平成19年8月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成18年(ワ)第443号損害賠償請求事件(以下「第1事件」という。)平成18年(ワ)第26353号損害賠償請求事件(以下「第2事件」という。)口頭弁論終結日平成19年6月4日判決主文 第1事件原告兼第2事件原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は第1事件原告兼第2事件原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告らは,第1事件原告兼第2事件原告に対し,各自1億1000万円及びこれに対する平成16年3月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,脳出血のため第1事件被告(医療法人社団A。以下「被告法人」という。)の開設するB脳神経外科病院(以下「被告病院」という。)に搬送された後,開頭血腫除去手術を受けた第1事件原告兼第2事件原告(以下「原告」という。)が,その後も障害が残ったことについて,被告病院の担当医師らには,①入院後速やかに血圧(以下では,ことわりのないかぎり収縮期血圧をいう。)を下降させなかった過失,②再出血に対して適時に検査を行い,手術に進むことを怠った過失があり,その結果,原告に右片麻痺等の障害が残ったと主張して,被告法人及び被告病院の院長である第2事件被告(C。以下「被告C医師」という。)に対し,不法行為責任に基づき,損害賠償金の一部の支払を請求する事案である。 前提事実(証拠を掲記しない事実は当事者間に争いがない。)(1)当事者等ア原告は,昭和27年10月28日生まれの男性である。 イ被告法人は,東京都世田谷区において被告病院を開設していた医療法人であるが,平成19年2月20日,社員総会の決議により解散した(弁論の全趣旨)。 また,被告C医師は,被告病院の院長として院内の イ被告法人は,東京都世田谷区において被告病院を開設していた医療法人であるが,平成19年2月20日,社員総会の決議により解散した(弁論の全趣旨)。 また,被告C医師は,被告病院の院長として院内の医師,看護師を監督すると共に,脳外科医として,診療に従事していたものである。 (2)被告病院における診療経過ア原告の入院原告は,平成16年3月22日(以下日付のみを記載する場合は平成16年3月を指す。)午後7時40分ころ,勤務する会社で電話をかけている際に,急に呂律が回らなくなり,同日午後9時ころ,救急車で被告病院に搬送された。 イ入院後の経過(ア)被告病院へ搬送されて後,原告は直ちにCT検査を受け,左被殻から放射冠に及ぶ脳内出血(出血量約22ml)が確認された。また,軽度意識障害が見られ,失語症,右上下肢運動麻痺,右上下肢知覚障害も認められた(乙A1・4ないし6頁,乙A2)。 (イ)原告は,22日午後9時30分ころ,病室に入室し,ニカルピン(降圧剤,40mg及び生理食塩水100mlを5ml/h)の投与が開始された(乙A1・111,155頁)(ウ)22日午後10時30分,原告の血圧値が降圧不十分であったため,ニカルピンは7ml/hに増量され,以降,同日午後11時には8ml/h,翌23日午前0時には10ml/h,同日午前1時には12ml/h,同日午前2時には14ml/hと漸次増量された(乙A1・6, 111,155,156頁)。 (エ)23日午前2時ころ,原告は,瞳孔不同,意識レベル低下,吐き気,不穏等が見られたため,再度CT検査が行われたところ,脳内出血の拡大(出血量98ml)が確認されたことから,原告に対する緊急開頭血腫除去術が行われることとなった。 (オ)23日午前2時35分,ニカルピンは20ml/hに増量され,ア 行われたところ,脳内出血の拡大(出血量98ml)が確認されたことから,原告に対する緊急開頭血腫除去術が行われることとなった。 (オ)23日午前2時35分,ニカルピンは20ml/hに増量され,アダラート(降圧剤)1/2カプセルも舌下投与された(乙A1・156頁)。 (カ)その後,家族に対し経過,状況が説明され,承諾を得た後,23日午前4時25分ころから5時10分ころまで,原告に対し,脳血管撮影検査が実施された(乙A1・35,146,156頁,乙A4の1ないし6)。 (キ)その後,家族の承諾を得た後,23日午前6時30分,原告は手術室へ移動し,同日午前9時06分から午後3時59分まで,原告に対し,緊急開頭血腫除去術が行われた。手術の結果,約2分の1の血腫は除去された(乙A1・38ないし40,44ないし46,156頁)。 (ケ)29日,原告に対するCT検査が実施され,脳浮腫が増強していることが確認されたため,同日午後6時46分から翌30日午前0時25分まで,原告に対し,開頭血腫除去術,外減圧術が行われた。手術の結果,血腫は90%以上が除去された(乙A1・11,48ないし55頁)。 (コ)その後,原告は,平成16年6月5日,右片麻痺,失語症等を残したまま,リハビリのため,D脳神経外科病院に転院した(乙A1・33,63頁)。 (サ)被告病院におけるその余の原告の診療経過については,別紙診療経過一覧表記載のとおりである(当事者間に争いのある部分を除く。)。 (3)その後の診断平成18年8月8日,原告は,医療法人社団D脳神経外科病院において,脳出血,症候性てんかんにより,右片麻痺,失語症が残存しており,IQは60程度と診断された(甲C2)。 