミオグロビンの割合は前記数値範囲内にあるが、a*値が低く、且つ、b*値 がa*値を上回り、褐変しているか、少なくとも良好な色調を有するといえず、課題を解決できているとはいえない。 したがって、本件発明の構成要件Dの各ミオグロビンの割合が、全ての期間で満足したとしても、各ミオグロビンの割合が所定範囲内と規定する本件発明の全体にわたり、課題を解決することはできない。 オ上記エと異なり、本件発明の構成要件Dについて、一時期だけ満足するものを含むと解される場合については、以下のとおりである。 【表1】に示されるように、鉄系比率50.0%の実施例の「D+2」ないし「D+3」、及び鉄系比率42.9%の実施例の「D+3」では、所定のミオグロビン割合の条件を満足していないが、a*値が4.63、5.3 6及び6.20と、褐変されているとされる鉄系比率100%の「D+1」 及び「D+2」のa*値(6.92)よりも低い数値となっており、本件発 していないが、a*値が4.63、5.3 6及び6.20と、褐変されているとされる鉄系比率100%の「D+1」 及び「D+2」のa*値(6.92)よりも低い数値となっており、本件発明の課題が解決できていないことは明らかである。 したがって、本件発明の構成要件Dの各ミオグロビンの割合が一時期だけ満足するものを含むとすれば、満足しない時期も存在することになり、その時期には課題を解決することはできず、本件発明の全体にわたり課題を 解決したものとはならない。 カしたがって、本件発明の特許には、特許法36条6項1号(サポート要件)の違反がある。 〔控訴人の主張〕ア本件発明の効果はあくまで非鉄系脱酸素材によるものである。乙14は、 炭酸ガス発生型の脱酸素材であれば脱酸素後においても酸素型ミオグロビンの色調であるあざやかに赤い色調に近い赤味を保持することができるとしているが、本件発明では、あくまで非鉄系脱酸素材が肉色を維持するとしている。本件明細書の段落【0035】には、「このとき仮に、鉄系脱酸素材のみを使用して包材内の酸素及び特定加熱食肉製品のオキシミオグロビ ンに結合した酸素を吸収すると、短時間に酸素吸収が行われ、オキシミオグロビンの割合を12%以上に維持することができないし、場合によってはメトミオグロビンの割合が50%を超えることもある。その結果、特定加熱食肉製品のスライス断面は褐変してしまう。」と記載されており、当業者であれば、非鉄系脱酸素材を使用する意義について、鉄系脱酸素材では酸素吸 収速度が速すぎるから、あえて非鉄系脱酸素材を用いることが理解でき、【表1】からも、鉄系脱酸素材の割合を低くすればするほど、本件ミオグロビン割合の範囲内に収まりやすくなっていることが理解できる。同段落【0 すぎるから、あえて非鉄系脱酸素材を用いることが理解でき、【表1】からも、鉄系脱酸素材の割合を低くすればするほど、本件ミオグロビン割合の範囲内に収まりやすくなっていることが理解できる。同段落【0032】にも、炭酸ガスを発生するタイプを使用することは、あくまで包材の収縮といった色とは別の問題を解決するために使用されていることが明 示されている。 イ構成要件Bの「酸素化する工程」について、本件明細書の段落【0024】は、「また、酸素化の処理条件については、使用する肉の種類や部位、個体差によるミオグロビン総量の違いにより条件を設定することができる。例えば、酸素化処理は、特定加熱食肉製品の断面におけるスライス直後の紫赤色が鮮赤色に変化する状態を目視により確認し、十分に赤色を呈した段階 で処理を終了しても良い。」としており、当業者であれば、この記載に基づいて「酸素化する工程」の時間を適宜設定して本件発明を実施できる。 前記段落【0024】の記載から、酸素化の処理条件は適宜設定でき、時間ではなく目視確認でも構わないとしている。そして、目視確認をすれば、甲189の事実実験公正証書のとおり、薄いローストビーフスライスなら 2分半程度の短期間でもa値が向上して赤くなることは、当業者が実験をすれば直ちに分かることである。このように、本件明細書に記載のとおり目視確認をすれば、薄いローストビーフスライスであれば短時間でも十分に酸素化することが理解できるから、本件明細書はサポート要件を満たしている。 ウ構成要件D(本件ミオグロビン割合)につき、そもそも全ての期間で満足する必要はない。本件発明が「ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下」の全ての期間で満足する必要 オグロビン割合)につき、そもそも全ての期間で満足する必要はない。本件発明が「ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下」の全ての期間で満足する必要があると解釈できないことは既に述べたとおりである。 本件発明は、鉄系脱酸素材は補助的に使用するものにすぎず、本件発明が そもそも鉄系比率50.0%や42.9%で必ず本件ミオグロビン割合を満たす発明ではないことは、既に述べたとおりである。 エ構成要件Dにつき、一時期だけ本件ミオグロビン割合を満たすものを含むと解釈する場合でも、前記のとおり、本件発明において鉄系脱酸素材は補助的に使用するものにすぎず、本件発明がそもそも鉄系比率50.0%や4 2.9%で必ず本件ミオグロビン割合を満たす発明ではない。そもそも、仮 に本件ミオグロビン割合の範囲外の場合(構成要件Dを充足しない場合)に褐変しているとして、そのことがサポート要件違反と結びつくのかの論理が不明である。 この点につき、鉄系比率を低くすると傾向は明らかになっている。 鉄系比率が50.0%の場合も、 ① D+1のb/aは、6.89÷7.49=0.9199② D+2のb/aは、5.88÷4.63=1.27③ D+3のb/aは、7.53÷5.36=1.4049であり、鉄系比率が42.9%の場合も、④ D+3のb/aは、6.32÷6.20=1.0194 であり、鉄系比率100%の24Hr後のb/aが12.11÷6.92=1.75であることと比較すると明らかに数字は良い。 ここからも、非鉄系脱酸素材の割合が多い方がより良い色になっているという傾向が読み取れるから、サポート要件違反はない。 ⑼ 控訴人は、シンコウフーズから損害 較すると明らかに数字は良い。 ここからも、非鉄系脱酸素材の割合が多い方がより良い色になっているという傾向が読み取れるから、サポート要件違反はない。 ⑼ 控訴人は、シンコウフーズから損害賠償請求権を取得したか(争点3)について〔控訴人の主張〕シンコウフーズは、令和2年6月12日、控訴人に対し、被控訴人に対する被控訴人各製品の販売によって生じた損害賠償請求権を適法に譲渡している (甲227)。 〔被控訴人の主張〕控訴人は甲227を提出して、令和2年6月12日に損害賠償請求債権の債権譲渡があったものと主張する。 甲227は、令和5年6月20日付けとなっているが、これは令和5年6月 20日以前に控訴人の間で一切書面による債権譲渡契約の締結がされていな いことを示している。控訴人は上場企業であるし、控訴人の主張を前提とした場合、譲渡対象の損害賠償請求債権の金額は相応の金額になることも踏まえると、真正の譲渡がされたのであれば書面による債権譲渡契約の締結がされないなど考えられない。書面がなければ会社としてどのような取引をしたか把握することができないし、経理的な処理も困難である。特に、控訴人が主張する無 償譲渡があったということであれば、贈与税が発生し、損害賠償請求債権の評価を行い必要な税を算出するという処理が発生するが、書面もなしにそのような処理がされたとは考えにくい。シンコウフーズの立場からしても、債権譲渡が実際にあったとすれば、仮に、控訴人が本件訴訟に勝訴をした場合にその損害賠償金からライセンス料収入を得ることができなくなるのであるから、この ような債権譲渡を行う経済的合理性が全くない。以上からすれば、控訴人の主張する債権譲渡は通謀虚偽表示に該当すると疑わざるを得な 金からライセンス料収入を得ることができなくなるのであるから、この ような債権譲渡を行う経済的合理性が全くない。以上からすれば、控訴人の主張する債権譲渡は通謀虚偽表示に該当すると疑わざるを得ない。 なお、甲227では、債権の特定として「知的財産高等裁判所令和4年(ネ)第10055事件及び第10066事件において、被控訴人各製品として挙げられている製品への損害賠償請求権」としているが、控訴人が債権譲渡があっ たと主張する令和2年6月12日時点で、上記知的財産高等裁判所係属事件は存在しないのであり、控訴人が知的財産高等裁判所で追加的に請求を行った、本件発明に係る請求項5の特許に関する損害賠償請求権について事前に譲渡が行われたとは考えにくい。控訴人の主張する債権譲渡は現時点の主張立証を前提とすれば真正に存在したとは合理的に考えにくいものである。このように 訴訟信託が行われていることについて合理的に疑義が生じている事案において、甲227のような事後的に締結された形式的な書面を提出することのみをもって真正の債権譲渡を認定してしまっては、訴訟信託を禁じた信託法の趣旨を没却することは明らかである。 ⑽ 損害額(争点4)について 〔控訴人の主張〕 ア被控訴人各製品の販売数量につき、被控訴人の主張する乙215記載のとおりの販売数量を認める。 イ被控訴人各製品が販売されなかったとしても特許法102条2項の利益を得られたとはいえないとする点についての反論は、以下のとおりである。 (ア) イオンとイトーヨーカ堂の親会社であるセブン&アイは、同じサッポロ ビールに対し、同じようにホップに特徴を有するプライベートブランド(以下、「PB」という。)商品の発注を行っている(甲215、216)。 イトーヨーカ堂の親会社であるセブン&アイは、同じサッポロ ビールに対し、同じようにホップに特徴を有するプライベートブランド(以下、「PB」という。)商品の発注を行っている(甲215、216)。 また、イオンのPBである「トップバリュ」のロースハムを製造している日本ハムは、セブン&アイのPBである「セブンプレミアム」のロースハムの開発に携わっている(甲217、218)。これらの例は、セブン& アイが、競合関係にあるイオンにPB商品を供給しているメーカーに対し、同種の商品のPB商品(サッポロビールの例に至っては同じようにホップに特徴を有するPB商品)を発注する可能性を示している。 なお、セブン&アイは、最近のPB商品戦略として、PBの供給元としてナショナルブランド商品(以下「NB商品」という。)も販売している 大手メーカーを選択している(甲219)。 これらによれば、被控訴人が製造できなければ、その代わりにローストビーフに力を入れていることが業界内で認知されている食肉最大手の控訴人を選択する可能性は十分にある。 (イ) 被控訴人はイトーヨーカ堂に対して、非鉄系脱酸素剤を用いて本件発 明を実施することによってローストビーフの赤みが明らかに強くなることを訴求してイトーヨーカ堂のオリジナル商品として採用された。よって、イトーヨーカ堂には、本件発明を唯一適法に実施することができる控訴人に対してイトーヨーカ堂のオリジナル商品の製造を委託する理由があったといえる。控訴人がイトーヨーカ堂と共同開発を行えば、その 商品は控訴人がイオンと共同開発した商品と同じ商品になることはない のであるから、控訴人がイオンに対してイオンと共同開発したローストビーフを販売していることは、控訴人が新たにイトーヨーカ堂 商品は控訴人がイオンと共同開発した商品と同じ商品になることはない のであるから、控訴人がイオンに対してイオンと共同開発したローストビーフを販売していることは、控訴人が新たにイトーヨーカ堂ともローストビーフの共同開発をしても支障はない。また、イオンは、控訴人が競業他社の商品に本件発明の技術を用いても問題視しない。このことは、控訴人が、コンビニ大手ローソンの傘下にある成城石井に本件発明の実 施品を販売していることからも明らかである。 ウ次のとおり、被控訴人が主張する推定覆滅事由は存在しない。 (ア) イトーヨーカ堂は、本件発明の実施品である被控訴人各製品以外に密封タイプのローストビーフのスライスを購入していないから、被控訴人が列挙する商品はいずれも競合品たりえない。また、被控訴人の主張の とおりであれば、イトーヨーカ堂は、加熱食肉製品を販売していないから加熱食肉製品は競合品に当たらない。そもそも、被控訴人は、市場占有率などの競合の有無や程度を示す事情について明らかにしておらず、競合関係の立証は一切ない。 イトーヨーカ堂が、消費期限が短すぎるという理由で脱酸素材を使用 しない特定加熱食肉製品から脱酸素剤を使用する特定加熱食肉製品に切り替えたという経緯からすれば、仮に被控訴人による侵害行為がなかったとすれば、イトーヨーカ堂は脱酸素材を使用しており色彩・保存期間において優れている本件発明の実施品である控訴人の製品を受け入れ、消費期限の短い脱酸素材不使用の製品(被控訴人による本件発明の 不実施品)は受け入れなかったと考えられる。 そうすると、被控訴人による本件発明の不実施品は、競合品にはならない。 (イ) 特許法102条2項の推定を覆滅するために必要な営業努力は、通常の範囲を超える格別の工夫や営 ったと考えられる。 そうすると、被控訴人による本件発明の不実施品は、競合品にはならない。 (イ) 特許法102条2項の推定を覆滅するために必要な営業努力は、通常の範囲を超える格別の工夫や営業努力に限られる。被控訴人にとってイ トーヨーカ堂が最大の販売先であったとしても、そのことは、上記営業 努力を示すものではない。イトーヨーカ堂がPBのみを販売しているのは、自社の収益を確保するために都合が良いからであり、また、被控訴人が選ばれたのは、被控訴人の製品を高く評価しているからとは限らない。 被控訴人各製品のイトーヨーカ堂に対するサンプル導入決定報告書に も、ローストビーフが脱酸素剤入りであることは大きく記載されているが、被控訴人の主張する優れた特徴については言及がない。控訴人による本訴提起にもかかわらず、被控訴人が被控訴人各製品の設計変更をしなかったのは、イトーヨーカ堂の要望が本件発明の効果を満たすことにあったからであり、被控訴人の製品に優れた特徴があったからではない。 イトーヨーカ堂が控訴人による本訴提起にもかかわらず被控訴人各製品の購入中止も被控訴人に対する技術変更要請もしなかったのは、単に本件特許の実施品が欲しかったに過ぎない。イトーヨーカ堂が裁判所の心証開示後の設計変更に応じたのは、控訴人がライセンス付与の和解を拒絶したため、やむをえず行ったことである。 (ウ) 被控訴人は、本件発明の実施の効果の発現が限定的であると主張するが、本件発明の実施品と非実施品の肉色は明らかに異なっている。本件発明の実施に効果がないのであれば、被控訴人は、平成30年8月14日に控訴人から警告を受けた時点で脱酸素剤を除けばよかったにもかかわらず、これをしなかったのであるから、これは、本件発明に効果が 件発明の実施に効果がないのであれば、被控訴人は、平成30年8月14日に控訴人から警告を受けた時点で脱酸素剤を除けばよかったにもかかわらず、これをしなかったのであるから、これは、本件発明に効果が あったからに他ならない。 被控訴人の設計変更後の商品の売上が設計変更前よりも伸びているとしても、これは、設計変更以前に本件発明による見た目の良さに惹かれて初回の購入をし、設計変更後もリピーターが設計変更品の需要を支えていること及びコロナ禍による外食控え、自宅におけるプチ贅沢需要が 重なったからであると考えるのが相当である。 〔被控訴人の主張〕ア被控訴人各製品の販売数量は、●●●●●●個である(乙215)。 被控訴人各製品の販売単価は●●●円程度である(乙215)。 イ被控訴各製品の利益率につき、控訴人主張の●●%であることを認める。 ウ特許法102条2項の損害に消費税相当額を含める理由はなく、仮に加算 するとしても、被控訴人各製品は食料品であるから税率は8%である。 エ被控訴人各製品が製造されなかったとしても、次のとおり控訴人が利益を得られたとはいえなかったから、特許法102条2項は適用されない。 (ア) 被控訴人各製品は、チームMD方式(小売業者が消費者情報を収集・分析し、その情報をメーカー側に報知することで、顧客ニーズに合った新商 品を開発する方式)によりイトーヨーカ堂と共同して開発した、イトーヨーカ堂にしか販売していないイトーヨーカ堂のオリジナル商品である。そして、イトーヨーカ堂では、商品の種類に応じて、イトーヨーカ堂オリジナル商品のみを取り扱うか、メーカーの独自商品たるNB商品も取り扱うかを厳格に検討しているところ、イトーヨーカ堂で取り扱っている密封タ イプのロ では、商品の種類に応じて、イトーヨーカ堂オリジナル商品のみを取り扱うか、メーカーの独自商品たるNB商品も取り扱うかを厳格に検討しているところ、イトーヨーカ堂で取り扱っている密封タ イプのローストビーフのスライス製品は、被控訴人が納入する商品のみであり、イトーヨーカ堂に同タイプのローストビーフを納入するには、同様の方式で開発された商品であったことが前提であったといえる。 控訴人のグループ会社である、スターゼン販売株式会社は、被控訴人各製品の販売以前から直近に至るまで、イオンが開発、製造、販売の全工程 について責任を持つと表明しているPBである「トップバリュ」のローストビーフ製品を販売してきた。イトーヨーカ堂はセブン&アイ・ホールディングス(以下「セブン&アイ」という。)の子会社であり、中核企業である。イオンとセブン&アイはライバル関係として周知であり、イトーヨーカ堂が、最大の競合相手であるイオンのPBのローストビーフ製品を製造 している控訴人に対して、商品開発情報等の開示が避けられないMD方式 でイトーヨーカ堂のオリジナル商品として、同じくローストビーフ製品の製造を委託するとは考え難い。他方、イオンの信頼を得てPBのローストビーフのスライス製品の全ラインアップの製造委託を受けている控訴人が、完全競合関係に立つ製品をイトーヨーカ堂のオリジナル商品として、同時並行して開発、製造、供給することは考え難い。 (イ) イトーヨーカ堂の脱酸素材の封入の要望は、鉄系か非鉄系かの区別なく、単に消費期限の延長(従来の4日から5日への延長)の目的から、従来技術である脱酸素材の封入を要望したのみであり、非鉄系脱酸素材の封入により優れた肉色を維持しようとする本件発明の効果の発現を望んだものではなかった(乙196)。上 から5日への延長)の目的から、従来技術である脱酸素材の封入を要望したのみであり、非鉄系脱酸素材の封入により優れた肉色を維持しようとする本件発明の効果の発現を望んだものではなかった(乙196)。上記要望を受けて開発された被控訴人各製品の 導入決定報告においても、単に「脱酸素材(キーピット)入り」と記載されているのみで、鉄系脱酸素材であるか非鉄系脱酸素材であるかは明記されていなかったのであるから、イトーヨーカ堂及び被控訴人間において、本件発明の技術的事項である非鉄系脱酸素材を使用すること、ましてや本件発明の実施品とすることなど重視されていなかったといえる。 このようにイトーヨーカ堂はオリジナル商品を開発するに当たり、従来技術である非鉄系脱酸素材を封入することで足りるとしたものであり、被控訴人各製品が販売されなかったとしても、控訴人において利益を得られたものといえない。 オ推定覆滅事由としては、次の事情があった。 (ア) 損害期間において、被控訴人は、イトーヨーカ堂以外の小売業者に対して、NB商品として、ローストビーフ(加熱食肉製品も、特定加熱食肉製品も含む。)を販売していた。また、他のメーカーでは、加熱食肉製品ではあるものの、本件損害期間の全期間において4種のローストビーフが販売されており、さらに4種のローストビーフ商品が本件の損害賠償請求の期 間の途中から販売開始された。その他、販売時期が不明なものの、現時点 でも販売されているものが複数ある。消費者には特定加熱食肉製品と加熱食肉製品の区別がつくとは考えられない。 (イ) 次のとおり、被控訴人各製品の販売による利益に本件発明の寄与度は認められない。 被控訴人とイトーヨーカ堂は昭和47年から取引を開始し、昭和59年 度には、イト とは考えられない。 (イ) 次のとおり、被控訴人各製品の販売による利益に本件発明の寄与度は認められない。 被控訴人とイトーヨーカ堂は昭和47年から取引を開始し、昭和59年 度には、イトーヨーカ堂グループとの取引額は約●●%を占め、他の主要販売先の取引額を大きく上回り、イトーヨーカ堂が最大の販売先であることは現在に至るまで変わっていない。イトーヨーカ堂は、平成2年頃からチームMD方式で商品の開発、改良を進めてきたが、ローストビーフについては、一貫して被控訴人をパートナーとして選び続けてきた。 被控訴人各製品は、真空調理した後に真空袋を開封して牛塊肉を招請することで焼成香が残るようにするなど、様々な工夫を凝らしている。 被控訴人各製品は、チームMD方式で開発され、何度もイトーヨーカ堂の要請に応じてリニューアルを重ねてきた。被控訴人は、本訴提起後、直ちにイトーヨーカ堂に事情を伝えたが、イトーヨーカ堂は、被控訴人各製 品の購入を中止することも、技術変更を要請することも一切せずに被控訴人各製品の購入を続けた。被控訴人は、令和2年2月12日出荷分から、脱酸素剤の入っていないローストビーフ製品に切り替えたが、イトーヨーカ堂は従前と変わらず購入している。よって、被控訴人各製品が本件発明の実施品であることは、イトーヨーカ堂の購入動機に全く影響しておらず、 イトーヨーカ堂が被控訴人各製品を購入したのは、それが被控訴人の製造する製品であるからに他ならなない。 (ウ) 次のとおり、被控訴人各製品の販売による利益に本件発明の効果は寄与していない。 メトミオグロビンが40%を超えると、褐色を呈し、また、消費者の需 要度が著しく低下するとされているところ、控訴人による被控訴人各製品 の測定結果(甲1 果は寄与していない。 メトミオグロビンが40%を超えると、褐色を呈し、また、消費者の需 要度が著しく低下するとされているところ、控訴人による被控訴人各製品 の測定結果(甲120)によれば、いずれのサンプルも3分の1または3分の2の割合でメトミオグロビンが40%を超える部位を含んでおり、被控訴人各製品において、「褐変させること無く長期に亘って優れた肉食を維持するように保存できる」という本件発明の効果の発現は極めて限定的である。 また、令和2年2月11日に本件特許を利用しない商品に設計変更を行ったところ、設計変更をした後の各月ごとの売上は、設計変更以前よりもほとんどの月において上回っており本件発明が消費者の購入意欲に一切寄与していないことは明らかである。 カ推定覆滅事由については、上記オに加えて、以下の事情もある。 (ア) 競合品の販売イトーヨーカ堂が、被控訴人各製品を販売している期間中、他の密封タイプのローストビーフのスライス製品を販売しなかったのは、そのオリジナル商品である被控訴人各製品を販売しており、密封タイプのローストビーフのスライス製品についてはオリジナル商品しか販売しない方針を採 っていたからと理解される。かかる理解は、被控訴人各製品から非鉄系脱酸素材を除いた本件発明の不実施品に切り替えた後も、イトーヨーカ堂はそれ以外の密封タイプのローストビーフのスライス製品を販売していないことからも支持される。 したがって、被控訴人各製品を販売している期間中、イトーヨーカ堂が 他の密封タイプのローストビーフのスライス製品を販売していなかったことは、当該他の密封タイプのローストビーフのスライス製品が被控訴人各製品の競合品に当たることを否定する根拠になり得ない。 他の密封タイプのローストビーフのスライス製品を販売していなかったことは、当該他の密封タイプのローストビーフのスライス製品が被控訴人各製品の競合品に当たることを否定する根拠になり得ない。 (イ) 寄与度イトーヨーカ堂にとって、本件発明の実施品であることが被控訴人各製 品を購入する動機付けになっているのであれば、イトーヨーカ堂は控訴人 から本件発明の実施品を購入すれば済むことである。すなわち、控訴人は、被控訴人各製品を販売しているイトーヨーカ堂に対しては特許権侵害を主張しておらず、本件訴訟が提起された後も、イトーヨーカ堂との間で密封タイプのローストビーフのスライス製品以外の製品の取引を継続していたのであるから、仮に、本件発明の実施品を望むのであれば、イトーヨ ーカ堂としては、控訴人にその旨打診することはできたといえる。 しかし、イトーヨーカ堂は控訴人に本件発明の実施品の提供を求めなかった。そもそも、密封タイプのローストビーフのスライスのオリジナル商品をその競合品に当たるイオンのPBを製造している控訴人に委託することは考えられなかったのであるが、非鉄系脱酸素材を入れることにそれ ほど強いこだわりがなかったからともいえる。 (ウ) 被控訴人各製品の販売による利益への寄与本件発明の効果は、「褐変させること無く長期に亘って優れた肉色を維持するように保存できる」ことと説明されている。仮に、別件訴訟被控訴人各製品の売上に本件発明の効果が寄与していたとすれば、上記効果によ り、イトーヨーカ堂での別件訴訟被控訴人各製品の売上が増加し、これに伴い、被控訴人のイトーヨーカ堂への売上も増加することになる。そうであれば、逆に設計変更後、イトーヨーカ堂での設計変更品の売上が減少することが予 カ堂での別件訴訟被控訴人各製品の売上が増加し、これに伴い、被控訴人のイトーヨーカ堂への売上も増加することになる。そうであれば、逆に設計変更後、イトーヨーカ堂での設計変更品の売上が減少することが予測され、これに連動して被控訴人のイトーヨーカ堂への売上も減少するはずである。 しかし、被控訴人各製品のイトーヨーカ堂への出荷最終日の翌日 (令和2年2月11日)以前の30日間における被控訴人各製品の販売個数と、設計変更後の製品の出荷開始日の翌日(令和2年2月12日)以後の30日間における各設計変更品の販売個数とを比較したところ、別件訴訟の被控訴人製品1及び2のいずれも、設計変更後の30日間の販売個数の 合計の方が、設計変更前の30日間のそれよりもわずかに高いという結果 が得られ(乙161)、それ以降も、各月ごとの売上は、設計変更以前よりほとんどの月において上回っている(乙165)。 上記のとおり、被控訴人のイトーヨーカ堂に対する売上は、イトーヨーカ堂の各店舗での被控訴人の製品の売上に直結していることから、上記結果は、本件発明の実施品であると控訴人が主張する被控訴人各製品と非実 施品である設計変更品との間で、消費者に対する訴求力の程度はほとんど変わらなかったことを示している。つまり、本件発明が実現する「褐変させること無く長期に亘って優れた肉色を維持するように保存できる」という効果は、消費者の購入意欲にほとんど影響していないといえる。 ⑾ 消滅時効(争点5)について 〔被控訴人の主張〕ア本件発明に基づく損害賠償請求は、令和4年7月15日付け訴えの追加的変更申立書で追加されたところ、同日の時点において、平成30年12月から令和元年7月14日までの間の被控訴人各製品の販売数量に関しては、控訴人が「損害 賠償請求は、令和4年7月15日付け訴えの追加的変更申立書で追加されたところ、同日の時点において、平成30年12月から令和元年7月14日までの間の被控訴人各製品の販売数量に関しては、控訴人が「損害及び加害者を知った時」から既に3年が経過してい る以上、上記販売数量に係る控訴人の損害賠償請求権は消滅時効が完成しているものであり、被控訴人は、本訴において、上記消滅時効を援用する。 控訴人は、平成30年(2018年)12月24日に被控訴人各製品を購入しているところ(甲A2)、遅くとも同日には被控訴人による被控訴人各製品の販売行為を知るに至ったといえ、同日以前の販売に係る損害賠償 請求権については同日が起算点となり、同日以降の販売に係る損害賠償請求権については販売時が起算点となる。 不法行為に基づく損害賠償請求権の時効期間は3年間であるところ(民法724条)、令和元年7月14日までの被控訴人各製品の販売数量に関しては、令和4年7月14日の経過をもって消滅時効が完成するに至った。 平成30年12月から令和元年7月14日までの被控訴人各製品の販売 数量に関しては、上記のとおり消滅時効が完成しているところ、被控訴人は、消滅時効を援用する。 イ平成30年12月から令和元年7月14日までの被控訴人各製品の販売数量について被控訴人各製品の売上高集計表(乙215)によれば、平成30年12 月から令和元年7月14日までの販売数量の小計は●●●●●●パック、令和元年5月の販売数量が●●●●パック、同年6月の販売数量が●●●●パック、同年7月の販売数量は●パックであったところ、平成30年12月から令和元年7月14日までの被控訴人各製品の販売数量は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●パック、同年7月の販売数量は●パックであったところ、平成30年12月から令和元年7月14日までの被控訴人各製品の販売数量は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●パックと なる。 したがって、本件発明に基づく控訴人の損害額の計算において前提とされるべき被控訴人各製品の販売数量については、合計販売数量の●●●●●●パックから、消滅時効が完成している●●●●●●パック分を除いた●●●●●●パックである。 〔控訴人の主張〕ア平成30年12月24日当時、本件特許権について無効審判請求はされていなかったから、当然請求項1について無効とする審決も出ておらず、控訴人は、訴訟提起の際も一貫して、請求項1に基づき、被控訴人各製品の特許権侵害を主張してきた。 請求項1に基づく主張と請求項5に基づく主張の対象製品が同じであり、特許法102条2項に基づき被控訴人の限界利益が損害賠償金額として認められる以上、請求項1の特許権侵害に基づく損害賠償請求が認められれば、請求項5に基づく損害賠償請求は、損害自体が存在しなくなる。 このように、請求項1が有効に存在し、控訴人が請求項1に基づき損害 賠償請求をしている以上、請求項5については、損害自体を観念できなく なるから、請求項1が有効に存在している通告書送付時点で、控訴人は請求項5に基づく「損害及び加害者を知った」といえず、通告書送付時である平成30年12月24日は、「損害及び加害者を知った時」といえないことは明らかである。 イ被控訴人各製品購入時には請求項5を検討できない。 「損害及び加害者を知った時」と認められるためには、物の製造販売が特許権に係る特許発明の技術的範囲に属することを特許権者が認識したことが必 被控訴人各製品購入時には請求項5を検討できない。 「損害及び加害者を知った時」と認められるためには、物の製造販売が特許権に係る特許発明の技術的範囲に属することを特許権者が認識したことが必要である。 しかし、平成30年12月24日の時点では、シンコウフーズは、本件特許権の請求項5の「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をする ことなく」という構成要件の充足性を検討していない。 そもそも、請求項5の「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく」という構成要件は、無効審判における被控訴人による無効主張により、審決予告が、請求項1はガス置換をする構成をも含むから無効であるという判断をしたことに対応したものであり、審決予告がされる まで、このような構成要件について検討することは、およそ不可能な状況であった。 したがって、平成30年12月24日の時点では、被控訴人各製品の製造方法が本件特許権の請求項5に係る発明の技術的範囲に属することを認識しておらず、被控訴人各製品を購入した平成30年12月24日は、 控訴人が「損害及び加害者を知った時」ではない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、控訴人の請求は、主文掲記の限度で理由があり、その範囲で認容されるべきであるが、その余は理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は以下のとおりである。 本件発明について(原判決第3の1(原判決23頁25行目ないし同35 頁23行目))、乙12公報の記載(原判決第3の2⑴(原判決36頁1行目ないし同47頁22行目)及び技術常識等のうち原判決第3の2⑵ア・ウ・エ(原判決47頁23行目ないし同48頁17行目及び同49頁4行目ないし同頁24行目)については、当審における当事者の主張も踏まえ、 いし同47頁22行目)及び技術常識等のうち原判決第3の2⑵ア・ウ・エ(原判決47頁23行目ないし同48頁17行目及び同49頁4行目ないし同頁24行目)については、当審における当事者の主張も踏まえ、次のとおり補正するほかは、原判決の記載を引用する。 ⑴ 原判決36頁1行目の冒頭から末尾までを「⑴ 乙12(特開平10-327807号公報(以下「乙12公報」という。))の記載」と改める。 ⑵ 同49頁4行目の「ウ」を「イ」と、同頁16行目の「エ」を「ウ」とそれぞれ改める。 2 被控訴人方法が本件発明の技術的範囲に属するか否か(争点1)について の判断は、以下のとおりである。 ⑴ 争点1-1(被控訴人方法は、構成要件B(還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程)を充足するか)についてア本件発明の構成要件Bの「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」につき、 本件明細書には、補正の上で引用した原判決第3の1⑴のとおり、「酸素化とは、酸素含有気体中にスライスされた特定加熱食肉製品を置くことにより、還元型ミオグロビンが酸素と結合(酸素化)してオキシミオグロビンとなることを意味する。」(段落【0022】)と酸素化につき定義した上で、「これは、特定加熱食肉製品における断面がスライス直 後の紫赤色から鮮赤色に変化する現象として捉えることもできる。」(段落【0022】)としている。 そして、酸素化の処理の時間等については、「スライス加工の後、特定加熱食肉製品を酸素化は、メトミオグロビンの割合が増加する前に終了することが好ましい。例えば、スライス加工の後、空気に特定加熱食肉 製品をさらすことで酸素化処理を行う場合、例えば30~90分、好ま 品を酸素化は、メトミオグロビンの割合が増加する前に終了することが好ましい。例えば、スライス加工の後、空気に特定加熱食肉 製品をさらすことで酸素化処理を行う場合、例えば30~90分、好ま しくは50~70分、より好ましくは60分の処理時間とすることができる。上記範囲の処理時間とすることで、メトミオグロビンの割合が増加することなく、オキシミオグロビンが増加して強い赤みを呈することができる。」(段落【0023】)とし、「例えば、酸素化処理は、特定加熱食肉製品の断面におけるスライス直後の紫赤色が鮮赤色に変化する 状態を目視により確認し、十分に赤色を呈した段階で処理を終了しても良い。」(段落【0024】)と記載されている。 そうすると、本件明細書によれば、酸素化の処理時間は、紫赤色から鮮赤色に変化することが確認されるのに十分であるが、褐変に至らない時間であり、30ないし90分、好ましくは50ないし70分、より好 ましくは60分とされているものと認められる。 そして、補正の上で引用した原判決第2の2(6)のとおり、本件特許の出願日前において、食肉の酸素化(ブルーミング)は、食肉の新鮮な切り口や肉塊の中の暗赤色(紫赤色)の還元型ミオグロビン(RMb)が、空気中の酸素と容易に結びついて鮮赤色のオキシミオグロビン(O2M b)になる現象であること、ローストビーフのスライス面でも、同様の色調の変化がみられることはいずれも技術常識であり、暗赤色(紫赤色)の還元型ミオグロビン(RMb)が酸素と結びついて鮮赤色のオキシミオグロビン(O2Mb)になるまでの時間は、乙15(特開2006-64630号公報、平成18年3月9日公開)の段落【0002】には 「15~30分ほどで鮮紅色のオキシミオグロビンになる」と、甲1 グロビン(O2Mb)になるまでの時間は、乙15(特開2006-64630号公報、平成18年3月9日公開)の段落【0002】には 「15~30分ほどで鮮紅色のオキシミオグロビンになる」と、甲106(AMSA、 MeatColorMeasurementGuidelines(肉色の測定ガイドライン)2012年改訂版抜粋、2012年(平成24年)12月)には、「新鮮な肉の表面は、酸素がないため紫色(DMb)であるが、空気中に数分置いた後、肉の表面は真っ赤になる(OMb、図2.2 の反応1)。 肉の断面から、赤い表面層の厚さは1mm 未満であり、より深い筋肉組 織は紫色であることがわかる。」とあり、「数分」との記載がされている。 これらによれば、「酸素含有気体中にスライスされた特定加熱食肉製品を置くことにより、還元型ミオグロビンが酸素と結合(酸素化)してオキシミオグロビンとなる」とする本件明細書にいう酸素化の工程に必要な処理時間は、上記技術常識等も考慮すると、本件明細書に記載の3 0ないし90分、好ましくは50ないし70分、より好ましくは60分との時間に限定されるとまでは認められないものの、少なくとも数分であるものと認められる。 したがって、ローストビーフのスライスから容器の密封までにどのくらいの時間、空気に曝すかによって酸素化の程度は異なるもの、ごく僅 かな時間(例えば30秒以内)空気中の酸素と触れる場合についてまで、本件発明の「酸素化する工程」に該当するとはいえないというべきである。 イ以上を前提に、被控訴人方法が構成要件Bを充足するか検討すると、被控訴人方法では、空気下で、①脱酸素剤を所定の位置に配置したトレ イを重量計測器の台に載せ、②ローストビーフをスライスし、③スライ を前提に、被控訴人方法が構成要件Bを充足するか検討すると、被控訴人方法では、空気下で、①脱酸素剤を所定の位置に配置したトレ イを重量計測器の台に載せ、②ローストビーフをスライスし、③スライスしたローストビーフを上記トレイに規定量盛り付け、④上記トレイの所定の位置に添付のソースを配置し、⑤ローストビーフを盛り付けたトレイを自動包装機に投入し、⑥自動包装機によりフィルムで密閉するという工程を経るものであり、これらの工程は連続的に行われ、②から⑥ で密封包装が完了するまで2分30秒程度であることが認められる(乙39、98)。 ②から⑥の工程は、酸素気体を含む空気下で行われており、スライスされた特定加熱食肉製品であるローストビーフが酸素含有気体中に暴露されていることが認められる。酸素含有気体への暴露の時間は約2分 30秒であるが、既に述べたところに照らし、このことによって直ちに 本件発明の酸素化の工程とならなくなるものではないと解される。そして、後記⑶及び⑷によれば、被控訴人方法の上記工程は、構成要件Cの工程とあいまって、構成要件D所定の酸素濃度が検出限界以下の条件下で本件ミオグロビン割合を達成し、所望の色調となる工程といえ、被控訴人方法は構成要件Bを充足する。 ウ被控訴人は、前記第2の3⑴のとおり、被控訴人方法は構成要件Bを充足しない旨を主張する。 このうち「酸素化する工程」の意味については、前記アのとおりである。 その上で被控訴人方法が構成要件Bを充足するかを検討すると、前記 イのとおり、空気下で行われる②から⑥の工程において、密封包装が完了するまで2分30秒程度であることが認められるところ(乙98の1の1・2、98の2の1・2)、控訴人による実験の結果(甲189、190)によれば 気下で行われる②から⑥の工程において、密封包装が完了するまで2分30秒程度であることが認められるところ(乙98の1の1・2、98の2の1・2)、控訴人による実験の結果(甲189、190)によれば、スライス後、2分30秒が経過した後のローストビーフのスライス面は、オキシミオグロビン割合が増加し、目視でも鮮赤色で あることが認められる。 そうすると、前記「2分30秒程度」空気下に曝す工程は、酸素化の工程に必要な処理時間である「数分」に該当し、「酸素化する工程」の条件を満たすものと認められるから、構成要件Bを充足するということができる。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑵ 争点1-2(被控訴人方法は、構成要件C(当該酸素化する工程の後、炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程)を充足するか)について ア本件明細書の記載によれば、構成要件C所定の、特定加熱食肉製品を酸 素化した後、包材で密封する工程(以下「密封工程」という。)には、密封された気体等の脱酸素化までが含まれることが前提とされており(段落【0030】、【0032】)、この脱酸素化は、包材内の酸素濃度が検出限界以下になるまで行うこととされている(段落【0038】)。このことは、構成要件Dで、ミオグロビンの割合の測定が、酸素濃度が検出限界以 下の条件下で行われることからも裏付けられる。よって、本件発明で規定される方法では、包材内の酸素濃度が検出限界以下になることが前提となっているといえる。 そして、本件発明が、特定加熱食肉製品が短時間で褐変してしまうことによって損なわれる「商品価値」を問題にし(段落【00 法では、包材内の酸素濃度が検出限界以下になることが前提となっているといえる。 そして、本件発明が、特定加熱食肉製品が短時間で褐変してしまうことによって損なわれる「商品価値」を問題にし(段落【0002】、【00 42】)、特定加熱食肉製品の色調を問題にしていることからすると、本件発明は、特定加熱食肉製品の一般消費者への訴求力を問題にしていると解される。本件発明が、酸素濃度検出限界以下で、本件ミオグロビン割合で保存されている状態を優れた色調としているのであるから、本件発明で規定される方法は、包材内の酸素濃度が遅くとも消費者によって開 封されるまでの間に酸素濃度検出限界以下に達し、消費者に本件発明で規定される優れた色調を訴求する機会があることが前提になっていると解される。よって、本件発明の実施においては、遅くとも消費者が商品を開封するまでに酸素濃度が検出限界以下になっていることを要するといえる。 この点につき、被控訴人は、被控訴人方法の実施が認められるのは、被控訴人各製品に対して被控訴人の支配が及ぶ被控訴人各製品が出荷されるまでであり、最長でも、被控訴人各製品が販売先に納品される時点までであって、この時点までに酸素濃度が検出限界以下に達する必要があると主張する。しかし、本件発明の方法は、特定加熱食肉製品が脱酸素 剤と共に包材で密封された後は、当該製品につき何ら操作が加えられな いことが前提になっている(本件明細書には、脱酸素後に脱酸素剤を撤去する方法も記載されているが、これは飽くまで任意の操作として規定されている。)。そうすると、本件発明の実施に係る作為は密封により完了するのであって、酸素濃度が検出限界になることはその結果にすぎないといえるものであり、被控訴人が主張する時点までに結果が生ずるこ れている。)