平成29年1月19日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成28年(行ウ)第24号行政文書不開示処分取消及び義務付け請求事件口頭弁論終結の日平成28年11月29日判決 兵庫県西宮市a町b-c-d 原告A 兵庫県西宮市e町f-g 被告西宮市 同代表者市長兼処分行政庁B 同訴訟代理人弁護士C 同D 同E 同F 同G 同H 同I 同J 主文 1 被告が原告に対して平成27年9月29日付けで行った「嘱託職員採用試験(政策アドバイザー)受験者名簿」のうち,小論文,面接合計,合計を開示しないとした部分を取り消す。 2 被告が原告に対して平成28年3月17日付けで行った「平成28年度職員採用試験受験者名簿(事務A)」の1,2頁目のうち,小論文,面接,3次合計を開示しないとした部分を取り消す。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 主文1,2項同旨 2 請求の趣旨の補足説明訴状における請求の趣旨は,「被告が原告に対して平成27年9月29日付けで行った「K市長の政策アドバイザーの採用計画立案及び採用決定にかかわる情報のすべて」及び平成28年3月17日付けで行った「個人名や年齢を除く平成27年度西宮市職員採用試験(筆記と面接などの各点数)とその合否結果のすべて」の不開示決定処分(部分公開)を取り消す。」となっているところ,氏名,カナ氏名,生年月日,年齢,性別,郵便番号,住所等については,「通常他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる個人 て」の不開示決定処分(部分公開)を取り消す。」となっているところ,氏名,カナ氏名,生年月日,年齢,性別,郵便番号,住所等については,「通常他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる個人に関する情報」で「特定の個人が識別されうるもの」に該当することに,実質的な争いはなく,原告は受験番号の開示は求めていない。 また,対象となる文書の範囲について,被告が主張する部分開示請求に至る経過については当事者間に争いがないこと(後記件訴訟において,裁判所から釈明を求められるに至るまで,書証として提出している「嘱託職員採用試験(政策アドバイザー)受験者名簿」及び「平成28年度職員採用試験受験者名簿(事務A)」の1,2頁目で黒塗りになった部分以外の文書を特定して開示を求める主張をしていなかったことに鑑みると,原告の請求の趣旨は上記1,2項と解される(なお,このように解しても,原告はその他の文書について別途開示を請求することが可能である。)。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,原告が,西宮市情報公開条例に基づき,処分行政庁に対し,平成27年9月15日付けで行った「K市長の政策アドバイザーの採用計画立案及び採用決定にかかわる情報のすべて」及び平成28年3月8日付けで行った「個人名や年齢を除く平成27年度西宮市職員採用試験(筆記と面接などの合計点) とその合否結果のすべて」(なお,ここでいう「平成27年度」とは,平成28年度の職員採用のために平成27年に実施された試験を指す。以下も同様。 以下,両文書を併せて「本件開示請求対象文書」という。)との開示請求に対し,処分行政庁から,「西宮市情報公開条例6条2号及び6号に該当するため(特定の個人が識別されうる情報および職員の採用試験に関する情報のため)」との理由で,平成27年9月2 いう。)との開示請求に対し,処分行政庁から,「西宮市情報公開条例6条2号及び6号に該当するため(特定の個人が識別されうる情報および職員の採用試験に関する情報のため)」との理由で,平成27年9月29日付け及び平成28年3月17日付けで本件開示請求対象文書を部分不開示とする旨の各決定(平成27西人発第37号,平成28西人発第60号。以下,両決定を併せて「本件原決定」という。)を受けたことから,本件原決定の取消しを求めている事案である。 2 西宮市情報公開条例(以下単に「条例」という。)の定め1条この条例は,市民の知る権利を尊重し,公文書の公開を請求する権利を保障することにより,市の諸活動を市民に説明する責任が全うされるようにするとともに,市民参加による開かれた市政の推進を図り,市民の市政への信頼を深め,もって市政の公正な運営の確保に努めることを目的とする。 