平成29(ワ)1099 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年3月30日 東京地方裁判所
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判決文本文9,591 文字)

令和2年3月30日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 1099号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和2年1月27日判決主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,2億0709万2465円及び内2億062 9万3710円に対する平成28年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告の提供する電子書籍定額配信サービスにおける原告の電子書籍の配信を被告から一方的に停止され,あるいは,株 式会社出版デジタル機構(平成31年3月1日以降の商号は,株式会社メディアドゥ。同社は,平成25年10月1日に株式会社ビットウェイを吸収合併しているところ,当時以前の株式会社ビットウェイも含めて,以下「機構」という。)を通じてした同サービスにおける原告の電子書籍の配信の申請を被告から拒絶されたことにより,電子書籍 の配信に関する原告の機構に対する債権を侵害されたとして,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償金2億0629万3710円並びにこれに対する不法行為の日から平成28年11月30日までの遅延損害金合計79万8755円及び損害賠償金2億0629万3710円に対する平成28年12月1日から支払済みまでの民法所定の年5分 の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実⑴ 当事者等原告は,漫画等の著作権を管理するとともに,電子書籍を配信することを主たる業とする有限会社である。 被告は,日本向けに「Kindle」という形式の電子書籍を配 信する事業を営む法人である。 機構は,電子出版物の制作,保管,アーカイビ 電子書籍を配信することを主たる業とする有限会社である。 被告は,日本向けに「Kindle」という形式の電子書籍を配 信する事業を営む法人である。 機構は,電子出版物の制作,保管,アーカイビング等を目的とする株式会社であり,被告の提供する電子書籍配信サービスについて,出版物の著作権を有する者等が同サービスに参加する際の取次ぎを行っている。 (弁論の全趣旨)⑵ 被告の提供する電子書籍定額配信サービス被告の提供する電子書籍配信サービス「Kindle」においては,購読者が電子書籍1冊ごとに購入代金を支払う方法での販売(以下「アラカルト販売」という。)を原則的な販売形態としている。 これに加えて,被告は,平成28年8月3日,会員登録した購読者が月額980円(税込)の定額料金で一定の電子書籍を何冊も読むことができるサービスである「KindleUnlimited」というプログラム(以下「KUプログラム」という。)の提供を開始した。 (弁論の全趣旨)⑶ 被告と機構との間の契約ア被告は,平成24年10月9日,機構との間で,電子書籍配信契約を締結した 。 同配信契約の契約書には,機構は,被告に対し,被告の提供す る電子書籍配信サービスにおいて,機構又は出版社が出版した電 子書籍のうち,機構が契約上の権利を有し,同サービスに提供する電子書籍の全てのコンテンツを(中略)との規定(第13条,第1条,第3条)があり ,さらに,被告の提供する電子書籍配信サービスについて,被告が(中略)との規定(第14条)がある 。 (乙2)イ被告は,KUプログラムを日本で開始するのに先立って,平成27年4月9日,機構との間で,電子書籍定額配信契約を締結した。 (乙4) の規定(第14条)がある 。 (乙2)イ被告は,KUプログラムを日本で開始するのに先立って,平成27年4月9日,機構との間で,電子書籍定額配信契約を締結した。 (乙4) ⑷ 原告と機構との間の契約ア原告は,平成25年5月1日,機構との間で,原告の電子書籍(以下「コンテンツ」ともいう。)を被告の提供する電子書籍配信サービスに提供することに関する覚書を交わした。 同覚書には,本覚書は原告のコンテンツを被告の提供する電子 書籍配信サービスに提供する際の「遵守事項,取引条件を定めることを目的とする」との規定(第1条)がある。 (甲3)イ原告は,平成27年4月1日,機構との間で,上記アの覚書を原契約として,原告のコンテンツをKUプログラムに提供し,K Uプログラムに参加登録している購読者に配信することに合意するとの契約を締結した。そこでは,原告のコンテンツを提供する対価は,次の計算式により算出されるものと定められていた。 