。そうすると、本件発明の実施に係る作為は密封により完了するのであって、酸素濃度が検出限界になることはその結果にすぎないといえるものであり、被控訴人が主張する時点までに結果が生ずるこ とを要件とすべき理由はないと解されるから、被控訴人の主張は採用できない。 「検出限界以下」の意義について検討すると、特許請求の範囲にも本件明細書にも、それについての具体的な記載はない。しかし、本件発明の実施例において用いられている酸素濃度の測定機器の分解能が0.1% であり、また、脱酸素剤により実施される脱酸素の完了が酸素濃度0. 1%を基準としていることがうかがわれること(甲28ないし32)に照らすと、当業者は、酸素濃度が0.1%以下となることをもって検出限界以下と理解すると認められる。 イ構成要件Cでは、使用する包材が「ガスバリア性」を有するとされてい るところ、特許請求の範囲には、包材の性質についてこれ以上の記載はない。本件明細書では、酸素に対するバリア性能を問題にしていて、特に包材の種類については限定されないと記載されており、ガスバリア性を有する包材に関する素材の例示はあるものの、酸素透過係数等の具体的な数値等、ガスバリア性の限界等を規定する記載はない(段落【003 1】)。 本件発明の目的は褐変を防止して優れた肉色を維持することにあるところ(段落【0008】)、褐変の原因が特定加熱食肉製品が酸素にさらされることにあり(段落【0005】)、また、いったん酸素濃度が検出限界以下になった後に、空気中の酸素が流入すると各種ミオグロビンの割合 が変動し、そのことを望ましくないこととしていること(段落【004 1】)からすれば、本件発明の包材がガスバリア性を有することの技術的意義は、ガスバリア性を有 種ミオグロビンの割合 が変動し、そのことを望ましくないこととしていること(段落【004 1】)からすれば、本件発明の包材がガスバリア性を有することの技術的意義は、ガスバリア性を有することによって、脱酸素剤を封入することで酸素を検出限界以下にすることができ、かつ、検出限界以下に達した後はその状態を維持することにあると解するべきである。そうすると、本件発明において包材に要求されるガスバリア性は、既存の脱酸素剤を 用いて包材内の酸素濃度を検出限界以下にすることができ、かつ、それを維持できることをいうと解される。 ウ以上を前提に被控訴人方法が構成要件Cを充足するか検討する。 被控訴人方法では脱酸素剤として、鉄系の脱酸素剤及び非鉄系の脱酸素剤が併用されており(甲14、15、弁論の全趣旨)、使用する脱酸素 剤に、非鉄系脱酸素剤を含む。前記認定のとおり、被控訴人方法では、特定加熱食肉製品のローストビーフはスライス後、空気にさらされた後に包材に密封されている。そして、乙36によれば、被控訴人各製品は、十分な時間経過後には、酸素濃度が0.1%以下になっており、使用された包材はいずれもガスバリア性のあるものであったことが認められる。 被控訴人の実験結果によれば、被控訴人方法により生産された別件被控訴人各製品は概ね包装後13時間ないし26時間経過後に酸素濃度が0.1%に達したことが認められる(乙36)。他方で、別件被控訴人各製品は、包装後、約6.5時間から13.5時間経過後の、概ね21時半から23時に、販売先であるイトーヨーカ堂の物流センターに納品され ていたことが認められる(乙32~34)。これらによれば、イトーヨーカ堂の物流センターから各イトーヨーカ堂に配送されて店頭で消費者の目に触れる販売開始までの時 ーカ堂の物流センターに納品され ていたことが認められる(乙32~34)。これらによれば、イトーヨーカ堂の物流センターから各イトーヨーカ堂に配送されて店頭で消費者の目に触れる販売開始までの時間を考慮すると、別件被控訴人各製品については、販売開始ないしその数時間後までには概ね酸素濃度が0.1%に達していたことが推認できる。もっとも、消費期限等を考慮すると、販 売された商品のほとんどは酸素濃度が0.1%に達した後に販売され、 消費者が開封したことが推認できる。 これらによれば、被控訴人方法により生産された被控訴人各製品は、そのほとんどが、酸素化の工程の後に、特定加熱食肉製品たるローストビーフが非鉄系の脱酸素剤とともにガスバリア性のある包材で密封され、酸素が検出限界以下である0.1%以下に達していたといえ、構成要件 Cを充足することが認められる。 エ被控訴人は、前記第2の3⑵アのとおり、被控訴人方法は構成要件Cを充足しない旨を主張する。 本件特許の請求項3及び4の記載は、それぞれ以下のとおりである。 「【請求項3】上記包材内の酸素濃度が検出限界以下となった後、当該 包材内を真空引きする工程を更に含むことを特徴とする請求項1記載の特定加熱食肉製品の製造方法。 【請求項4】上記包材内から上記非鉄系脱酸素材を取り除いた後に真空引きすることを特徴とする請求項3記載の特定加熱食肉製品の製造方法。」 上記によれば、請求項3及び4に「真空引きする工程を更に含む」ないし「取り除いた後に真空引きする」とある部分については、脱酸素の後においても、その実施者の支配が及んでいることを前提としているものの、請求項3及び4は、上記のとおり請求項1の従属項であり、請求項3及び4に係る「真空引きする工程を更に含む」こと等 ては、脱酸素の後においても、その実施者の支配が及んでいることを前提としているものの、請求項3及び4は、上記のとおり請求項1の従属項であり、請求項3及び4に係る「真空引きする工程を更に含む」こと等が求められること によるものにすぎず、これにより本件発明の「密封する工程」を同様に解さなければならないとする理由はない。 さらに、補正の上で引用した原判決第3の1⑴のとおり、本件明細書の段落【0038】には、「本工程は、包材内に密封された気体に含まれる酸素及び特定加熱食肉製品のオキシミオグロビンに結合した酸素を吸 収するのに十分な時間で実施すればよい。より具体的に、本工程では、包 材内の酸素濃度が検出限界以下になるまで行えばよい。本工程が終了したら、包材内の非鉄系脱酸素材、或いは非鉄系脱酸素材及び鉄系脱酸素材を取り除いても良いし、そのまま包材内に入れておいても良い。・・・」とされ、非鉄系脱酸素材はそのまま包材に入れておいても構わないと記載されていることからしても、被控訴人の主張するような、「脱酸素後に おいても実施者の支配が及んでいること」を要求しているとはいえないというべきである。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 オ被控訴人は、前記第2の3⑵イのとおり、被控訴人方法は構成要件Cを充足しない旨を主張する。 構成要件Cは、「非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程」とするものであるから、そこにおいて酸素が「検出限界以下」であることは要求されていない。補正の上で引用した原判決第3の1⑴のとおり、本件明細書の段落【0031】には、「ガスバリア性を有する包材としては、特に限定されず、従来、食品特に食肉製品に使用され ているもの挙げることができる。」と記載 した原判決第3の1⑴のとおり、本件明細書の段落【0031】には、「ガスバリア性を有する包材としては、特に限定されず、従来、食品特に食肉製品に使用され ているもの挙げることができる。」と記載されており、その「ガスバリア性」の程度までは特定されておらず、「脱酸素材」を用いる目的が酸素を取り除くことである以上、「包材」が酸素を通さない「ガスバリア性」を有するものであることは当然であり、そこにおいて「検出限界以下」であることまでを要求するものではない。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑶ 争点1-3(被控訴人方法は、構成要件D(ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34% 以上となる割合となっていること)を充足するか)について ア構成要件Dは、包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、特定加熱食肉製品のミオグロビンの割合が、本件ミオグロビン割合になっているというものであるところ、特許請求の範囲には、本件ミオグロビン割合となる時点の記載はなく、本件明細書にもこれを直接明示する記載はない。もっとも、本件発明は、褐変を防止して優れた肉色を維持した特 定加熱食肉製品の保存を目的とする方法であり、本件明細書においては、本件ミオグロビン割合は、保存状態における望ましい色調として設定されていることが記載されており(段落【0044】参照)、また、酸素濃度が検出限界以下に達した後には、その後、その色調が継続することが記載されている(段落【0042】)。また、本件発明は、飽くまで優れ た色調を従来よりも長く維持す 044】参照)、また、酸素濃度が検出限界以下に達した後には、その後、その色調が継続することが記載されている(段落【0042】)。また、本件発明は、飽くまで優れ た色調を従来よりも長く維持することに意義がある(優れた色調が永続しないことを前提にしていることは、本件明細書も前提としている(段落【0039】。)。色調の変化がミオグロビンの割合の変化によって生じることからすると、色調が変化しないとは、ミオグロビン割合が変化しないことを意味するといえる。一般的に肉の色調を変化させる要因と して酸素の影響が大きいものとされ(段落【0005】)、本件明細書においても、酸素濃度が検出限界以下になった後に酸素が流入するとミオグロビン割合が変化する危険性があることが記載され(段落【0041】参照)、本件発明では、酸素濃度が検出限界以下の状態で保存されることが当然の前提になっていることを併せ考えると、本件発明は、いった ん酸素濃度が検出限界以下になり、それが保たれていれば、ミオグロビン割合の変化が従来の保存方法に比べると緩やかであり、そのため、優れた色調が維持される発明であると理解することができる。そうすると、本件発明は、酸素濃度が検出限界以下の時点でひとたび本件ミオグロビン割合になっていれば、ミオグロビン割合の変動をもたらす酸素が検出 限界以下になった時点から、ミオグロビンの割合は測定時の値とほとん ど変わらず、優れた色調が維持されていることを前提とする方法の発明であるといえる。これらによれば、本件発明においては、酸素濃度が検出限界以下に達している期間において、本件ミオグロビン割合が満たされる時点があれば足りるといえる。 イ対象物のミオグロビンの割合について、特許請求の範囲には、割合算 定の具体的な方法につ 検出限界以下に達している期間において、本件ミオグロビン割合が満たされる時点があれば足りるといえる。 イ対象物のミオグロビンの割合について、特許請求の範囲には、割合算 定の具体的な方法についての記載はない。本件明細書には、反射スペクトル法による算出方法が言及されているが(段落【0025】)、その算定の前提となる対象物の吸光度の測定に用いる分光光度計については、特に限定されるものではないとされていて(段落【0027】)、他に測定方法について何ら直接的な記載はない。 本件明細書では、色調の測定についても言及しており、これについて分光色差計を用いるものとしており、その測定方法について、「分光色差計で測定する場合、特定加熱食肉製品を包材に封入した状態で測定しても良い」との記載があり(段落【0028】)、実施例でも包材越しで測定した旨の記載がある(段落【0054】)。他方で、吸光度の測定に ついては、包装越しであるか否かについて言及がない(段落【0027】、【0051】ないし【0053】)。もっとも、構成要件Dは、酸素濃度が検出限界以下でのミオグロビン割合を問題にしている。包材を開封して対象ローストビーフを空気に触れさせてしまうと、短時間で酸素化されてしまい、包材に密封されて酸素濃度が検出限界以下になった状態で のミオグロビン割合を測定したとはいえなくなってしまう。酸素濃度が検出限界以下の状態を維持したまま包材を開封して吸光度を測定することは困難であり現実的ではないこと(甲119参照)、包材を開封すればミオグロビン割合が変化するところ、本件明細書にはミオグロビン割合の測定との関係で包材の開封についての記載が全くないことも考 慮すると、本件明細書の記載や技術常識から、当業者は、ミオグロビン 割 合が変化するところ、本件明細書にはミオグロビン割合の測定との関係で包材の開封についての記載が全くないことも考 慮すると、本件明細書の記載や技術常識から、当業者は、ミオグロビン 割合を算定する前提となる吸光度の測定は、包材越しに行うものと理解するといえる。なお、本件発明は、ローストビーフを店頭に並べた時の一般消費者への訴求力を問題にしているところ、一般に流通する包材の種類によって同一の測定条件下で吸光度に顕著な差があることを認めるに足りる証拠はない。 ウ控訴人は、本件発明の分光光度計を用いて吸光度を測定する方法は正反射光を除去して測定するSCE方式であると主張する。本件特許の出願日当時、分光光度計を用いて吸光度を測定する方法としては、正反射光を除去して吸光度を測定するSCE方式のほかに、測定に当たり対象物からの正反射光込みで吸光度を測定するSCI方式が知られていた (甲59、弁論の全趣旨)。 構成要件Dは、吸光度そのものではなく、ミオグロビン割合によって規定されており、吸光度の測定はその割合を間接的に算定するための手段なのであるから、吸光度の測定方法は、測定対象物のミオグロビンの割合を算定するという目的に合致するものであることが求められると いえる。吸光度に基づくミオグロビン割合の算定は、測定対象物に係る特定の四つの波長の吸光度の組み合わせがミオグロビンの特定の割合に対応することを前提にしているものであるから、測定の対象は、飽くまで対象物の吸光度である。そうすると、当業者は、包材の影響を受けにくい方式による測定方式を用いて本件発明に係る吸光度を測定する ことができると理解するといえる。そして、SCE方式とSCI方式による測定値の差は正反射光を測定値に加味するか否かに基づくものである 方式による測定方式を用いて本件発明に係る吸光度を測定する ことができると理解するといえる。そして、SCE方式とSCI方式による測定値の差は正反射光を測定値に加味するか否かに基づくものであるところ、一般に、光沢の強い物質では正反射光が強くなることが知られている(甲55)。包材で覆われた食肉等を目視すると包材が光沢を帯びるものも多いことからすると、当業者は、SCI方式は包材の光 沢により強い影響を受け、測定対象物のミオグロビンの割合に対応する 吸光度と異なる吸光度を得てしまうことになってしまうので、SCI方式を用いることは適当ではないと認識するといえる。なお、SCE方式の方が包材の影響を受けにくいことは、SCE方式とSCI方式でローストビーフの肉色に近い色票を用いて吸光度を測定した場合、包材を介さない場合にはその値が一致したところ、包材越しにSCE方式でこれ を測定するとその吸光度は上記値に近い値を示すのに対し、SCI方式では大きく外れてしまうことが認められる(甲102、103)ことからも裏付けられる。これらの本件発明の意義や技術常識等を勘案すれば、当業者は、本件発明において包材越しにローストビーフのミオグロビン割合を算出する前提とするためにその吸光度を測定するに当たって、S CE方式を用いると認識できたといえる。 エ以上を前提に被控訴人方法が構成要件Dを充足するか検討すると、証拠(甲A3、A4、9、64、65)及び弁論の全趣旨によれば、消費期限日に購入した別件被控訴人各製品のいずれについても、包材内の酸素濃度が0.1%以下の状態で、包材越しにSCE方式で吸光度を測定 し、ミオグロビン割合を算出したところ、その値は本件ミオグロビン割合であったことが認められる。そして、本件明細書の実施例によれば 濃度が0.1%以下の状態で、包材越しにSCE方式で吸光度を測定 し、ミオグロビン割合を算出したところ、その値は本件ミオグロビン割合であったことが認められる。そして、本件明細書の実施例によれば、酸素濃度が0.1%以下まで低下した後は、本件ミオグロビン割合は一般的なローストビーフの消費期限の期間程度では大きな変動をしないことが認められるから、被控訴人各製品のうち、酸素濃度が0.1%に 達した以降は、消費期限に至るまで、開封されるまでの間、本件ミオグロビン割合が維持されるものであると推認することができる。 したがって、被控訴人方法については、構成要件Dを充足するものと認められる。 オ上記によれば、被控訴人各製品については、いずれも本件発明の技術 的範囲に属する被控訴人方法により製造されたものであることが認め られる。 カ被控訴人は、前記第2の3⑶アのとおり、被控訴人方法は構成要件Dを充足しない旨を主張する。 補正の上で引用した原判決第3の1⑴の本件明細書の段落【0044】の記載にあるとおり、同段落は「急激な脱酸素処理」との条件の下で起 こる現象を説明したものであって、単に「オキシミオグロビンが12%未満となる」ことによって生じる現象を説明したものとはいえない。そうすると、被控訴人の、鉄系比率が42.9%である例においては、「D+3」の時点でローストビーフは褐変することとなる旨の主張は前提を欠くものというべきである。 さらに、別紙のとおりの本件明細書の実施例1の【表1】及び段落【0057】の記載によれば、本件ミオグロビン割合を満たすために、「非鉄系脱酸素材」を使用することが必要であること、鉄系脱酸素材の割合を低くすればするほど、所定のミオグロビン割合の範囲内に収まりやすくなってい の記載によれば、本件ミオグロビン割合を満たすために、「非鉄系脱酸素材」を使用することが必要であること、鉄系脱酸素材の割合を低くすればするほど、所定のミオグロビン割合の範囲内に収まりやすくなっていること、及び、別紙のとおりの段落【0058】の記載から、 「非鉄系脱酸素材のみを使用する場合」又は「鉄系脱酸素材の割合を37.5%とした場合」が好ましい態様であることが理解できるものの、本件明細書の記載からは、鉄系比率37.5%以下としなければ、本件発明の技術課題を解決できないものとは解されない。 また、前記アのとおり、優れた色調が永続しないことは、本件明細書 も前提としていることであるから、「包材内の酸素濃度が検出限界以下」の「全ての期間で満足する必要がある」と当業者が理解することはない。 そうすると、本件明細書の【表1】において、「非鉄系脱酸素材のみを使用する場合」又は「鉄系脱酸素材の割合を37.5%とした場合」に、「D+1」ないし「D+3」において、所定のミオグロビン割合を維持 していることをもって、本件発明の構成要件D充足性を判断するに際し、 「製品の販売以降、製品として販売されている間、包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、常に、各ミオグロビンの割合が構成要件D所定の割合になることが必要」であるものとは解されない。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 キミオグロビン割合の測定方法について 被控訴人は、前記第2の3⑶イのとおり、被控訴人方法は構成要件Dを充足しない旨を主張する。 補正の上で引用した原判決第3の1(2)及び第3の2⑵のとおり、本件発明の意義や技術常識等(甲55、102、103)を勘案すれば、包材の外からローストビーフの吸光度を測定し、ミオグロ を主張する。 補正の上で引用した原判決第3の1(2)及び第3の2⑵のとおり、本件発明の意義や技術常識等(甲55、102、103)を勘案すれば、包材の外からローストビーフの吸光度を測定し、ミオグロビン割合を算出 するにあたり、SCE方式(正反射光除去)の方が、SCI方式(正反射光込み)よりも包材の影響を受けにくいものと認められる。 そして、本件明細書において使用されている分光色差計(段落【0028】、【0054】)である日本電色工業社製の「NF999」については、甲72(タナカ・トレーディング株式会社のホームページ)に「光 学系:0°:45°」と、甲73(カラーコミュニケーションガイド、3頁)には分光測色系における「0°/45°測定」につき、「0/45は、測定対象から正反射光を取り除き、人間が眼で見るのと同じ正確さでサンプルを計測する」と記載されているとおり、SCE方式と同じ正反射光を除去した方法では測定できるが、正反射光を含むSCI方式で は測定ができない。 そうすると、本件明細書で用いられている分光式色差計からみても、SCE方式(正反射光除去)により測定されていることが認められる。 したがって、SCI方式についてもメリットが存在するから、本件発明の構成要件Dに係るミオグロビンの誘導形態の割合を算定するため 吸光度を測定する際にSCE方式とSCI方式のいずれかを用いるこ とが明らかとはいえないとの被控訴人の主張は前提を欠くというべきであるし、本件明細書の記載からみても、被控訴人の主張するような、「いずれの測定方法によるべきか明らかにされていない場合」には当たらず、SCE方式及びSCI方式の両方で所定の数値範囲を満たすべきとすることにはならないというべきである。 加えて、被控訴人は、SC れの測定方法によるべきか明らかにされていない場合」には当たらず、SCE方式及びSCI方式の両方で所定の数値範囲を満たすべきとすることにはならないというべきである。 