争点 (1)血圧管理義務違反(原告の主張)ア注意義務高血圧性脳内出血に対して て,脳出血,症候性てんかんにより,右片麻痺,失語症が残存しており,IQは60程度と診断された(甲C2)。 争点 (1)血圧管理義務違反(原告の主張)ア注意義務高血圧性脳内出血に対しては,再出血防止のため血圧管理が重要であり,発症から6時間以内程度の間は出血の持続あるいは再出血による血腫増大の危険が高いので,たとえ意識障害が軽度の場合であっても,厳重な患者管理並びに血圧管理が必要とされている。具体的には,一方で血圧が上昇するような行動を行わせず,他方で,降圧剤を適正に投与して,速やかに一定以下の血圧に下げる必要がある。 本件では,発症が3月22日の午後8時頃であるから,23日の午前2時ころまでが,この危険な時間帯に当たっていた。 かかる時間帯の血圧降下の目標値としては,原則的には発症前の血圧値,それが不明な場合には,収縮時血圧値について入院時の20%減程度の値,あるいは140ないし160mmHgとすべきであるところ,原告は,入院時の血圧が180であったから,その20%減として,140が目標値とされるべきであった。このことは,被告医院においても,血圧を140まで下げる必要があると判断し(乙A1・155頁),午前1時の血圧が160近くまで下がった時点でも,看護記録には,「血圧が下がらず」と明記していること(乙A1・155頁)から裏付けられるものである。 したがって,本件では,被告病院としては,必要な降圧剤の投与並び に適正な患者管理により,速やかに血圧を140mmHgまで下げるべき注意義務があった。 イ注意義務違反ところが,被告病院の担当医師らは,原告の病態を軽視し,十分な降圧剤の投与を行わず,そのため,原告は,必要な血圧低下が得られない状況に終始したものであって,被告病院の担当医師らには,上記注意義務違反がある。 ( 病院の担当医師らは,原告の病態を軽視し,十分な降圧剤の投与を行わず,そのため,原告は,必要な血圧低下が得られない状況に終始したものであって,被告病院の担当医師らには,上記注意義務違反がある。 (被告の主張)ア高血圧性脳出血に対する血圧の管理については,脳卒中治療ガイドライン2004(甲B9,以下「本件ガイドライン」という。)が存するところ,これによれば,脳出血急性期の血圧に関しては,収縮期血圧>180mmHg,拡張期血圧>105mmHg,または平均血圧>130mmHgのいずれかの状態が20分以上続いたら降圧を開始すべきであるということは一応は推奨されているものの,そのグレードは「C1」,すなわち「行うことを考慮しても良いが,十分な科学的根拠がない」という程度にしか過ぎない。むしろ,収縮期血圧<180mmHgかつ拡張期血圧<105mmHgでは降圧薬をすぐに始める必要はないとも記載されている。 これによれば,本件患者は,そもそも降圧療法を開始することの推奨要件を完全に充足していないということになり,被告病院の担当医師が,血圧管理を怠ったという根拠はない。 イまた,降圧療法を勧める見解も多く見られることは事実であるが,どこまで血圧を下げるべきかについてのコンセンサスは未だ得られておらず,ましてや,どこまで血圧を下げなかったら血腫が増大したなどということを正確に判断することはできない。 この点,甲B7では「発症後6時間以内の症例」については,「不明 な場合は搬入時収縮期血圧の20%程度の下降,あるいは収縮期血圧140-160mmHgを目標とする」と指摘している(325頁)が,原告は,発症6時間以内である23日午前1時には,収縮期血圧162mmHgと,上記の基準をほぼ満たしているし,また,甲B8では「脳出血(のときに)は慎重に降圧す する」と指摘している(325頁)が,原告は,発症6時間以内である23日午前1時には,収縮期血圧162mmHgと,上記の基準をほぼ満たしているし,また,甲B8では「脳出血(のときに)は慎重に降圧する→降圧前値の80%または収縮期圧160~180mmHg」としている(403頁。406頁も同旨)ことからも,原告の血圧は目標血圧とされる160から180mmHgに収縮期が収まっており,そもそも降圧療法を開始する要件を充足していなかったというべきである。 ウ降圧剤の投与量についても,本件では,体動活発で不穏傾向による血圧上昇も想定しながら慎重に降圧した結果,午前1時には血圧162/94と低下傾向を示しており,降圧剤の投与量に関しても誤りはなかったというべきである。 エ以上より,原告主張の注意義務が存在しないことは,原告自身の提出にかかる甲B7ないし9からも明らかであるので,原告の主張には理由がない。 (2)再出血に対する処置義務違反(原告の主張)ア注意義務原告は,23日午前1時になっても,血圧が目標値まで下降せず,そのころ,原告がひどい頭痛を訴えたため,見かねた家族が看護師に訴えて,医師の診療を求めたのに,これも拒否された。 当時の原告の臨床所見,家族の愁訴及び治療経過からすれば,被告病院の担当医師としては,遅くとも同日午前1時ころには,再出血による血腫増大の危険が高いこと,手術の必要の可能性が高いことを認識して,直ちに手術のための準備を開始すべきであった。 一般に,31ml以上の血腫が発生した場合には,手術適応とされているところ,原告の血腫は,同日午前2時27分の時点で,約100mlにまで至っていたのであるから,それから4時間も経って手術が行われるのは,遅きに過ぎるというべきである。 したがって,被告病院の担当医師としては,遅 の血腫は,同日午前2時27分の時点で,約100mlにまで至っていたのであるから,それから4時間も経って手術が行われるのは,遅きに過ぎるというべきである。 