主文 原判決中上告人の弁護士費用に関する請求を棄却した部分を破棄し、右部分につき本件を仙台高等裁判所に差し戻す。その余の部分に関する上告人の上告を棄却する。上告費用中前項に関するものは上告人の負担とする。理由 上告代理人土屋芳雄の上告理由一の(一)について。按ずるに、本訴は、上告人が、被上告人の被用者Dに本件物件を詐取されたと主張して、被上告人に対し右物件の時価相当額その他の損害の賠償を請求するものであるところ、原審は、挙示の証拠により、適法につぎの事実を確定している。すなわち、(イ)被上告人は、自己が金二八〇万円位の売掛金債権を有していた訴外E株式会社(以下、訴外Eという。)が倒産に頻していることを聞知し、被上告人の取締役業務部長Dを訴外Eに派遣した、(ロ)Dは、訴外Eの代表取締役Fに強く迫つて、訴外Eの目ぼしい財産の大部分を代物弁済に供することを承諾させ、さらに、Fに対し、残債権の代物弁済として、訴外Eが上告人から新たに冷暖房機を購入して提供することを求めた、(ハ)Fは、代金支払のあてもないので、一応右申入を拒否したが、Dからなおも強硬に求められ、かつは会社の倒産に困憊していたため、ついに右申入に屈服し、代金支払の意思も能力もないのに、社員に命じて、上告人の東京営業所に冷暖房機を発注させた、(ニ)上告人は、当然代金を支払つてもらえるものと誤信し、本件物件を指定の場所にトラック便で輸送したところ、着荷の電話連絡を受けた被上告人は、時を移さず、右トラックを自社に誘導して、右物件を入手し、その後これを他へ処分してしまつた、というのである。そして、かような事実関係のもとでは、被上告人において、Dがした訴外Eとの、詐欺による共同不法行為につき、上告人に対し損害賠償の責任 物件を入手し、その後これを他へ処分してしまつた、というのである。そして、かような事実関係のもとでは、被上告人において、Dがした訴外Eとの、詐欺による共同不法行為につき、上告人に対し損害賠償の責任を免れえないことは- 1 -明らかであるというべきであり、上告人が、被上告人に対し、右不法行為に基づく前示損害の賠償を求めて本訴を提起するのやむなきにいたり、弁護士に訴訟委任をし、その手数料を支払うべきことを約したとすれば、弁護士に支払うべき右手数料もまた、前記不法行為によつて生じた損害として、その相当と認められる限度で、被上告人においてこれを賠償する責任があるというべきである。 対し損害賠償の責任を免れえないことは- 1 -明らかであるというべきであり、上告人が、被上告人に対し、右不法行為に基づく前示損害の賠償を求めて本訴を提起するのやむなきにいたり、弁護士に訴訟委任をし、その手数料を支払うべきことを約したとすれば、弁護士に支払うべき右手数料もまた、前記不法行為によつて生じた損害として、その相当と認められる限度で、被上告人においてこれを賠償する責任があるというべきである。しかるに、原審が、右のように被上告人に賠償責任が生ずべきことに思を致さず、上告人の請求にかかる弁護士費用は、本件不法行為によつて生じた損害ということはできず、また、被上告人の抗争が違法不当であることについての主張も立証もないと判示したのみで、たやすく右請求を排斥したのは違法であり、右違法が原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は、理由がある。同一の(二)について。上告人は、その社員三名が、調査および善後措置のため出張した期間中の給料金七万〇九八二円を、本件不法行為による損害として請求しているが、元来、右給料は、該社員と上告人との間の雇用契約による債務の履行として支払われるものであるから、右給料の支払をもつて直ちに本件不法行為による損害ということはできない。そして、右社員らが、調査等のため他の仕事を処理できなかつたことによつて上告人に生じた損害については、主張も立証もないのである。原判決に所論の違法はなく、論旨は、採用することができない。同二について。物件を詐取されその所有権を失つたことによる損害は、特段の事情がないかぎり、詐取時における当 主張も立証もないのである。原判決に所論の違法はなく、論旨は、採用することができない。同二について。物件を詐取されその所有権を失つたことによる損害は、特段の事情がないかぎり、詐取時における当該物件の交換価格によつて定められるべきであるところ、本件において原審の確定した事実によると、本件物件の代理店への卸価額の合計は、金一五六万七〇〇〇円であつたというのである。しかし、原判決の趣旨は必ずしも明確ではないが、上告人は、訴外Eに対し、右物件を代金合計金一四九万五〇〇〇円で- 2 -売り渡したのであり、上告人が、右訴外Eとの間でしたような、右物件を目的とするこの種売買において、代金として入手する金銭は、右代金額の程度に止まるものと認められるから、上告人が、本件において、右物件を詐取されたことによる損害は、前記卸価額によらず、右代金額によつて算定すべき特段の事情がある旨を判示したものと解することができる。 、上告人は、訴外Eに対し、右物件を代金合計金一四九万五〇〇〇円で- 2 -売り渡したのであり、上告人が、右訴外Eとの間でしたような、右物件を目的とするこの種売買において、代金として入手する金銭は、右代金額の程度に止まるものと認められるから、上告人が、本件において、右物件を詐取されたことによる損害は、前記卸価額によらず、右代金額によつて算定すべき特段の事情がある旨を判示したものと解することができる。それゆえ、原判決に所論の違法はなく、論旨は、採ることができない。よつて、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官田中二郎裁判官下村三郎裁判官松本正雄裁判官飯村義美裁判官関根小郷- 3 -
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