- 1 -主文 被告は,原告P1に対し金63万9350円,同P2に対し金108万7470円,同P3に対し金53万3550円及びこれらに対し各平成16年6月18日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 原告P4,同P5,同P6,同P7,同P8,同P9の被告に対する各請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告P1,同P2,同P3と被告との間に生じたものは被告の負担とし,原告P4,同P5,同P6,同P7,同P8,同P9と被告との間に生じたものは前記原告P4ら6名の負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 被告は,原告P4に対し,金162万6030円及びこれに対する平成16年6月18日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 被告は,原告P5に対し,金417万0470円及びこれに対する平成16年6月18日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 被告は,原告P6に対し,金417万9520円及びこれに対する平成16年6月18日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 被告は,原告P7に対し,金178万3330円及びこれに対する平成16年6月18日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 被告は,原告P8に対し,金109万8310円及びこれに対する平成16年6月18日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 被告は,原告P9に対し,金25万1380円及びこれに対する平成16年6月18日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 主文第1項と同旨第2事案の概要本件は,被告の従業員であった原告らが,被告に対し,同社を退職したとして同社の退職金規程に基づき退職金の支払を求めたところ,被告は,原告らに よる金員を支払え。 主文第1項と同旨第2事案の概要本件は,被告の従業員であった原告らが,被告に対し,同社を退職したとして同社の退職金規程に基づき退職金の支払を求めたところ,被告は,原告らには退職金規程に規定する退職金不支給条項に該当する事由があったなどとして退職金の支払を拒否している事案である。 争いのない事実等(証拠等で認定した事実は当該証拠等を文末に掲記し,当事者間に争いのない事実は証拠等を掲記しない)(1)当事者等ア被告等被告は,各種音響設備の設計・施工及び管理業等を業としており,カラオケ設備の販売とレンタルを中心業務としている会社である。 訴外キャンシステム株式会社(以下「キャン社」という)は,有線音楽放送事業等を業とする会社である。被告とキャン社は,代表取締役も同一であり,両社間における人事異動も会社内部における人事異動のように相互に行われており,両者は関連会社である(弁論の全趣旨)。 - 2 -イ原告ら(ア)原告P4原告P4は,昭和63年7月12日,被告に入社し,平成15年7月当時,被告新宿支店で営業に従事しており,当時の基本給は月額18万69,(,00円であり給与の支払日は毎月20日締切28日支払であったなお給与の支払日は,残りの原告らも同一であるので,記載を省略する。 )(イ)原告P5原告P5は,昭和51年3月29日,キャン社の前身である株式会社日本音楽放送(以下「日音放送」という)に入社し,同59年3月21日,,,。 被告に転籍し平成15年7月当時被告新宿支店で営業に従事していた原告P5の平成15年7月当時の基本給は月額21万2000円であった。 (ウ)原告P6原告P6は,昭和52年10月26日,キャン社の前身である日音放送に入社し,同55年3月26日,被告に転籍し,平 告P5の平成15年7月当時の基本給は月額21万2000円であった。 (ウ)原告P6原告P6は,昭和52年10月26日,キャン社の前身である日音放送に入社し,同55年3月26日,被告に転籍し,平成15年7月当時,被告新宿支店の支店長の地位にあった。原告P6の平成15年7月当時の基本給は月額28万2400円であった(甲27,原告P6【1頁,弁論の全趣。 】旨)(エ)原告P7原告P7は,昭和61年11月26日,被告に入社し,平成15年7月当時,被告新宿支店で営業に従事しており,当時の基本給は月額18万0700円であった。 (オ)原告P8原告P8は,平成4年12月28日,被告に入社し,同7年7月に被告千葉支店長に,同10年7月に被告新宿支店統括支店長(新宿支店・千葉支店・水戸支店を管掌)に昇進し,同12年7月には被告本社営業部の営業部長に任命され,同15年7月当時も同じ地位にあった。原告P8の平成15年7月当時の基本給は月額22万1700円であった(甲26,。 原告P8【1頁)】(カ)原告P9,,,,原告P9は平成10年6月15日被告に入社し同15年7月当時被告新宿支店で営業に従事しており,当時の基本給は月額16万2700円であった。 (キ)原告P1原告P1は,平成5年8月20日,キャン社に入社し,同9年ころ被告に転籍し,同15年10月当時,被告千葉支店で営業に従事しており,当時の基本給は月額13万4600円であった(甲30,弁論の全趣旨。 )(ク)原告P2原告P2は,平成2年12月10日,被告に入社し,同15年10月当時,被告千葉支店の支店長の地位にあったものであり,当時の基本給は月- 3 -額17万1200円であった。 (ケ)原告P3原告P3は,平成8年3月1日,被告に入社し,同15年10月当時 10月当時,被告千葉支店の支店長の地位にあったものであり,当時の基本給は月- 3 -額17万1200円であった。 (ケ)原告P3原告P3は,平成8年3月1日,被告に入社し,同15年10月当時,被告大阪支店の支店長の地位にあったものであり,当時の基本給は月額18万8200円であった。 (2)原告らの退職の意思表示と被告の懲戒解雇の意思表示ア退職の意思表示(ア)原告P4,同P5,同P6,同P7,同P8,同P9(以下,6名を併「」),,,せて原告P8ら6名というは平成15年7月14日被告に対し同日付の書面で被告を退職するとの書面を送付し,同月16日ころ,被告に到達した(甲19ないし25,証人P10【21頁。 】)(イ)原告P2,同P1は,平成15年10月3日ころ,被告に対し,同月20日をもって退職する旨の書面を送付し翌4日ころ被告に到達した甲,,(29,30,32,33,乙39,40,原告P2【1頁,弁論の全趣】旨。 )(ウ)原告P3は,平成15年10月1日ころ,被告に対し,同月20日をもって退職する旨の書面を送付し,翌2日ころ,被告に到達した(甲31,乙41,弁論の全趣旨,以下,原告P1,同P2,同P3の3名を併せて「原告P2ら3名」という。 )イ原告P8ら6名に対する懲戒解雇通知(ア)被告は,平成15年7月16日付書面で,原告P8及び同P6に対し,同月17日付で懲戒解雇するとともに,退職金については懲戒解雇のため支給除外するとの意思表示をし,同書面は,同月17日ころ,原告P8及びP6に到達した(乙3の3及び5,弁論の全趣旨。 )(イ)被告は,平成15年7月23日付書面で,原告P4,同P5,同P7,同P9ら4名に対し,同月25日付で懲戒解雇するとともに,退職金については懲戒解 到達した(乙3の3及び5,弁論の全趣旨。 )(イ)被告は,平成15年7月23日付書面で,原告P4,同P5,同P7,同P9ら4名に対し,同月25日付で懲戒解雇するとともに,退職金については懲戒解雇のため支給除外するとの意思表示をし,同書面は,同月25日ころ,前記原告P4ら4名に到達した(乙3の1,2,4,6,弁論の全趣旨,以下,被告の原告P8ら6名に対する懲戒解雇を「本件懲戒解雇」という。 )(3)被告及びキャン社の就業規則,退職金規程ア就業規則(ア)被告被告の就業規則の主な内容は,次のとおりである(乙1。 )(退職)第13条従業員が次の各号の一に該当するときは退職とし,従業員としての身分を失う。 1. 退職を願い出て,これを承認された時。 2ないし4. 省略(退職手続)- 4 -第14条(1)従業員が退職するときは原則として1ヶ月前(役職者は2ヶ月前)に会社に申し出て,その承認を受けなければならない。 (2)従業員は退職が認められた場合,退職日までは業務に従事しなければならない。 (3)退職が決定した者は,すみやかに後任者との間に業務の引き継ぎを行わなければならない。 (4)前項の引き継ぎ,及び手続きをなさずして退職した場合は,退職金の減額,もしくは支給しないことがある。 (服務の基本原則)第18条従業員はこの規律に定めるものの他,業務上の指示命令に従い自己の業務に専念し,作業能率の向上に努力すると共に,協力して職場の秩序を維持しなければならない。 (退職金)第38条別に定める退職金規程による。 (懲戒解雇)第45条次の各号の一に該当する場合には,懲戒解雇とする。 1. 上長の指示命令を無視し,又は上長に反抗し,あるいは職場を放棄し,社内の秩序を乱した者。 2. 業務上の秘密を洩らしたり又は,洩ら 第45条 次の各号の一に該当する場合には,懲戒解雇とする。 1. 上長の指示命令を無視し,又は上長に反抗し,あるいは職場を放棄し,社内の秩序を乱した者。 2. 業務上の秘密を洩らしたり又は,洩らそうとした事が明らかになった者。 3. 省略 5. 職務を利用し不当に私利を得,又は私利を得ようとした者。 6. 省略 7. 故意又は,重大な過失により会社に対し甚だしい損害を加えもしくは会社又は,従業員の名誉を著しく傷つけた者。 8. 刑罰・法規にふれる行為,又は刑の確定した者。 9. 省略 10. 前各号に準ずる行為のあった者。 第55条 この規則は昭和61年5月1日より実施する。 (イ)キャン社,(,)。 キャン社の就業規則の主な内容は次のとおりである甲35乙50(服務の原則)第8条社員は,この規則及び職務上の指示・命令に従い専心業務に従事し,作業能率の向上に努力すると共に,協力して職場の秩序を維持しなければならない。 (退職)第22条 社員が次のいずれかに該当する場合には退職とし,社員としての身分を失う。 1. 退職を願い提出し,それが許可されたとき。 - 2ないし7.省略 (退職願)第23条 社員が退職を希望する場合においては少なくとも1ヶ月前役,(職者は2ヶ月前)に申し出なければならない。但し,職種・職務により業務の引き継ぎに1ヶ月以上の期間を要する場合には2ヶ月前とする。 (退職金の支給)第30条 社員が退職するときは,別に定める「退職金規程」により退職金を支払う。 (懲戒の方法)第58条 懲戒はその情状により次の区分に従って行う。 1ないし6.省略 7. 懲戒解雇省略 (懲戒事由)第59条 社員が次の各号の1つに該当するときは懲戒する。 1. 労働義務の不完全履行の場合ア.服務規律に違反したとき 次の区分に従って行う。 1ないし6. 省略 7. 懲戒解雇省略(懲戒事由) 第59条社員が次の各号の1つに該当するときは懲戒する。 1.労働義務の不完全履行の場合 ア.服務規律に違反したとき イないしオ.省略 2.職場秩序を乱す場合 ア.省略 イ.就業規則又は他の諸規則に違反したとき。 ウないしサ.省略 3.会社財産を侵害する場合 アないしウ.省略 4.不正行為を行う場合 アないしウ.省略 5.前各号に準ずる程度の不都合な行為があったとき。 第74条この規則は平成14年4月1日より施行する。 イ退職金規程(ア)被告被告の退職金規程の主な内容は,次のとおりである(乙2。) 第2条退職金は別表に掲げる退職金支給計算式により算出し支給する。 第4条勤続年数は入社第一日より起算し,退職の日までとする。 第6条(1)次の各号の一に該当する場合は退職金を支給しない。 1.勤続満3年未満の者。 2.懲戒解雇された者。 (2)退職に際して,その手続き及び業務の完全なる引き継ぎ(ママ)をなさずして退職した場合には,退職金の減額若しくは支給しないことがある。 第7条退職金の支給は,退職月の翌月の給与の支払日に支給するものとする。但し,会社の都合により分割支給することがある。 第11条関連会社に転籍し,または関連会社より転籍した場合の勤続年数,退職金の計算及びその支給については次の通りとする。 1.勤続年数関連会社より転籍した従業員については,転籍前の関連会社における在職年数を通算する。 2.転出省略 3.転入省略 (別表)退職金支給算式 年数乗率 入社3年未満0.4 入社5年以上10年未満0.5 入社10年以上15年未満0.6 入社15年以上20年未満0.7 入社 入省略(別表) 退職金支給算式年数乗率 入社3年未満 入社3年以上5年未満0.4 入社5年以上10年未満0.5 入社10年以上15年未満0.6 入社15年以上20年未満0.7 入社20年以上0.8 月年数 0.09 0.17 0.25 0.34 0.42 0.50 0.59 0.67 0.75 0.84 0.92 1.00 【退職金の支給算式】 支給退職金額=退職時基本給+退職時基本給×乗率×勤続年数-4 ①勤続年数における月額は,X÷12として年数に換算する。 ②年数換算において,小数点は第3位を切り上げ,第2位迄とする。 ③勤続年数において,1ヶ月に満たない日数はすべて1ヶ月とする。 ④算出金額は10円単位とし,10円未満は全て切り上げとする。 ⑤勤続年数3年以上4年未満については基本給の1ヶ月とする。 ⑥勤続年数,満4年以上は上記支給算式による。 (イ)キャン社 キャン社の退職金規程の主な内容は,次のとおりである(甲17)。 第6条(算出方法) 退職金は,別表の退職金支給算式により算出支給する。 第7条(支給事由) 退職金は,社員が満3年以上勤務し,次の各号の一に該当し,退職するとき支給する。 1.自己の都合により退職したとき 2ないし6.省略 第8条(退職金の支給除外) 退職金は,次の各号の一に該当する場合は支給しない。 1.勤続3年未満の者 2.懲戒解雇された者 3.懲戒解雇に相当する行為があった場合 第9条(支給制限) 退職に際して,次の事項及び就業規則の遵守義務を怠った場合は,退職金の減額もしくは支給をしないことがある。 1.本人の故意過失により就業規則に定める諭旨退職に該当する場合は50%以上の減額を行う。 2.退職後 項及び就業規則の遵守義務を怠った場合は,退職金の減額もしくは支給をしないことがある。 1.本人の故意過失により就業規則に定める諭旨退職に該当する場合は50%以上の減額を行う。 . ,。 2退職後同業他社へ転職した場合には退職金を通常の半額とする3.退職手続をなさずして退職した場合4.業務の完全なる引継ぎをなさずして退職した場合5.就業規則の遵法義務に違反した場合6.その他前各号に準ずる行為のあった場合第10条(支払方法及び時期)1.省略2.退職金の支払は,退職月の翌々月10日に支給する。 3.4.省略第16条(転籍者の取扱い)系列会社に転籍し,又は,系列会社より転籍した場合の勤続年数,退職金の計算及びその支給方法については,次の通りとする。 1.勤続年数は,系列会社より転籍した社員については,転籍前の系列会社における勤続年数を通算する。 2.系列会社に転籍した場合は,原則として転籍時には退職金を支給せず,転籍後の系列会社を退職する時点において転籍後の系列会社にて支給する。 3ないし6.省略(別表)退職金の支給算式は,次の通りとする。 【算式】支給退職金額=退職時基本給+{退職時基本給×乗率×(勤続年数-4})①勤続年数における月数は,年数換算とし,⑧表の内容とする。 【算式】勤続年数=勤続端数月÷12(小数点以下は第3位切上げて小(ママ)- 8 -数点以下第2位まで)②勤続年数において,1ヶ月に満たない日数は全て1ヶ月とする。 ③算出金額は10円単位とし,10円未満は全て切上げとする。 ④勤続年数3年以上4年未満については,基本給の1ヶ月分とする。 ⑤勤続年数4年以上は,上記支給退職金額の支給算式による。 ⑥他社へ転籍の3年未満者については,転籍時基本給×在籍月数÷36とする。 ⑦乗率勤続年数乗率勤続4 は,基本給の1ヶ月分とする。 ⑤勤続年数4年以上は,上記支給退職金額の支給算式による。 ⑥他社へ転籍の3年未満者については,転籍時基本給×在籍月数÷36とする。 ⑦乗率勤続年数乗率勤続4年未満 勤続4年以上5年未満0.4勤続5年以上10年未満0.5勤続10年以上15年未満0.6勤続15年以上20年未満0.7勤続20年以上0.8⑧月数の年数換算勤続月数年数換算1カ月0.092カ月0.173カ月0.254カ月0.345カ月0.426カ月0.507カ月0.598カ月0.679カ月0.7510カ月0.8411カ月0.9212カ月1.00(4)原告らの退職金額原告らが,被告退職金規程第6条に規定する退職金不支給条項(以下「本件退職金不支給条項」という)に該当する事由がなく退職したと仮定した場合の退職金額は,前記(3)イ(ア)に従って算出すると,次のとおりとなる。 ア原告P4163万7810円(原告P4は162万6030円の限度で請求)イ原告P5417万0470円ウ原告P6417万9520円エ原告P7178万3330円オ原告P8109万8310円()カ原告P925万7880円原告P9は25万1380円の限度で請求- 9 -キ原告P163万9350円ク原告P2108万7470円ケ原告P353万3550円(5)原告らと被告との間の争い原告らは,被告に対し,退職金の支払を請求した。被告は,原告P8ら6名に対し,懲戒解雇したあるいは懲戒解雇事由・本件退職金不支給条項に該当する事由が存在するとして退職金の支払を拒絶している。また,被告は,原告P2ら3名に対しても,懲戒解雇事由・本件退職金不支給条項に該当する事由が存在すると は懲戒解雇事由・本件退職金不支給条項に該当する事由が存在するとして退職金の支払を拒絶している。また,被告は,原告P2ら3名に対しても,懲戒解雇事由・本件退職金不支給条項に該当する事由が存在するとして,退職金の支払を拒絶している。 争点 (1)退職の意思表示の時期(争点1)について【原告ら】ア原告P8ら6名のうち原告P8を除く5名は,平成15年7月10日夜,直属の上司であった被告本社営業部長であった原告P8に対し,翌11日付けで被告を退職する旨の意思表示をした。 イ原告P8は,平成15年7月11日,被告水戸支店長P11,同仙台支店長P12,同札幌支店長P13(以下,3支店長を併せて「P11ら3支店長」という)に対し,同日付けで被告を退職する旨の意思表示をし,その旨を被告本社に伝えるよう依頼した。P11ら3支店長は,平成15年7月11日,被告本社に対し,原告P8が退職することを伝えた。 ウ前記ア,イが理由がないとしても,原告P8ら6名は,平成15年7月14日ころ,被告に対し,書面で退職する旨の意思表示をし,同書面は,翌15日ころ,被告に到達した。 エ原告P2,同P1は,平成15年10月3日ころ,被告に対し,同月20日をもって退職する旨の書面を送付し,翌4日ころ,被告に到達した。 オ原告P3は,平成15年10月1日ころ,被告に対し,同月20日をもって退職する旨の書面を送付し,翌2日ころ,被告に到達した。 【被告】ア【原告ら】の主張アは不知。原告P8は,平成15年7月10日夜当時,被告を退職する状態にあったのであるから,そのような者に,退職の意思表示をしても,何ら効力はない。 イ【原告ら】の主張イのうち,原告P8がP11ら3支店長と会い,被告を退職するとの意思を明らかにしたことは認めるが,その余は否認する。 ウ【原告ら】の ,退職の意思表示をしても,何ら効力はない。 イ【原告ら】の主張イのうち,原告P8がP11ら3支店長と会い,被告を退職するとの意思を明らかにしたことは認めるが,その余は否認する。 ウ【原告ら】の主張ウのうち,原告ら6名の退職届が被告に到達したことは認める。 エ【原告ら】の主張エのうち,退職届が平成15年10月4日ころ被告に到達したことは否認し,その余は認める。退職届の到達日時は平成15年10月6日である。 オ【原告ら】の主張オは認める。 (2)本件退職金不支給条項の適用の成否について- 10 -ア当事者双方の主張の要旨(),「,,ア被告の退職金規程第6条によれば懲戒解雇された者退職に際して」,その手続き及び業務の完全なる引き継ぎをなさずして退職した場合には(ママ)退職者に対し,退職金を支給しない旨の本件退職金不支給条項の規定が存在する。そして,被告の就業規則第45条によれば「上長の指示命令を,無視し,又は上長に反抗し,あるいは職場を放棄し,社内の秩序を乱した者」等を懲戒解雇とする旨の規定が存在する。そこで,被告は,原告P8ら6名に対しては,就業規則第45条に該当する事由が存在したので本件懲戒解雇したとして前記退職金規程6条の懲戒解雇された者に該当するので,退職金を支払う義務はないと主張する。また,被告は,原告P2ら3名に対しては,本件退職金不支給条項に該当する事由(退職時の引継不履行)等が存在するので,退職金を支払う義務はないと主張する。 (イ)これに対し,原告らは,被告の退職金規程及び就業規則は,いずれも従業員に実質的に周知されておらず,効力がなく,したがって,被告の退職金規程,就業規則に基づく,本件懲戒解雇処分,退職金不支給はいずれも法的根拠を欠き理由がないと主張する。また,本件退職金不支給 も従業員に実質的に周知されておらず,効力がなく,したがって,被告の退職金規程,就業規則に基づく,本件懲戒解雇処分,退職金不支給はいずれも法的根拠を欠き理由がないと主張する。また,本件退職金不支給条項は,少なくとも,原告P5,同P6との間ではいわゆる就業規則の不利益変更として許されないと主張する。仮に,被告の退職金規程及び就業規則が法,,。 ,的効力を有していたとしても原告らは次のとおり主張するすなわち原告P8ら6名には懲戒解雇事由がなく,仮にあったとしても,本件懲戒解雇は懲戒解雇権の濫用として許されない。また,原告らには,本件退職金不支給条項に該当する事由はなく,仮にあったとしても当該事由は原告らのそれまでの功を抹消してしまうほどの著しく信義に反するものではなく,当該事由を理由に退職金を支給しないことは許されないと主張する。 (),,,ウ以上の原告らの主張に対し被告は被告の退職金規程及び就業規則はいずれも従業員に対し実質的に周知されており,法的効力があり,また,本件退職金不支給条項は原告らがいずれも入社する以前から存在する規定であり,いわゆる就業規則の不利益変更に当たらないと主張する。また,被告は,原告らの行為は懲戒解雇事由,本件退職金不支給条項に該当する事由であり,原告P8ら6名に対する本件懲戒解雇は有効であり,懲戒解雇権濫用の事実などないと主張する。また,被告は,原告らの行為は,それまでの功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為であり,退職金を支給しないことには正当な理由が存在すると主張する。 (エ)以下,当事者双方の主張の要旨を,論点ごとに分説して,整理すると下記イのとおりとなる。 イ各論点ごとの当事者双方の主張の要旨(ア)退職金規程,就業規則の有効性について(争点2)【原告】a就 以下,当事者双方の主張の要旨を,論点ごとに分説して,整理すると下記イのとおりとなる。 イ各論点ごとの当事者双方の主張の要旨(ア)退職金規程,就業規則の有効性について(争点2)【原告】a就業規則(退職金規程を含む,本争点では,以下同じ)が効力を有するためには,①従業員代表の意見聴取(労基法90条,②監督官庁への届)- 11 -出(同法89条,③従業員への周知(同法106条)の履践がされてい)なければならない。 bこれを本件についてみるに,被告の就業規則には労働基準監督署の押印がないことからも明らかなとおり,前記①②の要件を履践していない。また,被告の就業規則は,原告らの勤務していた被告本社,同新宿支店,同千葉支店,同大阪支店に備え付けておらず,実質的周知の措置はとられていない。 cところで,被告は,被告の従業員は,退職金支給の有無やその支給要件についてキャン社の就業規則を通じて,これと同一内容である被告の就業規則を把握することが十分にできたのであり,このことから被告の就業規則の実質的な周知性は満たされていたと主張する。しかし,被告の就業規則は,キャン社の就業規則とは,その内容が異なるものであるから,被告の就業規則について実質的な周知性が満たされていたことにはならない。 ことに,本件で問題となっている本件退職金不支給条項,懲戒解雇事由の規定については形式面のみならず,具体的内容も異なっている。 【被告】a就業規則が効力を有するためには,従業員代表の意見聴取や監督官庁への届出は要件ではなく,従業員に対し実質的な周知,換言すれば,従業員の大半が就業規則の内容を知り,または知ることのできる状態に置かれていれば足りる。 ,,,,bこれを本件についてみるに被告においては以下のとおり被告本社同新宿支店,同千葉支店,同 従業員の大半が就業規則の内容を知り,または知ることのできる状態に置かれていれば足りる。 ,,,,bこれを本件についてみるに被告においては以下のとおり被告本社同新宿支店,同千葉支店,同大阪支店とも,従業員に対する周知の措置が取られていたことは明らかである。 ①被告はキャン社の関連会社であり,両社の従業員は転籍という形で相互に異動することが日常的に行われており,退職金算定の基礎となる勤続年数も通算されており,また,被告の労務管理もキャン社の総務部がこれを担当していた。このように,両社は労務・人事上密接な関係にあり,人事を円滑に行うためには労働条件に関しては可能な限り統一する必要があったことから,就業規則については両社同一の内容であった。 そして,原告らを含む被告の従業員も同様の認識であった。 ②前記①のとおり,被告とキャン社の就業規則が同一内容である以上,被告においてキャン社で使用されていた就業規則が備えられ,使用されていたとしても,それは就業規則の表紙の社名の記載の違いに過ぎず,当該就業規則はあくまで被告の就業規則として使用され,被告の従業員に対し法的効力を有していたというべきである。以上の観点から,就業規則の周知性の有無について,被告本社及び各支店ごとにみてみると,次の③ないし⑤のとおりである。 ③被告本社及び同新宿支店被告本社及び同新宿支店は,形式的には別部署であるが,同一フロア内にあり,仕切りもなく,実質的に見て同一の事業所であった。 - 12 -被告本社営業部長である原告P8は,キャン社から就業規則の送付を受け,これを自己の机の中に保管していた。したがって,原告P8は,就業規則をいつでも閲覧することができた。また,原告P8ら6名のうち原告,,P8を除く5名は被告新宿支店の従業員であるところ従業員である以上 を自己の机の中に保管していた。したがって,原告P8は,就業規則をいつでも閲覧することができた。