令和6(行コ)10002 特許料納付書却下処分取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和6年9月25日 知的財産高等裁判所 2部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 令和5(行ウ)5002
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令和6年9月25日判決言渡 令和6年(行コ)第10002号特許料納付書却下処分取消請求控訴事件(原審東京地方裁判所令和5年(行ウ)第5002号)口頭弁論終結日令和6年6月24日判決 控訴人株式会社コンピュータ・システム研究所 同訴訟代理人弁護士岩永利彦 被控訴人国 処分行政庁特許庁長官 同指定代理人橋本政和 同多田百合 同洞田亮 同坂本千鶴子 同大谷恵菜 同中島あんず 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は、控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 特許庁長官が、特許第4827120号の特許権に係る第11年分の特許料納付書について、令和4年12月1日付けでした手続却下の処分を取り消す。 第2 事案の概要 本判決の本文中において用いる略語の定義は、次のとおりである。 本件特許権特許第4827120号の特許権 原告控訴人(1審原告) 被告被控訴人(1審被告) 特許料等特許料及び割増特許料 本件追納期間特許法112条1項により特許料を追納することができる期間 令和3年改正法特許法等の一部を改正する法律 被控訴人(1審被告)特許料等特許料及び割増特許料本件追納期間特許法112条1項により特許料を追納することができる期間令和3年改正法特許法等の一部を改正する法律(令和3年法律第42号) 改正前特許法令和3年改正法による改正前の特許法本件納付書原告が令和4年3月31日に特許庁長官に対し提出した納付書本件処分特許庁長官が令和4年12月1日付けでした本件納付書に係る手続を却下する処分 本件弁理士原告が特許料の納付の管理を依頼していた弁理士本件施行日政令特許法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(令和4年7月21日政令第250号) 1 事案の要旨⑴ 本件特許権を保有していた原告は、本件特許権の第11年分の特許料等を 所定の期限(令和3年9月22日)までに納付せず、本件追納期間の末日である令和4年3月22日も徒過した。 原告は、特許法112条の2第1項の規定(適用法条が、令和3年改正法による改正後の現行特許法であるか、改正前特許法であるかについて争いがある。)による特許権の回復を求めて、令和4年3月31日、特許庁長官に対 し、同条1項に基づき本件特許権の第11年分の特許料等を納付する旨の本 件納付書(特許法施行規則69条)及び回復理由書(特許法施行規則69条の2第2項以下)を提出した。しかし、特許庁長官は、令和4年12月1日付けで本件処分をした。 本件は、原告が被告に対し、原告は、故意に、本件追納期間内に納付しなかったものではなく(特許法112条の2第1項)、又は、本件追納期間内に 納付することができなかったことについて正当な理由があるから(改正前特許法112条の2第 故意に、本件追納期間内に納付しなかったものではなく(特許法112条の2第1項)、又は、本件追納期間内に 納付することができなかったことについて正当な理由があるから(改正前特許法112条の2第1項)、本件処分は、法令の解釈適用を誤ってされた違法なものであると主張して、本件処分の取消しを求める事案である。 ⑵ 原審は、本件では、令和3年改正法附則2条8項、1条5号によりなお従前の例によることとされる場合における改正前特許法112条の2第1項の 規定によるべきところ、原告について、同項所定の「正当な理由」があったとはいえないとして、原告の請求を棄却した。 これに対し、原告が原判決を不服として本件控訴を提起した。 2 前提事実、争点及び争点についての当事者の主張は、後記3のとおり当審における当事者の補充主張を付加するほかは、原判決「事実及び理由」第2の2 から4まで(原判決2頁14行目から6頁11行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 当審における当事者の補充主張⑴ 原告の主張ア法の適用に関する通則法2条の規定によれば、法律の施行は公布の日か ら起算して20日を経過した日であるのが原則である。日本の法律の公布から施行までの平均期間は約4月半である。令和3年改正法は、多くの法律の例や、改正前特許法の施行までの期間、現実の必要性等を考慮しても、公布(令和3年5月21日)から施行(令和5年4月1日)までの期間が長期に過ぎるから、令和3年改正法附則1条5号の定める期間のうち公布 の日から起算して4月半を超える部分は違憲無効であり、同号の規定に基 づく政令である本件施行日政令も同様に違憲無効である。 したがって、本件には現行の特許法112条の2第1項の規定が適用 ら起算して4月半を超える部分は違憲無効であり、同号の規定に基 づく政令である本件施行日政令も同様に違憲無効である。 したがって、本件には現行の特許法112条の2第1項の規定が適用され、原告に「故意」はないから、特許権の回復は認められるべきである。 イ仮に、改正前特許法112条の2第1項の規定によることになるとしても、原告が依頼していた本件弁理士は、新型コロナウィルス感染症の影響 で副業の介護事業が著しく不振となり、うつ病が発症し悪化したのであり、これにより少なくとも18件の特許について審査請求や年金納付等の手続をすることができなかった。また、原告が新たな弁理士の選任に1か月以上を要したのも、新型コロナウィルス感染症の影響によるから、原告には同項の「正当な理由」がある。本件処分を取り消すことは、特許庁の新 型コロナウィルス感染症に係る救済判断である「手続をすることができなかった手続の期限の末日が令和5年5月8日(月曜日)以前の場合は、新型コロナウィルス感染症のまん延の影響を受けたとは考えにくい場合等を除き、新型コロナウィルス感染症の影響を受けた旨が記載されている場合は、救済を認める」こととするにも沿う。 ⑵ 被告の主張ア改正前特許法112条の2第1項の「正当な理由があるとき」とは、特許権者(代理人を含む。)