昭和28(う)842 収賄被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和28年7月20日 東京高等裁判所 破棄自判
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人を懲役壹年に処する。      被告人から金七拾五万六千円を追徴する。          理    由  弁護人小泉英一同吉田太郎共同の控訴

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判決文本文2,147 文字)

主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役壹年に処する。 被告人から金七拾五万六千円を追徴する。 理由 弁護人小泉英一同吉田太郎共同の控訴趣意は別紙記載のとおりでこれに対する当裁判所の判断は以下に示すとおりである。 論旨第七点について。 刑法第百九十七条第一項後段にいわゆる「請託」とは公務員に対し職務上の行為を行うことを依頼すること<要旨第一>をいうのであるが、いかなる行為を依頼してもすべてそれがここにいう「請託」となるわけではない。「請託」</要旨第一>というためには、その請託の対象となる職務行為がある程度具体性を有することを必要とするのであつて、かかる具体性をもつ行為の依頼と賄賂の収受とが結び付くところに受託収賄を特に重く処罰する理由があるのである。ところで、原判決の挙示する証拠によると、被告人が原判示第四のごとくAから現金五万円の供与を受けたのは、当時被告人がAのバナナ等の無為替輸入の件につき調査中であり、その調査及び取締について便宜寛大な取扱をしてほしいという依頼の趣旨とともに、その報酬の趣旨で供与を受けたものであることが認められるし、また原判示第五のごとくBの手から金五十万円の供与を受けたのも、当時被告人が株式会社C商会のフレキシボート無為替輸入の事件につき調査中であつたところがら、その件につき前同様の趣旨で供与を受けたものであることが認められるのであつて、かくのごとく特定した事件について便宜寛大な取扱を依頼するのはある程度具体性を有する行為の依頼であるから、「請託」というに妨げないというべきである。論旨は右の二個の事実についても請託を受けた証拠は存しないと主張するのであるが、原判決の挙示<要旨第二>する証拠によれば、被告人は賄賂収受の以前にいずれも原判示のような趣 に妨げないというべきである。論旨は右の二個の事実についても請託を受けた証拠は存しないと主張するのであるが、原判決の挙示<要旨第二>する証拠によれば、被告人は賄賂収受の以前にいずれも原判示のような趣旨の依頼を受けていることが認めら</要旨第二>れるのみならず、そもそも前記法条にいう請託は必ずしも賄賂供与の事前に明示的になされることを必要とするものではなく、賄賂を供与すること自体により黙示的にその依頼の趣旨を表示するのも請託にほかならないのであり、その際その依頼の趣旨を諒承して賄賂を収受すれば、予め明示の依頼を受けこれを承諾してしかる後賄賂を収受した場合とその処罰価値においてなんら選ぶところがないから、やはり請託を受けて賄賂を収受したものに該当するといわなければならない。従つて以上二個の事実については論旨は理由がないが、進んで原判示第二及び第三の事実について考えてみると、その依頼の趣旨はいずれも原判示のようにD及びEの営業一般に関する調査及び取締について職務上便宜寛大な取扱をして貰いたいというに止まること証拠上も明らかであつて、別段特定の事件に関するものではないから、かかる依頼はいまだもつて刑法第百九十七条第一項後段にいわゆる「請託」であるということはできず、その趣旨で金員の供与を受けた被告人の所為は原判示第一の事実と同様に同項前段の罪を構成するに止まるものと解しなければならない。はたしてしからば右の二個の事実については原判決は事実を誤認したというよりはむしろ「請託」の意義を誤解し法令の適用を誤つたものというべきであり、その誤は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨はこの点において理由がある。 よつて論旨第六点について判断するまでもなく刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条により原判決を破棄することとし本件は訴訟記録によつて直ちに ことが明らかであるから、論旨はこの点において理由がある。 よつて論旨第六点について判断するまでもなく刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条により原判決を破棄することとし本件は訴訟記録によつて直ちに判決することができるものと認めるから、同法第四百条但書を適用して被告事件につきさら次のとおり判決することとする。 (罪となるべき事実及び証拠の標目)当裁判所の認定した被告人の罪となるべき事実及びこれを認めた証拠の標目は、原判示第二及び第三の事実中それぞれ「職務上便宜寛大なる取扱をせられたい旨の請託を受けてその趣旨を諒承し」とあるのを「職務上便宜寛大なる取扱を受けたき趣旨の下に提供することの情を諒承しながら、」と訂正するほか、すべて原判決理由に記載されたところと同一であるから、ここにこれを引用する。 (法令の適用)被告人の原判示第一、第二、第三の(1)(2)の各所為はいずれも刑法第百九十七条第一項前段に、第四、第五の各所為はいずれも同項後段に該当するところ、以上は同法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条第十条により最も重いと認める第五の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年に処し、被告人の収受した賄賂はすべてこれを没収することができないから、同法第百九十七条の四後段に従い被告人からその価額を追徴することとする。 (その他の判決理由は省略する。)(裁判長判事大塚今比古判事山田要治判事中野次雄)

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