したがって,被告病院の担当医師としては,遅くとも23日の午前1時ころまでには,CT検査を行って,開頭手術に進むべき注意義務があったといえる。 イ注意義務違反ところが,被告病院の担当医師は,午前6時ころまで漫然と手術を怠ったものであるから,被告病院には上記注意義務違反がある。 (被告らの主張)ア原告は,23日午前1時ころ,被告病院の担当看護師が,頭痛の激化を訴える原告を放置したと主張するが,そのころの看護記録には,頭痛の訴えの増悪の所見は記載されておらず,脳神経外科領域の中でも急性期を扱う被告病院に勤務する看護師らが,容態の悪化を窺わせるような頭痛の訴えの変化を見落とすことはない。 イまた,頭痛の訴えだけで全てを判断できるわけではなく,対光反射,血圧,意識レベル,呼吸状態,尿量などのバイタルサインを総合的に判断する必要があるところ,原告に関しては,23日午前2時15分ころに意識レベルがJCS20から30へと低下し,瞳孔不同出現,対光反射消失の状態となるまで,重要なバイタルサインの変化は見られておらず,観察を怠ったとの指摘は当たらない。 ウ被告病院の看護師は,23日午前2時15分ころ,原告の上記の状況をみて,被告病院の医師に原告の容態急変を報告し,以降,被告病院の医師は,診療経過一覧表記載のとおり,遅疑逡巡することなく,検査,説明などの必要な措置を執り行い手術実施へと踏み切っており,手術開 始の時期を逸しているとの原告の主張には理由がない。 (3)因果関係(原告の主張)ア被告病院の担当医師らが適切な血圧管理を行っていれば,原告の脳内出血の拡大が防止できた。 イまた, 術開 始の時期を逸しているとの原告の主張には理由がない。 (3)因果関係(原告の主張)ア被告病院の担当医師らが適切な血圧管理を行っていれば,原告の脳内出血の拡大が防止できた。 イまた,23日午前1時の段階で,医師が診察し,CT検査等が実施されていれば,再出血により緊急手術が必要であることが明らかになった可能性が高く,原告の不可逆的な脳損傷を防ぐことができた。 (被告らの主張)原告の主張はいずれも争う。 (4)損害(原告の主張)ア逸失利益6989万円事故当時,原告は50歳であり,事故直前の年収は620万円,事故による労働能力喪失率は100%であるから,平成17年度賃金センサス全労働者学歴計年収からライプニッツ係数11.2740(残稼働年数17年)により中間利息を控除して計算すると,逸失利益は,6989万円となる。 イ後遺症慰謝料5000万円ウ介護費用4350万円介護費用は,1日8000円,余命28年で計算すると,4350万円を下らない。 エ弁護士費用1800万円以上合計1億8139万円よって,原告は,被告ら各自に対し,不法行為に基づき1億8139万円の損害賠償請求権を有しているところ,本訴においては,上記損害金の 一部である1億1000万円(逸失利益の内5000万円,後遺症慰謝料の内2000万円,介護費用の内3000万円及び弁護士費用の内1000万円)及びこれに対する不法行為の日である平成16年3月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。 (被告らの主張)原告の主張は争う。 第3当裁判所の判断 認定事実前記前提事実のほか,証拠(各認定の後に掲記する。)及び弁論の全趣旨によれば,原告の診療経過について,以下の事実が認められる。 (1)被告病 原告の主張は争う。 第3当裁判所の判断 認定事実前記前提事実のほか,証拠(各認定の後に掲記する。)及び弁論の全趣旨によれば,原告の診療経過について,以下の事実が認められる。 (1)被告病院受診までの経過原告は,22日午後7時40分ころ,勤務する会社から自宅へ電話を掛けている際に,急に呂律が回らなくなった。その後,同日午後8時ころ,原告から電話を受けた勤務先の上司からの電話で救急車が呼ばれ,同日午後9時ころ,原告は,救急車で被告病院に搬送された(甲A3,甲A5,乙A1・4,142,144頁,乙A9)。 (2)入院後の診療経過ア入院時の診療(ア)被告病院に搬送された後,被告病院の当直医師であったE医師による診察が行われた。初診時,原告には右上下肢運動麻痺,右上下肢知覚消失,失語症,軽度意識障害(JCS2ないし3:開眼しているが失見当識あり)が確認された(乙A1・4ないし6頁,被告C医師反訳書1・1頁)。また,搬送時の血圧は,174/120であった(乙A1・4頁)。 (イ)その後,直ちに(午後9時1分ころ),原告に対する頭部CT検査 が行われ,左被殻から放射冠に及ぶ脳内出血(出血量3×3×5/2=22.5ml)が確認された(乙A1・4ないし6頁,乙A2,被告C医師反訳書1・3頁)。 そして,E医師より,被告C医師にコンサルトがなされ,原告の治療方針として,安静,点滴加療,血圧管理等が計画された(乙A1・4ないし6,34頁,被告C医師反訳書1・3頁)。 (ウ)E医師からは,「ベッド上安静」,「バイタルチェック6検(1日6回検査)」,「血圧指示・収縮期血圧140以上で①アダラート1/2C舌下,②(①が効果なき時)ニカルピン40mg/生食100ml5~20ml/hr」,「収縮期血圧80以下でドクターコール」等の記載を 検査)」,「血圧指示・収縮期血圧140以上で①アダラート1/2C舌下,②(①が効果なき時)ニカルピン40mg/生食100ml5~20ml/hr」,「収縮期血圧80以下でドクターコール」等の記載をした入院時指示票が出された。