2条この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 1号実施機関市長(中略)をいう。 3条実施機関は,市民の公文書の公開を請求する権利が適正に保障されるように,この条例を解釈し,および運用しなければならない。 6条実施機関は,公文書の公開の請求(以下「公開請求」という。)があったときは,次の各号のいずれかに該当する情報(以下「非公開情報」という。)が記録されている場合を除き,公開請求をした者(以下「請求者」という。)に対し,当該公文書を公開しなければならない。 2号通常他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる個人に関する情報で,特定の個人が識別されうるもの。ただし,事業を営 む個人の当該事業に関する情報を除く。 6号市又は国等が行う立入検査,試験,入札,交渉,渉外,争訟,人事その他の事務事業に関 関する情報で,特定の個人が識別されうるもの。ただし,事業を営 む個人の当該事業に関する情報を除く。 6号市又は国等が行う立入検査,試験,入札,交渉,渉外,争訟,人事その他の事務事業に関する情報で,公開することにより,当該事務事業又はこれと同種の事務事業の公正かつ円滑な執行に著しい支障が生じるおそれのあるもの。 7条2項実施機関は,公開請求に係る公文書の一部分に非公開情報が記録されている場合において,その部分を容易に,かつ,公開請求の趣旨を損なわない程度に分離できるときは,その部分を除いて公文書の公開をしなければならない。 8条実施機関は,公開請求に係る公文書に非公開情報(括弧内省略)が記録されている場合であっても,公益上特に必要があると認めるときは,請求者に対し,当該公文書を公開することができる。 12条2項実施機関は,次の各号のいずれかに該当するときは,公開請求に係る公文書の全部又は一部を公開する決定に先立ち,当該第三者に対し,公開請求に係る公文書の表示その他規則で定める事項を書面により通知して,意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし,当該第三者の所在が判明しない場合は,この限りでない。 2号第三者に関する情報が記録されている公文書を第8条の規定により公開しようとするとき。 3 前提事実(争いのない事実,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 嘱託職員採用試験(政策アドバイザー)被告は,平成27年2月頃,市の政策立案に関する業務(「ブランドマネジメント」の手法検討や,まち・ひと・しごと創生法に基づく「地方人口ビジョン」および「地方版総合戦略」策定にかかる調査,分析業務など)にかかわる政策アドバイザーの募集を行ったところ,6名の応募者があり,同月 28日に ・ひと・しごと創生法に基づく「地方人口ビジョン」および「地方版総合戦略」策定にかかる調査,分析業務など)にかかわる政策アドバイザーの募集を行ったところ,6名の応募者があり,同月 28日に筆記試験(小論文)及び面接試験が行われた。面接試験では,「都市部の自治体におけるマーケティング戦略に関して,重要なポイントや有効と考える手法などについて体系的に述べてください。」とのテーマで,15分のプレゼンテーションを行うよう指定されていた。 同試験の結果,1名が政策アドバイザーとして採用された。 (甲3,8,9,乙1)(2) 平成28年度西宮市職員採用試験被告は,平成27年7月から同年10月にかけて,平成28年度の職員採用試験として,1次試験(個人面接,筆記試験(SPIと教養・専門試験の選択制)),2次試験(集団面接)及び3次試験(適性検査,小論文,個人面接)を行った。同試験の募集要項において,1次試験の点数は2次試験でリセットされ,2次試験の点数は3次試験でリセットされるため,最終合格者は3次試験の結果のみで決定されるものとされている。 被告は,不合格者に対して,試験結果通知において各受験者に順位と得点を伝えている。 (甲4,乙2,弁論の全趣旨)(3) 本件原決定に至る経緯ア原告は,平成27年9月15日,処分行政庁に対し,「K市長の政策アドバイザーの採用計画立案及び採用決定にかかわる情報のすべて」の開示請求(以下「本件開示請求1」という。)をした。 本件開示請求1の対象となる文書は,行政戦略課の保存に係るものと人事課の保存に係るものとに分けられるものであった。そこで,処分行政庁は,原告に対し,被告の行政戦略課で保存する決裁文書の全てを公開する旨決定し,公開した。