- 1 -平成29年5月30日判決言渡平成27年第1974号違約金等支払請求事件判決主文 1 原告の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用(補助参加によって生じたものを含む。)は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 主位的請求被告は,原告に対し,16億6199万1240円及びこれに対する平成27年3月12日から支払済みまで年18.25パーセントの割合による金員を支払え。 2 予備的請求被告は,原告に対し,8億3099万5620円及びこれに対する平成27年2月10日から支払済みまで年18.25パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨原告は,被告との間で,被告及びA株式会社(以下「A」という。)が名古屋市α区βγ丁目Δ他に建設予定のビル(以下「本件ビル」という。)に係る定期建物賃貸借契約(以下「本件本契約」という。)を締結するための予約契約(以下「本件予約契約」という。)を締結していたところ,本件は,おり,原告が,本件予約契約を解除したなどと主張して,被告に対し,主位的に本件予約契約上の予約金8億3099万5620円の返還及びこれと同額の違約金の支払等を求め,予備的に上記予約金の返還等を求める事案である。 - 2 -主位的請求は,原告が,本件予約契約の解除原因として,①本件予約契約上,本件ビルの開業時期を平成28年春(3月ないし5月)とする旨の合意又は平成28年春から大幅に遅延させない旨の黙示の合意があるのに,被告がこれに違反したことが同契約15条1項3号(同条4項による読替え後のもの)の定める解除事由に該当する,②本件ビルの建設工事(以下「本件工事」という。)に係る事前調査の不備や建設計画の不備 に,被告がこれに違反したことが同契約15条1項3号(同条4項による読替え後のもの)の定める解除事由に該当する,②本件ビルの建設工事(以下「本件工事」という。)に係る事前調査の不備や建設計画の不備という被告の責めに帰すべき事由により本件ビルの開業時期が1年間遅延したために,本件本契約の締結が困難になったことが同契約15条1項4号(同条4項による読替え後のもの)の定める解除事由に該当する,③被告が開業遅延について真摯な対応をしなかった上,原告に対して違約金の支払を請求するなどしたために,原告と被告との間の信頼関係を構築することが不可能になったことが本件予約契約15条1項13号又は同条4項の定める解除事由(同条1項4号〔同条4項による読替え後のもの〕に準ずる事由により本件予約契約を継続し難くなったとき)に該当するから,本件予約契約15条4項に基づき同契約を解除したと主張して,被告に対し,同項に基づき,予約金8億3099万5620円の返還及び違約金8億3099万5620円の支払並びにこれらの合計である16億6199万1240円に対する平成27年3月12日(原告による上記解除の意思表示の日の翌日)から支払済みまで同契約20条に基づく年18.25パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めるものである。 予備的請求は,原告が,本件予約契約の解除原因につき,①本件ビルの開業時期が本件予約契約時に予定されていた平成28年春から少なくとも1年程度遅延することが確実になったため,同年春に開業するビルの定期建物賃貸借契約を締結するという本件予約契約の目的の達成が不可能となったことを理由に,履行不能に基づき同契約を解除した,②本件工事の遅延により本件ビルの開業時期が1年間遅延し,原告と被告との間の開業時期に係る - 3 -計画から完全に逸脱し 達成が不可能となったことを理由に,履行不能に基づき同契約を解除した,②本件工事の遅延により本件ビルの開業時期が1年間遅延し,原告と被告との間の開業時期に係る - 3 -計画から完全に逸脱したことが本件予約契約14条1項1号の定める解除事由に該当することを理由に,同項に基づき同契約を解除した,③本件ビルの開業時期が1年間遅延したために原告の経済的損害の発生が確実となって本件本契約の締結が困難となったことが本件予約契約14条1項4号の定める解除事由に該当することを理由に,同項に基づき同契約を解除した旨主張するとともに,④原告及び被告が主張するいずれの解除事由も認められない場合においても,被告が株式会社B(以下「B」という。)との間で二重に契約を締結したため,本件予約契約は終了しており,又は,原告において同契約15条1項4号(同条4項による読替え後のもの),同契約14条1項1号又は事情変更(信義則)に基づいて同契約を解除できるから,被告には予約金を保持する正当な権限がない旨主張して,被告に対し,解除(履行不能ないし本件予約契約14条2項)による原状回復請求又は不当利得返還請求として,予約金8億3099万5620円の返還及びこれに対する平成27年2月10日(原告による上記①ないし③の解除の意思表示の日の翌日)から支払済みまで本件予約契約20条に基づく年18.25パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めるものである。 2 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 当事者等ア原告は,パソコン・OA機器・カメラ,オーディオ・ビデオ機器,家電,携帯時計,ゲーム機・ソフト,CD・DVDソフト等の販売を業とする株式会社である。(争いのない事実)イ被告は, 者等ア原告は,パソコン・OA機器・カメラ,オーディオ・ビデオ機器,家電,携帯時計,ゲーム機・ソフト,CD・DVDソフト等の販売を業とする株式会社である。(争いのない事実)イ被告は,不動産の保有,管理及び賃貸等を業とする株式会社であり,Aの完全子会社である。(争いのない事実,弁論の全趣旨)本件予約契約の締結 - 4 -ア Aは,名古屋市からの要請(乙1)を踏まえて,「名古屋駅新ビル計画」を策定して本件ビルの建設を決定し,併せて,被告に対し,本件ビルの運営及び管理を任せた。被告及びAは,本件ビルの出店者の選定方法として,いわゆるプロポーザル方式を採用し,平成22年7月23日,家電量販店に対し,本件ビルの商業区画への出店についての提案を募集したところ,原告の提案が最も適当であると判断した。そして,原告,被告及びAは,平成23年2月10日,同日付けの出店合意書(以下「本件合意書」という。)を取り交わし,これにより,原告と被告が本件ビルの定期建物賃貸借契約(本件本契約)に係る定期建物賃貸借予約契約(本件予約契約)の契約条件の協議を行うこと等を内容とする合意をした。(乙1ないし5,46,弁論の全趣旨)イ原告,被告及びAは,平成25年1月23日頃,本件予約契約を締結したところ,本件予約契約中には,原告が,本件予約契約及びこれに付随して締結する契約に基づき被告に対して負担する一切の金銭の弁済を担保するため,被告に対し,予約金として8億3099万5620円を支払うものとする旨の条項があり(本件予約契約8条1項),原告は,被告に対し,同月,同条項に基づき,上記予約金相当額を支払った(以下「本件予約金」という。)。(争いのない事実,甲3,弁論の全趣旨)ウ本件予約契約に係る「定期建物賃貸借予約契約書」(以 被告に対し,同月,同条項に基づき,上記予約金相当額を支払った(以下「本件予約金」という。)。(争いのない事実,甲3,弁論の全趣旨)ウ本件予約契約に係る「定期建物賃貸借予約契約書」(以下「本件予約契約書」という。)には,「被告と原告とは,A及び被告が建設している平成28年春に開業予定の本件ビルについて定期建物賃貸借契約を締結するための予約契約(なお,本件予約契約は,被告と原告が定期建物賃貸借契約の締結義務を負うことを内容とするものであり,被告原告共に予約完結権を有さない予約とする。)を以下のとおり締結する。」旨の頭書が存在する。(甲3) 本件予約契約書の2条には,本件ビルについて,「平成28年春に開 - 5 -業予定の新ビル」との記載がある(以下,同記載及び前記の本件予約契約頭書の記載を併せて,「本件記載」という。)。(甲3) 本件予約契約書の3条(賃貸借契約の締結義務)には,被告と原告は,被告が甲工事(原告の費用負担で,原告の設計に起因して発生する工事のうち,A又は被告が設計施工する工事)を着工する前日までに,本件予約契約書別紙「定期建物賃貸借契約書条項案」(ただし,今後も検討を要する案文には【注】記で付記をする。)記載の内容で本件本契約を締結する旨の記載等がある。(甲3)エ原告が主位的請求において本件予約契約の解除事由として主張する同契約の関係条項の内容は,要旨,次のとおりである。(甲3) 15条4項並びに同条1項3号及び同項4号(各号につきいずれも同条4項による読替え後のもの)原告は,被告において次の3号ないし11号又はこれらに準ずる事由により本件予約契約を継続し難くなったときは,何らの催告なしに直ちに本件予約契約を解除することができる。この場合,原告は 原告は,被告において次の3号ないし11号又はこれらに準ずる事由により本件予約契約を継続し難くなったときは,何らの催告なしに直ちに本件予約契約を解除することができる。この場合,原告は,解除により被告に発生した損害を賠償する責任を一切負わず,被告は本件予約金全額を直ちに原告に返還し,かつ,それと同額を違約金として原告に支払うものとする。 3号 15条1項1号及び同項2号の他,本件予約契約の定めに違反したとき。 4号被告の責めに帰すべき事由で,本件本契約の締結を拒否若しくは締結のための協議に応じず又は条件表に定める内容に対して大幅な変更・追加・削除を申し出るなど,本件本契約の締結が困難となったとき。ただし,このうち,関係官公庁の指導,法律の改正,経済情勢の大幅な変動等により変更の必要が合理的に認められる場合は除く。 - 6 -(5号ないし11号省略)15条1項13号15条1項1号ないし同項12号に準ずる事由により本件予約契約を継続し難くなったとき。 オ原告が予備的請求において本件予約契約の解除事由として主張する同契約の関係条項の内容は,要旨,次のとおりである。(甲3) 14条1項被告及び原告は,以下の各号のいずれかの場合,本件予約契約を解除することができる。この場合,被告原告とも,お互いに相手方に対し損害賠償,違約金等の請求をしない。 1号天災地変その他の不可抗力,暴動・争議,経済事情の変動,土壌汚染や埋設文化財等の判明,本件ビルの建設計画に影響する許認可や第三者の開発行為の滞りその他の事由により被告・原告の計画どおりの本件ビル建設が困難と合理的に判断されるとき。 (2号及び3号省略)4号その他前各号に準ずる事由で,本件本契約の締結が困難と合理的な理由により判断さ の他の事由により被告・原告の計画どおりの本件ビル建設が困難と合理的に判断されるとき。 (2号及び3号省略)4号その他前各号に準ずる事由で,本件本契約の締結が困難と合理的な理由により判断されるとき。 14条2項前項の場合,被告は受領済みの予約金を無利息にて原告に対して返還するものとする。 カ本件予約契約20条は,遅延損害金について,次のように定めている。 (甲3)被告又は原告は,本件予約契約による金銭債務の履行を怠ったときは,遅延日数に応じ,年率18.25パーセントの割合で計算した遅延損害金を相手方に支払う。ただし,その支払遅延者が遅延損害金を支払った場合といえども相手方の有する(解除権は法定,合意の別を問わない。)解除 - 7 -権の行使には何ら影響を及ぼさない。 本件予約契約の解除ア原告は,被告に対し,平成27年2月9日,「平成28年春開業の建物の賃貸借契約を締結するという目的達成不能を理由として,本件予約契約を解除する」旨記載のある通知書により,本件予約契約を解除する旨の意思表示をし(以下「本件原告解除1」という。),速やかに本件予約金を返還するよう求めた。(甲10の1・2)イ被告は,原告に対し,平成27年3月6日,書面により,被告が本件原告解除1の誤りを指摘し,原告の翻意を願って原告代表者への面会を求めたにもかかわらず,原告がこれを拒絶し,協議に応じなかったことが本件予約契約15条1項4号の解除事由(本件本契約の締結拒否及び本件本契約締結のための協議に応じないこと)に該当する旨主張して,同項柱書に基づき,本件予約契約を解除する旨の意思表示をし(以下「本件被告解除」という。),同条2項に基づき,本件予約金を違約金として処理することを通知した。(甲8,乙40)ウ原 主張して,同項柱書に基づき,本件予約契約を解除する旨の意思表示をし(以下「本件被告解除」という。),同条2項に基づき,本件予約金を違約金として処理することを通知した。(甲8,乙40)ウ原告は,被告に対し,平成27年3月11日,書面により,本件ビル建設に係る事前調査及び本件ビル建設計画の不備という被告の責めに帰すべき事由により,本件ビルの開業時期が本件予約契約締結時点において前提とされていた平成28年春から遅延し,原告と被告との間で本件本契約を開始・継続するために信頼関係を構築することは著しく困難となっており,被告との間で本件本契約を締結することは著しく困難となった旨主張して,本件予約契約15条1項に基づき,同契約を解除する旨の意思表示をし(以下「本件原告解除2」という。),同条4項に基づき,本件予約金の返還及び違約金8億3099万5620円の支払を求めた。(甲9の1・2) 2 争点及びこれに関する当事者の主張 - 8 -本件予約契約15条1項3号(同条4項による読替え後のもの)を解除事由とする,原告による同契約の解除の効力(争点①)(原告の主張)ア本件ビルの開業時期を平成28年春(3月ないし5月)とする旨の合意(以下「本件開業時期合意1」という。)に被告が違反したことが「本件予約契約の定めに違反したとき」に該当すること 本件予約契約において本件開業時期合意1が成立していることa 本件予約契約に本件記載がなされた経緯は,次のとおりである。すなわち,被告が平成23年12月12日に原告に対して初めて示した本件予約契約の条項案(乙7の1)には,本件ビルの竣工時期及び開業時期の記載がなかったところ,原告は,開業準備との関係で開業時期の特定が必要不可欠であったから,被告に対し,平成24年12月 した本件予約契約の条項案(乙7の1)には,本件ビルの竣工時期及び開業時期の記載がなかったところ,原告は,開業準備との関係で開業時期の特定が必要不可欠であったから,被告に対し,平成24年12月22日,本件予約契約の条項案(乙16の2)を送付し,その中に「平成28年3月末に開業予定の,との特定も必要と存じます」と付記した上で,条項案に「平成28年3月末に開業予定の」という文字を挿入した。これに対し,被告は,本件ビルの開業時期を記載すること自体は拒絶せず,原告が挿入した「平成28年3月末」との文言を「平成28年春」と修正し(乙17の2。以下「本件修正」という。),本件記載であれば応諾する旨の返答をした。 また,Aは,原告に対し,本件予約契約の締結に先立つ平成24年4月20日頃,本件ビルの竣工時期を平成27年12月,開業時期を平成28年3月とする旨明記したスケジュール(甲12)を交付し,同じ頃,本件ビルの開業時期が平成28年3月である旨繰り返し説明し,さらに平成24年5月,本件ビルの竣工が平成27年末,開業が平成28年春となることを報道発表する(甲13ないし14の4)とともに,平成24年6月,このスケジュールを前提としたパンフレッ - 9 -ト(甲15)を作成及び配布していた。 上記経緯に照らすと,被告が原告に対し,本件ビルの開業期限を設けることを承諾したことは明らかであり,原,被告間において,本件開業時期合意1が成立したといえる。 b もし,本件記載が本件ビルの開業期限を意味するものではないとするならば,本件ビルの開業がいくら遅延しても双方一切責任を負わないことになり,そのような解釈は当事者の意思と明らかに乖離するし,本件予約契約に係る履行遅滞・履行不能がおよそ観念され得ず,当事者を半永久的に拘束することとなって, ら遅延しても双方一切責任を負わないことになり,そのような解釈は当事者の意思と明らかに乖離するし,本件予約契約に係る履行遅滞・履行不能がおよそ観念され得ず,当事者を半永久的に拘束することとなって,極めて不合理な結論となる。 c 被告及びAは,原告に対し,開業遅延問題が生じた後,複数回にわたり,開店準備金等の名目での金員支払に言及したところ,この事実は,被告及びAが,平成28年春を本件ビルの開業期限と認識していたことを意味する。なお,AのC社長(当時。以下「A社長」という。)は,平成26年4月1日,会見において,D株式会社とE株式会社の共同企業体(以下「施工JV」という。)に対して損害賠償をしない旨述べたが,その理由として「工期が決まっていない(平成28年春が期限ではない)」とは述べていない。 被告が本件開業時期合意1に違反したこと被告は,平成28年春から約1年間という長期間にわたり本件ビルを開業できないことが確定した時点で,本件開業時期合意1に違反したものである。 イ本件ビルの開業時期を平成28年春(3月ないし5月)から大幅に遅延させない旨の黙示の合意(以下「本件開業時期合意2」という。)に被告が違反したことが「本件予約契約の定めに違反したとき」に該当すること 本件開業時期合意2が成立していること仮に,本件予約契約書の文言が「平成28年春予定」というある程度 - 10 -幅のあるものであることを最大限考慮するとしても,当事者を拘束する概念として「平成28年春」と記載されたことが明らかである以上,少なくとも,これを大幅に遅延しない旨の黙示の合意が成立したといえる。 被告が本件開業時期合意2に違反したこと被告は,平成28年春から約1年間という長期間にわたり本 以上,少なくとも,これを大幅に遅延しない旨の黙示の合意が成立したといえる。 被告が本件開業時期合意2に違反したこと被告は,平成28年春から約1年間という長期間にわたり本件ビルを開業できないことが確定した時点で,本件開業時期合意2に違反したものである。 (被告の主張)ア本件予約契約において本件開業時期合意1が成立していないこと 本件予約契約において本件開業時期合意1が成立していないことは明らかである。 Aが策定した「F計画」は,駅前に存在した旧Gビルの解体から他社との連携や名古屋市等の関係機関からの指導,環境影響評価の手続等の膨大な事柄が見込まれることから,検討開始から開業まで10年以上を要する長期計画であった。 