昭和51(く)3 保釈保証金没取決定に対する抗告事件

裁判年月日・裁判所
昭和51年1月28日 大阪高等裁判所
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判決文本文1,603 文字)

主文 本件抗告を棄却する。理由 本件抗告の趣意は、要するに、保釈保証金は、実刑判決確定後はもつぱら確定した刑の執行を担保するためのものであるから、保釈を許された者が刑の執行のため収監された場合には、右保釈保証金はその目的を失いこれを没取することはその趣旨を超えるものであつて許されないものであるのに、原決定は、Aが刑の執行のため収監された後になされたもので違法なものであるから、これが取消を求める、というものである。そこで神戸地方裁判所姫路支部昭和五〇年(む)第三一八号保釈保証金没取請求事件記録を検討するに、Aは、昭和五〇年六月一八日同裁判所同支部において覚せい剤取締法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反の罪により懲役一年六月の実刑判決の言渡を受けたが、同日保証金八〇万円をもつて保釈を許されたこと、同年一一月六日大阪高等裁判所において控訴棄却の判決があり、同月二一日右実刑判決の確定をみたこと、神戸地方検察庁姫路支部の検察官は、Aに対し右刑の執行のため同年一二月一五日同庁に出頭すべきことを命じたが、同人は正当な理由がなくこれに応じなかつたこと、そのため同月二〇日検察官から原裁判所に対しAに対する保釈保証金の没取請求がなされたが、同月二三日にいたり同人は姫路少年刑務所本町拘置支所に右刑の執行のため収監されたこと、その後同月二六日前記保釈保証金のうち金三〇万円を没取する旨の原決定がなされたこと、以上の事実が認められる。これによれば、原決定は、Aがの執行のため収監された後になされたものであることが明らかである。<要旨>しかしながら、保釈保証金は、逃亡等所定の場合には没取の制裁があることによつて保釈中の者に心理的な</要旨>強制を加え、公判廷への出頭及び適正な裁判の遂行を確保し、さらに禁錮以上の実刑 。<要旨>しかしながら、保釈保証金は、逃亡等所定の場合には没取の制裁があることによつて保釈中の者に心理的な</要旨>強制を加え、公判廷への出頭及び適正な裁判の遂行を確保し、さらに禁錮以上の実刑判決確定後はその刑の執行を担保するためのものであるから、保釈を許された者が、禁錮以上の実刑判決を受けその確定後に、刑の執行のため呼出を受けながら正当な理由がなく出頭せずあるいは逃亡したときは、刑訴法九六条三項によりその保証金の全部又は一部を没取することができるのであつて、たとえその決定前に収監されることがあつたとしても、没取の防げとなるものではない。 び適正な裁判の遂行を確保し、さらに禁錮以上の実刑判決確定後はその刑の執行を担保するためのものであるから、保釈を許された者が、禁錮以上の実刑判決を受けその確定後に、刑の執行のため呼出を受けながら正当な理由がなく出頭せずあるいは逃亡したときは、刑訴法九六条三項によりその保証金の全部又は一部を没取することができるのであつて、たとえその決定前に収監されることがあつたとしても、没取の防げとなるものではない。論旨は、収監後においては保釈保証金はその目的を失いこれを没取することはその趣旨を超えるものである旨主張するが、収監後はもはや将来の収監確保を考える余地のないことは当然であるけれども、前述のとおり、もともとこの場合の保釈保証金は、没取の制裁のもとに刑の執行を担保するためのものであるから、正当な理由がなく呼出に応じなかつた事実があれば、その制裁として、その後の収監の有無にかかわらず没取の許されることはいうまでもないことであつて、それが保釈保証金の趣旨を超えるものでないことも明白である。それゆえ、論旨の援用する当裁判所昭和三八年(く)第六号同年二月二日決定の見解には賛成することはできず、本件請求を認容した原判断は正当であつて、論旨は理由がない。よつて刑訴法四二六条一項により主文のとおり決定する。(裁判長裁判官河村澄夫裁判官深谷眞也裁判官近藤和義)

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