また,被告の人事課で保存する,「嘱託職員採用試験(政策 係るものとに分けられるものであった。そこで,処分行政庁は,原告に対し,被告の行政戦略課で保存する決裁文書の全てを公開する旨決定し,公開した。また,被告の人事課で保存する,「嘱託職員採用試験(政策アドバイザー)受験者名簿」(甲3,以下「政策アドバイザー受験者名簿」という。)を含む,政策アドバイザーの採用に関する決裁文書 について,平成27年9月29日付けで,受験番号,小論文と面接の各結果(「小論文」及び「面接合計」欄),合計点数(「合計」欄),氏名,カナ氏名,生年月日,年齢,性別,郵便番号及び住所は,「西宮市情報公開条例6条2号及び6号に該当するため(特定の個人が識別されうる情報および職員の採用試験に関する情報のため)」との理由で同部分を不開示とし,その他を開示する旨の部分開示決定(以下「本件原決定1」という。)をし,上記理由が記載された本件原決定1に係る通知書は,同年10月2日,原告に送付された(甲1,弁論の全趣旨)。 開示された事項は,受験番号,出欠,順位,小論文,面接合計,合計,判定,氏名,カナ氏名,生年月日,年齢,性別,郵便番号,住所のうち,出欠,順位及び判定(合格・不合格)である。 イ原告は,平成28年3月8日,被告に対し,個人名や年齢を除く平成28年度西宮市職員採用試験(筆記と面接などの合計点)とその合否結果のすべての開示請求(以下「本件開示請求2」という。)をした。 本件開示請求2を受け,被告の人事課は原告に対し,電話で「平成28年度職員採用試験受験者名簿(事務A)」(甲4,以下「職員採用試験受験者名簿」という。)の項目を示して,この一覧表であれば部分公開できると教示したところ,原告は本件開示請求2で公開を求める公文書を同文書と特定し,さらに,3次判定で合格とされた者(40名)が記載された職員採用試験名簿 の項目を示して,この一覧表であれば部分公開できると教示したところ,原告は本件開示請求2で公開を求める公文書を同文書と特定し,さらに,3次判定で合格とされた者(40名)が記載された職員採用試験名簿の1,2頁目のみを公開することに合意した。 処分行政庁は,原告に対し,平成28年3月17日付けで,受験番号,漢字氏名,生年月日,年齢,性別,学校名,学部,卒業年,見込,住所,小論文と面接の各結果(「小論文」及び「面接」欄),3次合計点数(「3次合計」欄)は,「西宮市情報公開条例6条2号及び6号に該当するため(特定の個人が識別されうる情報および職員の採用試験に関する情報のため)」との理由で同部分を不開示とする旨の部分開示決定(以下「本件原 決定2」という。)をし,上記理由が記載された本件原決定2に係る通知書は,その頃原告に送付された(甲2,弁論の全趣旨)。 開示された事項は,職員採用試験受験者名簿(1,2頁目)の3次判定(合格・不合格),3次席次(順位),受験番号,漢字氏名,生年月日,年齢,性別,学校名,学部,卒業年,見込,住所,小論文,面接,3次合計のうち,3次判定及び3次席次である。 ウ原告は,平成28年3月31日,本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著な事実)。 4 争点及び当事者の主張(1) 本件開示請求対象文書の条例6条2号該当性【被告の主張】政策アドバイザー受験者名簿(甲3)及び職員採用試験受験者名簿(甲4)に記載されている採用試験結果に関する各受験者の情報は,独立した一体的な情報として「通常他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる個人に関する情報」に該当し,条例6条2号に該当するため,全部公開することはできない。 また,実施機関は,採用試験結果に関する各受験者の情報を細分化して部分公開する義務 とが正当であると認められる個人に関する情報」に該当し,条例6条2号に該当するため,全部公開することはできない。 また,実施機関は,採用試験結果に関する各受験者の情報を細分化して部分公開する義務はないが,政策アドバイザー受験者名簿については出欠,順位及び判定のみ,職員採用試験受験者名簿については3次判定,3次席次のみであれば,公開できると判断した。 政策アドバイザー受験者名簿のうち氏名,カナ氏名,生年月日,年齢,性別,郵便番号,住所,職員採用試験受験者名簿のうち漢字氏名,生年月日,年齢,性別,学校名,学部,卒業年,見込,住所は,それ自体が「通常他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる個人に関する情報」で「特定の個人が識別されうるもの」であるため,非公開とした。 