平成24(ワ)998等 賃金等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年4月22日 大阪地方裁判所
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判決文本文26,107 文字)

平成26年4月22日判決言渡同日判決原本交付裁判所書記官本訴平成24年(ワ)第998号賃金等請求事件反訴平成24年(ワ)第8930号貸金等請求事件口頭弁論終結日平成26年2月20日判決 本訴原告(反訴被告) P (以下「原告」という。)同訴訟代理人弁護士溝呂木雄浩同近藤 弘同工藤舞子同訴訟復代理人弁護士飯塚亜矢子 本訴被告(反訴原告) 株式会社サクラエンタープライズ(以下「被告」という。) 同訴訟代理人弁護士橋本吉文同李 武哲同大塚陽介同秋山理恵同訴訟復代理人弁護士福岡隆行同金 佑樹同神山優一同二又朋之 主文 1 原告の本訴請求をいずれも棄却する。 2(1) 原告は,被告に対し,518万2000円及びこれに対する平成23年9月23日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (2) 原告は,被告に対し,219万0122円及びうち37万7100円に対する平成20年4月24日から,うち37万円に対する平成20年5月14日から,うち25万1850円に対する平成20年8月2日から,うち3万6450円に対する平成21年2月24日か 7万7100円に対する平成20年4月24日から,うち37万円に対する平成20年5月14日から,うち25万1850円に対する平成20年8月2日から,うち3万6450円に対する平成21年2月24日から,うち32万9250円に対する平成21年3月26日から,うち5250円に対する平成21年7月1日から,うち7万7222円に対する平成21年8月18日から,うち74万3000円に対する平成22年6月22日から各支払済みまで,それぞれ年5%の割合による金員を支払え。 3 被告のその余の反訴請求を棄却する。 4 訴訟費用は,本訴反訴を通じ,これを4分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 本訴請求(1)被告は,原告に対し,500万円(平成21年12月から平成22年6月まで各月20万円による合計140万円及び平成22年7月から平成23年2月まで各月45万円による合計360万円)並びに平成21年12月分から平成23年1月分までの各月の金員に対する各月26日から平成23年2月21日まで年6%の割合による各金員及び上記500万円に対する平成23年2月22日から支払済みまで年14.6%の割合による各金員を支払え。 (2)被告は,原告に対し,2000万円及びこれに対する平成23年9月14日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 反訴請求(1)原告は,被告に対し,658万2000円及びこれに対する平成23年9月23日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (2)原告は,被告に対し,219万5372円及びうち37万7100円に対する平成20年4月24日から,うち37万円に対する平成20年5月14日から,う で年5%の割合による金員を支払え。 (2)原告は,被告に対し,219万5372円及びうち37万7100円に対する平成20年4月24日から,うち37万円に対する平成20年5月14日から,うち25万1850円に対する平成20年8月2日から,うち3万6450円に対する平成21年2月24日から,うち32万9250円に対する平成21年3月26日から,うち5250円に対する平成21年7月1日から,うち7万7222円に対する平成21年8月18日から,うち5250円に対する平成22年2月4日から,うち74万3000円に対する平成22年6月22日から各支払済みまで,それぞれ年5%の割合による金員を支払え。 (3)原告は,被告に対し,1300万円及びこれに対する平成23年9月23日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)(1)当事者原告は,後記(2)のとおり,かつて被告の従業員であった者である。 被告は,交通安全施設全般及び保安用品の企画・設計・製作・販売・施工,コンピュータのネットワークを用いた情報処理サービス・ソフトウェアの開発・管理・提供・運営及び保守業務等を目的とする株式会社である。 (2)雇用契約及びその解消 ア原告は,平成19年1月ころ,被告との間で,期間の定めのない雇用契約を締結した。賃金の支払日は,遅くとも平成19年3月分以降,各月25日払とされた(賃金の額については争いがある。)。 イ原告は,被告に在職中,未来技術開発室室長の地位にあったが,被告には,原告のほかに従業員はいなかった。 ウ原告は,平成23年2月21日に被告を退職した。 (3) 特許等ア原告は,被告に勤務する前に,以下の特許に 未来技術開発室室長の地位にあったが,被告には,原告のほかに従業員はいなかった。 ウ原告は,平成23年2月21日に被告を退職した。 (3) 特許等ア原告は,被告に勤務する前に,以下の特許に係る発明をした。 (ア) 特許第3342302号(以下,この特許に係る特許権を「甲4特許権」という。)出願番号特願平8-186674号出願日平成8年6月26日公開日平成9年3月18日発明の名称立体像記録再生装置及びその方法登録日平成14年8月23日発明者原告(イ) 特許第3973724号(以下,この特許に係る特許権を「甲6特許権」という。)出願番号特願平9-62423号出願日平成9年2月28日公開日平成10年9月11日発明の名称光学結像装置登録日平成19年6月22日発明者原告イ原告は,被告に在職中,以下の(ア)及び(イ)の特許に係る発明をした。 (ア) 特許第4865088号(以下,この特許を「甲14特許」,甲14 特許に係る特許権を「甲14特許権」,その請求項に係る発明を「甲14発明」という。)出願番号特願2010-509189号出願日平成21年4月21日国際公開日平成21年10月29日優先日平成20年4月22日発明の名称光学結像方法登録日平成23年11月18日発明者被告代表者,原告【請求項1】透明平板の内部に,該透明平板の一方側の面に垂直に多数かつ帯状の平面光反射部を並べて形成した第1及び第2の光制御パネルを用い 11月18日発明者被告代表者,原告【請求項1】透明平板の内部に,該透明平板の一方側の面に垂直に多数かつ帯状の平面光反射部を並べて形成した第1及び第2の光制御パネルを用い,該第1及び第2の光制御パネルのそれぞれの一面側を,前記平面光反射部を直交させて向かい合わせた光学結像装置を用いる光学結像方法であって,前記第1の光制御パネルの平面光反射部に物体からの光を入射させ,該平面光反射部で反射した反射光を前記第2の光制御パネルの平面光反射部で再度反射させ,前記物体の像を該光学結像装置の反対側に結像させることを特徴とする光学結像方法。 