平成29年3月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(ワ)第14号残業代請求事件口頭弁論終結日平成29年1月19日判決主文 1 被告は,原告に対し,1011万4971円及び内953万3480円に対する平成26年7月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを20分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 4 この判決は第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求の趣旨 1 被告は,原告に対し,1285万7390円及び内953万3480円に対する平成28年8月2日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。 2 被告は,原告に対し,678万2031円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告に対し,50万円及びこれに対する平成26年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告の負担とする。 5 仮執行宣言第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,被告の元従業員であり,平成26年8月5日に被告を退職した原告 が,被告に対し,以下の支払を求めた事案である(以下,それぞれ「請求(1)」などということがある。)。 (1) 平成24年6月1日から平成26年6月30日までの期間(以下「本件請求期間」という。)の時間外労働の賃金(割増賃金を含む。)及び寮費相当額として控除されてきた賃金部分が未払であると主張して,労働契約に基づき,上記未払賃金953万3480円及び確定遅延損害金332万3910円(賃金の各支払期日の翌日から退職後に初めて到来する賃金支給日で して控除されてきた賃金部分が未払であると主張して,労働契約に基づき,上記未払賃金953万3480円及び確定遅延損害金332万3910円(賃金の各支払期日の翌日から退職後に初めて到来する賃金支給日である平成26年8月25日までは商法所定の年6分,その翌日である同月26日から請求拡張申立書の提出日である平成28年8月1日までは賃金の支払の確保等に関する法律〔以下「賃確法」という。〕6条1項及び同法施行令1条所定の年14.6パーセントの割合による。)の合計1285万7390円並びに内上記953万3480円に対する上記提出日の翌日である平成28年8月2日から支払済みまで上記年14.6パーセントの割合による遅延損害金(賃確法上は遅延利息)の支払。 (2) 労働基準法(以下「労基法」という。)114条に基づく付加金として,678万2031円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払。 (3) 被告が原告の健康に配慮すべき義務に違反したなどとして,不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償として,慰謝料50万円及びこれに対する退職後の日である平成26年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者ア被告被告は,肩書地に本社を置く,「ほっともっと」という名称の弁当チェ ーン,「やよい軒」という名称の外食チェーンをはじめとする飲食店の経営等を目的とする株式会社である。 なお,同弁当チェーン事業においては,平成26年12月頃当時,社員約510名が勤務しており,各店舗に平均約17名,全体で約1万7000名のパートタイマー・ア 等を目的とする株式会社である。 なお,同弁当チェーン事業においては,平成26年12月頃当時,社員約510名が勤務しており,各店舗に平均約17名,全体で約1万7000名のパートタイマー・アルバイト従業員(被告においては,これらの従業員を「クルー」と呼んでいる。)が在籍していた(甲8,16)。また,同弁当チェーンにおいては,直営店とフランチャイズ加盟店が存在するが,下記のように原告は,直営店の店長職にあった。 イ原告原告(昭和●●年●●月●●日生)は,被告との間で,平成22年6月1日,期間の定めのない労働契約を締結して,正社員として入社し,以後,同26年8月5日に退職するまで大分県及び栃木県内の「ほっともっと」で勤務した,元従業員である。 なお,原告は,平成22年9月1日付けで,被告における「直営店店長職の者」(以下「店長」という。)に昇格し,以後退職するまで同職にあった。 (2) 被告において,店長と日々関わる役職として,オペレーションフィールドカウンセラー(以下「OFC」という。)という役職が存在し,これらの者は,被告の各営業部の担当する店舗についての業務を統括し,担当店舗における適切な人事管理及び職場管理並びに服務規律の監督指導を行う(乙2)。 なお,平成25年6月頃より以前はOFCと同種の役職としてスーパーバイザー(以下「SV」という。)という役職があったが,同月頃,OFCが新設されたことにより,SVの役職は廃止となっている。 (3) 就業規則等の定めア被告の就業規則(以下「本件就業規則」という。)には,以下のような定めがある(甲1)。 (ア) 第2条(用語の定義)第1項この規則において社員とは正社員のことをいい,パートタイマーについては別に就 」という。)には,以下のような定めがある(甲1)。 (ア) 第2条(用語の定義)第1項この規則において社員とは正社員のことをいい,パートタイマーについては別に就業規則を定める。 なお,会社と労働契約を締結している者すべてを総括して従業員という。 第2項この規則で管理監督者とは次の各号のいずれかに該当する者をいう。 1号 4級職以上の者2号 MGR職及びトレーナー職の者3号 OFC職及びエリアMGR職の者4号直営店店長職の者(イ) 第12条(始業時刻・終業時刻及び休憩時間)第1項所定労働時間は,1年単位の変形労働時間制によるものとし,週間平均所定労働時間40時間以内とする。始業時刻・終業時刻及び休憩時間は次のとおりとする。 1号始業時刻午前9時2号終業時刻午後5時45分3号休憩時間午前11時45分から午後0時45分まで。 また,時間外勤務を行う場合は午後5時45分より午後6時までを休憩時間とする。 第2項前項の対象期間は1年間とし,毎年4月1日を起算日とする。