主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 経済産業大臣が令和2年9月4日付けで九州電力送配電株式会社に対して行った託送料金単価を変更する旨の託送供給等約款の認可決定を取り消す。 第2 事案の概要(以下、本判決で定義したもの以外の略語は原判決の例による。) 1 事案の要旨 ⑴ 基本的前提事実控訴人は、一般送配電事業者である九州電力送配電との間で、同社の定めた託送供給等約款が適用される接続供給契約(本件接続供給契約)を締結し、一般の需要に応じて電気を供給する小売電気事業を営んでいる。 九州電力送配電は、経済産業大臣に対し、託送料金単価を変更する旨の託 送供給等約款の変更を申請し、経済産業大臣から令和2年9月4日付けで同変更を認可する旨の処分(本件処分)を受けた。変更後の額は、令和3年経済産業省令第22号による改正前の一般送配電事業託送供給等約款料金算定規則(本件算定規則)4条2項に規定された賠償負担金相当金等を含む。 ⑵ 本件の請求及び基本的な主張 控訴人は、以下のとおり、根拠となる各規則が違憲・違法であるから本件処分が違法・無効であると主張し、被控訴人を相手に、本件処分の取消しを求めた。 ア本件算定規則4条2項は、令和2年法律第49号による改正前の電気事業法(法)の委任に基づくことなく又は法の委任の範囲を超えて賠償負 担金相当金等の額の算定を規定するから、違憲・違法である。 イ令和4年経済産業省令第24号による改正 事業法(法)の委任に基づくことなく又は法の委任の範囲を超えて賠償負 担金相当金等の額の算定を規定するから、違憲・違法である。 イ令和4年経済産業省令第24号による改正前の電気事業法施行規則(本件施行規則)45条の21の2及び45条の21の5は、法の委任に基づかずに賠償負担金等の支払義務等を課するから、違憲・違法である。 ⑶ 原判決及び控訴原審は、控訴人の請求を棄却した。控訴人は、これを不服として、本件控 訴を提起した。 2 関係法令等の定め、前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張次のとおり補正し、後記3のとおり当審における控訴人の補充主張を付加するほかは、原判決「第2 事案の概要」の2から4の記載を引用する。 ⑴ 原判決36頁1行目の「乙14」の次に「。以下「平成11年報告書」と いう。」を加える。 ⑵ 原判決36頁12行目の「電気の」から同頁17行目末尾までを次のとおり改める。 「託送料金の制度設計等に関する検討がされた。上記ワーキンググループの事務局が第3回会合のために作成した資料には、「小売全面自由化後の託送 制度においても、電気の全需要家が公平に負担すべき費用については、負担の公平性や事業者間の競争条件の確保を前提に、託送料金で回収できる仕組みとすることが必要ではないか。」との記載があった。同会合において、ワーキンググループの委員から、この記載について、いろいろな費用を公平にみんなで負担するときに託送料金を使うという枠組みがあることを確認する ものであり、具体的に何を託送料金に入れるかというのは、国のエネルギー政策の方向性が出た上で、原子力に関してはこれこれを託送料金で負担すべきといったように、エネルギー政策に沿って決めていくもの ものであり、具体的に何を託送料金に入れるかというのは、国のエネルギー政策の方向性が出た上で、原子力に関してはこれこれを託送料金で負担すべきといったように、エネルギー政策に沿って決めていくものだと思う、との意見が述べられた。(乙20・33頁、乙71・44頁)」⑶ 原判決36頁18行目の「上記dのような専門家の意見も踏まえ、」を削 る。 ⑷ 原判決37頁26行目の「供給約款」を「託送供給等約款」に、同行目から38頁1行目にかけての「電気の供給」を「託送供給等」に、それぞれ改める。 ⑸ 原判決42頁3行目の「(需要家」から同頁7行目の「負担することになる。)」までを削る。 ⑹ 原判決46頁11行目及び同頁17行目の各「法2条」の次にいずれも「1項」を加える。 ⑺ 原判決46頁13行目の「1府13県」を「1府14県」に改める。 ⑻ 原判決53頁6行目の「1070キロワット」を「1070円キロワット」に改める。 ⑼ 原判決67頁26行目の「以降」を削る。 ⑽ 原判決68頁21行目の「費用が」を「費用を」に改める。 ⑾ 原判決72頁4行目の「規定められている」を「定められている」に改める。 