【請求項2】請求項1記載の光学結像方法において,前記平面光反射部は一定のピッチで設けられていることを特徴とする光学結像方法。 【請求項3】請求項1又は2記載の光学結像方法において,前記平面光反射部は,両面反射板からなることを特徴とする光学結像方法。 【請求項4】請求項3記載の光学結像方法において,前記物体からの光は,前記第1及び第 2の光制御パネルのいずれか一方又は双方の対向する前記両面反射板を奇数回反射して,前記物体の像を結像することを特徴とする光学結像方法。 (イ) 特許第5085631号(以下,この特許を「甲11特許」,甲11特許に係る特許権を「甲11特許権」,その請求項に係る発明を「甲11発明」という。)出願番号特願2009-242789号出願日平成21年10月21日公開日平成23年5月6日発明の名称光学結像装置及びそれを用いた光学結像方法登録日平成24年9月14日発明者原告,被告代表者【請求項1】物体からの光を,第1の反射面で反射し, 明の名称光学結像装置及びそれを用いた光学結像方法登録日平成24年9月14日発明者原告,被告代表者【請求項1】物体からの光を,第1の反射面で反射し,更に該第1の反射面と対となって段違いに配置され,平面視して該第1の反射面と交差配置された第2の反射面で反射させて通過させる光反射素子を多数有する平板状の光制御パネルを備え,該光制御パネルを中心として,前記物体と面対称の位置に該物体の実像を結像する光学結像装置であって,前記光制御パネルを平面視して,該光制御パネル内に配置された前記光反射素子の前記第1の反射面と前記第2の反射面との交差角度を二等分する二等分線は,前記光制御パネル上の一点で交わることを特徴とする光学結像装置。 【請求項2】請求項1記載の光学結像装置において,前記二等分線が交わる前記一点を中心に前記光反射素子が配置されない平板状の遮光部が形成され,前記物体は,前記一点を通過し前記遮光部に垂直な垂線を中心軸とし断面を前記遮光部とする筒体内で該遮光部の一方側に配置されることを特徴とする光学結像装置。 【請求項3】 物体からの光を,第1の反射面で反射し,更に該第1の反射面と対となって段違いに配置され,平面視して該第1の反射面と交差配置された第2の反射面で反射させて通過させる光反射素子を多数有する平板状の光制御パネルを備え,該光制御パネルを中心として,前記物体と面対称の位置に該物体の実像を結像する光学結像装置であって,前記光制御パネルは,含まれる前記第1の反射面と前記第2の反射面がそれぞれ平行となって分割された複数の分割光制御パネルを有し,平面視した前記各分割光制御パネルの中心線は,前記光制御パネル上の一点で交わり,しかも,平面視して前記中心線上にある前記光反射素 反射面がそれぞれ平行となって分割された複数の分割光制御パネルを有し,平面視した前記各分割光制御パネルの中心線は,前記光制御パネル上の一点で交わり,しかも,平面視して前記中心線上にある前記光反射素子の前記第1の反射面と前記第2の反射面との交差角度を二等分する二等分線は,前記中心線に一致することを特徴とする光学結像装置。 【請求項4】請求項3記載の光学結像装置において,前記分割光制御パネルに含まれる前記第1,第2の反射面は,それぞれ第1,第2の分割透明平板の内部に,該第1,第2の分割透明平板の一方側の面に垂直に多数かつ帯状に一定のピッチで並べて形成され,多数の前記光反射素子は,該第1及び第2の分割透明平板のそれぞれの一面側を,前記第1,第2の反射面を交差させて向かい合わせに配置することにより形成されることを特徴とする光学結像装置。 【請求項5】請求項3又は4記載の光学結像装置において,前記各分割光制御パネルの中心線が交わる前記一点を中心に前記光反射素子が配置されない平板状の遮光部が形成され,前記物体は,前記一点を通過し前記遮光部に垂直な垂線を中心軸とし断面を前記遮光部とする筒体内で該遮光部の一方側に配置されることを特徴とする光学結像装置。 【請求項6】物体からの光を,第1の反射面で反射し,更に該第1の反射面と対となって段 違いに配置され,平面視して該第1の反射面と交差配置された第2の反射面で反射させて通過させる光反射素子を多数有する平板状の光制御パネルを用い,該光制御パネルを中心として,前記物体と面対称の位置に該物体の実像を結像する光学結像方法であって,前記光制御パネルを平面視して,該光制御パネルに含まれる前記光反射素子の前記第1の反射面と前記第2の反射面との交差角度を二等分する二等分線を,前記光制御パネ 像を結像する光学結像方法であって,前記光制御パネルを平面視して,該光制御パネルに含まれる前記光反射素子の前記第1の反射面と前記第2の反射面との交差角度を二等分する二等分線を,前記光制御パネル上の一点で交わらせて,前記光反射素子を通過する光の中で,前記第1の反射面及び前記第2の反射面でそれぞれ1回ずつ反射して前記光反射素子を通過する光を増加させることを特徴とする光学結像方法。 【請求項7】請求項6記載の光学結像方法において,前記二等分線が交わる前記一点を中心に前記光反射素子が配置されない平板状の遮光部を形成し,前記物体を,前記一点を通過し前記遮光部に垂直な垂線を中心軸とし断面を前記遮光部とする筒体内で該遮光部の一方側に配置することを特徴とする光学結像方法。 【請求項8】物体からの光を,第1の反射面で反射し,更に該第1の反射面と対となって段違いに配置され,平面視して該第1の反射面と交差配置された第2の反射面で反射させて通過させる光反射素子を多数有する平板状の光制御パネルを用い,該光制御パネルを中心として,前記物体と面対称の位置に該物体の実像を結像する光学結像方法であって,前記光制御パネルを,含まれる前記第1の反射面と前記第2の反射面がそれぞれ平行となる複数の分割光制御パネルに分割し,平面視した前記各分割光制御パネルの中心線を,前記光制御パネル上の一点で交わらせ,しかも,平面視して前記中心線上にある前記光反射素子の前記第1の反射面と前記第2の反射面との交差角度を二等分する二等分線を,前記中心線に一致させて,前記各分割光制御パネル内で,前記第1の反射面及び前記第2の反射面でそれぞれ1回ずつ反射させ て光を通過させる前記光反射素子に対して,該第1の反射面又は該第2の反射面で1回反射して光を通過させる該光反射素子の割 ネル内で,前記第1の反射面及び前記第2の反射面でそれぞれ1回ずつ反射させ て光を通過させる前記光反射素子に対して,該第1の反射面又は該第2の反射面で1回反射して光を通過させる該光反射素子の割合を減少させることを特徴とする光学結像方法。 【請求項9】請求項8記載の光学結像方法において,前記各分割光制御パネルの中心線が交わる前記一点を中心に前記光反射素子が配置されない平板状の遮光部を形成し,前記物体を,前記一点を通過し前記遮光部に垂直な垂線を中心軸とし断面を前記遮光部とする筒体内で該遮光部の一方側に配置することを特徴とする光学結像方法。 (ウ) 甲11発明及び甲14発明は,いずれも被告の業務範囲に属し,かつ,その従業者等の職務に属する行為により発明に至った職務発明(特許法35条)に当たり,その特許を受ける権利は,各発明後間もなく,被告に譲渡された。 ウ被告代表者は,原告の在職中,以下の特許出願をしたが,いずれも出願から3年以内に審査請求をしなかったため,上記特許出願は取下げたものとみなされた(特許法48条の3第4項)。 (ア) 特願2007-217379号(以下,その請求項に係る発明を「甲8発明」という。)出願日平成19年8月23日公開日平成21年3月12日発明の名称再帰反射素子及び再帰反射装置並びにそれを用いた再帰反射体発明者被告代表者(イ) 特願2007-217384号(以下,その請求項に係る発明を「甲9発明」という。)出願日平成19年8月23日公開日平成21年3月12日 発明の名称光制御素子及び光制御パネル並びにそれを用いた光制御装置発明者被告代表者(4)貸金ア被告は,原告に対し,以下のとおり,金銭 公開日平成21年3月12日 発明の名称光制御素子及び光制御パネル並びにそれを用いた光制御装置発明者被告代表者(4)貸金ア被告は,原告に対し,以下のとおり,金銭を貸し付けた。 平成20年 1月30日 35万円2月18日 74万7000円3月10日 57万4000円4月15日 30万円12月17日 73万4000円平成21年 6月22日 73万4000円12月29日ころ 74万3000円平成22年12月27日 100万円(これ以外の貸付金〔後記第3の4【被告の主張】〕の存否については,争いがある。)イ被告は,平成23年9月8日,原告に対し,上記アの貸付金及び後記第3の4【被告の主張】記載の貸付金につき,相当期間(民法591条)である2週間以内に支払うよう催告した。 (5)立替払金について被告は,原告が負った債務を以下のとおり立て替えて支払った。 平成20年4月23日特許料37万7100円5月13日特許料37万円8月 1日特許料25万1850円平成21年2月23日特許料3万6450円3月25日特許料32万9250円6月30日個人確定申告費用5250円 8月17日特許料7万7222円平成22年6月21日原告長男の学費74万3000円(これ以外の立替金〔後記第3の5【被告の主張】〕の存否については,争いがある。)(6)(4)及び(5)以外の被告から原告に対する金銭の交付経過 2年6月21日原告長男の学費74万3000円(これ以外の立替金〔後記第3の5【被告の主張】〕の存否については,争いがある。)(6)(4)及び(5)以外の被告から原告に対する金銭の交付経過被告は,平成19年1月から平成23年2月までの間,上記(4)及び(5)の金銭以外に,以下のとおり金銭を交付したが,このうち各月15万円は,上記(2)アの雇用契約に基づく賃金である(その余の金銭の性質については争いがある。)。 平成19年 1月から平成21年11月各月65万円平成21年12月から平成22年 6月各月45万円平成22年 7月から平成23年 2月各月20万円(7)●●●●●●●●●●●●●●●ア ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 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原告の本訴請求原告は,① 被告との雇用契約において,賃金を毎月65万円と合意したとして,被告に対し,未払賃金合計500万円(平成21年12月から平成22年6月まで各月20万円の未払賃金140万円及び平成22年7月か は,① 被告との雇用契約において,賃金を毎月65万円と合意したとして,被告に対し,未払賃金合計500万円(平成21年12月から平成22年6月まで各月20万円の未払賃金140万円及び平成22年7月から平成23年2月まで各月45万円の未払賃金360万円)並びに平成21年12月分から平成23年1月分までの各月の未払賃金に対する各支払期限の翌日である各月26日から平成23年2月21日まで商事法定利率である年6%の割合による遅延損害金及び平成21年12月から平成23年2月分までの各未払賃金に対する退職日の翌日である同月22日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律6条1項の定める年14.6%の割合による遅延損害金の支払を求めると共に,② 職 務発明である甲11発明及び甲14発明に係る特許を受ける権利を被告に承継したことに基づく相当の対価(特許法35条3項)もしくは利益分配合意に基づく分配金として2000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年9月14日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めている。 (2)被告の反訴請求被告は,① 前記1(4)及び後記第3の4【被告の主張】記載の金銭消費貸借契約に基づき,原告に対し,貸付元本合計658万2000円及びこれに対する催告で定めた相当期間である2週間経過日の翌日である平成23年9月23日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求め,② 前記1(5)及び後記第3の5【被告の主張】記載の準委任契約に基づく費用償還請求として,立替払金219万5372円及び各立替払金についてその立替払日の翌日から各支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めると共に,③ 主位的に職務発明対価に係る仮払金を精算する旨の合意に基づ 219万5372円及び各立替払金についてその立替払日の翌日から各支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めると共に,③ 主位的に職務発明対価に係る仮払金を精算する旨の合意に基づき,予備的に不当利得に基づき,仮払金として支払った1450万円の一部である1300万円及びこれに対する催告時に定めた相当期間が経過した翌日である平成23年9月23日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の返還を求めている。 3 争点(1) 本訴請求関係ア原告の賃金額 (争点1-1)イ職務発明の相当対価額及びその支払の有無 (争点1-2)ウ利益分配合意の有無 (争点1-3)(2) 反訴請求関係ア金銭貸付けの有無 (争点2-1)イ金銭立替及び委託の有無 (争点2-2) ウ仮払金精算義務の有無 (争点2-3)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(原告の賃金額)について【原告の主張】原告は,平成19年1月ころ,被告との間で雇用契約を締結するに当たり,賃金を月額65万円とする旨合意した。