判決平成13年10月12日神戸地方裁判所平成13年(わ)第327号,第391号覚せい剤取締法違反,大麻取締法違反事件 主文 被告人を懲役4年6月及び罰金50万円に処する。 未決勾留日数中140日をその懲役刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 押収してあるチャック付ポリ袋入り覚せい剤白色結晶7袋(平成13年押第87号の1ないし6,9),ポリ袋入り覚せい剤白色結晶2袋(同押号の7,8)及びチャック付きポリ袋入り大麻1袋(同押号の10)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 法定の除外事由がないのに,平成13年3月12日ころ,大阪府堺市Aa丁b番c号Bd号の当時の自宅において,フェニルメチルアミノプロパンの塩類を含有する覚せい剤白色結晶約0.09グラムを水に溶かして自己の身体に注射し,もって覚せい剤を使用した第2 CことDと共謀の上,みだりに,営利の目的で,同月13日午後3時10分ころ,前記自宅において,覚せい剤である塩酸フェニルメチルアミノプロパンの白色結晶約7.901グラム(平成13年押第87号の4ないし8はいずれも鑑定残量)及び大麻草約20.236グラム(同押号の10はその鑑定残量)を所持し,かつ,営利の目的なく,前同様の覚せい剤白色結晶約1.864グラム(同押号の1ないし3,9はいずれも鑑定残量)を所持したものである。 (証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カードの検察官請求証拠番号―省略(事実認定の補足説明) 1 判示第2の事実について,裁判所は,被 ないし3,9はいずれも鑑定残量)を所持したものである。 (証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カードの検察官請求証拠番号―省略(事実認定の補足説明) 1 判示第2の事実について,裁判所は,被告人が所持した覚せい剤9袋のうち4袋については,営利の目的なく所持したものと認定したのであるが,その理由について補足して説明を加える。 2 第1回公判期日の被告事件に対する陳述において,弁護人及び被告人は判示第2の事実について営利目的の点を含めこれを認める旨述べるものの,被告人は,所持していた覚せい剤9袋のうち,0.5グラム未満の3袋(平成13年押第87号の1ないし3)及び約0.963グラムのもの(同押号の9)の合計4袋は,いずれも営利目的で所持していたものではなく,自己又は共犯者が使用するために所持していたものである旨捜査段階において一貫して供述し,弁護人は,最終弁論において,少なくとも,0.5グラム未満の3袋の覚せい剤は営利目的で所持したものではない旨主張する。 3 被告人の公判供述並びに前掲捜査段階における検察官及び司法警察員麻薬取締官に対する各供述調書によれば,この点に関する被告人の供述の要旨は次のとおりである。 (1) 被告人は,平成13年1月以降,CことDとともに覚せい剤を密売し,同年2月中旬ころから,Eから1回につき約10グラムの覚せい剤を仕入れては,これを約1グラムのパケに小分けして密売していた。 (2) 被告人は,同年3月11日,その前日に逮捕されたFことGが所持していたチャック付きポリ袋入り覚せい剤(約0.963グラム。平成13年押第87号の9)を同人の友人から受け取り,これを自ら使用するつもりでティッシュで包み,被告人において「往診箱」と呼んでいた黒色三段式手提げ小物入れの上段に入れて保管した。 (3) 同月1 3年押第87号の9)を同人の友人から受け取り,これを自ら使用するつもりでティッシュで包み,被告人において「往診箱」と呼んでいた黒色三段式手提げ小物入れの上段に入れて保管した。 (3) 同月12日昼ころには,密売用の覚せい剤は底をつき,往診箱中には,前記(2)の覚せい剤のほか,いったん密売用に小分けしたものではあるが,Cや被告人自身が使用したため,そのままでは密売できなくなった覚せい剤2袋(約0.388グラム及び約0.464グラムのもの。同押号の2,3)が保管されているのみとなった。 (4) 被告人は,その日の午後10時30分ころ,Cの指示により,大阪市内のEのマンションのエレベーター前で,同人からチャック付きポリ袋入り覚せい剤2袋(各約5グラム入り)を受け取り,翌13日午前6時ころ,大阪市内所在のホテルで,Cから,同人が使用した残りのチャック付ポリ袋入り覚せい剤1袋(約0.049グラム。