また,原告P8ら6名のうち原告,,P8を除く5名は被告新宿支店の従業員であるところ従業員である以上会社の就業規則の存在は認識しておくべきであるし,就業規則の内容を知りたいと思えば,上司である原告P8に申し出ることによって就業規則を閲覧することが十分に可能であった。 以上のとおり,原告P8ら6名は,いずれも就業規則の内容を知りたいと思えば知り得たという点で,被告の就業規則は実質的な周知性は備えていたというべきである。 ④被告千葉支店被告千葉支店では,被告の就業規則は黒い背表紙のファイルに入れて支店の書棚に置かれており,書棚には鍵はかかっていなかったため,支店の従業員はこれをいつでも見ることができた。 ⑤被告大阪支店被告大阪支店では,就業規則は事務用の書棚にファイルされて置かれており,同支店の従業員はいつでもこれを閲覧することができた。 (イ)退職金規程の不利益変更-原告P5,同P6関係(争点3)【原告P5,同P6】被告の退職金規程は昭和61年5月1日より実施されているところ,それ以前に被告に入社した原告P5,同P6に対しては,本件退職金不支給条項はいわゆる就業規則の不利益変更に当たり,同人らに適用することは許されない。 【被告】被告は昭和45年4月1日に設立されたが,設立当初は退職金支給制度はなかった。昭和52年ころ,キャン社の前身である日音放送で退職金支給制度が創設されたのをきっかけに,被告においても同一の内容の退職金支給制。 ,,度が設けられたその際退職金の支給条件と共に支給除外事由も定められその中に懲戒解雇された場合及び退職手続や業務引継ぎをしないで退職した場合も含まれていた。したがって,本件退職金不支給条項の内容は, 度が設けられたその際退職金の支給条件と共に支給除外事由も定められその中に懲戒解雇された場合及び退職手続や業務引継ぎをしないで退職した場合も含まれていた。したがって,本件退職金不支給条項の内容は,現行規定と原告P5,同P6が被告に入社時の規定との間で差異はない。 よって,原告P5,同P6のいわゆる就業規則が不利益の主張は理由がない。なお,原告P5,同P6以外の原告らは,現行の就業規則,退職金規程が実施されて後の入社であり,いわゆる就業規則の不利益変更を問題にする余地はないことはいうまでもない。 (ウ)懲戒解雇事由の存否-対原告P8ら6名に対する関係(争点4)【被告】a原告P8ら6名及び訴外P14,同P15,同P16,同P17は,被告本社営業部と新宿支店に勤務する2名の技術職を除く全員であるが,原告P8主導のもと,全員が共謀の上,引継ぎなどの退職手続をあえて無視- 13 -し,その手続をとることなく,平成15年7月11日に突然職場を一斉に放棄し,被告本社営業部及び同新宿支店を機能麻痺に陥れた。 b原告P8ら6名は,前記職場を放棄する直前,被告の在庫商品を被告新宿支店から無断で持ち出したほか,同新宿支店のパソコンに入っていた顧,,客データ等を消去し被告が直接顧客を把握することが困難な状況に乗じ平成15年7月23日まで被告の顧客のメンテナンスを行うなどして,被告が直接原告P8ら6名の担当する顧客と接触する機会を遅らせ,担当する顧客を自らの転職先へ引き継ぐ布石とした。 cその結果,被告全社の25.3パーセントの売上げを占める被告新宿支店の売上げを,直前の安定していた売上げのレベルから一挙に60パーセ,,,,,ント台に激減させその結果その年の秋被告千葉支店同名古屋支店同大阪支店を,平成16年4月には残りの全支店を の売上げを,直前の安定していた売上げのレベルから一挙に60パーセ,,,,,ント台に激減させその結果その年の秋被告千葉支店同名古屋支店同大阪支店を,平成16年4月には残りの全支店をいずれも同業者である株式会社タイトー(以下「タイトー社」という)に売却して営業を廃止せざるを得ない状況に陥らせ,被告を実質廃業に追い込んだ。 d原告P8ら6名の前記行為は,就業規則第18条に定める服務原則である「従業員はこの規律に定めるものの外,業務上の指示命令に従い自己の業務に専念し,作業能率の向上に努力すると共に,協力して職場の秩序を維持しなければならない」との規定に反し,第45条1項(職場放棄,社内秩序の攪乱,同条2号(業務上の秘密の漏洩,同条5号(職務を利用))した図利行為,同条7号(故意・過失による会社への加害行為,同条8))号(刑罰法規に触れる行為,同条10号(44条に定める制裁事由に準)ずる行為)などに定める懲戒事由に該当する。 eそこで,前記争いのない事実等(2)イのとおり,被告は,原告P8ら6名を懲戒解雇する旨の意思表示をした。 【原告P8ら6名】【】,,a被告の主張aのうち原告P8ら6名が平成15年7月11日以降被告の仕事をしていないことは認めるが,その余は争う。前記(1【原)告ら】主張のア,イで述べたとおり,原告P8ら6名は平成15年7月11日までには被告に対し退職の意思表示をしており,それ以後,被告に出。 ,,社しなくても無断欠勤・就労放棄とはならないまた原告P8ら6名は平成15年7月15日から同月22日ころまでの間,毎日,被告本社営業,(「」部長代行同新宿支店長代行に就任したP10以下P10支店長代行という)と逐一連絡をとりながら,被告の顧客へのメンテナンスを行っていた。し 月22日ころまでの間,毎日,被告本社営業,(「」部長代行同新宿支店長代行に就任したP10以下P10支店長代行という)と逐一連絡をとりながら,被告の顧客へのメンテナンスを行っていた。したがって,原告P8ら6名は,実質的には被告において就労しており就労放棄には当たらず,また,実質的に業務引継を行っていたと同視することができる。 b【被告】の主張bのうち,原告P6が,被告の在庫商品を持ち出したほか,被告新宿支店のパソコンに入っていた顧客データを消去したことは認めるが,その余は争う。 原告P6が,被告の在庫商品を持ち出したのは,被告の顧客へのメンテ- 14 -ナンスのためであり,平成15年7月21日,被告に対し,メンテナンスで使用したものを除き,返還した。また,原告P6が,被告の顧客データを消去したのは,被告新宿支店の事務所が無人になるため,安全のために行ったものであり,平成15年7月21日,全て復元した。 c【被告】の主張cは不知ないし争う。 d【被告】の主張dは争う。 e【被告】の主張eは認める。なお,被告の原告P8ら6名に対する本件懲戒解雇の通知は,キャン社の就業規則等に基づいてされており,手続的にも瑕疵があり,無効である。 (エ)懲戒解雇権濫用の存否-対原告P8ら6名に対し(争点5)【原告P8ら6名】原告P8ら6名に懲戒解雇事由が存在したと仮定しても,次の事情等を考慮すれば,本件懲戒解雇は懲戒解雇権濫用として許されない。 a原告P8ら6名は,退職届を提出した後も,平成15年7月15日ころから同月22日ころまでの間,毎日,被告のP10支店長代行と逐一連絡をとりながら,被告の業務引継ぎ,特に被告の顧客へのメンテナンスを行った。 b原告P8ら6名は,平成15年7月15日ころから同月22日ころまでの間被告の顧客を同 ,被告のP10支店長代行と逐一連絡をとりながら,被告の業務引継ぎ,特に被告の顧客へのメンテナンスを行った。 b原告P8ら6名は,平成15年7月15日ころから同月22日ころまでの間被告の顧客を同人らが入社した訴外日本ネットワークヴィジョン以,(下「NNV社」という)に切り替えることなどしていない。 【被告】被告の原告P8ら6名に対する懲戒解雇事由は前記(ウ【被告】の主張)の項で述べたとおりであり,これによれば,懲戒解雇権濫用の事実は存在しないことが明らかである。 (オ)退職金不支給事由の存否(争点6)a原告P8ら6名に対し【被告】①懲戒解雇前記(ウ(エ【被告】主張のとおり,本件懲戒解雇は有効である。 ))②引継事務の不履行原告P8ら6名は,退職に際し,業務引継を一切行っていない。 【原告P8ら6名】①本件懲戒解雇が無効であることは,前記(ウ(エ【原告P8ら6名】))主張のとおりである。 ②【被告】の主張①は争う。原告P8ら6名は,平成15年7月15日から同月22日ころまでの間,毎日,被告のP10支店長代行と逐一連絡をとりながら被告の顧客へのメンテナンスを行っていたものであり,実質的には業務引継を行っていたと同視することができる。 b原告P2ら3名に対し-引継事務の不履行【被告】- 15 -原告P2ら3名は,閉鎖が決定された被告千葉支店,同大阪支店に勤務していた者であるが,1人でも多くの顧客を円滑に譲渡先であるタイトー社に移転させなければならない立場におかれながら,その引継ぎをあえてしなかった。これにより,被告からタイトー社への顧客の移転を妨げ,移転できた顧客の数で代金が決まる被告の収入を激減させ,莫大な損失を与えた。 よって,原告P2ら3名には本件退職金不支給条項に該当する事由が存在する。 【原告 被告からタイトー社への顧客の移転を妨げ,移転できた顧客の数で代金が決まる被告の収入を激減させ,莫大な損失を与えた。 よって,原告P2ら3名には本件退職金不支給条項に該当する事由が存在する。 【原告P2ら3名】①【被告】の主張のうち,原告P2ら3名が閉鎖が決定された被告千葉支店,同大阪支店に勤務していたこと,原告P2ら3名が被告の顧客をタイトー社に移転しなければならない業務上の地位にあったことは認めるが,その余は争う。 ②原告P2ら3名は,退職届を提出後,被告に対し,業務引継に関する具,。 ,体的な指示を要請したが被告からは何ら具体的指示がなかったよって原告P2ら3名には,退職に際し,引継の不履行はなかった。ちなみに,被告千葉支店長であった原告P2は,退職の2日前ころ,同仙台支店長であったP12(以下「仙台支店長P12」という)に対し,同千葉支店の引き継ぎを行った。 カそれまでの功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為の存否争()(点7)【原告ら】退職金が,賃金の後払いの性格を有している場合においては,退職金の不支給条項は,従業員のそれまでの勤続の功を抹消ないし減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為があった場合に限り適用すべきであり,そのような場合でないときには,これを適用することができないと解するのが相当である。以上の観点から,原告らの行為をみると,次のとおりである。 a原告P8ら6名について原告P8ら6名については,次の事情を考慮すると,それまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為はなく,被告は,本件退職金不支給条項を適用することができない。 ①退職金の性格被告における退職金支給方法の規定の仕方は,基本給に勤続年数に応じて定めた支給基準率を乗じて算出するという方法であり,賃金の後 告は,本件退職金不支給条項を適用することができない。 ①退職金の性格被告における退職金支給方法の規定の仕方は,基本給に勤続年数に応じて定めた支給基準率を乗じて算出するという方法であり,賃金の後払いの性格しか有していない。 ②被告の顧客へのメンテナンス原告P8ら6名は,退職届を提出した後も,平成15年7月15日ころから同月22日ころまでの間,毎日,被告のP10支店長代行らと逐一連絡をとりながら,被告の業務引継ぎ,特に被告の顧客へのメンテナンスを無料で行っていた。 ③被告の在庫商品等の持ち出し行為- 16 -原告P6が被告の在庫商品を持ち出したのは,被告の顧客へのメンテナンスのためであり,平成15年7月21日ころ,被告に対し,メンテナンスで使用したものを除き全て返却した。 ④データ消去行為原告P6が被告新宿支店のパソコンのデータを一時消去したのは,同支店の事務所が無人となることから安全のために行ったものであり,平成15年7月21日ころ,全て復元した。また,原告P8ら6名は,被告新宿支店のパソコン内にあった顧客台帳等のデータを,入社したNNV社では使用していない。 ⑤3支店の閉鎖被告千葉支店,同大阪支店,同名古屋支店の閉鎖は,原告P8ら6名の退職とは無関係である。被告は,遅くとも平成15年4月ころには,前記3支店を閉鎖してその営業権を他社に売却することを決定していた。 ⑥退職の動機等原告P8は,被告が集中カラオケシステムの設置等において違法行為を行っていたことや支店閉鎖の決定に関し不満を持ち,遅くとも平成15年6月ころには被告を退職することを考えていたところP18な,,(お,P18の経歴等については後記第3,3(2)ア(ア)参照)のNNV社の設立趣旨に賛同して被告を退職したものである。そして,原告P8は,他の 告を退職することを考えていたところP18な,,(お,P18の経歴等については後記第3,3(2)ア(ア)参照)のNNV社の設立趣旨に賛同して被告を退職したものである。そして,原告P8は,他の従業員らを誘うことはしなかったが,他の従業員らから一緒について行きたいという希望が出されたため,原告P8ら6名のうち原告P8を除く5名も被告を退職したにすぎない。 ⑦被告の損害前記②のとおり,原告P8ら6名は,被告の業務引継を行っており,NNV社のために何らの違法な切替業務もしていない。原告P8ら6名の退職後に被告の売上げが減少したとしても,従業員が退職した会社において退職した従業員の働きに相当する部分について会社の売上げが減少することは当然であり,また,会社は退職した従業員の人件費用等を免れているものであるから,売上減少分を直ちに被告の損害ということはできない。 ⑧原告P8ら6名の個別具体的な行為被告は,原告P8ら6名の個別具体的な行為につき,それまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為を何ら主張立証していない。 