だからこそ,被告は,原告に対し,平成19年1月から平成21年6月までの間,毎月65万円を支払ってきたものである。 被告は,原告の賃金は月15万円であった旨主張するが,原告は平成19年1月当時52歳であり,特許を複数有する発明家で,新たな発明による特許取得を目指して被告に就職した者であることからして,そのような低額での合意はあり得ない。また,破産手続において,給与を月15万円と申告したのは,被告の経理処理に従って発行された給与明細書を提出すれば足りると考えていた上,被 した者であることからして,そのような低額での合意はあり得ない。また,破産手続において,給与を月15万円と申告したのは,被告の経理処理に従って発行された給与明細書を提出すれば足りると考えていた上,被告の経理処理と齟齬する申告により被告に迷惑をかけては申し訳ないとの気持ちがあったからである。 それにもかかわらず,被告は,平成21年12月以降,前提事実(6)のとおり,原告の賃金を平成21年12月から平成22年6月までは月45万円,平成22年7月から平成23年2月までは月20万円へと一方的に減額した。 したがって,被告は,原告に対し,これら減額分の賃金を支払うべき義務を負う。 【被告の主張】原告と被告との間で合意された賃金の額は,給与明細書及び源泉徴収票に表れているとおり月15万円である。被告は,原告に対し,前提事実(6)のとおりの金銭を支払ってきたが,賃金としての支払は月15万円であり,残りは,甲11発明及び甲14発明に係る職務発明対価仮払金(後記2【被告の主張】),原告が保有する特許権の使用料(平成20年10月から平成21年6月までの合計450万円)又は貸金(後記3【被告の主張】)として交付したものである。この ことは,原告自身,平成19年11月以降の破産手続において,給与を月額15万円と申告していることからも裏付けられる。 したがって,被告において,原告に対する賃金の未払はない。 2 争点1-2(職務発明の相当対価額及びその支払の有無,利益分配合意の有無)について【原告の主張】(1)被告の利益被告は,原告の職務発明である甲11発明及び甲14発明の実施及び甲11特許権及び甲14特許権の譲渡により,以下の利益を上げた。 ア第6回大分県ビジネスプラングランプリ優秀賞受賞に伴う補助金400万円イ平成 務発明である甲11発明及び甲14発明の実施及び甲11特許権及び甲14特許権の譲渡により,以下の利益を上げた。 ア第6回大分県ビジネスプラングランプリ優秀賞受賞に伴う補助金400万円イ平成19年2月から平成23年7月までの間,試作品開発等により6458万4520円の収入を得ているが,その粗利益は約3300万円である。 この点につき,費用として控除できるのは,研究・開発に不可欠であった費用に限定される。 ウ本件譲渡契約の対価5000万円(2)職務発明の相当対価額原告は,被告との雇用契約締結に当たり,被告代表者との間で,将来的に事業化に成功したら,その利益を2人で分配しようと約束していた。原告が被告の単なる従業員でなく,実質的経営者ともいうべき地位にあった。本件譲渡契約が締結に至ったのは原告の功績である。以上から,被告の支払うべき職務発明の相当対価額は前記(1)で述べた被告の利益額合計8700万円のうち2000万円を下らない。 (3)既払額原告が被告から前提事実(6)のとおり受領していた金銭はいずれも賃金であり,職務発明の対価として受領したものは含まれていない。 【被告の主張】(1)被告の利益ア第6回大分県ビジネスプラングランプリ優秀賞受賞に伴う補助金400万円を受領したことは認める。しかし,同補助金は,甲11発明及び甲14発明の実施品ではなく,文字通りビジネスプランに対するもので,原材料費,機械設置費等事業化に必要な経費を助成するにすぎないから,職務発明の相当対価額算定の基礎とすべき利益には当たらない。 イ平成19年2月から平成23年7月までの間,甲11発明及び甲14発明を実施した試作品開発等により6458万4520円の収入を得たのは事実だが,その開発過程では同額を上回る費用が生じており い。 イ平成19年2月から平成23年7月までの間,甲11発明及び甲14発明を実施した試作品開発等により6458万4520円の収入を得たのは事実だが,その開発過程では同額を上回る費用が生じており,利益を得る状況にはなかった。また,「試験又は研究のためにする特許発明の実施」(特許法69条1項)に該当し,特許権の効力が及ぶものではないことからも,被告による独占的利益は存在しない。 ウ本件譲渡契約は,甲11発明及び甲14発明に係る特許を受ける権利だけでなく,発明の実施に必要な設備や取引関係をも承継した上で,被告は競業避止義務を負い,原告も被告から A 社に転職するという内容で,実質的には事業譲渡というべきものであった。そのため,甲11発明及び甲14発明に係る特許を受ける権利の価値が譲渡対価5000万円の中で占める割合は相当に低かったと考えられる。 (2)職務発明の相当対価額原告が被告から受領すべき職務発明の相当対価額は,諸事情を考慮すれば,150万円を超えるものではない。 (3)既払額被告から原告に対して支払われた前提事実(6)の金銭のうち,平成19年1月から平成20年9月までの各月50万円,平成21年7月から平成22年6月までの各月30万円及び平成22年7月から平成23年2月までの各月5万円の合 計1450万円は,職務発明対価の仮払金である。 したがって,職務発明の相当対価額は既に支払済みといえる。 3 争点1-3(利益分配合意の有無)について【原告の主張】原告は,被告との雇用契約締結に当たり,被告代表者との間で,将来的に事業化に成功したら,その利益を2人で分配しようと約束をした。具体的な分配比率の定めはないが,分配前の利益は「所有権以外の財産」(民法264条)と言い得るので,原告と被告代表者の分 の間で,将来的に事業化に成功したら,その利益を2人で分配しようと約束をした。具体的な分配比率の定めはないが,分配前の利益は「所有権以外の財産」(民法264条)と言い得るので,原告と被告代表者の分配比率は1:1である。 そのため,前記2【原告の主張】記載の被告の利益からして,被告は,原告に対し,利益分配金として2000万円を支払うべきである。 【被告の主張】否認ないし争う。 4 争点2-1(金銭貸付けの有無)について【被告の主張】被告は,原告に対し,前提事実(4)の貸付けのほか,次のとおり貸し付けた。 (1)平成21年7月23日及び同年8月25日にそれぞれ20万円(合計40万円)を貸し付けた。 (2)被告が原告に対して交付した前提事実(6)の金銭のうち,平成21年7月から同年11月までに交付した各月65万円のうちの各月20万円の部分(合計100万円)は,いずれも貸付けとして交付した。 【原告の主張】平成21年7月23日及び同年8月25日の貸付けについては否認ないし不知。 また,前提事実(6)の金銭は,全て賃金として支払われたものであるから,平成21年7月から同年11月までに交付された各月65万円のうちの各月20万円の部分が貸付けであったということはない。 