同押号の1)を被告人が自ら使用するものとして受け取った。なお,その際,被告人は,CにEから仕入れた前記覚せい剤2袋を見せたところ,そのうち1袋(約4.845グラム。同押号の4)をそのまま密売するよう指示された。 その後,被告人は,Cの求めに応じて,他方の1袋から覚せい剤約0.2グラムを取り出して同人に注射使用し,その残りは,Cの指示により,密売用に約1グラム(風袋込み)になるよう小分けしたチャック付ポリ袋入り覚せい剤4袋(約0.882グラム,約0. 778グラム,約0.707グラム,約0.689グラム。同押号の5ないし8)を作り,残りはCに渡した。 (5) 以上の経緯により,被告人は,判示覚せい剤9袋をいずれも往診箱に入れて所持することとなったが,その後,茶色ポーチ及び茶封筒を購入し,密売用に小分けした前記4袋の覚せい剤(同押号の5ないし8) (5) 以上の経緯により,被告人は,判示覚せい剤9袋をいずれも往診箱に入れて所持することとなったが,その後,茶色ポーチ及び茶封筒を購入し,密売用に小分けした前記4袋の覚せい剤(同押号の5ないし8)及び仕入れたままの状態の前記覚せい剤1袋(同押号の4)を,茶封筒にそれぞれ入れ,0.5グラム未満の前記覚せい剤3袋(同押号の1ないし3)については茶封筒に入れることなく,これらを,電子秤,鋏等の小分け道具とともに,茶色ポーチに入れた上,往診箱下段に保管し,また,前記ティッシュペーパーに包んだ覚せい剤1袋(同押号の9)については,そのまま往診箱上段で保管していた。 4 被告人の前記3の供述内容は,前掲関係各証拠により認められる被告人らの覚せい剤の密売や所持の状況や,判示覚せい剤の小分けや保管の状況と符合しているほか,判示覚せい剤合計約9.765グラムのうち,0.5グラム未満の前記覚せい剤3袋(同押号の1ないし3)及びティッシュペーパーに包んだ覚せい剤1袋(同押号の9)については,保管状況が他の明らかに密売用のそれと認められる覚せい剤とは異なっている上,被告人がことさら虚偽の供述をしてまでこれらについてのみ営利目的を否定する事情はないことに照らすと,被告人の前認定の供述の信用性を排斥しえないから,被告人が当公判廷又は捜査段階において公訴事実又は被疑事実を争わない旨供述していることを考慮しても,被告人が前記覚せい剤4袋を営利目的で所持していたと認定するには,なお合理的な疑いを容れる余地が残るといわざるを得ない。 したがって,前記覚せい剤4袋については,営利の目的なく所持していたと認定するに止めた次第である。 (累犯前科)被告人は,平成9年6月10日大阪地方裁判所で覚せい剤取締法違反の罪により懲役4年及び罰金50万円に処せられ,平成12年10月 利の目的なく所持していたと認定するに止めた次第である。 (累犯前科)被告人は,平成9年6月10日大阪地方裁判所で覚せい剤取締法違反の罪により懲役4年及び罰金50万円に処せられ,平成12年10月15日その懲役刑の執行を受け終わったものであって,この事実は検察事務官作成の前科調書(省略)によって認める。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為は覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条に,判示第2の所為のうち,覚せい剤を営利の目的で所持した点(以下「覚せい剤営利目的所持」という。)は刑法60条,覚せい剤取締法41条の2第2項,1項に,大麻を営利の目的で所持した点(以下「大麻営利目的所持」という。)は刑法60条,大麻取締法24条の2第2項,1項に,覚せい剤を営利の目的なく所持した点(以下「覚せい剤単純所持」という。)