被告は,本件ビルの主要なテナントをプロポーザル方式で募集する際,その説明資料中に「平成28年度新ビル竣工(平成29年度にかけて順次開業)」,「※今後の行政手続きの状況により,上記スケジュールは変更となる可能性があります。」等の注記を付しており(乙3の3の1頁,乙3の4),本件ビルの竣工及び開業時期についてはあくまでも予定であって変更の可能性があり得ることを十分に説明しており,原告においてもこれを熟知していた。 原告,被告及びAは,平成23年2月10日,本件合意書を取り交わしたところ,本件合意書の前文には「平成28年度竣工を目標に建設を予定している」本件ビルへの出店に関して締結する合意書であることが明記されている。したがって,原告は,本件合意書締結時点では,本件 - 11 -ビルの竣工につき,平成29年3月末までを視野に入れた目標として設定されており,幅のある計画であって,いわゆる竣工時期という形で特定されておらず,このスケジュールについては今後変更 - 11 -ビルの竣工につき,平成29年3月末までを視野に入れた目標として設定されており,幅のある計画であって,いわゆる竣工時期という形で特定されておらず,このスケジュールについては今後変更もあり得ることを承知していた。 被告は,本件予約契約の文言に係る本件修正において,開業時期(竣工時期)の予定を確定期限として定めることはできないし,定める意思もないことを明確にしており,原告も被告の上記意思を理解・尊重して本件予約契約を締結した。これと反対趣旨の証人Hの本件修正に係る証言は信用できない。 また,被告は,本件予約契約の締結に先立って示したスケジュール(甲12),パンフレット(甲15)や報道発表(甲13ないし14の4)においても,今後変更の可能性があるスケジュールの予定を示したにすぎない。 本件予約契約中に,本件開業時期合意1に係る明文の定めは一切存在しない。 イ本件開業時期合意2が成立していないこと 及びに照らすと,本件開業時期合意2を裏付けるような事実等は存在しない。 原告は,本件予約契約の契約交渉の中で,本件ビルの開業時期や竣工時期を明確に定めることやこれを契約条件とすること等を要求していない。 被告及びAは,平成24年5月に本件ビル建築計画の前倒しを発表したが,これは,その時点でのスケジュール上の可能性を示したにすぎない。しかも,原告が平成24年9月に作成した書面(乙13)には「平成27~28年度の新ビル竣工予定という遠い将来での本契約」という記載がある。したがって,本件ビルの建設について,平成29年3月末 - 12 -までを視野に入れたスケジュールを見直していないことは明らかであり,原告もこれを認識していた。 本件予約契約15条1項4号(同条4項による読 設について,平成29年3月末 - 12 -までを視野に入れたスケジュールを見直していないことは明らかであり,原告もこれを認識していた。 本件予約契約15条1項4号(同条4項による読替え後のもの)を解除事由とする,原告による同契約の解除の効力(争点②)(原告の主張)ア 「条件表に定める内容に対して大幅な変更・追加・削除を申し出るなど,本件本契約の締結が困難となったとき」に該当する事実が存在すること 本件ビルの1年間の開業遅延が少なくとも本件予約契約の内容の大幅な変更に当たること仮に,本件予約契約において,「平成28年春予定」というある程度幅のある記載がなされたことを最大限考慮するとしても,次のa及びbの事情に照らすと,1年間もの開業遅延が少なくとも本件予約契約の内容の大幅な変更と評価されることには疑いの余地がない。 a 原告は,本件ビルの開業が約1年間遅延したことにより,①生産性向上設備投資促進税制(以下「本件税制」という。)による減税措置の効果が平成28年3月に本件ビルが開業する場合と比較して大幅に縮小され,しかも,本件ビルの開業が平成29年4月以降になれば,本件税制の適用が受けられなくなることによる損害,②東海地域向けの物流センター用地として急遽,36億3120万2088円で購入した土地に係る固定資産税(平成28年度につき,773万1400円)等の余分な1年間の維持費の増加,③東京オリンピック開催や東日本大震災復興事業の影響に伴う物流センター建設費用の増加分,④平成28年春開業を前提とする人件費や準備費の負担,⑤建設費用の高騰に伴う甲工事費用及び乙工事(原告の費用負担で設計し,A又は被告の指定する業者若しくは被告が事前に承諾した内装工事に実績のある業者へ,原告が直接,施 前提とする人件費や準備費の負担,⑤建設費用の高騰に伴う甲工事費用及び乙工事(原告の費用負担で設計し,A又は被告の指定する業者若しくは被告が事前に承諾した内装工事に実績のある業者へ,原告が直接,施工発注する工事)費用の増加分,⑥本 - 13 -件予約金の1年間の運用利益相当額(商事法定利率で計算すると約5000万円)の損失,⑦原告が本件ビルに出店する店舗(以下「本件店舗」という。)の初年度利益予想額28億8000万円の取得が1年間遅れることによる損失(利益相当額)等の数十億円単位の甚大な経済的損害を被ることになる。 bA社長は,約半年間の開業遅延により被告及びAが受ける影響について,「極めて大きなハンディになる」と発言した(甲4の2)。 本件ビルの開業遅延により本件本契約の締結が困難になったことa 本件予約契約書中の本件記載のとおり,原告は,平成28年春に出店することを内容として被告との間で本件予約契約を締結し,本件本契約の締結を約したところ,工事遅延に起因して1年もの開業遅延が発生した結果,「平成28年春に開業予定の」と明記された本件本契約の対象物件は存在できないことになったのであるから,本件予約契約に基づく本件本契約の締結が困難となったことは明白である。 b 被告及びAは,開業時期及び開業遅延の原因について適切な説明をせず,原告と被告との間の信頼関係の構築は極めて困難になった。被告及びAは,本件ビルの開業遅延により原告が前記aのとおりの甚大な経済的損害を被ることを認識し,会見等において,経済的損害の補償等を示唆したにもかかわらず,上記補償等を求め続けた原告に対し,結局,具体的な金額を書面で提示せず,そればかりか,原告に対し,予約金の返還を拒んだ。このような被告の対応により,遅くとも 的損害の補償等を示唆したにもかかわらず,上記補償等を求め続けた原告に対し,結局,具体的な金額を書面で提示せず,そればかりか,原告に対し,予約金の返還を拒んだ。このような被告の対応により,遅くとも平成27年2月5日には,上記損害の発生を回避し得ないことが確定的になった。 賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とした継続的契約である以上,原告が被ることになる損害を一顧だにせず,少なくとも真摯に対応しない被告との間で賃貸借契約を締結することは現実的でないから, - 14 -この点においても,本件本契約の締結が困難となったといえる。 イ本件本契約の締結が困難になったことが「被告の責めに帰すべき事由」によること 本件工事における杭孔の内壁の崩落a ①被告及びAが何を根拠として本件工事の現場における杭孔内の内壁の崩落(以下「本件崩落」という。)の原因を不明としているのかすら判然としないこと,②被告が開業遅延及び工事遅延について何ら具体的な説明,回答又は反論を行わなかったこと及び③「甲工事費用相当額」という名目での金員支払に言及したことの各事情を総合すると,被告及びAに本件ビルの開業遅延の帰責性があることは明らかである。 b 被告は,本件ビルの開業遅延の原因となった工事遅延の理由について,①本件崩落後,土の除去やコンクリートの健全度を確認するために時間を要したこと,②残りの杭工事においても内壁が崩れないように杭工事を行うことになったこと,③地下工事及び地上工事も含め全体の工程を見直すことになったことを挙げる一方で,本件崩落の原因は不明であるとするところ,仮に上記①ないし③が開業遅延の原因であるならば,いずれも土壌に関する事前調査や慎重な工事の実施によって回避できた事由であるから,開 ったことを挙げる一方で,本件崩落の原因は不明であるとするところ,仮に上記①ないし③が開業遅延の原因であるならば,いずれも土壌に関する事前調査や慎重な工事の実施によって回避できた事由であるから,開業遅延は,被告の責めに帰すべき事由によるといえる。遅延の原因として合理性があるのはせいぜい上記①のみであり,本件崩落の原因が判然としないのであればこれに対する対応策を講じることはできないのであるから,残りの杭工事において内壁が崩れないようにすることなど不可能であるし,地下工事及び地上工事も含め全体の工程を見直すことも合理性を欠くのであるから,上記②及び③は合理性を欠く説明と言わざるを得ない。 杭孔の崩落自体は希有な現象ではなく,復旧に要するのはせいぜい - 15 -20日程度とされている(甲19,20)から,これを著しく超える1年間もの工期延長については,被告の責めに帰すべき事由との評価を免れるものではない。 リニア中央新幹線が名古屋駅を通過することに伴う被告内部での調整及び他社鉄道との折衝等A及び被告の取締役であるIは,リニア中央新幹線の計画が工事遅延に影響を与えていた旨の説明をしたところ,同新幹線名古屋駅の建設は被告又はAの事業であって,これを理由とする本件ビルの開業遅延が被告の責めに帰すべき事由であることは明らかである。 また,被告は,杭孔の内壁崩落という事態を受けた対応策の1つとして,他社の鉄道函体などを含む構造物周りの地盤の変状を抑えるためにより慎重に掘削を行うことにした旨主張するが,リニア中央新幹線名古屋駅の建設を進めるに当たり,他社鉄道等との折衝が必要となり,いたずらに工事が遅延したというのが実態である。 (被告の主張)ア 「条件表に定める内容に対して大幅な るが,リニア中央新幹線名古屋駅の建設を進めるに当たり,他社鉄道等との折衝が必要となり,いたずらに工事が遅延したというのが実態である。 (被告の主張)ア 「条件表に定める内容に対して大幅な変更・追加・削除を申し出るなど,本件本契約の締結が困難となったとき」に該当する事実が存在しないこと 原告は,本件ビルの開業遅延が生じたことにより,当初から予定していた本件税制の適用が大幅に縮小されるか,受けられなくなる旨主張するが,本件税制は,Aにおいて本件ビルの竣工が半年以上遅れる旨を発表した平成25年11月13日よりも後に閣議決定されたから,本件予約契約締結時にその適用を予定して開業計画を策定することはあり得ない。したがって,たとえ,本件税制の適用縮小又は不適用という事実が発生しても,これによって本件本契約締結が困難となったとはいえない。 次のaないしeのとおり,被告は,原告に対し,本件ビルの開業時期や遅延原因について一貫して具体的かつ丁寧に説明しており,同説明の - 16 -内容を原因として原告と被告との信頼関係の構築が極めて困難となったという事実はない。 a 被告は,原告に対し,本件崩落という事象を受け,平成25年11月12日,施工JVとこれから具体的な工程を詰めていくこと,本件ビルの完成が少なくとも半年以上は遅れる見込みであることを伝え,同月14日には,同年12月頃に開業時期を固めたいと考えていること,その際には原告代表者に相談させてもらいたいことを説明した。 b 被告及びAは,施工JVから本件崩落への今後の対応策及び工期の延伸について報告を受けたため,平成25年12月26日,原告に対し,本件崩落という予想し得ない事象が生じたこと,そのため,コンクリートの健全度確認のために時間を要するほ 落への今後の対応策及び工期の延伸について報告を受けたため,平成25年12月26日,原告に対し,本件崩落という予想し得ない事象が生じたこと,そのため,コンクリートの健全度確認のために時間を要するほか,杭工事については,内壁崩落事象の再発防止策として掘る速度を遅くするなど,考えられる対応を全て講じることにより,工期の延伸が見込まれることを説明し,開業時期が早くても平成29年3月末か同年4月上頃になることを説明した。原告代表者は,これを了解した。 c 被告は,原告に対し,平成26年1月16日,本件ビルの開業時期を平成29年4月とさせてほしい旨説明したところ,原告代表者は,仕方ない旨述べ,本件予約契約違反であるとの指摘はしなかった。また,被告は,本件ビルの開業時期を「平成28年11月オフィス入居開始」,「平成29年4月商業施設,ホテル等開業」とすることになった旨報告した。 dAにおける本件工事の担当者であるJは,原告に対し,平成26年5月16日,工事遅延の理由,対応策及び現在の工事状況について説明した。これを受けて原告担当者であった株式会社KのHは,本件ビルの開業が約1年遅れること及びその原因等を正確に理解した。その際,Jがゼネコンの手順等に明らかな瑕疵は見当たらず,しっかり施 - 17 -工していたことについても説明したが,Hは,「貴社を責める理由は我々にはないと思っている」旨発言し,被告に責任がないという理解を示した。 e 被告,A及び原告は,本件合意書の作成後,当初は1か月に1回,その後は2~3週間に1回の頻度で打合せを行っており,これは,開業時期が平成29年4月とされた後も継続し,原告が本件原告解除1を行う直前まで続いた。被告は,原告に対し,これらの打合せにおいて,必要に応じて,開業遅延の 1回の頻度で打合せを行っており,これは,開業時期が平成29年4月とされた後も継続し,原告が本件原告解除1を行う直前まで続いた。被告は,原告に対し,これらの打合せにおいて,必要に応じて,開業遅延の原因や時期等について具体的に説明した。 被告は,原告に対し,補償について書面で通知・提案をなすべき義務を負うものではないし,甲工事を被告負担で行うことについて書面で提案するよう求められたこともないから,補償について書面での提案を拒否したことは,本件本契約締結が困難となる事情には当たらない。 被告が,原告に対し,本件被告解除をしたこと及び本件予約契約15条2項に基づいて,本件予約金を違約金に充当する処理をしたことは,いずれも有効であるから,本件本契約を締結することが困難となる事情にはなり得ない。 イ本件本契約の締結が困難になったとしても,それが「被告の責めに帰すべき事由」によるものではないこと本件崩落次のaないしfのとおり,本件工事には,いずれの工程においても,いかなる意味においても,被告の責めに帰すべき事由は存在しない。本件ビルの竣工時期及び開業時期が遅延することとなった原因は,不可抗力(仮に不可抗力でなくても相応の合理的理由が存しているもの)である。 a 地盤調査を含む基礎設計については,一般社団法人日本建築学会(以 - 18 -下「日本建築学会」という。)が定める「建築基礎構造設計指針」(乙20)及び「建築基礎設計のための地盤調査計画指針」(乙21)(以下,あわせて「本件指針」という。)が策定されているところ,これらは,建築業界において最も権威のある指針であるから,本件指針に従って地盤調査を含む基礎設計を行っている限り,その内容が適切妥当であることについては疑いの余地がない。 れているところ,これらは,建築業界において最も権威のある指針であるから,本件指針に従って地盤調査を含む基礎設計を行っている限り,その内容が適切妥当であることについては疑いの余地がない。 Aは,本件工事に係る基本設計をL株式会社と株式会社Mの共同企業体(以下「基本設計JV」という。)に,基本設計後の建物基礎の実施設計をD株式会社,株式会社M及びL株式会社の共同企業体(以下「実施設計JV」という。)に,それぞれ発注したところ,基本設計及び実施設計段階を通じて,計6か所の原位置調査の結果を用い,また,近隣ビルが建築された際のボーリング調査結果も参考資料とし,必要な室内土質検査を全て行っており,それらの全結果を踏まえた実施設計が行われた。構造方法については,地盤調査の結果や基礎設計等による構造の安全性について,建築基準法所定の国土交通大臣の認定を受けている。 上記各調査の結果,本件ビル建設予定地には,工法の選択に特段の配慮が必要となるような杭孔内壁の崩落のおそれのある地層は確認されなかった。なお,本件ビル建設予定地には,地下45メートル付近と地下75メートル付近に固い砂礫層の地盤があることが確認されたため,地下75メートル付近の地盤を支持層とすることとした。 b 本件ビルの施工計画は,前記地盤調査の結果,建物基礎の設計及び設計条件としての杭の工法(アースドリル工法)等を基にして,施工JVによって作成された。A及び被告は,株式会社M及びL株式会社の共同企業体(以下「監理JV」という。)に対し,建築基準法2条11号が定める工事監理者としての業務を委託したところ,上記施工 - 19 -計画は,監理JVによって,問題のない合理的な計画である旨の確認がなされた。 c 日本建築学会が策定した仕 1号が定める工事監理者としての業務を委託したところ,上記施工 - 19 -計画は,監理JVによって,問題のない合理的な計画である旨の確認がなされた。 c 日本建築学会が策定した仕様書である「JASS」に基づいて施工が行われている場合,その施工内容については合理性が存する。 本件においては,「JASS」に定められた仕様にしたがって,計画段階での施工計画書の内容の確認を行ったほか,「JASS」で示されている管理項目に基づいて工事が行われている。 d 本件ビルの建設に当たり,64本の単独杭を設置したところ,工事開始から15本目の杭に係る杭孔の掘削工事終了後,掘った杭孔内に鉄筋かごを入れ,底の方からコンクリートを打設するという作業を行っていた最中,突然,杭孔の内壁の一部が孔内に崩れて打設中のコンクリートの上部に土砂が堆積してしまった。 杭工事を行う際には杭孔の内壁が崩落することもあり得るとされるが,それは掘削時に起こるとされているのであり,極めて特別な事情でもない限り,コンクリート打設時等杭孔の掘削作業中以外に起きることはおよそ想定されていない。施工計画に従って適切に工事が行われていたことに照らしても,本件崩落は,およそ想定外の事象であった。 e 本件崩落により,崩落してコンクリート上に堆積した土砂の除去や打設中だったコンクリートの健全性確認のための作業を行う必要が生じ,当該杭について数か月の間作業を停止することを余儀なくされた。 また,本件崩落はおよそ想定し難い事態であったため,その後の工事においては,杭孔の掘削時はもとより,コンクリート打設時においても,杭孔内壁の崩落の発生を防止するために,杭孔内壁の崩落に対する措置の強化方法として,バケット引き揚げ速 態であったため,その後の工事においては,杭孔の掘削時はもとより,コンクリート打設時においても,杭孔内壁の崩落の発生を防止するために,杭孔内壁の崩落に対する措置の強化方法として,バケット引き揚げ速度の抑制,杭孔内の水頭圧の増加,掘削機設置の精度管理の強化,本件崩落が生じた杭の - 20 -近傍の杭の追加,杭1本の支持層の変更等の対策を講じた。