5 争点2-2(金銭立替及び委託の有無)について 【被告の主張】被告は,前提事実(5)の立替金のほか,平成22年2月3日,原告の確定申告に要する費用5250円を立替払いした。これらの立替払は,いずれも経済的余裕がなかった原告からの委託を受けて行ったものである。 【原告の主張】平成22年2月3日の立替払については否認ないし不知。また,委託の主張については,委託の内容が不明である。 6 争点2-3(仮払金精算義務の有無)について【被告 のである。 【原告の主張】平成22年2月3日の立替払については否認ないし不知。また,委託の主張については,委託の内容が不明である。 6 争点2-3(仮払金精算義務の有無)について【被告の主張】前記2【被告の主張】記載のとおり,被告は,平成19年1月から平成23年2月までの間に,職務発明対価の仮払金として合計1450万円を支払った(なお,平成20年10月から平成21年6月までの各月50万円は,原告が個人で有する特許権の使用料であった。)が,職務発明の相当対価額は150万円を超えるものではない。 そのため,原告は,被告に対し,主位的に仮払金の精算合意に基づき,予備的に不当利得に基づき,仮払金の精算として少なくとも1300万円(仮払金1450万円から職務発明の相当対価額が超えることのない150万円を控除した額)の返還義務を負う。 【原告の主張】仮払金精算合意の存在は否認する。 また,前記2【原告の主張】欄記載のとおり,被告が原告に対して支払うべき職務発明対価相当額は2000万円を下らない上,被告が仮払金として支払ったとする金銭は全て賃金として支払われたものであるから,仮払金の精算として返還すべき金銭はないし,また,法律上の原因を欠いた利得でもない。 第4 当裁判所の判断 1 事実経過 前提事実,証拠(甲1~21,25,乙1,2,5~9,30,31,37,39~41,44〔以上,枝番を含む。〕,原告,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1)雇用契約締結に至る経緯原告は,昭和30年生まれの男性であるが,工業大学を卒業し,企業の技術開発部門での勤務を経た後,平成13年11月,自ら会社を設立してLRP(   ,立体 和30年生まれの男性であるが,工業大学を卒業し,企業の技術開発部門での勤務を経た後,平成13年11月,自ら会社を設立してLRP(   ,立体映像空中投影パネル)の研究開発等の事業を行うに至り,その過程で得た発明につき特許出願を行ってきた。しかし,原告は,LRPの研究開発には多額の費用を要することもあって,平成16年11月以降,資金繰りに窮するようになり,平成18年12月には負債総額が1億4300万円にも昇った。そこで原告は,自社によるLRPの研究開発を断念すると共に,LRPに関心を持ち,その研究開発に必要な経済的負担が可能な企業に就職することで,LRPの研究開発とその関連特許の取得を継続していくこととした。こうして,原告は,平成19年1月ころ,被告との間で雇用契約を締結した。 (2)原告の業務内容及び金銭支払の経過等原告は,被告において未来技術開発室室長の地位に就いたが,代表取締役である被告代表者を除き,被告の従業員は原告のみで,LRP開発の技術的側面は,専ら原告が担った。原告は,当初,原告の発明によって被告が利益を上げた場合に,被告からその利益に応じた金銭が支払われることを担保するため,特許出願人を原告単独とした上,被告に専用実施権を設定する考えであったが,被告に拒まれたため,その計画は断念した。こうして,原告の被告在職中に発明されたLRP関連の職務発明である甲11発明及び甲14発明につき,その特許を受ける権利は,各発明後間もなく,被告に譲渡された。 原告は,被告へ就職するに際し,各月65万円が支給されることを希望していた。平成19年1月から平成21年11月までは各月65万円が支給されたが, 平成21年12月から平成22年6月までの支給額は各月45万円,平成22 際し,各月65万円が支給されることを希望していた。平成19年1月から平成21年11月までは各月65万円が支給されたが, 平成21年12月から平成22年6月までの支給額は各月45万円,平成22年7月から被告を退職する平成23年2月までの支給額は各月20万円であった。 ただ,これらの期間を通じ,被告から原告に交付された給与支給明細書及び源泉徴収票では,原告の給与は月15万円(年180万円)とされていた。この点,原告は,被告に就職後間もないころ,被告から各月支給額のうち月15万円を超える部分は仮払金として支払う旨の説明を受けてこれを了承したほか,平成20年10月から平成21年6月までの支給額のうち各月50万円は,原告が個人で有する特許権の使用料として支払う旨の説明を受けてこれを了承し,その旨の確定申告も行った。また,原告は,平成19年11月,自身の破産及び免責申立事件において,東京地方裁判所に対し,自身の給与を月額15万円と申告した。 (3)本件譲渡契約及び原告の退職等被告は,平成22年11月ころ,LRP事業が行き詰まりを見せたため,関連する特許権等も含めてLRP事業を譲渡するほかないとの考えに至った。こうして,被告は,平成23年2月24日,原告による事業譲渡先の探索,交渉等が功を奏したこともあり, A 社との間で本件譲渡契約を締結し,その後間もなくして,譲渡対価5000万円を受領した。 本件譲渡契約は,甲11発明及び甲14発明などに係る特許を受ける権利のみを譲渡するものではなく,被告が有する取引関係,ノウハウ,備品なども含め,LRPの事業全てを譲渡するものであり,契約書上も上記5000万円はこれら全ての譲渡への対価である旨明記された。そして, A 社がLRPの開発を継続し,これを事業として行っていくためには,原告の有 RPの事業全てを譲渡するものであり,契約書上も上記5000万円はこれら全ての譲渡への対価である旨明記された。そして, A 社がLRPの開発を継続し,これを事業として行っていくためには,原告の有する技術,ノウハウ等が不可欠であったため,本件譲渡契約では,原告が被告から A 社へ移籍することも前提とされていた。 原告は,本件譲渡契約直前の平成23年2月21日に被告を退職し,その後間もないころから現在に至るまで,技術者として A 社に勤務している。 2 争点1-1(原告の賃金額)について 原告は,被告との雇用契約締結に当たっては,賃金を月65万円とする旨合意したとし,平成19年1月以降,被告から各月65万円の給付があったのはそのためである旨主張する。 しかし,前記1(2)のとおり,被告から原告に交付された給与支払明細書及び源泉徴収票において,原告の給与は月15万円(年180万円)と記載されていた上,平成20年10月から平成21年6月までの,月15万円を超える合計450万円について,確定申告をしていた。 