b原告P2ら3名について原告P2ら3名については,次の事情を考慮すると,それまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為はなく,被告は,本件退職金不支給条項を適用することができない。 ①原告P2の退職の動機,経緯等- 17 -被告千葉支店長であった原告P2は,平成15年9月26日ころ,被告社長より,勤務していた同支店を含む3支店を閉鎖するので,キャン社へ異動するよう通告された。しかし,原告P2は,カラオケの仕事をやりたいことから,被告を退職することを決意した。そして,原告P2は,平成15年10月3日ころ,被告に対し,同月20日で退職する旨の退職届を郵送し,受理されている。原告P2は, は,カラオケの仕事をやりたいことから,被告を退職することを決意した。そして,原告P2は,平成15年10月3日ころ,被告に対し,同月20日で退職する旨の退職届を郵送し,受理されている。原告P2は,退職届提出後,退職するまでの約2週間,通常業務に従事していた。 ②原告P1の退職の動機,経緯等被告千葉支店に勤務していた原告P1は,同支店閉鎖に伴い,被告を退社することを決意し,引継のことも考慮し,原告P2と同様の退職届を被告に提出し,退職届提出後退職するまでの約2週間,通常業務に従事していた。 ③原告P3の退職の動機,経緯等被告大阪支店長であった原告P3は,平成15年9月26日ころ,被告社長より,勤務していた同支店を含む3支店を閉鎖するので,キャン社へ異動するように通告された。原告P3は,カラオケの仕事をやりたいことから,被告社長に対し,タイトー社へ転籍させてほしい旨述べたが拒否された。そこで,原告P3は,被告を退職することを決意し,平成15年10月1日ころ,被告に対し,同月20日で退職する旨の退職届を提出し,受理された。原告P3は,退職届提出後退職するまでの約2週間,通常業務に従事していた。 ④契約の切替等原告P2ら3名は,被告を退職後,被告の顧客に対して,入社したNNV社のために,積極的に契約の切り替えなどしていない。また,原告P2ら3名は,被告に対し,何らの敵対行為も業務妨害行為も行っていない。 ⑤引継等原告P2ら3名は,退職届を提出後,被告からの業務引継に関する具体的指示を待っていた。しかし,被告からの具体的な指示がなかったため,原告P2ら3名は,具体的な業務引継行為を行うことなく退職したに過ぎない。したがって,原告P2ら3名は,被告を退職するに当たって,同社の引継業務を無視したことはない。 【被告】a退職金は,賃 ,原告P2ら3名は,具体的な業務引継行為を行うことなく退職したに過ぎない。したがって,原告P2ら3名は,被告を退職するに当たって,同社の引継業務を無視したことはない。 【被告】a退職金は,賃金の後払いの性格を有するとともに,企業に対する功労報償的な性格も併せ持つものであり,従業員の功労の抹消に応じて減額や不支給とすることは合理性を有する。そして,これまでの法律実務では,従業員が懲戒解雇され,もしくは懲戒解雇事由がある場合は,直ちに退職金不支給とすることが認められている。 そして,これを本件についてみるに,前記(ウ)ないし(オ【被告】)の主張の項で述べたとおり,原告P8ら6名はいずれも懲戒解雇された者であり,直ちに退職金不支給とするのが相当である。 - 18 -b仮に,原告らの主張するように,従業員にそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為があった場合にのみ退職金の不支給が認められるとしても,原告らの行為は,下記のとおり,いずれもそれに該当する。 ,()【】,①原告P8ら6名の行為は前記ウ被告の主張で述べたとおり一斉無断欠勤・就労放棄,業務妨害・窃盗・業務上横領行為,客の争奪行為があり,被告はこれらの行為により,企業存続が図れなくなるほど。 ,,の損害を被ったこれら原告P8ら6名の行為はどれをとってみてもそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為である。 ②原告P2ら3名の行為は,前記(オ)b【被告】の主張で述べたとおり,被告の業務を妨害し,被告に多大な損害を与えるものであり,それまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為である。 第3争点に対する判断 原告らの退職の意思表示の時期(争点1)について(1)問題の所在と争点の摘示原告ら のであり,それまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為である。 第3争点に対する判断 原告らの退職の意思表示の時期(争点1)について(1)問題の所在と争点の摘示原告らの退職の意思表示の時期が問題となるのは,次の理由からである。第,,,,,1の理由は本件では原告P8ら6名は被告に対し退職の意思表示をし他方,被告は,原告P8ら6名に対し本件懲戒解雇の通知をしており,仮に,退職の効果が,本件懲戒解雇の通知より早ければ,本件懲戒解雇の効力はなくなるからである。なぜならば,既に会社を退職してしまった者(従業員の身分を喪失した者)を懲戒解雇することはできないからである。第2の理由は,本件では,原告P8ら6名は,平成15年7月14日から被告本社,被告新宿支店に一斉に出社していないところ,同日以前に退社の意思表示があれば,被告,,,としても対策がとれたであろうし逆に同日後に退社の意思表示がされれば被告としても対処方法に困り,そのことは,懲戒解雇事由を認めることに働く一事由になると思われるからである。以下,検討することにする。 (2)原告P8ら6名についてア原告P8ら6名のうち原告P8を除く5名(),,ア原告P8ら6名のうち原告P8を除く5名は平成15年7月10日夜直属の上司であった被告本社営業部長原告P8に対し,翌11日付けで被告を退職する旨の意思表示をしたと主張し,証拠(原告P8【22頁,同P】6【22ないし25頁)によれば,上記原告ら主張のとおりの事実が認め】られる。 しかし,原告P8ら6名のうち原告P8を除く5名の退職の意思表示が法的に効力を有するためには,被告の代表者にその意思表示が到達しなければならないところ,証拠(原告P8【43頁)によれば,原告P8は,原告】P P8ら6名のうち原告P8を除く5名の退職の意思表示が法的に効力を有するためには,被告の代表者にその意思表示が到達しなければならないところ,証拠(原告P8【43頁)によれば,原告P8は,原告】P8ら6名のうち原告P8を除く5名の退職の意思表示を被告に対し伝えていないことを自ら認めている。また,弁論の全趣旨によれば,原告P8が被- 19 -告を代表する権限を有していないことは明らかである。 以上によれば,原告P8ら6名のうち原告P8を除く5名は,平成15年7月10日夜,直属の上司であった被告本社営業部長原告P8に対し,翌11日付けで被告を退職する旨の意思表示をしたことをもって,被告に対し,退職の意思表示をしたと認めることはできない。 (イ)前記争いのない事実等(2)ア(ア)及び弁論の全趣旨によれば,原告P8ら6名のうち原告P8を除く5名は,平成15年7月14日ころ,被,,,,告に対し書面で退職する旨の意思表示をし同書面は同月16日ころ被告に到達したこと,しかし,被告は,前記5名の退職を了承しなかったことが認められる。 (ウ)ところで,民法627条によれば,期間の定めのない労働契約は,解約,。 申入れから2週間を経過したとき契約終了の効果を生じるとされているそうすると,原告P8ら6名のうち原告P8を除く5名の労働契約が終了(退職)するのは,平成15年7月30日の経過であるところ,被告は,それより前である同月17日ころ(原告P6に対し)又は同月25日ころ(同P4,同P5,同P7,同P9に対し)各到達の書面で,前記5名の原告らに対し本件懲戒解雇の意思表示をしている(前記争いのない事実等(2)イ(ア(イ。したがって,被告の前記5名の原告らに対する本)))件懲戒解雇の効力を判断する必要が出てくる。そこで,この点は,後記3 本件懲戒解雇の意思表示をしている(前記争いのない事実等(2)イ(ア(イ。したがって,被告の前記5名の原告らに対する本)))件懲戒解雇の効力を判断する必要が出てくる。そこで,この点は,後記3で判断することにする。 イ原告P8(ア)原告P8は,平成15年7月11日,被告水戸支店長をしていたP11ら3支店長に対し,同日付けで被告を退職する旨の意思表示をし,その旨を被告に対し伝えるよう依頼したこと,P11ら3支店長は,同日,被告に対し,原告P8が退職することを伝えたと主張する。 原告P8がP11ら3支店長と会い,退職の意思を明らかにしたことは当事者間に争いがないが,原告P8がP11ら3支店長に対し退職することを被告本社に伝えてほしいと述べたこと,P11ら3支店長が被告本社に原告P8が平成15年7月11日で退職する事実を伝えたと認めるに足りる的確な証拠は存在しない。かえって,証拠(証人P19【4頁)に】よれば,原告P8の上司として被告の経営管理,社長補佐業務を行っていたP19は,P11ら3支店長から,平成15年7月11日には,原告P8が同日被告を退職する話を聞いていないと供述していることが認められ,同日,被告において特段の対応措置をとっていないこと(弁論の全趣旨,原告P8は被告本社営業部長の地位にあり,退職の意思表示を被告)に伝えるのは容易であるのに,何故,P11ら3支店長に伝言を頼むのか不自然であること等に照らすと,前記P19の供述は信用することができる。 以上によれば,原告P8の上記主張は採用することができない。 (イ)前記争いのない事実等(2)ア(ア)及び弁論の全趣旨によれば,原告- 20 -P8は,平成15年7月14日ころ,被告に対し,書面で退職する旨の意思表示をし,同書面は,同月16日ころ,被告に到達したこと,しか ない事実等(2)ア(ア)及び弁論の全趣旨によれば,原告- 20 -P8は,平成15年7月14日ころ,被告に対し,書面で退職する旨の意思表示をし,同書面は,同月16日ころ,被告に到達したこと,しかし,被告は,前記5名の退職を了承しなかったことが認められる。そうだとすると,前記ア(ウ)と同様,原告の労働契約が終了するのは平成15年7月30日の経過であるところ,被告は,それより前である同月17日ころ到達の書面で原告P8に対し本件懲戒解雇の意思表示をしている。したがって,被告の原告P8に対する本件懲戒解雇の効力を判断する必要が出てくる。そこで,この点も,後記3で判断することにする。 (3)原告P2ら3名ア原告P2,同P1原告P2,同P1は,被告に対し,平成15年10月20日をもって退職する旨の書面を送付し,これが被告に到達したことは当事者間に争いがない。被告は,前記退職届が被告に到達したのは平成15年10月6日ころであると主張する。確かに,証拠(乙39,40)によれば,原告P2,同P1の退職届の日付は平成15年10月6日となっている。しかし,証拠(甲29,30,32,33,原告P2【1頁)及び弁論の全趣旨によれば,①原告P2は,】労働基準監督署に相談に行き,退職届は退職の2週間前に出すようにアドバイスされたこと,②これを受けて,原告P2,同P1は,給料計算の締切日である平成15年10月20日に退職することにしたこと,③そこで,原告P2,同P1は,退職届記載日を退職予定日の2週間前である同月6日と記載したこと,④しかし,原告P2,同P1の実際の退職届提出日は同月3日で,被告への到達日は翌4日ころであったことが認められる。 以上によれば,原告P2,同P1は,平成15年10月4日ころ,被告に対し,同月20日付けで退職する旨の意思表示をし 際の退職届提出日は同月3日で,被告への到達日は翌4日ころであったことが認められる。 以上によれば,原告P2,同P1は,平成15年10月4日ころ,被告に対し,同月20日付けで退職する旨の意思表示をしたことにより,同月20日に被告を退職した。 イ原告P3は,平成15年10月1日ころ,被告に対し,同月20日をもって退職する旨の書面を送付し,翌2日ころ,被告に到達したことは当事者間に争いがない。そうだとすると,原告P3は,被告を平成15年10月20日に退職し,退職の意思表示を退職日の2週間以上前である同月2日ころ被告にしていたということができる。 被告の就業規則,退職金規程の効力及びいわゆる不利益変更の成否(争点2,3)について(1)問題の所在と争点の摘示原告らの退職金支払請求に対し,被告は,本件退職金不支給条項及び就業規則第45条の懲戒解雇条項を根拠に,退職金支払を拒絶する。これに対し,原告らは,退職金規程,就業規則(以下,本争点の説示の項においては,特段の断りのない限り,両者を併せて「就業規則」という)は,従業員に周知されていないなどの理由から法的効力がなく,また,いわゆる就業規則の不利益変更の法理により法的効力がないと主張する。そこで,以下においては,被告の就業規則が効力を有しているのか否かを判断することにする。 - 21 -(2)被告の就業規則の効力(争点2)についてア就業規則の効力についての判断基準就業規則が法的効力を有するためには,従業員代表の意見聴取,労基署への届出までは要せず,従業員に対し,実質的に周知の措置がとられていれば足りると解するのが相当である。なぜなら,使用者が義務を履践しないことにより就業規則の効力を免れるのは相当ではないからである。そして,ここにいうところの実質的な周知とは,従業員の大半が就業規 いれば足りると解するのが相当である。なぜなら,使用者が義務を履践しないことにより就業規則の効力を免れるのは相当ではないからである。