対象者となる従業員の範囲等は労使協定で定めるところによる。 (ウ) 第15条(休日)休日は次のとおりとする。 1号日曜日 2号土曜日(第1土曜日を除く)3号国民の祝日(日曜日と重なったときは,その翌日)4号年末年始(12月31日~1月3日)5号夏季休暇(8月15日)(エ) 第18条(所定時間外勤務) (日曜日と重なったときは,その翌日)4号年末年始(12月31日~1月3日)5号夏季休暇(8月15日)(エ) 第18条(所定時間外勤務)業務の都合により必要ある時は,時間外に勤務させることがある。 ただし,1日につき平日は終業時刻後10時間まで,休日は5時間までとし,1か月を通算しても42時間を超える労働はさせない。 ただし,育児や介護を行う労働者のうち希望者については,一定期間年間150時間を超えないものとする。 (オ) 第19条(管理監督者に対する適用除外)前各条の規定にかかわらず,労基法第41条の定めるところにより,監督もしくは管理の地位にある者については,労働時間,休日,休暇の規定の適用を除外する。 (カ) 第23条(出勤・遅刻及び早退)第1項社員は,規定出勤時刻までに出勤しなければならない。規定出勤時刻後に出勤した者は遅刻とし,規定退出時刻前に退出した者は早退とする。 第2項省略イ被告の給与規程(以下「本件給与規程」という。)には,以下のような定めがある(甲1・13頁以下)。 (ア) 第2条(給与計算期間)給与の計算期間は,毎月1日より月末日までとする。 (イ) 第3条(給与支払日)第1項給与支払日は,毎月25日とする。ただし,欠勤による日割控除,遅刻・早退及び私用外出における時間割控除,時間 外勤務手当及び休日出勤手当の支給は,翌月25日とする。 当日が金融機関休日にあたる場合は,その前日に繰り上げて支払う。 第2項労基法第25条の適用を受ける場合はこの限りではない。 (ウ) 第6条(端数計算) 当日が金融機関休日にあたる場合は,その前日に繰り上げて支払う。 第2項労基法第25条の適用を受ける場合はこの限りではない。 (ウ) 第6条(端数計算)給与計算の場合に,給与の各項目に円位未満の端数が生じた場合には,その端数を円位に切り上げて計算する。 (エ) 第16条(役職手当・店舗管理手当)役職者および店舗管理者に対して,別表-7により役職手当および店舗管理手当を支給する。 (別表-7) 役職手当および店舗管理手当一覧表【組織を統括・運営・指導する者に対する役職手当】 (単位円)役職名手当額取締役付150,000副本部長100,000部長・室長80,000部長代理50,000次長・支店長・OFC・エリアMGR40,000課長・センター長・リーダー35,000MGR20,000 【店舗管理手当】 (単位円)役職名手当額3店舗管理店長100,0002店舗管理店長70,000 1店舗管理店長50,000(4) 所定労働時間等原告について,変形労働時間制についての協定は締結されていない(甲8)。 また,本件就業規則によると,被告における所定労働時間は,月曜日から金曜日まで,午前9時から午前11時45分まで及び午後0時45分から午後5時45分までの各日7時間45分である(本件就業規則12条)。ただし,各月の第1土曜日については休日とされていない(本件就業規則15条2号)ことから,所定労働時間に含まれることとなる。 (5) 栃木労働基準監督署(以下「栃木労基署」という。)は, 条)。ただし,各月の第1土曜日については休日とされていない(本件就業規則15条2号)ことから,所定労働時間に含まれることとなる。 (5) 栃木労働基準監督署(以下「栃木労基署」という。)は,平成26年9月17日付けで,被告に対し,原告が行った時間外労働に対し割増賃金を支払っていないことが労基法37条1項に違反すると指摘して,是正勧告をした(甲14)。 これに対し,被告は,同年10月10日付けで,栃木労基署に対し,被告の店長職は労基法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」という。)に当たるため,原告について労基法37条1項の労働時間・休日等に関する規定は除外されるので,上記指摘は当たらない旨報告した(甲14)。 その後,現在に至るまで栃木労基署は,被告について送検等の手続を取っていない(弁論の全趣旨)。 (6) 原告は,平成26年7月17日付けの書面で,被告に対し,原告が行った時間外労働に対し割増賃金の支払を求めたところ,同月23日,被告は,「ご連絡」と題する書面において,同支払を拒否した(甲4,5)。 その後,原告は,平成27年1月15日,本件訴訟を提起した。 3 主な争点(1) 原告の管理監督者該当性(2) 原告の実労働時間 (3) 寮費相当額の賃金からの控除等の可否(4) 賃確法6条2項,同法施行規則6条4号の「合理的な理由」の有無(5) 付加金の支払を命ずることの当否及びその額(6) 損害賠償責任の有無等 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1)(原告の管理監督者該当性)(請求(1)関係)について(被告の主張)以下のような原告の人事や店舗運営についての権限,勤務態様や賃金等の待遇を踏まえて総合的に考慮すれば,被告の店長 争点(1)(原告の管理監督者該当性)(請求(1)関係)について(被告の主張)以下のような原告の人事や店舗運営についての権限,勤務態様や賃金等の待遇を踏まえて総合的に考慮すれば,被告の店長職にある原告は,労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者として管理監督者に当たる。 そして,店舗における管理監督者該当性の判断においては,労基法の適用単位となる事業所である店舗において,監督の地位にある者又は管理の地位にある者に該当するか否かで判断すべきであり,店舗を超えた事業経営についての関与までを要素とすべきではない。 ア人事についての権限原告は,店長として,自らの店舗におけるクルーの採用に関し,募集の要否,募集人数,募集方法,勤務時間等の決定をする権限や,応募してきた候補者に対する面接を直接行い,採用を決定し,労働契約を締結する権限,採用後の教育指導等をする権限を有していた。 また,店長は,クルーの雇止めについて,その適法性や相当性について判断し,クルーの解雇についても解雇事由の有無や解雇の必要性等について判断し,それらを行う権限を有していた。 加えて,店長は,クルーの勤務態度の評価を行い,必要であれば,時給等の変更を申請することができ,これは基本的に承認されるのであるから,実質的にクルーの時給等の変更を決定する権限も有していた。 