加えて、被控訴人は、SCE方式で測定することの誤りを指摘するものでも、SCE方式で測定した結果に誤りがあることを指摘するものでもないから、本件発明の吸光度を測定するに当たりSCE方式を用いることを前提として、被控訴人各製品がSCE方式で測定したことにより所定のミオグロビン割合を満たすとする点について、その判断を左右す るものではない。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑷ 小括以上の検討によれば、被控訴人方法により製造された被控訴人各製品は本件発明の構成要件を全て充足する。 3 本件特許は、特許無効審判により無効にされるべきか(争点2)についての判断は、以下のとおりである。 ⑴ 争点2-1(無効理由1(公知発明(鎌倉山パストラミビーフ)に基づく進歩性欠如))についてア商品「鎌倉山パストラミビーフ」に示される開示事項 (ア) 被控訴人がパストラミビーフ発明が示されているとする商品「鎌倉山パストラミビーフ」が包装された状態を示す乙181の1(平成20年5月9日「商品開発室 ●●」作成に係る「要望したサンプルの導入決定報告」)には、上記商品の「商品概要」として、規格は「100g」、包装形態は「透明GP」であり、エージレスは「オキシーターY」(有 機系の脱酸素剤である。乙183)を使用し、保存温度は「10℃」、 賞味期間は「25日間」と記載されており、透明な容器に、当該商品が封入され、「鎌倉山パストラミビーフ」のラベルが貼られた写真も掲載されている。 一方、食肉製品の規格基準について 、 賞味期間は「25日間」と記載されており、透明な容器に、当該商品が封入され、「鎌倉山パストラミビーフ」のラベルが貼られた写真も掲載されている。 一方、食肉製品の規格基準については、食肉製品の成分規格の他、食肉製品の製造基準及び保存基準が定められているところ、これらの各 基準について、個別基準が、特定加熱食肉製品と加熱食肉製品についてそれぞれ定められており、「食肉製品の保存規準」として、加熱食肉製品は「10℃以下」、特定加熱食肉製品は「水分活性が0.95以上のものにあっては、4℃以下」と定められている(甲13の1、2(甲150) )。 そうすると、上記のとおりの商品の保存温度(10℃)、賞味期間(25日間)からみて(乙181の1)、上記商品は加熱食肉製品であると認められる。 そして、平成20年当時の食品衛生法第19条及び同法施行規則第21条第1号ウにおいて、加熱食肉製品である旨の表示が義務付けら れていたから、当業者は、当該商品の表示により、前記商品が加熱食肉製品であることを認識できたといえる。 (イ) 上記商品は、写真からみて、食肉であるパストラミビーフが、スライスされた状態で包装されているところ(乙181の1)、乙181の1作成当時の、スライスした食肉製品の包装等に関し、文献には以下の記 載がある。 甲117(特公昭64-4746号公報、平成元年1月26日)の記載は、以下のとおりである。 「予めスライスされたローストビーフ製品の製造及び輸送に伴う諸問題のひとつはビーフのスライス(薄片)が不可避的に酸素に曝露されて その結果消費者が要望するデリケートなローストビーフの色沢におい て消費者が製品を見るより以前にブルーミングを起し、該早期に過ぎるブルーミ イス(薄片)が不可避的に酸素に曝露されて その結果消費者が要望するデリケートなローストビーフの色沢におい て消費者が製品を見るより以前にブルーミングを起し、該早期に過ぎるブルーミングに次いで望ましからぬ褐変と乾燥とを起すことである。」(2頁4欄6-13行)「本発明の好ましい具体化において、調理済みのスライスされた円筒型製品は特別な気密真空式サツク型容器に包装される。・・・本発明の製 造方法にもとづきスライス製品の供給時においてスライス製品は鮮紅色を呈し(bloom)優良な色沢を与え、容器開封から供給時までの約3~4日間にわたりこの効果を継続する。」(4頁7欄33行-最終行)乙12公報の記載は補正の上で引用した原判決第3の2⑴のとおりであり、段落【0003】及び【0010】には以下の記載がある。 「スライスされたローストビーフを流通させる上での主な問題点は、スライスすることによって外気との接触面積が大きくなるため、ローストビーフの酸化が激しくなるという点である。その結果、消費者の手に渡るまで、色、臭い、味などを維持することが困難になる。」(段落【0003】) 「上記課題を解決するために、本発明のスライスされたローストビーフの包装方法は、スライスされたローストビーフを、脱酸素剤と共に、酸素ガスバリア性材料からなる容器内に配置し、容器内を窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後、容器を密封して、容器内の残存酸素濃度が0.01%(容量%、以下同じ)以下に維持される ようにすることを特徴としている。」(段落【0010】)乙163(特開2001-29006号公報、平成13年2月6日)の記載は、以下のとおりである。 「【従来の技術】従来、ローストビーフやたたきを販売のためスーパ 徴としている。」(段落【0010】)乙163(特開2001-29006号公報、平成13年2月6日)の記載は、以下のとおりである。 「【従来の技術】従来、ローストビーフやたたきを販売のためスーパーマーケット等に置いた場合、店頭に置いている間の3-5 時間程度で その色が変わってしまって商品価値がなくなり店舗ではロスを生じる 原因になっていた。ローストビーフの製法としては、食品衛生法により食肉原料の中心温度を56℃ (判決注:規格基準に照らして、「63℃」の誤記と認められる。)、30分以上加熱する(流通は10℃以下、またこの場合製造過程で原料肉に調味液等の注射をすることが認められている)製造法と中心温度を56℃、64分以上もしくは同等以上の加熱 を行う特定加熱法(流通は4℃以下、原料肉に調味液等の注射は認められていない。)による製造法の2つの方法がある。ローストビーフにおいてその本来の色を出そうとすると後者の特定加熱の製法で行う方が有利であり一般的に用いる製法である。このローストビーフをスライスしてから店頭に置くと退色が著しく商品価値を落とすこととなり問 題となっていた。そこで、この点を解決する方法の開発が強く望まれている。」(段落【0002】)「・・・ローストビーフを衛生的にスライス包装を行い店頭の販売に供した。」(段落【0005】)これら記載によれば、当業者にとって、食肉製品を酸素の存在下でス ライスしてトレイ内に並べて包装することは周知であるということができる。 そうすると、当業者であれば、当該商品を外部から観察することによって、その製造方法に、スライスする工程が存在し、また、これをトレイ上に並べる工程が存在し、これらの工程が酸素の存在下で行われる ことを認識できたということ 当該商品を外部から観察することによって、その製造方法に、スライスする工程が存在し、また、これをトレイ上に並べる工程が存在し、これらの工程が酸素の存在下で行われる ことを認識できたということができる。 (ウ) 上記商品には、前記のとおり、非鉄系の脱酸素材であるオキシーターY(乙183)が封入されている以上、ガスバリア性を有する包材(透明GP)で密封されていることが明らかである。 そうすると、当業者であれば、「非鉄系脱酸素材とともにガスバリア 性を有する包材に密封する工程」が存在することは認識でき、包材を分 析してガスバリア性を有することを確認することもできたといえる。 (エ) さらに、当業者であれば、当該製品の開封前に、包材内の気体を分析することによって、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換」がされていないことを認識することができたということができる。 イパストラミビーフ発明の内容及び本件発明とパストラミビーフ発明と の対比上記アによれば、パストラミビーフ発明の内容については、前記第2の4⑴〔被控訴人の主張〕ウのとおりと認められる。 また、本件発明とパストラミビーフ発明とを対比すると、前記第2の4⑴〔被控訴人の主張〕エのとおりの一致点及び相違点1ないし3を認める ことができる。 ウ相違点1の容易想到性について(ア) 本件発明の技術的意義本件発明の技術的意義は、補正の上で引用した原判決第3の1⑵のとおりであり、特定加熱食肉製品をスライスした後、所定の手順及び条件、 すなわち、酸素化する工程及び非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程にて処理することで、スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビン、オキシミオグロビン及びメトミオグロ ち、酸素化する工程及び非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程にて処理することで、スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビン、オキシミオグロビン及びメトミオグロビンの存在比を所望の範囲に制御することを技術的特徴とするものである(段落【0008】ないし【0010】)。 そうすると、本件発明は、特定加熱食肉製品のローストビーフをスライスされた状態で流通させることを前提として、その製造方法を改良するものである。 ここで、本件明細書には、「本発明において特定加熱食肉製品とは、一般に食品規格基準にて規定されるように、その中心部の温度を63℃ で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法以外 の方法による加熱殺菌を行った食肉製品(乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品は除く)を含む意味とする。」(段落【0018】)と記載されているように、本件明細書でいう「特定加熱食肉製品」は、甲150の規格基準において定められたものであると認められる。 (イ) 特定加熱食肉製品と加熱食肉製品の発色の原理についての技術常識 特定加熱食肉製品と加熱食肉製品についての技術常識は、補正の上で引用した原判決第3の2⑵イ及びウのとおりであり、特定加熱食肉製品であるか加熱食肉製品(「中心部の温度を63℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法」)であるかは、肉の中心部の加熱温度及び加熱時間によって定められるところ(甲1、13の2、 52、150)、さらに、加熱食肉製品(ハムやソーセージ等の加工肉を含む)は、亜硝酸塩等の発色剤を使用可能であるのに対し(甲147、148(乙207)、151)、特定加熱食肉製品は、中心部の温度をより低温の条件で、かつ、中心部の温度ごとに加熱時間が特 等の加工肉を含む)は、亜硝酸塩等の発色剤を使用可能であるのに対し(甲147、148(乙207)、151)、特定加熱食肉製品は、中心部の温度をより低温の条件で、かつ、中心部の温度ごとに加熱時間が特定され、調味料等は食肉の表面にのみ塗布しなければならないとも定められている (甲150)。 市販されているパストラミビーフは、いずれも発色剤(亜硝酸塩)が含まれており(甲193ないし196)、加熱食肉製品である前記商品「鎌倉山パストラミビーフ」も、そのスライス面は亜硝酸塩等の発色剤を使用し、ミオグロビンがニトロソミオグロビン(NOMb)となること によって赤色ないしピンク色に発色したものと認められるのに対し、調味料等を食肉の表面にしか塗布できず、発色剤を使用することができない特定加熱食肉製品では、スライス面の色は生肉に近く、ミオグロビンが酸素化してオキシミオグロビンとなることによって鮮赤色に発色するものと認められる。 これらによれば、発色剤を使用して発色しているものと認められる加 熱食肉製品である「鎌倉山パストラミビーフ」と、オキシミオグロビンになることによって発色している特定加熱食肉製品であるローストビーフとでは、発色の原理が全く異なるものということができる。 (ウ) そうすると、「加熱食肉製品」である商品「鎌倉山パストラミビーフ」から上記「パストラミビーフ発明」の製造方法を認定できたものとして も、その製造方法を発色の原理が全く異なる「特定加熱食肉製品のローストビーフ」の製造方法に適用する動機付けはないから、相違点1に係る構成を導くことを当業者が容易に想到できたものとはいえないというべきである。 (エ) 被控訴人の前記第2の4⑴オの主張について a 被控訴人は、特定加熱食肉製品であるか加 、相違点1に係る構成を導くことを当業者が容易に想到できたものとはいえないというべきである。 (エ) 被控訴人の前記第2の4⑴オの主張について a 被控訴人は、特定加熱食肉製品であるか加熱食肉製品であるかは、肉の中心部の加熱温度及び加熱時間によって定まるところ(甲1、13の2、52)、加熱温度及び時間の変更により加熱食肉製品を特定加熱食肉製品とすることは当業者が適宜設計できる事項であり、加熱食肉製品を特定加熱食肉製品に置換することは設計事項にすぎないと主 張する。また、被控訴人は、パストラミビーフとローストビーフは、共に牛肉の塊を加熱し、通常スライスして提供されるという点で一致しており、当業者にとってパストラミビーフはローストビーフを含有しうる概念であって(乙181の2)、パストラミビーフよりもローストビーフの方が高級なイメージが強く消費者への訴求力が高いことか ら(乙117)、当業者であればパストラミビーフをローストビーフに変更することも容易であることや、消費者の嗜好・志向を受けて、発色剤を使用せずに生肉本来の赤身を呈する状態にするために、「加熱食肉製品」である「ローストビーフ」を「特定加熱食肉製品」の「ローストビーフ」に変更する動機もあったとも主張する。 しかし、特定加熱食肉製品と加熱食肉製品の違いは、単に肉の中心 部の加熱温度及び加熱時間だけではなく、上記(イ)のとおり、発色の原理においても全く異なるから、加熱温度及び時間の変更により加熱食肉製品を特定加熱食肉製品とすることが適宜設計できる事項であるとはいえない。加えて、中心部まで十分な時間加熱し、殺菌が十分な加熱食肉製品と、あえて熱を十分に通さずにそのまま食べる特定加熱食 肉製品では、安全性が全く異なるということができ できる事項であるとはいえない。加えて、中心部まで十分な時間加熱し、殺菌が十分な加熱食肉製品と、あえて熱を十分に通さずにそのまま食べる特定加熱食 肉製品では、安全性が全く異なるということができるから、当業者であれば、十分に加熱が行き届いている上、塩漬工程で亜硝酸塩が添加され安全性の担保されている加熱食肉製品の技術を、加熱が十分にされておらず菌が再繁殖する可能性のある特定加熱食肉製品に適用しようすることを考えないものといえる。仮に適用するにしても、特定加 熱食肉製品にするためには、加熱の温度及び時間管理、発色剤の使用の有無など、その仕様を大幅に変更しなければならないから、加熱食肉製品であるパストラミビーフの製品をみた当業者が、同様の製造技術を適用して、特定加熱食肉製品を製造しようとする動機付けにはならないというべきである。さらには、たとえ発色剤の使用に否定的な 消費者の志向があったとしても、それは購買時における消費者の商品の選択をいうものに過ぎず、製造技術までも適用し得るという根拠にはならない。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 b 被控訴人は、ローストビーフを消費者の購入意欲を増加させる生肉 本来の赤身を呈する状態にすることは当業者において周知の課題であり(甲117、125、乙12)、加熱食肉製品のローストビーフよりも特定加熱食肉製品のローストビーフの方が生肉本来の色を呈することができることも周知であり(甲125、乙117、118、162、163)、乙163(特開2001-29006号公報)の段落【00 02】には、退色又は変色が抑えられる方法は、スライスした加熱食肉 製品のローストビーフであろうと特定加熱食肉製品のローストビーフであろうと共通であることが記載されて の段落【00 02】には、退色又は変色が抑えられる方法は、スライスした加熱食肉 製品のローストビーフであろうと特定加熱食肉製品のローストビーフであろうと共通であることが記載されており、発色剤を用いた食肉製品であっても、酸素の影響によってニトロシルミオグロビン(NOMb)の安定性が著しく下がり退色に至るのであって、酸素の影響によって退色に至るという原理は特定加熱食肉製品の場合と発色剤を用いた食 肉製品の場合とで異ならない旨を主張する。 しかし、上記のとおり、発色剤を使用して発色している加熱食肉製品である商品「鎌倉山パストラミビーフ」と、オキシミオグロビンになることによって発色している特定加熱食肉製品であるローストビーフとでは、発色の原理が全く異なるところ、たとえ酸素の影響によって 退色に至る点で共通する部分があるとしても、発色剤を用いた加熱食肉製品と、オキシミオグロビンによって発色する特定加熱食肉製品とでは、色調安定性が大きく異なることも技術常識であるといえるから(甲148(乙207)、151、乙163)、加熱食肉製品であるパストラミビーフの製品をみた当業者が、同様の製造技術を適用して、特 定加熱食肉製品を製造しようと考えるとはいえない。また、乙163には、以下の記載がある。「【0002】【従来の技術】従来、ローストビーフやたたきを販売のためスーパーマーケット等に置いた場合、店頭に置いている間の3-5時間程度でその色が変わってしまって商品価値がなくなり・・・。ローストビーフの製法としては、・・・2つの方法 がある。ローストビーフにおいてその本来の色を出そうとすると後者の特定加熱の製法で行う方が有利であり一般的に用いる製法である。 このローストビーフをスライスしてから店頭に置くと退色が著しく商 がある。ローストビーフにおいてその本来の色を出そうとすると後者の特定加熱の製法で行う方が有利であり一般的に用いる製法である。 このローストビーフをスライスしてから店頭に置くと退色が著しく商品価値を落とすことになり問題となっていた。そこで、この点を解決する方法の開発が強く望まれている。【0003】・・・そこで、本発明の 課題はローストビーフ、たたきなどの食肉加工品を販売のために店頭 に置いた場合も退色又は変色しない食肉加工品及びその製法を提供することにある。」乙163の上記記載によれば、ローストビーフの二つの製法のうち、後者の特定加熱の製法(特定加熱食肉製品の製法)は本来の色を出そうとすると有利であり一般的な方法であること、このローストビーフ をスライスしてから店頭に置くと退色が著しいという問題があることが指摘されており、「退色」の問題は、特に、本来の色を出そうとする特定加熱の製法について生じるものと認められる。乙163に、加熱条件が異なる実施例1及び実施例2において、退色抑制のために同様の方法を適用している旨の記載があったとしても、退色又は変色が抑 えられる方法が加熱食肉製品及び特定加熱食肉製品で共通であるという当業者の認識があったとまでは認められないというべきである。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 (オ) 相違点1の容易想到性についてのまとめ以上のとおり、当業者は、相違点1に係る構成を導くことを容易に想到 できたものとはいえないというべきである。 エ相違点3の容易想到性について被控訴人は、本件特許の出願日当時、メトミオグロビンの割合をできるだけ低い状態に抑え、オキシミオグロビンの割合をできるだけ高く維持して鮮赤色の食肉を維持することが、消費者等へ 容易想到性について被控訴人は、本件特許の出願日当時、メトミオグロビンの割合をできるだけ低い状態に抑え、オキシミオグロビンの割合をできるだけ高く維持して鮮赤色の食肉を維持することが、消費者等へ訴求する観点からは望ましい ことは技術常識であり、パストラミビーフ発明のパストラミビーフに代えて、特定加熱食肉製品のスライスされたローストビーフを採用し、「酸素化する工程」を適用すれば、ローストビーフは、保存状態において、鮮やかな赤色を維持し、容器を開封して酸素に曝すとオキシミオグロビンの鮮紅色を呈することになるから、相違点3は、パストラミビーフ発明に、前記周知 技術及び公知技術を適用することにより実現するものであり、相違点1と 同様に、当業者が容易に想到できることであると主張する。 しかし、既に検討したとおり、発色剤を使用して発色しているものと認められる加熱食肉製品である商品「鎌倉山パストラミビーフ」と、オキシミオグロビンになることによって発色している特定加熱食肉製品であるローストビーフとでは、発色の原理が全く異なるから、ミオグロビン割合そのもの が問題にならない加熱食肉製品を、発色原理の全く異なる特定加熱食肉製品に置き換えてミオグロビン割合を調整することを容易に想到できるとはいえない。 したがって、当業者は、相違点3に係る構成を導くことを容易に想到できたものとはいえないというべきである。 オ小括以上のとおり、当業者は、少なくとも相違点1及び3に係る構成を導くことを容易に想到できたものとはいえないから、被控訴人の主張する無効理由1は理由がない。 ⑵ 争点2-2(無効理由2(公知発明(DCSローストビーフ)に基づく進 歩性欠如))についてア商品「DCSローストビーフ」に関する開示事 被控訴人の主張する無効理由1は理由がない。 ⑵ 争点2-2(無効理由2(公知発明(DCSローストビーフ)に基づく進 歩性欠如))についてア商品「DCSローストビーフ」に関する開示事項(ア) 乙184(平成16年(2004年)3月25日付け被控訴人滝沢ハム泉川工場A工場長宛「製品に対する要望書」)、乙185の1ないし6に示された商品「DCSローストビーフ」は、乙185の1・2の写真 に示されるとおり「ローストビーフ(スライス)」であり、「賞味期限07.12.1」、「加熱食肉製品(加熱後包装)」等の表示が読み取れる。 そうすると、「DCSローストビーフ」の商品は、食肉であるローストビーフがトレイ内にスライスされた状態で包装されており、加熱食肉製品であると認められる(乙185の1及び2)から、当業者は、当該 商品の表示により加熱食肉製品であることを認識できたものである。 (イ) また、当業者にとって、食肉製品を酸素の存在下でスライスしてトレイ内に並べて包装することは前記⑴ア(イ)のとおり周知であるから(甲117、乙12、163)、当業者であれば、当該商品を外部から観察することによって、その製造方法に、スライスする工程が存在し、また、これをトレイ上に並べる工程が存在し、これらの工程が酸素の存在下で 行われることを認識できたものである。 (ウ) 上記商品には、エージレスが封入されているところ(乙185の1及び2)、そのデザインから、非鉄系の脱酸素材であるエージレスGLS(乙186の1・2)であると認められるところ、脱酸素材が封入されている以上、ガスバリア性を有する包材で密封されていることが明ら かであるから、当業者であれば、「非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工 められるところ、脱酸素材が封入されている以上、ガスバリア性を有する包材で密封されていることが明ら かであるから、当業者であれば、「非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程」が存在することは認識できたものである。なお、包材を分析してガスバリア性を有することを確認することもできたものといえる。 (エ) さらに、当業者であれば、当該製品の開封前に、包材内の気体を分析 することによって、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換」がされていないことを認識することができたということができる。 イ DCSローストビーフ発明の内容及び本件発明とDCSローストビーフ発明との対比上記アによれば、DCSローストビーフ発明の内容については、前記第 2の4⑵〔被控訴人の主張〕ウのとおりと認められる。 また、本件発明とDCSローストビーフ発明とを対比すると、前記第2の4⑵〔被控訴人の主張〕エのとおりの一致点及び相違点1ないし3を認めることができる。 ウ相違点1の容易想到性について 本件発明の技術的特徴及び特定加熱食肉製品と加熱食肉製品の発色の 原理についての技術常識については、前記⑴ウのとおりであり、DCSローストビーフ発明に係る商品「DCSローストビーフ」も加熱食肉製品であり、乙185の1・2によれば、「原材料名」に「発色剤(亜硝酸Na)」を使用していることが見て取れる。 そうすると、前記同様の理由により、加熱食肉製品である「DCSロー ストビーフ」において、上記DCSローストビーフ発明に係る製造方法を認定できたとしても、その製造方法を発色の原理が全く異なる「特定加熱食肉製品のローストビーフ」の製造方法に適用する動機付けはなく、相違点1に係る構成を導くことを当業者が容易に想到 明に係る製造方法を認定できたとしても、その製造方法を発色の原理が全く異なる「特定加熱食肉製品のローストビーフ」の製造方法に適用する動機付けはなく、相違点1に係る構成を導くことを当業者が容易に想到できたものとはいえないというべきである。 エ相違点3の容易想到性について前記⑴エと同様に、発色剤を使用して発色しているものと認められる「加熱食肉製品」であるローストビーフと、オキシミオグロビンになることによって発色している「特定加熱食肉製品」であるローストビーフとでは、発色の原理が全く異なるから、ミオグロビン割合そのものが問題にな らない加熱食肉製品を、発色原理の全く異なる特定加熱食肉製品に置き換えてミオグロビン割合を調整することを容易に想到できるとはいえない。 オ小括以上のとおり、当業者は、少なくとも相違点1及び3に係る構成を導くことを容易に想到できたものとはいえないから、被控訴人の主張する無効 理由2は理由がない。 ⑶ 争点2-3(無効理由3(乙178公報に基づく進歩性欠如))についてア乙178公報の記載事項(ア) 乙178公報には、以下の記載がある。 a 特許請求の範囲 「1 通気性でかつ不透水性の熱封着し得るフィルムの袋内に脱酸素 性基材を入れて熱封着したパックからなり、該脱酸素性基材はアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、カテコール及びレゾルシンから成る群から選択した脱酸素性有機化合物の水溶液を含浸した繊維シートと水中で鉄イオンを生成するがCO2を発生しない第-鉄塩及び/又は第二鉄塩の水溶性を含浸した繊維シートと の積層圧着構造になり、前記両水溶液中の水の合計量が脱酸素性有機化合物1重量部に対し1.01~1.50重量部であり、小型軽量で、炭酸ガスを発生すると 又は第二鉄塩の水溶性を含浸した繊維シートと の積層圧着構造になり、前記両水溶液中の水の合計量が脱酸素性有機化合物1重量部に対し1.01~1.50重量部であり、小型軽量で、炭酸ガスを発生するとともに高い酸素吸入能力を有することを特徴とする脱酸素パック。」b 発明の詳細な説明 「近年、脱酸素剤を必要とする産業部門例えば食品の流通機構は益々複雑化し、食品自体も天然食品、加工食品を問わず、多種多様化してきた。その為、食品の品質を守る数々の工夫が実施され、現在に至っている。例えば、食品に直接添加する食品添加物や、食品を容器に入れたまま熱処理を行なった缶詰、レトルトパウチ等があ り、また、冷凍、乾燥処理などや、包装フィルムを利用した真空パック、ガスフラッシュパック等がある。 然し、添加物や、熱、冷凍、乾燥処理は、食品保存の目的は達せられるものの、食品自体への悪影響が生ずる。例えば、食品添加物は食品と共に口の中に入る。また、熱、冷凍、乾燥処理などは、食 品自体の形、色、風味、栄養分等を損ねてしまう欠点がある。そこで最近、包装フィルムを利用したガスフラッシユパックが注目されてきている。中でも、窒素ガス、炭酸ガス又は窒素ガス-炭酸ガス混合ガスが用いられており、その目的は窒素ガスを食品と共に非通気性の袋に入れることにより、酸素を置換して追い出し、食品の酸 化とカビを防止するにある。炭酸ガス又は窒素ガス-炭酸ガス混合 ガスは酸素を掃気置換する作用と、炭酸ガスの細菌への抑制力や酸化抑制力を利用したものであり、その効果は大きい。然し、これもガスフラッシュ時にその作業を機械的に行なう為、ガスによる100%のフラッシュは困難であり、平均2~3%の酸素が残ってしまい、時には10%を越えるものもある。この為品質に 効果は大きい。然し、これもガスフラッシュ時にその作業を機械的に行なう為、ガスによる100%のフラッシュは困難であり、平均2~3%の酸素が残ってしまい、時には10%を越えるものもある。この為品質にバラツキを生 じ、食品の安全性の面で問題が生ずる上に、大きくて重い機械を必要とする。そこでこの問題を解決すべく生まれたのが、脱酸素剤と称されるものであり、密閉袋内の空気を脱酸素するのに用いられている。」(1頁1欄36行-2欄31行)「本発明者は種々実験研究の結果、前述の従来の諸欠点を全く有さ ず、ガスフラッシュ方式の炭酸ガスを用いる利点と脱酸素剤の持つ優れた除酸素能力の利点とを兼ね備えた全く新規な脱酸素パックを発明するに至った。」(2頁3欄40-44行)「本発明の脱酸素パックは、400ccの密封空気中の酸素濃度を、72時間で0.1~0.2%、96時間で0.01%以下とするこ とができる。」(3頁6欄14-17行)「脱酸素性有機化合物自体は公知であるから、本発明は脱酸素性有機化合物自体に特徴を有するものではなく、本発明に係る脱酸素性有機化合物を用いて、小型軽量で高い脱酸素能力と炭酸ガス発生能力を有する脱酸素パックを提供する為に特色を有する。」(6頁12 欄43行-7頁13欄4行)「例2・・・この脱酸素パックを非通気性の袋に空気400ccと共に入れ、袋を密封し、日数経過時の袋内の残存酸素量を試験した。結果は次の第3表と第4図に示す通りであった。」(10頁20欄36 行-同頁39行) 「例4本発明の必要性及び有用性を次に、加工食品に対するガスフラッシュ方式を例に挙げて説明する。本発明の脱酸素パックは次の第5表に示すガスフラッシュ方式の加工食品に対し、ガスフラッシュ方式に替えて有効 本発明の必要性及び有用性を次に、加工食品に対するガスフラッシュ方式を例に挙げて説明する。本発明の脱酸素パックは次の第5表に示すガスフラッシュ方式の加工食品に対し、ガスフラッシュ方式に替えて有効に使用することができた。」(11頁21欄34行-2 2欄36行)c 表 (12頁第5表)上記によれば、乙178公報には、通気性でかつ不透水性の熱封着し 得るフィルムの袋内に脱酸素性基材を入れて熱封着したパックからなり、該脱酸素性基材は、「アスコルビン酸ナトリウム」等の脱酸素性有機化合物(非鉄系脱酸素材に相当する)の水溶液を含浸した繊維シート と第一鉄塩及び/又は第二鉄塩の水溶液を含侵した繊維シートとの積層圧着構造からなり、小型軽量で、炭酸ガスを発生するとともに高い酸素吸入能力を有する脱酸素パック(請求項1)の発明が記載されている。 (イ) そして、乙178公報によれば、食品の品質を守る数々の工夫が実施されているが、食品に直接添加する食品添加物や、熱、冷凍、乾燥処理 は、食品保存の目的は達せられるものの、食品自体への悪影響が生じる。 そこで、最近、包装フィルムを利用したガスフラッシユパックが注目されてきており、窒素ガス、炭酸ガス又は窒素ガス-炭酸ガス混合ガスを食品と共に非通気性の袋に入れることにより、酸素を置換して追い出し、食品の酸化とカビを防止する目的で使用されているが、ガスによる10 0%のフラッシュは困難であり、平均2ないし3%の酸素が残ってしまい、時には10%を越えるものもあるため、品質にバラツキを生じ、食品の安全性の面で問題が生ずる上に、大きくて重い機械を必要とする。 そこでこの問題を解決すべく生まれたのが脱酸素剤と称されるものであり、密閉袋内の空気を脱酸 るものもあるため、品質にバラツキを生じ、食品の安全性の面で問題が生ずる上に、大きくて重い機械を必要とする。 そこでこの問題を解決すべく生まれたのが脱酸素剤と称されるものであり、密閉袋内の空気を脱酸素するのに用いられている(前記1頁1~ 2欄)。 (ウ) 乙178公報に記載の脱酸素パックは、ガスフラッシュ方式の炭酸ガスを用いる利点と脱酸素剤の持つ優れた除酸素能力の利点とを兼ね備えたものであり、脱酸素性有機化合物を用いて、小型軽量で高い脱酸素能力と炭酸ガス発生能力を有する脱酸素パックを提供するという技術 的特徴を有しており、400ccの密封空気中の酸素濃度を、72時間で0.1~0.2%、96時間で0.01%以下とすることができる(前記2頁3欄40-44行、3頁6欄及び7頁13欄)。 (エ) 例2には、脱酸素パックを非通気性の袋の中に入れて、袋を密封し、日数経過後の袋内の残存酸素量を試験したところ、第3表にあるとおり、 7日後に0.1%の残存酸素濃度であったことが示されている。 (オ) 例4には、乙178公報に記載の「脱酸素パック」が、第5表「主な加工食品のガス充填包装の現況」に示されるガスフラッシュ方式の加工食品に対し、ガスフラッシュ方式に替えて有効に使用することができたことが記載されており、当該加工食品の一例として、「ハム・ソーセージ・ウインナー」である「食肉加工品」が挙げられている(11-12 頁)。上記(エ)のとおり、食肉加工品を、脱酸素パックとともに使用するに当たり、非通気性の袋に入れて、密封されることは明らかである。 イ乙178発明の内容及び本件発明と乙178発明との対比上記アによれば、乙178発明の内容については、前記第2の4⑶〔被控訴人の主張〕ウのとおりと認められる。 とは明らかである。 イ乙178発明の内容及び本件発明と乙178発明との対比上記アによれば、乙178発明の内容については、前記第2の4⑶〔被控訴人の主張〕ウのとおりと認められる。 また、本件発明と乙178発明とを対比すると、前記第2の4⑶〔被控訴人の主張〕エのとおりの一致点及び相違点1ないし4を認めることができるこの点につき控訴人は、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく、」との点についても相違点になるものと主張する。 しかし、上記のとおり、例4においては、「ガスフラッシュ方式に替えて有効に使用することができた」と記載されており、ガスフラッシュ方式は、窒素ガス、炭酸ガス又は窒素ガス-炭酸ガス混合ガスにより酸素ガスを置換する方法であるから(上記1頁2欄13-19行)、上記点は相違点にはならないというべきである。 また、控訴人は、「当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下」も相違点となるとも主張するが、この点は前記相違点4に含まれているものであり、さらに相違点として認定する必要はないというべきである。 ウ相違点1の容易想到性について(ア) 乙178発明は、上記のとおり脱酸素パックに関する発明であり、第 5表に記載されるような様々な食品についての利用が想定されている。 「特定加熱食肉製品」の「ローストビーフ」は、「食肉加工品」に含まれるものの、乙178公報には、特定加熱食肉製品の色調を保持する課題があることや、その課題解決のために、製造方法を検討することを示唆する記載はない。 そうすると、乙178発明を主引用発明として、様々な食品の中から、 あえて特定加熱食肉製品であるローストビーフを採用し、かつ「非鉄系脱酸素材」である脱酸素パックと共に 唆する記載はない。 そうすると、乙178発明を主引用発明として、様々な食品の中から、 あえて特定加熱食肉製品であるローストビーフを採用し、かつ「非鉄系脱酸素材」である脱酸素パックと共に密封する工程以外の製造工程をさらに検討する動機付けは存在しないというべきである。 (イ) また、「食肉加工品」として例示されているものが、「ハム・ソーセージ・ウインナー」という「加熱食肉製品」であり、前記⑴ウ(イ)のとおり、 これらは通常発色剤を使用するものであることを考慮すると、加熱食肉製品である「ハム・ソーセージ・ウインナー」において、乙178発明のとおりの製造方法を認定できたとしても、その製造方法を発色の原理が全く異なる「特定加熱食肉製品のローストビーフ」の製造方法に適用する動機付けはない。 そうすると、相違点1に係る構成を導くことを当業者が容易に想到できたものとはいえないというべきである。 (ウ) 被控訴人の前記第2の4⑶の主張については、以下のとおりである。 a 被控訴人は、前記第2の4⑶オのとおり、乙178発明のハムなどの食肉加工品として、特定加熱食肉製品のローストビーフを採用する ことは容易に想到することであると主張する。 しかし、乙178公報の第5表の「食肉加工品」の「備考」欄には、ガス充填包装の目的として「酸化防止、色沢の変化防止、微生物の生育を抑制」と記載されているものの、例示されているものが「ハム・ソーセージ・ウインナー」という通常発色剤を使用する「加熱食肉製 品」であることを考慮すると、「色沢の変化防止」が、必ずしも本件発 明のようなオキシミオグロビンによる色調の変化防止を意味しているとはいえないから、「特定加熱食肉製品」を対象にしているものと当業者が想到し得るものと 「色沢の変化防止」が、必ずしも本件発 明のようなオキシミオグロビンによる色調の変化防止を意味しているとはいえないから、「特定加熱食肉製品」を対象にしているものと当業者が想到し得るものとはいえない。 仮に「食肉加工品」として「特定加熱食肉製品」を当業者が容易に想到できたとしても、製造方法としては、一致点C’のとおり、「食肉 製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程を含む」ことが特定されるだけであって、「脱酸素剤パック」に係る乙178公報を主引用例として、それ以外の製造工程をさらに検討する動機付けは存在しないというべきである。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 b 被控訴人は、前記第2の4⑶オのとおり、乙16、17、192、163、162及び12を参照した当業者であれば、ハムやソーセージなどの食肉加工品はミオグロビンが重要な役割を果している食肉製品であると認識すると主張する。 乙16(特開2009-159825号公報)(請求項1、9、段落 【0003】、【0013】、【0022】、【0027】及び【0046】)には、亜硝酸塩を発色剤として用いる従来の食肉製品の退色を抑制する方法に代えて、「2価又は3価の金属を含有する金属塩と、アスコルビン酸又はその塩とを含有し、pHを6.2~8に調整した食肉組成物を調製する食肉調製工程を備える」ことを特徴とする発色性に優れ た食肉製品の製造方法であって、食肉製品として、ハム類、ローストビーフ等が挙げられているが、上記のとおり、亜硝酸塩からなる発色剤に代わる添加剤を使用する方法が示されているにすぎず、ミオグロビンが重要な役割を果している食肉製品の製造方法において、発色性に優れた食肉製品を提供することを目的とする とおり、亜硝酸塩からなる発色剤に代わる添加剤を使用する方法が示されているにすぎず、ミオグロビンが重要な役割を果している食肉製品の製造方法において、発色性に優れた食肉製品を提供することを目的とするものとして、食肉製品 として、ハム類やソーセージ類とローストビーフとが等価に置換可能 であることを示すものではない。乙17(請求項1)、乙192(請求項1)についても、亜硝酸塩からなる発色剤に代わる添加剤を使用する方法を示すものにすぎないから、同様である。 乙163については、前記⑴ウ(エ)bのとおり、退色又は変色が抑えられる方法が加熱食肉製品及び特定加熱食肉製品で共通であるという 当業者の認識があったとまでは認められないというべきである。 乙162(特開平6-217736号公報)にも、「特定加熱食肉製品」のローストビーフの製造流通が認められるようになった(段落【0002】)ことや、所定の温度等の条件によってローストビーフを製造することにより(特許請求の範囲)、「赤み」のまま流通することが可 能となった(段落【0004】)ことが記載されているに過ぎず、上記の認識があったとは認められない。 また、乙12にスライスされたローストビーフを脱酸素材とともに密封することが記載されている(請求項1)からといって、そもそもローストビーフについて言及していない乙178公報について、無数 の文献の中から乙12を参照して、ローストビーフを脱酸素材とともに密封する発想に至ることはないというべきであるし、被控訴人の主張する消費者への訴求等についても前記と同様である。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 (エ) 以上のとおり、当業者は、相違点1に係る構成を導くことを容易に想 到できたも 費者への訴求等についても前記と同様である。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 (エ) 以上のとおり、当業者は、相違点1に係る構成を導くことを容易に想 到できたものとはいえない。 エ相違点2の容易想到性について乙178公報の記載内容は前記ア(ア)のとおりであるところ、そこには、ハムやソーセージについてすら、これをスライスする工程については一切記載されていない。 乙178発明から本件発明に到達するためには、相違点1を克服し、特 定加熱食肉製品とする必要があるから、単に食肉をスライスする工程を容易に想到できるかではなく、特定加熱食肉製品をスライスする工程を容易に想到できるかを検討しなければならない。 たとえ、乙193の1(2頁3欄)及び乙194(実施例1)に記載のように、ハムをガス充填包装する際に、スライスしてトレイにいれて密封 することが周知であったとしても、また、乙163(段落【0002】)、乙12(特許請求の範囲、段落【0002】~【0010】、実施例)及び甲117(特許請求の範囲、2頁4欄、4頁7欄)に記載のように、ローストビーフをスライスして容器内に密封する技術や、スライス状態での赤みを保持するという課題が知られていたとしても、上記で述べたとおり、 乙178発明の製造方法を発色の原理が全く異なる特定加熱食肉製品のローストビーフの製造方法に適用する動機付けがない以上、特定加熱食肉製品をスライスする工程を容易に想到できるとはいえない。 したがって、当業者は、相違点2に係る構成を導くことを容易に想到できたものとはいえない。 オ相違点3の容易想到性について相違点3についても検討すると、既に述べたとおり、特定加熱食肉製品をスライスする工程を容易に想到で る構成を導くことを容易に想到できたものとはいえない。 オ相違点3の容易想到性について相違点3についても検討すると、既に述べたとおり、特定加熱食肉製品をスライスする工程を容易に想到できたものとはいえないのであるから、「スライスされた特定加熱食肉製品」に、さらに「酸素化する工程」を設けることを当業者が容易に想到できたものともいえないというべきであ る。 