そして,ここにいうところの実質的な周知とは,従業員の大半が就業規則の内容を知り,又は知ることのできる状態に置かれていれば足りる解するのが相当である。以上の観点から,被告において,就業規則の実質的な周知の措置がとられていたか否かについて判断することにする。 イ事実認定(ア)被告本社及び同新宿支店証拠(甲26,証人P10【20,43頁,同P19【42頁,原】】告P8【11,12頁)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認めら】れる。 a被告本社及び同新宿支店は,同一フロア内にあり仕切りもなく,実質的に見て同一の事業所の観を呈していた。 b被告本社の営業部長であった原告P8は,鍵の付いていない自己の机の引出し中に,キャン社から送付されてきた就業規則を保管していた。 c被告本社及び同新宿支店では,従業員に対し,就業規則の存在及び内容を秘密にしておくようなことはなく,従業員において知りたければ,原告P8,同P6を通じて,いつでも知ることができるようになっていた。 (イ)被告千葉支店a証拠(乙34)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 被告千葉支店では,被告の就業規則は,黒い背表紙のファイルに入れて支店の書棚に置いてあり,書棚には鍵はかかっていなかったため,同。 ,,支店の従業員はいつでも見ることができたまた同じファイルに遅刻欠勤,有給休暇等の勤怠の申請用紙も入っており,被告千葉支店の従業員はそこから用紙をとっていたことから,当該ファイルの存在をよく知っており,ファイルに就業規則があることも十分に認識していた。 bまた,証拠(原告P2【22頁)によれば,被告千葉支店長である】原 員はそこから用紙をとっていたことから,当該ファイルの存在をよく知っており,ファイルに就業規則があることも十分に認識していた。 bまた,証拠(原告P2【22頁)によれば,被告千葉支店長である】原告P2は,被告に就業規則が存在すると認識しており,被告からこれを見せないといわれたことはないことが認められる。 cこれに対し,原告P2は,被告千葉支店には被告の就業規則は置いておらずキャン社の就業規則も見たことがないと供述する原告P28,(【頁。しかし,原告P2は,被告千葉支店の支店長であるところ,通】),,常就業規則の内容を知らないで従業員の管理をすることは困難であり原告P2の前記供述を採用することはできない。 (ウ)被告大阪支店- 22 -証拠(乙33)及び弁論の全趣旨によれば,被告大阪支店では,就業規則は事務用の書棚にファイルされて置いてあり,同支店の従業員であればいつでも閲覧できるようになっていたことが認められる。 これに対し,原告P3は,被告の就業規則を在職中一度も見たことはないと陳述する(甲31。しかし,原告P3は,被告大阪支店の支店長で)あり,通常,就業規則の内容を知らないで従業員の管理をすることは困難であり,原告P3の前記陳述を採用することはできない。 ウ小括以上によれば,被告の従業員の大半は,就業規則の内容を知ることのできる状態に置かれていたと評価するのが相当であり,被告の就業規則は法的効力を有しているというべきである。 なお,付言するに,原告らの本件退職金請求は,被告の退職金規程に基づき,,請求しているところそもそも退職金規程が法的効力がないというのであれば原告らの請求はその余の点を判断するまでもなく法的根拠を失い,理由がない,。 ,,ことになるのであるがそれでよいのであろうかそれとも原告ら ころそもそも退職金規程が法的効力がないというのであれば原告らの請求はその余の点を判断するまでもなく法的根拠を失い,理由がない,。 ,,ことになるのであるがそれでよいのであろうかそれとも原告らの主張は退職金規程のうち,退職金支払の規定は効力があり,本件退職金不支給条項の規定は効力がないと主張するのであろうか。しかし,一つの退職金規程において,ある部分は有効で,ある部分は無効であるというのは,一体として制定されている規程上,そのように解するのは困難である。以上のように,当裁判所としては,原告らが被告の退職金規程,就業規則が,実質的な周知を欠き無効であると主張することは,原告らの本件請求と矛盾するものであり,その真意を測りかねるのであるが,前記の判断のとおり,被告の退職金規程,就業規則はいずれも法的効力を有していると解するのが相当であるので,これ以上は言及しないことにする。 (3)いわゆる就業規則の不利益変更の法理の適用の成否(争点3)について原告P5,同P6は,被告の就業規則,退職金規程は昭和61年5月1日より実施されているところ,それ以前に被告に入社した前記原告ら2名に対しては,退職金規程中の本件退職金不支給条項はいわゆる就業規則の不利益変更に当たり,同人らに適用することは許されないと主張する。 原告P5,同P6の前記主張が成り立つためには,被告の現行の退職金規程の内容が,それ以前の退職金規程の内容よりも不利益に変更されていることが認められなければならない。これを本件についてみるに,本件全証拠を検討するも,現行の退職金規程より以前の規程は本件裁判に提出されておらず,その内容が不明であるというほかない。そうだとすると,いわゆる就業規則の不利益変更の法理適用の前提である退職金規程の内容が不利益に変更されたと認めるに足りる証拠のない は本件裁判に提出されておらず,その内容が不明であるというほかない。そうだとすると,いわゆる就業規則の不利益変更の法理適用の前提である退職金規程の内容が不利益に変更されたと認めるに足りる証拠のない本件にあっては,この点の原告P5,同P6の主張は,その余の点を判断するまでもなく理由がないというほかない。 退職金不支給条項適用の成否(争点4ないし7)について-原告P8ら6名の関係(1)問題の所在と争点の摘示ア被告の退職金規程第6条によれば「懲戒解雇された者,退職に際して,そ,- 23 -の手続き及び業務の完全なる引き継ぎをなさずして退職した場合」には,退職(ママ)者に対し,退職金を支給しない旨の本件退職金不支給条項の規定が存在する。 そして,被告は,原告P8ら6名を懲戒解雇し,また,同人らには退職時に引継の不履行があったとして退職金の支払を拒絶する。これに対し,原告P8ら6名は,本件懲戒解雇は解雇事由がなく,仮にあっても懲戒解雇権を濫用した,,,,ものとして許されずまた退職時の引継不履行の事実はなく仮にあってもそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為とはいえないとして,退職金の支払を請求する。 イ以上のとおり,原告P8ら6名の退職金支払請求の成否を考えるに当たっては,本件懲戒解雇の効力,退職時の引継不履行の存否,それまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為があったか否かが問題となるところ,これらの問題は相互に密接に関連している事実であるので,まず,これらに関する事実認定を行い,それを踏まえて,前記各争点についての判断を示すことにする。 (2)事実認定前記争いのない事実等,証拠(文末の括弧内に掲記したもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 アNNV社の設立 まえて,前記各争点についての判断を示すことにする。 (2)事実認定前記争いのない事実等,証拠(文末の括弧内に掲記したもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 アNNV社の設立(ア)キャン社は,有線音楽放送事業等を業とする会社であり,平成17年7月1日ころ当時の営業所は全国に約128個所にあり,従業員数は約1630名であった。キャン社の取締役東日本本部長であったP18は,キャン社の北海道,東北,北関東,新宿,千葉,渋谷,横浜の各管理局及びこれらの管理局の管轄下にある営業所を統括すると共に電柱の無断使用に対する正常化についてのキャン社側の責任者として総務省,NTT,電力各社との折衝を担当していた(甲4,5,45,弁論の全趣旨)。 (イ)P18は,平成15年6月4日,キャン杜を退職し,同年7月1日,N,。 ,NV社を設立し同社の代表取締役に就任したNNV社の主たる目的は株式会社USEN(当時の社名は株式会社有線ブロードネットワークス,以下「USEN社」という)の有線音楽販売の代理店業務であった。有線音楽放送事業を全国規模で展開していたのは,USEN社とキャン社の2社であった。なお,有線音楽放送事業と被告の営業目的であるカラオケ事業とは密接な関係がある(甲4,乙15,16,31,弁論の全趣旨)。 (ウ)キャン社の全従業員の約3分の1が,平成15年7月11日,何らの予告もなく一斉に会社に出社せず,退職届を提出し,以後,キャン社の就労を拒否した。また,キャン社の従業員の無断欠勤・就労拒否はその後も続き,平成15年7月15日には欠勤者は551名にものぼり,全国128営業所のうち22営業所で出勤者が全くいなくなるなど機能麻痺の状態に陥った。そして,これらキャン社に出社しなくなった従業員の大半(約500名弱)が,P1 日には欠勤者は551名にものぼり,全国128営業所のうち22営業所で出勤者が全くいなくなるなど機能麻痺の状態に陥った。そして,これらキャン社に出社しなくなった従業員の大半(約500名弱)が,P18の設立したNNV社に入社した(甲4,5,乙1。 4の2,証人P19【2,3頁,弁論の全趣旨)】- 24 -イ被告の組織及び原告P8ら6名の退社の状況(ア)被告は,主としてカラオケ設備の販売とレンタルを中心業務としている会社であり,代表者はキャン社と同じP20であった。被告は本社営業部のほか,札幌,仙台,水戸,新宿,千葉,名古屋,京都,大阪の各支店を設けており,平成15年6月当時の従業員数は約34名であった。被告本社営業部には営業部長として原告P8ほか4名の従業員が,同新宿支店には原告P6,同P5,同P7,同P4,同P9ほか3名の営業部員が在籍していた。また,被告新宿支店の会社全体に占める売上げの割合は,平成。(,,,,,15年6月ころ当時で約25%であった甲2 乙4 証人P19【1頁)】(イ)原告P8は,平成15年6月末ころ,キャン社千葉管理局長のP21から,P18が新会社を設立予定であるとの話を聞いた。原告P8は,P18がかつて被告の営業責任者をしていたこともあって同人と親交があったところ,平成15年7月初めころ,同人と会った。その際,P18は,原告P8に対し,NNV社を設立したこと,NNV社はカラオケ事業を展開すること,カラオケ機器もどんどん入ってくること,NNV社に入社したい者は引き受ける用意があることを話した。原告P8は,P18に対し,被告を退社して,NNV社でカラオケ事業に参画したいと述べ,P18はこれを了承した(甲26,原告P8【18ないし22,24,25頁)。 】(ウ)原告P8 ことを話した。原告P8は,P18に対し,被告を退社して,NNV社でカラオケ事業に参画したいと述べ,P18はこれを了承した(甲26,原告P8【18ないし22,24,25頁)。 】(ウ)原告P8は,平成15年7月8日ころ,自己の統括下にある被告千葉支店長である原告P2を呼びだし,同人に,被告を退職する意思を伝えた。 原告P2は,同P8と一緒に被告を退職するか否か迷ったが,結局,被告に止まることにした(甲29,原告P8【40,41頁,同P2【4,。 】10,11,13,25頁)】(エ)原告P8は,平成15年7月10日,本社の1名,新宿支店勤務の原告P6ら全員を集め,被告を退職しNNV社に移り,NNV社でカラオケ事業に参画する話をした。これに対し,原告P6ら当日集合した従業員は,全員,被告を退社し,NNV社に入社したいと申し出た。原告P8は,前記P6ら全員に対し,NNV社に全員入社できること,給料も被告での給料と同じ位支給される予定であると説明した。そこで,被告本社営業部の技術課の従業員2名を除く全員,新宿支店の従業員全員が,翌日からの被,,。 告の業務に就くことなく一緒に退社しNNV社に入社することにした(甲26,27,原告P8【3,22ないし24頁,同P6【1,23】ないし26,30,31頁,弁論の全趣旨)】(オ)被告新宿支店の従業員全員(原告P6,同P5,同P7,同P4,同P9ほか3名の営業部員)は,平成15年7月11日(金曜日,同支店の)事務所に出社したものの,私物の整理等を済ませ,全員,被告の業務に就くことなく,前記キャン社の従業員の行動に呼応する形で,被告に事前に,。 ,,連絡することなく一斉に退社した原告P8は平成15年7月11日被告本社に出社することなく,これまで親しくしていた被告水戸支店長の 記キャン社の従業員の行動に呼応する形で,被告に事前に,。 ,,連絡することなく一斉に退社した原告P8は平成15年7月11日被告本社に出社することなく,これまで親しくしていた被告水戸支店長の- 25 -P11ら3支店長を東京駅近くの喫茶店に呼び出し,被告を退職し,NNV社のカラオケ事業に参画することを話した。P11ら3支店長は,原告P8の話を聞いたが,これに同調し,被告を退社するとの意見表明をする者はいなかった(甲26,27,証人P19【3頁,原告P8【3,。 】4,25,26頁,同P6【2頁)】】ウ原告P8ら6名の平成15年7月11日から同月末日ころまでの間の行動等(ア)被告新宿支店の原告P6ら従業員は,平成15年7月11日,同支店の事務所で自己の私物を整理を終わらせ,同支店のパソコンに入っていた顧客台帳,リース台帳のデータ等をフロッピーにコピーしたうえでパソコン内のデータを全て消去し,当該フロッピーを社外に持ち出した。