イ店舗運営についての権限原告は,店長として,店舗運営に関し,クルーの勤務態度等を勘案して,自らの裁量によって,クルーの勤務シフトに当たるワークスケジュール表を作成する権限を有し,必要な範囲でクルーにシフト外勤務を命じる権限も有していた。また,クルーの勤務状況を監督し,問題があれば指導する権限を有していた。 加えて,店舗の営業戦略の決定, ール表を作成する権限を有し,必要な範囲でクルーにシフト外勤務を命じる権限も有していた。また,クルーの勤務状況を監督し,問題があれば指導する権限を有していた。 加えて,店舗の営業戦略の決定,人件費や売上げの管理,店舗の安全・衛生管理,クレーム対応等について,店長である原告の責任で行う権限を有していた。 ウ勤務態様店長である原告には,遅刻,早退等に対する減給規定の適用はなく,人事考課において不利益な取扱いがされることもない。労働時間についても,自己の判断で決定でき,タイムカード等による出退勤管理は行われていない。人員不足であったとしても,他のクルーに出勤を要請したり,他店舗に応援を要請したりするなどし,人員不足の穴埋めをすることが可能であり,店長である原告は自らシフトに入る必要はない。 職務内容としても,クルーの職務内容である調理や販売等の業務とは異なり,店舗運営に関する事項である,店舗クルーの管理,店舗設備・商品原材料の管理,金銭の管理等の店長固有の業務や,調理・販売業務について監督的立場からの業務を行っていた。 エ賃金等の待遇原告は,店長として,店舗管理手当の支給を受けており,これは,役職手当と同列のものであるところ,同手当の支給水準は,「組織を統括・運営・指導する者」である部長代理や副本部長の役職手当と同水準のものであった。 このように店舗管理手当が高額に設定されているのは,店舗は被告の経 営における最も重要な施設であり,店長は,いわば店舗の経営者として,その店舗の運営を一手に担っていることを考慮してのものであり,相当な待遇を得ているものである。 原告が3か月で店長職となったのは,原告が飲食店における勤務経験が長いことや昇進テストに合格したことが要因であるから, 一手に担っていることを考慮してのものであり,相当な待遇を得ているものである。 原告が3か月で店長職となったのは,原告が飲食店における勤務経験が長いことや昇進テストに合格したことが要因であるから,そのことによって原告が管理監督者でないことにはならない。 (原告の主張)否認ないし争う。 ア人事についての権限原告は,クルーの採用に関し,募集の要否,人数,募集方法,勤務時間を決定する権限は有していたものの,求人誌への募集の掲載手続といった実際の募集手続はOFCが行っており,クルー候補者との労働契約の締結についても,OFCの事後の承認が必要であり,その実質的な責任と権限はOFCにあった。さらに,採用の際に時給額を決定する権限もなかった。 クルーの雇止めや解雇についても,まずOFCに相談することとなっており,OFCの指導の下に本人を指導し,それでも改善が見られない場合に,OFCが退職を勧奨する仕組みとなっていたのであり,原告に雇止めや解雇の権限はなかった。むしろ,店長としての研修や会議において,クルーの雇止めや解雇は原則としてできないという前提で仕事をするよう指導を受けていた。 当然,原告が正社員の採用等に関与することはなく,クルーの中で正社員になることを希望する者がいた場合は,それを上司に伝えるのみであり,採用等は被告の本社人事課が担当していた。 人事考課に関しても,店長である原告に,クルーの時給を上げる権限などはない(そもそもクルーの個別的な昇給や昇進という仕組みが存在しない。)。 イ店舗運営についての権限店長には,ワークスケジュール表を作成する権限は存在するものの,クルーにシフト外勤務を命ずる権限までは存せず,必要となった際に個別に要請するにとどまる。また,店舗運営について,営業戦略の決定権限はなく には,ワークスケジュール表を作成する権限は存在するものの,クルーにシフト外勤務を命ずる権限までは存せず,必要となった際に個別に要請するにとどまる。また,店舗運営について,営業戦略の決定権限はなく,人件費や売上げの管理,店舗の安全・衛生管理,クレーム対応もすべてOFCの指示の下に行うにすぎない。さらに,店舗内におけるメニューや弁当等の価格を決める権限もなかった。 被告においては,全国でチェーン展開していることから,各店舗について人件費ではなく,各地域の時給の相場も踏まえた売上予算に対して使用可能な労働時間を示す「人・時」という単位で管理していたが,これに反し,労働力を使いすぎるようなことがあれば,叱責されるだけでなく,インセンティブという名の賃金が減額されるなどしたことからしても,店長に重要事項を決定する権限が与えられていたとはいえない。 ウ勤務態様遅刻,早退を理由とする懲戒事由に掲げる規定(本件就業規則65条2号)についても,遅刻,早退等を理由とする時間割控除の規定(本件給与規程28条)についても,店長職への適用除外規定はなく,むしろ,1日7時間45分を超えない勤務は,出勤とは扱わないとの指導を受けていた。 また,労働時間について,確かにタイムカードに基づく出退勤管理はなされていないものの,クルーの人員不足を補うためにシフトに入ることが要請され,原告は連日長時間シフトに入るなどしており,実質的に自己の労働時間を自由に決定することなどできなかった。クルーを育成することも職務ではあるが,クルーが育った場合には,他店への応援を要請されたり,クルーが育っていない店舗へ異動させられたりするのであり,結局,自己をシフトに組み込むことから逃れることはできなかったのが現実である。 職務内容としても,調理・販売業務について れたり,クルーが育っていない店舗へ異動させられたりするのであり,結局,自己をシフトに組み込むことから逃れることはできなかったのが現実である。 職務内容としても,調理・販売業務についてはクルーと共通した業務であり,結局は原告もシフトに入り,調理や販売を行っているのであって,単に指示のみを行うような監督業務のみにとどまっているわけではない。 エ賃金等の待遇店舗管理手当について,上級職の役職手当の額と偶然一致している部分はあるものの,性質の異なる手当であり,むしろ,原告の労働時間を時給に換算した場合,1000円程度にすぎないことや,同年代の被告の社員の平均年収や同年代の賃金センサス上の平均賃金を下回っていることからすれば,経営者と一体的立場にある者としての妥当な待遇とはいい難い。 