- 1 -平成25年4月11日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成24年(ネ)第10092号特許権侵害差止等請求控訴事件原審・東京地方裁判所平成22年(ワ)第24479号口頭弁論終結日平成25年3月14日判決控訴人兼被控訴人(以下「第1審原告」という。)フルタ電機株式会社同訴訟代理人弁護士小南明也被控訴人兼控訴人(以下「第1審被告」という。)株式会社親和製作所同訴訟代理人弁護士松本直樹同弁理士内藤俊太 主文 1 第1審原告及び第1審被告の本件各控訴をいずれも棄却する。 2 第1審原告の控訴に係る控訴費用は第1審原告の,第1審被告の控訴に係る控訴費用は第1審被告の各負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 第1審原告(1) 原判決主文第3項を次のとおり変更する。 第1審被告は,第1審原告に対し,1億0580万2992円及びうち2000万円に対する平成22年6月8日から,うち8580万2992円に対する平成23年11月16日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は,第1,2審とも,第1審被告の負担とする。 - 2 -(3) 仮執行宣言 2 第1審被告(1) 原判決中,第1審被告敗訴部分を取り消す。 上記部分に係る第1審原告の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は,第1,2審とも,第1審原告の負担とする。 第2 事案の概要本判決の略称は,以下に掲記するほか,原判決に従う。 1 本件は,生 上記部分に係る第1審原告の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は,第1,2審とも,第1審原告の負担とする。 第2 事案の概要本判決の略称は,以下に掲記するほか,原判決に従う。 1 本件は,生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置に関する特許第3966527号の特許権(本件特許権)を有する第1審原告において,第1審被告が製造・販売等している原判決別紙物件目録1及び2記載の各装置(被告装置)が本件発明の技術的範囲に属し,また,第1審被告が製造・販売等している同目録3及び4記載の各回転板(本件回転板)並びに同目録5記載のプレート板(本件プレート板)が被告装置の「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)に当たり(主位的主張),あるいはそれら自体が本件発明の技術的範囲に属する(予備的主張)と主張して,第1審被告に対し,本件特許権に基づき,被告装置並びに本件回転板及び本件プレート板(以下,これらを総称して,「被告製品」という。)の製造・販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害金3億9000万円及びうち2000万円に対する不法行為の日の後(警告書送達日の翌日)である平成22年6月8日から,うち3億7000万円に対する不法行為の日の後(平成23年11月9日付け訴え変更申立書送達日の翌日)である平成23年11月16日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は,被告製品の製造・販売等の差止め及び廃棄並びに損害金1580万2992円及びこれに対する不法行為の日の後である平成22年6月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,第1審原告の請求を認容した。 - 3 -これに対し,第1審原告は,損害金1億0 法行為の日の後である平成22年6月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,第1審原告の請求を認容した。 - 3 -これに対し,第1審原告は,損害金1億0580万2992円及びうち2000万円に対する平成22年6月8日から,うち8580万2992円に対する平成23年11月16日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で一部控訴し,第1審被告は,敗訴部分について全部控訴した。 2 争いのない事実等争いのない事実等は,原判決「事実及び理由」の第2の2記載のとおりであるから,これを引用する。 3 争点(1) 被告装置が本件発明の技術的範囲に属するか否か(争点(1))ア構成要件A3の充足性イ構成要件Bの充足性ウ構成要件B’の充足性(2) 本件回転板及び本件プレート板を製造・販売等する行為が本件特許権に対する間接侵害(特許法101条1号)に当たるか否か(争点(2))(3) 第1審被告の過失の有無(争点(3))(4) 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか否か(争点(4))(5) 第1審原告の損害額(争点(5))(6) 消滅時効の成否(時効の中断の有無)(争点(6))第3 当事者の主張当事者双方の主張は,原判決19頁7行目の「本件明細書」を「本件明細書等」と,26頁26行目の「争点(4)」を「争点(5)」と,41頁21行目の「争点(5)」を「争点(6)」と各改め,次のとおり当審における主張を付加するほか,原判決「事実及び理由」の第3記載のとおりであるから,これを引用する。 〔当審における第1審被告の主張〕 1 争点(1)(被告装置が本件発明の技術的範囲に属するか否か)について次のとおり,被告装置は本件発 及び理由」の第3記載のとおりであるから,これを引用する。 〔当審における第1審被告の主張〕 1 争点(1)(被告装置が本件発明の技術的範囲に属するか否か)について次のとおり,被告装置は本件発明の技術的範囲に属するということはできない。 - 4 -(1) 構成要件A3の充足性についてア共回りの意義について(ア) 原判決は,詰まりをもたらす原因に着目せず,詰まって無流出のときの生海苔混合液(タンク中の混合液)の回転状態を本件発明における「共回り」であるとするが,この状態は詰まったことから生じた結果にすぎない。タンク中の混合液の回転自体は,正常な状態でも同様であるし,タンク中を漂って回転している生海苔は詰まりには直接関係なく,詰まるのはクリアランスを構成する両側(回転板と枠板)に接して留まった生海苔だけである。生海苔異物分離除去装置は,細い隙間から生海苔を通過させ,通過できない異物を除去するものであるから,通過すべき生海苔をスムーズに通過させることが重要である。本件発明は,通過すべき生海苔をスムーズに通過させようとする際に生じる障害である「共回り」の現象を解決課題とするものであるから,「共回り」とは,隙間のところで生じている現象を意味するものであることは明らかである。原判決は,隙間にかかった生海苔が固定側に同期して塞いでいても,なお混合液が共回りの状態にあると解するものであるが,この状態に対して本件回転板に本件プレート板を付けても,共回り状態を解消することはできない。構成要件A3は,「共回りを防止する」,すなわち,回るのを止めることを規定するが,原判決の「共回り」の解釈によると,ともかく流出が止まっている状態を改善することが共回りの防止に該当することになるから,共回りの防止とは,下方へ流出させるという不自然な意味に解するこ とを規定するが,原判決の「共回り」の解釈によると,ともかく流出が止まっている状態を改善することが共回りの防止に該当することになるから,共回りの防止とは,下方へ流出させるという不自然な意味に解することになる。 (イ) 原判決は,本件明細書等(【0003】)について,混合液が回転板とともに回り(回転し),クリアランスに吸い込まれない現象について,流出が止まった状態でタンク中を漂って回転している現象を指すと誤って解釈したが,クリアランスに「喰込だ状態」か否かを問わず,回転板と共に回り,クリアランスに留まって通過しない状況を指していると解すべきである。そもそも,本件発明は,回転板式の生海苔異物分離除去装置における「共回り」による生海苔の通過障害を解決課題とするものであるが,本件明細書等には,当該課題に関する具体的解析等が記載- 5 -されているわけではなく,内容の乏しい本件明細書等に係る本件特許について,強力な権利が付与されるべきではない。 (ウ) 攪拌の技術分野における「共回り」とは,流体が回転翼と同じ回転速度(角速度)で回転(すなわち同期回転)する現象を意味する。被告装置では,攪拌羽根ではなく単なる回転板を備えていることや,タンクの形が丸くなく,多角形であることなどから,タンクの混合液は,回転板より遅く回転しており,また,ある程度の上下方向の流れによる攪拌も生じているから,攪拌の技術分野における固体的回転部,すなわち共回りは生じていない。クリアランスからの流出の有無にかかわらず,回転とともに上下方向の流れもある程度存在して攪拌が生じている以上,原判決の共回りの解釈のように,「クリアランスからの下方向の流出が止まった状態における回転」が生じることは,実際にはあり得ない。現実に観察される現象の中で「共回り」と呼べるのは,回転板と同じ回転 ,原判決の共回りの解釈のように,「クリアランスからの下方向の流出が止まった状態における回転」が生じることは,実際にはあり得ない。現実に観察される現象の中で「共回り」と呼べるのは,回転板と同じ回転速度で回転する生海苔であるが,そのような生海苔は回転板に設けたプレート板では除去できないから,本件プレート板は「共回り」を防止するものではない。 (エ) 生海苔は,クリアランスに達する前にはタンク中の混合液の中で漂っているので,混合液の回転速度と同じ速さで回転すると同時に,上下方向にも動いている。この際の回転は,回転板よりはずっと遅いので,クリアランスの所に達した瞬間には,生海苔は回転板側とも固定側(枠板部)とも相対速度のある状態である。 問題なく通過する生海苔は,回転板側と固定側との間で展開されてすぐに通過するが,展開されずに引っ掛かってしまった生海苔は,この状態でそれぞれとの間で摩擦力が生じるところ,少しでも摩擦力の大きい方に速度が近づいていき,一瞬のうちにどちらか一方と同じ速度に達して同期状態となる。このうち,回転板に同期した状態が共回りである。構成要件A3の「この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」とは,このような状態を防止する手段を意味する。 イ本件プレート板について前記アのとおり,本件プレート板は「共回り」を防止するものではないから,構- 6 -成要件A3を充足するということはできない。 (2) 構成要件Bの充足性についてア円周面について本件プレート板は,被告装置の回転板の上面(厳密にはそこに取り付けられた環状板の上面)である平面に取り付けられている。円周面とは,一般的に円柱の側面の形状の面を意味し,平面は含まれないから,本件プレート板は円周面に設けられているとはいえない。本件明細書等には, られた環状板の上面)である平面に取り付けられている。円周面とは,一般的に円柱の側面の形状の面を意味し,平面は含まれないから,本件プレート板は円周面に設けられているとはいえない。本件明細書等には,回転板の平面部分を円周面とするかのような記載があるが,円周面の一般的な意味からすると,誤記と解される。 イ本件プレート板について本件プレート板は,1つの小さな部品であるから,爪部と基部とに分けた上で,爪部を基部に接合しているなどとする原判決は誤りである。 また,本件プレート板と本件回転板とは別の部品であり,本件プレート板の一部である基部を想定し,それが本件回転板の一部となっているものでもない。 2 争点(2)(本件回転板及び本件プレート板を製造・販売等する行為が本件特許権に対する間接侵害(特許法101条1号)に当たるか否か)について次のとおり,本件回転板及び本件プレート板を製造・販売等する行為は本件特許権に対する間接侵害(特許法101条1号)に該当するということはできない。 (1) 本件回転板についてア本件回転板が被告装置のために必須であるからといって,必ずしも本件発明を実施しないで使うことが使用形態として認められないというわけではない。