また,原告P6ら被告新宿支店の従業員らは,同支店の在庫商品(メンテナンス商品)を社外に運び出し,自分らで管理した。なお,原告P6らが,被告新宿支店の事務室を退出する際,同事務室のあるビルの地下1階にある被告本社の技術課職員であるP22はいたが,原告P6らは,P22に声をかけることなく,鍵をかけて,同支店の事務室をあとにした(乙13,4。 2,43の1ないし5,同44の1ないし3,同45の1ないし5,同46,原告P8【34頁,同P6【2ないし4,10ないし16頁)】】(イ)被告本社営業部,同新宿支店の従業員のうち技術課の従業員(P22,P23)を除く全員は,平成15年7月12日以降,被告本社営業部,同,,,新宿支店の事務所に出社していないが同人らは一斉に就労しなければ。 ,被告新宿支 従業員のうち技術課の従業員(P22,P23)を除く全員は,平成15年7月12日以降,被告本社営業部,同,,,新宿支店の事務所に出社していないが同人らは一斉に就労しなければ。 ,被告新宿支店が大混乱に陥ることは十分認識していた原告P8ら6名は平成15年7月14日からNNV社に入社したが,まだ事務所が用意されていなかったこと,仕入品がなく営業することができなかったため,同日から同年7月末日ころまでの間は,新宿区αにある空き部屋を借り,同部。(【,,,】,【,】,屋に集合した原告P8 35頁同P6 29頁弁論の全趣旨)(ウ)原告P8ら6名は,平成15年7月14日には,被告本社,同新宿支店に出社せず,前記αの空き部屋に集まり,被告に対し,退職届を作成し,これを郵送した。被告本社及び同新宿支店は,原告P8ら6名が一斉に就労拒否しため,機能が麻痺し,大混乱に陥った。P19は,被告本店,同新宿支店を正常化させるため,平成15年7月14日,カラオケ事業について経験豊富な同京都支店長をしているP10を急遽東京に呼び寄せ,同人を被告本店の営業部長代行,同新宿支店長代行に据えた。P10支店長代行は,平成15年7月14日午後5時ころ,被告本店に到着し,原告P6と連絡をとり,同人に被告に復帰するよう説得したが,同人はこれを拒否した。そこで,P10支店長代行は,翌15日,原告P6と会った。原告P6は,7月15日,P10支店長代行と会った際,被告へ復帰する気はないが,1週間は被告の顧客のメンテナンスを行うことを申し出た。P10支店長代行は,原告P6の意図が,被告の顧客を自分達に繋ぎとめておいて自分達の得意先にしたいことにあったことは分かったが,顧客に迷- 26 -惑をかけてはいけないし,東京の地理に不案内なこ P10支店長代行は,原告P6の意図が,被告の顧客を自分達に繋ぎとめておいて自分達の得意先にしたいことにあったことは分かったが,顧客に迷- 26 -惑をかけてはいけないし,東京の地理に不案内なことから,原告P6の申し出を了解した。こうして,原告P8ら6名は,平成15年7月14日から同月23日ころまでの間,被告の顧客からの要請,P10支店長代行からの連絡を受け,被告の顧客のメンテナンス作業に従事したが,被告の顧客から直接要請があったメンテナンスについてはP10支店長代行には連絡することなく作業を行った。なお,原告P8ら6名の主張によれば,同人らが,前記期間に顧客のメンテナンス作業に従事した店は42店であるところ,そのうち26店は,被告との契約を解約している(甲20ない。 し25,28,乙13,証人P10【1ないし8,23,34,40ないし42頁,同P19【20,21頁,原告P8【1,4ないし6,3】】9頁,同P6【1,4ないし6,33,34頁,弁論の全趣旨)】】(エ)P10支店長代行は,被告新宿支店に着任後,社内の状況を調査したところ,数多くの在庫商品がなくなっていること,パソコンに入力されているはずの顧客台帳,リース台帳,在庫データ等の情報が消去されていることに気づいた。そこで,P10支店長代行は,まず最初に被告を定年退職したP24からパソコン内に顧客台帳のデータが入っていたことを確認し,その上で,平成15年7月21日,原告P6を被告新宿支店の事務所に呼び出し,在庫商品の返還を求めるとともに,パソコンから消去したデータの復元を要求した。これに対し,原告P6は,パソコン内にあったデータの消去の事実等を認め(しかし,何故データを消去したかその理由については説明していない,数時間後に,修理のため使用したものを除く)商品を 要求した。これに対し,原告P6は,パソコン内にあったデータの消去の事実等を認め(しかし,何故データを消去したかその理由については説明していない,数時間後に,修理のため使用したものを除く)商品を返還し,また,フロッピーを持参し,消去した顧客台帳の復元作業を行ったが,全部が復元されたわけではなく,在庫データ等の復元はされていない(乙13,42,43の1ないし5,同44の1ないし3,同。 ,,【,,】,45の1ないし5同46証人P1010ないし173738頁原告P6【3,7,13,14,16,17,20,22頁,弁論の全】趣旨)エ被告への影響(ア)被告は,原告P8ら6名が一斉に退社した前月である平成15年6月までは,全社で毎月4500万円前後の売上げを継続的に確保しており,同月の売上げは4505万7000円であった。その中でも新宿支店の同年6月の売上げは1140万6000円と被告全体の総売上げの約25%を占めていた(乙32,証人P19【6頁)。 】(イ)ところが,原告P8ら6名が一斉退社した平成15年7月の新宿支店の売上げは,723万3000円と6月の売上げの約3分の2にまで急激に減少し,その後も700万円台に低迷するに至り,被告会社全体の総売上げに占める割合も18ないし19%に落ち込んだ。被告新宿支店の売上げの減少は,原告P8ら6名の一斉退社の影響が大きく,被告に与えた損失は少なからぬものがあった(乙32,証人P10【26,39,40,。 42,43頁,同P19【6ないし9頁,弁論の全趣旨)】】- 27 -オ懲戒解雇の意思表示(ア)被告は,平成15年7月16日付け,同23日付書面で,原告P8ら6名に対し,同月17日付け,同25日付で懲戒解雇するとともに,退職金については懲戒解雇のため支給除外す オ懲戒解雇の意思表示(ア)被告は,平成15年7月16日付け,同23日付書面で,原告P8ら6名に対し,同月17日付け,同25日付で懲戒解雇するとともに,退職金については懲戒解雇のため支給除外するとの意思表示をし,同書面は,同月17日又は25日ころ,原告P8ら6名に到達した(前記争いのない事実等(2)イ。 )(イ)ところで,前記懲戒解雇通知書には,懲戒解雇の根拠として就業規則第59条-1-ア及び第59条-2-イの規定に基づくことが,また,退職金不支給の根拠として退職金規定第8条に基づくことが記載されていた(ママ)(乙3の1ないし6。 )カ被告及びキャン社の就業規則の懲戒解雇の規定(ア)キャン社(前記争いのない事実等(3)ア(イ,イ(イ))),,キャン社の就業規則によれば第59条は懲戒解雇事由を規定しており第59条-1-アで労働義務の不完全履行の場合(服務規律に違反したとき,第59条-2-イで職場秩序を乱す場合(就業規則又は他の諸規則)に違反したとき)に懲戒解雇に処することを規定している。 また,キャン社の退職金規程第8条によれば,懲戒解雇された者に対しては,退職金を不支給とする旨規定をしている。 (イ)被告(前記争いのない事実等(3)ア(ア,イ(ア)))被告の就業規則第45条は,次のとおり懲戒解雇事由を規定している。 第45条次の各号の一に該当する場合には,懲戒解雇とする。 1. 上長の指示命令を無視し,又は上長に反抗し,あるいは職場を放棄し,社内の秩序を乱した者。 2. 業務上の秘密を洩らしたり又は,洩らそうとした事が明らかになった者。 3.4.省略5.職務を利用し不当に私利を得,又は私利を得ようとした者。 6.省略7.故意又は,重大な過失により会社に対し甚だしい損害を加えもしくは会社又は,従業員の名誉 事が明らかになった者。 3.4.省略5.職務を利用し不当に私利を得,又は私利を得ようとした者。 6.省略7.故意又は,重大な過失により会社に対し甚だしい損害を加えもしくは会社又は,従業員の名誉を著しく傷つけた者。 8.刑罰・法規にふれる行為,又は刑の確定した者。 9.省略10.前各号に準ずる行為のあった者。 また,被告の退職金規程には,次のような退職金不支給条項が規定されている。 第6条(1)次の各号の一に該当する場合は退職金を支給しない。 1. 省略2. 懲戒解雇された者。 (2)退職に際して,その手続き及び業務の完全なる引き継ぎ(ママ)をなさずして退職した場合には,退職金の減額若しくは支- 28 -給しないことがある。 (3)争点についての判断ア懲戒解雇事由の存否(争点4)について(ア)前記認定事実(2)オ,カによれば,被告は,原告P8ら6名に対し,就業規則第59条-1-ア及び第59条-2-イの規定に基づき懲戒解雇処分をしているところ,被告の就業規則第59条-1-ア及び第59条-2-イには懲戒解雇事由を定めた規定は存在せず,被告の懲戒解雇通知書,。 に記載された条文はキャン社の就業規則の条文であることが認められる(イ)この点,原告P8ら6名は,キャン社の就業規則に基づく懲戒解雇は手続的瑕疵があり,無効であると主張する。しかし,キャン社と被告は関連会社であり,原告P8ら6名においてキャン社の就業規則の内容を確認しようとすれば容易であること(前記争いのない事実等(1)ア,弁論の全趣旨)に照らすと,キャン社の就業規則の条文を引用して原告P8ら6名を懲戒解雇したことを捉えて,本件懲戒解雇が無効ということは困難である。 (ウ)むしろ,前記認定事実(2)カによれば,被告の就業規則は,懲戒解雇事由として,キャン社の就業 を引用して原告P8ら6名を懲戒解雇したことを捉えて,本件懲戒解雇が無効ということは困難である。 (ウ)むしろ,前記認定事実(2)カによれば,被告の就業規則は,懲戒解雇事由として,キャン社の就業規則第59条-1-ア及び第59条-2-イの規定の内容と同様の懲戒解雇事由を規定しており,そうだとすると,原告P8ら6名がキャン社の就業規則第59条-1-ア及び第59条-2-イに記載されている内容の行為をしたのか否かで決するのが相当である。 したがって,原告P8ら6名の懲戒解雇の成否を考えるに当たっては,同人らに労働義務の不完全履行服務規律違反職場秩序を乱す場合就,(),(業規則又は他の諸規則違反)の事由が存在するか否かで決するのが相当である。 (エ)以上の観点から本件をみるに,前記認定事実(2)イ,ウによれば,①原告P8ら6名は,キャン社を退職した大量の従業員の行動に呼応し,被告に事前に連絡なく一斉に退社し,被告本社営業部,同新宿支店の機能を麻痺させたこと,②原告P8ら6名は,後任者に被告の事務を引き継ぐことなく退社し,このような行為が被告本社,同新宿支店を大混乱に陥らせることを認識していたこと,③原告P6らは,退社に当たり,被告の了解なく無断で在庫商品を社外に運び出したり,パソコン内の顧客台帳,リース台帳等のデータをフロッピーに移記したうえこれを持ち出し,パソコン内のデータを消去してしまう行動に出ていること,④原告P8ら6名の行為により被告新宿支店に多大の損害が出ていることなどが認められ,これらの事実に照らすと,原告P8ら6名には,労働義務の不完全履行(服務規律違反,職場秩序を乱す場合(就業規則又は他の諸規則違反)に該当)。 ,,する事由が存在するというべきであるしたがって原告P8ら6名には懲戒解雇事由に該当する事 ,労働義務の不完全履行(服務規律違反,職場秩序を乱す場合(就業規則又は他の諸規則違反)に該当)。 ,,する事由が存在するというべきであるしたがって原告P8ら6名には懲戒解雇事由に該当する事由が存在し,この点の被告の主張は理由があるというべきである。 イ懲戒解雇権の濫用の存否(争点5)について- 29 -(ア)原告P8ら6名は,仮に懲戒解雇事由に該当する事由が存在するとしても,同人らを懲戒解雇することは懲戒解雇権の濫用として許されないと主張する。しかし,前記ア(エ)で判示した諸事情を考慮すると,被告が原告P8ら6名を懲戒解雇に処したことには相当な理由が存在し,懲戒解雇権を濫用したということはできない。 (イ)この点に関し,原告P8ら6名は,①被告に対し,退職届を提出した後も,平成15年7月15日ころから同月22日ころまでの間,毎日,被告のP10支店長代行と逐一連絡をとりながら,被告の業務引継ぎ,特に被告会社の顧客へのメンテナンスを行っていたこと,②平成15年7月15日ころから同月22日ころまでの間,被告の顧客をNNV社に切り替えることなど全くしていないことを考慮すべきであると主張する。 なるほど,前記認定事実(2)イ,ウ及び弁論の全趣旨によれば,原告P8ら6名が主張する上記事実が認められるものの,他方,同人らが,そのようなメンテナンス業務に従事することは既に入社しているNNV社のためにもなること,ことに,平成15年7月15日から同月22日までの間は,NNV社の仕入品もなく同社の営業を行おうにも行えなかったことが認められる本件にあっては,原告P8ら6名の挙げる事実の存在をもって,懲戒解雇権濫用があったということはできず,この点についての原告P8ら6名の主張は採用することができない。 ウ退職金不支給事由の存否(争点6)につ っては,原告P8ら6名の挙げる事実の存在をもって,懲戒解雇権濫用があったということはできず,この点についての原告P8ら6名の主張は採用することができない。 