として相当な注意を尽くしていたにもかかわらず、客観的にみて追納期間内に特許料等を納付することができなかったときをいうものと解され、その立証責任は原告が負う。 イ本件では、新型コロナウィルス感染症の拡大により本件弁理士の事業が不振となり、本件弁理士がうつ病にり患したことの客観的資料はない。この点を措いても、本件弁理士は、本件追納期間当時、弁理士業務を現に行い活動 、新型コロナウィルス感染症の拡大により本件弁理士の事業が不振となり、本件弁理士がうつ病にり患したことの客観的資料はない。この点を措いても、本件弁理士は、本件追納期間当時、弁理士業務を現に行い活動してきた。そして、原告は、令和4年2月7日頃、本件弁理士の管理する多数の特許権が特許料等の不納付により消滅していることを認識し、 本件追納期間の末日まで1か月以上の期間があったのに、特許庁に速やか に問い合わせて確認するなどの行動も取っていない。なお、新型コロナウィルス感染症の拡大により本件追納期間内に特許料等を納付することができなかったことの客観的資料もない。したがって、原告について前記「正当な理由」があったとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、原告の請求は理由がないから棄却すべきものと判断する。 その理由は、後記2のとおり当審における当事者の補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決「事実及び理由」中の第3(原判決6頁12行目から9頁14行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 当審における当事者の補充主張について ⑴ 原告は、令和3年改正法は、公布から施行までの期間が長期に過ぎるから、施行期日について定める令和3年改正法附則1条5号の定める期間のうち公布の日から起算して4月半を超える部分又は本件施行日政令は違憲無効であり、本件には現行の特許法112条の2第1項の規定が適用されるなどと主張する。 しかしながら、憲法上、法律の公布から施行までの期間について定めた規定はなく、法の適用に関する通則法2条本文は、法律は公布の日から起算して20日を経過した日から施行する旨規定しているが、同条ただし書によれば、法律でこれと異なる施行期日を定めることは妨げられない。同条た なく、法の適用に関する通則法2条本文は、法律は公布の日から起算して20日を経過した日から施行する旨規定しているが、同条ただし書によれば、法律でこれと異なる施行期日を定めることは妨げられない。同条ただし書は、異なる施行期日を定めるべき場合について何ら特定していないから、 法律の施行期日をどのように定めるのかについては、当該法律を制定した立法機関の広範囲の裁量が認められるべきである。原告の主張する各事由(多くの法律の例や、改正前特許法の施行までの期間、現実の必要性等)を理由に令和3年改正法の施行期日が公布の日から4月半以内であることが憲法により一義的に要請されることになるなどとは認めることはできない。また、 令和3年改正法附則1条5号の対象となる特許法の改正部分は、特許料の納 付に関する部分に限られたものではなく、他に出願人や権利者が手続上のミスのため権利等を失うなどした場合も含め、これを回復するための基準をいわゆる「故意でない基準」に変更することを内容とした各規定の改正部分であり、各方面への周知期間、現場における施行準備等を考慮すると、施行期日を公布の日から起算して2年を超えない範囲において政令で定める日とす る旨を定めた同号の規定内容がおよそ不合理な内容のものと認めることもできない。したがって、同号の規定する期間について立法機関の裁量の逸脱又は濫用は認められず、同号の規定に基づき施行日を令和5年4月1日と定めた本件施行日政令も違憲になることはない。よって、原告の主張を採用することはできない。 ⑵ 原告は、本件で改正前特許法112条の2第1項の規定によるとしても、同項の「正当な理由」があると主張し、具体的には、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、本件弁理士の介護事業の不振や本件弁理士のうつ病 、本件で改正前特許法112条の2第1項の規定によるとしても、同項の「正当な理由」があると主張し、具体的には、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、本件弁理士の介護事業の不振や本件弁理士のうつ病のり患、悪化が生じ弁理士業務の遂行ができなかったことや、原告による新たな弁理士の選任が困難であったことなどを主張する。 しかしながら、前記感染症拡大の影響により本件弁理士に前記事由が生じたことを裏付けるに足りる的確な証拠は提出されておらず、仮に、本件弁理士がうつ病にり患し業務が困難となり、また、原告との間で、費用の清算に関し弁理士による立替払いが先行するものであったとしても、令和4年2月7日頃に本件弁理士による本件特許権の管理の不備が発覚した後、新たな弁 理士の選任や同年3月22日の本件追納期間内に納付すべき特許料等の準備を含め、原告において、相当な注意を尽くしていたにもかかわらず、客観的にみて本件追納期間内に特許料等を納付することができなかったことを裏付ける証拠は提出されていない。原告は、本件処分を取り消すことは、特許庁の新型コロナウィルス感染症に係る救済判断にも沿うなどの主張もするが、 前記のとおり、原告の主張する事由が前記感染症拡大の影響により生じたこ とを認めることは困難である。よって、原告の主張を採用することはできない。 3 小括以上によれば、原告の本件請求は、理由がない。そして、当事者の主張に鑑み、本件記録を検討しても、上記認定判断を左右するに足りる的確な主張立証 はない。 第4 結論よって,これと同旨の原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官 よって,これと同旨の原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。 主文 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官清水響 裁判官菊池絵理 裁判官頼晋一

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