一方,被告C医師から担当のF看護師に対し,血圧を下げること,目標値は収縮期血圧を140台とすること,最初ニカルピン40mgを生理食塩水に入れたものを投与すること等の指示が口頭でなされたため,F看護師は,最初にニカルピンを投与し,血圧が下降しなかった場合にアダラートを使用し,また,降圧目標を140台以下とする方針で看護を開始した(乙A1・111,155頁,証人F看護師反訳書5・1ないし3,9,10,12,13頁)。 イ22日午後9時30分ころ(ア)原告は,被告病院のナースステーションに近い部屋に入室した。 この時点で,原告の意識レベルは,JCS10(普通の呼びかけにすぐ開眼し,命令に応じ指出し等の合理的な動作が可能),血圧は,180/110であって,F看護師により,ニカルピン40mg及び生理食塩水100mlを5ml/hとする静注が開始された(前提事実,乙A1・155頁,乙A7の1,証人F看護師反訳書2・3頁)。 (イ)その後,被告病院の看護師により,原告について発語はないが,こちらの問いかけを理解し,着替えなど自己でやる動作もあると確認がさ れた(乙A1・155頁,乙A10)。 ウ22日午後10時30分ころ(ア)原告の妻Gが病院に到着し,被告C医師及びE医師により,Gらに対して,入院診療計画書に基づき病状の説明がなされた(乙A1・34頁)。その後,被告C医師は,原告に高血圧症の傾向があったこと,血圧は130~170/100台であって,薬は内服していなかったこと等を聴取し,その旨診療録に記載した(前提事実 なされた(乙A1・34頁)。その後,被告C医師は,原告に高血圧症の傾向があったこと,血圧は130~170/100台であって,薬は内服していなかったこと等を聴取し,その旨診療録に記載した(前提事実,甲A5,乙A1・4頁,被告C医師反訳書4・21,33頁)。 (イ)原告の血圧は,180/100で,血圧が下がらないと判断され,ニカルピン7ml/hへと増量がなされた。また,同時刻ころ,原告の体動は活発で,頭痛がすると訴えていたため,医師の指示によりボルタレン坐薬25mgが投与された。 被告病院の看護師の観察では,瞳孔不同などの異常は確認されなかった(前提事実,乙A1・155頁)。 (ウ)なお,22日から23日にかけては,Gの付添いが許可され,Gは,被告病院に宿泊した(乙A6)。 エ22日午後11時ころ(ア)被告病院の看護師により,血圧が下がらないと判断され,ニカルピン8ml/hへと増量がなされた(前提事実)。 (イ)同時刻ころ,原告には,身の置き所ない様子で,起きあがってしまったりする不穏行動が確認された(乙A1・155頁)。 オ23日午前0時ころ(ア)原告の血圧は,170/100で,右上下肢体動なく,痛覚反応のみであった。また,原告には,時折起きあがろうとするなどの行動が見られた(前提事実,乙A1・155頁)。 (イ)同時刻ころ,F看護師により,血圧が170台であり,あまり変化 がないと判断され,ニカルピンが10ml/hへと増量された(前提事実,乙A1・155頁,証人F看護師反訳書5・8頁)。 カ23日午前1時ころ(ア)原告の血圧は,162/94であり,F看護師により血圧が下がっていないと判断され,ニカルピンが12ml/hに増量された(前提事実)。 (イ)また,そのころ,F看護師から被告C医師に対し,午前0時までの の血圧は,162/94であり,F看護師により血圧が下がっていないと判断され,ニカルピンが12ml/hに増量された(前提事実)。 (イ)また,そのころ,F看護師から被告C医師に対し,午前0時までの原告のウォーターバランスと,血圧等の状況について報告がなされた。 この報告の際,被告C医師はF看護師に対し,血圧については値をみながらアダラートを併用するようにと指示した(乙A1・155頁,証人F看護師反訳書2・4,5頁)。 キ23日午前2時ころ(ア)23日午前2時ころ,原告の血圧は,184/108であり,F看護師により,原告の瞳孔不同,意識レベル低下,吐気/嘔気あり,不穏等の状況が確認された(前提事実,乙A1・6頁)。 (イ)23日午前2時15分ころ,F看護師より,被告C医師,E医師に対し,原告の意識レベルがJCS20~30(JCS30:痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する),瞳孔不同(瞳孔径右2.0mm,左3.5mm)出現,及び対光反射消失(右瞳孔±,左-)の状態となったとの報告がなされた(乙A1・156頁,乙A9,証人F反訳書5・13,14頁)。 (ウ)23日午前2時27分,原告の頭部CTが実施され,脳内出血(5. 3×5.3×7=98ml)が確認された(前提事実,乙A1・6,156頁,乙A3)。 (エ)23日午前2時35分ころ,原告はCT検査を終えて帰床した。同時刻ころの原告の血圧は,200/114であり,アダラート1/2カ プセルが舌下投与され,ニカルピンも20ml/hに増量された(前提事実)。 (オ)23日午前2時40分ころの原告の血圧は,168/108であった(乙A1・156頁)。 ク23日午前3時ころ(ア)原告は意識レベルがJCS100~200(JCS200:痛み刺激で少し手足を動かしたり 午前2時40分ころの原告の血圧は,168/108であった(乙A1・156頁)。 ク23日午前3時ころ(ア)原告は意識レベルがJCS100~200(JCS200:痛み刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめるのみで,開眼・覚醒しない)で,瞳孔不同(瞳孔径右3.0mm,左3.5mm)が出現し,対光反射消失(右瞳孔-,左-)の状態となった。