ウ退職金不支給事由の存否(争点6)について(ア)被告の退職金規程第6条によれば,①懲戒解雇された者には退職金を支給する必要はなく,②退職に際して,その手続及び業務の完全なる引き継ぎをなさずして退職した者には,退職金の減額若しくは支給しない場合があることが規定されている(前記認定事実(2)カ(イ。 ))(イ)ところで,前記ア,イで判断したとおり,被告の原告P8ら6名に対する懲戒解雇は有効であり,懲戒解雇権濫用の事実も存在しない。また,前記認定事実(2)ウによれば,原告P8らは,退職に際して,その手続及び業務の完全なる引き継ぎをなさずして退職した者に該当することが認められる。この点,原告P8ら6名は,退職届を提出後の平成15年7月15日から同月22日ころまで被告のメンテナンスを行ったことをもって被告の業務の引継であると主張するが,引継とは,退職に際し,後任者に自己がこれまで行ってきた業務を教示し,業務に支障がないようにすることであり,原告P8ら6名の主張する事実をもって引継事務を履行したということは到底困難であり,この点の原告P8ら6名の主張は採用することができない。 (ウ)以上によれば,原告P8ら6名には,被告の退職金規程6条に規定する本件退職金不支給条項に該当する事由が存在するというべきである。 エそれまでの功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為の存否(争点7)について(ア)原告P8ら6名は,退職金不支給条項は,従業員のそれまでの勤続の功- 30 -を抹消ないし減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為があった場合に限り適用すべきであり,そのような場合で て(ア)原告P8ら6名は,退職金不支給条項は,従業員のそれまでの勤続の功- 30 -を抹消ないし減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為があった場合に限り適用すべきであり,そのような場合でないときには,これを適用することができないと主張する。これに対し,被告は,従業員が懲戒解雇され,もしくは懲戒解雇事由がある場合は,直ちに退職金不支給条項を適用すべきであると主張する。 そこで検討するに,懲戒解雇といえども,情状の重いものから中程度のものまで濃淡があり,懲戒解雇が有効であるとの一事を捉え,退職金不支。 ,給条項を適用することはいささか短絡すぎるというべきであるさりとて懲戒解雇が有効とされている事実を無視することもできない。本件のように,懲戒解雇が有効とされている場合においては,原則として,従業員のそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為があったということ(評価)が事実上推定され,従業員である原告P8ら6名において,それまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反するという評価を障害する事実を立証しない限り,当該従業員にはそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為があったことが立証されたものとして扱うのが相当である。 (イ)これを本件についてみるに,前記(3)ア(エ)で判示したとおり,本件懲戒解雇が有効であることを基礎づける事実として,①原告P8ら6名は,キャン社を退職した大量の従業員の行動に呼応し,被告に事前に連絡,,,なく一斉に退社し被告本社営業部同新宿支店の機能を麻痺させたこと②原告P8ら6名は,後任者に被告事務を引き継ぐことなく退社し,このような行為が被告本社,同新宿支店を大混乱に陥らせることを認識していたこと,③原告P6らは,退社に当たり,被告の了解なく無断で在 と②原告P8ら6名は,後任者に被告事務を引き継ぐことなく退社し,このような行為が被告本社,同新宿支店を大混乱に陥らせることを認識していたこと,③原告P6らは,退社に当たり,被告の了解なく無断で在庫商品を社外に運び出したり,パソコン内の顧客台帳,リース台帳等のデータをフロッピーに移記したうえこれを持ち出し,パソコン内のデータを消去してしまう行動に出ていること,④原告P8ら6名の行為により被告新宿支,,店に多大の損害が出ていることなどが認められこれらの事実に照らすと他に特段の事情が存在しない限り,原告P8ら6名には,それまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為があったと認めるのが相当である。 (),,,,ウそこで問題は原告P8ら6名に特段の事情が存在するかであるが同人らは,前記争点(2)イ(カ【原告ら】主張aの①ないし⑧のとお)り特段の事情を主張しているので,以下,この点について,順次,判断していくことにする。 a退職金の性格原告P8ら6名は,被告の退職金の性格は,賃金の後払いの性格だけを有していると主張する。確かに,証拠(乙2)によれば,被告における退職金額算出は,基本給に勤続年数を乗じる方法で算出することが認められるが,他方,退職金算定の基礎賃金は退職時の基本給であり,支給率は勤続年数に応じて増加していくこと,退職金不支給条項が定めら- 31 -れていることが認められる。 これら被告の退職金規程の内容を考えると,被告の退職金の性格は賃金の後払いの性格だけを有していると解するのは困難であって,功労報償的性格をも有しているというべきである。したがって,この点についての原告P8ら6名の主張には,にわかに賛成し難い。 b被告の顧客へのメンテナンス原告P8ら6名は,退職届を提出した後も,平 功労報償的性格をも有しているというべきである。したがって,この点についての原告P8ら6名の主張には,にわかに賛成し難い。 b被告の顧客へのメンテナンス原告P8ら6名は,退職届を提出した後も,平成15年7月15日ころから同月22日ころまでの間,毎日,被告のP10支店長代行らと逐一連絡をとりながら,被告の業務引継ぎ,特に被告の顧客へのメンテナンスを無料で行っていたことを挙げる。 しかし,この点は,既に前記イ(イ)でも判示したとおり,原告P8ら6名が行ったと主張する被告の顧客へのメンテナンス作業は,同人らが既に入社しているNNV社の今後の営業に資することにもなることが認められ,その点を割り引いて考えるのが相当である。 c被告の在庫品等の持ち出し行為原告P8ら6名は,原告P6が被告の在庫品も持ち出したのは,被告の顧客へのメンテナンスのためであり,平成15年7月21日ころ,被告に対し,メンテナンスで使用したものを除き全て被告に返却していると主張する。 確かに,前記認定事実(2)ウ(エ)によれば,原告P8ら6名は,持ち出した被告の在庫商品を被告の顧客のメンテナンスのために使用したことが認められる。しかし,本件全証拠を検討するも,当初から,被告の顧客のメンテナンスに使用するために在庫商品を持ち出したのかどうかは,これを認めるに足りる証拠はない。何故,被告の在庫商品を被告に無断で持ち出す必要があるのか,被告新宿支店に置いたままでも被告の顧客のメンテナンスは可能と考えるのが相当である。被告の在庫商品を,退職した従業員が,被告の同意なく社外の持ち出す正当理由を見いだすことは困難であるというべきである。 また,原告P8ら6名は,被告の顧客に対するメンテナンスに使用した商品以外の残りの商品は被告に返還したと主張するが,前記認定事実(2)ウ(エ,証拠 理由を見いだすことは困難であるというべきである。 また,原告P8ら6名は,被告の顧客に対するメンテナンスに使用した商品以外の残りの商品は被告に返還したと主張するが,前記認定事実(2)ウ(エ,証拠(乙13,42,43の1ないし5,同44の1)ないし3,同45の1ないし5,6,証人P10【10ないし16,37頁)及び弁論の全趣旨に照らすと,残りの商品全部を返還したと認】めるのは困難であり,そもそも,これらの残りの商品もP10支店長代行から請求されて返還したことが認められ,返還すれば済むという問題ではない。 dデータ消去行為原告P8ら6名は,原告P6が被告新宿支店のパソコンのデータを一時消去したのは,同支店の事務所が無人となることから安全のために行ったものであり,平成15年7月21日ころに,全て復元し,同データ- 32 -は,入社したNNV社では使用していないと主張する。 しかし,前記(2)ウ(ア(エ)で認定したとおり,被告営業本部)の技術職2名は,退社することなく,被告本社にとどまっているのであるから,前記従業員に連絡すれば足りること,原告P6は被告新宿支店の事務所の鍵を施錠したうえ退社していること,原告P6はP10支店長代行に対しデータ消去の理由を述べていないことが認められ,これらの事実に照らすと,事務所が無人となるため安全のためパソコンのデータを消去したという原告P6の弁解はにわかに信じ難い。のみならず,前記認定事実(2)ウ(ア)によれば,原告P6は,パソコン内の顧客台帳等のデータをフロッピーに移記し,その後,パソコン内のデータを消去したというのであるが,何故,そのような行為を行わなければならないのかその理由が不明である。 また,原告P8ら6名は,消去したデータは全て復元し,パソコン内にあったデータは入社したNNV社で を消去したというのであるが,何故,そのような行為を行わなければならないのかその理由が不明である。 また,原告P8ら6名は,消去したデータは全て復元し,パソコン内にあったデータは入社したNNV社では使用していないと主張するが,これを証するに足りる的確な証拠は存在しない。前記認定事実(2)ウ(エ)によれば,パソコン内にあった顧客台帳,リース台帳は復元したことが認められるものの,復元は,データを消去されたことに気づいたP10支店長代行が原告P6に要求して実現したものであり,原告P6らが自発的に行ったものではないことが認められ,また,復元すれば許されるという性質のものではない。 e3支店の閉鎖原告P8ら6名は,被告千葉支店,同大阪支店,同名古屋支店の閉鎖は,原告P8ら6名の退社とは無関係であると主張する。確かに,本件全証拠を検討するも,前記3支店閉鎖と原告P8ら6名が退社したことの間に直接の相当因果関係があると認めるに足りる的確な証拠は存在しない。 f退職の動機等原告P8は,被告が集中カラオケシステムの設置等において違法行為を行っていたことや支店閉鎖の決定に関し不満を抱き,遅くとも平成15年6月ころには,被告を退職することを考えていたところ,P18のNNV社の設立趣旨に賛同して被告を退職したものであること,原告P8は,他の従業員らを誘うことはしなかったと主張する。 しかし,前記認定事実(2)イ(ウ(エ(オ)によれば,原告P))8は,被告を退職することを決意するや,平成15年7月8日ころには被告千葉支店長に,同月11日には同水戸支店長であるP11ら3支店長を呼び寄せ,被告を退職することを述べていること,また,原告P8は,同月10日,被告新宿支店の従業員全員を集め,退職することを述べ,同支店の従業員全員が退社しNNV社に入社してい るP11ら3支店長を呼び寄せ,被告を退職することを述べていること,また,原告P8は,同月10日,被告新宿支店の従業員全員を集め,退職することを述べ,同支店の従業員全員が退社しNNV社に入社していることが認められ,これらの事実に照らすと,原告P8が他の従業員らに対し被告からの退社を誘うことはしなかったという点は採用することが困難である。 - 33 -また,原告P8の退職の動機が,同人のそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為か否かを判断する際の重要な判断要素となるものと考えることは困難である。 g被告の損害原告P8ら6名は,被告新宿支店の売上げ減少分を直ちに被告の損害ということはできないなどと主張する。確かに,被告新宿支店の売上げ減少分が全て被告の損害ということはできないものの,原告P8ら6名の一斉退社により,被告に多大の損害が出たことも事実であり,この点は,既に前記(2)エで認定したとおりである。 h原告P8ら6名の個別具体的な行為原告P8ら6名は,被告において,原告P8ら6名の個別具体的な行為につき,それまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為を何ら主張立証していないと主張する。しかし,前記(ウ)で判示したとおり,被告は,本件懲戒解雇が有効であることを基礎づける事実を主張立証するなかで,原告P8ら6名にそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為があったことを主張立証し,。 ているということができこの点の原告P8ら6名の主張は理由がないiまとめ以上aないしhによれば,特段の事情として立証に成功しているのは被告千葉,同大阪,同名古屋の3支店の閉鎖が原告P8ら6名の一斉退社と相当因果関係があるとはいえない点くらいであり,以上の点を考慮すると,原告P8ら6名は,同 特段の事情として立証に成功しているのは被告千葉,同大阪,同名古屋の3支店の閉鎖が原告P8ら6名の一斉退社と相当因果関係があるとはいえない点くらいであり,以上の点を考慮すると,原告P8ら6名は,同人らの行為がそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為であるという評価を障害する事実を立証することができていない状況にあると解するのが相当である。そうだとすると,原告P8ら6名の同人らの行為がそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為ではないとの主張は,その余の点を判断するまでもなく理由がないので,これを採用することができない。 