これらの対策については,施工JVが杭工事全体で数か月程度の工期の延伸が相当と判断し,これにAも検討を加え,さらに監理JVも内容の妥当性を確認した。なお,原告が提出した,本件崩落の復旧に要する期間に係る証拠(甲19,20)は,いずれも本件と条件が異なるから,採用すべきでない。 さらに,本件崩落の原因が明確には特定できないという事態であったこともあり,その後に行う杭工事以外の工事にも地盤の変状等の影響を受ける可能性が皆無でなかったため,地下の掘削工事についても,考え得る対策として,掘削底面や山留め壁側の他社の鉄道函体等を含む構造物周りの地盤の変状を抑えるために,当初の予定よりも地下水位降下や荷重除去を急激に行うことを避け,より慎重に掘削を行うことにした。 しかも,社会的な要因に基づく慢性的な労務不足により,さらなる工期の延伸が見込まれた結果,全体で,1年程度の工期の延伸が相当と判断された。 f なお,被告及びAは,原告に対し,工事延伸の原因,対策,延伸後の開業時期の見込み等について複数回にわたって説明しており,原告も,その内容を十二分に知悉しており,また,1年程度の工期の延伸が見込まれる旨を説明した際にも,新たな工事計画と工期の延伸について異議が述べられたことはなかった。 リニア中央新幹線のことは本件とは無関係であること原告 年程度の工期の延伸が見込まれる旨を説明した際にも,新たな工事計画と工期の延伸について異議が述べられたことはなかった。 リニア中央新幹線のことは本件とは無関係であること原告は,リニア中央新幹線が名古屋駅を通過することに伴う被告内部での調整や他社鉄道との折衝等が工期延伸の原因であるかのような主張をするが,同駅の建設工事と本件工事は全く別の工事であるし,本件崩落当時,同駅の建設工事に係る契約は未だ締結されていなかった。また, - 21 -被告及びAは,本件ビルの計画が立てられた当初から,将来,本件ビルの地下部分に同駅が通る可能性も想定した上で本件ビルの計画を立てていたから,リニア中央新幹線が通ることになったために本件ビルの工期が延伸したことはない。 原告には被告に帰責性があるとの認識がなかったこと本件原告解除1に係る通知書には,被告の帰責性や債務不履行という記載はなかったから,原告としても,被告に帰責性はなく,債務不履行が存しないと考えていたことが明らかである。 本件予約契約15条1項4号に準じる事由(同条4項による読替え後のもの)により,同契約を継続し難くなったことを解除事由(同項13号,同条4項)とする,原告による同契約の解除の効力(争点③)(原告の主張)ア 「『本件本契約の締結を拒否若しくは締結のための協議に応じず又は条件表に定める内容に対して大幅な変更・追加・削除を申し出るなど,本件本契約の締結が困難となったとき』に準ずる事由」が生じたこと本件ビルの1年間の開業遅延により原告が被る損害は甚大であるにもかかわらず,被告は,1日でも早い開業を求める原告に対し,曖昧な返答を繰り返してこれに応じず,他方で,遅延について自らに責任がない旨の評価を押しつけよう 開業遅延により原告が被る損害は甚大であるにもかかわらず,被告は,1日でも早い開業を求める原告に対し,曖昧な返答を繰り返してこれに応じず,他方で,遅延について自らに責任がない旨の評価を押しつけようとするばかりで,全く真摯な対応をしなかったものであるから,「本件本契約の締結を拒否若しくは締結のための協議に応じず又は条件表に定める内容に対して大幅な変更・追加・削除を申し出るなど,本件本契約の締結が困難となったとき」に準ずる事由が発生したと評価すべきことは明らかである。 イ本件本契約の締結が困難になったことが「被告の責めに帰すべき事由」によること前記における原告の主張イと同じ。 - 22 -ウ 「本件予約契約を継続しがたくなったとき」に該当すること被告は,原告に対し,平成27年3月5日付け書面(甲8)により,本件予約金を返還しない態度を明確にしたものであって,原告と被告との間で信頼関係を構築することなどおよそ不可能な状況となったのであるから,「本件予約契約を継続しがたくなったとき」に該当する。 (被告の主張)ア原告が本件予約契約を解除することのできる事由は,本件予約契約15条4項が引用する同条1項3号ないし11号のみであるから,原告は,被告に対し,同項13号に基づき,本件予約契約を解除することはできない。 イ被告は,原告に対し,本件ビルの開業遅延の原因や新たな開業時期等について複数回にわたり説明を行った。また,本件予約金を返還しない態度における被告の主張のとおり,否認する。 本件予約契約15条1項4号を解除事由とする,被告による同契約の解除(本件被告解除)の効力(争点④)(被告の主張)ア原告が「原告の責めに帰すべき事由で,本件本契約の締結を拒否若しくは締結のた 約契約15条1項4号を解除事由とする,被告による同契約の解除(本件被告解除)の効力(争点④)(被告の主張)ア原告が「原告の責めに帰すべき事由で,本件本契約の締結を拒否若しくは締結のための協議に応じない」こと被告及びAは,原告に対し,①本件ビルの竣工・開業が遅れる見込みであること,②開業時期は原告と相談して決めたいこと並びに③本件ビルの竣工・開業が遅れる原因及びその対応策等についての説明を行った上で,開業時期が平成29年4月になる旨説明したところ,原告は,本件ビルの開業時期の予定変更について異議を述べることなく了承し,平成27年2月まで,被告との間で,出店に向けての協議を行っていた。 ところが,原告は,本件予約契約締結時には想定されていなかった本件税制の適用を希望し,本件税制の適用を受けられないことが開業予定時期 - 23 -の変更に伴う機会の損失であるかのような言いがかりを付け,平成27年2月に入ると,平成29年4月の開業に向けて行ってきた協議にも応じなくなり,本件ビルの開業時期を同年3月という確定時期に変更するよう求めてきた。さらには,原告は,被告及びAには相手先を秘した上で,N名古屋店への出店交渉を進めていたのであり,同出店交渉が結実したと思われる時期に,不当な本件原告解除1の意思表示をなし,本件予約金の返還までも要求してきたのである。なお,被告は,原告が本件予約契約を解除しようとしていたことに気付かないまま,原告の意向に沿うように努力し,本件本契約の締結に向けてよりよい関係を保つための方策等を検討していた。 以上のとおり,原告は本件予約契約に基づく本件本契約締結義務を遵守する意思を全く示さないばかりか,かえって理由がなく無効な解除までしたのであり,これが本件予約契約3条に違反し,「原告の責 。 以上のとおり,原告は本件予約契約に基づく本件本契約締結義務を遵守する意思を全く示さないばかりか,かえって理由がなく無効な解除までしたのであり,これが本件予約契約3条に違反し,「原告の責めに帰すべき事由で,本件本契約の締結を拒否若しくは締結のための協議に応じない」こと(本件予約契約15条1項4号)に該当することは疑いの余地がない。 (原告の主張)ア本件予約契約は,本件原告解除1により終了したから,その後にされた本件被告解除が有効となる余地はない。 イ以下のないしの事情に照らすと,原告が本件原告解除1の意思表示をしたことは,本件被告解除の解除原因には当たらない。 本件予約契約15条1項4号は,「原告の責めに帰すべき事由」を要件とするところ,本件予約契約締結時に本件ビルの開業時期が平成28年3月を少なくとも予定していたこと及び工事の遅延が発生したことには争いがなく,この工事遅延が原告の責めに帰すものでないから,工事遅延を根拠とする本件原告解除1の意思表示が「原告の責めに帰すべき事由」と評価される余地はない。 - 24 - 本件予約契約に基づく解除権の発生及び行使の有効性については,究極的には裁判所による法的判断を経なければ確定しないものであるところ,万一これが事後的に無効と判断されたとしても,解除権を行使したこと自体が新たな解除権の発生原因となるとすれば,一方当事者は,相手方に解除権を与える可能性をも考慮して解除権の行使につき,必要以上に抑制的にならざるを得ない。したがって,原告が解除の意思表示を行ったことを本件本契約の締結を拒否したと評価するのは,許されない。 被告又はAは,工事費の負担増を覚悟してでも遅延期間をできる限り短縮するという措置を取ることなく,他方で,原告が被 表示を行ったことを本件本契約の締結を拒否したと評価するのは,許されない。 被告又はAは,工事費の負担増を覚悟してでも遅延期間をできる限り短縮するという措置を取ることなく,他方で,原告が被った負担増又は損害については何ら配慮を示さず,全て原告の負担に帰せしめようとしていたのであって,このような事情からやむを得ず本件予約契約からの離脱を表明した原告について,解除原因となる帰責性が存するわけがない。 なお,被告は,原告がNへ出店したこと又は出店交渉を行っていたことを批判するが,原告が他物件への出店を検討することを被告又はAに報告し又はその承諾を得なければならない理由はなく,むしろ,Nへの出店に当たっては,Nとの間の守秘義務契約の存在により,第三者である被告又はAへの報告など不可能だった。 また,被告は,原告が本件ビルへの出店とNへの出店を天秤にかけていたかのごとく主張するが,本件ビルが存在する名古屋駅前とNが位置する栄地域は明らかに異なる市場・商圏であり,売場面積や客層等も大きく異なるのであって,原告が名古屋地域においてこの2店舗を並行して出店しようとしていたことは歴然とした事実である。 ウ原告が被告と原告代表者との直接の面談を拒否したことは,以下の及びの事情に照らすと,本件被告解除の解除原因たり得ない。 本件予約契約6条においては,「本件予約契約に関し,被告及び原告 - 25 -の間で行う意思表示,通知及び届出等は,すべて文書により行うものとする。」と定められており,少なくとも交渉が煮詰まった段階において,会社代表者との直接の面談を拒否されたことを問題視すること自体失当というほかない。 原告は,本件原告解除1の後,被告に対し,被告との面談又は協議を拒絶したわけでは 詰まった段階において,会社代表者との直接の面談を拒否されたことを問題視すること自体失当というほかない。 原告は,本件原告解除1の後,被告に対し,被告との面談又は協議を拒絶したわけではなく,代理人宛に書面を送付してきた被告の態度も踏まえて原告代理人を介して連絡するよう伝えたのである。 エ被告は,本件被告解除の効果として本件予約金の没収を主張するところ,①施工JVによる基礎工事段階で生じた事象という被告の支配領域内において生じた事象により開業遅延が生じたことには争いがなく,また,②被告は,本件予約契約が終了したとしても,次期テナント又はテナント候補者から予約金の交付を受けることができたし,実際に,原告が本件原告解除1及び本件原告解除2に係る通知を発した直後の平成27年4月頃,原告と業態が同一のBとの間で被告が希望する開業時期を前提とした賃貸借契約等を締結したのであるから,本件予約契約が終了したことによる被告の損害はない。それにもかかわらず,本件被告解除を有効とし,本件予約金の没収を認めることは,あまりにも当事者間の公平を害する。 債務不履行に基づく,原告による本件予約契約の解除の効力(争点⑤)(原告の主張)本件予約契約の締結に当たり,本件本契約の対象物件は「平成28年春に開業される本件ビル」であったところ,本件ビルの開業は,本件予約契約締結時に予定されていた平成28年春から少なくとも1年程度遅延することが確実になったから,同年春に開業される本件ビルの本件本契約を締結するという本件予約契約の目的の達成が不可能となり,原告は,遅くとも平成27年2月には,本件予約契約の解除権を有するに至った。 (被告の主張) - 26 -本件ビルを平成28年春に開業若しくは竣工する又は平成27年末に本 能となり,原告は,遅くとも平成27年2月には,本件予約契約の解除権を有するに至った。 (被告の主張) - 26 -本件ビルを平成28年春に開業若しくは竣工する又は平成27年末に本件ビルを竣工するという合意又は前提は存在しないから,平成28年春に開業する本件ビルの賃貸借契約を締結するという本件予約契約の目的は存在しない。 本件予約契約14条1項1号を解除事由とする,原告による同契約の解除の効力(争点⑥)(原告の主張)ア 「被告・原告の計画どおりの本件ビル建設が困難と合理的に判断されるとき」に該当すること 「被告・原告の計画」に平成28年春に本件ビルが開業することが含まれていたことa「計画」(本件予約契約14条1項1号)に時間的要素が含まれることは,①「計画」という言葉の意義,②ビル建設を不可能とする事由ではないが,ビルの竣工及び開業を遅延させる事由である「第三者の開発行為の滞り」及び「土壌汚染」が,「計画」どおりの本件ビルの建設を困難とする原因事実として記載されていることから,明らかである。 b 前記における原告の主張アa記載の事情及び原告がAの報道発表を信頼し,その計画を承諾して,平成28年春に本件ビルが開業するとの前提で,本件予約契約の締結に至ったことに照らすと,本件予約契約締結時における「被告・原告の計画」の内容には,平成28年春に本件ビルが開業することが含まれていた。 c なお,本件合意書作成時には本件ビルが平成29年度に開業するものと予定されていたとしても,それは平成24年4月以前のことであり,予約契約に至る過程で本件ビルの建設計画が具体化することは当然であって,本件予約契約締結までの間に,本件ビルの開業時期に関 - 27 -する計画は「平成28年春開 24年4月以前のことであり,予約契約に至る過程で本件ビルの建設計画が具体化することは当然であって,本件予約契約締結までの間に,本件ビルの開業時期に関 - 27 -する計画は「平成28年春開業」に変更された。被告が本件予約契約の締結に伴って,原告から高額の予約金を受領することができたのは,本件予約契約において開業時期が明確に特定されたためである。 「被告・原告の計画どおりの本件ビル建設が困難と合理的に判断される」ことaAは,平成25年11月13日,本件ビルの開業が遅延する旨発表し,また,平成26年2月13日,その遅延期間が約1年に及ぶことを発表したから,この時点で,本件ビルの平成27年末竣工及び平成28年春開業が不可能になった。Aが平成25年11月13日及び平成26年2月13日の会見で損害賠償について言及したことからも明らかなとおり,約1年間の開業遅延及びこの前提となる工期の遅延は,原告及び被告の間の「計画」から完全に逸脱するものであり,少なくとも「計画どおり」ではなくなった。 b 原告及び被告の本件ビル開業時期に関する計画が「平成28年春」という多少は幅のあるものであったことや,将来にわたる計画であるためにスケジュール(甲12)等に変更の可能性が記載されていることを考慮しても,これは,行政検査等により多少のずれが生じることを示唆するものに過ぎず,1年間にもわたって開業が遅延することは,会見においてAが自認するように,一般的にも具体的にも,本件ビルの賃借人及び賃貸人に多大な影響を与え得ることであり,計画に反したものである。 c 前記における原告の主張アaのとおり,原告が本件ビルの開業が約1年間遅延したことにより,甚大な経済的損害を被ることになったことからしても,約1年間の開業遅延が原告及び被告の間の ある。 c 前記における原告の主張アaのとおり,原告が本件ビルの開業が約1年間遅延したことにより,甚大な経済的損害を被ることになったことからしても,約1年間の開業遅延が原告及び被告の間の「計画」の範疇にないことは明らかである。 イ計画どおりの本件ビル建設が困難となったことが「天災地変その他の不 - 28 -可抗力,暴動・争議,経済事情の変動,土壌汚染や埋設文化財等の判明,新ビルの建設計画に影響する許認可や第三者の開発行為の滞りその他の事由による」ものであること 仮に,被告が主張するとおり,計画どおりの本件ビルの建設が困難となったことが不可抗力によるものであるとしても,「(天災地変)その他の不可抗力」又は「(第三者の開発行為の滞り)その他の事由」に該当することは疑いようがない。 被告は,本件ビルの開業遅延の端緒が,本件崩落である旨主張するところ,被告が自らの判断において決定した本件ビル建設工期の遅延期間は約1年間に及ぶのであって,対外的に公表された工期から大幅に遅れることになった以上,これが「滞り」との評価を受けることは疑いの余地がない。 また,本件予約契約14条1項1号に「天災地変その他の不可抗力」として当事者の帰責性を要件としない事実が掲げられていることからして,計画どおりの本件ビルの建設が困難となった原因事実として同号に列挙されている事由は,少なくとも解除権を行使する当事者(本件では原告)の責めに帰すべき事由でない限り,解除権の発生原因となる。本件ビルの建設工事を担当していたのは施工JVであり,本件工事に係る基礎工事についての事前調査,工法の選択及び実施いずれの点についても,これを支配していたのは被告又はAであり,原告は何ら関与していないから,被告の責めに帰すべき事由である JVであり,本件工事に係る基礎工事についての事前調査,工法の選択及び実施いずれの点についても,これを支配していたのは被告又はAであり,原告は何ら関与していないから,被告の責めに帰すべき事由であることはあっても,原告の帰責性はない。 したがって,本件崩落及びこれに伴う工事の遅延が「第三者の開発行為の滞りその他の事由」の要件を充足することは明白である。 (被告の主張)ア 「被告・原告の計画どおりの本件ビル建設が困難と合理的に判断される - 29 -とき」に該当しないこと原告の本件予約契約14条2項に基づく予約金返還請求(予備的請求)は,原告と被告との間で本件ビルの開業時期が平成28年春と合意されていた場合に初めて成り立ち得る主張である。 における被告の主張のとおり,上記合意は,成立していない。 なお,原告は,甲12等の資料に記載された内容を根拠として,原告と被告との間に,「被告が平成28年春を本件ビルの開業期限と捉えていた」とか「平成27年末に本件ビルを竣工するという計画の実現」とかいう前提ないし共通認識があったと主張する。 しかし,原告が指摘する各資料(甲12,13,15)には,今後も計画の変更の可能性があることや,その時点での予定である旨の留保文言が明記してあるから,これらの資料をもって,原告と被告との間に上記前提ないし共通認識があったと認めることはできない。 