そうすると,原告が,被告から月15万円を超える部分は給与としてではなく,仮払金としての支払である旨の説明を受けてこれを了承し,それを前提とした申告を,破産手続や確定申告手続で行っていたと認めるのが相当である。これらの事実関係は,原告の上記主張と矛盾するといわざるを得ない。 そもそも,原告が被告へ就職する目的は,従来から行っていたLRPの研究開発を継続し,これに関する特許を取得していくことだったのであるから,原告が被告での職務に関係して受領する金銭は,雇用契約締結当時から,賃金だけでなく,職務発明対価(特許法35条3項)も想定されていたといえる。また,原告は,被告に就職した当初,特許出願人を自身とし,被告に専 告での職務に関係して受領する金銭は,雇用契約締結当時から,賃金だけでなく,職務発明対価(特許法35条3項)も想定されていたといえる。また,原告は,被告に就職した当初,特許出願人を自身とし,被告に専用実施権を設定することで,被告の獲得した利益からの給付を担保する計画であったが,この点も,原告が被告から受領する金銭として,労働の直接の代償である賃金だけでなく,自身のした発明への対価を重視していたことを裏付けている。 しかも,原告は,仮払金として給付を受けた金銭について,LRP事業が成功して被告が多額の利益を得た際に,その利益に応じて原告に支払われる金銭と相殺して精算する性質のものと理解していた(原告本人18頁)というのであるから,原告自身,賃金というより職務発明対価の一部として扱っていたと解することができる。また,原告は,各月15万円を超える金銭部分について,LRPの事業の業績によって金額が増減することを受け入れていたものともいえるが,このことも当該金銭の性質が,固定額として合意された賃金ではなく,原告の職務 発明により被告が受けるべき利益との連動性(特許法35条5項参照)が強い職務発明の対価であったことを示唆するものといえる。 以上からすれば,平成19年1月から平成23年2月にかけて,被告から原告に対して各月給付されていた金銭(前提事実(6))のうち各月15万円を超える部分について,これを賃金であったと認めることはできない。 他に原告と被告との間で原告の賃金を月65万円とする合意があったと認めるに足りる証拠はなく,未払賃金に係る原告の主張は採用できない。 3 争点1-2(職務発明の相当対価額及びその支払の有無)について原告は,職務発明である甲11発明及び甲14発明に係る特許を受ける権利を被告に承継させたことに伴う相当 告の主張は採用できない。 3 争点1-2(職務発明の相当対価額及びその支払の有無)について原告は,職務発明である甲11発明及び甲14発明に係る特許を受ける権利を被告に承継させたことに伴う相当の対価(特許法35条3項)は2000万円を下らないにもかかわらず,被告からはかかる対価の支払を一切受けていない旨主張するのに対し,被告は,同相当対価は150万円を超えるものではない上,同対価の仮払金として既に1450万円を支払ったとして争っている。 (1)職務発明対価の既払額被告は,平成19年1月から平成23年2月にかけて,原告に対して各月給付した金銭(前提事実(6))のうち各月15万円を超える部分の金銭の性質を以下のとおり,主張している。 平成19年1月から平成20年9月の各月50万円職務発明対価仮払金平成20年10月から平成21年6月の各月50万円特許権使用料平成21年7月から同年11月の各月50万円うち各月30万円は職務発明対価仮払金うち各月20万円は貸金平成21年12月から平成22年6月の各月30万円職務発明対価仮払金平成22年7月から平成23年2月の各月5万円職務発明対価仮払金このうち,被告が職務発明対価仮払金である旨主張する合計1450万円は,前記2で論じたとおり,職務発明の対価であったと認められる(被告が後日の精 算を前提としていた旨主張する点については,後記7で述べる。)。 (2)職務発明の相当対価額原告の職務発明である甲11発明及び甲14発明の相当対価額については,原告及び被告間の契約,勤務規則などでの定め(特許法35条4項)があった旨の主張立証はないため,同相当対価額は,それら発明により使用者であ 務発明である甲11発明及び甲14発明の相当対価額については,原告及び被告間の契約,勤務規則などでの定め(特許法35条4項)があった旨の主張立証はないため,同相当対価額は,それら発明により使用者である被告が受けるべき利益の額(使用者利益)から,その発明に関連して使用者である被告の負担,貢献の程度に応じた額を控除した上,同発明に関連する従業者たる原告の処遇その他の事情を考慮して定めるべきである(特許法35条5項)。 ア使用者利益使用者が職務発明に係る特許を受ける権利等を譲り受けなくとも無償の法定通常実施権を有することからすれば,職務発明の相当対価額を定めるに当たって考慮すべき使用者利益は,使用者が職務発明の実施によって得た利益の全てではなく,法定通常実施権の価値を超える特許の独占権に基づく利益(独占の利益)に限定されると解される。 (ア) 大分県からの補助金原告は,被告がLRPによって,平成21年に第6回大分県ビジネスプラングランプリで優秀賞を受賞し,大分県から補助金400万円の交付を受けた旨主張するが,大分県は,被告によるLRPの事業計画が優秀であるとし,その事業展開への補助金として400万円を交付したにすぎず(甲16~18),上記補助金が職務発明の相当対価額を定めるに際して考慮すべき独占の利益に当たらないことは明らかである。 (イ) 試作品の開発証拠(乙38の1~16)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,平成19年6月から平成23年7月にかけて,甲11発明及び甲14発明の実施品である試作品を販売し,合計6458万4520円の売上げを得たこと(本件譲渡契約後の受領が一部含まれるが,本件譲渡契約2条3項但書及び7条1項但書によれば, 本件譲渡契約締結前に締結された契約に基づく売上げと推認される。),この期間中, の売上げを得たこと(本件譲渡契約後の受領が一部含まれるが,本件譲渡契約2条3項但書及び7条1項但書によれば, 本件譲渡契約締結前に締結された契約に基づく売上げと推認される。),この期間中,被告は甲11発明及び甲14発明の実施を他社に許諾していないことが認められる。 このように職務発明を自社のみが実施する場合の独占の利益は,具体的には,現実の売上げのうち独占的実施に基づく超過売上げ(第三者に実施許諾された場合に使用者が得られたであろう仮想の売上高と,現実に使用者が得た売上高との差額に相当する。)を求め,これに仮装実施料率を乗じることで算定すべきと解される(被告は,上記試作品について,「試験又は研究のためにする特許発明の実施(特許法69条1項)」であり,特許権の効力が及ばないため,相当対価を定めるに際し,その売上げを一切考慮すべきでない旨主張するが,同条の趣旨に照らし,採用できない。)。 