また,原告が被告への入社後わずか3か月で店長となっていることからしても,店長職が労務管理について経営者と一体的な立場にある者ということはできない。 (2) 争点(2)(原告の実労働時間)(請求(1)関係)について(原告の主張)原告は,毎月,勤務状況確認表(甲2)を作成し,被告に提出して上司3名の決裁を受けていたのであるから,原告の実労働時間は,同表に記載されたとおりである。 (被告の主張)原告が作成して被告に提出していた勤務状況確認表に記載された時間が実労働時間であるとの原告の主張は,否認ないし争う。 原告は,労基法41条2号に定める管理監督者であったのであり,タイムカードによる労働時間管理は行っていない。勤務状況確認表は,被告が原告の勤務状況を確認し,健康管理の資料として作成し,提出を受けていたものにすぎず,被告においてその記載が実際の労働時間を反映したものかを確認していないのであるから,必ずしも実態に合致するもの 告が原告の勤務状況を確認し,健康管理の資料として作成し,提出を受けていたものにすぎず,被告においてその記載が実際の労働時間を反映したものかを確認していないのであるから,必ずしも実態に合致するものではない。特に休憩時間については,出勤後退社するまでの間,常に業務に従事しなければなら ないという勤務実態はないにもかかわらず,これが正確に反映されていない。 (3) 争点(3)(寮費相当額の賃金からの控除等の可否)(請求(1)関係)について(被告の主張)ア原告は,被告の寮への入居を申請する際,被告担当者から,寮費相当額を毎月給与から控除する旨の説明を受けた上で,社宅・寮入居申請書に自ら署名押印し,被告に提出している。このように原告は,寮費相当額を賃金から控除することについて,自由な意思に基づいて同意したものであるから,賃金全額払の原則に反するものではない。 イ仮に,寮費相当額の控除が無効であったとしても,原告は寮を利用していたのであるから,この間の寮費相当額が未払ということになるのであり,その未払に係る債権と原告の賃金請求権に関する附帯請求部分である遅延損害金債権又は請求(3)の損害賠償債権とを相殺する。 (原告の主張)いずれも否認ないし争う。 (4) 争点(4)(賃確法6条2項,同法施行規則6条4号の「合理的な理由」の有無)(請求(1)関係)について(被告の主張)賃確法6条2項,同法施行規則6条4号の「合理的な理由」については,厳格に解するべきではなく,明らかに不合理とはいえない程度の一応の合理的な理由があれば足りると解される上,本件において,原告の管理監督者該当性などが争点となっており,被告は合理的な根拠に基づいて原告が管理監督者に該当する旨主張していることなどからすれば,原告の主張するよ 理由があれば足りると解される上,本件において,原告の管理監督者該当性などが争点となっており,被告は合理的な根拠に基づいて原告が管理監督者に該当する旨主張していることなどからすれば,原告の主張するような厳格な解釈に従ったとしても,合理的な理由があるといえる。 (原告の主張)争う。 賃確法6条2項,同法施行規則6条4号にいう「合理的な理由」の有無は,法律上あるいは事実上の争点があるために,訴訟手続等によって賃金債権の存否及びその額を確定することについて合理的理由があるか否かの観点から判断するのが相当であり,本件においては,栃木労基署による是正勧告がなされたにもかかわらず,被告がこれを無視して独自の見解に固執したことが原因であるから,何ら合理性は存しない。 (5) 争点(5)(付加金の支払を命ずることの当否及びその額)(請求(2)関係)について(原告の主張)被告は,栃木労基署の指導を受けながら,これを無視して残業代不払を継続し,また,総労働時間が月平均所定労働時間を100時間以上超過する月が大半にわたるなど,原告に長時間労働を余儀なくさせたものであるから,付加金として,678万2031円(訴訟提起時において既に2年間の除斥期間にかかっていた部分並びに法内残業及び違法控除の部分を除外)の支払を命じることが相当である。 (被告の主張)争う。 (6) 争点(6)(損害賠償責任の有無等)(請求(3)関係)について(原告の主張)被告は,勤務状況確認表等によって,原告が長時間労働をせざるを得ない状況にあるのを認識しながら抜本的解決を行わずに放置し,原告に過労死水準とされる月100時間の残業を優に超えるような長時間労働を余儀なくさせ,原告の健康に配慮すべき義務に違反し,原告に多大な精神的 状況にあるのを認識しながら抜本的解決を行わずに放置し,原告に過労死水準とされる月100時間の残業を優に超えるような長時間労働を余儀なくさせ,原告の健康に配慮すべき義務に違反し,原告に多大な精神的苦痛を与えたのであり,原告に対し,不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償責任を負い,その慰謝料としては50万円が相当である。 (被告の主張) いずれも否認ないし争う。 被告は原告を含む従業員の健康管理を適切に行っており,原告の健康に配慮する義務に違反した事実はない上,原告が管理監督者に該当せず,時間外割増賃金請求権が認められるのであれば,原告が長時間労働をしたことによる精神的苦痛は,時間外割増賃金の支払によって慰謝されるべき性質のものであり,その支払によってもなお償えない特段の精神的苦痛が生じたとは考えられない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(原告の管理監督者該当性)(請求(1)関係)について(1) 労基法41条2号の管理監督者に該当するか否かについては,労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって,労働時間,休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し,現実の勤務態様も,労働時間等の規制になじまないような立場にあるかを,職務内容,責任と権限,勤務態様及び賃金等の待遇などの実態を踏まえ,総合的に判断すべきである。 (2) 前記前提事実のほか,証拠(甲2,16,乙1ないし6,11,原告本人,証人a)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(なお,以下の認定事実は,主に本件請求期間に関するものである。)。 ア人事に関する事項(ア) 原告は,店長として,店舗内の部下であるクルーの採用に関し,募集の要否,人数 られる(なお,以下の認定事実は,主に本件請求期間に関するものである。)。 