3 当審における控訴人の補充主張 ⑴ 争点3(本件算定規則4条2項の合憲性及び適法性)についてア法18条3項1号の「適正な原価」が「一般送配電事業を行うために必要な原価」に限定されること法18条1項・同条3項1号の文理解釈からすると、「原価」の語の概念、意義内容は財務会計上の概念として明確であるから、同号の「適正 な原価」とは、同条1項の「その供給区域における託送供給及び電力量調整供給」に必要な原価、すなわち一般送配電事業を行うために必要な原価ということになる。 平 て明確であるから、同号の「適正 な原価」とは、同条1項の「その供給区域における託送供給及び電力量調整供給」に必要な原価、すなわち一般送配電事業を行うために必要な原価ということになる。 平成11年報告書は、電力自由化後の託送料金について、第一原則として託送コストの公正回収原則、第二原則として事業者間公平の原則を示 した。第一原則は、送電費用のみに基づいて託送料金を算定すべきこと を明示するものであり、第二原則は、特定の発電事業者の発電コストを託送料金に追加して徴収してはならないことを意味する。平成11年報告書が示した上記各原則からしても、託送料金の原価は、一般送配電事業を行うために必要な原価に限定されるべきである。 イ法18条3項1号の「適正な原価」に「電気の全需要家が公平に負担す べき電気事業に係る公益的課題に要する費用」を含ませることができないこと平成11年報告書には、託送供給制度において「電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用」を回収する旨の記載はなく、法の平成11年改正の際の国会審議においても、そのよう な議論は、されていない。また、同報告書では、送電における公益的課題を同時同量サービスを実現するためのものに限定し、その公益的課題を実現する方法については、ネットワークを保有する電力会社(現在の一般送配電事業者)の給電指令によって担保されるとしており、託送料金で考慮すべきものとはしていない。法18条3項1号の「適正な原価」 に「電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用」を含ませることができるとする法解釈の根拠はなく、そのような解釈をすることには無理がある。 ウ賠償負担金等が「電気の全需要家が公平に負担す が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用」を含ませることができるとする法解釈の根拠はなく、そのような解釈をすることには無理がある。 ウ賠償負担金等が「電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用」に含まれないこと (ア) 賠償負担金について賠償負担金は、原子力損害の賠償のために備えておくべきであった資金であって、旧原子力発電事業者が平成23年3月31日以前に原価として算定することができなかったものとされているが、これは、福島第一原発事故の損害賠償金に充てられるものである。原子力損害の賠償に 関する法律は、3条において原子力事業者が原子力損害を賠償する責め に任ずると定め、4条において原子力事業者以外の者はその損害を賠償する責めに任じないと定めていることから、需要家に賠償負担を課すことを認めていない。また、原子力事業者は、同法6条・7条により損害賠償措置として原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結等をしており、賠償措置額を超える場合には同法16条1項に より政府が必要な援助をするのであるから、原子力損害の賠償のために備えておくべきであった資金の不足分はないことになる。 貫徹小委員会中間とりまとめでは、賠償負担金を小売料金のみで回収するとした場合、過去に安価な原子力発電による電気を等しく利用してきたにもかかわらず、原子力発電事業者から契約を切り替えた需要家は 負担せず、引き続き原子力発電事業者から電気の供給を受ける需要家のみが全てを負担することになるとして、需要家間の格差を解消して公平性を確保するために、託送料金の仕組みを利用して賠償負担金を回収することが適当であるとされている。しかし、賠償負担金を託送料金に含めて回収する場合、過去 とになるとして、需要家間の格差を解消して公平性を確保するために、託送料金の仕組みを利用して賠償負担金を回収することが適当であるとされている。しかし、賠償負担金を託送料金に含めて回収する場合、過去に原子力発電による電力を使用していない需要 家からも徴収することになり、そのことを正当化することはできない。 