まず甲14特許の登録日は平成23年11月18日(補償金請求が可能となる特許出願の出願公開は平成21年10月29日),甲11特許の登録日は平成24年9月14日(特許出願の出願公開は平成23年5月6日)であり,被告による自己実施は,いずれもこれら発明の特許登録前のことであり,出願公開前の実施も含まれている。しかし,いずれの発明も,出願公開前に公知となったり,公然実施されたりしたことを認めるに足りる証拠はない上,同様の作用効果を有する代替技術の存在も証拠上認められないことを考慮すれば,独占的実施に由来する超過売上げは,売上げ全体の50%と認めるのが相当である。 一方,被告は,LRPの開発費用として合計8148万5519円を負担したため,試作品によって得た利益は一切ない旨主張するが,その費用には,被告代表者の役員報酬や本社賃料など,使用者利益の ある。 一方,被告は,LRPの開発費用として合計8148万5519円を負担したため,試作品によって得た利益は一切ない旨主張するが,その費用には,被告代表者の役員報酬や本社賃料など,使用者利益の算定に当たって控除することが明らかに不相当なものが高額に含まれており(乙45),その主張を採用することはできない。そして,原告は被告の粗利益率を約50%と主張している(訴状)が,上記売上げ6458万4520円から被告の主張立証(乙45)する材料費等3241万9059円を控除した場合の利益率も約50%であること,甲11 発明及び甲14発明と同様の作用効果を有する代替技術の存在が証拠上認められないこと,甲11発明及び甲14発明の内容自体からうかがわれる潜在的な需要も考慮すれば,仮装実施料率は10%と認めるのが相当である。 以上より,甲11発明及び甲14発明の実施品である試作品の売上げによる被告の使用者利益は,以下のとおり,322万9226円である。 〔計算式〕64,584,520×0.5×0.1=3,229,226(ウ) 譲渡代金原告は,被告が本件譲渡契約の対価として受領した5000万円は,甲11発明及び甲14発明に係る特許を受ける権利の譲渡代金であるため,使用者利益に当たる旨主張する。 この点,本件譲渡契約では,甲11発明及び甲14発明だけでなく,甲8発明及び甲9発明に係る特許を受ける権利も譲渡対象とされている。甲8発明及び甲9発明に係る特許出願に際しては,被告代表者を発明者とし,被告代表者個人が出願しているが,仮に,両発明の実質的な発明者が原告であったとしても,両発明に係る特許出願は,既に審査請求をされないままみなし取下げとなっていた上,他に本件譲渡契約の対象となる発明の具体的な主張立証はないから,特許を受ける権利に関す な発明者が原告であったとしても,両発明に係る特許出願は,既に審査請求をされないままみなし取下げとなっていた上,他に本件譲渡契約の対象となる発明の具体的な主張立証はないから,特許を受ける権利に関する限り,実質的に譲渡の対象となっていたのは,甲11発明及び甲14発明に係る権利であったといえる。 一方,本件譲渡契約は,これら特許を受ける権利のみを譲渡の対象とするものではなく,被告が有する取引関係,ノウハウ,備品なども含め,LRPの事業全てを譲渡するものであり(詳細は前提事実記載のとおり),被告はそれらへの対価として5000万円を受領したものである。しかも,本件譲渡契約では,LRP開発の技術面を専ら担い,その技術,ノウハウ等を有する原告が被告から A社へ移籍することが前提とされていた。このような事情に照らせば,本件譲渡契約において,甲11発明及び甲14発明に係る特許を受ける権利が重要な位置付けにあったことを考慮しても,5000万円の全額をこれらの特許を受ける権 利の譲渡への対価と見ることはできない。 さらに,甲11発明及び甲14発明に係る特許を受ける権利への対価部分に着目しても,そこには独占への対価のみでなく,実施権取得への対価が含まれているため,独占の利益といえる部分はさらに限定される。 これらの事情を考慮すれば,本件譲渡契約に基づく対価として被告が受領した5000万円のうち,甲11発明及び甲14発明の相当対価算定の前提となる使用者利益といえるのは,せいぜい2000万円と認めるのが相当である。 イ使用者の負担,貢献甲11発明及び甲14発明に関連して使用者である被告の行う負担,貢献を考える。 原告は,被告に就職する前から,LRPの研究開発を長年行っており,甲11発明及び甲14発明も従来の研究開発の延長上に位置 1発明及び甲14発明に関連して使用者である被告の行う負担,貢献を考える。 原告は,被告に就職する前から,LRPの研究開発を長年行っており,甲11発明及び甲14発明も従来の研究開発の延長上に位置付けられること(甲4,6,11,14),被告には被告代表者のほか,原告以外の従業員は存在せず,LRPの研究開発は専ら原告が担っていたことが認められる。 しかし,原告が自認するとおり,LRPの研究開発には多額の資金を必要とし,原告の自社事業が資金繰りに窮したのも,その研究開発継続のために被告への就職を要したのも,そのためである(甲25,原告)。原告は,自社事業として研究開発を行っていたときに比べれば,被告で使用した研究開発費用は低額であったとも供述するが,被告の資金負担なくしては研究開発を継続できない状況にあったことは否定できない。被告がLRP事業の譲渡を余儀なくされたのも,研究開発に伴う何千万円単位の経済的負担(乙45,原告,弁論の全趣旨)に耐えられなくなったためとうかがわれる。このような事情に照らせば,その研究開発過程において発明された甲11発明及び甲14発明に関連する被告の負担,貢献は決して小さいものであったとはいえず,原告の貢献度に係る上記事情を考慮してもなお,被告の使用者貢献度は90%と認めるのが相当である。 ウ職務発明の相当対価額 前記ア及びイによれば,使用者利益から使用者貢献度を控除した額は,以下のとおり,232万2922円にとどまる。 〔計算式〕(3,229,226+20,000,000)×(1-0.9)=2,322,922(1円未満切捨て)エ職務発明の相当対価額と既払額との対比以上によると,原告の賃金が,甲11発明及び甲14発明がされた前後を通じて月15万円にとどまっていたことなどの「従業者等の処遇そ 22(1円未満切捨て)エ職務発明の相当対価額と既払額との対比以上によると,原告の賃金が,甲11発明及び甲14発明がされた前後を通じて月15万円にとどまっていたことなどの「従業者等の処遇その他の事情」(特許法35条5項)を考慮しても,特許法35条5項に基づいて算定される職務発明の相当対価額が,前記(1)の職務発明対価の既払額1450万円を上回ることはないというべきである(なお,甲11発明及び甲14発明のいずれも,原告のみならず,被告代表者も発明者とされているが,これら発明への被告代表者個人の関わりについて具体的な主張立証はないため,共同発明者の貢献度を理由とする減額は行わずに計算した。)。 したがって,被告が職務発明の相当対価の支払義務を履行していないとする原告の主張は採用できない。 