また,原告は,本件予約契約の文言の解釈を根拠として,本件ビルの開業が平成28年春であることを原告と被告の共通認識であり,前提であったと主張する。 しかし,原告は,被告及びAから本件ビル計画の商業区画への出店の提案を求められた際から,本件ビルの開業時期については幅があり変更の可能性がある予定とされていることを十分認識しており 張する。 しかし,原告は,被告及びAから本件ビル計画の商業区画への出店の提案を求められた際から,本件ビルの開業時期については幅があり変更の可能性がある予定とされていることを十分認識しており,その認識の下に提案書を提出し,本件合意書を締結し,出店に向けた協議を行ったが,協議において本件ビルの開業時期を問題としたり,何らかの要求を述べることもなく,本件予約契約を締結したのである。そして,本件予約契約書添付の本件本契約の契約書案6条3項に,既に合意した条項として,「新ビルの施工遅延その他の事由により引渡日及び開店日が遅延する場合があることを予め承諾し」と記載されていることにも照らすと,本件本契約の締結期限が今後変更の可能性のある不確定期限であること - 30 -を合意していたことは明らかである。 イ計画どおりの本件ビル建設が困難となったことが「天災地変その他の不可抗力,暴動・争議,経済事情の変動,土壌汚染や埋設文化財等の判明,新ビルの建設計画に影響する許認可や第三者の開発行為の滞りその他の事由」によるとの原告の主張は,争う。 本件予約契約14条1項4号を解除事由とする,原告による同契約の解除の効力(争点⑦)(原告の主張)ア本件ビルを平成28年春に開業するとの予定が実現しなかったことが本件予約契約14条1項1号に準ずる事由(同項4号)に該当すること 仮に,本件予約契約締結当時,本件ビルを平成28年春に開業することが未だ流動的な要素を含んだ事項であり,原告及び被告の間の「計画」とまでは評価できなかったとしても,双方において,平成28年春に開業することが予定されていた事実自体には争いがない。 原告は,本件ビルが平成28年春に開業するものと信頼し,本件予約契約締結後に準備を開始したから としても,双方において,平成28年春に開業することが予定されていた事実自体には争いがない。 原告は,本件ビルが平成28年春に開業するものと信頼し,本件予約契約締結後に準備を開始したから,本件ビルを平成28年春に開業することが「計画」であろうとなかろうと,原告が開業遅延により被る経済的損害は,何ら異なるものではない。そして,被告は,Aが平成26年2月13日の会見において損害賠償に言及したことから明らかなように,原告が著しい損害を被ることを承知していた。 イ 「本件本契約の締結が困難と合理的な理由により判断されるとき」に該当すること における原告の主張アと同じ。 (被告の主張)ア本件ビルを平成28年春に開業するとの予定が実現しなかったことが本件予約契約14条1項1号に準ずる事由(同項4号)に該当しないこと - 31 -前記における被告の主張と同じ。 イ 「本件本契約の締結が困難と合理的な理由により判断されるとき」に該当しないこと前記における被告の主張アと同じ。 本件原告解除1が本件予約契約14条1項に基づくものであるか(争点⑧)(原告の主張)ア解除の意思表示においては,解除の理由や根拠条文を示す必要はない(大判大正元年8月5日大審院民事判決禄18輯726頁)。 イ本件予約契約14条1項1号及び同項4号の中核となる事実(要件)は,「被告・原告の計画どおりの本件ビル建設が困難と合理的に判断されるとき(あるいはこれに準ずる事由で,本件本契約の締結が困難と合理的な理由により判断されるとき)」であるところ,原告は,本件原告解除1に係る通知書(甲10の1)において,本件ビルを平成28年春に開業することが被告及び原告の計画であったことを明示し,また,この計画どおりの本件ビ 断されるとき)」であるところ,原告は,本件原告解除1に係る通知書(甲10の1)において,本件ビルを平成28年春に開業することが被告及び原告の計画であったことを明示し,また,この計画どおりの本件ビル建設が困難(不可能)となったことを明示した。 本件予約契約14条1項に基づく解除の効果は,被告が原告に対し受領済みの予約金を無利息で返還することであるところ(同条2項),原告は,被告に対し,本件原告解除1に係る通知書において,受領済みの予約金の返還を求めた。 前記及びのとおり,原告は,被告に対し,本件原告解除1に係る通知書において,本件予約契約14条1項に該当する事実及び同項に基づく解除の効果を摘示したのであるから,被告において,解除の理由及び効果を認識することが可能である。したがって,仮に被告の予測可能性を考慮したとしても,原告が本件原告解除1の意思表示により,同項を根拠として同契約を解除することに何ら不都合はなく,その有効性に疑問を挟む余地はない。 - 32 -ウしたがって,本件原告解除1は,本件予約契約14条1項に基づくものである。 (被告の主張)本件原告解除1に係る通知書(甲10の1)の文面からは,原告主張のような趣旨の解除の意思表示が存するとは解し得ない。 本件予約金に係る不当利得返還請求の可否(争点⑨)(原告の主張)本件原告解除1,本件被告解除及び本件原告解除2に係る解除事由がいずれも認められない場合においても,被告又はAが平成27年5月14日までにBとの間で,本件ビルへの出店に関する契約を締結したため,①本件予約契約は終了しており,又は,②本件ビルへの出店について本件予約契約と二重に契約を締結したことになることを理由として,本件予約契約15条1項 ,本件ビルへの出店に関する契約を締結したため,①本件予約契約は終了しており,又は,②本件ビルへの出店について本件予約契約と二重に契約を締結したことになることを理由として,本件予約契約15条1項4号(同条4項による読替え後のもの),同契約14条1項1号又は事情変更(信義則)を根拠として,原告は,本件予約契約を解除できる。 したがって,被告には本件予約金を保持する正当な権限はないから,原告は,被告に対し,不当利得返還請求として,本件予約金の返還を請求することができる。 (被告の主張)本件被告解除が有効な場合には,原告は,被告に対し,本件予約金を違約金として支払い,被告は,既に受領済みの本件予約金を違約金に充当できるものと定められているところ(本件予約契約15条2項),前記における被告の主張のとおり,被告は,有効な本件被告解除を行い,これに伴って同項に基づいて本件予約金を違約金に充当したものであり,したがって,原告は,本件予約金の返還請求権を自動的に失った。 本件予約金返還債務につき遅延損害金が発生するか(争点⑩)(原告の主張) - 33 -ア本件予約契約20条本文には,「被告又は原告は,本件予約契約による金銭債務の履行を怠ったときは,遅延日数に応じ,年率18.25パーセントの割合で計算した遅延損害金を相手方に支払う。」と規定されているところ,被告の予約金返還債務は,同契約14条2項に基づいて発生する「本件予約契約による金銭債務」であるから,年率18.25パーセントの遅延損害金が発生する。 本件予約契約14条1項に基づく解除は,各当事者の帰責性を要件としない解除であるところ,同条2項においては,解除原因について帰責性を有しない当事者に本件予約金の預託時から解除権が行使されるまでの間の利息の 契約14条1項に基づく解除は,各当事者の帰責性を要件としない解除であるところ,同条2項においては,解除原因について帰責性を有しない当事者に本件予約金の預託時から解除権が行使されるまでの間の利息の支払が課されるという酷な結果とならないように,上記利息は付さないこととした。 これに対し,解除権が行使された後においては,既に予約金返還債務が発生し,かつ,弁済期も到来しているのであって,これを怠った当事者を保護すべき理由・合理性は皆無である。 したがって,同項において「無利息」と規定されているのは,予約金の預託時から解除時までの間であり,解除後に予約金の返還義務を怠った場合には,同契約20条本文が適用される。 イ仮に,本件予約契約14条2項に基づく予約金返還債務について同契約20条本文の適用がないとしても,その理由は,同契約14条2項にいう「無利息」の規定が同契約20条を排斥しているからではなく,解除権の行使を前提として発生する予約金返還債務が「本件予約契約による金銭債務」に該当しない可能性があるからである。 この場合であっても,いったん解除権が行使され,既に予約金返還債務が発生し,かつ,弁済期も到来している状況において,これを怠った当事者を保護すべき理由・合理性が皆無であることには変わりなく,少なくとも商事法定利率に基づく遅延損害金が発生することには疑いの余地がない。 - 34 -(被告の主張)前記ないしにおける被告の主張のとおり,原告の予備的請求には理由がないから,原告の主張は無意味である。 時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立て(争点⑪)(被告の主張)ア原告は,平成29年2月28日付け準備書面において,本件ビルの開業時期が1年遅れることに伴い原告が被る損害 時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立て(争点⑪)(被告の主張)ア原告は,平成29年2月28日付け準備書面において,本件ビルの開業時期が1年遅れることに伴い原告が被る損害として,本件予約金の運用利益相当額,初年度売上に対する利益額,物流センター用地が1年間稼働しないこと,物流センター用地の固定資産税等,物流センター建設コストの増加等を挙げ,これが数十億円単位に上ると主張し,その影響は,「計画どおりの新ビル建設」が困難となった場合と同様であって,仮に「平成28年春開業」が「計画」に該当しないとしても,これが「計画どおりの新ビル建設」が困難となった場合に「準ずる事由」であることは明らかなので,本件予約契約14条1項4号を根拠に同契約を解除したと主張し(以下「新主張①」という。),また,同条2項の「無利息」との規定は,同契約20条本文の適用を除外する趣旨ではないなどと述べた上,本件予約金の返還債務については,年18.25パーセントの割合による遅延損害金が付されるべきであり,そうでないとしても,少なくとも商事法定利率に基づく損害金が付されるべきであると主張する(以下「新主張②」という。)。 イ原告は,本件予約契約14条1項4号に関して具体的な事実関係の主張を一切せず,また,本件予約金について18.25パーセントの割合による遅延損害金を付して支払うことを求める点について1年半以上にわたって何ら主張立証をしてこなかったにもかかわらず,争点整理や証人尋問が終了し,結審予定の口頭弁論の僅か4日前に至って,突如,新主張①及び②を行い始めたのであるから,これらが「時機に後れた攻撃防御方法」であることは明らかである。 - 35 -ウ原告は,平成28年6月6日付け準備書面において,本件予約契約14条1 ②を行い始めたのであるから,これらが「時機に後れた攻撃防御方法」であることは明らかである。 - 35 -ウ原告は,平成28年6月6日付け準備書面において,本件予約契約14条1項4号に基づく解除を主張したのであるから,半年以上もの長期にわたり,新主張①について主張立証し,被告に対し,反論反証の機会を与えることが十二分に容易かつ可能な状態であった。また,原告は訴状段階から,新主張②について主張立証し,被告に反論反証の機会を与えることが十二分に容易かつ可能であった。しかし,原告は,新主張①及び②をあえてしなかったのであるから,原告の故意又は過失によって新主張①及び②が時機に後れたことも明白である。 エそして,新主張①及び②を主張することを認めることとなれば,被告はこれらに対して反論・反証を行うことになるから,その有無の審理等にさらに期日を要し,訴訟の完結を遅延させることは明白である。 オしたがって,新主張①及び②は,時機に後れた攻撃防御方法であって,却下を免れない。 (原告の主張)ア原告は,平成28年6月6日付け準備書面において,本件予約契約14条1項4号を摘示した上で,同条に基づいて原告が解除権を取得していることを明確に主張しており,また,本件予約金に係る遅延損害金についても,本件予約金の返還請求を含む解除通知が被告に到達した日の翌日から約定の遅延損害金が発生することは明らかである旨明確に主張しているのであるから,これらが新主張であるとの被告の理解は当たらない。 イまた,実質的に見ても,新主張①の物流センターの用地については,被告補助参加人において反証又は反対尋問が行われているところであり,新主張②については,被告自ら平成28年6月3日付け準備原告の予備的主張に理由が に見ても,新主張①の物流センターの用地については,被告補助参加人において反証又は反対尋問が行われているところであり,新主張②については,被告自ら平成28年6月3日付け準備原告の予備的主張に理由がないことが明らかであるから新主張②は無意味である旨主張して,具体的な反論を放棄しているのであるから,これらが被告にとって不意打ちとなるはずもない。 - 36 -ウしたがって,被告の時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立ては,理由がないから,却下されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 本件合意書の締結に至るまでの経緯ア Aは,平成18年12月,名古屋市から,名古屋駅周辺地区における名古屋の玄関口にふさわしい顔づくり及び都心としての賑わいと活力の創出を図るため,駅機能との一体性を保ちつつ,ターミナル機能の拡充,隣接ビルとの一体的な機能の確保及び周辺との調和のとれた高度利用の促進を行うことについて検討するよう求められたため,平成20年12月,Aのグループ会社が所有していたGビルを建て替え,同ビルの敷地に隣接して土地を有するOグループ,P株式会社及びQ株式会社等とともに開発を進めることについて検討を開始し,平成22年5月19日,これを具体化した「名古屋駅新ビル計画」を公表した。(乙1,2,3の3)Aは,株式会社Rに対し,同年7月,本件ビルの商業区画への出店について具体的に交渉する会社を選定するため,出店店舗に係る提案書の提出を求める依頼書(乙3の1・2)を交付したところ,同依頼書の添付資料であった上記公表時の資料(乙3の3)には,本件ビル計画の概要として,同年12月初めにGビルの解体に着手し,平成24年夏 案書の提出を求める依頼書(乙3の1・2)を交付したところ,同依頼書の添付資料であった上記公表時の資料(乙3の3)には,本件ビル計画の概要として,同年12月初めにGビルの解体に着手し,平成24年夏頃に本件ビルの建設に着手し,平成28年度に本件ビルを竣工させ,その後,平成29年度にかけて順次開業する旨のスケジュールが記載され,さらに,同スケジュールが今後の行政手続等により変更される可能性がある旨記載されている。 これを受けて,原告は,Aに対し,平成22年8月24日頃,出店検討に向けての提案書等を提出した。また,原告は,同年9月,Aから,追加提 - 37 -案を求められたため,これを提出した。(乙3の1ないし3の3,乙4〔枝番号を含む。〕)イ被告及びAは,原告の上記提案を受けて,本件ビルの商業区画への出店について具体的に交渉する会社として原告を選定し,平成23年2月10日,原告との間で,被告及びAが平成28年度竣工を目標に建設を予定している本件ビルへの原告の出店に関して,本件合意書を締結した。原告,被告及びAは,本件合意書において,原告及び被告が,本件予約契約を平成24年7月末を目途に締結できるよう,誠意をもって契約条件の協議を行うものと合意した。(乙5) 本件予約契約締結に至るまでの経緯ア被告及びAは,原告に対し,平成23年12月12日,本件ビルの定期建物賃貸借契約に係る予約契約書案(乙7の1)を提示したが,同条項案には,本件ビルの竣工時期及び開業時期についての記載がなかった。(争いのない事実)その後,原告及び被告は,予約契約書案について交渉を重ねていたところ,原告は,被告に対し,平成24年7月26日,本件合意書に記載がないとの理由により,それまでの予約契約書案の多くの条項を削除した予 その後,原告及び被告は,予約契約書案について交渉を重ねていたところ,原告は,被告に対し,平成24年7月26日,本件合意書に記載がないとの理由により,それまでの予約契約書案の多くの条項を削除した予約契約書案(乙10の2)を電子メールにて送付した。これを受けて,被告は,原告に対し,原告と被告との間で締結すべき本件ビルに係る本契約の内容を本契約書案として予約契約に別紙添付すること及び本契約書案記載の内容については今後双方の合意により変更又は追加可能である旨を明記することを提案し,これを前提とした予約契約書案(乙12の3)を電子メールにて送付した。これに対し,原告は,本契約書案のうち今後も検討を要する案文には「【注】」を付することを加筆するなどして,被告に対し,新たな予約契約書案(乙14)を電子メールにて送信した。(乙10ないし14〔枝番号を含む。〕) - 38 -原告は,被告に対し,同年12月22日,それまでの予約契約書案の頭書及び2条における「本件ビル」の記載について「平成28年3月末に開業予定の,との特定も必要と存じます」との注記を付した上で,「平成28年3月末に開業予定の本件ビル」との記載に修正するなどして,予約契約書案(乙16の2)を送付した。また,原告は,同予約契約書案において,予約契約書に添付する本契約条項案について,「現時点での合意した条項の束であることを明らかにすべきです」との意見を付した。 (乙16の1・2)これに対し,被告は,上記「平成28年3月末に開業予定の本件ビル」との修正箇所について,「現時点のスケジュールでは平成28年春の開業を予定しています」と付記した上で,上記修正箇所を「平成28年春に開業予定の本件ビル」と再修正して(本件修正),原告に対し,予約契約書案(乙17の3) 「現時点のスケジュールでは平成28年春の開業を予定しています」と付記した上で,上記修正箇所を「平成28年春に開業予定の本件ビル」と再修正して(本件修正),原告に対し,予約契約書案(乙17の3)を送付した。(乙17〔枝番号を含む。〕)イ原告及び被告は,平成25年1月23日頃,本件予約契約を締結した。 本件予約契約書には,別紙「賃貸借条件表(第2条)」が添付されているところ,同別紙に,本件ビルの竣工時期及び開業時期に関する記載はない。 