は刑法60条,覚せい剤取締法41条の2第1項にそれぞれ該当するが,判示第2は1個の行為が3個の罪名に触れる場合であるから,刑法54条1項前段,10条により1罪として最も重い覚せい剤営利目的所持の罪の刑で処断することとし,判示第2の罪について情状により所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択し,被告人には前記の前科があるので同法56条1項,57条により判示第1の罪の刑及び第2の罪の懲役刑についてそれぞれ再犯の加重をし(判示第2の罪の懲役刑については同法14条の制限に従う。),以上は同法45条前段の併合罪であるから,懲役刑については同法47条本文,10条により重い判示第2の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をし,その刑期及び所定金額の範囲内で被告人を懲役4年6月及び罰金50万円に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中140日をその懲役刑に算入し,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金5000円を1日に換算した期 で被告人を懲役4年6月及び罰金50万円に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中140日をその懲役刑に算入し,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし,押収してあるチャック付きポリ袋入り覚せい剤白色結晶3袋(平成13年押第87号の4ないし6)及びポリ袋入り覚せい剤白色結晶2袋(同押号の7,8)は判示第2の覚せい剤営利目的所持罪に係る覚せい剤であり,チャック付きポリ袋入り覚せい剤白色結晶4袋(同押号の1ないし3,9)は判示第2の覚せい剤単純所持罪に係る覚せい剤であって,いずれも犯人の所有するものであるから,それぞれ覚せい剤取締法41条の8第1項本文により,チャック付きポリ袋入り大麻1袋(同押号の10)は判示第2の大麻営利目的所持罪に係る大麻で犯人の所有するものであるから,大麻取締法24条の5第1項本文により,これらをいずれも没収し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人が覚せい剤を自己使用し(判示第1),共犯者である夫と共謀の上,営利目的で覚せい剤約7.901グラム及び大麻20.236グラムを所持し,かつ,営利の目的なく覚せい剤約1.864グラムを所持した(判示第2)という覚せい剤取締法違反及び大麻取締法違反の各事案である。 まず,覚せい剤及び大麻の営利目的所持についてみるに,被告人は,前記累犯前科となる覚せい剤取締法違反の罪による前刑懲役刑の仮出獄後,定職に就かずに楽に収入を得るため,そのわずか3か月後の平成12年8月ころから覚せい剤の密売を再開し,同年12月に共犯者である夫が仮出獄した後は,同人とともに覚せい剤等の密売を継続してきたものであって,本件は,被告人らが常習的かつ職 そのわずか3か月後の平成12年8月ころから覚せい剤の密売を再開し,同年12月に共犯者である夫が仮出獄した後は,同人とともに覚せい剤等の密売を継続してきたものであって,本件は,被告人らが常習的かつ職業的に敢行した犯行であることを考慮すると,その反社会性は著しく,その犯情は極めて悪質である。また,被告人は,仮出獄後ほどなく覚せい剤の使用を再開し,本件で逮捕されるに至るまで継続的に使用していたところ,本件犯行時にはその使用回数が1日約3回に及んでいること,被告人の供述によればその1回あたりの使用量も多いこと,本件で逮捕される直前ころには覚せい剤の薬理作用によると思われる幻覚幻聴を経験していること,しかも,被告人は,前記累犯前科を含め同種前科3犯を有するにもかかわらず,最終前科の懲役刑の執行終了後半年も経たないで本件各犯行に及んでいることを併せ考慮すると,被告人の規制薬物に対する常習性,親和性は顕著であるといわざるを得ない。 以上の諸事情に照らすと,被告人の刑事責任は重大である。 そうすると,被告人が営利目的で所持していた覚せい剤等がそれほど多量であるとまではいえないこと,被告人が,逮捕後本件各犯行を認め,覚せい剤等の入手先や密売先等を供述する等して捜査に協力したこと,今後は子供達のためにも覚せい剤と決別し,覚せい剤関係者である夫と離婚する旨誓約していること,被告人の反省改悟の情,健康状態など被告人のために酌むべき事情を最大限考慮しても,主文掲記程度の刑は免れない。 よって,主文のとおり判決する。 平成13年10月18日神戸地方裁判所第1刑事部裁判長裁判官杉森研二裁判官溝國禎久 所第1刑事部 裁判長 裁判官 杉森研二 裁判官 溝國禎久 裁判官 林史高
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