また、電力自由化の下では、電気料金は競争的市場で決定されるため、原子力発電事業者から電気の供給を受けた場合とそれ以外の事業者から電気の供給を受けた場合とで電気料金は基本的に同一であるから、原子力発電事業者から契約を切り替えた需要家が賠償負担金を負担せず、引 き続き原子力発電事業者から電気の供給を受ける需要家のみが全てを負担するということにもならない。 したがって、賠償負担金は、電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用ではない。 (イ) 廃炉円滑化負担金について 廃炉円滑化負担金は、特定原子力発電事業者が受けた所定の承認に係 る原子力発電工作物の廃止を円滑に実施するために必要な資金とされているが、原子力発電工作物は、原子力発電事業者が事業を営むための本来的、基礎的な事業工作物である。電力自由化を実現するためには競争が公平である必要があり、そのためには発電費用自己負担の原則が決定的に重要であることからしても、原子力発電工作物の廃止に要する費用 は、原子力発電事業者が当然負担すべきものである。廃炉円滑化負担金が原発依存度低減や廃炉の円滑な実施等のエネルギー政策の目的を達成するためのものであるとしても、それは電力行政一般が実現すべき公益的課題であり、送電に関する公益的課題とは関係がない。したがって、廃炉円滑化負担金は、「電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に 係る ものであるとしても、それは電力行政一般が実現すべき公益的課題であり、送電に関する公益的課題とは関係がない。したがって、廃炉円滑化負担金は、「電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に 係る公益的課題に要する費用」ではない。 エ法18条3項1号の「適正な原価」に賠償負担金等を含めることが原価計算基準に照らして許されないこと原価計算基準は、実践規範として、企業における原価計算の慣行のうちから一般に公正妥当と認められるものを要約して設定されたから、慣習 法として位置付けられ、拘束力を有する。したがって、実定法も、原価計算基準の枠内において規定されなければならず、法18条3項1号の「適正な原価」も、原価計算基準に従って算定された原価でなければならない。しかし、賠償負担金等は、原価計算基準によれば原価性が否定されるから、これを「適正な原価」に組み込むことは、許されない。 ⑵ 争点4(本件施行規則45条の21の2及び45条の21の5の合憲性)について本件施行規則45条の21の2及び45条の21の5は、一般送配電事業者に対し、一般送配電事業とは関係のない賠償負担金等の徴収義務及び原子力発電事業者への払渡義務を課しているが、法には一般送配電事業者の上 記各義務についての規定はない。本件施行規則の上記各規定は、法令上の根 拠なく省令により一般送配電事業者に義務を課するから、違憲・違法である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、原判決同様、控訴人は本件処分の取消訴訟の原告適格を有するが、控訴人の請求は理由がない、と判断する。その理由については、次のとおり補正し、後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断 を付加するほかは、原判決「第3 当裁判所の判断」の1から4 、控訴人の請求は理由がない、と判断する。その理由については、次のとおり補正し、後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断 を付加するほかは、原判決「第3 当裁判所の判断」の1から4の記載を引用する。 ⑴ 原判決7頁20行目の「ものとして、」の次に「適正な託送供給等約款の定める供給条件により電気の供給を受けるという営業上の利益を」を加える。 ⑵ 原判決11頁17行目の「認めている」を「認められている」に改める。 ⑶ 原判決14頁22行目の「原告は、」を削る。 ⑷ 原判決15頁13行目の「費用である」を「費用ではない」に改める。 ⑸ 原判決16頁18行目の「一般電気事業託送供給約款算定規則」を「一般電気事業託送供給約款料金算定規則」に改める。 2 当審における控訴人の補充主張に対する判断⑴ 争点3(本件算定規則4条2項の合憲性及び適法性)についてア法18条3項1号の「適正な原価」が「一般送配電事業を行うために必要な原価」に限定されるか否か(ア) 控訴人は、法18条1項・同条3項1号の文理解釈からすると、同号 の「適正な原価」が「一般送配電事業を行うために必要な原価」に限定されると主張する。 