また,本件予約契約書には,別紙「定期建物賃貸借契約書条項案」が添付されているところ,同別紙の6条には「【注:第6条第1項及び第2項について,以下を基本に,本契約までに検討するものとする】」との付記がされ,同条3項には,「原告は,天災地変,法令等の改廃,近隣問題,行政指導,新ビルの施工遅延その他の事由により引渡日及び開店日が遅延する場合があることを予め承諾し,この遅延の場合に,不可抗力でなくとも相応の合理的理由があるときは,原告は被告に対し損害賠償等の請求をしないものとする。」と定められている。(甲3) 本件ビルに係る設計及び施工計画の策定基本設計JVは,Aの依頼を受けて,平成22年11月までの間に,本件ビル建設予定地に係る原位置検査及び室内土質試験を行うなどして,本件ビ - 39 -ル建設に係る地盤調査を行った。その後,実施設計JVは,被告及びAの依頼を受けて,本件ビル建設予定地に係る追加のボーリング調査,標準貫入試験及び室内土質試験等を実施し,平成24年3月16日頃,構造概要書を作成した。そして,本件ビルの構造方法等については,建築基準法所定の国土交通大臣による認定を受けた。施工JVは,平成25年3月,上記地盤調査及び実施設計に基づき,本件工事に係る工事施工計画書を作 を作成した。そして,本件ビルの構造方法等については,建築基準法所定の国土交通大臣による認定を受けた。施工JVは,平成25年3月,上記地盤調査及び実施設計に基づき,本件工事に係る工事施工計画書を作成した。(乙22〔枝番号を含む。〕ないし25,48,弁論の全趣旨)本件工事に係る設計においては,一部の連壁杭を除く本件ビルの支持杭64本のうち,52本を地下75メートル付近に存在する支持層まで,12本を地下45メートル付近に存在する支持層まで埋め込むこととされ,各杭を設置するための工法としてアースドリル工法が選択された。 (乙48,証人J,弁論の全趣旨) 本件崩落及びその後の対応ア施工JVは,前記工事施工計画書に沿って杭の設置工事を進めていたところ,平成25年11月,上記工事開始から15本目の杭(以下「本件杭」という。)の杭孔の掘削工事が終了し,コンクリートを打設する作業をしていたところ,杭孔内の内壁の一部が杭孔内に崩落し(本件崩落),打設中のコンクリートの上部に土砂が堆積した。施工JVは,本件崩落の原因を明確に特定することができなかった。 (乙48,証人J,弁論の全趣旨)イ施工JVは,本件崩落を受け,本件杭の杭孔内において,コンクリート上部に堆積した土砂を除去するとともに,打設中のコンクリートの健全性の確認を行った(以下「対策①」という。)。対策①には数か月を要した。 (乙48,証人J)ウ被告及びAは,平成25年12月ないし平成26年1月頃に施工JVから提示された本件崩落に対する諸対応及び新たな杭工事の計画について,監理JVも交えて打合せを行い,新たな杭工事の内容を確認した。新たな - 40 -杭工事は,本件杭の設置後に設置することになる約50本の杭について,①掘削した土砂を収納 杭工事の計画について,監理JVも交えて打合せを行い,新たな杭工事の内容を確認した。新たな - 40 -杭工事は,本件杭の設置後に設置することになる約50本の杭について,①掘削した土砂を収納して地上へ引き揚げるバケットの引揚速度の抑制,②杭孔内の水頭圧の増加,③掘削機設置の精度管理の強化(超音波による内壁測定回数の増加)を行うというものであり,また,地盤が不安定な箇所が存在した可能性等を考慮して,本件杭の近傍に地下75メートル付近を支持層とする杭を1本追加するとともに,杭1本の支持層を地下45メートルから地下75メートルへ変更するというものであった。杭工事の内容を上記のとおり変更したこと(以下「対策②」という。)により,本件工事の工期が数か月延伸した。(乙48,証人J)エさらに,施工JVは,本件崩落の原因を明確に特定することができなかったために,杭工事以外の工事(地下の掘削工事及び駆体構築工事)においても,それまで想定できなかった地盤の変状等の影響を受ける可能性があると判断し,工事の延伸が不可避であったものの,可能な対策は講じておくことにした。そのため,施工JVは,地下の掘削工事について,掘削底面や山留め壁側の他社の鉄道函体等を含む構造物の周りの地盤の変状を抑えるために,地下水位降下や荷重除去を急激に行うことを避け,より慎重に掘削を行うことにし(以下「対策③」という。),平成25年12月ないし平成26年1月頃,被告及びAに対し,その旨の工事計画を提出した。 変更後の工事計画に従った結果,杭工事以外の工事が約半年延伸した。(乙48,証人J) 本件ビルの開業時期の変更等に関する経緯ア被告及びAは,平成24年4月20日時点で,同年10月頃に本件工事に着手し,平成27年末に竣工し,平成28年3月頃に開業す 48,証人J) 本件ビルの開業時期の変更等に関する経緯ア被告及びAは,平成24年4月20日時点で,同年10月頃に本件工事に着手し,平成27年末に竣工し,平成28年3月頃に開業することを予定していた。被告及びAは,本件予約契約締結に先立つ平成24年5月16日,報道機関に対し,本件工事に係る施工方法を工夫した結果,本件ビルの完成時期を平成27年末,百貨店及びホテルの開業時期を平成28年 - 41 -春とする旨発表し,本件ビルの竣工時期を「平成27年末(予定)」と記載した本件ビルに係るパンフレット(甲15)を作成し,公表した。(甲12ないし15,証人S)その後,本件工事は,平成24年10月頃に着工されたが,平成25年11月,本件崩落が発生した。(甲4の2,前示ア,弁論の全趣旨)イ Aの従業員であり,本件ビルに係る事業計画の策定及び調整等の業務に従事していたTは,平成25年11月12日,原告側の担当者であった株式会社RのU執行役員及びHに対し,本件工事に想定以上の時間がかかるため,本件ビルの完成が少なくとも半年以上は先になる見込みであること及び同月13日に行われる定例記者会見において,A社長がこのことに言及する可能性があることについて説明した。(乙47,証人T)A社長は,同日,記者会見を開き,本件工事に係る基礎工事に時間がかかっているため,本件ビルの完成時期が半年以上遅れ,平成28年6月以降となる見通しであることを発表した。(甲4〔枝番号を含む。〕)原告の広報担当者は,報道機関に対し,上記記者会見を受けての見解として「できないものは仕方がない。完成を待って予定通り出店する。」と述べた。(甲4の2)I及びTは,平成25年11月14日,原告代表者を訪問し,本件工事 し,上記記者会見を受けての見解として「できないものは仕方がない。完成を待って予定通り出店する。」と述べた。(甲4の2)I及びTは,平成25年11月14日,原告代表者を訪問し,本件工事に係る地下工事に想定以上の時間がかかるため,本件ビルの竣工時期が半年以上先になる予定であることを説明した。(乙47,証人T)ウ I及びTらは,施工JVから本件崩落に対する今後の対応策及びそれに伴う工期の延伸についての報告を受け,平成25年12月6日,原告代表者及びUを訪問し,コンクリートの健全性を確認するなどの必要があり,本件ビルの開業時期が早くても平成29年3月頃になることを説明した。 原告は,その時点で,本件ビルへの出店を取り止めることは検討していなかった。(甲18,乙47,証人H,証人T) - 42 -エ I及びTらは,原告代表者に対し,平成26年2月4日,本件工事の工程を見直した結果,本件ビルへのオフィスの入居開始時期が平成28年11月,商業施設及びホテル等の開業時期が平成29年4月の予定となったことを記載した書面(乙29)を交付し,これについて説明した。その際,Iは,被告又はAとDとの間の契約に延滞金に関する定めがあることに言及した。 また,Tらは,U及びHに対し,平成26年2月4日,開業時期変更後の本件工事等の全体スケジュール及び本件店舗の内装設計に関するスケジュールについて,資料(乙31,45)を用いて説明した。 一方,U及びHは,Tらに対し,同日,本件ビルの開業が1年遅れることが確定したため,その利益補填として,初年度の想定利益28億8000万円(初年度の想定売上360億円に利益率8パーセントを乗じた額)の補償を求めた。これに対し,Tは,被告又はAが施工JVに対して補償を求める旨を明言しな 益補填として,初年度の想定利益28億8000万円(初年度の想定売上360億円に利益率8パーセントを乗じた額)の補償を求めた。これに対し,Tは,被告又はAが施工JVに対して補償を求める旨を明言しなかった。(以上につき,甲18,乙29ないし31,45,47,証人H)オ A社長は,平成26年2月13日,記者会見を開き,本件ビルへのオフィスの入居開始時期が平成28年11月,百貨店及びホテルの開業時期が平成29年4月となることを発表した。その際,開業時期の遅れに伴って本件ビルへ入居予定のテナントが損失を被った場合について,A又は施工JVが負担することもあり得る旨説明した。(甲5〔枝番号を含む。〕)カ U及びHは,前記オの会見内容を踏まえ,Tらに対し,平成26年3月4日,本件ビルの開業時期が遅延したことに関する補償を求めた。 (甲18,乙47)U及びHは,Tらに対し,同年4月1日,本件ビルの開業時期が遅延したことにより想定利益を得ることができないなどと説明した上で,原告に対する金銭的補償を要求した。これに対し,Tは,施工JVとの契約上, - 43 -被告及びAが施工JVに対して補償を求めることはできないと考えている旨説明した。原告,被告及びAは,同日以降も,月1回ないし2回の頻度で本件店舗に関する定例打合せや設計に特化した打合せを継続していた。 (甲18,乙47)U及びHは,Tらに対し,同月23日,本件税制が発表されたことを受けて,原告代表者から,新店舗の開業等を平成28年3月までに行うよう求められたため,忙しくしている旨の話をした。また,Tは,Hから,本件ビルの開業遅延に係る補償を請求されたため,①被告及びAが施工JVに対して損害賠償等を請求するつもりはないこと,②被告及びAが原告に対して補償を行う義 している旨の話をした。また,Tは,Hから,本件ビルの開業遅延に係る補償を請求されたため,①被告及びAが施工JVに対して損害賠償等を請求するつもりはないこと,②被告及びAが原告に対して補償を行う義務を定めた規定が本件予約契約に存在しないため,原告に対する補償を行うつもりはないこと及び③被告及びAと原告との良好な関係を維持するために,出店準備金等の名目で被告又はAが原告に対し,何らかの金銭の支払を行うことは検討し得ることを伝えた。(甲18,乙47,証人H,証人T)キ Tらは,平成26年5月16日,Aにおける本件工事の担当者であるJを伴って,U及びHを訪ねた。Jは,U及びHに対し,本件工事に係る杭工事ではアースドリル工法を用いていること,本件崩落の内容,本件崩落の原因が分からないこと及び本件崩落に対する対応策等について説明した。 Hは,これを受けて,本件工事の遅延の原因が本件崩落後の工事において安全を重視した結果であることを理解した旨の発言をし,遅延期間が1年間であることについて特段異議を述べなかった。また,Hは,本件崩落及びこれによる本件工事の遅延の原因が施工JVにあるのではないかとの趣旨の意見を述べた。(甲18,乙47,48,証人J)ク I及びTらは,平成26年6月5日,原告代表者,U及びHと打合せを行った。その際,Iは,原告代表者から本件店舗の開業時期について,3月が大幅な売上の増加が見込まれる時期であることから,平成29年3月 - 44 -初め頃を希望する旨言われたのに対し,開業時期として約束できるのは同年4月であり,開業時期を早める努力を行うつもりであるものの,同年3月の開業を約束することはできない旨説明した。(甲18,乙47)また,Iは,平成26年6月5日,原告代表者から,被告及びAが出店 り,開業時期を早める努力を行うつもりであるものの,同年3月の開業を約束することはできない旨説明した。(甲18,乙47)また,Iは,平成26年6月5日,原告代表者から,被告及びAが出店準備金等の名目で支払い得るとしていた金銭の具体的な額について尋ねられた際,被告及びAが原告に対し,本件予約契約に基づく補償義務を負うわけではないことを説明したが,大きい額を支払えるというわけではないと述べるにとどまり,具体的な金額を伝えることはしなかった。続けて,Iは,たとえば,原告が負担することになっている甲工事で原告が支払うであろう金額相当分を被告及びAが負担することを検討している旨伝えた。 (甲18,乙47,証人T)原告代表者は,Iから,本件ビルへの原告の出店に向けた打合せを進めたい旨告げられ,「やってかなきゃいかんものは,やる。」と発言した。(甲18,乙47)ケ原告は,原告訴訟代理人らに委任して,被告及びAに対し,平成26年8月13日付け書面を送付し,本件ビルの竣工及び開業時期が遅延した原因についての可能な限り正確かつ具体的な説明及びその責任の所在について,書面で回答するよう求めた。(甲6)これに対し,被告は,原告に対し,被告及びAを代表して平成26年9月1日付け書面を送付し,掘削速度を抑えたり,状況の確認頻度を増やすなどさらに丁寧に本件工事を進めることとし,本件工事全般の工程を見直したことにより,開業予定が平成29年4月になったこと及び本件工事の事前調査,工法及び作業手順に問題はなく,被告及びAが責任を負うものではないとの見解を示した。(甲7)コ原告代表者は,平成26年10月7日,Tらとの打合せにおいて,被告及びAが原告に対し本件予約契約上の支払義務を負わないとしても,被告 - うものではないとの見解を示した。(甲7)コ原告代表者は,平成26年10月7日,Tらとの打合せにおいて,被告及びAが原告に対し本件予約契約上の支払義務を負わないとしても,被告 - 45 -及びAにおいて,原告に対し,何らかの補償を行うべきであると発言した。 また,原告代表者は,Tらに対し,同日,本件税制を理由として挙げつつ,本件店舗の開業時期を平成29年3月とすることを希望する旨述べた。なお,本件税制においては,平成28年4月1日から同月31日までに一定の条件を満たす生産性向上設備等の取得等をし,国内にある当該法人の事業の用に供した場合,特別償却又は税制控除が認められる。(甲18,乙47,丙12〔枝番号を含む。〕,証人H)サ原告は,被告に対し,平成26年10月14日,前記ケにおいて原告が被告及びAに対して送付した書面に対する回答が,前記ケにおいて被告が原告に対して送付した書面では不十分であり,本件ビルの開業遅延に関する具体的・合理的な説明が得られないことに鑑みると,本件ビルの開業遅延が被告の帰責事由であるとみなさざるを得ず,原告と被告との間で本件本契約を締結して賃貸借関係を維持・発展させていくためには本件ビルの開業遅延に関して被告から誠意ある説明及び対応を受けることが不可欠であるとして,本件ビルの開業遅延により原告が被ることになる損害についての被告の見解及び対応について,書面での回答を求める旨の同月10日付け申入書を送付した。原告は,同申入書において,本件予約契約書に本件記載が存在することから,本件予約契約締結に当たり本件ビルの開業が平成28年春であることは原告及び被告の共通認識であるとともに本件本契約締結の当然の前提であって,本件ビルの開業予定時期が早くとも平成29年4月となったことは本件予約契約上の被 たり本件ビルの開業が平成28年春であることは原告及び被告の共通認識であるとともに本件本契約締結の当然の前提であって,本件ビルの開業予定時期が早くとも平成29年4月となったことは本件予約契約上の被告の債務不履行になり得る事態であると記載した。また,原告は,本件ビルの開業遅延に伴う損失の軽減を図るための対策を検討する中で本件税制の存在を認識したところ,同申入書において,本件店舗の開業時期が同月となった場合,「当初予定していた投資減税措置の適用が受けられなくなる」と記載した。 (甲11の1・2,丙12〔枝番号を含む。〕) - 46 -被告は,前記ケのとおり,原告に対して,一度書面で回答していたことなどから,上記申入書に対する回答は不要と判断し,特に回答をしなかった。(甲18,乙47)シ U及びHは,Tらに対し,平成26年11月6日,被告が原告に対し,本件予約契約上の補償義務を負わないとしても,本件ビルの開業が遅延したことにより原告が被った損害を賠償すべきである旨の発言をした。Tらは,U及びHに対し,被告が原告に対し,本件予約契約上,損害賠償義務を負うものではない旨説明した。(甲18,乙47,証人T)ス Tらは,平成26年11月14日,原告代表者と面会し,本件予約契約において,被告が原告に対して金銭を支払う法的な義務を負うことはない旨説明した。これに対し,原告代表者は,原告に対する金銭賠償を拒絶し続ける被告及びAに対する抗議の趣旨で,原告には,本件ビルへの出店を取り止めるという選択肢もあることを示唆する発言をした。(甲18,乙47)原告代表者は,同月26日にTらと面会した際にも,本件ビルの開業時期やその遅延に係る原告への補償について明言を避ける被告に対する抗議の趣旨で,他の店舗への出店も た。(甲18,乙47)原告代表者は,同月26日にTらと面会した際にも,本件ビルの開業時期やその遅延に係る原告への補償について明言を避ける被告に対する抗議の趣旨で,他の店舗への出店も考えている旨の発言をした。(甲18,乙47)セ I及びTは,平成26年12月11日,原告代表者と面会し,本件店舗を平成29年3月に開業できるよう全力を尽くす旨伝えたところ,Hから本件店舗を平成29年3月に開業できるかどうかについて,平成26年12月中に結論を出すよう求められたが,開業前に必要な行政検査等の関係で名古屋市と協議を行う必要があったこと等から,上記結論を出すためにはもう少し時間がかかる旨説明した上,状況を確認して,同月中に連絡する旨伝えた。これに対し,原告代表者は,平成29年3月に本件ビルを開業できないのであれば,本件ビルへの原告の出店を取りやめたい旨の発言 - 47 -をした。 また,I及びTは,原告代表者に対し,上記面会において,平成29年3月に本件店舗を開業することができた場合,同月及び同年4月分の本件店舗の賃料を請求するつもりはない旨述べたが,これに対し原告代表者は,より高額な金銭の支払いを要求する趣旨の発言をした。(以上につき,甲18,乙47,証人H)ソ Tらは,平成26年12月24日にU及びHと打合せを行った際,U及びHに対し,本件ビルの開業に先立つ行政検査を早めるなどの調整が付いていないため,平成29年3月に本件ビルを開業できるか否かについて平成26年中に回答することはできない旨説明した。これを受けて,U及びHは,Tらに対して,平成29年3月に本件店舗を開業できるか否かを重ねて問うことはせず,Tらの要望を受けて,乙工事の資材搬入計画,什器,備品及び商品の搬入量を確認する旨述べた。 