カ相違点4の容易想到性について前記同様に、発色剤を使用して発色しているものと認められる「加熱食肉製品」である「ハム・ソーセージ・ウインナー」と、オキシミオグロビンになることによって発色している「特定加熱食肉製品」である「ロース トビーフ」とでは、発色の原理が全く異なるから、ミオグロビン割合その ものが問題にならない加熱食肉製品を、発色原理の全く異なる特定加熱食肉製品に置き換えてミオグロビン割合を調整することを容易に想到できるとはいえない。 キ小括以上のとおり、当業者は、相違点1ないし4に係る構成を導くことを容 易に想到できたものとはいえないから、被控訴人の主張する無効理由3は理由がないというべきである。 ⑷ 争点2-4(無効理由4(乙179公報に基づく進歩性欠如))についてア乙179公報の記載事項(ア) 乙179公報には、以下の記載がある。 a 特許請求の範囲「【請求項2】生肉を冷蔵保存する方法であって、生肉を、酸素の透過が制限された容器内に収納し、この容器内から酸素を除去して、生肉中のメトミオグロビン及び/又はオキシミオグロビンを還元型ミオグロビンとした状態で保存することを特徴とする生肉の冷蔵保存方法。 【請求項3】請求項2記載の生肉の冷蔵保存方法において、前記容器内から酸素を除去するには、この容器 ミオグロビンを還元型ミオグロビンとした状態で保存することを特徴とする生肉の冷蔵保存方法。 【請求項3】請求項2記載の生肉の冷蔵保存方法において、前記容器内から酸素を除去するには、この容器内に酸素捕捉材を収納することを特徴とする生肉の冷蔵保存方法。」b 発明の詳細な説明「【発明の属する技術分野】この発明は、生肉の冷蔵保存方法及び肉色の 制御方法に関し、詳しくは、保存後に、良好な肉色を呈示させることのできる生肉の冷蔵保存方法及び生肉の肉色の制御方法に関する。」(段落【0001】)「【従来の技術】生肉は、色素タンパク質であるミオグロビンを有しており、新鮮な生肉では、ミオグロビンが酸素と接触することによって生成 されたオキシミオグロビンによる鮮赤色を呈している。一方、従来、新 鮮な生肉を保存するには、そのまま、パッキングして冷蔵あるいは冷凍することが通例である。冷蔵する場合、保存温度は、通常約-3℃~5℃の範囲であるが、低温であっても、生肉中のミオグロビンやオキシミオグロビンのメト化、すなわち、メトミオグロビンの生成は避けられない。 メトミオグロビンの生成により、肉が褐変化する。さらには、好気性菌 による発酵を促進してネトを発生させる。また、冷凍する場合、保存温度は、通常、約-15~-18℃である。かかる温度範囲においては、メトミオグロビンの生成や好気性菌の発酵はほぼ抑えられるが、この温度度に到達するまでの温度履歴や保存中における温度変動により、解凍時にドリップが多量に発生し、肉質が著しく損なわれることになる。」 (段落【0002】)「【発明が解決しようとする課題】このように、従来の保存方法では、生肉を保存後においても、保存前の商品価値を維持するのは難しかった。 そこで、本発明は、生肉の なる。」 (段落【0002】)「【発明が解決しようとする課題】このように、従来の保存方法では、生肉を保存後においても、保存前の商品価値を維持するのは難しかった。 そこで、本発明は、生肉の商品価値を低下させることなく、生肉を冷蔵保存する方法を提供することを目的とする。」(段落【0003】) 「【課題を解決するための手段】上記した課題を解決するため、本発明では、以下の手段を創作した。すなわち、第1の発明は、生肉を冷蔵保存する方法であって、生肉中のメトミオグロビン及び/又はオキシミオグロビンを還元型ミオグロビンの状態で保存することを特徴とする生肉の冷蔵保存方法。この発明によれば、生肉中のメトミオグロビンやオキ シミオグロビンは、還元型の状態、すなわち、酸化されていない状態が維持される。このため、冷蔵状態であっても、ミオグロビンのメト化による肉色の低下、腐敗、肉質の低下が回避される。保存後に、生肉を酸素と接触させることにより、ミオグロビンはオキシミオグロビンとなり、良好な鮮赤色を呈する。」(段落【0004】) 「また、この発明においては、生肉を、酸素の透過が制限された容器内 に収納し、この容器内から酸素を除去して、生肉中のメトミオグロビン及び/又はオキシミオグロビンを還元型ミオグロビンとした状態で保存することが好ましい態様である。酸素が制限された容器内に収納された生肉は、容器内から酸素が除去されることにより、生肉中のメトミオグロビンやオキシミオグロビンが還元型ミオグロビンとされる。また、 酸素の透過が制限された容器内で保存するため、酸素と生肉との接触が制限され、還元型ミオグロビンの状態が維持される。」(段落【0005】)「酸素が制限された容器内から酸素を除去するには、この容器内に酸素捕 が制限された容器内で保存するため、酸素と生肉との接触が制限され、還元型ミオグロビンの状態が維持される。」(段落【0005】)「酸素が制限された容器内から酸素を除去するには、この容器内に酸素捕捉材を収納することが好ましい。酸素捕捉材は、容器内の酸素を捕捉し、容器内を真空吸引する等の操作をすることなく、簡易に、しかも、 穏やかな条件で、生肉中のメトミオグロビン等が還元型ミオグロビンとされる。」(段落【0006】)「【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。 本発明を適用する生肉とは、ミオグロビンを含む生(加熱前)の肉をいう。具体的には、牛、豚、羊等の動物、鳥類、魚類の肉をいう。本発明 は、特にミオグロビン含量の多い牛肉等の畜肉やマグロやカツオ等の赤身の魚肉に有効である。なお、生肉の形態は特に問うものではなく、スライス状やブロック状、ミンチ状等のいずれの状態であってもよい。この発明において冷蔵とは、細菌の繁殖を抑制でき、しかも、完全冷凍することのない温度範囲での保存をいう。保存温度は、具体的には、-3 ~10℃であり、好ましくは、-3~5℃である。」(段落【0009】)「生肉中には、色素タンパク質であるミオグロビン(以下、Mbともいう。)が存在する。このミオグロビンは、生体中においては、分子状酸素と結合せず、また、ヘム鉄が2価の状態のミオグロビン(本発明においては、この状態のミオグロビンを還元型ミオグロビンという。)で存在 し、赤紫色を呈している。しかし、酸素に接触する状態では、分子状酸 素と結合して、オキシミオグロビン(以下、MbO2 ともいう。)となる。 MbやMbO2 は、ヘム鉄が酸化されて3価となり、メトミオグロビン(以下、metMbともいう。)となる。還元型Mb 素と結合して、オキシミオグロビン(以下、MbO2 ともいう。)となる。 MbやMbO2 は、ヘム鉄が酸化されて3価となり、メトミオグロビン(以下、metMbともいう。)となる。還元型Mbを主体とする生肉は赤紫色を呈し、MbO2 を主体とする生肉は鮮赤色を呈し、metMbを主体とする生肉は褐色を呈する。」(段落【0010】) 「一旦、空気と接触して酸化されたmetMbやMbO2 を還元型Mbとするためには、生肉の周囲の雰囲気から酸素を除去して、生肉を酸素分圧の低い状態において、Mbと酸素との解離を促進し、あるいは、ヘム鉄の還元を促進し、あるいはこの双方を図る。生肉を酸素分圧の低い状態におくには、生肉を酸素の透過が制限された容器内に収納して容器内 を減圧下に保持したり、この容器内の酸素を酸素捕捉材により捕捉させたり、あるいは容器内の空気を他のガス、例えば酸素以外のガスである窒素ガス等で生肉の周囲の雰囲気ガスを置換したりすることにより、容器内の酸素を除去する手段を用いることができ、また、これらを2種以上組み合わせて用いることができる。」(段落【0011】) 「酸素の透過が制限された容器としては、一般に気密状態を維持できる容器を用いることができる。袋状体としては、ガスバリヤー性のあるプラスチックフィルムやシートからなるものが該当する。ガスバリヤー性のあるプラスチックフィルムあるいはシートとしては、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニリデン系樹脂、アルミニウム等、通気性が1cc. 15μg/m2 、24hrs、1atm以下(15μg/m2 のシートで、1気圧下、24時間あたり、1cc以下の通気性を意味する。)のものを使用するのが、密封性確保と減圧状態の維持のために好ましい。また、かかるフィルムあるいはシート m以下(15μg/m2 のシートで、1気圧下、24時間あたり、1cc以下の通気性を意味する。)のものを使用するのが、密封性確保と減圧状態の維持のために好ましい。また、かかるフィルムあるいはシートは2層以上で使用することもできる。」(段落【0012】) c 実施例 「(実施例1)(試料の調製)牛肉(部位:肩ロース)を約2mm程度にスライスし、その約250gを、ポリエチレン製の皿状の肉トレイ(サイズ;260mm×195mm ×25mm)に、それぞれのスライスが重なることのないよう並列的に並べて、このトレイごと、塩化ビニル製のフィルムで包装し、 試験用の包装トレイとした。この包装トレイをさらに、ガスバリア性のある3層ラミネート袋(サイズ;340mm ×240mm 、材質; ポリアミド樹脂(ナイロン、東レ株式会社製)(内層)/ポリビニルアルコール(商品名エバール、クラレ製)(中層)/高密度ポリエチレン樹脂(外層))に、酸素捕捉材(酸化鉄系)50gとともに、開口部を熱溶着して 完全にシールした。これにより、スライスされた牛肉は、酸素捕捉材とともに、空気(酸素)の透過が制限された容器(本実施例では袋状体)中に収納されていることになる。 (保存方法)これらの試料を約4℃の冷蔵庫内で保存した。 (肉質の経時観察)これらの試料につき、約4℃の冷蔵保存中の肉質の 経時観察を、特にその肉色を指標として行った。 (肉質の評価)1.保存中の肉色の評価経時観察を、保存期間が22時間、30時間、96時間及び104時間の試料1~4について行った。すなわち、それぞれの経時観察用の試料 を、所定時間経過後に袋より取り出し、トレイのフィルム上から、肉色を次の方法で評価した。肉色の観察は、包装トレイに収納され 間の試料1~4について行った。すなわち、それぞれの経時観察用の試料 を、所定時間経過後に袋より取り出し、トレイのフィルム上から、肉色を次の方法で評価した。肉色の観察は、包装トレイに収納されたスライス肉の表面の色を、トレイを覆うフィルムの表面から分光測色計(ミノルタ製CM508i)にて測定することにより行った。肉色の評価には、還元型Mbに特徴的である赤紫色を数値化するために、L* a * b * 表色 系を用いた。L* a * b * 表色系は、明度をL* 、色相と彩度とを示す色度 を、a* 、b* で表す。a* 、b* は色の方向を示し、a* は、赤方向、-a* は、緑方向、そして、b* は黄方向、-b* は、青方向を示す。測定は、一か所につき、直径5cmの範囲で行い、スライス肉の表面のほぼ全体を覆うように、複数箇所の測定を行って、各測定箇所について、L* 、a* 、b* のそれぞれの値がいずれも下記範囲内であったときに、そ の測定箇所につき、還元型Mbに戻ったものとし、この測定箇所を還元型Mb部位と判断した。スライス肉の上側表面における還元型Mb部位の占める割合(%)を算出した。 測定値の種類測定値の範囲L 40~45 a 38~47b -12~-172.保存後の肉色の評価経時観察は、保存期間が104時間+1週間(約272時間)、104時間+1ケ月(約824時間)の試料5~6につい -12~-172.保存後の肉色の評価経時観察は、保存期間が104時間+1週間(約272時間)、104時間+1ケ月(約824時間)の試料5~6について行った。保存後の肉 色の評価は、スライス肉を袋及びトレイから取り出し、空気に触れさせたときの肉色を肉眼で評価した。 これらの結果を表1及び2に示す。」(【0020】~【0023】)「【表1】 【表2】 」(段落【0023】「【表3】(判決注:実施例2(実施例1と同様に調製))」(段落【0027】)「【表5】(判決注:実施例3(実施例1と同様に調製))」(段落【0032】) 「【表7】(判決注:実施例4(実施例1と同様に調製))」(段落【0037】)d 図面「 」 (イ) 上記によれば、乙179公報には、新鮮な生肉では、ミオグロビンが酸 素と接触することによって生成されたオキシミオグロビンによる鮮赤色を呈しているが、低温で保存しても、生肉中のミオグロビンやオキシミオグロビンのメト化、すなわち、メトミオグロビンの生成は避けられず、肉が褐変化し、従来の保存方法では、生肉を保存後においても、保存前の商品価値を維持するのは難しかったことが記載されており、乙179公報に は、生肉の商品価値を低下させることなく、生肉を冷蔵保存する方法を提供することを目的として、以下の発明をしたことが記載されている。 乙179公報の実施例1には、試料の調製として、牛肉を約2mm程度にスライスし、約250gを肉トレイにスライスが重なることのないように並べ、トレイごと包装して試験用の包装トレイとし、この包装トレイを さらにガスバリア性のある3層ラミネート 肉を約2mm程度にスライスし、約250gを肉トレイにスライスが重なることのないように並べ、トレイごと包装して試験用の包装トレイとし、この包装トレイを さらにガスバリア性のある3層ラミネート袋に、酸素捕捉材(酸化鉄系)とともに、開口部を熱溶着して完全にシールし、これにより、スライスされた牛肉は、酸素捕捉材とともに、空気(酸素)の透過が制限された容器(本実施例では袋状体)中に収納されていることになることが記載されている。そして、この試料を約4℃の冷蔵庫内で保存し、保存中のスライス 肉の表面の色を、トレイを覆うフィルムの表面から分光測色計にて測定することにより、保存期間22時間ないし104時間において経時観察し、還元型ミオグロビンに特徴的である赤紫色を数値化するために、Lab表色系を用いたことが記載されている。実施例1の結果は、【表1】及び【表2】に示されているところ、経過時間が104時間の試料4では、「還元型 Mbの割合(%)」が100%であったことが示されており、さらに、いずれの実施例も還元型ミオグロビンの割合が最終的に97%以上となっている(実施例1~4【表1】、【表3】、【表5】及び【表7】)。 なお、乙179公報の段落【0011】には、容器内の酸素除去手段として、容器内を減圧下に保持したり、容器内の酸素を酸素捕捉材により捕 捉させたり、あるいは容器内の空気を他のガス、例えば酸素以外のガスで ある窒素ガス等で生肉の周囲の雰囲気ガスを置換したりする手段を用いることができ、また、これらを2種以上組み合わせて用いることができることが記載されている。 イ乙179発明の内容及び本件発明と乙179発明との対比上記アによれば、乙179発明の内容については、前記第2の4⑷〔被 控訴人の主張〕 わせて用いることができることが記載されている。 イ乙179発明の内容及び本件発明と乙179発明との対比上記アによれば、乙179発明の内容については、前記第2の4⑷〔被 控訴人の主張〕イのとおりと認められる。 また、本件発明と乙179発明とを対比すると、前記第2の4⑷〔被控訴人の主張〕ウのとおりの一致点及び相違点1ないし4を認めることができる。 なお、控訴人は、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をする ことなく、」も相違点となると主張するが、乙179公報の上記段落【0011】によれば、容器内の酸素除去手段として、酸素捕捉材による手段と窒素ガス等による雰囲気ガスの置換による手段は適宜選択可能で、単独でも組み合わせてもよいものとしており、実施例1は、酸素捕捉材による手段を選択し、窒素ガス等による雰囲気ガスの置換による手段は行っていな いものと認められるから、実質的な相違点とはならないというべきである。 ウ相違点1の容易想到性について(ア) 上記アのとおり、乙179発明は、「生肉中のメトミオグロビン及び/又はオキシミオグロビンを還元型ミオグロビンとした状態で保存する」「生肉の冷蔵保存方法」であって、乙179公報の段落【0004】 の記載にあるとおり、生肉を保存中には、還元型ミオグロビンの状態に維持し、保存後にオキシミオグロビンに変化させて鮮赤色を呈するようにするものである。乙179公報の実施例1にも、牛生肉を還元型の状態で保存することにより、104時間経過後の試料4では、「還元型Mbの割合(%)」が100%であったことが示されている。 他方、本件発明は、スライスした後の保存中の褐変を防止して優れた 肉色を維持した特定加熱食肉製品のローストビーフ及びその製造方法 )」が100%であったことが示されている。 他方、本件発明は、スライスした後の保存中の褐変を防止して優れた 肉色を維持した特定加熱食肉製品のローストビーフ及びその製造方法を提供することを技術的課題としており、当該技術的課題を解決するために、特定加熱食肉製品のローストビーフをスライスした後、所定の手順及び条件、すなわち、酸素化する工程及び非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程にて処理することで、 スライスされた特定加熱食肉製品のローストビーフにおける所定のMb割合を所望の範囲に制御することを技術的特徴とするものである(段落【0008】ないし【0010】)。 そうすると、牛生肉をあくまで還元型ミオグロビンの状態に維持して、保存後に酸素と接触させることにより鮮赤色を呈するようにする 乙179発明と、特定加熱食肉製品のローストビーフの保存中の色を鮮赤色に保つ本件発明とでは技術的思想が全く異なるから、乙179発明を参照して、保存中の色を鮮赤色に保つことを目的とする特定加熱食肉製品のローストビーフの製造方法に適用するという動機付けは存在しない。 仮に、牛生肉の製造方法を、特定加熱食肉製品のローストビーフの製造方法に適用して、還元型ミオグロビンの状態に維持して保存する方法に到達することができたとしても、さらに、保存中の色を鮮赤色に保つことを目的として、相違点2ないし4に係る各構成を導くことを当業者が容易に想到できるものでないことは明らかである。 (イ) 被控訴人の前記第2の4⑷エの主張について被控訴人は、生の牛肉及び特定加熱食肉製品のローストビーフは、ミオグロビンが重要な役割を果して色調改善の効果が良好に発揮されることは自明であるから、乙17、 前記第2の4⑷エの主張について被控訴人は、生の牛肉及び特定加熱食肉製品のローストビーフは、ミオグロビンが重要な役割を果して色調改善の効果が良好に発揮されることは自明であるから、乙17、192、163、162及び12を参照した当業者であれば、乙179発明の生鮮食品である牛肉を、 特定加熱食肉製品のローストビーフに置換することは容易に想到する ことであると主張する。 しかし、乙17(段落【0002】、請求項5)には、牛肉等の食肉の赤身には、赤色色素蛋白質であるミオグロビンが多く含まれていること、ミオグロビンには、鮮赤色の酸素(オキシ)型、紫赤色の還元型、茶褐色のメト型の誘導体が存在しており、食肉やその加工品であ るハムやソーセージ等の食肉加工品の色調に重要な役割を果たしていることが記載され、食肉加工品として、ハム類、ソーセージ類と並び、ローストビーフも記載されており、乙192(段落【0002】、請求項8)にも同様の記載があるが、乙17(請求項1)、乙192(請求項1)は、いずれも亜硝酸塩からなる発色剤に代わる添加剤を使用す る方法の発明に関するものである。 また、乙163(段落【0002】)には、前記⑴のとおり、ローストビーフの二つの製法のうち、後者の特定加熱の製法(特定加熱食肉製品の製法)は本来の色を出そうとすると有利であり一般的な方法であること、このローストビーフをスライスしてから店頭に置くと退色 が著しいという問題があることが指摘されており、乙162(段落【0002】、【0004】)には、「加熱食肉製品」のローストビーフの製造流通が認められるようになったことや、所定の温度等の条件によってローストビーフを製造することにより(特許請求の範囲)、「赤み」のまま流通すること 04】)には、「加熱食肉製品」のローストビーフの製造流通が認められるようになったことや、所定の温度等の条件によってローストビーフを製造することにより(特許請求の範囲)、「赤み」のまま流通することが可能となったこと、乙12(請求項1、段落【0 009】)には、ローストビーフのスライス面が外部から見えるようにすることによって、消費者への有効な視覚アピールをすることが可能な、スライスされたローストビーフの包装方法について記載されている。 これらによれば、「生の牛肉及びローストビーフは、ミオグロビンが 重要な役割を果して色調改善の効果」が発揮されることが認められる としても、上記(ア)で述べたように、牛生肉をあくまで還元型ミオグロビンの状態に維持して、保存後に酸素と接触させることにより鮮赤色を呈するようにする乙179発明から出発して、保存中の色を鮮赤色に保つことを目的とする特定加熱食肉製品のローストビーフの製造方法に適用することが動機付けられるとはいえない。 また、乙12にスライスされたローストビーフを脱酸素材とともに密封することが記載されているからといって、そもそもローストビーフについて言及していない乙179公報に、無数の文献の中から乙12を参照してローストビーフを脱酸素材とともに密封する発想に至ることはないというべきである。