ア人事に関する事項(ア) 原告は,店長として,店舗内の部下であるクルーの採用に関し,募集の要否,人数,募集方法,勤務時間を決定し,応募してきた者の面接を行い,その適性を判断し,雇用契約書を交わすなどクルーを採用する権限を有していたものの,クルーの募集に際しては,決められた予算の範囲内で,OFCに相談しながら,OFCの決裁を経て募集をかけていた。 (イ) また,原告は,採用されたクルーの時給を決定する権限まではなく,その後の昇格や昇給の権限も有していなかった。また,クルーの雇止め や解雇の権限についても,OFCに相談の上で行うべきものとされていた。 この点,被告は,クルーの昇給に関し,店長である原告がクルーの勤務態度の評価を行い,必要であれば,時給の変更を申請することができ,これは基本的に承認されるのであるから,原告は実質的にクルーの時給の変更を決定する権限を有していたなどと主張し,証人aも,その旨証言する。しかし,職務権限規程(乙2),部署別権限表(乙4)等被告における権限分配を示す規程にその旨の定めは見当たらず,証人a自身,これは運用上のルールであり,また,加盟店との時給の均衡も考慮されるなどと証言するところであり,原告が在籍当時,店長として自由にクルーの勤務態度の評価を行い,時給を変更する権限を有していたとは解し難く,その証言はにわかに信用できず,同主張は採用できない。 (ウ) さらに,原告には正社員の採用権限はなく,クルーの中に正社員になることを希望する者がいる場合にOFCに伝達するのみであった。 イ店舗運営に関する事項(ア) 原告は,店長として,毎月,SVやOFCから示さ 採用権限はなく,クルーの中に正社員になることを希望する者がいる場合にOFCに伝達するのみであった。 イ店舗運営に関する事項(ア) 原告は,店長として,毎月,SVやOFCから示された月間売上目標と売上予算を前提に1日の売上目標を立て,さらに,1時間ごとの売上予測を立てて,その時間に必要な最低人数を店舗に配置するようにして,クルーの勤務シフト(被告ではこれをワークスケジュール表と呼んでいる。)を作成するが,その際,被告から決められていた,月間の売上予算に対して使用可能な労働時間を示す「人・時」の範囲内での配置が求められており,売上げの実績値が計画を下回らないようSVやOFCから指導されていた(ワークスケジュール表(乙11)にも「人時売上高」という欄があり,計画と実績を記載することとなっている。)。そして,原告は,このようなワークスケジュール表を2週間先のものまで作成していた。 (イ) 原告は,食材の仕入れについて,必要な食材を判断し,被告本社の指定する発注システムによって一括注文することができ,急遽食材を仕入れる必要が生じた場合において,1000円未満の食材であれば購入することができたが,1000円以上となる場合は,SVやOFCに相談し,その許可を得た上で購入することとされており,店舗内の消耗品の購入についても同様に,1000円未満のものについてのみ,自己の判断で購入することができた。 そして,原告には,自己の店舗の営業時間や店舗独自のメニューを決定する権限はなかった。 (ウ) 以上のほか,原告は,自己の店舗内における,人件費や売上げの管理,在庫管理,クルーの出退勤の管理や教育,安全・衛生管理,客からのクレーム対応等といった職責を負っていた。 ウ他の職位者との関係被告に 己の店舗内における,人件費や売上げの管理,在庫管理,クルーの出退勤の管理や教育,安全・衛生管理,客からのクレーム対応等といった職責を負っていた。 ウ他の職位者との関係被告には,被告が「ほっともっと」を新規出店する際,同店舗の管理を行うオープニングリーダーという役職が存在し,職務権限規程上も店長と同一の権限と責任を有するとされるところ(乙2・17条),オープニングリーダーについては,被告において労基法41条2号の管理監督者とはされていない。 エ勤務態様に関する事項(ア) 原告は,店長として,管理監督者に該当することを前提に,労働時間,休日,休暇の規定の適用が除外されていたから(本件就業規則19条),社員の遅刻・早退に関する規定(同23条,24条)のほか,その規定を前提とする懲戒事由に関する規定(同65条2号)や,給与の減額の規定(同50条,本件給与規程28条)についても適用されていなかった。 (イ) また,原告は,タイムカード等による出退勤管理を行われておらず, 出勤時間や休日の取得について自己の都合によって決定することが可能であったが,ワークスケジュール表の作成に当たり,調理・販売業務を行うクルーが不足するなどした場合,店長は,自己が管理している他の店舗や他の店長が管理している店舗のクルーに応援を要請することができるとされていたものの,それでも不足する場合は,店長自身が店舗の責任者として調理・販売業務を担当することが求められていた(店長自身が調理・販売業務を行うことを被告では「シフトイン」と呼んでいる。)。 また,原告が被告に入社した当初頃は,被告から指示される売上予算に対して使用可能な労働時間を示す「人・時」に,店長がシフトインして調理・販売業務を担当する時間が含まれて 呼んでいる。)。 また,原告が被告に入社した当初頃は,被告から指示される売上予算に対して使用可能な労働時間を示す「人・時」に,店長がシフトインして調理・販売業務を担当する時間が含まれていた。この点,証人aは,平成25年6月頃にOFCが新設された際,店長は,店舗管理数に関係なく,シフトインすることを求めない旨通達を出し,それ以降は,店舗の運営が支障なくできていて,売上げや利益が適正に管理されている限り,店長がシフトインしなくても一切マイナス評価を受けることはない旨証言するが(証人a3,4頁),そのような通達は書証として提出されていない上,原告もそのような通達の記憶はなく,少なくとも,1店舗管理の店長及び2店舗管理の店長については,店長自身がシフトインして調理・販売業務を担当することが求められることに変わりはなかった旨述べているのであり(甲16・9頁,原告本人24,25頁),証人aの上記証言はにわかに信用することはできない。 (ウ) そして,原告は,ほぼ連日にわたりシフトインをする必要があり,シフトイン時間だけで見ても月に200時間を超える場合がままあるなど,シフトイン時間は相当長時間に及んでおり,シフトイン時間を含む実労働時間に至っては,300時間を超える月が本件請求期間中13回に上ることが認められる(甲2,16,原告本人,弁論の全趣旨)。 