オ小括以上の検討から明らかなとおり,被告の原告P8ら6名に対する本件懲戒解雇は有効であり,原告P8ら6名において同人らの行為がそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為であるという評価を障害する事実を立証することができていない本件にあっては,原告P8ら6名の被告に対する退職金請求は,理由がなく,棄却するのが相当である。 退職金不支給条項適用の成否(争点6及び7)について-原告P2ら3名の関係(1)問題の所在と争点の摘示ア前記3(1)でも述べたとおり,被告の退職金規程第6条によれば「懲戒,解雇された者,退職に際して,その手続き及び業務の完全なる引き継ぎをなさ(ママ)ずして退職した場合」には,退職者に対し,退職金を支給しない旨の本件退職金不支給条項の規定が存在する。そして,被告は,原告P2ら3名は,退職に- 34 -際し,引継不履行の事実があるので,退職金を支払う義務はないと主張する。 これに対し,原告P2ら3名は,退職に際し,引継不履行の事実はなく,仮にあったとしても,同人らのそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為はな 職金を支払う義務はないと主張する。 これに対し,原告P2ら3名は,退職に際し,引継不履行の事実はなく,仮にあったとしても,同人らのそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為はなかったとして,退職金の支払を請求している。 イなお,付言するに,被告の主張の中には,原告P2ら3名には,懲戒解雇に該当する事由が存在するので,被告において退職金を支払う義務はないかのごとき主張が存在する。しかし,被告の退職金規程第6条は,被告の退職金支給義務がなくなるためには,従業員に単なる懲戒解雇事由が存在するだけでは足りず,懲戒解雇処分があったことまでを要求しており,したがって,原告P2ら3名に懲戒解雇事由が存在するとの主張は主張自体失当であるので,この点については,これ以上言及しないこととする。 (2)事実認定前記争いのない事実等,証拠(文末の括弧内に掲記したもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告P2ら3名の経歴(前記争いのない事実等(1)イ,乙12)(ア)原告P2は,平成2年12月10日,被告に入社し,同15年10月当時,被告千葉支店の支店長の地位にあったものであり,当時の基本給は月額17万1200円であった。 (イ)原告P1は,平成5年8月20日,キャン社に入社し,同9年ころ被告に転籍し,同15年10月当時,被告千葉支店で営業に従事しており,当時の基本給は月額13万4600円であった。 (ウ)原告P3は,平成8年3月1日,被告に入社し,同15年10月当時,被告大阪支店の支店長の地位にあったものであり,当時の基本給は月額18万8200円であった。 (エ)平成15年10月当時,被告千葉支店の従業員は原告P2,同P1を含,()。 め3名である同大阪支店の従業員は同P3を含め2名であった乙12イ被告 本給は月額18万8200円であった。 (エ)平成15年10月当時,被告千葉支店の従業員は原告P2,同P1を含,()。 め3名である同大阪支店の従業員は同P3を含め2名であった乙12イ被告からタイトー社への営業譲渡(ア)原告P2ら3名は,平成15年7月11日ころ,原告P8ら6名を含む新宿支店の従業員全員が一斉に就労を放棄し,キャン社の社員約500名が一斉に退社したことを知り,今後の被告の行方を考え動揺したものの,これまでと同様の業務に従事していた(甲29,30,乙14の2,原告P2【13,25,26頁,弁論の全趣旨。 】)(イ)被告は,平成15年7月21日,緊急支店長会議を開催し,その際,被告のP20社長は,各支店長に対し,支店を他に売却するようなことはしないと言明した。ところが,被告は,平成15年9月26日,被告千葉支店長の原告P2,同大阪支店長の原告P3,同名古屋支店長の3名をキャン社の本社に呼び,同人らの所属する3支店をタイトー社に売却(営業譲渡)することにしたこと,前記3支店の従業員はキャン社に転籍してもらいたい旨指示した。これに対し,原告P3は,カラオケ事業に従事したいので,タイトー社への転籍を希望したが,P20社長はこれを拒否した。 - 35 -,,,,原告P2同P3は翌27日NNV社に入社していた原告P8に会いこれまでの経緯を説明し,被告を退社し,NNV社への入社を申し込んだところ,原告P8はこれを了承した(乙48,証人P19【10ないし。 12頁,原告P2【3,13ないし15,26頁,弁論の全趣旨)】】(ウ)原告P2は被告千葉支店に戻り,従業員である原告P1及び訴外P25に対し,同支店は閉鎖となり,タイトー社へ営業譲渡される予定であること,自分は被告を退社し,原告P8がカラオケ事業 )】】(ウ)原告P2は被告千葉支店に戻り,従業員である原告P1及び訴外P25に対し,同支店は閉鎖となり,タイトー社へ営業譲渡される予定であること,自分は被告を退社し,原告P8がカラオケ事業部長をしているNNV社に入社する予定であることを話をした。これに対し,原告P1は,同P,。 2と同一の行動をとりたいと述べたが訴外P25は被告に残ると述べた原告P2は,労働基準監督署に退職の際の事務手続について相談をし,退職日の2週間前には,退職の意思を会社に明らかにするよう指導され,これに従うことにした。そこで,原告P2,同P1は,給料計算の締切日である平成15年10月20日付けで退職することとし,同月4日ころ到達の書面で,同月20日付けで退職する旨の意思表示をした。 また,原告P3も,平成15年10月1日ころ,被告に対し,同月20日をもって被告を退職する旨の書面を送付し,翌2日ころ,被告に到達した(前記争いのない事実等(2)ア(イ(ウ,原告P2【4,9,1。 ))0,14,15頁,弁論の全趣旨)】(エ)原告P2,同P1から退職届を受領した被告は,同社の経営管理,社長補佐業務を行っていたP19を被告千葉支店に派遣し,原告P2,同P1に対し,被告を退職するのを思いとどまるよう慰留した。しかし,原告P2,同P1の退職の意思は固かった。そこで,P19は,原告P2,同P1に対し,被告を退職するのはやむを得ないが,せめて退職日を平成15年10月末日まで延期してもらいたいと申し入れたが,同人らはこれも拒否した。結局,P19は,原告P2,同P1が,被告を平成15年10月20日で退職するのをやむを得ないことだと判断し,暗黙のうちにこれを受け入れた(証人P19【14,40頁,原告P2【15,16頁,。 】】弁論の全趣旨)なお,P19は,原 告を平成15年10月20日で退職するのをやむを得ないことだと判断し,暗黙のうちにこれを受け入れた(証人P19【14,40頁,原告P2【15,16頁,。 】】弁論の全趣旨)なお,P19は,原告P2に対し,就業規則では退職の2か月前に予告することを説明して退職日を延ばしてほしいと述べたとの供述部分があるが(証人P19【14頁,P19は,他方で,10月末日まで退職日】)を延ばしてほしいと述べたと証言していること(証人P19【14頁,】)退職日の2か月前に予告がなければ退職金を支払えないなどの強い発言があった形跡がないこと,P19は就業規則の内容を必ずしも把握していないこと(証人P19【24,25頁)に照らすと,前記P19の証言内】容は信用することができない。 (オ)被告は,平成15年10月10日,タイトー社との間で,正式に基本合意書を取り交わし,千葉支店,大阪支店,名古屋支店らを閉鎖し,同支店の営業譲渡する旨の合意をした(乙48,証人P19【10,38,39頁。 】)- 36 -(カ)原告P2ら3名は,被告のP10支店長代行らに対し,タイトー社への業務引継について具体的に何をすべきか等問い合わせたりしたが,被告からは何ら具体的指示がなく日時が経過した。原告P2は,平成15年10月18日ころ,被告仙台支店長P12に対し,同千葉支店の業務の引継を終え,同月20日,被告を退社した。被告千葉支店では,平成15年10月23日ころからタイトー社への引継(移管)が始まった。 また,被告大阪支店では,タイトー社への移管業務は,平成15年10月20日に近接したころから開始され,原告P3は,1,2店の契約移管しか実行できないまま,同月20日を迎え,同日,被告を退社した(証。 人P10【17ないし19,30,31頁,同P19【12ない 月20日に近接したころから開始され,原告P3は,1,2店の契約移管しか実行できないまま,同月20日を迎え,同日,被告を退社した(証。 人P10【17ないし19,30,31頁,同P19【12ないし14】頁,原告P2【4ないし6頁)】】(キ)原告P2は,平成15年10月20日で被告を退職したが,退職後も,後任のP12から電話連絡を受け,集金状況や不明な点を教示するなど協力をした(原告P2【5頁。 】)(3)争点についての判断(争点6,7)ア前記(2)で認定した事実を踏まえ,原告P2ら3名に退職金不支給条項に該当する事実が存在するか否か検討する。 (ア)被告の退職金規程第6条によれば「退職に際して,その手続及び業務,の完全なる引き継ぎをなさずして退職した場合」には,退職金を支払わないことがある旨規定する。そこで,原告P2ら3名に,退職に際して,引継義務の不履行があったかという点が問題となる。 (イ)前記(2)で認定した事実及び弁論の全趣旨によれば,①原告P2ら3名は退職の2週間以上前に被告に退職の意思表示をしていたこと,②被告の経営管理を担当しているP19は,原告P2,同P1に対し,退職を慰留し,これに失敗するや退職日を10月20日から同月末日までに延期してほしいと申し入れたが,これも断れるや,同人らが同月20日に退職することを暗黙に了承したこと,③原告P2ら3名は,退職の意思表示をしてから退職日までの間,被告に対し,具体的引継の指示を求めていたが,,,被告から具体的指示がないまま退職日を迎えたこと④原告P2ら3名は被告の指示があるにもかかわらず敢えて被告の顧客をダイトーへ切り替える業務を怠ったと認めるに足りる証拠は存在しないこと,⑤被告とタイトー社との間の営業譲渡契約の締結は平成15年10月10日であり,移 被告の指示があるにもかかわらず敢えて被告の顧客をダイトーへ切り替える業務を怠ったと認めるに足りる証拠は存在しないこと,⑤被告とタイトー社との間の営業譲渡契約の締結は平成15年10月10日であり,移管業務が始まったのは平成15年10月20日に近接したころであること,⑥原告P2は退職の数日前に被告仙台支店長P12に対し,同千葉支店の引継ぎを行い,その後も,P12から同支店での分からないことについての質問に答えるなど協力していることが認められる。以上の事実に照らすと,原告P2ら3名には,退職金規程第6条に規定する退職時の引継義務の不履行があったとまでいうことは困難である。 (ウ)以上によれば,被告の原告P2ら3名には本件退職金不支給条項に該当する事由があり,同条項を適用すべきであるとの主張は,その余の点を判- 37 -断するまでもなく理由がない。 イなお,付言するに,仮に,原告P2ら3名に本件退職金不支給条項に該当する事由があったと仮定しても,同人らにそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為がなければ使用者である被告は従業員に対し退職金を支払わねばならないところ,前記ア(イ)で判示した各事実に原告P2ら3名のこれまでの勤務期間,これまでの勤務期間中に被告から懲戒処分を受(),,けた形跡がないこと弁論の全趣旨を併せ考慮すると原告P2ら3名にはそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為があるということはできない。そうだとすると,被告の原告P2ら3名に対する退職金支払拒否は,この点でも理由がないことになる。 ウ原告P2ら3名の退職金額前記争いのない事実等(4)によれば,被告に対する,原告P1の退職金は63万9350円,同P2の退職金は108万7470円,同P3の退職金は。 ,() とになる。 ウ原告P2ら3名の退職金額前記争いのない事実等(4)によれば,被告に対する,原告P1の退職金は63万9350円,同P2の退職金は108万7470円,同P3の退職金は。 ,()53万3550円であることが認められるまた前記争いのない事実等1イ(3)イによれば,原告P2ら3名は,いずれも,平成15年10月20,日に被告を退職したところ,同人らの退職金の支払日は翌月の給料支払日である同年11月28日となる。したがって,原告P2ら3名の退職金支払請求権の遅延損害金の気散じは平成15年11月29日となるところ,同人らは,その一部として本訴状送達の日の翌日である平成16年6月18日から支払済みまで商事法定利率年6%の割合での支払を求めているので,その限度で理由があることになる。 結論 以上によれば,原告P8ら6名の被告に対する退職金支払請求はいずれも理由がないのでこれを棄却することとし,原告P2ら3名の被告に対する退職金由がないのでこれを棄却することとし,原告P2ら3名の被告に対する退職金支払請求はいずれも理由があるので,これを主文第1項のとおり認容することにする。 東京地方裁判所民事第36部裁判官難波孝一
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