これを受けて,U及びHは,Tらに対して,平成29年3月に本件店舗を開業できるか否かを重ねて問うことはせず,Tらの要望を受けて,乙工事の資材搬入計画,什器,備品及び商品の搬入量を確認する旨述べた。(乙47,49の1・2)Tは,原告の本件ビルにおける開業時期を平成29年3月とすることを検討するため,本件店舗に係る工事における搬入車両台数を検討し,平成27年1月9日,U及びHに対し,その結果を電子メールにて送付し,その内容の検証を求めた。また,Tは,U及びHに対し,同電子メールにおいて,什器,備品及び商品の搬入量の確認を再度依頼した。(乙35の1・2,乙47)タ Tは,平成27年1月20日にU及びHと打合せを行った際,改めて,平成29年3月の開業を想定した場合における,搬入車両台数の検証と什器,備品及び商品の搬入量の確認を再度依頼し,これらが判明しなければ同月の開業が可能か否かについて結論を出すことができない旨説明した。 これを受けて,Hは,本件税制を理由として,本件店舗を同月に必ず開業したい旨述べ,Tに対し,本件店舗の開業時期がいつ決まるか尋ねた。Tは,本件店舗の開業時期については,名古屋市の回答次第であるとして明 - 48 -言を避けた。 また,Tは,平成27年1月20日,Hから,被告及びAが施工JVに対して補償を請求しないのか尋ねられ,本件工事を順調に行うことに主眼があるため,少なくとも現時点で補償を請求するつもりはなく,施工JVとの間の補償問題とは別に,被告及びAとして,原告に対し何らかの補償を行うことはあり得る旨を改めて説明した。 さらに,Tは,同日,Hから,本件店舗の開業時期を平成28年12月とすることを打診されたのに対し,平成29年3月を開業時期とすることすら精一杯の状況で ことはあり得る旨を改めて説明した。 さらに,Tは,同日,Hから,本件店舗の開業時期を平成28年12月とすることを打診されたのに対し,平成29年3月を開業時期とすることすら精一杯の状況であり,平成28年12月を開業時期にすることを何度求められても不可能である旨説明した。 (以上につき,乙50の1・2・3)チ Tらは,平成27年2月2日,原告代表者,U及びHと面会し,本件ビルを平成29年3月に開業することの可否の検討及び本件本契約の締結に関する進め方の予定について資料(乙36)を用いて説明した。また,Tが,原告代表者らに対し,本件店舗の開業時期を決定するために乙工事の資材搬入量等について尋ねたところ,原告代表者は,原告において資材搬入量を決めることはできないので,別店舗の開業に携わった株式会社V及びW株式会社に依頼して資材搬入量の算定をさせるよう,Hに対して指示した。原告代表者は,上記面会の際,Tが基本的には本件ビルの開業時期は同年4月である旨述べたのに対し,本件ビルの開業が1年も遅延することは本来おかしな話であると不満を述べつつも,最終的には,本件税制の適用を受けることができ,かつ売上増加が見込まれる時期に営業できるという理由から,平成29年3月初めに開業できるようにしていけばよい旨述べ,上記のとおり乙工事における資材搬入量を確定するための指示を行った。また,原告代表者は,平成28年3月に開業できれば,本件税制により100パーセントの投資減税を受けることができたと述べ,本来ならば,当該投資減税の分の金銭を被告又はAに負担してもらわなければなら - 49 -ないと述べたが,それ以上に補償等の金銭の支払を求めることはなかった。 (以上につき,乙36,47,51の1・2)U及びHは,平成27年2月3日,被告の担 てもらわなければなら - 49 -ないと述べたが,それ以上に補償等の金銭の支払を求めることはなかった。 (以上につき,乙36,47,51の1・2)U及びHは,平成27年2月3日,被告の担当者との設計に関する打合せを行い,残りの作業内容を確認した。設計に関する打合せは,同月17日,同年3月3日,同月17日,同月31日,同年4月14日にも継続して行うことが予定されていた。(乙47,52の1・2,証人H) 本件予約契約の解除の意思表示の経緯等ア原告は,被告に対し,平成27年2月9日到達の同月5日付け通知書により,本件原告解除1の意思表示を行った。(前記前提事実ア,甲10の1・2)イ被告は,原告に対し,前記アの通知書に対する回答として,平成27年2月16日付け内容証明郵便を送付し,本件原告解除1には理由がないこと,被告が原告に対しこれまで複数回の打合せ等において説明を行っており,本件本契約の締結時期が次第に明らかになりつつある中で本件原告解除1を受けたことを大変遺憾に思うことを通知した。同内容証明郵便は,同月17日,原告へ到達した。(乙37の1・2,47)Tは,U及びHに対し,同日,本件店舗の乙工事における資材搬入に関する資料(乙38の2)を電子メールで送信し,同電子メールにおいて,本件店舗の乙工事を請け負う株式会社V及びW株式会社の担当者を紹介するよう求めるとともに,什器備品及び商品の搬入を原告において検討するよう求めた。(乙38の1・2,47)ウ原告は,被告に対し,前記イの内容証明郵便に対する反論として,平成27年2月18日付け通知書を送付し,原告が,平成28年春に本件ビルを開業することが不可能になったことをもって,本件予約契約の目的を達成することができなくなったと主張 明郵便に対する反論として,平成27年2月18日付け通知書を送付し,原告が,平成28年春に本件ビルを開業することが不可能になったことをもって,本件予約契約の目的を達成することができなくなったと主張していること等を通知した。(乙39)エ Tは,原告に対し,平成27年2月9日から同月20日までの間に数回 - 50 -にわたって,原告代表者との面会を求めたが,U及びHから,原告代表者の考えは書面で回答しているとして,面会を拒否された。(乙47,弁論の全趣旨)オ被告は,原告に対し,平成27年3月5日付けの書面を送付し,本件被告解除の意思表示をした。同書面は,同月6日,原告に到達した。(前記前提事実イ,甲8,乙40)カ原告は,被告に対し,平成27年3月10日付け通知書を送付し,本件原告解除2の意思表示をした。同通知書は,同月11日,被告に到達した。 (前記前提事実ウ,甲9の1・2) 2 本件予約契約15条1項3号(同条4項による読替え後のもの)を解除事由とする,原告による同契約の解除の効力(争点①)について 本件開業時期合意1の成否についてア原告は,被告が本件開業時期合意1に違反したことをもって「本件予約契約の定めに違反したとき」(本件予約契約15条1項3号)に該当する旨主張するから,本件開業時期合意1を,被告に対して本件ビルを平成28年春(3月ないし5月)に開業する債務を負わせるものとして主張していると解される。 そこで検討するに,前記前提事実ウのとおり,本件予約契約の頭書及び2条に本件記載があるものの,本件予約契約が締結されたのが平成25年1月23日頃であり(前示1本件予約契約締結時に本件ビルの開業予定時期として記載された時期(平成28年春)の約3年前であったことからする 件記載があるものの,本件予約契約が締結されたのが平成25年1月23日頃であり(前示1本件予約契約締結時に本件ビルの開業予定時期として記載された時期(平成28年春)の約3年前であったことからすると,本件予約契約締結時において本件ビルの開業時期を正確に予測することは困難であったと考えられるし,本件記載における開業時期の記載が「平成28年春」という幅の期間を示す表現であり,しかも変更の可能性があることを示す「予定」という文言が付加されていること(前からすると,本件記載による本件ビルの開業時期の特定 - 51 -は曖昧なものといわざるを得ない。また,本件予約契約の条項案を検討している段階で本件ビルの記載について,原告が,開業予定時期の「特定」も必要との意見を述べたことを契機として本件記載が加わったものの(前示1,原告は,本件ビルを平成28年3月末に開業できないことが明らかになった後においても,本件ビルに出店する方針で被告及びAとの交渉を継続している(前示1ないし同チ)。これらの事情を総合すると,本件予約契約に本件記載があるからといって,直ちに原告及び被告が,本件ビルを平成28年春に開業させることを被告の債務とする趣旨で本件記載を行ったかどうかは疑問であり,原告と被告との間で,本件ビルを平成28年春(3月ないし5月)に開業することを被告の債務とするという内容の本件開業時期合意1が成立したと認めることはできない。 イ証人Hは,①原告と被告との間の話合いにおいて,本件ビルの開業時期を平成28年4月又は遅くとも同年5月とする旨の合意の下で本件修正がなされた,また,②本件ビルの開業時期について合意したために本件予約契約から引渡日及び開店日の遅延を承諾する条項を削除した旨供述し,同人作成の陳述書(甲18)には同旨の記載がある。 下で本件修正がなされた,また,②本件ビルの開業時期について合意したために本件予約契約から引渡日及び開店日の遅延を承諾する条項を削除した旨供述し,同人作成の陳述書(甲18)には同旨の記載がある。 もっとも,本件予約契約の条項に関する交渉において,本件記載の趣旨について,予約契約書案を添付した電子メール及び予約契約書案上の付記事項に記載された内容以上に具体的な話合いが行われたことをうかがわせる証拠もないし,また,本件予約契約上に開業時期に関して具体的な合意がなされたことを明示する条項が存在しないことと整合的でないから,証人Hの上記供述等①は,採用できない。 また,本件店舗の引渡日及び開店日の遅延を承諾する条項については,本件ビルに係る本契約(定期建物賃貸借契約)に基づく本件ビルの引渡し及びその後の開業に関する条項であるために,予約契約書案の交渉中,本件ビルに係る本契約の内容を本契約書案として予約契約に別紙添付するこ - 52 -ととした際に,予約契約の条項から本契約書案(予約契約の別紙)へ移されたことが認められるから(前示1本件予約契約から本件店舗の引渡日及び開店日の遅延を承諾する条項が削除されたことが,本件開業時期合意1が成立したことの帰結であるとみることはできず,証人Hの上記供述等②を採用することはできない。 ウ原告は,本件開業時期合意1を裏付ける事実として,①本件予約契約締結前に本件ビルの開業時期が平成28年春になる旨の報道発表を行ったこと等(甲12ないし15),及び,②本件ビルの開業時期の遅延が生じた後に,被告又はAが,原告に対し,開店準備金等の名目での金銭支払に言及したことを指摘するが,原告が上記①において指摘する報道発表内容等は,いずれも本件ビルの開業時期の予定を説明し,又は公表したも た後に,被告又はAが,原告に対し,開店準備金等の名目での金銭支払に言及したことを指摘するが,原告が上記①において指摘する報道発表内容等は,いずれも本件ビルの開業時期の予定を説明し,又は公表したものにすぎず,被告及びAが作成したいずれの資料にも上記開業時期が予定であることや行政手続又は工事の進捗状況により変更されうることが明記してあるから,上記①の事実が本件開業時期合意1の成立を裏付けるとはいえない。また,被告が本件ビルの開業時期の遅延が生じた後において開店準備金等の名目での金銭支払を原告に提案していたとしても,当該金銭支払が原告と被告又はAとの間の何らかの合意違反に基づく趣旨とは限らないし,遅くとも平成26年4月23日以降については,被告及びAが原告に対して本件予約契約に基づく補償義務を負わないことを前提として,出店準備金等の名目での金銭支払を申し出たのであるから(前示1カ),上記②の事実は,必ずしも本件開業時期合意1を裏付けるものではない。 エ原告は,本件記載が本件ビルの開業期限でないとすれば,本件予約契約において履行遅滞又は履行不能がおよそ観念されないこととなり不合理である旨主張するが,本件予約契約は,本件ビルの開業時期が当初の予定から遅延した場合について,一律に解除事由から排除するものではないから,原告の上記主張は採用できない。 - 53 -オそして,他に,本件開業時期合意1の成立の事実を認めるに足りる証拠はないから,本件全証拠によっても,同事実の証明があるとすることはできない。 本件開業時期合意2の成否について原告は,仮に本件開業時期合意1の成立が認められないとしても,本件記載がなされたことに照らすと,少なくとも本件開業時期合意2が成立した旨主張するが,本件予約契約時点にお 意2の成否について原告は,仮に本件開業時期合意1の成立が認められないとしても,本件記載がなされたことに照らすと,少なくとも本件開業時期合意2が成立した旨主張するが,本件予約契約時点における本件ビルの開業予定時期として本件記載がなされたことから直ちに,原告及び被告が,本件ビルの開業時期を当該開業予定時期から大幅に遅延させないことを被告の債務とする意思を有していたとまでは推認できず,他に,本件開業時期合意2の成立を推認させる事実を認めるに足りる証拠はないから,本件全証拠によっても,本件開業時期合意2が成立した事実の証明があるとすることはできない。 したがって,本件開業時期合意2の成立の事実を認めることはできない。 以上により,本件開業時期合意1及び本件開業時期合意2の各成立の事実は認められないから,被告が本件業時期合意1及び本件開業時期合意2に違反したことをもって,本件予約契約15条1項3号(同条4項による読替え後のもの)所定の解除事由とする,原告による同契約の解除は無効である。 3 本件予約契約15条1項4号(同条4項による読替え後のもの)を解除事由とする,原告による同契約の解除の効力(争点②)について「条件表に定める内容に対して大幅な変更・追加・削除を申し出るなど,本件本契約の締結が困難となったとき」に該当する事実の有無につき判断する。 ア原告は,本件ビルの1年間の開業遅延が少なくとも本件予約契約の内容の大幅な変更に当たる旨主張するが,本件予約契約15条1項4号(同条4項による読み替え後のもの)が「本件本契約の締結が困難となったとき」の例示として定めるのは「条件表に定める内容に対して大幅な変更・追加・ - 54 -削除を申し出る」ときであるところの別紙「賃貸借条件表(第2条)」に,本件 件本契約の締結が困難となったとき」の例示として定めるのは「条件表に定める内容に対して大幅な変更・追加・ - 54 -削除を申し出る」ときであるところの別紙「賃貸借条件表(第2条)」に,本件ビルの竣工時期及び開業時期に関する記載はないから,本件ビルの開業時期が遅延したことは,「条件表に定める内容に対して大幅な変更・追加・削除を申し出る」ときには該当しない。 イ次に,本件ビルの開業遅延により「本件本契約の締結が困難となったとき」に該当するかにつき検討する。 原告は,「平成28年春に開業予定の本件ビル」が存在し得なくなったことから,本件本契約の締結が困難となったことは明白であると主張するが,前示2及び後示7イのとおり,本件記載は,本件予約契約締結時点における本件ビルの開業予定時期を記載したものにすぎないから,本件ビルを平成28年春に開業し得なくなったことのみから「本件本契約の締結が困難となったとき」に該当すると評価することはできない。 原告は,①本件ビルの開業が平成28年春から約1年間遅延したことに加え,②被告又はAが本件ビルの開業時期及び開業遅延の原因について適切な説明をしなかったこと,③本件ビルの開業遅延により原告が甚大な経済的損害を被ることを認識していたにもかかわらず,被告が具体的な補償額を提示しなかったこと,かえって④本件予約金の返還を拒んだことに照らすと本件本契約の締結が困難となったとも主張する。 a 確かに,①につき,本件予約契約締結時点における本件ビルの開業予定時期が平成28年春頃であったのに対し,原告が本件原告解除を行った平成27年3月時点ではその約1年後となっていたものの(前示1)ないし同チのとおり,原告は,遅くとも平成26年2月4日には本件ビルの開業時期が平成29年4月の に対し,原告が本件原告解除を行った平成27年3月時点ではその約1年後となっていたものの(前示1)ないし同チのとおり,原告は,遅くとも平成26年2月4日には本件ビルの開業時期が平成29年4月の予定に変更となったことを認識したことが認められるにもかかわらず,その後も少なくとも平成27年2月3日までは,本件ビルに出店することを前提 - 55 -として,被告及びAとの間において,打合せを継続的に行っていたことが認められる。 また,前示1クないし同チのとおり,被告及びAは,原告から,本件店舗の開業時期を平成29年3月としてほしいとの要望を受けたため,これを検討し,遅くとも平成26年12月11日には,平成29年3月に本件店舗を開業できるよう全力を尽くす旨回答し,これを検討するため,原告に対し,検討に必要な乙工事の資材搬入量等の提示を求めたり,原告及び被告において行うべき作業のスケジュールを作成するなどしていた。そして,前示1セないし同ケのとおり,原告は,被告及びAに対し,平成26年12月11日,本件店舗を平成29年3月に開業できるか否かについて平成26年12月中に結論を出すよう求めたところ,同月24日に被告及びAから同月中に上記結論を出すことは困難との回答を得たにもかかわらず,少なくとも平成27年2月3日までは,原告が本件ビルに出店することを前提として,被告及びAとの間で,打合せを継続的に行っており,同月2日に原告代表者がHに対して他社に上記資材搬入量を算定させるよう指示するなど,平成29年3月に開業できるか否かに係る検討を継続していた。 b また,③につき,本件ビルの開業時期が遅延したことにより,原告が一定の損失を被る可能性があることは被告及びAにも容易に想定しうるところであり,現に,U及びHが平 検討を継続していた。 b また,③につき,本件ビルの開業時期が遅延したことにより,原告が一定の損失を被る可能性があることは被告及びAにも容易に想定しうるところであり,現に,U及びHが平成26年2月4日にTらに対し,開業初年の想定利益28億8000万円の補償を求めたことが認められるところ(前示1エ),前示1カ及び同クのとおり,Tは,U及びHに対し,同年4月1日,被告及びAが施工JVに対して補償を求めることはできないことを示し,加えて同月23日には,被告及びAが原告に対し,本件予約契約上の補償債務を負わないから同債務の履行として補償を行うことはできないこと及び被告及びAが原告と - 56 -の良好な関係を維持する目的で出店準備金等の名目で何らかの金銭を支払うことは検討しうることを説明し,さらに同年6月5日には,上記金銭が大きな金額ではなく,たとえば甲工事で原告が負担する金額相当分である旨を説明していた。 