しかし、法18条1項・同条3項1号の文言によれば、一般送配電事業者が託送供給等約款において定める託送供給等に係る料金について、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの であることが要求されているとは解されるが、その文言からして、 「適正な原価」が「一般送配電事業を行うために必要な原価」に限定されているとまで解することはできない。 (イ) 控訴人は、平成11年報告書において第一原則として示された託送コストの公正回収原則が送電費用のみに基づいて託送料金を算定すべ ために必要な原価」に限定されているとまで解することはできない。 (イ) 控訴人は、平成11年報告書において第一原則として示された託送コストの公正回収原則が送電費用のみに基づいて託送料金を算定すべきことを明示し、第二原則として示された事業者間公平の原則が特定 の発電事業者の発電コストを託送料金に追加して徴収してはならないことを意味するとして、託送料金の原価が一般送配電事業を行うために必要な原価に限定されると主張する。 確かに、証拠(乙14・8頁)によれば、平成11年報告書においては、託送料金について、第一原則として託送コストの公正回収原則 (託送料金に含めてコスト回収すべき設備や関連するサービスを具体的かつ明確に特定した上で、そのコストを適正に回収すること)、第二原則として事業者間公平の原則(ネットワークの所有者・運用者である電力会社、供給区域外の電力会社、新規参入者にとって託送料金が同一であること)が示されたことが認められる。しかし、平成11 年報告書の内容からは、託送コストの公正回収原則が送電費用のみに基づいて託送料金を算定すべきことを明示するものであるとは認められず、事業者間公平の原則が特定の発電事業者の発電コストを託送料金に追加して徴収してはならないことを意味するものであると認めることもできない。原判決を引用して説示したとおり、平成11年報告 書では、供給信頼度の確保、エネルギーセキュリティの確保や環境保全などの公益的課題が示され、託送供給制度の導入後にも全ての需要家が公益的課題の成果を享受する主体としてそのために必要な負担を公平に負うことを原則とする旨が記載されている。託送供給制度の下で需要家が公益的課題に必要な負担を負うとは、託送料金を通じて需 要家が公益的課題に必要な費用を負担す してそのために必要な負担を公平に負うことを原則とする旨が記載されている。託送供給制度の下で需要家が公益的課題に必要な負担を負うとは、託送料金を通じて需 要家が公益的課題に必要な費用を負担することを意味するものと理解 される。平成11年報告書の上記記載は、一般送配電事業者・小売電気事業者間の契約関係を前提に、「電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用」を託送料金に含めて回収することを提言する趣旨に解される。それは、当然に、上記費用を要する者による費用の回収と払渡しの要求及びそれへの承諾をも前提と する、と解される(費用を要するのが当該一般送配電事業者の場合は除く。以下、上記託送料金を通じた回収とその払渡しの仕組みを「託送料金の仕組みを利用した回収スキーム」という。)。 したがって、平成11年報告書が託送料金の原価を一般送配電事業を行うために必要な原価に限定することを求めているとはいえない。 イ法18条3項1号の「適正な原価」に「電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用」を含ませることができるか否かについて控訴人は、平成11年報告書には、託送供給制度において「電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用」を 回収する旨の記載はなく、法の平成11年改正の際の国会審議においても、そのような議論はされていないなどとして、法18条3項1号の「適正な原価」に「電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用」を含ませることができるとする法解釈の根拠がないと主張する。 しかしながら、まず、原判決を引用して説示したとおり、法は、経済産業大臣が経済産業省令で法18条3項1号の「適正な原価」の 」を含ませることができるとする法解釈の根拠がないと主張する。 