点数(政策アドバイザー受験者名簿では小論文,面接合計,合計。職員採 用試験受験者名簿では小論文,面接,3次合計)の部分については,「通常他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる個人に関する情報」に該当するが,当該情報だけから個人を識別することは通常できない。 しかし,条例6条2号の趣旨である個人のプライバシー保護との観点からは,点数も保護されるべき個人情報に該当するため,非公開とした。また,政策アドバイザー採用試験は,受験者が6名で合格者が1名という特殊な事情があり,合格者を特定することは容易であるから,合格者の点数は「通常他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる個人に関する情報」で「特定の個人が識別されうるもの」に該当する。 【原告の主張】本件開示請求対象文書に記載されている情報は,個人識別性のある部分を除けば個人の権益を害することはなく,原則として開示可能な部分は開示すべきである。 個人名や年齢以外の試験成績の開示 告の主張】本件開示請求対象文書に記載されている情報は,個人識別性のある部分を除けば個人の権益を害することはなく,原則として開示可能な部分は開示すべきである。 個人名や年齢以外の試験成績の開示は,個人のプライバシーを侵害することにはならない。試験選考過程が公正に行われたかどうかを検証するには,個人を特定できる部分を除く情報の公開は必要である。 (2) 本件開示請求対象文書の条例6条6号該当性【被告の主張】本件開示請求対象文書の点数の部分は,今後の受験者への影響,被告の採用方針が推測されたり誤解されたりすることによる被告の採用担当者への影響も大きく,次年度以降の採用試験の事務に著しい支障を及ぼす恐れがあり,市が行う試験及び人事に関する情報で,「公開することにより,公正かつ円滑な執行に著しい支障が生じるおそれ」があるから,条例6条6号にも該当する。 ア採用事務における今後の受験者への影響受験者は,仲良くなった受験者等の第三者に,採用試験の合否や順位は 教えるが,点数は伝えていないものと思われる。原告がしたような情報公開請求をすることで,被告が受験者全員の点数を公開することとなると,受験者の順位を知ることができた第三者は,受験者の点数を知ることが可能となる。これにより受験者数が減少することが想定される。 年度毎で必ずしも同じ基準で採用試験が実施されていないにもかかわらず,点数だけを捉えて,被告の年度毎の点数を分析し,年度毎の受験者の傾向や優劣を公開する者が現れた場合,このようなことを嫌う受験予定者が被告の採用試験の受験を回避する可能性がある。 イ採用事務における被告の採用方針が推測されたり,誤解されたりすることによる被告採用担当者への影響当該年度の試験結果で,合格者も不合格者も小論文の点数の違いが殆どなか 回避する可能性がある。 イ採用事務における被告の採用方針が推測されたり,誤解されたりすることによる被告採用担当者への影響当該年度の試験結果で,合格者も不合格者も小論文の点数の違いが殆どなかった場合,面接だけを重視しているとの誤解により,小論文の得意な受験者が採用試験を回避する可能性もある。また,小論文の点数が著しく低い者が合格していた場合,面接に自信のある受験者が小論文の試験において手を抜く等の事態が想定され,受験者の正確な能力を測ることが難しくなるおそれがある。このような受験者の対応の偏りが生じることを踏まえて採用方針を検討することは,被告の採用担当者に困難を強いる恐れがあり,採用試験業務の公正かつ円滑な執行に著しい支障が生ずる。 被告の職員採用試験の受験者数は多く,数点足りず不合格という受験者が多数存在することになり,全体の採用結果を見た受験者は,その数点の差についての基準や合否判定の過程について様々な憶測や誤解が生じ,いらぬ混乱を招いてしまう可能性が非常に高い。また不合格者から試験実施担当課へ個別的・主観的な意見等を多数寄せられることが想定され,事務が著しく増加し,採用試験業務の公正かつ円滑な執行に著しい支障が生じるおそれがある。 ウ採用後の人事への影響 被告では,職員採用試験の合格者に順位を通知しないこととしているが,これが公開されることとなれば,自身の順位を知ることができ,配置や人事異動に関して先入観を持たれかねず,本人の意欲やキャリアに支障をきたすおそれがあるし,組織内でも疑念を生み,事務執行上支障をきたす状況に繋がるおそれもある。 