本件出願日前においては,本件プレート板を付さない状態で被告装置が販売され,広く使われていたのであって,本件プレート板を使用しない形態が被告装置の経済的,商業的又は実用的な使用形態と認めることはできないとした原判決の認定は,事実を無視したものである。 イ特許法101条1号は,他の用途がないことを要件とするものであって,「全く使用しないという使用形態」が要件となるわけではない。 - 7 -被告装置のユーザーの多くは,ハタキと言われる硬い生海苔(又は根を一緒に採取した生海苔)が採取される限 件とするものであって,「全く使用しないという使用形態」が要件となるわけではない。 - 7 -被告装置のユーザーの多くは,ハタキと言われる硬い生海苔(又は根を一緒に採取した生海苔)が採取される限られた時期にだけ本件プレート板を付けて使用するものであって,それ以外の時期には本件プレート板を付けてはいないし,全く使用しないユーザーも存在する。被告装置は,出荷の際,回転板にプレート板を取り付けるためのビス穴があり,本件プレート板も同時に納品されているが,本件プレート板は取り付けられておらず,本件プレート板を使用するか否かは,ユーザーの選択に委ねられているものである。 (2) 防止手段と防止装置について原判決は,装置は手段を含むとするが,本件発明は「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」であって,手段を含むとはされていない。本件発明は,防止手段が突起物であることと,そのような構成の「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」が規定されているにすぎず,「回転板」や「選別ケーシング」が「防止装置」の一部となるものではない。仮に,本件プレート板が本件発明の技術的範囲に属するとしても,本件回転板や被告装置も本件発明の技術的範囲に属するということはできない。 3 争点(3)(第1審被告の過失の有無)について第1審被告は,第1審原告の主張を前提とした上で,第1審被告の無過失について主張したものであるにもかかわらず,原判決はこれを無視し,訂正の内容は重要なものではなく,過失の推定が覆されないとしたものであって,弁論主義に違反するというほかない。 4 争点(4)(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか否か)について次のとおり,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであって,本件特許に基づく るというほかない。 4 争点(4)(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか否か)について次のとおり,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであって,本件特許に基づく権利行使は許されない。 (1) 時機に後れた攻撃防御方法であることについてア続審制を採用する控訴審において,新たな主張が包括的に禁止されるもので- 8 -はない。本件では,原審において,審理計画に従って侵害論に係る議論を一旦終了させるという訴訟経過を経ているが,控訴審において事案を検討するに当たり,無効の抗弁について検討しないのはむしろ正義に反するものである。 イ本件において,原判決が「共回り」について誤って解釈したことから,特に無効の抗弁を提出することが必要となったものであり,また,原判決の解釈は,技術的に意義のないものであるから,このような解釈を前提とするならば,本件発明は必然的に無効にされるべきものである。 ウ控訴審において,無効の抗弁を提出できないのであれば,特許権侵害を主張された事案では,何の合理性がなくても無効の抗弁を主張しておく必要性が存在することになりかねず,訴訟経済に反し,不合理であるというほかない。 エしたがって,第1審被告の無効の抗弁の提出は,時機に後れた攻撃防御方法の提出であるということはできない。 (2) 特許法36条違反についてア明確性の要件違反及びサポート要件違反について(ア) 円周面について「円周面」とは,その字義によると,「物の外郭を成し,中心から等距離であって,角だっていないひろがり部分」を意味するものというべきである。 第1審原告は,本件プレート板を付ける本件回転板上面の環状板の上面も「円周面」に該当すると主張するものの,「円周面」との用語が何を意味するのかについて合 り部分」を意味するものというべきである。 第1審原告は,本件プレート板を付ける本件回転板上面の環状板の上面も「円周面」に該当すると主張するものの,「円周面」との用語が何を意味するのかについて合理的な説明をせず,第1審原告の説明は矛盾するものというほかなく,そのような事実からすれば,「円周面」については明確性を欠くものというべきである。 (イ) 共回りについて本件発明は,「回転板及び/又は選別ケーシングの円周面」とするものであり,あたかも突起物を回転板だけに設けることも含むようにも解されるが,「共回り」を防止するとの要件も併せて検討すると,突起物を回転板に設置したところで,突起物は回転板とともに回り,同じく回転板とともに回る生海苔の共回りを防止する- 9 -ことはできないから,本件明細書等の記載を考慮しても,請求項の記載に基づいて「生海苔の共回りを防止する防止手段」を明確に把握することはできない。共回りについて,無流出時のタンク中の回転と解したり,クリアランスにかかった海苔の僅かな動きであると解すると,本件明細書等の開示内容に合致しないから,サポート要件に違反するものである。 イ実施可能要件違反について本件発明は,「この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」と定めるところ,防止手段を「生海苔の共回りを防止する」との限定は,請求項が達成すべき結果による物の特定であって,防止手段である突起物を具体的にどの円周面に設ければ共回りを防止できるかについては,本件出願日当時の当業者の技術常識を参酌しても自明ということはできない。しかも,防止手段としての突起物を回転板のいずれの円周面に設置したところで,生海苔の共回りを防止できるはずがない。したがって,実施可能要件にも違反するものである。 (3) 乙38文 とはできない。しかも,防止手段としての突起物を回転板のいずれの円周面に設置したところで,生海苔の共回りを防止できるはずがない。したがって,実施可能要件にも違反するものである。 (3) 乙38文献に記載された発明に基づく容易想到性についてア乙38文献に記載された発明について(ア) 乙38文献(実願平1-52564号(実開平2-142631号)のマイクロフィルム)は,湿式微粒分散・粉砕装置に関する文献であるところ,本件発明は生海苔異物分離除去装置から生海苔の共回り防止装置を抽出した発明であり,乙38文献に記載された発明は湿式微粒分散・粉砕装置からメディア分離機構を抽出した発明であるから,各発明を対比する前提に何ら問題はない。 乙38文献には,「固定スリット片と,固定スリット片内において微小間隙をもって回転する回転スリット板と,ベッセルと,スリット機構の前に取り付けて回転スリット板と同じ回転方向に回転する分離羽根と,液出口と,を有するメディア分離機構であって,回転スリット板のベッセル内部分に分離羽根が同軸に突設されており,ベッセルにスラリーが供給され,ベッセル内にメディアを内蔵し,固定スリット片と回転スリット板との間のセパレーション用のスリットで分離対象物たるメ- 10 -ディアが分離され,乙38文献の第1図,第2図の固定スリット片と液出口とを含む領域にメディアが分離されたスラリーが貯蔵され,スリット機構前に設けられた分離羽根によりメディアの固着化を防止することができる発明」(以下「乙38発明」という。)が記載されている。 (イ) 乙38発明における固定スリット片と液出口とを含む領域が本件発明の構成要件A1における「排出口を有する選別ケーシング」に,回転スリット板が構成要件A2の「回転板」にそれぞれ相当する。また,乙38発明 乙38発明における固定スリット片と液出口とを含む領域が本件発明の構成要件A1における「排出口を有する選別ケーシング」に,回転スリット板が構成要件A2の「回転板」にそれぞれ相当する。また,乙38発明のベッセルは,構成要件A5の「生海苔混合液槽」のうち,「生海苔混合」を除く「液槽」に相当する。 さらに,乙38発明の分離羽根は,構成要件B1を充足し,構成要件B2のうち,突起物を選別ケーシング側に固定するのではなく回転板と共に回るような構成としたことに対応する。 (ウ) 本件発明3と乙38発明との相違点は,次のとおりである。 a 相違点1:本件発明3は,生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置を対象とする発明であり,分離対象物が異物であり,液が生海苔混合液であり,液槽は生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽であるのに対して,乙38発明は,メディア分離機構を対象とする発明であり,分離対象物がメディアであり,液がスラリーであり,液槽はスラリーが供給されメディアを内蔵するベッセルである点b 相違点2:構成要件A3の「防止手段」が生海苔の共回りを防止するのに対して,乙38発明の分離羽根はメディアの固着化を防止する点c 相違点3:本件発明3では「突起物」を「回転板の円周面」に設けるのに対して,乙38発明ではそのような規定がされていない点d 相違点4:乙38発明は,構成要件A4の「異物排出口」を有していない点イ相違点に係る判断について(ア) 相違点1について当業者は,乙38発明のメディア分離機構及び乙39文献(特開平8-1406- 11 -37号公報)に記載された発明に基づいて,分離対象物をメディアから異物に変更し,ベッセルを生海苔混合液槽として適用することにより,相違点1の構成を容易に想到し得たもの 開平8-1406- 11 -37号公報)に記載された発明に基づいて,分離対象物をメディアから異物に変更し,ベッセルを生海苔混合液槽として適用することにより,相違点1の構成を容易に想到し得たものというべきである。 なお,乙40文献(特開平6-121660号公報)によれば,生海苔異物分離除去装置において,生海苔混合液が通過するスリットが異物や生海苔で詰まりやすいことは当業者に周知の事実であり,その詰まりを除去するためにスリットに接するように清掃装置を設置することも当然に実施されていたことにすぎないということができる。 (イ) 相違点2について本件発明3における「生海苔の共回り」とは,本来,クリアランスに接した生海苔が回転板と同期回転することを意味するものであるが,極めて僅かな動きを共回りとする第1審原告の主張を前提とすると,相違点2は実質的なものということはできない。乙38文献には,スリット機構前に設けられた分離羽根によりメディアの固着化を防止可能であることが記載されているのであるから,生海苔異物分離除去装置における生海苔の詰まり除去を課題とする当業者にとって,乙38発明のメディア分離機構を生海苔異物分離除去装置に適用する動機付けが認められる。 また,当業者は,乙38発明のメディア分離機構を生海苔異物分離除去装置に適用する際,生海苔の共回りを防止することを目的として,本件発明3のいずれかの場所,例えばクリアランスの前(乙38発明のスリット機構前)に分離羽根に相当する「防止手段」を設けることを容易に想到するものというべきであるから,相違点2も,当業者が容易に想到し得たものというべきである。 (ウ) 相違点3について乙38発明のメディア分離機構を生海苔異物分離除去装置に適用する際,生海苔異物分離除去装置のクリアランス前に, 点2も,当業者が容易に想到し得たものというべきである。 (ウ) 相違点3について乙38発明のメディア分離機構を生海苔異物分離除去装置に適用する際,生海苔異物分離除去装置のクリアランス前に,乙38発明の分離羽根に相当する突起物であって,回転板と同じ回転速度で回転するものを,回転板の一部であってクリアランス前に近い位置に設けようとすることは当業者が当然に行う設計的行為であるか- 12 -ら,相違点3も,当業者が容易に想到し得たものというべきである。 (エ) 相違点4について当業者は,乙38発明のメディア分離機構を生海苔異物分離除去装置に適用する際,乙39文献に記載された発明を参酌し,構成要件A4のような異物排出口を設けることに何ら困難性は存しないし,食品となる生海苔を取り扱う装置において洗浄の必要性は大きく,その際の洗浄水の出口ともなる異物排出口を用意することは当然であるから,相違点4も,当業者が容易に想到し得たものというべきである。 ウ以上によれば,本件発明3は,乙38発明及び乙39文献に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。本件発明4についても,同様である。 (4) 本件発明と乙3文献に記載された発明との同一性について乙3文献(特開平11-285365号公報)には,海苔原草の異物除去装置に関する発明が開示されているところ,同発明は,クリアランスに原草が詰まりやすいという本件発明と同様の課題があることを前提として,フィルタプレートの外周面にワイパやブラシを設けることによってクリアランスの詰まりを防止する構成を有するのみならず,本件発明3の構成要件A1ないし3,5及びBと同様の構成を有し,本件発明3とは,構成要件A4の異物排出口について記載されていない点において相 てクリアランスの詰まりを防止する構成を有するのみならず,本件発明3の構成要件A1ないし3,5及びBと同様の構成を有し,本件発明3とは,構成要件A4の異物排出口について記載されていない点において相違する。 しかしながら,生海苔異物分離除去装置の技術分野において,異物排出口を設けることは周知・慣用技術である。また,乙3文献に記載された発明において,原草タンクに異物排出口を設けるか否かは,課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。 したがって,本件発明3と乙3文献に記載された発明とは,実質同一である。本件発明4についても,同様である。 5 争点(5)(第1審原告の損害額)について(1) 損害額算定の対象について- 13 -原判決は,被告装置自体が本件特許の侵害品であることについて理由を述べることなく被告装置自体を損害額の計算対象としており,明らかに誤りである。 本件プレート板は,生海苔の状態等によってはそれなりに役に立つ場面があり,単なる小さな金属板を用意する僅かなコストを上回るメリットが存在することから用意されているものではあるが,主に役に立つのはいわゆるハタキの時期であって,装置自体の意義に比べると,その経済的価値はかなり限定されるものにすぎない。 (2) 第1審被告の利益についてア第1審被告による被告装置の製造及び販売は,強いブランド力を有する渡邊機開工業と競合するため,十分な競争力のある価格設定が必要なだけでなく,配送の体制やメンテナンスについても手間やコストをかけたサービスを提供する必要があり,十分な利益を得られていない。仮に,被告装置の販売分が渡邊機開工業のシェアにかかわらず第1審原告の売上げとなったとしても,当然に変動費の負担が必要となるから,特許法102条2項の利益について,変動費を控除する を得られていない。仮に,被告装置の販売分が渡邊機開工業のシェアにかかわらず第1審原告の売上げとなったとしても,当然に変動費の負担が必要となるから,特許法102条2項の利益について,変動費を控除することは当然である。 イメンテナンスについて第1審原告は,第1審被告がメンテナンス作業により利益を得る目的で被告装置自体は廉価販売している旨の主張をするが,独自にメンテナンスサービスを提供する販売店もあり,第1審被告が作成した各年のメンテナンス価格表に基づいて料金を徴収しても,必ずしも利益を得られるものではない。メンテナンス作業は,個別の手間がかかるために利益を上げるのが難しいところ,特に第1審被告は,全国に営業所を有するものではなく,ユーザーが全国に散在しているため,旅費や時間の負担が大きいから,メンテナンス作業の利益を前提に販売価格を設定できるような状況にはない。 (3) 変動費についてア原判決は,交際接待費,会議費及び販売促進費の各販売管理費並びに手形割引料について,変動費には該当しないとする。しかし,歳暮や中元は売上げのない- 14 -ところには出さないし,食事代も,納品や立ち上げ試運転等で顧客と会う機会が増加するのに応じて必要となる。協賛金も,売上げのあるお得意様に対する感謝の印として用いており,売上げが増えれば当然に増加するものである。 また,手形割引料は営業外費用ではあるが,売上げを手形で受け取ることから直接に必要となるものである。被告装置は,在庫を保有し,サイトの長い手形で販売しなければならないことが多いため,売る台数が増えれば手形割引料も長短借入金利息も増えてしまう状況にある。 イ運搬費の一部は,数量に厳密には即していないが,現に支出されている。 (4) 第1審原告のシェアについて本件における損 台数が増えれば手形割引料も長短借入金利息も増えてしまう状況にある。 イ運搬費の一部は,数量に厳密には即していないが,現に支出されている。 (4) 第1審原告のシェアについて本件における損害算定期間よりも古い年度ではあるが,第1審被告が生海苔異物分離除去装置に係る特許権に基づいて第1審原告を被告として提起した特許権侵害訴訟の判決(乙43。以下「乙43判決」という。)によれば,第1審原告は,平成10年度から同12年度の各年度に合計534台の同種製品を販売したと認定されているところ,第1審被告が上記特許権に基づいて渡邊機開工業を被告として提起した特許権侵害訴訟の判決(乙55。以下「乙55判決」という。)によれば,渡邊機開工業は同一の年度に合計1761台の同種製品を販売したと認定されている。 後の年度における第1審原告の売上げは,第1審被告による特許権の権利行使の影響もあり,さらに減少しているものである。いずれにせよ,渡邊機開工業の販売台数は第1審原告の3倍以上はあるから,仮に第1審被告が被告装置を販売しなかった場合には,そのうちの4分の3は渡邊機開工業の売上げになったであろうことが推測され,第1審原告の損害は4分の1に限られるというべきである。 (5) 弁護士費用相当損害金について弁護士強制制度が採用されていない以上,弁護士費用は各自が負担するのが原則であり,諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り,弁護士費用相当損害金として認められるにすぎない。 - 15 -〔当審における第1審原告の主張〕 1 争点(1)(被告装置が本件発明の技術的範囲に属するか否か)について次のとおり,被告装置は本件発明の技術的範囲に属するものである。 (1) 構成要件A3の充足性についてア原判決は,同期回転についても共回 被告装置が本件発明の技術的範囲に属するか否か)について次のとおり,被告装置は本件発明の技術的範囲に属するものである。 (1) 構成要件A3の充足性についてア原判決は,同期回転についても共回りに含まれるとした上で,本件明細書等の記載や語義から,同期回転に限定解釈することはできないとするものである。第1審被告は,本件明細書等に基づく理由を示さないまま,同期回転に限定解釈すべきであると主張しているにすぎないところ,本件明細書等には,そもそも「同期」などと記載すらされていないものである。 イ本件発明は,生海苔異物分離除去装置に係る発明であり,攪拌装置とは異なるから,攪拌分野における語義を前提とする第1審被告の主張は失当である。 ウ生海苔が回転板に同期した状態が生じること自体は否定しないが,一般的には,その部分も含めた周方向に回転する部分全体を「共回り」と称していることは明らかである。 (2) 構成要件Bの充足性についてア円周面について本件明細書等(【0026】【図4】~【図6】)によれば,本件発明の「円周面」とは,「クリアランスS」を形成するために向かい合った面だけではなく,広く円周を形成する部分にある面という一般的意義を有するものというべきである。 イ本件プレート板について原判決は,「円周面」の一般的意義について触れていないが,少なくとも,被告装置の構成が「円周面」に本件プレート板を設ける構成であるとするものである。 また,被告装置は,本件回転板の上面端部に本件プレート板が取り付けられ,クリアランスを越えて爪部を設けるようにして突設固定されているから,この構成が「回転板の円周面に設ける構成」であることは当然である。 2 争点(4)(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか否か)につ- 16 -いて うにして突設固定されているから,この構成が「回転板の円周面に設ける構成」であることは当然である。 2 争点(4)(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか否か)につ- 16 -いて次のとおり,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであるということはできない。 (1) 時機に後れた攻撃防御方法であることについてア本件は,平成22年6月30日に訴え提起されたものであるところ,平成23年10月19日の原審第8回弁論準備手続期日において,被告装置が本件発明3の技術的範囲に属するとの原審裁判所の心証が開示され,いわゆる損害論の審理が行われることになった。第1審被告が本件特許について無効審判請求をしたのは平成24年4月27日であり,原審において無効審判請求に関する書類を書証として提出したのは損害論の審理が終わりに近づいた段階であった。第1審被告は,無効審判請求と同旨の無効の抗弁を主張しようとしたが,原審裁判所は時機に後れた攻撃防御方法であるとして許可しなかった。原審において時機に後れたものとして却下された主張が,控訴審において自由に提出できるのであれば,民訴法157条(特許法104条の3第2項)の規定は無意味なものとなる。 イ第1審被告は,当初は非侵害が当然に認められるものと考えて無効の抗弁を主張しなかったとするのであるから,自ら本件に対する見通しを誤り,主張内容や提出の時機に関する見込み違いを認めたものであって,信義に従って誠実に訴訟追行をしたとは到底いえるものではない。 ウ第1審被告の無効の抗弁のうち,特許法36条違反に係る無効理由については,特許権侵害訴訟を提起された者として本件明細書等を速やかに検討することにより,早期に主張することが可能であったはずである。 また,第1審被告が無効理由として引 36条違反に係る無効理由については,特許権侵害訴訟を提起された者として本件明細書等を速やかに検討することにより,早期に主張することが可能であったはずである。 また,第1審被告が無効理由として引用する公知文献のうち,乙38文献を主引用例とする無効理由に関しては,第1審被告は,乙38文献について損害論の初期段階で指摘しながら無効の抗弁として主張しないことを明示していたものであり,副引用例である乙39文献及び乙40文献は,いずれも侵害論の主張において引用されていたものである。 - 17 -さらに,乙3文献に基づく無効理由に関しては,第1審被告は,乙3文献について本件の初期段階(答弁書提出段階)で指摘しながら,無効の抗弁として主張しないことを明示していたものである。 したがって,第1審被告が,侵害論の審理が終了し,侵害との心証が開示されてから半年以上も経過した段階でようやく本件特許について無効審判請求をし,控訴審に至って初めて無効の抗弁について主張したものである以上,この主張は,訴訟完結を遅延させることのみを目的とした故意又は重大な過失による時機に後れた攻撃防御方法の提出というほかなく,却下されるべきである。 (2) 特許法36条違反についてア円周面について「円周面」とは,円周が存在した場合にその近傍にある面であり,「円周を形成する部分にある面」という程度の意味であって,回転板の側面部分のみならず,回転板の上面部分も含まれるから,いわゆる明確性の要件を欠くものとはいえない。 イ共回りについて第1審被告は,「共回り」につき,本件明細書等の記載に基づかない独自の解釈を前提として,いわゆるサポート要件及び実施可能要件を充足しないと主張するが,「共回り」の意義については原判決が認定するとおりであって,本件明細書等に接した当 件明細書等の記載に基づかない独自の解釈を前提として,いわゆるサポート要件及び実施可能要件を充足しないと主張するが,「共回り」の意義については原判決が認定するとおりであって,本件明細書等に接した当業者は,自らが実施しようとする回転板や選別ケーシングの具体的形状に応じて,適宜,「共回り防止手段」たる「突起物」を円周面として想定される任意の位置に設置し,その効果を検証することが可能であるから,サポート要件及び実施可能要件を充足することは明らかである。 (3) 乙38文献に記載された発明に基づく容易想到性についてア第1審被告は,乙38文献に記載された発明について,乙38文献の技術分野,課題,構成,作用効果等を全く無視し,記載の一部だけを抜き出して都合の良いように誤った引用をしており,第1審被告の上記認定は失当である。 イ乙38文献に記載された発明は,湿式微粒分散・粉砕装置(ビーズミル)に- 18 -関する発明であって,(横型)ベッセルにおいて,処理対象となるスラリーと極めて硬度の高いジルコニア等のビーズ(メディア)を混ぜ,剪断力を発揮させてスラリーを粉砕・分散させるものである。 他方,本件発明は,生海苔異物除去装置に関する発明であって,生海苔混合液槽に生海苔混合液以外の物(メディア)を入れて,生海苔混合液を粉砕させようとするものではないから,乙38文献に記載された発明とは対比の前提を全く欠くものである。 また,乙38文献に記載された発明の回転スリット板と分離羽根は,本件発明の高速回転する回転板と突起・板体の突起物を回転板に設ける構成にそれぞれ相当するものではない。 本件発明と乙38文献に記載された発明との一致点に係る第1審被告の主張が誤りである以上,両発明の相違点は第1審被告が主張する相違点に限られるものではない。 にそれぞれ相当するものではない。 本件発明と乙38文献に記載された発明との一致点に係る第1審被告の主張が誤りである以上,両発明の相違点は第1審被告が主張する相違点に限られるものではない。 ウ本件発明と乙38文献に記載された発明との一致点及び相違点に係る第1審被告の主張が誤りである以上,相違点の判断に係る主張も,同様に誤りである。 エ以上によれば,本件発明は,乙38文献に記載された発明及び乙39文献に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (4) 本件発明と乙3文献に記載された発明との同一性についてア第1審被告は,乙3文献について恣意的に一部を抜き出して都合の良いような発明が記載されている旨主張するものであるが,本件発明と乙3文献に記載された発明との同一性を主張する以上,乙3文献全体の記載(技術分野,課題,構成,作用,効果等)からどのような発明が記載されているかを特定した上で,本件発明と対比する必要があるところ,第1審被告は乙3文献に記載された発明を具体的に特定していないから,第1審被告の主張は失当であるというほかない。 イ乙3文献に記載された発明は,海苔原草の異物除去装置に関する発明ではあ- 19 -るが,本件発明とは異なり,高速回転させた回転板とクリアランスを利用するものではなく,本件発明の課題を全く意識していない。 また,乙3文献に記載された発明のクリアランスは,生海苔混合液を積極的に通過させて異物と生海苔を分離させようとするものではなく,クリアランスの形状自体が本件発明とは異なるものである。 しかも,乙3文献に記載された発明において,生海苔混合液に何らかの流動化エネルギーが働くことは否定しないが,タンクの底部に設けた回転板の回転によって生海苔混 体が本件発明とは異なるものである。 しかも,乙3文献に記載された発明において,生海苔混合液に何らかの流動化エネルギーが働くことは否定しないが,タンクの底部に設けた回転板の回転によって生海苔混合液に渦を発生させ,遠心力を働かせて異物をタンク隅部(周囲)に移動させて生海苔と分離させようとする技術思想は全く開示されていない。 ウしたがって,乙3文献に記載された発明は,本件発明と同じ生海苔異物分離除去装置に関する発明ではあっても,生海苔を回転板と選別ケーシングとで形成されるクリアランスを通過させようとした場合に生ずる技術的課題やその課題解決の手段として,「共回り防止装置」が開示されているとは到底いうことができない。 本件発明と乙3文献に記載された発明とが全く異なる技術思想を前提とする以上,一致点としては,乙3文献に記載された発明の原草タンクが本件発明の生海苔混合液槽に相当する程度にすぎず,両発明の相違点は第1審被告が指摘する相違点のほか,多数存在するものである。 エ以上からすると,本件発明は,乙3文献に記載された発明と同一の発明であるということはできない。 3 争点(5)(第1審原告の損害額)について(1) 被告装置に関する変動費の控除についてアメンテナンスについて(ア) 原判決は,第1審被告がメンテナンスにより被告装置に係る変動費額を上回る売上げを得ているにもかかわらず,特許法102条2項の「利益」から変動費を控除した。しかし,被告製品は,一般人が店舗で入手するような製品ではなく,生海苔生産業者のみが購入する特殊な製品であって,一旦被告装置の納品を受けた- 20 -ユーザーは,第1審被告や販売店に対してしかメンテナンス作業を依頼しないから,第1審被告は,被告装置の販売に対して,少なくとも数年以上のメンテナンス作業 って,一旦被告装置の納品を受けた- 20 -ユーザーは,第1審被告や販売店に対してしかメンテナンス作業を依頼しないから,第1審被告は,被告装置の販売に対して,少なくとも数年以上のメンテナンス作業による売上高を考慮して販売価格を設定することが可能である。第1審被告は,各年のメンテナンス価格表を作成して顧客に配布しているのみならず,粗利すら計上できないと主張する製品(CW-63等)を新製品として販売しているが,これは,後のメンテナンス作業による利益回収を見越しているからにほかならない。第1審被告の点検整備料は1台当たり約6万円ないし10万円超であるから,サービスの対価ではなく,実質的には装置代金の後払いと評価すべきである。 (イ) 原判決は,通常のメンテナンスを行うこと自体は特許発明の「実施」には該当しないとする。しかし,物(装置)の発明である本件発明の実施には,その技術的範囲に属する被告装置の「使用」が含まれるから,被告装置のユーザーによる装置の使用は本件発明の実施に該当する。第1審被告は,メンテナンス作業を積極的に受注しており,被告装置の使用という特許権侵害行為に積極的に加功するものである。第1審原告は,メンテナンス作業による利益について特許法102条2項の利益であると主張するものではないが,販売後のメンテナンス作業という第1審被告の特許権侵害行為によって販売後も利益を得ることができる以上,被告装置の販売段階の利益については,販売額から原価相当額を控除した粗利相当額と考えれば十分である。 イ控除額について仮に,利益から変動費を控除すべきであるとしても,販売価格の8.4%相当額を控除した原判決は,実態に反している。 (ア) 広告宣伝費・賃借料(レンタカー費用と倉庫費用)・旅費・通信費(携帯電話代)・時間外人件費について 控除すべきであるとしても,販売価格の8.4%相当額を控除した原判決は,実態に反している。 (ア) 広告宣伝費・賃借料(レンタカー費用と倉庫費用)・旅費・通信費(携帯電話代)・時間外人件費について原判決が認定した旅費は,交通費用と日当であり,時間外人件費は,休日出勤と残業手当であり,賃借料(レンタカー費用と倉庫費用)は,そのほとんどがレンタカー代であり,通信費(携帯電話代)は,携帯電話代であって,広告宣伝費以外は- 21 -全て第1審被告の従業員の人件費又はその移動費用,連絡費用にすぎない。 第1審原告は,日本の主要な海苔生産地域に営業所や関連会社を設け,販売活動に多大な経費を要しているが,第1審被告の営業所は1箇所(佐賀県)のみで,実際の営業活動やユーザーへの販売は,日本各地の海苔生産地を拠点とする販売店(代理店)が行い,第1審被告は,各販売店からの注文に基づいて被告装置を供給するという販売形態を採用している。被告装置は,販売開始から10年以上経過した現在においても,基本構造自体はほとんど変わっていないから,特に新規の製品説明や営業活動は不要で,実際,第1審被告の従業員が営業,販売活動のために各地のユーザーを頻繁に訪問しているわけではない。第1審被告は,旅費や時間の負担が大きいなどと主張するが,第1審被告は出張料を実費請求することなどによってユーザーに負担させており,第1審被告が負担しているわけではない。広告宣伝費はともかくとして,第1審被告の従業員の人件費,移動費,連絡費等のほとんどの部分は,「異物除去機関係の製品売上」に関するものではなく,それ以外の売上高,特に,技術者が実際に行うサービスであるメンテナンス(整備)に関するものにすぎないから,被告装置の販売に関する変動費として控除対象とすべきではない。 (イ) 運搬費につい はなく,それ以外の売上高,特に,技術者が実際に行うサービスであるメンテナンス(整備)に関するものにすぎないから,被告装置の販売に関する変動費として控除対象とすべきではない。 (イ) 運搬費について原判決は,運搬費を製品運送費とそれ以外とに区別し,それぞれ各年度における「異物除去機関係の製品売上高」「異物除去機関係の部品・整備売上高」「異物除去機関係以外の製品・部品・整備売上高」の各比率を乗じてその金額を算定している。しかし,被告装置の販売やメンテナンス売上げの実態からすると,売上高を基準として按分することに合理性は全く存在しない。 しかも,第1審被告は,被告装置の運搬に運送会社2社を用いている旨主張しているから,それ以外の製品運送費(社有車の燃料費,小物運送費,JR東日本レンタカー)は不要である。原判決によると,第1審被告の55期ないし59期の売上台数及び運送費は,それぞれ51台(257万0267円),38台(369万6422円),37台(195万2880円),70台(443万5712円),2- 22 -7台(472万0080円)であり,各年度の1台平均の運搬費は,約5万円,約9万7000円,約5万3000円,約6万3000円,約17万5000円となるから,明らかに実態からかけ離れた数値である。第1審被告は,2台以下の注文の場合には運賃を請求する旨を価格表に記載しているから,第1審被告が計上した運搬費のほとんどは,別途運賃としてユーザーに負担させていたものである。被告装置のような機械の運送に特別な費用は不要であり,第1審被告の本社近辺に所在する通常の運送業者を利用しているのであれば,高くとも1台当たり5万円程度にすぎない。 (ウ) 変動費の売上高に占める割合について原判決は,第1審被告が受けた利益の額を算出するに当たり, 所在する通常の運送業者を利用しているのであれば,高くとも1台当たり5万円程度にすぎない。 (ウ) 変動費の売上高に占める割合について原判決は,第1審被告が受けた利益の額を算出するに当たり,販売価格の8.4パーセントに当たる変動費を控除した。しかし,前記のとおり,賃借料,旅費,通信費及び時間外人件費は控除対象とすべきではない。広告宣伝費(原判決の認定額112万4598円)及び運搬費(1台5万円に販売台数223台を乗じた1115万円)の合計1227万4598円を控除することが認められるにすぎず,被告装置の売上高(4億6844万8347円)に占める割合は2.6%にすぎない。 (2) 本件回転板及び本件プレート板に関する変動費の控除について本件回転板及び本件プレート板の販売による利益に関しても,被告装置の販売による利益と同様に,変動費を控除すべきではない。 仮に,利益から変動費を控除すべきであるとしても,販売価格の8.4%相当額を控除した原判決は実態に反するものであって,被告装置の販売による利益と同様に,販売価格の2.6%相当額の控除が認められるにすぎない。 (3) 寄与度について原判決は,被告装置や本件回転板と比較して本件プレート板の販売価格が安いことを考慮して,被告装置全体における本件発明3の寄与度を20%,本件回転板における本件発明3の寄与度を50%であると認定したものと推測される。しかし,特許発明は自然法則を利用した技術思想の創作であって,物自体ではないから,技- 23 -術思想を体現した物自体の価値で発明の価値を評価することは誤りである。本件プレート板自体は,第1審被告によって補充品として安く供給されているが,それは,第1審被告が本件プレート板を含めた共回り防止装置の開発に費用を要していないことから,過小評価され とは誤りである。