この点,被告は,勤務状況確認表(甲2)について,争点(2)(原告の 実労働時間)において主張するように,これは,被告が原告の勤務状況を確認し,健康管理の資料として作成し,提出を受けていたものにすぎず,被告において,その記載が実際の労働時間を反映したものであるか確認していないのであるから実態に合致するものではないとして,信用性を争っている。しかし,同確認表の運用 ,提出を受けていたものにすぎず,被告において,その記載が実際の労働時間を反映したものであるか確認していないのであるから実態に合致するものではないとして,信用性を争っている。しかし,同確認表の運用ルールとして,日々入力をすること,毎月月末にOFCに提出することが求められているところ,原告の供述によると,基本的に毎日記入をしており,遅れても近日中に記入していたというのであり,休憩を取った時間については正確に計ってつけていない場合もあるが,出勤しても記載していない場合もあるというのである。また,上司による決裁欄が存在し,決裁する過程においては,日々の勤務時間について手書きでチェックまで付した上で確認している様子もみられる(甲2・8頁)が,原告に対して,不正確であるとして書き直しを求めることはなかったものである。さらに,その記入方法として,出退勤の時刻と休憩時間の記載を求め,実労働時間については休憩時間を控除し,計算ミスに注意すること,シフトイン時間には,クルーの穴埋めとしてシフトインした時間を記入し,クルーの指導やピークタイムの応援としての調理作業を行った時間は含まないことなどを注記していた(甲2・1頁)。そして,平成25年6月分からは,店長が200時間超過勤務した場合の理由と対策欄が設けられる(甲2・17頁以下)などし,被告において健康管理目的のため店長の勤務時間を把握しようとしていたというのであり,その目的からすれば,その記載内容がおよそ不正確なものということはできない。そうすると,上記勤務状況確認表の記載内容は,概ね信用することができる。 オ賃金等の待遇に関する事項原告は,店長として,基準内給与(年齢給,勤続給,職能給,資格給を合算したもので,各人の年齢,勤続年数,職務経験及び勤務成績等によっ て異なる。)に 。 オ賃金等の待遇に関する事項原告は,店長として,基準内給与(年齢給,勤続給,職能給,資格給を合算したもので,各人の年齢,勤続年数,職務経験及び勤務成績等によっ て異なる。)に加え,店舗管理手当の支給を受けることとなっており,3店舗管理の場合には10万円,2店舗管理の場合には7万円,1店舗管理の場合には5万円が支払われ,これに加え,売上増加を達成した場合に利益増加額の一部を店長に還元する「インセンティブ」という売上連動手当が支払われることとなっていた。 (3) 以上の認定事実等に基づき,被告の店長である原告が管理監督者に該当するといえるか検討する。 ア職務内容,責任と権限について(ア) 上記のように,原告は,店長として,クルーを採用する権限はあるものの,クルーの採用に当たっての時給の決定やその後の昇級の権限,正社員の採用権限もなく,雇止めや解雇の権限についても,OFCと相談の上行うべきこととされており,店舗内の人事に関する事項に係る権限は限定的であるといえる。 (イ) また,店舗の運営に関する事項についても,原告は,ワークスケジュール表を作成し,また,クルーの出退勤管理を行うなど店舗内において労務管理を一定程度担っていたといえるものの,ワークスケジュール表の作成に当たっては,被告から指示される月間売上目標,売上予算を前提に,月間の売上予算に対して使用可能な労働時間を示す「人・時」の範囲内での配置が求められており,また,店舗の営業時間も自由に決定することができないことなどからすると,店舗運営に関する裁量の幅は決して広いものではなく,その権限は実質的に制限されている。 (ウ) そうすると,原告は,店長として,クルーの採用等の人事やワークスケジュール表の作成など店舗運営に関する一定の権限を有して 幅は決して広いものではなく,その権限は実質的に制限されている。 (ウ) そうすると,原告は,店長として,クルーの採用等の人事やワークスケジュール表の作成など店舗運営に関する一定の権限を有しているとはいえるものの,その職務内容,責任と権限に照らしてみると,主体的な関与は乏しく,被告の経営に関わる重要な事項に関与しているとはいい難い。 イ勤務態様について原告は,早退や遅刻に関する規定を適用されず,また,ワークスケジュール表の作成権限を有していたものの,実態としては,調理・販売業務を行うクルーが,他店に応援を要請するなどしても不足する場合は,店長自身がクルーと同様の調理・販売業務を担当することが求められており,原告の場合には,ほぼ連日にわたり,シフトインをする必要があった。 このように原告は,規定上は勤務時間につき自由裁量が認められていたものの,実態とすれば,クルーが不足する場合にその業務に自ら従事しなければならないことにより長時間労働を余儀なくされており,実際には労働時間に関する裁量は限定的なものであり,また,クルーと同様の調理・販売業務に従事する時間が労働時間の相当部分を占めているなど,勤務態様も,労働時間等に対する規制になじまないようなものであったとはいい難い。 ウ賃金等の待遇について確かに,被告の店長は店舗管理手当の支給を受けることとなっており,店舗管理手当の水準のみを見れば,副本部長や部長・室長,部長代理等といった職位の者が受ける役職手当に匹敵する。 しかしながら,被告において給与水準を決定するものは,年齢給,勤続給,職能給,資格給等の各人の年齢,勤続年数,職務経験及び勤務成績等によって異なるものもその要素となっているのであり,店舗管理手当のみに着目して管理監督者にふさわしい待遇か否かを判断 ,年齢給,勤続給,職能給,資格給等の各人の年齢,勤続年数,職務経験及び勤務成績等によって異なるものもその要素となっているのであり,店舗管理手当のみに着目して管理監督者にふさわしい待遇か否かを判断することは相当でない。そして,証拠(甲11)及び弁論の全趣旨によれば,本件請求期間に係る平成25年度の原告の年収は474万4141円であり,同年度の被告の社員の平均年収は528万4000円であり(争いがない事実),管理監督者ではない社員を含めた全体の平均年収を下回っていること,また,上記のように,本件請求期間の約2年間において,月300時間を超過す る実労働時間となっている月が13回に及んでいるような勤務実態があったことをも考慮すれば,厳格な労働時間の規制をしなくとも,その保護に欠けるところがないといえるほどの優遇措置が講じられていたものと認めることは困難である。 