エその他の事情人事側が点数等を一般に公開することは,受験者への信頼を損なうものであり,採用試験の適正な執行に支障を来す。 被告は,平成27年度実施の採用試験 す状況に繋がるおそれもある。 エその他の事情人事側が点数等を一般に公開することは,受験者への信頼を損なうものであり,採用試験の適正な執行に支障を来す。 被告は,平成27年度実施の採用試験から,民間企業でも用いられているSPIによる試験区分を設け,受験者を増やし,優秀で多様な人材の確保に努めているため,他市の採用試験に流れる事態は避けなければならない。 なお,平成27年度国家公務員採用総合試験について受験者の総合点が公開されているが,これは国家公務員法に定める採用候補者名簿に登載された情報の一部で,関係者に閲覧に供されることを前提として作成されており,被告の職員採用試験と異なる。また,他の地方公共団体で試験成績を公開すると回答したのは43市中13市に過ぎず,各地方公共団体により採用や人事行政に関する考え方は異なり,被告において公開すべきことの根拠にはならない。 【原告の主張】愛知県や人事院における試験では,平均点,面接方法,公正の担保に関しての記載がある。 また,職員採用試験の受験生は自ら民間で出回っている試験合格セット等で試験対策を入念に行っており,受験に悪影響を与えることは考えにくい。 また,被告は,優秀な人材を採用したいと主張するが,被告の職員採用試験受験者が平成27年度より減少しているのは,被告が人気他都市との併願を 避けるべく人気他都市と試験日を同じにしたことにより,人気他都市を落ちた優秀な人材を採用し損ねており,主張と矛盾する。 (3) 条例8条による公開【被告の主張】条例8条は,非公開情報の規定により保護される利益と当該情報を公開することの公益上の必要性を比較衡量し,公開することの公益上の必要性が優越すると実施機関が判断した場合に裁量的公開を行うことができることを定めたものであるが,条 により保護される利益と当該情報を公開することの公益上の必要性を比較衡量し,公開することの公益上の必要性が優越すると実施機関が判断した場合に裁量的公開を行うことができることを定めたものであるが,条例6条2号の個人情報については慎重に取り扱うべきであり,また条例12条2項2号では権利利益を害される第三者からの事前聴取が義務付けられている。 実施機関の長が同条の規定に基づいて公開しなかったことが違法となるのは,与えられた裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したと認められる場合に限られるところ,本件では西宮市議会での政策アドバイザー採用の選考過程に関する一般質問があったことをもって,裁量の逸脱又は濫用があったとみることはできない。 【原告の主張】本件では,政策アドバイザー採用について,西宮市議会での一般質問で,公募選考過程における疑念があると指摘されており,条例8条にいう,公益上特に必要があると認められる場合に該当するから,裁量的公開をすべきである。 第3 当裁判所の判断 (1) 条例6条2号は,通常他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる個人に関する情報で,特定の個人が識別されうるものは,非公開情報と定められているところ,同号ただし書において,「事業を営む個人の当該事業に関する情報」が除外されている以外には,文言上何ら限定されてい ないから,個人の思想,信条,健康状態,所得,学歴,家族構成,住所等の私事に関する情報に限定されるものではなく,個人にかかわりのある情報であれば,原則として同号にいう「個人に関する情報」に当たると解するのが相当である(大阪市公文書公開条例に係る最高裁平成15年11月11日第三小法廷判決・民集57巻10号1387頁参照)。 また,同号の趣旨は,条例の目的(1条)と個人のプライ 報」に当たると解するのが相当である(大阪市公文書公開条例に係る最高裁平成15年11月11日第三小法廷判決・民集57巻10号1387頁参照)。 また,同号の趣旨は,条例の目的(1条)と個人のプライバシーの保護との調整を図る点にあり(手引き〔甲10・24頁〕),特定の個人が識別されうるかは,その情報だけでは特定の個人を識別することはできないが,他の情報と比較的容易に関連付けることができ,これにより,間接的に特定の個人を識別することができる場合を含む趣旨と解される。