本件プレート板自体は,第1審被告によって補充品として安く供給されているが,それは,第1審被告が本件プレート板を含めた共回り防止装置の開発に費用を要していないことから,過小評価されているにすぎない。 原判決も,本件発明が本件プレート板のみによって実施されるのではなく,被告装置全体の構成及び配置が本件発明の「共回り防止装置」に相当すると認定しているから,本件発明は被告装置全体において実施されているというべきであって,本件発明の寄与度は100%である。 なお,原判決は,本件プレート板を付けない装置であっても生海苔異物分離除去機能を果たすことや,現在市場で流通している生海苔異物分離除去装置の全てに本件発明が実施されていると認めるに足りる証拠はないことなども寄与度算定の根拠とするが,本件プレート板を実際に付けた本件発明の「共回り防止装置」に該当する被告装置を購入したユーザーが,購入後にどのように利用したかという事情は,被告装置の販売における本件発明の寄与度認定とは無関係である。 (4) 第1審原告のシェアについて第1審被告は,過去の判決において認定された第1審原告,第1審被告及び渡邊機開工業のシェアに基づいて,第1審原告の損害は4分の1に限られると主張し,また,渡邊機開工業も被告装置と同様に共回り防止手段を用いた共回り防止装置に該当する異物除去装置を販売しているところ,特許法102条2項の推定規定の適用について,過去のシェアなどは問題とはならない。 (5) 弁護士費用相当損害金について原判決は,特許法102条2項に基づく損害額合計1435万2992円の約10%相当額である145万円を弁護士費用相当損害金として認定した。しかし,特許権侵害訴訟では,対象製品等が特許発明の技術的範囲に属するか否かに関するいわゆる侵害論の審 合計1435万2992円の約10%相当額である145万円を弁護士費用相当損害金として認定した。しかし,特許権侵害訴訟では,対象製品等が特許発明の技術的範囲に属するか否かに関するいわゆる侵害論の審理に重点が置かれており,特許権侵害に基づく逸失利益相当損害金の認容額に関わりなく,侵害論の主張立証に時間と手間とを要することは明らか- 24 -であるから,侵害論の後に行われる損害論の手続によって認定された金額を基準として,その手続以前に要した弁護士費用相当損害額を含めて形式的に認容額の10%相当額と判断することは背理であり,著しく正義に反する。 本件は,原審における合計17回の手続(口頭弁論期日2回,弁論準備手続期日14回,進行協議期日1回)のうち,侵害論に関して合計10回の手続が行われたのみならず,専門委員立会いによる技術説明会や,千葉県木更津市で被告装置を見分するための進行協議期日が設けられている。このような経緯からすれば,特許法102条2項に基づく損害額にかかわらず,第1審被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金の額が認定されなければならない。 (6) 損害額ア主位的請求被告製品の販売により第1審被告が得た利益は,別紙損害目録記載1のとおり,合計9361万0706円となり,弁護士費用相当損害金の内金1219万2286円を加えた合計は1億0580万2992円となる。 (ア) 第1審被告の得た利益 9361万0706円(内訳)被告装置の販売に関する粗利 7765万8931円本件回転板の販売に関する粗利 1582万5600円本件プレート板の販売に関する粗利 12万6175円(イ) 弁護士費用相当損害金の内金 1219万2286円(ウ) 合計 1億0580 利 1582万5600円本件プレート板の販売に関する粗利 12万6175円(イ) 弁護士費用相当損害金の内金 1219万2286円(ウ) 合計 1億0580万2992円イ予備的請求被告製品の販売により第1審被告が得た利益は,別紙損害目録記載2のとおり,合計8036万6685円となり,弁護士費用相当損害金の内金2543万6307円を加えた合計は1億0580万2992円となる。 (ア) 第1審被告の得た利益 8036万6685円- 25 -(内訳)被告装置の販売に関する利益 6545万0135円本件回転板の販売に関する利益 1479万6936円本件プレート板の販売に関する利益 11万9614円(イ) 弁護士費用相当損害金の内金 2543万6307円(ウ) 合計 1億0580万2992円第4 当裁判所の判断当裁判所も,第1審原告の請求は,被告製品の製造・販売等の差止め及び廃棄並びに損害金1580万2992円及びこれに対する不法行為の日の後である平成22年6月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,理由があるものと判断する。その理由は,原判決61頁26行目の「本件プレート板である」を「本件プレート板のみである」と,62頁19行目の「争点(4)」を「争点(5)」と,64頁24行目から25行目にかけての「被告の自社品事業部の売上げは,」を「第1審被告の自社品事業部の売上げ(原判決別紙1のうち表2の「自社品事業部売上」欄及び同別紙2の「自社品事業部売上高」欄の各金額に「社内売上高」を加算したもの)は,」と各改め,後記のとおり付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第4記載のとおりであるから, 「自社品事業部売上」欄及び同別紙2の「自社品事業部売上高」欄の各金額に「社内売上高」を加算したもの)は,」と各改め,後記のとおり付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第4記載のとおりであるから,これを引用する。 1 争点(1)(被告装置が本件発明の技術的範囲に属するか否か)について(1) 構成要件A3の充足性について第1審被告は,生海苔が回転板に同期した状態が共回りであることを前提として,構成要件A3の充足性に関し,るる主張するが,本件明細書等の記載によれば,「共回り」とは,生海苔等が,回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰い込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象のことであって,究極的にクリアランスの目詰まり(閉塞)が発生している状況をいうものと認められるから,第1審被告の上記主張は,その前提を欠くものというほかなく,失当である。 - 26 -(2) 構成要件Bの充足性についてア円周面について(ア) 「円」とは,「まるいこと。まるいもの。数学では,一平面上で,一定点(中心)から等距離(半径)にある点の軌跡。また,それによって囲まれた内部。 その軌跡を円周ともいう。」との意味を有するものとされる一方,「面」とは,「物の外郭を成す,角だっていないひろがり。その類似物。物のおもて。部材の稜角を削り落として生ずる表面。線の移動で生ずる図形。」との意味を有するものとされている(乙37)から,「円周面」とは,軌跡である円周に連なるなど,円周に関連する面であり,物の外郭を成す面であればよく,その面の向きや位置が限定されるものではない。 (イ) 本件明細書等(【0026】【図4】~【図6】)によれば,本件発明3は,突起物をケーシングの円周端面,すなわち円 物の外郭を成す面であればよく,その面の向きや位置が限定されるものではない。 (イ) 本件明細書等(【0026】【図4】~【図6】)によれば,本件発明3は,突起物をケーシングの円周端面,すなわち円周に連なる厚み方向へのひろがりに設ける特許請求の範囲請求項1の発明及び突起物を内底面に設ける同請求項2の発明とは異なり,回転板の円周面,すなわち円周に連なる径方向へのひろがり及び/又は選別ケーシングの円周面に設けるものとされており,【図6】には,いずれも円形状を有する回転板及び選別ケーシングの径方向へのひろがりが「円周面」として図示されているものである。 イ本件プレート板について本件プレート板は,本件回転板の円形状の径方向へのひろがりに取り付けられているのであるから,被告装置は構成要件B2を充足するものと認められる。 ウ第1審被告の主張について第1審被告は,円周面とは一般的に円柱の側面の形状の面を意味し,平面は含まれないと主張する。 しかしながら,前記の「円」及び「面」の語義からすると,「円周面」に第1審被告がいう意味での平面が含まれないということはできないし,本件明細書等の前記記載によれば,本件発明3における円周面がこのような平面に相当するものであ- 27 -ることは明らかである。 また,第1審被告は,本件プレート板は1つの小さな部品であるから,爪部と基部とに分けた上で,爪部を基部に接合しているなどとする原判決は誤りである,本件プレート板と本件回転板とは別の部品であり,本件プレート板の一部である基部を想定し,それが本件回転板の一部となっているものでもないと主張する。 しかしながら,本件プレート板は,本件回転板の円周面に固定され,クリアランスを越えて突出することにより,共回りを防止する効果を奏する構成要件B2の「突起物」に該 なっているものでもないと主張する。 しかしながら,本件プレート板は,本件回転板の円周面に固定され,クリアランスを越えて突出することにより,共回りを防止する効果を奏する構成要件B2の「突起物」に該当するものということができるのであって,原判決が本件プレート板と本件回転板との接合部分を明示するために基部と爪部とに分けて考察したことをもって,格別不相当であるということはできないし,本件プレート板と本件回転板との接合部が本件回転板の一部と解されるか否かは,構成要件B2を充足するか否かに係る判断とは無関係である。 よって,第1審被告の上記主張は,いずれも採用することができない。 2 争点(2)(本件回転板及び本件プレート板を製造・販売等する行為が本件特許権に対する間接侵害(特許法101条1号)に当たるか否か)について(1) 本件回転板について第1審被告は,本件回転板が被告装置のために必須であるからといって,必ずしも本件発明を実施しないで使うことが使用形態として認められないというわけではなく,本件プレート板を使用しない形態が被告装置の経済的,商業的又は実用的な使用形態と認めることはできないとした原判決の認定は,事実を無視したものである,特許法101条1号は,他の用途がないことを要件とするものであって,「全く使用しないという使用形態」が要件となるわけではないし,本件プレート板を使用するか否かは,ユーザーの選択に委ねられているなどと主張する。 しかしながら,特許法101条1号は,その物自体を利用して特許発明に係る物の生産にのみ用いる物についてこれを生産,譲渡等する行為を特許権侵害とみなすものであるところ,同号が,特許権を侵害するものとみなす行為の範囲を,「その- 28 -物の生産にのみ用いる物」を生産,譲渡等する行為のみに限定したのは,その 産,譲渡等する行為を特許権侵害とみなすものであるところ,同号が,特許権を侵害するものとみなす行為の範囲を,「その- 28 -物の生産にのみ用いる物」を生産,譲渡等する行為のみに限定したのは,そのような性質を有する物であれば,それが生産,譲渡等される場合には侵害行為を誘発する蓋然性が極めて高いことから,特許権の効力の不当な拡張とならない範囲でその効力の実効性を確保するという趣旨に基づくものであると考えられる。このような観点から考えれば,その物の生産に「のみ」用いる物とは,当該物に経済的,商業的又は実用的な他の用途がないことが必要であると解するのが相当である。 そうすると,本件回転板及び本件プレート板は,本件発明における「共回り防止装置」の専用部品であると認められる以上,これらにおいて,経済的,商業的又は実用的な他の用途は認め難く,したがって,本件回転板及び本件プレート板は,「その物の生産にのみ用いる物」に当たるといわざるを得ない。 したがって,被告装置が本件プレート板を用いないで使用することが可能であることは,本件回転板及び本件プレート板が被告装置の生産にのみ用いる物に該当するとの判断を左右するものではない。 よって,第1審被告の上記主張は,失当である。 (2) 防止手段と防止装置について第1審被告は,本件発明は「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」であって,防止手段が突起物であることと,そのような構成の「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」が規定されているにすぎず,「回転板」や「選別ケーシング」が「防止装置」の一部となるものではないから,本件プレート板が本件発明の技術的範囲に属するとしても,本件回転板や被告装置も技術的範囲に属するということはできないと主張する。 しかしながら,本件発明にお 防止装置」の一部となるものではないから,本件プレート板が本件発明の技術的範囲に属するとしても,本件回転板や被告装置も技術的範囲に属するということはできないと主張する。 しかしながら,本件発明において,選別ケーシング及び回転板等の構成を有する生海苔異物分離除去装置に係る構成要件Aを前提として,突起物に係る構成要件Bが規定されているのであるから,突起物のみならず選別ケーシングや回転板等の構成もまた,共回り防止装置を構成するものというべきである。そして,被告装置は,本件発明3の技術的範囲に属する共回り防止装置を内蔵するものである以上,本件- 29 -発明3の寄与度については別途考慮すべきであるとしても,本件発明3の侵害品であるというほかない。 よって,第1審被告の上記主張は,採用することができない。 3 争点(3)(第1審被告の過失の有無)について第1審被告は,第1審原告の主張を前提とした上で,第1審被告の無過失について主張したものであるにもかかわらず,原判決はこれを無視し,訂正の内容は重要なものではなく,過失の推定が覆されないとしたものであって,弁論主義に違反すると主張する。 しかしながら,原判決は,訂正の内容が単純な誤記や明瞭でない記載に関するものであることから,訂正の有無にかかわらず,本件発明3に係る構成要件該当性の判断ができなかったとはいえないことを,第1審被告の過失を認める根拠とするものであって,第1審原告が訂正前に本件特許に基づく権利行使が可能であると認識していたか否かは,前記結論を左右するものではない。 よって,第1審被告の上記主張は,失当であるというほかない。 4 争点(4)(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか否か)について(1) 時機に後れた攻撃防御方法であるか否かについてア原審記録及 上記主張は,失当であるというほかない。 4 争点(4)(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか否か)について(1) 時機に後れた攻撃防御方法であるか否かについてア原審記録及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 本件は,平成22年6月30日に訴え提起されたものであるところ,第1審被告は,平成23年1月21日の原審第3回弁論準備手続期日において,被告装置は本件発明の技術的範囲に属しないものであり,仮に技術的範囲に属すると解するのであれば,本件発明は乙3発明を包含することになるから無効であるが,そのようなクレーム解釈は正しくないので,本件においては無効判断の必要もないと主張するなど,原審において,当初特許法104条の3のいわゆる無効の抗弁を提出しなかった。 (イ) 原審裁判所は,平成23年10月19日の原審第8回弁論準備手続期日に- 30 -おいて,被告装置が本件発明3の技術的範囲に属するとの心証を開示した。 (ウ) 第1審被告は,原審において第1審原告の損害に係る審理が行われていた平成24年1月11日の原審第10回弁論準備手続期日において,本件発明には極めて近い先行技術が存在しており,本件発明に意義があるとはみられず,こうした状況は損害額の判断において考慮される必要があるが,無効の抗弁を主張するものではないと主張した。 (エ) 第1審被告は,同年5月9日の原審第12回弁論準備手続期日においても,本件特許は無効にされるべきであるほど価値の低いものであるから,それは損害賠償額の算定において考慮されるべきであるが,侵害論の主張(無効の抗弁)として主張するものではないと陳述した。 イ上記アの認定事実によれば,原審において,第1審被告は,被告装置は本件発明の技術的範囲に属しないと考え,無効の抗弁を提 あるが,侵害論の主張(無効の抗弁)として主張するものではないと陳述した。 イ上記アの認定事実によれば,原審において,第1審被告は,被告装置は本件発明の技術的範囲に属しないと考え,無効の抗弁を提出しなかったところ,その後,第1審被告の予想に反して損害論の審理が行われるに至ったため,無効の抗弁を提出しようとしたが,原審裁判所は時機に後れたものとしてこれを認めなかったものと認められる。 ウ第1審被告は,当審において無効の抗弁を提出し,無効理由として,①特許法36条違反,②乙38文献に記載された発明に基づく容易想到性,③本件発明と乙3文献に記載された発明との同一性について主張するが,特許法36条違反については,本件明細書等の記載を速やかに検討すれば早期に主張が可能であったものといえること,乙3文献は,平成22年9月1日の原審第1回口頭弁論期日において書証として提出されており,また,乙38ないし40の各文献は,平成24年5月9日の原審第12回弁論準備手続期日において書証として提出されたものであること(なお,乙39文献は第1審被告の出願に係る公開特許公報である。)からすると,原審裁判所が時機に後れたものとして主張を許さなかった無効の抗弁を当審に至って提出することは,時機に後れたものというほかない。 そして, 無効の抗弁の提出が時機に後れた理由は,本件発明の技術的範囲に属す- 31 -るか否かについて,自らの主張が正しいと信じていたというにすぎないというのであるから,第1審被告には重大な過失が認められるといわざるを得ない。 しかしながら,当事者双方は無効の抗弁について主張立証の追加を求めず,当裁判所は,平成25年3月14日の当審第1回口頭弁論期日において,弁論を終結したものである以上,無効の抗弁の提出が「訴訟の完結を遅延させる」(民訴法1 方は無効の抗弁について主張立証の追加を求めず,当裁判所は,平成25年3月14日の当審第1回口頭弁論期日において,弁論を終結したものである以上,無効の抗弁の提出が「訴訟の完結を遅延させる」(民訴法157条1項)ものとは認められず,また,「審理を不当に遅延させることを目的として提出された」(特許法104条の3第2項)とまで認めることはできない。 よって,第1審被告による無効の抗弁の提出は,時機に後れた攻撃防御方法の提出として,これを却下することはできない。 (2) 特許法36条違反について第1審被告は,第1審原告の「円周面」に係る説明は矛盾するものであり,「円周面」については明確性を欠くものである,突起物を回転板に設置しても,同じく回転板とともに回る生海苔の共回りを防止することはできないから,「生海苔の共回りを防止する防止手段」を明確に把握することはできない,共回りについて,無流出時のタンク中の回転と解したり,クリアランスにかかった海苔の僅かな動きであると解すると,本件明細書等の開示内容に合致しないから,サポート要件に違反する,防止手段である突起物を具体的にどの円周面に設ければ共回りを防止できるかについては,本件出願日当時の当業者の技術常識を参酌しても自明ということはできない,防止手段としての突起物を回転板のいずれの円周面に設置したところで,生海苔の共回りを防止できないから,実施可能要件にも違反するなどと主張する。 しかしながら,第1審被告の主張の前提となる「円周面」及び「共回り」の解釈自体が誤りであることは,前記1で説示したとおりであるから,第1審被告の上記主張は,いずれもその前提を欠くというほかなく,失当である。 (3) 乙38文献に記載された発明に基づく容易想到性についてア乙38文献の記載乙38文献は,湿式微粒分 ら,第1審被告の上記主張は,いずれもその前提を欠くというほかなく,失当である。 (3) 乙38文献に記載された発明に基づく容易想到性についてア乙38文献の記載乙38文献は,湿式微粒分散・粉砕装置におけるメディア分離機構に係る発明に- 32 -関する文献であるところ,同文献には,おおむね次の記載がある(乙38)。 (ア) 実用新案登録請求の範囲ベッセル内に多量の微粒状メディアを内蔵するとともに分散ディスク等を高速回転させ,該ベッセル内の一端からスラリーを供給して流動速度差によって生ずる剪断力によってスラリーを分散・粉砕を行った後他端から処理ずみのスラリーを排出するようになし,該排出側に円環状の固定スリット片を設けるとともに該固定スリット片内において微小間隙をもって回転する回転スリット板を設けて両者によりスラリーとメディアのセパレーション用のスリットを形成するものにおいて,該セパレーション用のスリットを単溝でなく複溝としたことを特徴とする湿式微粒分散・粉砕装置におけるメディア分離機構(イ) 産業上の利用分野本考案は,縦型及び横型の湿式微粒メディア分散・粉砕機の中で中型及び大型の生産機対応型としての吐出量増加機構に関するものである。 (ウ) 従来の技術従来のメディア分離機構は,固定スリット片と回転スリット板とで構成される短溝間隙構造であったが,メディアと処理液が分離する液量(吐出量)が,スリットスキマ面積微少のため,スキマ目詰まり(メディアがかみ込む),圧力上昇等により,極めて少量であった。 (エ) 考案が解決しようとする課題従来技術には,①処理液の吐出量が少なく,生産能力が悪い,②スリットスキマ面積が少ないため,分散・粉砕筒型容器(ベッセル)内の圧力が高くなる,③スリット面にメディアが押しつけられ,吐出口 する課題従来技術には,①処理液の吐出量が少なく,生産能力が悪い,②スリットスキマ面積が少ないため,分散・粉砕筒型容器(ベッセル)内の圧力が高くなる,③スリット面にメディアが押しつけられ,吐出口部のメディアの流動が悪いという課題があった。 (オ) 課題を解決するための手段本考案の湿式微粒分散・粉砕装置におけるメディア分離機構は,前記課題を解決するため,次の構成を有している。 - 33 -ベッセル内に多量の微粒状メディアを内蔵するとともに分散ディスクを高速回転させ,ベッセル内の一端からスラリーを供給して流動速度差によって生ずる剪断力によってスラリーの分散・粉砕を行った後,他端から処理済みのスラリーを排出するようにし,排出側に円環状の固定スリット片を設けるとともに固定スリット片内において微小間隙をもって回転する回転スリット板を設けて両者によりスラリーとメディアのセパレーション用のスリットを形成するものにおいて,セパレーション用のスリットを単溝でなく複溝としたこと(カ) 作用本考案によると,次の作用を生じる。 a 単溝スリットスキマ構造を2重,3重,多重のリング機構としたことにより,スリットスキマ面積を拡大し,吐出量が増加する。 b スリットスキマ目詰まりライフを延長できる。 c スリット機構前に分離羽根を取り付けることにより,メディアの固着化を防止する。 d メディア分離面の耐摩耗材質の実施(特殊表面処理)e 摩耗部品の交換及び洗浄作業の容易化(キ) 実施例ベッセルの分散・粉砕室内には多量のメディアが内蔵されており,中央部に分散粉砕ディスクが1600ないし2000rpmの高速で回転している。ベッセルの左端からスラリーを供給してベッセル内で分散・粉砕処理を行った後,右端のセパレーション用のスリットを経て,液出口 央部に分散粉砕ディスクが1600ないし2000rpmの高速で回転している。ベッセルの左端からスラリーを供給してベッセル内で分散・粉砕処理を行った後,右端のセパレーション用のスリットを経て,液出口から排出される。メディアは,例えばジルコニア等のビーズ(直径0.5ミリ前後)が使用されており,ベッセル容量の80ないし90%が投入可能である。ベッセルの右端には,円環状の固定スリット片と,その内面で0.1ミリ前後の間隙で100ないし150rpmで回転する回転スリット板とが設けられ,これらによってスラリーとメディアのセパレーション用のスリットが複数個設けられる。分離羽根は,回転スリット板のベッセル内に同軸に突- 34 -設されている。 