しかしながら、まず、原判決を引用して説示したとおり、法は、経済産業大臣が経済産業省令で法18条3項1号の「適正な原価」の具体的な算定方法を定めるに当たり、法の委任の趣旨を逸脱しない範囲内において、専門技術的かつ政策的な観点からの一定の裁量を認めているものと解される。 次に、上記アのとおり、平成11年報告書は、託送供給制度の導入後 に「電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用」につき託送料金の仕組みを利用した回収スキームを提言したものと認められる。そして、原判決を引用して説示したとおり、国会審議においても、通商産業大臣や資源エネルギー庁長官から、公益的課題との両立や公益的課題の達成に支障が生じないような制度設計を行うこ とや、公益的課題の代表例として電源開発促進税(電気供給の円滑化を図る等のために必要な発電施設の設置や運転の円滑化等を目的とする税。 電源開発促進税法1条参照。)を押しなべて負担するという形を考えているなどの答弁がされ、託送供給制度の導入を内容とする法の平成11年改正が行われた。現に、同改正法の施行に伴って制定された接続供給 約款料金算定規則4条1項において、接続供給約款料金の原価等を構成する営業費として電源開発促進税の額を算定する旨が定められたことも認められる(乙16)。このような法の改正経緯や立法過程における議論等に照らすと、法は、託送供給制度を導入した平成11年改正当初から、「電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に 要する費用」につき託送料金の仕組みを利用した回収スキームを想定していたというべきであり、その後の法改正時の議論状況を踏まえても、その想定に 要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に 要する費用」につき託送料金の仕組みを利用した回収スキームを想定していたというべきであり、その後の法改正時の議論状況を踏まえても、その想定に変化が生じたとは認められない。 したがって、原判決を引用して説示したとおり、経済産業大臣が経済産業省令において法18条3項1号の「適正な原価」の算定方法を具体 的に定めるに当たり、託送料金の仕組みを利用した回収スキームを前提に「電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用」を原価に含めることも、法の委任の趣旨の範囲内のものとして許されると解するのが相当である。 ウ賠償負担金等が「電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る 公益的課題に要する費用」に該当するか否かについて (ア) 賠償負担金についてa 控訴人は、①原子力損害の賠償に関する法律3条及び4条の規定からして需要家に賠償負担を課すことが認められない、②原子力事業者が同法6条・7条により損害賠償措置として原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結等をしており、賠償 措置額を超える場合には同法16条1項により政府が必要な援助をすることから、原子力損害の賠償のために備えておくべきであった資金の不足分はないとして、賠償負担金は「電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用」ではないと主張する。 しかし、原子力損害の賠償に関する法律は、3条において原子力事業者が原子力損害を賠償する責めに任ずると定め、4条において原子力事業者以外の者はその損害を賠償する責めに任じないと定めているが、託送料金を通じて需要家から賠償負担金を回収することは、同法3条において原子力事業者 を賠償する責めに任ずると定め、4条において原子力事業者以外の者はその損害を賠償する責めに任じないと定めているが、託送料金を通じて需要家から賠償負担金を回収することは、同法3条において原子力事業者が責めを負う原子力損害の賠償 のために備えるべきであった資金をどのように確保するかという問題であり、需要家に対して原子力損害の賠償の責めを負わせるものではない。 また、原子力事業者は、同法6条・7条により、損害賠償措置として原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締 結等をしなければ原子炉の運転等をしてはならないとされ、この損害賠償措置の金額は、1200億円とされている(同条1項)。これを超える損害の賠償に備える資金を確保する必要があることは、否定できない。