そして,照合の対象となる他の情報については,原則公開とする条例の目的からすると,特別の手段や開示対象となる公文書に関わり合いのある者が入手し得る情報についてまでもこれに含めるべきではなく,通常の手段や方法により入手し得る情報によって,特定の個人を識別しうる蓋然性が認められるものをいうものと解される。 通常他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報とは,社会通念に照らして,個人に関する情報のうち,性質上公開に親しまないような個人情報をいうものと解される(最高裁平成6年1月27日第一小法廷判決・民集48巻1号53頁参照)。 (2) 本件開示請求対象文書の条例6条2号該当性ア政策アドバイザー受験者名簿の小論文,面接合計,合計政策アドバイザー試験の受験者にとって,小論文,面接合計及び合計といった試験の点数(以下「政策アドバイザー試験点数情報」という。)は,私事に関する情報ではないが,個人にかかわりのある情報である。また,政策アドバイザーの受験者が6名であり,うち1名が採用されていること 政策アドバイザー試験点数情報は,特定の個人が識別されうる情報といえる。しかし,不合格者の政策アドバイザー試験点数情報は,通常の手段や方法により入手し得る情報によっ が採用されていること 政策アドバイザー試験点数情報は,特定の個人が識別されうる情報といえる。しかし,不合格者の政策アドバイザー試験点数情報は,通常の手段や方法により入手し得る情報によって,特定の個人を識別しうるとはいえない。 また,政策アドバイザー試験は,「ブランドマネジメント」の手法検討といった,非定型かつ専門性を要求される業務であるところ,これに対応してマーケティング戦略等に関するテーマでのプレゼンテーションをする面接試験といった,一律の評価が困難な点数を開示したからといって,その点数の有する意味を判定することはできず,合格者にとって政策アドバイザー試験点数情報が,社会通念上公開を欲しない事柄であるとまでいえない。 よって,政策アドバイザー試験点数情報は,条例6条2号にいう非公開情報に該当するとはいえず,被告の主張は採用できない。 イ職員採用試験受験者名簿の小論文,面接,3次合計職員採用試験の合格者にとって,小論文,面接,3次合計といった試験の点数(以下「職員採用試験点数情報」という。)も,個人にかかわりのある情報である。しかし,西宮市の職員のうち,平成28年度の職員採用試験の合格者40名がいずれの職員であるかは必ずしも判別せず,通常の手段や方法により入手し得る情報によって,特定の個人を識別しうると認めるに足りない。この点,被告は,受験者間で順位を教え合うことを前提に,点数を公開することにより各受験者の点数を知ることができると主張するが,受験者間で順位を教え合うことが常態とはいえない。 また,3次試験の小論文及び面接について,採点基準が開示されない以上,点数を開示したからといって,その点数の有する意味を判定することはできず,合格者にとって職員採用試験点数情報が,社会通念上公開を欲しない事柄であるとまでいえ 接について,採点基準が開示されない以上,点数を開示したからといって,その点数の有する意味を判定することはできず,合格者にとって職員採用試験点数情報が,社会通念上公開を欲しない事柄であるとまでいえない。 よって,職員採用試験点数情報は,条例6条2号にいう非公開情報に該当するとはいえず,被告の主張は採用できない。 (1) 条例6条6号は,市又は国等が行う試験,人事その他の事務事業に関する情報で,公開することにより,当該事務事業又はこれと同種の事務事業の公正かつ円滑な執行に著しい支障が生じるおそれのあるものを非公開情報としている。同号の趣旨は,事務事業の公正かつ円滑な執行を確保する点にあり,このような趣旨と条例の目的との比較衡量が必要となることから,非開示情報の範囲についての判断には,実施機関に一定の裁量が認められるものではある。もっとも,本件条例が知る権利の具体化を図るものであり(1条),本件条例の解釈・運用に当たっては,市民の公文書の公開を請求する権利が適正に保障されるべく(3条),原則公開の精神に立って適正に行うべきとされていること(手引き〔甲10・19頁〕),同号が単に当該事務事業の執行に支障が生じるおそれがある場合ではなく,そのおそれが著しいものであることを要していること等に照らせば,同号該当性の判断においては,開示により得られる利益と開示により損なわれる利益を比較衡量した上で,開示した場合に当該事務事業の適正な遂行に具体的・実質的な支障が生じるおそれがあり,そのおそれの程度も単なる可能性ではなく,法的保護に値する蓋然性を要すると解すべきである。 (2) 本件開示請求対象文書の条例6条6号該当性ア職員採用試験点数情報職員採用試験点数情報は,市が行う試験に関する情報には該当する。以下では,「公開 る蓋然性を要すると解すべきである。 (2) 本件開示請求対象文書の条例6条6号該当性ア職員採用試験点数情報職員採用試験点数情報は,市が行う試験に関する情報には該当する。以下では,「公開することにより,公正かつ円滑な執行に著しい支障が生じるおそれ」があるといえるかにつき,被告の主張を検討する。 (ア) 採用事務における今後の受験者への影響受験者間で順位を教え合うことが常態とはいえない イ判示のとおりである。また,被告の教養試験について予想問題の発行がされていることはうかがえる(甲17)ものの,それ以上に,被告における採用試験の分析等が毎年度行われている実態があることを認めるに足りる証拠はなく,その他に職員採用試験点数情報の開示によって被告の採用試験の受験者数が減少する効果があることを想定させる具体的事情はうかがえない。 (イ) 採用事務における被告の採用方針が推測されたり,誤解されたりすることによる被告採用担当者への影響受験者は,年度毎に試験が異なる以上,合格判定に至る小論文と面接の採点基準,またこれに伴って点数が異なることも,一般に理解していると考えられる。そのため,職員採用試験点数情報の開示により,当該年度の小論文または面接のいずれかが合否判定により大きい影響を与えたことが判明したとしても,次の年度で同様の傾向が続くとは限らず,いずれかの準備を軽視するといった受験者の対応に偏りが生じることは,通常想定しがたく,被告の主張は採用できない。 他方,不合格者と合格者の点数差が少ないことが判明した場合等,自身の点数と照らし合わせた不合格者が,基準や採点方法について,試験実施担当課に問い合わせ等を行うことは考えられ,また受験者数も一定数に上ると想定されることから,同課の事務に支障が生じることは想定されうる。 と照らし合わせた不合格者が,基準や採点方法について,試験実施担当課に問い合わせ等を行うことは考えられ,また受験者数も一定数に上ると想定されることから,同課の事務に支障が生じることは想定されうる。 (ウ) 採用後の人事への影響条例6条6号にいう「当該事務事業」とは,本件では試験に関する事務事業を指すと解されるところ,被告が影響を受けると主張する人事は,そもそも試験に関する事務事業に該当しない。仮に,被告の主張が,人事への影響がひいては試験の執行に支障を及ぼすという趣旨も含むとしても,合格者の順位については,受験番号が開示されなければ,受験者 個人と職員採用試験点数情報を結びつけることはできず,職員採用試験の合格者ことは困難である。また,合格者の順位は,実務に従事する前段階での順位に過ぎず,人事配置は行政需要や職員の能力育成といった複合的観点から決められるものであり,合格者の順位で決まるというような単純なものとは一般的に考えられていない。したがって,被告の指摘する採用後の人事への影響は,その前提を欠く。 (エ) その他の事情受験者個人と点数が結びつけられない以上,職員採用試験点数情報の開示により,受験者の信頼を損なうとはいえない。その他,職員採用試験点数情報の開示によって,受験予定者が他市の採用試験に流れるおそれがあることをうかがわせる事情も認められない。 また,被告の職員採用試験点数情報が,国家公務員試験と異なり関係者に閲覧に供されることを前提として作成されていないことや,職員採用試験結果について情報公開請求があった際に,開示に応じないと回答する他の地方公共団体の理由(甲20,21)を踏まえても,当該事務事業の適正な遂行に具体的・実質的な支障が生じる法的保護に値する蓋然性を有したおそれがあるとはいえない。 際に,開示に応じないと回答する他の地方公共団体の理由(甲20,21)を踏まえても,当該事務事業の適正な遂行に具体的・実質的な支障が生じる法的保護に値する蓋然性を有したおそれがあるとはいえない。 (オ) 以上検討したところによれば,被告が職員採用試験点数情報を開示することにより当該事務事業の執行に支障を及ぼす事項のうち,3次試験の受験者数も200名程度と少なくなく,不合格者からの試験実施担当課への問合せが寄せられることにより,同課の事務が一定程度増加する可能性は否定できない。