イ乙38文献に記載された発明について(ア) 乙38文献に記載された発明は,湿式微粒分散・粉砕装置に係る発明であり,スラリー中の微粒を分散し,粉砕処理することを目的として,スラリーに多量のメディア(ジルコニア等のビーズ)を投入し,分散・粉砕後にメディアを分離してスラリーを排出する装置に関し,①処理液の吐出量増加,②分散・粉砕筒型容器(ベッセル)内の圧力低下,③吐出口部のメディアの流動性改善を解決課題とする発明であって,生海苔異物分離除去装置における共回り防止装置に係る本件発明とは,技術分野が異なるものである。 (イ) 乙38文献に記載された発明の回転スリット板は,メディアの目詰まり防止,すなわち,スラリーの分散・粉砕を行うためのメディアの流出を防止して処理済みスラリーのみを吐出させる機能を,分離羽根はメディアの固着化を防止する機能を,分散粉砕ディスクは分散・粉砕処理する機能を有しており,生海苔の共回りを防止するための本件発明の回転板,突起物等とはその機能が全く異なるものである。 しかも,乙38文献に記載 化を防止する機能を,分散粉砕ディスクは分散・粉砕処理する機能を有しており,生海苔の共回りを防止するための本件発明の回転板,突起物等とはその機能が全く異なるものである。 しかも,乙38文献に記載された発明は,回転スリット板の回転は100ないし150rpmであるものの,分散粉砕ディスクは1600ないし2000rpmで高速回転しており,その際,ベッセル内は,圧力下で供給されたスラリーに分散・粉砕のための多量(ベッセル容量の80~90%)のメディアが投入された状態で存在していることに鑑みれば,物理的性状からして,スラリーは,分散粉砕ディスクの回転に伴い相当程度速い速度で回転しているものと推認され,本件発明における生海苔及び異物の回転(第1審被告は,1例として342rpmであると主張している。)とは明らかに異なるものである。 また,上記メディアは,分散・粉砕のために必要な物としてベッセル内に多量に投入されるものであって,本件発明において不要物とされるような異物と位置付けられるものでもない。 - 35 -(ウ) この点について,第1審被告は,乙38発明のメディア分離機構及び乙39文献に記載された発明に基づいて,分離対象物をメディアから異物に変更し,ベッセルを生海苔混合液槽として適用することにより,相違点1の構成に容易に想到し得たものというべきであると主張する。 しかしながら,乙39文献は,生海苔異物分離除去装置に係る文献であり,本件発明と同一の技術分野に属するものの,乙38文献に記載された発明とは技術分野が全く異なるのである(乙39)から,乙38文献に記載された発明に乙39文献に記載された発明を適用することについては,動機付けを欠くというほかない。 また,第1審被告は,当業者は乙38発明のメディア分離機構を生海苔異物分離除去装置に適用 8文献に記載された発明に乙39文献に記載された発明を適用することについては,動機付けを欠くというほかない。 また,第1審被告は,当業者は乙38発明のメディア分離機構を生海苔異物分離除去装置に適用する際,生海苔の共回りを防止することを目的として,本件発明3のいずれかの場所,例えばクリアランスの前に分離羽根に相当する「防止手段」を設けることを容易に想到するものというべきであると主張する。 しかしながら,乙38文献に記載された発明を生海苔異物分離除去装置に適用すること自体,動機付けを欠くというほかないところ,同発明の「分離羽根」は,スラリーの分散・粉砕を行うためのメディアが固着することを防止する機能を有するものであるから,生海苔の共回りを防止する突起物とは明らかに異なる構成である。 第1審被告の主張は,乙38文献に記載された発明のメディア固着化が本件発明の共回りに相当することを前提とするものであるが,上記認定に照らせば,その前提自体が誤りであるというほかない。 以上のとおり,第1審被告の上記主張は,いずれも採用することができない。 (エ) よって,本件発明と乙38文献に記載された発明とは,技術分野及び作用効果並びに各構成が有する機能も異なるものであるから,乙38文献に記載された発明に生海苔異物分離除去装置に係る乙39文献に記載された発明を適用することについては,動機付けを欠くのみならず,乙38文献に記載された発明に乙39文献に記載された発明を適用しても,本件発明と同様の構成に容易に想到することはできないから,本件発明は,乙38文献に記載された発明及び乙39文献に記載さ- 36 -れた発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (4) 本件発明と乙3文献に記載された発明との同一性についてア乙3文 び乙39文献に記載さ- 36 -れた発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (4) 本件発明と乙3文献に記載された発明との同一性についてア乙3文献の記載乙3文献は,海苔原草の異物除去装置に係る発明に関する文献であるところ,同文献には,おおむね次の記載がある(乙3)。 (ア) 特許請求の範囲【請求項1】海苔の原草に含まれる異物を除去して後工程に送るための異物除去装置であって,前記原草を海水または塩水または水等の液との混合液として貯留する原草タンクと,前記混合液の中に一部を浸漬させて前記原草タンク内の原草を異物と分離して吸引する容器と,前記容器が前記混合液の水位よりも上に移動したとき前記原草の吸引方向と逆向きに逆洗する逆洗手段を備えてなる海苔原草の異物除去装置【請求項2】前記容器は,少なくとも側面の一部を開放部とした中空のスクリーンライナと,このスクリーンライナの上端部に回転中心を持ち且つ前記側面に対して前記開放部を含んで水密状に重合配置したフィルタプレートとを備え,このフィルタプレートは,異物の通過を阻止する第1の開度及びこれよりも大きい第2の開度に設定可能であって且つ前記第2の開度から第1の開度に自動復帰可能な可変流路構造を持ち,前記逆洗手段は,前記フィルタプレートが前記混合液の水位から上に抜け出る部分に対峙して配置され海水または塩水または水等の液を前記フィルタプレートの面に向けて噴出するノズルを備え,このノズルの近傍に前記可変流路構造を駆動して第1の開度から第2の開度に設定する駆動機構を備えてなる請求項1記載の海苔原草の異物除去装置【請求項3】前記可変流路構造は,前記フィルタプレートにその中心から放射状に切開された複数のスリットと,このスリットに組み込まれる開度調整 駆動機構を備えてなる請求項1記載の海苔原草の異物除去装置【請求項3】前記可変流路構造は,前記フィルタプレートにその中心から放射状に切開された複数のスリットと,このスリットに組み込まれる開度調整用の弁体を備えた回転子と,この回転子の回動角度を前記第1の開度に規制するストッパと,前- 37 -記回転子を前記第2の開度から第1の開度に復帰させる弾性体とを備え,前記駆動機構は,前記回転子の軸線とほぼ直交する向きに突き出したフックに係合してこれを回動させる回転自在なローラを備えてなる請求項2記載の海苔原草の異物除去装置(イ) 発明の属する技術分野本発明は,採取した生海苔の原草に含まれている生物の殻や藁等の異物を除去して生海苔の洗浄,抄き工程及び乾燥の後工程に送るための海苔原草の異物除去装置に関する(【0001】)。 (ウ) 従来の技術海苔の養殖場の海苔網から採取した海苔の原草には,海苔製品の品質に大きな影響を及ぼす小海老やその他の虫の死骸や海面に漂っている藁等の異物が含まれているため,一般的には生海苔の洗浄工程の前に異物除去処理をする(【0002】)。 異物除去の装置として従来から既に知られている基本的なものは,タンクの中で生海苔を海水に浸したままとしておき,異物を沈殿させて異物だけを回収したり,生海苔が流れる流路を処理槽の中に設けてこの流路の中途にネットを張り,このネットによって嵩が大きな異物を捕集するというものや,異物除去のための専用のタンクを原草の処理槽の中に浸漬するとともにタンクの内部をバキュームポンプに接続し,原草を海水とともに流動化する構成とし,タンクの周壁に異物を通さない程度の微小な大きさとした多数のスリットや孔を設けておき,生海苔の原草だけをタンク内に吸引して異物と分離するというものがある。このように,従来の ともに流動化する構成とし,タンクの周壁に異物を通さない程度の微小な大きさとした多数のスリットや孔を設けておき,生海苔の原草だけをタンク内に吸引して異物と分離するというものがある。このように,従来の異物除去の方法は,異物の沈殿やネット又はタンクに開けたスリット等による濾過を利用するというものがほとんどである(【0003】~【0005】)。 (エ) 発明が解決しようとする課題沈殿方式の異物除去装置は,原草と異物との分離に時間がかかり過ぎるほか,処理量を増やそうとすれば沈殿槽の容量も大型となるので,生産性や設備の面での障害が大きい。また,ネットを用いる異物の捕集や浸漬タンクへの吸引時での分離で- 38 -は,原草を流しながらの操作が可能なので,沈殿方式に比べると格段に処理量を増やすことができるが,ネットの網目や浸漬タンクのスリット及び孔には,次第に異物が付着していくので目詰まりを生じやすく,原草の流れも遅くなって処理効率に影響を及ぼす。また,目詰まりを取り除くには,ネットや浸漬タンクを取り出して洗浄するか,原草の供給を停止して掃除するかの対応となるため,いずれの場合でも,処理を一時的に中断することになり,生産性への影響は避けられない(【0006】【0007】)。 本発明において解決すべき課題は,海苔の原草から異物を短時間で確実に除去できるとともに処理を中断することなく連続稼働ができ,生産性をより一層向上させることにある(【0008】)。 (オ) 発明の実施の形態異物除去装置の本体の内部は,生海苔の原草を海水又は淡水とともに定量供給してその水位をほぼ一定に保つようにした原草タンクと,異物を除去した後の原草が送り込まれる回収タンクとに区画されている。これらの原草タンク及び回収タンクのそれぞれには,原草及び改質された原草を海水又は てその水位をほぼ一定に保つようにした原草タンクと,異物を除去した後の原草が送り込まれる回収タンクとに区画されている。これらの原草タンク及び回収タンクのそれぞれには,原草及び改質された原草を海水又は淡水とともに攪拌して流動化を促すために,攪拌モータによって駆動される攪拌羽根を備えている。原草タンクから改質された原草を吸引して回収タンクへ圧送するための移送ポンプを本体内の下部側に備えている(【0013】)。 (カ) 課題を解決するための手段本発明は,海苔の原草に含まれる異物を除去して後工程に送るための異物除去装置であって,原草を海水,塩水,水等の液との混合液として貯留する原草タンクと,混合液の中に一部を浸漬させて原草タンク内の原草を異物と分離して吸引する容器と,容器が混合液の水位よりも上に移動したとき原草の吸引方向と逆向きに逆洗する逆洗手段を備えることを特徴とする(【0009】)。 このような構成において,容器は,少なくとも側面の一部を開放部とした中空のスクリーンライナと,このスクリーンライナの上端部に回転中心を持ち,かつ,側- 39 -面に対して開放部を含んで水密状に重合配置したフィルタプレートとを備え,このフィルタプレートは,異物の通過を阻止する第1の開度及びこれよりも大きい第2の開度に設定可能であって,かつ,第2の開度から第1の開度に自動復帰可能な可変流路構造を持ち,逆洗手段は,フィルタプレートが混合液の水位から上に抜け出る部分に対峙して配置され,海水,塩水,水等の液をフィルタプレートの面に向けて噴出するノズルを備え,このノズルの近傍に可変流路構造を駆動して第1の開度から第2の開度に設定する駆動機構を備えたものとすることができる(【0010】)。 また,可変流路構造は,フィルタプレートにその中心から放射状に切開された複数の に可変流路構造を駆動して第1の開度から第2の開度に設定する駆動機構を備えたものとすることができる(【0010】)。 また,可変流路構造は,フィルタプレートにその中心から放射状に切開された複数のスリットと,このスリットに組み込まれる開度調整用の弁体を備えた回転子と,この回転子の回動角度を第1の開度に規制するストッパと,回転子を第2の開度から第1の開度に復帰させる弾性体とを備え,駆動機構は,回転子の軸線とほぼ直交する向きに突き出したフックに係合してこれを回動させる回転自在なローラを備えた構成とすることができる(【0011】)。 (キ) 発明の効果請求項1の発明では,原草から異物を分離させて吸引する容器は,混合液の水位よりも高くなったときに逆洗されるので,容器に形成する原草の吸引口等に詰まる原草や異物を排除でき,容器をクリーニングしたり,分解することなく連続操業が可能となる(【0059】)。 