呼吸は正常だが,軽度の喘鳴が確認され,被告C医師により経鼻気管内挿管が施行された(乙A1・6,7,乙A9)。また,同日午前3時20分ころの原告の血圧は180/100であった(乙A1・156頁)。 (イ)被告C医師から,Gに対して,原告の救命のため,脳内血腫除去が必要であること,出血原因を確認するため,脳血管造影検査が必要であることが説明され,Gは同検査実施に対し承諾した(前提事実,乙A1・7,35,156頁)。 ケ脳血管造影検査等23日午前4時ころ,原告は,脳血管造影検査室に入室し,午前4時25分ころ,右鼠径部よりカテーテルが挿入され,同検査が開始された。同検査は,同日午前5時10分まで施行され,原告は,午前5時40分ころ,病室に帰室した(前提事実,乙A1・146頁)。 同検査では,脳動脈瘤・脳動静脈奇形はなく,血腫による圧迫所見のみが確認された(乙A1・7頁,乙A4の1ないし6)。 コ開頭血腫除去手術(ア)23日午前6時ころ,被告C医師から,Gに対して,前記脳血管造影検査の結果,脳ヘルニアに近い状態であり,危険な出血源はないが, 出血原因としては高血圧性と推定され,肝機能障害の関与も疑われることが報告された。そして,検査結果を踏まえて,救命目的の緊急開頭血腫除去術等の必要性について説明がなされ,Gは同手術について承諾した(前提事実,乙A1・36,156頁)。 (イ)23日午前6時30分 が報告された。そして,検査結果を踏まえて,救命目的の緊急開頭血腫除去術等の必要性について説明がなされ,Gは同手術について承諾した(前提事実,乙A1・36,156頁)。 (イ)23日午前6時30分,原告は,手術室へ移動し,午前7時40分から血圧・脈拍計が装着させられ,午前7時55分には麻酔の投与が開始された。そして,午前9時6分から緊急開頭血腫除去術が開始され,午後3時59分まで施行された(前提事実,乙A1・38ないし45頁)。 (ウ)同手術の結果,約2分の1の血腫は除去され,正中変位も改善した(前提事実,乙A1・7頁)。かかる手術結果については,23日午後5時10分ころ,被告C医師からGに対し説明がなされた(乙A1・46頁)。 サ開頭手術後の原告の臨床経過23日午後6時ころ,原告の血圧は,154/90となった(乙A1・156頁)。原告の意識レベルはJCS100であり,瞳孔不同(瞳孔径右2.5mm,左3.0mm)が出現し,対光反射消失(右瞳孔-,左-)で,自発呼吸はまずOKという状態であった(乙A1・7,156頁)。 (3)その後の経過アその後,24日夜になり,再び瞳孔不同が出現し,頭部CTを実施したところ,脳浮腫増強が出現したため,人工呼吸器装着下に,脳浮腫に対するバルビツレート療法が開始された(乙A1・61頁)。 イ29日の開頭血腫除去術,外減圧術29日,原告に対する頭部CT検査が実施され,24日のCTと比較して血腫サイズが不変であるが,脳浮腫がやや増強していること,頭蓋内圧 が上昇していること等が確認されたため,家族の承諾を得て,同日午後6時46分から翌30日午前0時25分まで,原告に対し,被告C医師の執刀で開頭血腫除去術,外減圧術が行われた。手術の結果,血腫は90%以上が除去され,その結果について家族に説明 承諾を得て,同日午後6時46分から翌30日午前0時25分まで,原告に対し,被告C医師の執刀で開頭血腫除去術,外減圧術が行われた。手術の結果,血腫は90%以上が除去され,その結果について家族に説明がなされた(乙A1・11,48ないし55頁)。 ウその後の臨床経過及び原告の転院原告は,その後,4月に入り徐々に脳浮腫が改善し,4月中旬には意識レベルもJCS10~20と改善し,自発呼吸も安定してきたため,4月23日には人工呼吸器から離脱した。そして,5月8日ころには,意識レベルがJCS1桁まで改善し,6月5日にはD神経脳外科病院へ転院となった(乙A1・12ないし33,164ないし201頁)。 争点(1)(血圧管理義務違反の有無)について(1)原告は,被告病院の担当医師は,必要な降圧剤の投与及び適正な患者管理により,速やかに血圧を140mmHgまで下げるべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠ったと主張する。 (2)そして,証拠によれば,①高血圧性脳内出血に対する初期血圧管理として発症から24時間以内に血腫増大の危険性が高く,その中でも6時間以内を重視する知見があること(甲B1・112頁,甲B2・112頁,甲B7・325頁),②降圧目標としては,降圧前値20パーセント程度の下降を目安としたり(甲B1・112頁,甲B4・138頁,甲B6・15頁,甲B7・325頁,甲B8・406頁,甲B10),その他,発症前の血圧値あるいは収縮期血圧140-160mmHgを目標値とする知見があること(甲B7・325頁,甲B3・191頁)が認められる。 また,前記認定のとおり,被告病院でも,当初目標血圧を140台としていたこと(認定事実,乙A1・111,155頁,被告C医師反訳書1・6頁)が認められ,原告の搬入時の血圧が174であったこと(乙A1・4 ,前記認定のとおり,被告病院でも,当初目標血圧を140台としていたこと(認定事実,乙A1・111,155頁,被告C医師反訳書1・6頁)が認められ,原告の搬入時の血圧が174であったこと(乙A1・4 頁)からすれば,その約8割に当たる140mmHgを降圧目標とすることは,上記一般的な知見に沿うものと考えられる。 (3)アしかしながら,降圧目標に関しては,以下の点を指摘できる。 (ア)脳出血では,血腫周辺の組織での脳血流自動調整能の障害から過度の降圧は脳血流量の低下をもたらし,組織障害を悪化させる可能性があること等を踏まえ,脳出血急性期の降圧目標については必ずしも意見の一致を見ていないとされている(甲B2・112頁,甲B4・138頁,甲B6・15頁,甲B8・408頁)。 (イ)具体的な数値目標値としても,収縮期血圧180-160mmHgとの数値を挙げる知見もあり(甲B1・112頁,甲B8・406頁),前記2(2)②の降圧目標値が絶対的な基準とはいえず,かかる降圧目標値を採用するかも含め,患者の状況を踏まえた医師の裁量の範囲に属するものと考えるのが合理的である。 (ウ)平成16年に日本脳卒中学会等の5学会と厚生労働省の3研究班の合同委員会として組織された脳卒中合同ガイドライン委員会において作成された脳卒中治療ガイドライン2004(本件ガイドライン)においても,「脳出血急性期の血圧に関しては,袖手機器血圧>180mmHg,拡張期血圧>105mmHg,または平均血圧>130mmHgのいずれかの状態が20分以上続いたら降圧を開始すべきである」(甲B9・104頁)とされる一方,「収縮期血圧<180mmHgかつ拡張期血圧<105mmHgでは降圧薬をすぐに始める必要はない」(甲B9・104頁)ともされており,降圧目標値についての具体的基準は 甲B9・104頁)とされる一方,「収縮期血圧<180mmHgかつ拡張期血圧<105mmHgでは降圧薬をすぐに始める必要はない」(甲B9・104頁)ともされており,降圧目標値についての具体的基準は示されていないうえ,上記基準についても,いずれもグレードC(行うことを考慮しても良いが,十分な科学的根拠がない)とされていること(乙B3)からすれば,本件ガイドライン策定後においても,なお,高血圧性脳内出血において,法的な注意義務違反を構成するような降圧目 標についての具体的数値基準を観念することは困難と言わざるを得ない。 (エ)さらに,どのような時間的範囲内において,降圧目標に至らなければならないかの知見については,本件ガイドラインを含めて明確な基準を示すものはなく,むしろ,高血圧の場合には,急激な降圧は,上記2(3)ア(ア)のような危険性があることを踏まえ,慎重な投与が推奨されている(甲B8・407頁)。 以上に照らせば,原告が主張するような,速やかに血圧を140mmHgまで下げるべき注意義務については,それを基礎付ける診療当時の医学的知見,ないしそれに基づく医療水準が確立されていたということはできず,被告病院が上記注意義務を負っていたとはいえない。 イさらに,本件診療経過においては,以下の点を指摘できる。 (ア)本件ガイドラインでは,「収縮期血圧<180mmHgかつ拡張期血圧<105mmHgでは降圧薬をすぐに始める必要はない」(甲B9・104頁)とされているところ,本件では,22日午後9時30分ころの血圧(180/110)では,かかる基準に該当しているものと考えられるが,1時間後の午後10時30分には,170/100であってこの基準を満たさず,その後原告の容態が急変した23日午前2時の血圧(184/108)までは,原告の血圧は 準に該当しているものと考えられるが,1時間後の午後10時30分には,170/100であってこの基準を満たさず,その後原告の容態が急変した23日午前2時の血圧(184/108)までは,原告の血圧は上記基準に該当しない。 したがって,22日午後10時30分,23日午前0時及び午前1時については,本件ガイドラインによっても,降圧をすぐに始める必要はない数値と考えられる。 (イ)原告は,既往症として高血圧症があった(甲A3・1頁,乙A1・4頁)。高血圧の既往の有無は大切であり,高血圧が長期持続している場合には,脳循環の自動調節能の下限は高い血圧の方に移動しているから,急速な降圧は望ましくないことになる(甲A2・9頁)。しかも,原告には不穏状態も確認されており,不穏の場合,血圧が高く計測され ることがあり得ること(認定事実,被告C医師反訳書4・21,22頁)からすると,被告病院担当医師が,原告の降圧措置を慎重に進めたことにも合理性がある。 (ウ)被告病院の担当医師及び看護師は,前記認定のとおり,22日午後9時30分にニカルピン5ml/hによる降圧を開始し,原告の血圧,意識レベル,瞳孔の大きさ,対光反射の有無などを観察しつつ,その後の降圧が進まない状況に対し,ニカルピンの増量(22日午後10時30分に5ml/hから7ml/hへ,午後11時に7ml/hから8ml/hへ,23日午前0時に8ml/hから10ml/hへ,午前1時に10ml/hから12ml/hへ,午前2時に12ml/hから14ml/hへ)及びアダラート2分の1カプセルの投与によって対処している。その結果,23日午前1時には,原告の血圧は,162/94mmHgまで改善している。 以上の点を踏まえれば,被告病院の医療従事者は,降圧のための措置を採っていたと認めることができ,結果的に ている。その結果,23日午前1時には,原告の血圧は,162/94mmHgまで改善している。 以上の点を踏まえれば,被告病院の医療従事者は,降圧のための措置を採っていたと認めることができ,結果的に当初の目標値である140mmHg台に達しなかったからといって,義務違反があったということはできない。 (4)アこの点に関し,原告は,降圧すべき目標値が患者各人のそれまでの血圧によって絶対値としては決められない以上,不明な場合は搬入時収縮期血圧の20%程度の下降とするのが合理的であると主張し,その旨の意見書を提出する(甲B10)。 しかしながら,降圧目標については前記のとおり,様々な知見があり,20%程度の下降を目標とすることが法的義務と解することはできない。 イまた,原告は,被告病院におけるアダラート及びニカルピンの投与量が,典型的な降圧薬の使用方法として示された初期投与量,持続投与量(甲B8)に比較して少ないと主張する。 しかしながら,一方,①脳出血の場合,降圧は慎重にするとされていること(甲B8・406頁),②原告の場合,前記認定のとおり,高血圧症を有していたこと,③前記認定のとおり,原告は,22日午後10時30分以降23日午前1時までは,本件ガイドライン上直ちに降圧措置を採る必要はないとされている180/105mmHgより低い血圧を維持していたことからすれば,被告病院担当医師が,降圧剤の量を徐々に増量していった措置も不合理とは言えず,原告の主張は採用することができない。 ウなお,原告は,降圧目標である収縮期血圧140mmHgを達成するための付随的義務として,降圧剤の効果がどの程度あるかを把握するために,頻回に(少なくとも30分に1回)血圧を測定しかつ記録すべきだった旨も主張する。 この点,確かに,ニカルピンが静注された場合には めの付随的義務として,降圧剤の効果がどの程度あるかを把握するために,頻回に(少なくとも30分に1回)血圧を測定しかつ記録すべきだった旨も主張する。 この点,確かに,ニカルピンが静注された場合には,効果が直ちに出ることから,その効果を確認するため,15分ないし20分後に血圧を確認することが望ましいとはいえる(被告C医師反訳書4・27頁)。 しかしながら,高血圧性脳内出血において,特段血圧管理の間隔についての知見があるとも窺われず(被告C医師反訳書4・26,27頁),原告が主張するような,少なくとも30分に1回血圧を測定し,かつ記録すべき付随的な義務自体を認めることができない。 また,①被告病院の看護記録(乙A1・155頁)では1日に6回バイタルを測る用紙が使用されており,血圧の測定値としても,22日午後9時30分,午後10時30分,23日午前0時,午前1時,午前2時の記載があるところ,少なくとも,この時点では,担当看護師による原告の血圧測定,一般状態の観察,記録が行われていること,②前記認定のとおり,原告がナースステーションに近い病室に配置されたこと等からすると,被告病院としても,原告に対するバイタルチェックの重要性については認識していたものと考えられること,③23日午後11時については,特に血 圧の測定値の記載はないにもかかわらず,血圧の低下がないことを理由としてニカルピンが増量されていることからすると,担当看護師が,看護記録に記載のない時間にも,適宜観察を繰り返していたとのF看護師の証言(乙A10,証人F看護師反訳書2・5頁)も信用性があると考えられること,④測定値を記録しなかったことが,直ちに義務違反になるとは考えられないことからすれば,被告病院の担当看護師において,適切な頻度で血圧測定を行い,記録する義務に違反していたと があると考えられること,④測定値を記録しなかったことが,直ちに義務違反になるとは考えられないことからすれば,被告病院の担当看護師において,適切な頻度で血圧測定を行い,記録する義務に違反していたと認めることはできない。 エまた,原告は,医師において降圧剤の投与の方法について適切に指示をし,血圧の推移に問題がある場合には,直ちに看護師らに報告させる義務があり,看護師においても,血圧の推移に問題がある場合には直ちに医師に報告して指示を仰ぐ義務があるとして,かかる付随的義務違反も主張する。 この点についても,血圧の推移に問題がある場合には,医師が直ちに状態を把握して指示することが望ましいことは一般的に肯定できるとしても,①本件においては,22日午後9時30分から午後10時30分までは血圧は下降傾向であり(認定事実),問題があったとまでは認められないこと,②22日午後10時30分から23日午前0時にかけては,血圧の推移は横ばいであるが,これに対しては,看護師が,予め医師から与えられた指示の範囲内で,ニカルピンを適宜増量して対処していたこと(認定事実),③23日午前1時ころには,担当看護師から被告C医師に対し,午前0時までのウォーターバランスと血圧の状況が報告されており,これに対し,被告C医師からも,血圧について値を見ながら,アダラートを併用するよう指示が出されていたこと(認定事実)に鑑みれば,被告担当医師の指示と看護師の対応が不合理なものとはいえず,原告主張の付随的義務違反があると認めることはできない。 (5)以上によれば,被告病院において,速やかに血圧を140mmHgまで 下げるべき注意義務があったと認めることはできず,その義務違反があったとの原告の主張も採用できない。 争点(2)(再出血に対する処置義務違反の有無)について( かに血圧を140mmHgまで 下げるべき注意義務があったと認めることはできず,その義務違反があったとの原告の主張も採用できない。 争点(2)(再出血に対する処置義務違反の有無)について(1)原告は,被告病院の担当医師としては,遅くとも23日午前1時ころまでには,CT検査を行って,開頭手術に進むべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠って,同日午前6時ころまで,漫然と手術を怠った義務違反があると主張する。 (2)23日午前1時ころの状況ア原告は,23日午前1時ころ,原告がひどい頭痛を訴えたため,見かねた家族が看護師に医師の診療を求めたにもかかわらず,これを拒否された旨主張し,原告の妻Gは,これに沿う証言をする(甲A6,証人G反訳書3・4頁)。 しかしながら,①看護記録上,23日午前1時ころにかかる頭痛の増悪を窺わせる記載はないこと(乙A1・156頁),②看護記録上,22日午後10時30分には頭痛の記載があることに照らせば,23日午前1時の時点で原告主張のような事情があった場合に記載をしない合理的な理由がないこと,③上記認定のとおり,23日午前1時の時点では,血圧も162/94mmHgとむしろ低下傾向を示していたことに照らせば,前記Gの証言を直ちに採用することはできず,他に23日午前1時ころ,原告の頭痛が増悪した事実を認めるに足りる証拠はないと言わざるを得ない。 したがって,23日午前1時ころ,原告の頭痛が増悪したことを前提とする原告の主張は採用することができない。 イなお,頭痛の訴えに関し,F看護師は,原告が入院時から強い頭痛を訴えていた旨述べる(証人F看護師反訳書5・17頁)。 しかしながら,脳出血があれば,頭痛を伴うことはよくあること(甲B3・191頁,甲B4・132頁)からすれば,手術適応を考えるにあた 痛を訴えていた旨述べる(証人F看護師反訳書5・17頁)。 しかしながら,脳出血があれば,頭痛を伴うことはよくあること(甲B3・191頁,甲B4・132頁)からすれば,手術適応を考えるにあた ってはその増悪が認められるか否かが重要と考えられるところ,23日午前1時ころに頭痛の増悪があったと認めるに足りる証拠がないことは前記認定のとおりであること,23日午前1時の時点では,原告に瞳孔不同,意識レベル低下等,脳出血の増悪を示唆する症状が現れていたとは認められないことからすれば,F看護師の前記証言を前提としても,23日午前1時ころの時点で,CT検査を行って開頭手術に進むべき注意義務があったということはできない。 (3)23日午前2時ころ以降の状況ア前記認定のとおり,23日午前2時ころ,F看護師により,原告の瞳孔不同,意識レベル低下,吐気/嘔吐等が確認された後,午前2時15分ころ,被告C医師,E医師に対して報告がなされ,午前2時27分ころ,深夜帯であるにもかかわらず,原告の頭部CT検査が実施され,午前3時ころ,被告C医師により経鼻気管内挿管が施行され,その後,Gらに対し,脳血管造影検査等の説明がされた後,午前4時ころ脳血管造影検査が施行され,これを踏まえてGらに対し検査結果の説明が行われた後,午前6時ころ,緊急開頭血腫除去術の説明がなされ,午前6時30分ころ,緊急開頭手術の準備に入り,午前7時55分から麻酔の投与が開始され,午前9時6分から緊急開頭血腫除去術が行われたことが認められる。 そして,脳出血の原因となる病変の有無を確認するため,血腫開頭除去術の前に脳血管造影を行うことは不合理とはいえないこと(甲A2・7頁),家族に手術の同意を得るために説明を行う必要もあったこと(乙A1・35,36頁),手術に立ち会うスタッフを,病院外から 開頭除去術の前に脳血管造影を行うことは不合理とはいえないこと(甲A2・7頁),家族に手術の同意を得るために説明を行う必要もあったこと(乙A1・35,36頁),手術に立ち会うスタッフを,病院外から緊急で集めたこと(乙A1・45頁,被告C医師反訳書4・29ないし32頁),その他手術準備,剃毛も行う必要があったことからすれば,午前2時以降の経緯が,不合理な経過を辿ったものとは断じ難い(甲A2・7,8頁)。 イなお,22日午後9時ころに約22.5mlであった被殻出血が,5時 間半後の23日午前2時27分ころには98mlまで増大していたこと,被殻出血においては,血腫量31ml以上で,血腫による圧迫所見が高度である場合には,手術適応があるとされること(甲B1・113頁,甲B2,113頁,甲B4・139頁,甲B6・16頁,甲B9・114頁)からすれば,後方視的には,23日午前2時27分以前の時期において,脳血腫除去手術の適応があった可能性は十分にあるといえる。 しかしながら,前記認定のとおり,23日午前2時以前には,脳出血の増悪をうかがわせる症状が現れていたと認めるに足りる証拠は存しないこと,午前2時以降は,原告の異常が認識された後の対応に不合理な点は認められないことからすれば,血腫増大の状況を踏まえても,被告病院の医療従事者に,義務違反があったと推認することはできない。 (4)以上によれば,被告病院の担当医師らにおいて,遅くとも23日午前1時ころには,直ちに手術のための準備を開始すべきであったという原告の主張を採用することはできない。 第4 結論 以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。 よって,原告の請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第30部裁判長裁判 以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。 よって,原告の請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第30部裁判長裁判官秋吉仁美裁判官大嶺崇 裁判官古谷真良
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