しかしながら,被告の職員採用試験において,試験受験者からの問合せが毎年多数寄せられているなどといった事情を認めるに足りる証拠はない。また,被告は当該試験の不合格者には個別に点数を通知しており,3次試験の不合格者は,自己の点数の通知によ ってひとまず職員採用試験における自身の評価を把握することができるから,受験生からの当該試験に係る問合せ等が同課の事務事業を逼迫するほど多数寄せられるといった事情が生じるとは考えにくい。そうすると,被告が主張する職員採用試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれにつき,法的に保護に値するほどの蓋然性があるということはできないというべきである。 したがって,職員採用試験点数情報は条例6条6号に該当するとはいえず,被告の上記主張は採用できない。 イ政策アドバイザー試験点数情報政策アドバイザー試験点数情報は,市が行う試験に関する情報には該当するところ,同情報を公開することにより,被告の政策アドバイザー試験又はこれと同種の事務事業の公正かつ円滑な執行に著しい支障が生じるおそれがあるかについて検討する。 被告は,政策アドバイザー試験点数情報についても,職員採用試験受験者名簿と同様,採用事務における今後の受験者への影響,採用事務 正かつ円滑な執行に著しい支障が生じるおそれがあるかについて検討する。 被告は,政策アドバイザー試験点数情報についても,職員採用試験受験者名簿と同様,採用事務における今後の受験者への影響,採用事務における被告の採用方針が推測されたり,誤解されたりすることによる被告採用担当者への影響等を主張するものと解される。 しかしながら,政策アドバイザー試験においても,受験者間で順位を教え合うことが常態化しているとは認めるに足りないし,その採点基準,評価方法が公開されているというような事情も認められず,論文,面接試験及びこれらの合計点数が開示されたところで,政策アドバイザー試験の採点方法等が容易に推察されるというような事情も認められない。また,既に説示した()とおり,当該受験者個人を識別することができないものであれば,同点数情報部分について,社会通念上公開を欲しない事柄とまでは認められないのであるから,政策アドバイザー試験点数情報を開示することにより,受験者の信頼を害し,今後の政策アドバイザー試験な いし同試験と同種の試験の受験予定者が受験を回避する事態が生じるおそれは,認め難い。したがって,被告の主張する政策アドバイザー試験点数情報の開示により生じる同試験及び同種の試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれにつき,法的に保護に値する程度の蓋然性があるということはできない。 したがって,政策アドバイザー試験点数情報は条例6条6号に該当せず,被告の上記主張は採用できない。 3 よって,政策アドバイザー受験者名簿のうち小論文,面接合計,合計欄を,職員採用試験受験者名簿のうち小論文,面接,3次合計欄を,それぞれ部分不開示とした本件原決定は違法である。 なお,被告は,本件開示請求対象文書に記載されている各受験者の試験結果に関する情報は,独立 職員採用試験受験者名簿のうち小論文,面接,3次合計欄を,それぞれ部分不開示とした本件原決定は違法である。 なお,被告は,本件開示請求対象文書に記載されている各受験者の試験結果に関する情報は,独立した一体的な情報である旨主張する。 しかし,本件開示請求対象文書は,いずれも,受験番号,氏名,生年月日,住所等の個人情報と,各個人の成績情報,順位及び合否判定情報で構成されているところ,このうち,成績,順位及び合否判定情報について見れば,どのような成績を修めどの順位の者が合格したかが判るのであり,個人情報を除いた情報にも独立の意味があるものといえ,本件開示請求対象文書に記載されている情報は,必ずしも一体的な情報とはいえない。 よって,個人情報以外の情報についても,独立に公開対象情報として,条例6条により原則として開示を求められるものといえる。 第4 結論以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容することとして,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官山口浩司 裁判官吉田祈代 裁判官鈴木美智子
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