そして、同法16条1項は、政府は、原子力事業者が損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、こ の法律の目的を達成するために必要があると認めるときは、損害を 賠償するために必要な援助を行う旨を定めるが、この規定をもって、政府が賠償のために備えておくべきであった資金の不足分を当然に補填することになるとも解されない。原子力損害の賠償のために備えておくべきであった資金の不足分がない旨の控訴人の主張は、採用できない。 b 控訴人は、貫徹小委員会中間とりまとめにおいて、賠償負担金を小売料金のみで回収するとした場合、過去に安価な原子力発電による電気を等しく利用してきたにもかかわらず、原子力発電事業者から契約を切り替えた需要家が負担せず、引き続き原子力発電事業者から電気の供給を受ける需要家のみが全てを負担することになると の見解が示されている点に関して、①賠償負担金を託送料金に含めて回収する場合、過去に原子力発電 負担せず、引き続き原子力発電事業者から電気の供給を受ける需要家のみが全てを負担することになると の見解が示されている点に関して、①賠償負担金を託送料金に含めて回収する場合、過去に原子力発電による電力を使用していない需要家からも徴収することになり、そのことを正当化することはできない、②電力自由化の下では、電気料金は競争的市場で決定されるため、原子力発電事業者から電気の供給を受けた場合とそれ以外の 事業者から電気の供給を受けた場合とで電気料金は基本的に同一であるから、原子力発電事業者から契約を切り替えた需要家が賠償負担金を負担しないということにはならず、引き続き原子力発電事業者から電気の供給を受ける需要家のみが全てを負担するということにもならない、と主張する。 しかし、①については、個々の需要家ごとに過去の原子力発電による電気の利用の有無を確認して需要家ごとに個別に託送料金を定めることは現実的に不可能であるから、託送料金の制度設計をするに当たっては、電気の需要家を総体として捉えざるを得ない。そして、電気の需要家を総体として捉えれば、全需要家が過去に安価な 原子力発電による電気を等しく利用してきたとみることができる。 原子力損害の賠償に備えるための資金の過去分について託送料金を通じて全需要家から公平に回収することには、正当性があるといえる。 ②については、電力自由化の下で電気料金が競争的市場で決定される結果、原子力発電による電気の料金とそれ以外の発電による電 気の料金の金額自体に違いが生じないことになるとしても、原子力発電事業者が賠償負担金を電気料金に含めて回収すれば、原子力発電による電気を購入した需要家だけが賠償負担金を負担し、それ以外の発電による電気を購入する需要家 違いが生じないことになるとしても、原子力発電事業者が賠償負担金を電気料金に含めて回収すれば、原子力発電による電気を購入した需要家だけが賠償負担金を負担し、それ以外の発電による電気を購入する需要家はこれを負担しないのであるから、需要家間の負担の公平を確保することができないことに変わ りはない。 (イ) 廃炉円滑化負担金について控訴人は、①原子力発電工作物の廃止に要する費用については、発電費用自己負担の原則からして、原子力発電事業者が当然負担すべきものである、②廃炉円滑化負担金により達成しようとする目的は、電 力行政一般が実現すべき公益的課題であり、送電に関する公益的課題とは関係がない、と主張する。 しかし、①については、原判決を引用して説示したとおり、廃炉円滑化負担金は、原発依存度の低減や廃炉の円滑な実施等のエネルギー政策の目的を達成するために導入された廃炉会計制度を継続するため に必要となるものであるから、控訴人の上記指摘を踏まえても、電気事業に係る公益的課題に要する費用に該当するとみることができる。 ②については、上記ア、イで説示したとおり、平成11年報告書が公益的課題として供給信頼度の確保、エネルギーセキュリティの確保や環境保全などを例示していること、法の平成11年改正時の国会審 議においても公益的課題の代表例として電源開発促進税の負担につい ての答弁がされていたこと、このような平成11年報告書や国会答弁を踏まえた上で託送供給制度の導入を内容とする法の平成11年改正が行われたことからすると、法は、送電に関する公益的課題に限定するのではなく、広く「電気事業に係る公益的課題に要する費用」を託送料金で回収すること(託送料金の仕組みを利用した回収スキーム) を想定 われたことからすると、法は、送電に関する公益的課題に限定するのではなく、広く「電気事業に係る公益的課題に要する費用」を託送料金で回収すること(託送料金の仕組みを利用した回収スキーム) を想定し、これを許容しているものと解するのが相当である。 (ウ) したがって、控訴人の上記主張を踏まえても、賠償負担金等が「電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用」に該当するとの判断は、左右されない。 エ法18条3項1号の「適正な原価」に賠償負担金等を含めることが原 価計算基準に照らして許されないか否か控訴人は、法18条3項1号の「適正な原価」が原価計算基準に従って算定された原価でなければならないとして、原価計算基準によれば原価性の否定される賠償負担金等を「適正な原価」に組み込むことが許されないと主張する。 確かに、原価計算基準は、実践規範として、企業における原価計算の慣行のうちから、一般に公正妥当と認められるところを要約して設定された、と認められる(甲41)。しかし、法には、18条3項1号の「適正な原価」について、原価計算基準により原価性が認められるものに限定することを定めた規定はない。これまで説示したとおり、法は、 経済産業大臣がその裁量により18条3項1号の「適正な原価」の具体的な算定方法を定めることを認め、「電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用」を原価に含めることを許容していると解される。原価計算基準により原価と認められないものを「適正な原価」に含めることを禁じているとは解されない。控訴人の上 記主張も、採用することはできない。 ⑵ 争点4(本件施行規則45条の21の2及び45条の21の5の合憲性)について控訴人は ることを禁じているとは解されない。控訴人の上 記主張も、採用することはできない。 ⑵ 争点4(本件施行規則45条の21の2及び45条の21の5の合憲性)について控訴人は、本件施行規則45条の21の2及び45条の21の5は、法令上の根拠なく一般送配電事業者に賠償負担金等の徴収義務及び原子力発電事業者への払渡義務を課するから違憲・違法である、と主張する。 しかし、一般送配電事業者は、小売電気事業者との間で経済産業大臣の認可を受けた託送供給等約款が適用される契約を締結して託送供給等を行うから(法18条2項参照)、同約款における託送料金を本件算定規則4条2項に従って賠償負担金相当金等を含むものとして定めれば、契約に基づき小売電気事業者から託送料金の支払を受けることで、当然に、小売電 気事業者から賠償負担金等を回収することになる。そして、賠償負担金は、原子力損害の賠償のために備えておくべきであった資金であり、廃炉円滑化負担金は、原子力発電工作物の廃炉を円滑に実施するために必要な資金であって、いずれも原子力発電事業者が一般送配電事業者の行う接続供給によって回収しようとするものである(本件施行規則45条の21の3第 1項及び45の21の6第1項)。一般送配電事業者からみれば、賠償負担金等の回収は、原子力発電事業者の要求を受けたものであり、その払渡しも当然必要となる(原子力発電事業者・一般送配電事業者間の契約関係)。このような一般送配電事業者による賠償負担金等の回収及び払渡しは、賠償負担金等につき法が許容する託送料金の仕組みを利用した回収ス キームを前提に、本件算定規則4条2項に基づいて賠償負担金相当金等を含めて託送料金が定められることにより、当然生じる手続というべきであり、このように考えること 送料金の仕組みを利用した回収ス キームを前提に、本件算定規則4条2項に基づいて賠償負担金相当金等を含めて託送料金が定められることにより、当然生じる手続というべきであり、このように考えることは、賠償負担金等の定義が本件施行規則において定められていることを踏まえても、左右されない。 そうすると、一般送配電事業者による賠償負担金等の回収及び払渡しに ついて定めた本件施行規則45条の21の2及び45条の21の5は、法 の委任に基づいて適法に定められた本件算定規則4条2項を実施するための一連の手続を規定し、法が許容するもの、と解するのが相当であり、本件施行規則の上記各規定により法の根拠なく一般送配電事業者に賠償負担金等の徴収義務及び払渡義務が課されている、と解することはできない。 これに関する控訴人の上記主張は、採用できない。 ⑶ 控訴人及び被控訴人は、その他種々の主張をするが、これらは、いずれも、本件の結論を左右しない。 3 結語よって、原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第3民事部裁判長裁判官久留島群一 裁判官秋本昌彦 裁判官山下隼人
▼ クリックして全文を表示