エ以上述べたところによれば,原告は,その職務内容,責任と権限,勤務態様及び賃金等の待遇などの実態からすれば,労働時間,休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有するとも,現実の勤務態様が労働時間等の規制になじまないような立場にあるともいえないから,労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者,すなわち管理監督者に該当するとは認められない。 2 争点(2)(原告の実労働時間)(請求(1)関係)について争点(1)において述べたように,勤務状況確認表(甲2)の記載内容は概ね信用することができ,被告は必ずしも実態に合致するものではないと主張するものの,個別の記載内容について具体的に指摘することまでしていないことからすれば,本件請求期間(平成24年6月1日から平成26年6月30日まで)の原告の始業時刻 実態に合致するものではないと主張するものの,個別の記載内容について具体的に指摘することまでしていないことからすれば,本件請求期間(平成24年6月1日から平成26年6月30日まで)の原告の始業時刻,終業時刻及び休憩時間は,同勤務状況確認表の記載を前提に,別紙1の「始業」,「終業」及び「休憩」欄記載のとおりであると認められる。 3 争点(3)(寮費相当額の賃金からの控除等の可否)(請求(1)関係)について(1) 労基法が賃金の全額を労働者に支払うべきものとし(労基法24条1項本文),ただし,法令に別段の定めがあるか,又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等との書面による協定がある場合においてのみ,賃金の一部を控除して支払うことができる旨規定していることからすれば(同項ただし書後段),これらの手続によることなく,労働者の賃金債権を受働債権とし,使用者がその労働者に対して有する債権を自働債権とする相殺の予約 に当たるような,寮費相当額の賃金からの控除をすることは,原則として許されない。 そして,本件においては,被告の「寮規程」(乙8)や「借上げ社宅規程」(乙9)は,社員が負担する家賃について本人の給与より当月分を当月給与より控除する旨定めていること,原告は,被告の担当者から,寮費は毎月給与から控除する旨の説明を受け,それを認識した上で,「借上げ社宅規程」,「寮規程」を誠実に遵守すること等が記載された「社宅・寮入居誓約書」(乙7)に自ら署名押印したことが認められるものの(原告本人),その誓約書の提出が寮への入居の条件であり,それを提出しなければ入居することができないものとみられるから,その他の事情を踏まえてみても,寮費相当額の賃金からの控除が,原告の完全に自由な意思に基づいて行われたものであり,かつ,合理的な理 り,それを提出しなければ入居することができないものとみられるから,その他の事情を踏まえてみても,寮費相当額の賃金からの控除が,原告の完全に自由な意思に基づいて行われたものであり,かつ,合理的な理由が客観的に存在するとはいえない。 よって,寮費相当額の賃金からの控除は違法無効である。 (2) 被告は,寮費相当額の賃金からの控除が違法無効であるとしても,原告が実際に寮を利用していた期間の寮費相当額が未払ということになるのであるから,その債権と原告の賃金請求権に関する附帯請求部分である遅延損害金債権又は健康配慮義務違反に基づく損害賠償債権とを相殺する旨主張する。 しかしながら,原告の賃金請求権に関する附帯請求部分である遅延損害金債権を受働債権とする相殺の主張については,これを認めることとすれば,賃金債務の履行遅滞を正当化することになりかねず,労基法24条1項が賃金全額払の原則を定めている趣旨に反するものであり許されない。他方で,健康配慮義務違反に基づく損害賠償債権を受働債権とする相殺の主張については,後記7のとおり,そもそも受働債権自体が存在しないから,失当である。 (3) 以上からすれば,被告は,原告に対し,賃金から控除してきた寮費相当額部分について,未払賃金として支払義務を負う。 4 小括(割増賃金を含む未払賃金の額)(請求(1)関係)(1) 時間外労働の時間についてア本件就業規則15条によれば,第1週を除き,被告においては土曜日及び日曜日を休日とする週休2日制が採用されているといえるところ,本件就業規則上,いずれが法定休日か明示する規定は存しない。 しかし,本件就業規則15条1号として日曜日が挙げられていることや土曜日は第1週については休日とされていないことなどからすれば, 件就業規則上,いずれが法定休日か明示する規定は存しない。 しかし,本件就業規則15条1号として日曜日が挙げられていることや土曜日は第1週については休日とされていないことなどからすれば,被告においては日曜日をもって法定休日と扱う趣旨であると解される。また,原告は日曜日を法定休日として請求しているところ,被告において,特段この点に対する反論もしていない。 そうすると,日曜日の勤務を休日労働として認めるのが相当である。 イ以上を踏まえて原告の時間外労働時間を整理すると,原告の実労働時間が別紙2の「時間」における「実働」欄,法定労働時間内の残業時間(原告の1日の労働時間が所定労働時間である7時間45分を超え,法定労働時間である8時間を超えない時間)が「法内」欄,1日8時間を超えた労働時間が「8超」欄,週40時間を超えた労働時間(1日8時間を超えた労働時間として計上した時間及び法定休日労働時間を除く。)が「40超」欄,法定休日労働時間が「法休」欄,深夜労働時間が「深夜」欄のとおりであると認められる。 (2) 時間単価についてア被告における1日の所定労働時間は7時間45分であるが(本件就業規則12条),毎月第1週については,土曜日が休日とされていないこととの関係で,週の労働時間が40時間を超えることとなり,変形労働時間制についての協定の定めがない本件においては,週40時間を超える部分が労基法32条1項に反し無効となる。 これと本件就業規則15条が定める年間所定労働日数を前提に年間所定 労働時間を計算すると,平成24年が1933.25時間,同25年及び同26年が1911.25時間となる。 その上で,月平均所定労働時間を算定するに当たり,原告は,月平均所定労働時間につい 労働時間を計算すると,平成24年が1933.25時間,同25年及び同26年が1911.25時間となる。 その上で,月平均所定労働時間を算定するに当たり,原告は,月平均所定労働時間について,端数処理せずに計算すべきと主張するところ,同計算方法について被告から明示的な反論はなく,特段原告に有利に取り扱うものともいえないことから,同主張に基づいて計算することとし,これによれば,月平均所定労働時間は,平成24年が161.1041666…時間,同25年及び同26年が159.2708333…時間であるといえる。 