4 争点1-3(利益分配合意の有無)について原告は,被告との雇用契約締結に当たり,被告代表者との間で,将来的に被告のLRP事業が成功した場合,その利益を2人で分配しようと約束をした旨主張するが,自身の供述,陳述書(甲25)を除いてこれを裏付ける証拠はない。 そもそも,原告は,被告との間で雇用関係があったにとどまり,だからこそ,賃金や職務発明対価などの支払を受けていたものである。これらの支払とは別に,原告が,被告の利益に対して直接その分配を請求できる法的地位にあったとは到底いえない。仮に,原告の供述,陳述書(甲25)を前提にしても,原告が被告代表者と交わした会話というのは,LRP事業が軌道に乗り,事業全体として利益を上げるに至った場合を想定してのことであるが,実際には被告のLRP事業は行き詰まり,本件譲渡契約及びこれに基づく対価の受領も,その救済策として行われたのであるから,利益が分配されるべきとして想定していた状況と異なる こ のことであるが,実際には被告のLRP事業は行き詰まり,本件譲渡契約及びこれに基づく対価の受領も,その救済策として行われたのであるから,利益が分配されるべきとして想定していた状況と異なる ことは明らかである。 したがって,原告の主張は採用できない。 5 争点2-1(金銭貸付けの有無)について(1)被告は,原告に対し,平成21年7月23日及び同年8月25日にそれぞれ20万円を貸し付けた旨主張するが,証拠(乙12の9,乙12の10)からは,被告が平成21年7月23日に預金から100万円を引き出したこと,同年8月25日に預金から60万円を引き出したことが認められるにとどまり,各日に被告から原告に20万円の金銭が交付されたことやその返還合意が交わされたことを示す証拠は被告作成の貸付金等管理データ(乙36)や仕訳帳(乙42の1・2)のみで,これら事実を認めるに足りる証拠とはいえず,その主張は採用できない。 (2)被告は,前提事実(6)のとおり,原告に対して平成21年7月から同年11年月まで交付した各月65万円のうち,各月20万円,合計100万円は金銭貸付けであった旨主張するが,上記各金銭について,原告との間で返還合意をしたことを認めるに足りる証拠はなく,その主張は採用できない。 (3)したがって,被告の貸金返還請求は,争いのない前提事実(4)の範囲に限り,理由がある。 6 争点2-2(金銭立替及び委託の有無)について(1)被告は,前提事実(5)のとおり,原告が負担する債務合計219万0122円を立て替えて支払ったが,証拠(乙15~30,32)及び弁論の全趣旨によれば,これらはいずれも原告の委託に基づくものであったと認められる。 (2)被告は,前提事実(5)のほか,平成22年2月3日にも,原告の確定申告費用として5250円を立 ,32)及び弁論の全趣旨によれば,これらはいずれも原告の委託に基づくものであったと認められる。 (2)被告は,前提事実(5)のほか,平成22年2月3日にも,原告の確定申告費用として5250円を立て替えて支払った旨主張するが,その証拠としては公認会計士事務所から原告宛の請求書(乙31),被告作成の貸付金等管理データ(乙36)や仕訳帳(乙43)があるにとどまり,被告がこれを立替払いしたことを認めるに足りる証拠とはいえず,その主張は採用できない。 (3)したがって,被告の準委任契約に基づく立替払金の返還請求は,上記(1)の限度で理由がある。 7 争点2-3(仮払金精算義務の有無)について(1)被告は,原告に対して支払った職務発明対価の仮払金合計1450万円が,職務発明の相当対価額を上回っているため,仮払金の精算合意に基づき,その差額分が返還されるべきである旨主張する。この点,前記3で論じたところによれば,特許法35条5項に基づいて算定される職務発明の相当対価額は,上記既払額である1450万円を上回るものではない。 しかし,前記1のとおり,被告は,原告に対し,各月15万円を超える部分は仮払金として支払う旨説明し,原告もこれを了承したことが認められるが,仮払金は,会計上最終的な勘定科目や金額が確定しない支払があった場合,それらが確定するまで一時的に使用する勘定科目であるというにとどまり,仮払金名目とする旨の説明と了承があったからといって,被告の主張するような精算の合意があったことを直ちに意味するものではない。 他にそのような精算合意の存在を認めるに足りる証拠はない上,原告の賃金が各月15万円にとどまっていたことも考慮すれば,原告と被告の間で,LRP事業が大きな利益を上げ,職務発明の相当対価額が仮払金としての既払額を上回る場 の存在を認めるに足りる証拠はない上,原告の賃金が各月15万円にとどまっていたことも考慮すれば,原告と被告の間で,LRP事業が大きな利益を上げ,職務発明の相当対価額が仮払金としての既払額を上回る場合に既払の仮払金を精算処理することが想定されていたかはともかく,その逆の場合に差額分を返還する旨の合意が成立していたとはいえない。 (2)また,被告は,上記差額分が不当利得に当たるとも主張するが,前記2及び3で論じたとおり,仮払金として扱われた上記1450万円は,被告から原告に対して職務発明対価として支払われたものであるから,法律上の原因を欠くものではない(もとより,使用者が従業者に対し,特許法35条5項によって算定される額を上回る職務発明対価を支払うことが可能なのは当然であり,それが不当利得とされるべき理由はない。)。 なお,これまで論じてきたところによれば,原告は被告の一従業員ではあるが, 被告には他に従業員はおらず,原告の担う開発と発明が被告のLRP事業の中核を成すという特別な立場から,その処遇について,固定的な賃金を月15万円にとどめる一方,LRP事業の業績との連動性が強い職務発明対価としての支払部分を大きくしたと理解することが可能であり(原告が自身を実質的な共同経営者であったと主張するのは,この限りにおいて理解可能である。),そのような本件における「従業者等の処遇」(特許法35条5項)の特殊性を考慮すれば,1450万円という職務発明対価の既払額が不相当に高額なものとはいえない。 (3)以上より,仮払金精算に係る被告の主張はいずれも採用できない。 第5 結論以上の次第で,原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,被告の反訴請求は主文掲記の限度で理由があるからこれを認容し,その余の反訴請求はいずれも理由がないか 用できない。 第5 結論以上の次第で,原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,被告の反訴請求は主文掲記の限度で理由があるからこれを認容し,その余の反訴請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官松川充康及び裁判官西田昌吾は,いずれも転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官山田陽三

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