c 前記a及びbに照らすと,原告は,本件ビルの開業予定時期が平成29年4月となること及び本件ビルの開業時期の遅延による損失について,被告又はAに本件予約契約に基づく補償を行う意思がなく,せいぜい本件工事の甲工事における原告負担額を支払う程度の補償しか期待できないことを認識しつつ,平成27年2月3日までの間,本件ビルに出店することを前提として,被告及びAとの間で打合せを継続してきたのであるから,原告において,本件ビルの開業時期が平成29年4月となることや本件ビルの開業遅延に関する補償として被告又はAから高額の金銭支払は期待できないことをもって,本件本契約の締結が困難であるとは考えていなかったものと認められる。 かえって,原告は,被告及びAに対し,平成26年10月7日以降,本件ビルの開業時期を平成 の金銭支払は期待できないことをもって,本件本契約の締結が困難であるとは考えていなかったものと認められる。 かえって,原告は,被告及びAに対し,平成26年10月7日以降,本件ビルの開業時期を平成29年3月とするよう要望しているのであり,本件ビルの開業予定時期が平成29年4月であること及び本件ビルの開業遅延に関する補償として被告又はAから高額の金銭支払を受けられるとは到底期待し得ない状況にあることを前提としても,本件予約契約を維持し,本件ビルに出店する意思を有していたものと考えられる。 さらに,原告は,本件ビルの開業予定時期が平成29年4月とされたことを受けて,被告及びAに対し,本件ビルの開業時期を同年3月とするよう要望しているものの,被告及びAは,平成27年2月20日に原告代表者との面会を最終的に拒否されるまでの間,上記要望が実現可能か否か検討を続けていたのであって,原告が本件原告解除1 - 57 -に係る通知書(甲10の1)を作成した同月5日時点において,上記要望の実現が不可能との結論は出ていなかった(証人H)し,また,仮に上記要望を実現することが不可能であったとしても,本件ビルを平成29年4月に開業することは可能であったのであり,原告が要望する開業時期(同年3月)との違いの程度に照らせば,原告の上記要望との関係においても,直ちに本件本契約の締結が困難とは評価できない。 なお,前示1のとおり,原告は,被告及びAに対し,本件ビルの開業遅延に係る損失に対する巨額の補償を要求し,また,平成26年11月14日以降,本件ビルへの出店を取り止める可能性もあることを示唆しているものの,(a)遅くとも平成26年2月4日には本件ビルの開業時期が平成29年4月になることを,また,平成26年6月5日には本件ビルの開業遅延についてせい 店を取り止める可能性もあることを示唆しているものの,(a)遅くとも平成26年2月4日には本件ビルの開業時期が平成29年4月になることを,また,平成26年6月5日には本件ビルの開業遅延についてせいぜい本件工事の甲工事における原告負担額を被告又はAが負担する程度の補償しか期待できない旨認識していたこと,(b)平成26年11月14日以降も本件ビルに出店することを前提とした交渉を継続していること,(c)平成27年2月2日時点においても,原告代表者が本来であれば本件税制適用による利益分の金銭を補償してもらわなければならない旨述べるにとどまり,具体的な金銭支払請求を行っていないことも併せ鑑みれば,原告が被告に対し,本件ビルの開業遅延に係る巨額の損失補償を要求したり,本件ビルへの出店を取り止める旨述べていたのは,被告及びAに対する交渉上の駆け引きの域を出るものではないとみるのが相当である。そうすると,原告が被告及びAに対し,本件ビルの開業遅延に係る損失に対する巨額の補償を要求したからといって,原告において,当該要求が被告及びAに容れられるものと真に期待して,そのことを前提にして本件ビルに出店する方向での交渉を継続していたと認める - 58 -ことはできないし,原告が本件ビルへの出店を取り止める可能性もあることを示唆していたからといって,原告において,本件ビルの開業時期が平成29年4月となることや本件ビルの開業遅延に関する補償として被告又はAから高額の金銭支払を期待できないことを理由として,本件本契約の締結が困難であると考えていたと認めることはできない。 d 原告は,前記のとおり,②被告又はAが本件ビルの開業時期及び開業遅延の原因について適切な説明をしなかったこと及び④本件予約金の返還を拒んだことに照らしても本件本契約の締結 きない。 d 原告は,前記のとおり,②被告又はAが本件ビルの開業時期及び開業遅延の原因について適切な説明をしなかったこと及び④本件予約金の返還を拒んだことに照らしても本件本契約の締結が困難となったと主張するが,被告及びAが,原告に対し,平成26年5月16日,本件工事の担当者に本件崩落の原因等について説明させた際,Hが本件工事の遅延原因を理解した旨の発言をしたこと(前示1キ),被告が本件予約金を保持する正当な権限なく本件予約金の返還を拒んだとは認められないこと(後示9)等に鑑みると,原告の上記主張は採用できない。 したがって,本件ビルの開業遅延により「本件本契約の締結が困難となったとき」に該当する事実が生じたとはいえない。 ウ以上により,本件ビルの開業が遅延したことにより「条件表に定める内容に対して大幅な変更・追加・削除を申し出るなど,本件本契約の締結が困難となったとき」に該当する事実が生じたとはいえない。 なお,事案に鑑み,念のため,仮に,本件ビルの開業が遅延したことにより「本件本契約の締結が困難となったとき」に該当する事実が生じたとしても,これが「被告の責めに帰すべき事由」によるものであるかにつき判断することとする。 ア本件崩落について本件崩落が生じた事実自体から本件崩落が被告の帰責性によるものと - 59 -推認されるわけではないところ,原告は,被告又はAが本件崩落後に講じた対策を当初から講じなかったことをもって,本件崩落は,土壌に関する調査や慎重な工事を行わなかったという被告の帰責事由によるものであると主張するにとどまる。 本件工事については,被告及びAが,日本建築学会の策定した本件指針に基づいた基礎設計(地盤調査を含む。)を実施し,基礎設計等に基づいて作成された構造概要書 によるものであると主張するにとどまる。 本件工事については,被告及びAが,日本建築学会の策定した本件指針に基づいた基礎設計(地盤調査を含む。)を実施し,基礎設計等に基づいて作成された構造概要書につき建築基準法所定の国土交通大臣の認定を受け,施工JVに日本建築学会が定める各仕様書,基準,指針等に基づいて施工計画を作成させ,これに基づいて本件工事を行ったこと及び日本建築学会の策定した建築工事標準仕様書・同解説のうち杭工事等の基準について定めるJASS4に基づいて本件杭工事を行ったことが認められる(前示1,乙20ないし26,48,証人J)のであるから,本件ビルの敷地における土壌の調査や本件工事の慎重さに不適切な点があったとは認められない。 そして,他に,本件崩落が「被告の責めに帰すべき事由」により生じたことを認めるに足りる証拠はないから,本件全証拠によっても,同事実の証明があるとすることはできない。 原告は,被告及びAが何を根拠として本件崩落の原因を不明としているのかすら判然としないこと及び被告が開業遅延及び工事遅延について何ら具体的な説明,回答又は反論を行わなかったことから,被告及びAに本件ビルの開業遅延の帰責性がある旨主張するが,被告及びAは,本件崩落の原因及びこれを踏まえた対応策について施工JV及び監理JVとともに検討しており(前示1),その検討結果として本件崩落の原因を特定できなかったものと考えられ,また,被告及びAが原告に対し,本件工事の担当者であるJから本件崩落の原因が分からないこと及びこれに対する対応策等について説明を行ったのであるから(前示1キ), - 60 -上記原告の主張はその前提を欠く。 原告は,「甲工事費用相当額」という名目での金員支払に言及したことが被告及びAに本件ビルの開業遅延の帰責性 行ったのであるから(前示1キ), - 60 -上記原告の主張はその前提を欠く。 原告は,「甲工事費用相当額」という名目での金員支払に言及したことが被告及びAに本件ビルの開業遅延の帰責性があることの証左であるとも主張するが,前示1カ及び同クのとおり,被告及びAが原告に対し本件予約契約に基づく補償義務等を負うという趣旨ではなく,原告との良好な関係を維持するための金銭として甲工事費用相当額等の名目での金員の支払であれば検討できる旨述べたにすぎないから,被告が原告に対する金銭支払に言及した事実から,被告の帰責性が推認されるとはいえず,原告の上記主張は採用できない。 イ本件崩落に対して被告の講じた対策について原告は,被告が行った対策②及び③が合理性を欠くと主張する。 しかし,施工JV及び監理JVとの打合せにおいても本件崩落の原因を特定することができない状況において,残りの杭工事において同様の崩落が生じないようにバケットの引き揚げ速度を抑制するなどの取り得る手段を講じること,地盤が不安定な箇所が存在した可能性等に考慮して本件崩落が生じた杭の近傍に杭を追加することにはそれぞれ一定の合理性が認められるし,さらに,本件崩落の原因を特定することができないことに鑑みて,地下の掘削工事においても本件工事の安全性及び適切性を重視してより慎重に掘削を行うことも,それ自体不合理とまでは認め難い。 そして,本件ビル地上46階,地下6階の高層ビルであり,多数の商業施設及びオフィスが入居予定であること(甲15)に鑑みれば,対策②及び③により本件工事の工期が約1年間にもわたって延伸することを考慮してもなお,対策②及び③の合理性を否定することはできない。 原告は,杭孔の崩落の復旧に要する期間はせいぜい20日程度であり,これを著しく超 工期が約1年間にもわたって延伸することを考慮してもなお,対策②及び③の合理性を否定することはできない。 原告は,杭孔の崩落の復旧に要する期間はせいぜい20日程度であり,これを著しく超える1年間もの工期の延長は被告の責めに帰すべき事由 - 61 -である旨主張し,これに沿う証拠を提出する(甲19,20)。 しかし,原告の上記主張及び立証は,本件工事とは支持層の深さ,杭の直径等を異にする工事を前提としたものであること及び証人Jが原告主張の復旧方法も検討したものの本件工事の規模等に照らして実行不可能と判断したことに鑑みると(甲19,20,証人J),当該方法が,直ちに,当該対策が本件崩落に対する対策として有効かつ実行可能であるとは認められない。 したがって,本件工事の工期延伸をもたらした対策②及び③が「被告の責めに帰すべき事由」に該当するとは認められない。 ウリニア中央新幹線の計画との関連の有無等について原告は,Iがリニア中央新幹線の計画が本件工事の遅延に影響を与えていたとの説明をした旨主張するが,これを裏付ける証拠はないし,本件ビルの地下部分の一部(機械室等とする予定であった空間)をリニア中央新幹線の名古屋駅の導入に充てることによる本件工事の変更点は認められないから(甲22,23),原告の上記主張は採用できない。 また,原告は,本件工事の延伸の原因として,同駅の建設を進めるに当たり,他社鉄道等との折衝が必要になったことを主張するが,これを裏付ける証拠はなく,原告の上記主張も採用できない。 エしたがって,仮に,「本件本契約の締結が困難となったとき」に該当するとしても,これが「被告の責めに帰すべき事由」によるとは認められない。 以上により,「条件表に定める も採用できない。 エしたがって,仮に,「本件本契約の締結が困難となったとき」に該当するとしても,これが「被告の責めに帰すべき事由」によるとは認められない。 以上により,「条件表に定める内容に対して大幅な変更・追加・削除を申し出るなど,本件本契約の締結が困難となったとき」に該当せず,かつ,「被告の責めに帰すべき事由」によるとも認められないから,本件予約契約15条1項4号(同条4項による読替え後のもの)を解除事由とする,原告による同契約の解除は無効である。 4 本件予約契約15条1項4号に準じる事由(同条4項による読替え後のもの) - 62 -により,同契約を継続し難くなったことを解除事由(同項13号,同条4項)とする,原告により同契約の解除の効力(争点③)について 「『本件本契約の締結を拒否若しくは締結のための協議に応じず又は条件表に定める内容に対して大幅な変更・追加・削除を申し出るなど,本件本契約の締結が困難となったとき』に準ずる事由」が生じたかについて検討する。 ア原告は,①被告が本件崩落発生後の本件ビルの開業時期を明らかにしなかったこと及び②本件ビルの開業時期の遅延について被告に責任がない旨の評価を押しつけようとするばかりで真摯な対応をしなかったことをもって上記事由に該当する旨主張する。 イしかし,前記ア①の点につき,前示1セないし同チのとおり,被告及びAは,原告の要望に応じて,遅くとも平成26年12月11日には,平成29年3月に本件ビルを開業できるよう全力を尽くす旨回答し,同月の開業の可否を検討するため,原告に対し,検討に必要な乙工事の資材搬入量等の提示を求めたり,原告及び被告において行うべき作業のスケジュールを作成するなどして上記検討を継続していたが,開業に必要な行政検査の関 否を検討するため,原告に対し,検討に必要な乙工事の資材搬入量等の提示を求めたり,原告及び被告において行うべき作業のスケジュールを作成するなどして上記検討を継続していたが,開業に必要な行政検査の関係で名古屋市との調整を行う必要があったために,本件ビルの開業時期を平成29年3月とできるか否かについて結論を出すことができなかったのであるから,被告は,原告に対し,説明可能な範囲においては本件ビルの開業時期を説明していたということができるし,被告において開業時期を確定できない理由についても十分に説明していたと評価できる。 ウまた,前記ア②の点につき,前示1キのとおり,Hは,平成26年5月16日,被告及びAが設けた説明の席上で,本件工事の担当者から本件崩落の原因等について説明を受けた際,本件工事の遅延原因を理解した旨の発言をしたのであるから,被告が原告に対し,本件ビルの開業時期の遅延について被告には責任がない旨の評価を押しつけようとするばかりで真摯な対応をしなかったとは評価し難い。 - 63 -したがって,前記アの①及び②の各点に係る上記認定事実に照らすと,被告においては,本件ビルの開業時期及び開業時期の遅延の原因等について,原告に対し,可能な限りの説明を尽くしていたと評価できる。 エ以上により,「『本件本契約の締結を拒否若しくは締結のための協議に応じず又は条件表に定める内容に対して大幅な変更・追加・削除を申し出るなど,本件本契約の締結が困難となったとき』に準ずる事由」が生じたとはいえない。 なお,仮に,「本件本契約の締結が困難となったとき」に該当するとして,これが「被告の責めに帰すべき事由」によるものであると認められないことは,で説示したとおりである。 以上により,「被告の責めに帰すべき事由」で,「『本 締結が困難となったとき」に該当するとして,これが「被告の責めに帰すべき事由」によるものであると認められないことは,で説示したとおりである。 以上により,「被告の責めに帰すべき事由」で,「『本件本契約の締結を拒否若しくは締結のための協議に応じず又は条件表に定める内容に対して大幅な変更・追加・削除を申し出るなど,本件本契約の締結が困難となったとき』に準ずる事由」が生じたとは認められないから,本件予約契約15条1項4号に準じる事由(同条4項による読替え後のもの)により,同契約を継続し難くなったことを解除事由(同項13号,同条4項)とする,原告により同契約の解除は無効である。 5 本件予約契約15条1項4号を解除事由とする,被告による同契約の解除(本件被告解除)の効力(争点④)について 原告が「原告の責めに帰すべき事由で,本件本契約の締結を拒否若しくは締結のための協議に応じない」といえるか検討する。 ア前示1のとおり,被告及びAは,本件崩落の発生以降,本件工事の担当者であるJから本件崩落の原因及びこれに対する対応策等について説明した上,本件ビルの開業予定時期が平成29年4月となると説明していたところ,本件ビルの開業時期を同年3月にしてほしいとの原告の要望を受けて,遅くとも平成26年12月11日には平成29年3月に本件ビルを - 64 -開業できるよう全力を尽くす旨回答し,同月の開業の可否を検討するため,原告に対し,検討に必要な乙工事の資材搬入量等の提示を求めるなどして上記検討を継続しており,一方,原告においても,本件ビルに出店することを前提として,被告及びAとの間で,打合せを継続していたのであるから,原告及び被告は,本件崩落以降,遅くとも平成29年4月に開業する本件ビルについて,原告及び被告が本件予約契約 件ビルに出店することを前提として,被告及びAとの間で,打合せを継続していたのであるから,原告及び被告は,本件崩落以降,遅くとも平成29年4月に開業する本件ビルについて,原告及び被告が本件予約契約に基づき本件本契約の締結義務を負うことを前提に打合せを継続すると同時に,被告及びAにおいて,本件ビルの開業時期を平成29年3月とすることができるか否かを検討するとの方針を共有していたといえる。 そして,前示1セないし同チのとおり,原告は,被告及びAに対し,平成26年12月11日,本件ビルを平成29年3月に開業できるか否かについて平成26年12月中に結論を出すよう求めたところ,同月24日,本件ビルの開業に先立つ行政検査を早めるなどの調整が付いていないため,同月中に上記結論を出すことはできない旨の回答を被告及びAから受けたにもかかわらず,原告において,本件ビルを平成29年3月に開業できるか否かの検討に必要な確認を行う旨述べ,少なくとも平成27年2月3日までは,被告及びAとの間で,原告が本件ビルに出店することを前提とした打合せを継続的に行っており,被告及びAも,原告に対し,原告及び被告が行うべき作業のスケジュールを提示するなどして,本件店舗を平成29年3月に開業できるか否かに係る検討を継続していたのであるから,原告及び被告において,上記方針は平成27年に至っても継続しており,原告も上記方針に従って,本件店舗を平成29年3月に開業できるか否かの検討に必要な確認や打合せに協力していたといえる。 ところが,前記1のとおり,原告は,上記の平成27年2月3日の打合せのわずか2日後である同月5日に,被告及びAから本件店舗を平成29年3月に開業できないとの返答を受けたわけでもないのに(証人H),突 - 65 -然,本件原告 上記の平成27年2月3日の打合せのわずか2日後である同月5日に,被告及びAから本件店舗を平成29年3月に開業できないとの返答を受けたわけでもないのに(証人H),突 - 65 -然,本件原告解除1に係る通知書を送付し,しかも,その後,原告代表者の考えは,同通知書及びその後に原告が被告に対して送付した通知書に記載されたとおりであるとの理由により,Tから原告代表者との面会実施に向けた申入れを受けながら,これを拒否したというのである。 