イそして,証拠(甲13,乙10)によれば,別紙2の「賃金」のうち「月給」欄記載のとおりの給与が原告に対して支払われていたことが認められるところ,その給与全額が基礎賃金となることに争いはない。 ウ以上を前提に,原告の時間外労働に対する時間単価を求めると,別紙2の「賃金」の「時間単価」欄のとおりであると認められる(なお,別紙2には小数点第2位以下が四捨五入された数値が表示されているが,各時間外手当を計算する上では,小数点第2位以下の端数処理をしない数値を用いて計算している。)。 (3) そうすると,原告は,被告に対し,別紙2の「賃金」の「法内」,「60内」,「60超」,「法休」,「深夜」欄記載のとおり,残業代を請求することができるが,本件では,深夜勤務手当として被告から一部既払があるから,これらは別紙2の「賃金」のうち「深夜既払」欄のとおり控除すべきである。 また,被告は,原告の賃金から寮費相当額として毎月1万円を控除していたが,争点(3)で判断したとおり,これは無効であるから,別紙2の「賃金」のうち「違法控除」欄記載のとおり,未払賃金となる。 以上によると,原告への未払残業代及び未払賃 1万円を控除していたが,争点(3)で判断したとおり,これは無効であるから,別紙2の「賃金」のうち「違法控除」欄記載のとおり,未払賃金となる。 以上によると,原告への未払残業代及び未払賃金の総合計は,別紙2の「賃金」のうち「未払合計」欄の合計である953万3480円となる(上記の ように月平均所定労働時間の算定において端数処理しない関係で,算定された未払残業代及び未払賃金の合計に端数が生ずるところ,本件給与規程6条に基づき1円未満を切り上げることとする。)。 5 争点(4)(賃確法6条2項,同法施行規則6条4号の「合理的な理由」の有無)(請求(1)関係)について賃確法6条2項は,賃金の支払遅滞が「天災地変その他のやむを得ない事由で厚生労働省令で定めるものによるものである場合」に同条1項を適用しないとしており,これを受けた同法施行規則6条は厚生労働省令で定める遅延利息に係るやむを得ない事由を列挙し,天災地変(1号)のほか,支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し,合理的な理由により,裁判所又は労働委員会で争っていること(4号),その他前各号に掲げる事由に準ずる事由(5号)を規定している。 そして,本件では,原告の時間外労働の割増賃金支払義務の前提問題として,原告の管理監督者該当性が主要な争点として争われているところ,この点に関する当事者双方の主張内容や事実関係のほか,栃木労基署は被告に対し是正勧告を行ったものの,被告から管理監督者に該当する旨の報告書が提出されて以降特段の手続が取られていないことなどに照らせば,被告が原告の割増賃金の支払義務を争うことには合理的な理由がないとはいえないというべきである。 したがって,未払賃金に対する遅延損害金については,商事法定利率によるべきであり,本件請求期間 らせば,被告が原告の割増賃金の支払義務を争うことには合理的な理由がないとはいえないというべきである。 したがって,未払賃金に対する遅延損害金については,商事法定利率によるべきであり,本件請求期間に係る最後の賃金支給日である平成26年7月25日までの確定遅延損害金は,別紙3記載のとおり,合計58万1491円となる。 6 争点(5)(付加金の支払を命ずることの当否及びその額)(請求(2)関係)について既に述べたとおり,被告は,原告に対し,労基法37条の定める時間外割増賃金及び休日割増賃金の支払義務を怠っているものといえるが,当事者双方の 主張内容や事実関係,その後の訴訟経過に照らせば,被告に対し,付加金という制裁を課すことが相当とはいえない。 よって,被告に対し,労基法114条に基づく付加金の支払を命ずることはしない。 7 争点(6)(損害賠償責任の有無等)(請求(3)関係)について(1) 使用者が労基法32条に違反して労働者に労働をさせた行為に対しては,同法37条に基づく割増賃金請求権が発生するから,それにもかかわらずなお,不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償としての慰謝料請求権が発生するためには,割増賃金では償えないほど,使用者による労基法32条違反の態様が悪質かつ重大であることを要すると解される。 (2) 証拠(甲2,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,店舗の人員不足によるシフトインを主たる原因として,恒常的に月間労働時間が200時間を超えていたと認められるが,これに対し,被告は,原告から勤務状況確認表の提出を受け,実労働時間が月200時間を超過した場合には,勤務状況確認表に理由と対策を具体的に記載するよう求め,近隣の店舗の店長に応援の要請をかけるなどの対応やクルーの募集をするよう助言をするな 表の提出を受け,実労働時間が月200時間を超過した場合には,勤務状況確認表に理由と対策を具体的に記載するよう求め,近隣の店舗の店長に応援の要請をかけるなどの対応やクルーの募集をするよう助言をするなどし,また,従業員に対し,定期的に健康診断を受診させ,電話健康相談や健康相談窓口を設置して,医師等の医療専門家や心理カウンセラーに対する相談ができる体制を整えているなどの事情が認められるのであって,本件全証拠によっても,割増賃金では償えないほど,被告による労基法32条違反の態様が悪質かつ重大であったとは認められない。 (3) したがって,原告の被告に対する不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償としての慰謝料請求権は存在せず,請求(3)についてはいずれも理由がない。 8 結論以上によれば,原告の請求のうち,請求(1)については,主文第1項の限度で 理由があるからその限度で認容し,その余の部分並びに請求(2)及び(3)はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大分地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官竹内浩史 裁判官鈴木喬 裁判官工藤優希 別紙1,別紙2,別紙3 省略
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