請求項2の発明では,フィルタプレートを回転させることによって,原草タンク内に浸漬させることとノズル部分に曝すことを繰り返すことができるので,原草タンク内では可変流路構造を第1の開度に設定して異物を除去し,ノズル部分では駆動機構によって可変流路構造を大きな第2の開度に設定して異物の詰まりを排除できる。このため,フィルタプレートを定期的に取り出してクリーニングするために作動を中断させる必要がなくなり,生産性の大幅な向上が可能となる(【0060】)。 - 40 -請求項3の発明では,フィルタプレートに切開したスリットの中に回転子を組み込むだけの構造で,駆動機構のローラと連携して開度を切り替えることができ,フィルタプレートを厚くしたり開度切り替えのための機構が複雑になることはなく,組立て及び保守点検も簡単になる(【0061】)。 イ乙3文献に 動機構のローラと連携して開度を切り替えることができ,フィルタプレートを厚くしたり開度切り替えのための機構が複雑になることはなく,組立て及び保守点検も簡単になる(【0061】)。 イ乙3文献に記載された発明について第1審被告は,本件発明と乙3文献に記載された発明とは,異物排出口について記載されていない点が異なるにすぎず,同一の発明であると主張するが,乙3文献にどのような発明が記載されているかについて,具体的に特定して主張するものではないから,主張自体失当である。 のみならず,次のとおり,乙3文献に記載された発明と本件発明とが同一の発明であるということはできない。 (ア) 乙3文献には,海苔原草の異物除去装置に関する発明が開示されているが,同発明は,鉛直面上を回転するフィルタプレートの複数のスロットに隙間を変化させることができる回転子が設けられており,フィルタプレートの略下半分のみが原草タンク内の原草と海水との混合液中に浸漬する構成を有するものであって,タンク内の底部において回転板が水平方向に回転する本件発明の異物分離除去装置とは,その基本的構成自体が異なるものである。 (イ) 乙3文献に記載された発明における異物の分離は,フィルタプレートの回転子の隙間から原草が吸引されて通り抜けて回転タンクに導かれる一方,隙間に詰まった異物はフィルタ板の回転とともに水面上に移送され,回転子の回転により隙間が拡大されるとともに,逆洗装置のノズルによって除去されるものであって,原草タンクの底部には攪拌して混合液の流動化を促進する攪拌羽根が設けられているものである。 また,乙3文献に記載された発明には,フィルタプレートを受けるスクリーンライナのガイドリブに形成されているクリアランスにつき,詰まりを排出するワイパが設けられているものの, ているものである。 また,乙3文献に記載された発明には,フィルタプレートを受けるスクリーンライナのガイドリブに形成されているクリアランスにつき,詰まりを排出するワイパが設けられているものの,乙3文献に記載された発明の異物分離のための主たる手- 41 -段はフィルタプレート,回転子,ノズル等であり,ワイパは本件発明の突起物に相当するということはできない。 したがって,乙3文献に記載された発明と本件発明とは,生海苔と異物を分離する機序及び構成が異なり,乙3文献に記載された発明は,本件発明3が解決課題とする共回りが発生するものではなく,容器が混合液の水位よりも上に移動したときに原草の吸引方向と逆向きに逆洗する逆洗手段を課題解決手段とするものである。 (ウ) 以上によれば,乙3文献に記載された発明は,生海苔と異物を分離する機序,構成及び効果のいずれにおいても本件発明とは異なるものであるから,本件発明と同一の発明であるということはできない。 (5) 小括よって,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであるということはできない。 5 争点(5)(第1審原告の損害額)について(1) 損害額算定の対象について第1審被告は,被告装置自体を損害額の計算対象とした原判決は誤りであると主張する。 しかしながら,被告装置は,本件発明3の技術的範囲に属する共回り防止装置を内蔵するものである以上,本件発明3の侵害品であるというほかないし,原判決は,本件発明3の寄与度について別途考慮しているのであるから,第1審被告の上記主張は,失当である。 (2) 被告装置に関する変動費の控除についてアメンテナンスについて第1審原告は,第1審被告が被告装置の販売について少なくとも数年以上のメンテナンス作業による売上高を考慮して販売価格を 。 (2) 被告装置に関する変動費の控除についてアメンテナンスについて第1審原告は,第1審被告が被告装置の販売について少なくとも数年以上のメンテナンス作業による売上高を考慮して販売価格を設定することが可能であり,メンテナンス作業を積極的に受注することにより変動費を上回る利益を得ることができる以上,被告装置の販売段階の利益については,販売額から原価相当額を控除した- 42 -粗利相当額と考えれば十分であると主張する。 しかしながら,仕切価格が143万円ないし342万円程度である被告製品が販売後のメンテナンス作業による利益を前提として廉価販売されているとまでいうことはできないし,第1審被告がメンテナンス作業の対価により利益を得ていることをもって,被告装置の販売に関する部分について特許法102条2項の「利益」を算定するに当たり,直ちに変動費を控除する必要がないということはできないから,第1審被告の上記主張は,採用することができない。 イ控除額について(ア) 広告宣伝費・賃借料(レンタカー費用と倉庫費用)・旅費・通信費(携帯電話代)・時間外人件費について第1審原告は,第1審被告の従業員の人件費,移動費,連絡費等のほとんどの部分は,「異物除去機関係の製品売上」に関するものではなく,それ以外の売上高,特に,技術者が実際に行うサービスであるメンテナンスに関するものにすぎないから,被告装置の販売に関する変動費として控除対象とすべきではないと主張する。 しかしながら,第1審被告の従業員の人件費,移動費,連絡費等のほとんどの部分がメンテナンスに関するものであることを裏付けるに足りる証拠はないし,上記各費目は被告装置の製造又は販売に直接必要な費用であって,その数量の増減に応じて変動する経費に相当するものと解されるから,第1審原告の上 ンスに関するものであることを裏付けるに足りる証拠はないし,上記各費目は被告装置の製造又は販売に直接必要な費用であって,その数量の増減に応じて変動する経費に相当するものと解されるから,第1審原告の上記主張は,採用することができない。 (イ) 運搬費について第1審原告は,運搬費についても,被告装置の販売やメンテナンス売上げの実態からすると,売上高を基準として按分することに合理性は全く存在しない,各年度の1台平均の運搬費は,明らかに実態からかけ離れた数値であり,高くとも1台当たり5万円程度にすぎないなどと主張する。 しかしながら,メンテナンスに係る第1審原告の主張を採用することができないことは前記のとおりであるし,搬送地域が異なれば運送費も異なることなどからす- 43 -ると,第1審被告の自社品事業部の売上高に占める被告装置の売上高の比率を乗じて按分額を算出することは合理性があるものと認められるから,第1審原告の上記主張は,採用することができない。 (ウ) 交際接待費,会議費及び販売促進費の各販売管理費並びに手形割引料について第1審被告は,歳暮,中元,協賛金は売上げのないところには出さないし,食事代も顧客と会う機会が増加するのに応じて必要となるものであり,手形割引料は売上げを手形で受け取ることから直接に必要となるものであるから,交際接待費,会議費及び販売促進費の各販売管理費並びに手形割引料についても,変動費に該当するなどと主張する。 しかしながら,歳暮,中元,協賛金及び食事代が被告装置の製造・販売に直接必要な経費であるとは認め難いこと,手形割引料は営業外費用であって営業活動との繋がりが希薄であることは,原判決が認定したとおりであって,第1審被告の上記主張は,いずれも採用することができない。 (3) 寄与度について第1審原 ,手形割引料は営業外費用であって営業活動との繋がりが希薄であることは,原判決が認定したとおりであって,第1審被告の上記主張は,いずれも採用することができない。 (3) 寄与度について第1審原告は,本件発明は被告装置全体において実施されているというべきであって,本件発明の寄与度は100%であると主張する。 しかしながら,被告装置は,本件発明3の技術的範囲に属する共回り防止装置を内蔵する生海苔異物分離除去装置であって,共回り防止装置そのものではないから,本件発明が被告装置全体において実施されているとまでいうことはできない。 よって,第1審原告の上記主張は,採用することができない。 (4) 第1審原告のシェアについて第1審被告は,乙43判決及び乙55判決によれば,渡邊機開工業の販売台数は第1審原告の3倍以上はあるから,仮に第1審被告が被告装置を販売しなかった場合には,そのうちの4分の3は渡邊機開工業の売上げになったであろうことが推測され,第1審原告の損害は4分の1に限られるというべきであるなどと主張する。 - 44 -しかしながら,特許法102条2項は,侵害者の利益を特許権者の利益と推定する規定であるところ,第1審被告の主張する事由をもってしては,第1審原告に生じた損害額が第1審被告の利益額の4分の1であることを裏付けることはできず,同項の推定を覆滅するに足りるものではない。 よって,第1審被告の上記主張は,失当である。 (5) 弁護士費用相当損害金について第1審原告は,特許権侵害訴訟では,いわゆる侵害論の審理に重点が置かれており,特許権侵害に基づく逸失利益相当損害金の認容額に関わりなく,侵害論の主張立証に時間と手間とを要することは明らかであるから,侵害論の後に行われる損害論の手続によって認定された金額を基準として,その手続 特許権侵害に基づく逸失利益相当損害金の認容額に関わりなく,侵害論の主張立証に時間と手間とを要することは明らかであるから,侵害論の後に行われる損害論の手続によって認定された金額を基準として,その手続以前に要した弁護士費用相当損害額を含めて形式的に認容額の10%相当額と判断することは背理であり,著しく正義に反する,原審における合計17回の手続のうち,侵害論に関して合計10回の手続が行われるなどした本件の経緯からすれば,特許法102条2項に基づく損害額にかかわらず,第1審被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金の額が認定されなければならないなどと主張する。 しかしながら,本件訴訟の経緯,審理の経過,難易度,認容額等に照らすと,本件と相当因果関係があると認められる弁護士費用相当損害金の額は,第1審原告の上記主張を考慮しても,原判決の認定した145万円をもって相当と認める。 6 結論以上の次第であるから,原判決は相当であって,本件各控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官土肥章大 - 45 -裁判官井上泰人 裁判官荒井章光- 46 -(別紙)損害目録 1 主位的請求(1) 被告装置の販売に関する部分 - 47 -(2) 本件回転板の販売に関する部分 (3) 本件プレート板の販売に関する部分ア販売数量:721枚イ販売単価:350円ウ粗利率:50%エ粗利総額:721枚×350円×50%=12万6 売に関する部分 (3) 本件プレート板の販売に関する部分ア販売数量:721枚イ販売単価:350円ウ粗利率:50%エ粗利総額:721枚×350円×50%=12万6175円 (4) 上記(1)ないし(3)の合計 9361万0706円 - 48 - 2 予備的請求(1) 被告装置の販売に関する部分 (2) 本件回転板の販売に関する部分 - 49 -(3) 本件プレート板の販売に関する部分変動費を仕切価格の2.6%相当額として計算すると,11万9614円となる。 【計算式】721枚×350円×(粗利50%-2.6%)=11万9614円 (4) 上記(1)ないし(3)の合計 8036万6685円 以上
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