そうすると,原告は,被告との間で上記方針を共有し,被告が上記のとおり,上記方針に従って真摯に検討を続けていたこと(前示4イ)を認識し,自らも上記方針に検討を行っていたにもかかわらず,被告及びAが平成29年3月の開業に向けた検討を継続していた平成27年2月5日に突然,本件原告解除1を行い,これ以降,上記方針に従った本件ビルへの出店に向けた打合せを拒んだことになるから,上記のとおりの同日以降の原告の行動によって,本件被告解除の意思表示を発信した同年3月5日の時点で,「原告の責めに帰すべき事由で,本件本契約の締結を拒否若しくは締結のための協議に応じない」事実が生じたと認めることができる。 イこの点,原告は,本件予約契約は,本件原告解除1により,本件被告解除の時点で既に効力を終了していた旨主張するが,前示2ないし4及び後示6ないし9のとおり,本件原告解除1は無効であるから,原告の上記主張はその前提を欠き,採用できない。 また,原告は,解除権を行使したこと自体が新たな解除権の発生原因となるとすれば,解除権の行使に抑制的にならざるを得ないから本件原告解除1をもって本件被告解除の解除事由と評価することは許されない旨主張するが,一方当事者の解除権の行使によって,相手方当事者との間の信頼関 すれば,解除権の行使に抑制的にならざるを得ないから本件原告解除1をもって本件被告解除の解除事由と評価することは許されない旨主張するが,一方当事者の解除権の行使によって,相手方当事者との間の信頼関係に重大な影響が生じ得ることは容易に予想できるから,解除権を行使する際には,その当否について慎重な検討が重ねられるべきものであり,前示アの認定判断によって,原告の解除権の行使が不当に制約されるとはいえない。むしろ,前示アで説示したとおり,本件原告解除1以降の原告の行動によって,被告が本件被告解除の意思表示を発 - 66 -信した時点では,「原告の責めに帰すべき事由で,本件本契約の締結を拒否若しくは締結のための協議に応じない」との解除事由が生じていたのであるから,これによる被告の解除権の行使を制限すべき正当な理由はないというべきである。以上により,原告の上記主張は採用できない。 さらに,原告は,被告及びAが工事費の負担増を覚悟してでも遅延期間をできる限り短縮するという措置をとることなく,他方で,原告が被った負担増又は損害について何ら配慮を示さなかったことに照らすと,原告が本件原告解除1を行って本件予約契約から離脱したことが原告の帰責事由となることはない旨主張する。 しかし,前示1のとおり,被告及びAは,施工JV及び監理JVとの打合せを行って本件ビルの開業予定時期を平成29年4月と定めたのであって,工事費を増額すれば遅延期間を短縮できた旨の主張についての裏付けもない。また,前示1のとおり,原告は,本件ビルの開業時期の遅延による損失について,被告又はAに本件予約契約に基づく補償を行う意思はなく,せいぜい本件工事の甲工事における原告負担額を支払う程度の補償を期待し得るにすぎないことを認識しつつ,平成27年2月3日までの間, 失について,被告又はAに本件予約契約に基づく補償を行う意思はなく,せいぜい本件工事の甲工事における原告負担額を支払う程度の補償を期待し得るにすぎないことを認識しつつ,平成27年2月3日までの間,本件ビルに出店することを前提として,被告及びAとの間で打合せを継続していたのであるから,被告及びAが原告の損失に何ら配慮を示さなかったとまでは認められないし,原告においても,被告及びAによる金銭負担が一定程度にとどまることを認識しつつも本件予約契約に基づく本件本契約締結義務を前提とした打合せを継続していたものである。 以上のとおりの本件崩落に対する被告の対応や本件ビルの開業遅延により原告が被る損失に関する被告の配慮の内容,程度及びこれに対する原告の交渉態度等に照らせば,原告の帰責性を否定すべき事情(原告による本件予約契約に基づく本件本契約締結義務の履行拒否を正当化し得 - 67 -る事情)があるとはいえず,原告の上記主張は採用できない。 そして,前示1オのとおり,被告は,原告に対し,平成27年3月5日付けの書面を送付して本件被告解除の意思表示を行い,同書面が同月6日,原告に到達したのであるから,本件被告解除は有効である。 6 債務不履行に基づく,原告による本件予約契約の解除の効力(争点⑤)について平成28年春に開業される本件ビルの本件本契約を締結することが本件予約契約の目的であったかにつき,検討する。 前記前提事実ウのとおり,本件予約契約書の頭書及び2条に本件記載があるものの,本件予約契約が締結されたのが平成25年1月23日頃であり(前示1本件予約契約締結時に本件ビルの開業予定時期として記載された時期(平成28年春)の約3年前であったことからすると,本件予約契約締結時において本件ビルの開業時期を正 25年1月23日頃であり(前示1本件予約契約締結時に本件ビルの開業予定時期として記載された時期(平成28年春)の約3年前であったことからすると,本件予約契約締結時において本件ビルの開業時期を正確に予測することは困難であったと考えられるし,本件記載における開業時期の記載が「平成28年春」という幅のある期間で示されており,しかも「予定」という文言が用いられてらすると,本件記載による本件ビルの開業時期の特定は曖昧なものといわざるを得ない。 また,本件予約契約の条項案を検討している段階で本件ビルの記載について,原告が,開業予定時期の「特定」も必要との意見を述べたことを契機として本件記載が加わったものの(前示1に開業できないことが明らかになった後においても,原告が本件ビルに出店する方針で被告及びAとの交渉を継続していたというのである(前示1ないし同チ)。 そうすると,本件予約契約書に本件記載があるからといって,直ちに,原告及び被告が,本件ビルの開業時期をも本件予約契約の目的に含める趣旨で本件記載を行ったかどうかは疑問であり,本件予約契約締結時,原告及び被 - 68 -告が,平成28年春に開業される本件ビルの本件本契約を締結することを本件予約契約の目的とする意思を有していたとまで認めることはできない。 そして,他に,原告及び被告が,平成28年春に開業される本件ビルの本件本契約を締結することを本件予約契約の目的としていた事実を認めるに足りる証拠はないから,本件全証拠によっても,同事実の証明があるとすることはできない。 したがって,本件ビルを平成28年春に開業することが困難になったことにより,本件予約契約の目的を達成することは不可能になったとはいえないから,債務不履行に基づく,原告による本件予約契約の解除は無効である。 7 本 ルを平成28年春に開業することが困難になったことにより,本件予約契約の目的を達成することは不可能になったとはいえないから,債務不履行に基づく,原告による本件予約契約の解除は無効である。 7 本件予約契約14条1項1号を解除事由とする,原告による同契約の解除の効力(争点⑥)について 「被告・原告の計画」に,本件ビルを平成28年春に開業することが含まれていたかにつき,検討する。 ア前記前提事実オのとおり,本件予約契約14条1項1号は,「不可抗力」,「経済事情の変動」,「第三者の開発行為の滞り」等,原告及び被告の責めに帰すことができないと考えられる事情によって「被告・原告の計画どおりの本件ビルの建設が困難と合理的に判断されるとき」には,原告及び被告の双方が本件予約契約を解除することができると定めているところ,当該規定は,本件予約契約の一方当事者が解除の意思表示を行うことによって,相手方に帰責事由がないにもかかわらず,本件予約契約の効力を失わせて,相手方が期待できた利益を相手方から失わせる効果を発生させることを容認するものであるから,当事者間の合理的な意思解釈として,上記規定は,本件予約契約の解除事由として,本件予約契約の一方当事者に上記効果を生じさせてもやむを得ないような状況に至った場合を想定しており,その場合に限って解除権が発生することを定めたものであると解するのが相当である。 - 69 -イ進んで,上記アの見地から,本件ビルを平成28年春に開業することが「被告・原告の計画」に含まれていたか否かにつき判断する。 まず,前記前提事実ウのとおり,本件予約契約書の頭書及び2条に本件記載があることや本件予約契約締結に先立つ平成24年5月16日頃,報道機関に対し,本件ビルの完成時期を平成27年末 断する。 まず,前記前提事実ウのとおり,本件予約契約書の頭書及び2条に本件記載があることや本件予約契約締結に先立つ平成24年5月16日頃,報道機関に対し,本件ビルの完成時期を平成27年末,百貨店及びホテルの開業時期を平成28年春とする旨発表するなどしたことに照らすと,原告と被告は,本件予約契約締結の時点において,本件ビルの開業時期として,平成28年春頃を予定したものと認められる。 しかし,①平成24年4月20日付けの全体スケジュールにおいても,本件ビルの開業時期に影響する甲工事及び乙工事等について「今後工事工程計画の深度化・行政検査により変更の可能性あり。」と記載されていること(甲12),②同年5月16日頃の報道発表資料にも「スケジュールについては,今後の行政手続き及び工事の進捗状況により変更となる場合があります。」と記載されていること(甲13),③本件予約契約が締結されたのが平成25年1月23日頃であり(前示1本件予約契約締結時に本件ビルの開業予定時期として記載された時期(平成28年春)の約3年前であったこと,④本件記載における開業時期の記載が「平成28年春」という期間に幅のある表現が用いられた上,その変更の可能性があることを示す「予定」という文言が付記されていること及び⑤本件予約契約の条項案を検討している段階で本件ビルの記載について,原告が,開業予定時期の「特定」も必要との意見を述べたことを契機として本件記載が加えられたこと(前示1に照らすと,原告と被告は,本件予約契約締結の時点で,本件ビルの開業予定時期が将来的に変更される可能性が十分にある客観的な状況の下で,その旨を十分に認識していたものと認められるから,本件ビルの開業時期が上記開業予定時期から変更された場合に,一方当事者に本件予約契約の解除を認め 的に変更される可能性が十分にある客観的な状況の下で,その旨を十分に認識していたものと認められるから,本件ビルの開業時期が上記開業予定時期から変更された場合に,一方当事者に本件予約契約の解除を認め,他方当事者に同 - 70 -契約について期待できた利益を失わせるという重大な効果を生じさせることができるものとして,本件ビルの開業時期が記載された(本件記載)とまで認めることはできない。 また,⑥本件ビルを平成28年3月末に開業できないことが明らかになった後も,原告が本件ビルに出店する方針で被告及びAとの交渉を継続していたこと(前示1ないし同チ)からみても,原告及び被告が,本件予約契約締結時点において,本件予約契約に記載された本件ビルの開業時期について,変更されることがあり得るものと認識しており,また,本件ビルの開業時期が上記開業予定時期から変更された場合について,直ちに一方当事者に本件予約契約の解除を認められ,他方当事者から同契約について期待できた利益を失わせるという重大な効果を生じさせることができるものと考えていたわけではなかったと考えることができる。 ウ以上により,原告及び被告が,本件予約契約締結時において,本件ビルの開業予定時期が変更されたことの一事によって,相手方に帰責事由がなくても,本件予約契約の効力を失わせ,相手方が期待できた利益を相手方から失わせる効果を発生させることを意欲していたとは認められないから,本件ビルを平成28年春に開業することが「被告・原告の計画」に含まれていたとは認められない。 エこれに対し,原告は,本件修正の経緯及び本件ビルの開業時期を平成28年春とする旨の平成24年5月16日頃の報道発表を原告が信頼し,その計画を承諾したことからすると,平成28年春の時点で本件ビルが開業するこ し,原告は,本件修正の経緯及び本件ビルの開業時期を平成28年春とする旨の平成24年5月16日頃の報道発表を原告が信頼し,その計画を承諾したことからすると,平成28年春の時点で本件ビルが開業することが「被告・原告の計画」に含まれていた旨主張するが,本件修正の経緯及び上記報道発表の内容に照らしても,本件ビルを平成28年春に開業することが「被告・原告の計画」に含まれていたと認められないことは,前示イのとおりであるから,原告の上記主張は採用できない。 以上により,本件ビルを平成28年春に開業することが「被告・原告の計 - 71 -画」に含まれていたとは認められないから,本件ビルを同年春に開業することが困難になったことは,「被告・原告の計画どおりの本件ビル建設が困難と合理的に判断されるとき」に該当しない。したがって,仮に,本件原告解除1が本件予約契約14条1項に基づくものであるとしても,同項1号を解除事由とする,原告による同契約の解除は無効である。 8 本件予約契約14条1項4号を解除事由とする,原告による同契約の解除の効力(争点⑦)について 本件ビルを平成28年春に開業するとの予定が実現しなかったことが,本件予約契約14条1項1号に準ずる事由に該当するかにつき検討する。 ア前示7アのとおり,本件予約契約14条1項1号に該当するのは,本件予約契約について相手方が期待できた利益を相手方から失わせてもやむを得ないような状況に至った場合に限定されると解することが,当事者間の合理的な意思解釈に合致するから,これに準ずる事由についても同様に限定的に解するべきである。 イ前示7イのとおり,原告及び被告が,本件予約契約締結時において,本件ビルの開業予定時期が変更された場合について,一方当事者に本件予約契約の解除を認め,他方当 様に限定的に解するべきである。 イ前示7イのとおり,原告及び被告が,本件予約契約締結時において,本件ビルの開業予定時期が変更された場合について,一方当事者に本件予約契約の解除を認め,他方当事者に同契約について期待できた利益を失わせるという重大な効果を生じさせることができるものと考えていたとは認められないから,本件ビルを平成28年春に開業するとの予定が実現しなかったことが,「天災地変その他の不可抗力,暴動・争議,経済事情の変動,土壌汚染や埋設文化財等の判明,本件ビルの建設計画に影響する許認可や第三者の開発行為の滞りその他の事由により被告・原告の計画どおりの本件ビル建設が困難と合理的に判断されるとき」に準ずる事由に該当するとは認められない。 なお,本件ビルの開業遅延が解除事由(本件本契約の締結が困難となったとき)に当たらないとの前示3イの認定判断からすれば,本件ビルを平成 - 72 -28年春に開業するとの予定が実現しなかったことは,「本件本契約の締結が困難と合理的な理由により判断されるとき」に該当しないといえる。 したがって,本件予約契約14条1項4号所定の「その他前各号(本件予約契約14条1項1号)に準ずる事由で,本件本契約の締結が困難と合理的な理由により判断されるとき」に該当するとは認められないから,仮に,本件原告解除1が同項に基づくものであるとしても,同項4号を解除事由とする,原告による同契約の解除は無効である。 9 本件予約金に係る不当利得返還請求の可否(争点⑨)について 原告は,本件原告解除1,本件被告解除及び本件原告解除2に係る解除事由がいずれも認められない場合について,本件予約金に係る不当利得返還請求が可能である旨主張するが,前示5のとおり,本件被告解除に係る解除事由が認められないと 件被告解除及び本件原告解除2に係る解除事由がいずれも認められない場合について,本件予約金に係る不当利得返還請求が可能である旨主張するが,前示5のとおり,本件被告解除に係る解除事由が認められないとはいえないから,上記請求の前提を欠く。 原告は,被告又はAがBとの間で平成27年5月14日までに本件ビルへの出店に関する契約を締結したために,本件予約契約は終了した旨主張するが,被告又はAが同日までにBとの間で本件ビルへの出店に関する契約を締結したとの立証はないし,同契約が締結されたことにより本件予約契約が終了したといえる根拠も明らかでないから,原告の上記主張は採用できない。 原告は,被告又はAがBとの間で本件ビルへの出店に関する契約を締結したために,本件ビルへの出店について本件予約契約と二重に契約を締結したことになることを理由として,本件予約契約を,同契約15条1項4号(同条4項による読み替え後のもの),同契約14条1項1号若しくは事情変更を根拠として解除できる旨主張するが,本件予約契約は,本件被告解除によって解除されており(前示5),被告又はAが,B及び原告との間で,本件ビルへの出店に関する契約を二重に締結した時期があったとの立証はないから,原告の上記主張は前提を欠き,採用できない。 以上により,被告に本件予約金を保持する正当な権限がないとの主張は認 - 73 -められないから,原告の本件予約金に係る不当利得返還請求は理由がない。 10 時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立て(争点⑪)について以上に判示するところからすると,訴訟を完結させるために,新主張①及び②についてさらに審理を行う必要は認められないから,新主張①及び②の提出を認めても,これが提出されなかったならば訴訟を完結することができたであ るところからすると,訴訟を完結させるために,新主張①及び②についてさらに審理を行う必要は認められないから,新主張①及び②の提出を認めても,これが提出されなかったならば訴訟を完結することができたであろう時期よりも訴訟の完結の時期が遅れることになるとは認められない。 したがって,その余の点につき判断するまでもなく,時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立ては理由がない(新主張①及び②は却下しない。)。 11 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は,いずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第8部 裁判官前田志織 裁判官川 村 久美子 裁判長裁判官加島滋人は,転補につき,署名押印することができない。 裁判官前田志織
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