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 (ウ) 相違点1についてのまとめ以上のとおり、被控訴人の主張は採用できず、当業者は、相違点1に係る構成を導くことを容易に想到できたものとはいえない。 エ相違点2の容易想到性について 相違点2について検討すると、乙179発明において、牛肉をスライスする際に、「酸素化する工程」を必然的 構成を導くことを容易に想到できたものとはいえない。 エ相違点2の容易想到性について 相違点2について検討すると、乙179発明において、牛肉をスライスする際に、「酸素化する工程」を必然的に有していたとしても、特定加熱食肉製品の発明である本件発明との間に、製造工程における相違点2が存在しないことにはならない。 また、乙179発明から本件発明に到達するためには、相違点1を克 服し、特定加熱食肉製品とする必要があり、その上で、特定加熱食肉製品において「酸素化する工程」を容易に想到できるかを検討しなければならないが、相違点1に係る構成を導くことを容易に想到できたものとはいえない以上、相違点2に係る構成についても容易に想到し得るものではない。 そして、乙13は、肉などのミオグロビンを含む食品において、酸素 減少手段を作動させる前に、食品を冷却するとともに、酸化を維持する期間を設け、鮮やかな赤色を呈するオキシミオグロビンに変化させる工程を備えるものであるので、乙179発明とは牛肉を保存する際の色調の課題において共通するものの、当該技術を考慮したとしても、上記ウ(ア)のとおり、牛生肉をあくまで還元型ミオグロビンの状態に維 持して、保存後に酸素と接触させることにより鮮赤色を呈するようにする乙179発明において、保存中の色を鮮赤色に保つことを目的とする特定加熱食肉製品のローストビーフの製造方法を想到することは困難であり、さらに、予め鮮やかな赤色を呈するオキシミオグロビンに変化させる工程を備えることを当業者が容易に想到し得るともいえ ない。 オ相違点3の容易想到性について上記アのとおり、乙179発明は、「生肉中のメトミオグロビン及び/又はオキシミオグロビンを還元型ミオグロビンとした状態で保存す 到し得るともいえ ない。 オ相違点3の容易想到性について上記アのとおり、乙179発明は、「生肉中のメトミオグロビン及び/又はオキシミオグロビンを還元型ミオグロビンとした状態で保存する」「生肉の冷蔵保存方法」であって、牛生肉を保存中には、還元型ミ オグロビンの状態に維持し、保存後にオキシミオグロビンに変化させて鮮赤色を呈するようにするものである。実施例1には、生肉中のミオグロビンを還元型ミオグロビンの状態に維持するための酸素除去手段として、酸素捕捉材として、「酸化鉄系」のものを用いている。 乙179発明から本件発明に到達するためには、相違点1を克服し、 特定加熱食肉製品とする必要があり、その上で、特定加熱食肉製品において「非鉄系脱酸素材」を用いることを容易に想到できるかを検討しなければならないが、相違点1に係る構成を導くことを容易に想到できたものとはいえない以上、相違点3に係る構成についても容易に想到し得るものではない。 また、乙14には、炭酸ガス発生を伴う脱酸素剤、すなわち、「CO 2発生型の非鉄系脱酸素剤」を使用した場合、従来とは異なり、脱酸素剤によって酸素が吸収され、容器内の酸素濃度が低下しても、同時に炭酸ガス濃度が高まってゆく中では生肉の褐変現象が生じにくく、脱酸素後においても酸素型ミオグロビンの色調である鮮やかに赤い色調に近い赤味を保持することができること(182頁右上欄18行目~ 左下欄6行目)が記載されているものの、当該技術を考慮したとしても、上記のとおり、牛生肉をあくまで還元型ミオグロビンの状態に維持して、保存後に酸素と接触させることにより鮮赤色を呈するようにする乙179発明において、保存中の色を鮮赤色に保つことを目的とする特定加熱食肉製品のローストビーフの製造方 元型ミオグロビンの状態に維持して、保存後に酸素と接触させることにより鮮赤色を呈するようにする乙179発明において、保存中の色を鮮赤色に保つことを目的とする特定加熱食肉製品のローストビーフの製造方法を想到することは 困難であり、さらに、「酸化鉄系」の酸素捕捉材を「非鉄系脱酸素材」に替える動機付けがあるともいえない。 カ相違点4の容易想到性について上記アのとおり、乙179発明は、「生肉中のメトミオグロビン及び/又はオキシミオグロビンを還元型ミオグロビンとした状態で保存 する」「生肉の冷蔵保存方法」であって、牛生肉を保存中には、還元型ミオグロビンの状態に維持し、保存後にオキシミオグロビンに変化させて鮮赤色を呈するようにするものであり、いずれの実施例も還元型ミオグロビンの割合が最終的に97%以上となった(実施例1~4【表1】、【表3】、【表5】、【表7】)ことが示されている。 そうすると、乙179発明は、牛生肉をあくまで還元型ミオグロビンの状態に維持する、すなわち最終的に「還元型Mbの割合(%)」が97%以上となるようにすることを目的としているから、乙179発明に基づいて、特定加熱食肉製品のローストビーフについて、保存中の色を鮮赤色に保つことを目的とし、「包材内の酸素濃度が検出限界以 下の条件下で、所定のミオグロビン割合」にすることは、当業者が容 易に想到し得るものではない。 また、上記において、乙13及び14の技術を考慮したとしても、乙179発明を参照して、特定加熱食肉製品のローストビーフについて、相違点2及び3に係る構成を導く動機付けがあるとはいえない以上、さらに、相違点4に係る「包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下 で、所定のミオグロビン割合」とすることを、当業者が容易に想 いて、相違点2及び3に係る構成を導く動機付けがあるとはいえない以上、さらに、相違点4に係る「包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下 で、所定のミオグロビン割合」とすることを、当業者が容易に想到できるとはいえないことも明らかである。 キ小括以上のとおり、当業者は、相違点1ないし4に係る構成を導くことを容易に想到できたものとはいえないから、被控訴人の主張する無効理由 4は理由がない。 ⑸ 争点2-5(無効理由5(乙180公報に基づく進歩性欠如))についてア乙180公報の記載事項(ア) 乙180公報には、以下の記載がある。 a 特許請求の範囲 「1 アスコルビン酸またはその塩、水酸化アルカリまたは/および炭酸アルカリからなるアルカリ性物質、潮解性物質および第一鉄化合物または/および活性炭からなる添加物からなる鮮度保持剤。」b 発明の詳細な説明「本発明は、酸素による食品の悪変を防止する鮮度保持剤に関する もので、空気中の酸素を吸収するか、空気中の酸素を吸収し、かつ炭酸ガスを発生する鮮度保持剤に関するものである。 食品は、遊離酸素により悪変する。具体的には油脂の酸敗、風味の飛散、変色、細菌、かび類の増殖等が発生する。これらの現象を防止するため従来から種々の対策が施されてきた。 近年において、この遊離酸素を除去するために脱酸素剤が考えられ、 一部使用されつつある。」(1頁1欄22-31行)「本発明は、アスコルビン酸またはこれらの塩類を主成分とする鮮度保持剤で、酸素吸収または酸素吸収し炭酸ガスを発生するものである。」(1頁2欄26-28行)「アスコルビン酸またはその塩の酸素吸収あるいは酸素吸収・炭酸 ガス発生反応は、酸素がない状態においては反応しないため、保存 酸素吸収し炭酸ガスを発生するものである。」(1頁2欄26-28行)「アスコルビン酸またはその塩の酸素吸収あるいは酸素吸収・炭酸 ガス発生反応は、酸素がない状態においては反応しないため、保存中にその能力が低下することがないので、貯蔵、保存が容易で安定している。 本発明の鮮度保持剤の使用に際しては、通気性を有し、ポリエチレン等の熱接着性樹脂膜が形成された紙等を基材とした小袋に充填して 使用する。 また保存は、この小袋を酸素非透過性樹脂を積層した包装材料により包装する。」(2頁4欄22-31行)「実施例1表1に示される組成の鮮度保持剤を通気度400~500秒/10 0mlの和紙/孔あきポリエチレンフィルムからなる袋に充填し、相対湿度50~60%の空気500mlと共にポリプロピレンフィルム(20μ)/*エバールフィルム(17μ)/ポリエチレンフィルム(60μ)の三層フィルムの包装材料に封入した。これを25℃で静置し、24時間保存後の酸素濃度および炭酸ガス濃度を測定した。 この測定結果を表2に示す。 *クラレ製エチレン-ビニルアルコール共重合体の商品名 」(2頁4欄35行-3頁6欄2行、表1、2)「実施例 3表1に示した鮮度保持剤(B)(D)をそれぞれ実施例1に用いた袋と同じ袋に密封し、牛肉と共に包装し保存テストを行なった。 具体的には、鮮度保持剤(B)(D)をそれぞれ発泡スチロール製ト レイに盛られストレツチ包装された牛肉150gと共に塩化ビニリデンコートナイロンフィルム(15μ)/ポリエチレンフィルム(40μ)よりなる積層フィルムでヘッドスペースが500mlになるように密封包装した。 保存条件は3℃で、保存期間は4週間であった。また同時に鮮度保 持剤(E)を μ)/ポリエチレンフィルム(40μ)よりなる積層フィルムでヘッドスペースが500mlになるように密封包装した。 保存条件は3℃で、保存期間は4週間であった。また同時に鮮度保 持剤(E)を用いずに含気包装による保存テストも行なった。 この結果を以下の表に示す。 (イ)牛肉の色変化 外側の積層フィルムを取り除くと本発明の鮮度保持剤(B)(D)を 用いたものは短時間で赤紫色から鮮紅色に変化したが、鮮度保持剤を用いない含気包装のものは褐色のままであった。」(4頁7欄12行-8欄24行)(イ) 上記によれば、乙180公報には、酸素による食品の悪変を防止する 鮮度保持剤であって、酸素吸収または酸素吸収し炭酸ガスを発生するものが記載されており、具体的には「アスコルビン酸またはその塩、水酸化アルカリまたは/および炭酸アルカリからなるアルカリ性物質、潮解性物質および第一鉄化合物または/および活性炭からなる添加物からなる鮮度保持剤」が記載されている。 そして、実施例3には、実施例1の表1に示された鮮度保持剤(B)(D)(「L-アスコルビン酸ナトリウム」を含有し、上記鮮度保持剤に相当する。)を、トレイに盛られた牛肉と共に積層フィルムの袋に密封包装したことが記載されている。 ここで、上記鮮度保持剤の主成分である「アスコルビン酸またはこれら の塩」は、「非鉄系」であるから、鮮度保持剤は「非鉄系脱酸素材」に相当し、実施例3の「積層フィルムの袋」は「酸素非透過性樹脂を積層した包装材料」(2頁4欄30-31行)であるから、「ガスバリア性を有する包材」に相当する。 イ乙180発明の内容及び本件発明と乙180発明との対比 上記アによれば、乙180発明の内容については、前記第2の4⑸〔被控訴 であるから、「ガスバリア性を有する包材」に相当する。 イ乙180発明の内容及び本件発明と乙180発明との対比 上記アによれば、乙180発明の内容については、前記第2の4⑸〔被控訴人の主張〕イのとおりと認められる。 また、本件発明と乙180発明とを対比すると、前記第2の4⑸〔被控訴人の主張〕ウのとおりの一致点及び相違点1ないし4を認めることができる。 なお、控訴人は、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく、」も相違点になると主張するが、乙180公報には、「アスコルビン酸またはその塩の酸素吸収あるいは酸素吸収・炭酸ガス発生反応は、酸素がない状態においては反応しない」と記載されているように(2頁4欄22-24行)、酸素下で使用されるものであるし、ガス置換の工程は記載 も示唆もされていないことから、上記の点は実質的な相違点とはならない というべきである。 ウ相違点1の容易想到性について上記アのとおり、乙180発明は、酸素による食品の悪変を防止する鮮度保持剤に関するものであり、悪変には「変色」も含まれているものの(1頁1欄26-27行)、実施例3において、「外側の積層フィルムを取り除 くと本発明の鮮度保持剤(B)(D)を用いたものは短時間で赤紫色から鮮紅色に変化した」と記載されているように、保存中に鮮赤色に保つことを目的としているわけではなく、むしろ、牛肉を保存中には赤紫色の状態、すなわち、還元型ミオグロビンの状態に維持し、保存後に酸素と接触させることにより鮮赤色を呈するようにするものといえる。 そうすると、前記⑷ウと同様に、当業者は、相違点1に係る構成を導くことを容易に想到できたものとはいえない。 エ相違点2の容易想到性について上記アのとお うにするものといえる。 そうすると、前記⑷ウと同様に、当業者は、相違点1に係る構成を導くことを容易に想到できたものとはいえない。 エ相違点2の容易想到性について上記アのとおり、乙180公報には、牛肉においてさえ、スライスする工程については、記載も示唆もされていないものである。 そして、乙180発明から本件発明に到達するためには、相違点1を克服し、特定加熱食肉製品とする必要があり、その上で、特定加熱食肉製品において、スライスする工程を容易に想到できるかを検討しなければならないから、たとえ、生の牛肉をスライスしてトレイに並べる工程が周知技術であったとしても、相違点1に係る構成を導くことを容易に想到できた ものとはいえない以上、相違点2に係る構成についても容易に想到し得るものではないというべきである。 オ相違点4の容易想到性について上記アのとおり、乙180発明は、牛肉を保存中には、赤紫色の状態、すなわち、還元型ミオグロビンの状態に維持し、保存後に酸素と接触させ ることにより鮮赤色を呈するようにするものであるから、前記と同様に、 乙180発明に基づいて、特定加熱食肉製品のローストビーフについて、保存中の色を鮮赤色に保つことを目的とし、「包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、所定のミオグロビン割合」にすることは、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 カ小括 以上のとおり、当業者は、少なくとも相違点1、2及び4に係る構成を導くことを容易に想到できたものとはいえないから、被控訴人の主張する無効理由5は理由がない。 ⑹ 争点2-6(無効理由6(明確性要件違反))についてア構成要件Bについて (ア) 本件発明の構成要件Bに係る「酸素化する工程 ないから、被控訴人の主張する無効理由5は理由がない。 ⑹ 争点2-6(無効理由6(明確性要件違反))についてア構成要件Bについて (ア) 本件発明の構成要件Bに係る「酸素化する工程」の意味については、前記2⑴のとおりである。 (イ) 本件明細書には、補正の上で引用した原判決第3の1⑴のとおり、「酸素化の処理条件については、使用する肉の種類や部位、個体差によるミオグロビン総量の違いにより条件を設定することができる。・・・」(段落 【0024】)と記載されており、当業者であれば肉質等の条件に応じて製造条件を設定し所望のミオグロビン割合のローストビーフを製造できることを前提に、ごく僅かな時間では「酸素化する工程」に当たらないと判断することができ、「酸素化する工程」は不明確とはいえない。 (ウ) 被控訴人は、前記第2の4⑹アのとおり、本件発明の構成要件Bの「酸 素化する工程」は、酸素濃度も酸素にさらす時間も規定されていないが、本件明細書に記載された1時間程度空気中にさらすものであるか、空気と短時間接触するものを含むのか不明であると主張する。 しかし、「酸素化する工程」の意味は、上記(ア)及び(イ)のとおりであり、食肉の酸素化(ブルーミング)という現象は、当業者の技術常識であるか ら、酸素化の工程に必要な処理時間は、紫赤色から鮮赤色に変化すること が確認されるのに十分であるが、褐変に至らない時間と当業者は明確に理解でき、酸素濃度や酸素にさらす時間を規定しなくても、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確であるとはいえない。 被控訴人は、ごくわずかの量の還元型ミオグロビンを酸素化してオキ シミオグロビンにするものも含むと解する場合に、構成要件D所定のミオグロビン割合 不利益を及ぼすほど不明確であるとはいえない。 被控訴人は、ごくわずかの量の還元型ミオグロビンを酸素化してオキ シミオグロビンにするものも含むと解する場合に、構成要件D所定のミオグロビン割合を維持することが困難であることを根拠としているが、紫赤色から鮮赤色に変化することが確認されるのに十分とはいえない、ごく僅かな時間(例えば30秒以内)空気中の酸素と触れる場合についてまで、本件発明の「酸素化する工程」に該当するといえないことは、上記 (ア)及び(イ)のとおりである。 また、構成要件Bの「酸素化する工程」を満たしても、構成要件Dの本件ミオグロビン割合を維持されない場合が仮にあったとしても、それは構成要件Dを満たさず、本件発明に該当しないものとなるだけであり、そのような場合が存在し得ることをもって、構成要件Bの「酸素化する工程」 の意味するところが不明確であるということにはならないというべきである。 イ構成要件Dについて(ア) 本件発明の構成要件Dの包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、特定加熱食肉製品のミオグロビンの割合が、本件ミオグロビン割合にな っていることに関しては、前記2⑶のとおりである。 (イ) 被控訴人は、本件明細書の【表1】に、鉄系脱酸素材を50.0%及び42.9%の割合で使用するものについて、「包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下」であっても所定のミオグロビン割合の範囲を逸脱するものも含まれている旨を主張する。 しかし、上記(ア)のとおり、優れた色調が永続しないことは、本件明細書 も前提としていることであるから、「包材内の酸素濃度が検出限界以下」の「全ての期間で満足する必要がある」と当業者が理解することはなく、逆に、全ての期間において本件ミオグロビン割合の 書 も前提としていることであるから、「包材内の酸素濃度が検出限界以下」の「全ての期間で満足する必要がある」と当業者が理解することはなく、逆に、全ての期間において本件ミオグロビン割合の範囲を逸脱する場合は、本件発明の範囲に含まれないものとなることが明らかであるから、第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確であるということはできない。 ウ小括以上のとおり、本件発明の構成要件B及びDについて、不明確であるとする被控訴人の主張はいずれも採用できず、被控訴人の主張する無効理由6は理由がない。 ⑺ 争点2-7(無効理由7(実施可能要件違反))について ア被控訴人は、前記第2の4⑺のとおり、構成要件Dの所定のミオグロビン割合となっている状態が、全ての期間で満足する必要があると解されると主張する。 しかし、本件発明の構成要件Dについて、前記2⑶アのとおり、酸素濃度が検出限界以下に達している期間において、本件ミオグロビン割合が満 たされる時点があれば足りるから、本件明細書の記載につき、包材内の酸素濃度が検出限界以下の全ての期間で満足する必要があると当業者が理解することはないというべきである。被控訴人の主張は前提を欠くものというべきである。 また、本件発明は、「非鉄系脱酸素材」を使用する場合に、鉄系脱酸素 材の割合が高い場合であっても必ず所定のミオグロビン割合を満たすと規定されたものではないから、本件明細書の実施例1において、鉄系脱酸素材を50.0%の割合で使用した場合に、所定のミオグロビン割合を満たさなかったとしても、所定のミオグロビン割合を満たさない特定加熱食肉製品は、そもそも本件発明の技術的範囲外であることが明らかであるか ら、本件明細書の実施可能要件とは関係しないものと 合を満たさなかったとしても、所定のミオグロビン割合を満たさない特定加熱食肉製品は、そもそも本件発明の技術的範囲外であることが明らかであるか ら、本件明細書の実施可能要件とは関係しないものといえる。 イ本件明細書の段落【0036】には、「本工程では、鉄系脱酸素材を補助的に利用して、・・・酸素を吸収する処理時間を短縮することができる。 鉄系脱酸素材は、非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の合計量を100%としたときに37.5%以下とすることが好ましい。鉄系脱酸素材をこの範囲で使用することで、上述した褐変を防止しながら脱酸素処理の時間 を短縮できる。」と記載されており、鉄系脱酸素材の使用はあくまでも補助的なものであり、必須の構成ではないことが明記されている。 さらに、本件明細書の実施例1の【表1】の結果からすれば、鉄系脱酸素材の割合を増やせば、本件ミオグロビン割合の範囲内に収まりにくくなるという全体的な傾向が確認でき、当業者であれば、この全体的な 傾向から、本件ミオグロビン割合に収めやすい適切な鉄系脱酸素材の割合を設定できるから、発明の詳細な説明の記載及び本件出願当時の技術常識に基づいて、本件発明は、過度の試行錯誤を要することなく実施可能であると認められる。鉄系脱酸素材を50.0%の割合で使用した場合に、所定のミオグロビン割合を満たす実施例が存在しないことをもっ て、実施可能要件に適合しないとする被控訴人の主張は理由がないというべきである。 ウ小括以上のとおり、本件発明に実施可能要件違反があるとする被控訴人の主張は採用できず、被控訴人の主張する無効理由7は理由がない。 ⑻ 争点2-8(無効理由8(サポート要件違反))についてア本件発明の技術的課題(ア) 本件発明の技術的意義 被控訴人の主張は採用できず、被控訴人の主張する無効理由7は理由がない。 ⑻ 争点2-8(無効理由8(サポート要件違反))についてア本件発明の技術的課題(ア) 本件発明の技術的意義は、補正の上で引用した原判決第3の1⑵のとおりであるところ、本件発明は、スライスした後の保存中の褐変を防止して優れた肉色を維持した特定加熱食肉製品及びその製造方法を提供 することを技術的課題とするものと認められる。 (イ) 非鉄系脱酸素材のタイプについては、補正の上で引用した原判決第3の1⑴のとおり、本件明細書の段落【0034】ないし【0036】には、非鉄系脱酸素材及び鉄系脱酸素材の技術的意義について記載されており、これによれば、当業者は、非鉄系脱酸素材の使用によって肉色を維持するものと理解し、また、鉄系脱酸素材では酸素吸収速度が速すぎ るものとして、あえて非鉄系脱酸素材を用いることについても理解できるということができる。実際に、別紙のとおりの本件明細書の実施例1の【表1】によれば、鉄系脱酸素材の割合を低くすればするほど、所定のミオグロビン割合の範囲内に収まりやすくなっていることが理解できるものである。 (ウ) 被控訴人は、前記第2の4⑻イのとおり、非鉄系脱酸素材のタイプについて主張するところ、本件明細書の段落【0032】の記載から、炭酸ガスを発生するタイプを使用することは、あくまで包材の収縮といった色とは別の問題を解決するために使用するものと理解することができる。そして、段落【0033】には、オキシーター、タモツ、ワンダ ーキープ、サンソレスといった炭酸ガスを発生しないタイプの非鉄系脱酸素材も例示されているから(甲222ないし225)、炭酸ガス発生の有無にかかわらず、非鉄系脱酸素材であれば作用効果 、ワンダ ーキープ、サンソレスといった炭酸ガスを発生しないタイプの非鉄系脱酸素材も例示されているから(甲222ないし225)、炭酸ガス発生の有無にかかわらず、非鉄系脱酸素材であれば作用効果を奏し、上記課題を解決し得ることについて、当業者が理解できる程度の十分な開示があるものといえる。 なお、被控訴人の主張する乙14(特開昭60-221031号公報)には、以下の記載がある。 「炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいはN2ガス、CO2ガス置換によって容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に達すると生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤味が失われて褐変す る。」(2頁右上欄6~10行目) 「しかし、本発明の特徴である炭酸ガス発生をともなう脱酸素剤を使用した場合、従来と全く異なる色調の変化が生じることが見い出された。 すなわち、脱酸素剤によつて酸素が吸収され、容器内の酸素濃度が低下しても、同時に炭酸ガス濃度が高まつてゆく中では生肉の褐変現象が生じにくく、脱酸素後においても酸素型ミオグロビンの色調であるあざや かに赤い色調に近い赤味を保持することが出来ることである。」(2頁右上欄下から3行~左下欄6行)しかし、上記記載は、本件発明のように、「酸素化する工程」を経たものについて言及するものではないから、乙14の記載を根拠として、本件発明において、炭酸ガス発生の有無にかかわらず、非鉄系脱酸素材で あれば作用効果を奏し、上記課題を解決し得ることについて、当業者が理解できる程度の十分な開示があるとする上記判断を左右するものではない。 イ構成要件Bについて(ア) 補正の上で引用した原判決第3の1⑴のとおり、本件明細書の段落 【0024】は、「また、酸素化の処理条件につ 示があるとする上記判断を左右するものではない。 イ構成要件Bについて(ア) 補正の上で引用した原判決第3の1⑴のとおり、本件明細書の段落 【0024】は、「また、酸素化の処理条件については、使用する肉の種類や部位、個体差によるミオグロビン総量の違いにより条件を設定することができる。例えば、酸素化処理は、特定加熱食肉製品の断面におけるスライス直後の紫赤色が鮮赤色に変化する状態を目視により確認し、十分に赤色を呈した段階で処理を終了しても良い。」とし、酸素化の処 理条件は適宜設定でき、時間ではなく目視確認でも構わないとしているところである。 そして、目視確認をすれば、甲189(事実実験公正証書)にも示されるように、薄いローストビーフスライスなら2分半程度の短期間でもa値が向上して赤くなることは、当業者において、実験をすれば直ちに 分かることといえる。 したがって、本件明細書には、本件発明の構成要件Bである「酸素化する工程」について、前記の技術的課題を解決できる程度の十分な記載があるというべきである。 また、構成要件Bの「酸素化する工程」を満たしても、構成要件Dのミオグロビン割合を維持されない場合が仮にあったとしても、既に述べ たとおり、それは構成要件Dを満たさず、本件発明に該当しないものとなるだけであり、そのような場合が存在し得ることをもって、本件発明全体にわたり、課題を解決することができないということにはならないというべきである。 (イ) 被控訴人は、本件明細書の段落【0057】によれば、「b*値がa* 値を上回」ることが褐変の指標とされているところ、甲189で示された各サンプルのL*、a*値、b*の値をみると(甲190)、1-Bないし9-Bのいずれにおいても、b*の れば、「b*値がa* 値を上回」ることが褐変の指標とされているところ、甲189で示された各サンプルのL*、a*値、b*の値をみると(甲190)、1-Bないし9-Bのいずれにおいても、b*の値はa*の値より大きいかほぼ同じであり、当業者が、甲189で示された2分30秒後のローストビーフの色調の変化を、本件明細書の段落【0024】でいうところの「ス ライス直後の紫赤色が鮮赤色に変化する状態」として捉えることはないと主張する。 しかし、本件明細書の段落【0057】には、「a*値及びb*値が著しく低下し、且つ、b*値がa*値を上回り、褐変していることが判る」と記載されており、「b*値がa*値を上回」ることのみをもって、褐変 の指標としているわけではない。 また、甲190のサンプルのうち、b*値がa*値を上回っている3-B、7-Bないし9-Bのスライスから2分50秒後の写真(甲189の資料33 、53、61参照)を目視確認すると、褐変していないことが認識できる。また、甲189のサンプルの測定時間はせいぜい2分 50秒であり、褐変するほどの静置時間でないことも明らかである。そ うすると、甲189について、a*値及びb*値の数値をもって、「スライス直後の紫赤色が鮮赤色に変化する状態」として捉えることはないとする被控訴人の主張は、理由がないというべきである。 ウ構成要件Dについて(ア) 被控訴人は、前記第2の4⑻エのとおり、構成要件Dの所定のミオグ ロビン割合となっている状態が、全ての期間で満足する必要があると解されることを前提とした主張をするが、構成要件Dの意義については既に検討したとおりであり、「包材内の酸素濃度が検出限界以下」の「全ての期間で満足する必要がある」と当業者が理解することはないか ると解されることを前提とした主張をするが、構成要件Dの意義については既に検討したとおりであり、「包材内の酸素濃度が検出限界以下」の「全ての期間で満足する必要がある」と当業者が理解することはないから、被控訴人の主張は前提を欠くというべきである。 また、被控訴人は、前記第2の4⑻オのとおり主張するが、既に述べたとおり、本件発明がそもそも鉄系比率50.0%や42.9%で必ず所定のミオグロビン割合を満たすと規定されたものではなく、本件明細書の段落【0036】によれば、鉄系脱酸素材の使用はあくまでも補助的なものであり、必須の構成ではないこと、さらに、本件明細書の実施 例1の【表1】の結果からすれば、鉄系脱酸素材の割合を増やせば、本件ミオグロビン割合の範囲内に収まりにくくなるという全体的な傾向が確認できるというべきである。 そうすると、当業者であれば、非鉄系脱酸素材の使用が本件発明の技術課題の解決のために必須であり、かつ、上記の全体的な傾向から、本 件ミオグロビン割合に収めやすい適切な鉄系脱酸素材の割合を設定できるから、発明の詳細な説明の記載及び本件特許の出願当時の技術常識に基づいて、本件発明の技術的課題を解決できることを認識し得るものといえる。 (イ) 被控訴人の主張は、本件発明の構成要件Dを満たさない場合に、本件 発明の技術的課題を解決できないとするものであるが、構成要件Dを満 たさない場合には、本件発明の範囲外となるから、本件発明のサポート要件違反とは無関係であり、被控訴人の主張は前提において誤りがある。 エ小括以上のとおり、本件発明の特許にサポート要件違反があるとする被控訴人の主張はいずれも採用できず、被控訴人の主張する無効理由8は理由が ない。 4 控訴人は、シンコウフーズから 。 エ小括以上のとおり、本件発明の特許にサポート要件違反があるとする被控訴人の主張はいずれも採用できず、被控訴人の主張する無効理由8は理由が ない。 4 控訴人は、シンコウフーズから損害賠償請求権を取得したか(争点3)についての判断は、以下のとおりである。 被控訴人は、補正の上で引用した原判決第2の4⑸及び前記第2の4⑼のとおり、シンコウフーズから控訴人への債権譲渡は許されない訴訟信託である旨 を主張する。 信託法10条は「信託は、訴訟行為をさせることを主たる目的としてすることができない。」と規定し、その趣旨は、弁護士代理の原則や弁護士法72条に反する脱法的な行為、すなわち、他人間の法的紛争に介入し、司法機関を利用しつつ不当な利益を追求する行為について信託の形式を利用して行うことを禁 止するものと解される。しかし、上記債権譲渡は、特許権者であるシンコウフーズから、その特許についての独占的通常実施権を有する控訴人に対してされたものであり、上記債権譲渡が直ちに信託契約であると認めるに足りる証拠はない。しかも、本件に係る損害賠償請求権については、令和2年6月9日付け控訴人代理人弁護士作成の通知書により、債権譲渡がされた旨の通知が被控訴 人に対してされ、同通知書は同月10日に被控訴人に到達している(甲5Aの1・2)。そして、令和5年6月20日付け確認書(甲227)によれば、控訴人の代表取締役により、令和2年6月12日付けで本件特許権に係る損害賠償請求権を譲渡した旨が確認されているところ、これらは、控訴人の代理人である弁護士が関与してされたものであり、別件訴訟では、シンコウフーズも控訴 人(共同原告)として訴訟に関与していることにもよれば、譲受人である控訴 人のこれらの行為は、無関係 人である弁護士が関与してされたものであり、別件訴訟では、シンコウフーズも控訴 人(共同原告)として訴訟に関与していることにもよれば、譲受人である控訴 人のこれらの行為は、無関係の他人の法的紛争に介入するものでも、不当な利益を追求するものともいえないというべきである。 これらの事情に照らすと、上記債権譲渡について、通謀してなされた虚偽の意思表示ということはできず、訴訟行為をさせることを主たる目的としてされたものであるとも、信託法10条により禁止される不当な目的ないし利益の実 現を企図するものとも認められないというべきである。 したがって、シンコウフーズから控訴人への債権譲渡は有効であると解すべきであるから、被控訴人の上記主張は採用することができない。 5 事案に鑑み、消滅時効(争点5)について、先に判断する。 被控訴人は、前記第2の4⑾のとおり、本件発明に係る特許の損害賠償請求 権につき、その請求項5に基づく主張は令和4年7月15日付け訴えの追加的変更申立書で追加されたところ、控訴人は平成30年12月24日に被控訴人各製品の販売行為を知り、加害者及び損害を知ったから、平成30年12月から令和元年7月14日までの分は3年の経過により時効消滅したと主張する。 しかし、本件訴え提起により控訴人による被控訴人各製品に対する本件特許 権に基づく権利行使の意思が明らかにされたものであるから、控訴人による本件訴訟の係属中、本件特許権の請求項5(本件発明)に基づく損害賠償請求権についても催告が継続していたものと解するのが相当であり、その後の口頭弁論期日において、控訴人が上記請求項5に基づく請求を追加したことにより、同請求権の消滅時効につき中断の効力が確定的に生じたものと解すべきである (最高 のと解するのが相当であり、その後の口頭弁論期日において、控訴人が上記請求項5に基づく請求を追加したことにより、同請求権の消滅時効につき中断の効力が確定的に生じたものと解すべきである (最高裁平成6年(オ)第857号同10年12月17日第一小法廷判決(裁判集民事190号889頁参照))。 そうすると、補正の上で引用した原判決第2の2⑼のとおり、本件訴えは令和2年6月12日に提起されたものであるから、本件の損害算定期間である平成30年12月から令和2年1月までの本件発明に係る特許の損害賠償請求権 につき、消滅時効が成立することはない。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 6 損害額(争点4)についての判断は、以下のとおりである。 ⑴ 被控訴人は、前記第2の4⑽のとおり、控訴人には特許法102条2項に係る損害が発生していない旨を主張する。 しかし、被控訴人各製品がイトーヨーカ堂でしか販売されていないオリジ ナル商品であり、控訴人がイトーヨーカ堂の親会社であるセブン&アイとライバル関係にあるイオンに対し本件発明の実施品を販売していたものとしても、そのことから直ちに、控訴人において本件特許権の侵害より控訴人において損害が発生していないものと認めることはできないというべきであり、被控訴人が主張する事情は、特許法102条2項の損害の額を覆滅させる事 情において適切に考慮されれば足りるものというべきである。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑵ 被控訴人各製品の販売数量が●●●●●●個であること、被控訴人各製品の利益率が●●%であることについて、当事者間にいずれも争いがない。 ⑶ 証拠(乙215)によれば、被控訴人各製品の1個当たりの単価は● 訴人各製品の販売数量が●●●●●●個であること、被控訴人各製品の利益率が●●%であることについて、当事者間にいずれも争いがない。 ⑶ 証拠(乙215)によれば、被控訴人各製品の1個当たりの単価は●●● 円であることが認められる。 上記⑵の被控訴人の販売個数に、上記単価及び利益率を乗ずると、被控訴人各製品についての限界利益は、●●●●●●●●●円(1円未満切捨て。 以下同様である。)となる。 ⑷ 推定の覆滅事由について 特許法102条2項における推定の覆滅については、侵害者が主張立証責任を負うものであり、侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情、例えば、①特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在すること(市場の非同一性)、②市場における競合品の存在、③侵害者の営業努力(ブランド力、宣伝広告)、④侵害品の性能(機能、デザイン等特許 発明以外の特徴)などの事情がこれに当たるところ、被控訴人は、前記第2 の4⑽〔被控訴人の主張〕オのとおり、特許法102条2項に係る損害の額について覆滅事由が存在する旨を主張するので、以下検討する。 ア被控訴人各製品が販売された期間である平成30年12月から令和2年1月までの間に、加熱食肉製品ではあるものの、複数の大手メーカーから4種類のスライスしたローストビーフが販売されていたほか(乙133な いし136)、上記の一部の期間については、他にも4種類の上記同種の製品が販売されていた(乙137ないし140)。これらは、控訴人の本件発明の実施品と競合する製品であるものと認められる。 この点に関し、控訴人は、本件発明が特定加熱食肉製品に関するものであることから、加熱食肉製品は競合品に当たらないと主張する。 しかしながら、スライ する製品であるものと認められる。 この点に関し、控訴人は、本件発明が特定加熱食肉製品に関するものであることから、加熱食肉製品は競合品に当たらないと主張する。 しかしながら、スライスされたローストビーフを購入する一般消費者がそれを購入する際に特定加熱食肉製品であるか加熱食肉製品であるかを区別して購入することを認めるに足りる的確な証拠はないから、競合品というためには、スライスされたローストビーフであれば十分であるというべきである。 イまた、被控訴人は昭和47年から取引を開始し、被控訴人各製品はイトーヨーカ堂とのチームMD方式の成果として被控訴人が独占的に供給してきたオリジナル商品であるところ、これら被控訴人とイトーヨーカ堂との関係の構築や、チームMD方式としての開発の経緯にも照らすと、被控訴人が被控訴人各製品の販売により得た利益は、上記イトーヨーカ堂との関 係を構築し、上記オリジナル商品として独占的に供給してきたという被控訴人の営業努力が相当程度影響しているものとみられる。 ウさらに、本件発明の技術的意義については、補正の上で引用した原判決第3の1⑵のとおり、本件ミオグロビン割合という望ましい赤色の色調を保つところにあり、既に検討したとおりスライスしたローストビーフ製品 が本件特許の出願時に知られていること、本件特許に係る発明の意義が上 記色調の点に限られることを考慮するならば、被控訴人各製品の販売における本件発明の効果の影響は限定的であるというべきである。しかも、前記2⑵ウのとおり、別件被控訴人各製品については、製品の販売が開始された時点においては酸素濃度が検出限界値に達していないものもあることから、被控訴人各製品の販売についての本件発明に係る特許の効果が与え る影 り、別件被控訴人各製品については、製品の販売が開始された時点においては酸素濃度が検出限界値に達していないものもあることから、被控訴人各製品の販売についての本件発明に係る特許の効果が与え る影響はさらに限定的に考えるべきである。 エこれら事情を総合考慮すると、被控訴人が被控訴人各製品の販売により得た利益の80%については、特許法102条2項の損害額についての推定が覆滅されるというべきである。 そうすると、前記⑶の金額に0.2を乗じることとなるところ、同金額 を計算すると●●●●●●●●円となる。 ⑸ 控訴人の求める消費税相当額の加算につき検討する。 消費税は、国内において事業者が行った資産の譲渡等に課されるものであるところ(消費税法4条1項)、消費税法基本通達(5-2-5)において、「損害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に伴い受け るものは、資産の譲渡等の対価に該当しないが、例えば、次に掲げる損害賠償金のように、その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるものは資産の譲渡等の対価に該当することに留意する。・・・(2)無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金」とされていることにも照らすと、前記(2)の趣旨に鑑みると、損害賠 償金につき課される消費税については、控訴人らの被った(被ることとなる)損害に当たるものとして、消費税相当額につき加算されるべきものと解される。したがって、特許法102条2項にいう「侵害の行為により利益を受けているとき」にいう「利益」には、上記に照らし10%の消費税に相当する金員も含まれると解するのが相当である。 そうすると、消費税相当額として前記金額の10%を加算すべきであり、 前記⑷の 」にいう「利益」には、上記に照らし10%の消費税に相当する金員も含まれると解するのが相当である。 そうすると、消費税相当額として前記金額の10%を加算すべきであり、 前記⑷の金額に1.1を乗じることとすると、同金額は●●●●●●●●円となる。 ⑹ 本件事案の性質・内容、本件の認容額、原審及び当審の審理経過等諸般の事情を斟酌すると、被控訴人の本件特許権の侵害による不法行為と相当因果関係のある弁護士・弁理士費用相当額は、●●万円と認めるのが相当である。 そうすると、前記⑸の金額にこれを加算すると、315万7627円となる。 ⑺ 遅延損害金については、令和2年1月31日までに発生した損害賠償請求権に係るものであるから、平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合によることとなる。 そうすると、被控訴人は、控訴人に対し、315万7627円及びこれに対する不法行為の日の後である令和2年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うべきである(主文第2項)が、その余の控訴人の請求については棄却すべきである(主文第3項)。 7 結論 よって、上記と異なる原判決は相当でないからこれを取り消すこととして(主文第1項)、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官東海林 保 裁判官今井弘晃 裁判官水野正 今井弘晃 裁判官水野正則 (別紙特許公報写し省略)

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