分配金原資×{(原告のコンテンツの希望小売価格(税抜)×購読数)÷(プログラムに参加する全出版社の各コンテンツの希望 小売価格(税抜)×各購読数)の合計}×80% (甲5)⑸ 機構担当者によるKUプログラムの案内書面交付当時,機構の従業員であったAは,平成28年4月頃,原告に対し,同年夏以降に開始予定のKUプログラムにつき,「月額読み放題サービス KindleUnlimitedのご案内」と題する 書面(以下「本件案内書面」という。)を交付した。本件案内書面には,KUプログラムにおける出版社への参加料の支払は,(中略),参加する作品は入れ替えが自由であり毎月1日に作品を入れ替えるためには前々月までに担当営業に連絡すべきこと,さらに,既にア 件案内書面には,KUプログラムにおける出版社への参加料の支払は,(中略),参加する作品は入れ替えが自由であり毎月1日に作品を入れ替えるためには前々月までに担当営業に連絡すべきこと,さらに,既にアラカルト販売で提供されている作品は全て参加可能であり,1作品の 参加期間は6か月からであること等が記載されていた。 (甲4,証人A,弁論の全趣旨)⑹ 本件覚書の締結原告は,平成28年7月1日,機構との間で,上記⑷イの契約を原契約として,同契約により機構が原告に支払うべき対価の合意に関 して,「Amazon定額購読プログラムの支払いに関する覚書」と題する書面(以下「本件覚書」という。)を交わして,機構が原告に支払うべき対価について,①KUプログラムの開始日から平成28年12月31日までの期間及びそれ以降については機構が別途通知する変更効力発生日までの期間においては,購読された電子書籍が 単品で販売された場合(アラカルト販売)に支払われるべき対価を原告に支払うこととし(以下「本件特別支払条件」という。),②上記①の期間経過後には,以下の計算式に従って支払うことを合意した。 分配金原資×{(原告のコンテンツの希望小売価格(税抜)×購 読数)÷(プログラムに参加する全出版社の各コンテンツの希望小 売価格(税抜)×各購読数)の合計}×80%本件特別支払条件による場合の全出版社に支払われる手数料の総額は,KUプログラム購読者が増加するに比例して増加し,山分け方式の場合と異なって購読者から得られた定額購読料収入の総額を超えることも計算上あり得る。 (甲1,5,弁論の全趣旨)⑺ 本件特別支払条件の適用期間変更の申出Aは,平成28年8月末頃,原告に対し,アマゾンジャパン合同会社の 読料収入の総額を超えることも計算上あり得る。 (甲1,5,弁論の全趣旨)⑺ 本件特別支払条件の適用期間変更の申出Aは,平成28年8月末頃,原告に対し,アマゾンジャパン合同会社のKindleコンテンツ事業部長作成名義の「KindleUnlimited支払方式の変更につきまして」と題する書面を 交付した。同書面には,KUプログラムに当初予定していた目標登録者数を超える登録があり,全出版社に対して支払われる対価の総額が想定をはるかに上回る額になる見込みになったため,本件特別支払条件ではKUプログラムを維持することが難しいこと,当初は平成29年1月以降に本件特別支払条件を山分け方式に切り替える と提案していたが,山分け方式への切換え時期を平成28年10月1日又はそれ以降のできるだけ早い時期に早めてほしいことが記載されていた。 Aは,原告に対し,上記書面に沿って,本件特別支払条件の切換え時期の変更について説明し,かかる変更に同意して,本件特別支 払条件の適用期間を「KUプログラムの開始日から平成28年9月30日までの期間又はそれ以降の機構が指定する日までの期間」へと変更することに同意する内容の「Amazon定期購読プログラムの支払い条件変更に関する同意書」と題する書面に署名押印するよう求めたが,原告はこれに応じなかった。 (甲2,8,証人A,弁論の全趣旨) ⑻ 被告によってKUプログラムの対象外とされたコンテンツ被告は,平成28年9月1日,同年8月15日に機構からKUプログラムへの参加申請があった14個の原告のコンテンツについて,KUプログラムの対象外とし,既にKUプログラムで配信されていた原告のコンテンツ65個を,KUプログラムの対象外とした。 被告は,同年10 の参加申請があった14個の原告のコンテンツについて,KUプログラムの対象外とし,既にKUプログラムで配信されていた原告のコンテンツ65個を,KUプログラムの対象外とした。 被告は,同年10月8日までに,機構からKUプログラムへの参加申請があった131個の原告のコンテンツについて,KUプログラムの対象外とした。 (弁論の全趣旨) 2 争点 ⑴ 争点1(不法行為の成否)(原告の主張)ア機構に対する原告の債権原告は,機構との間で本件覚書を交わすにあたって,Aから,被告の提供する電子書籍配信サービスにおいてアラカルト販売で 配信中のコンテンツは,既に電子書籍配信サービス上での配信を停止されたり,読者のクレームによって配信を停止されたりした作品でない限り,前々月末までに営業担当に連絡すればKUプログラムで配信される旨の説明を受け,さらに,前々月末までに連絡すれば作品を入れ替えることもでき,1作品の参加期間は6か 月からである旨の口頭説明を受け,その旨の記載がある本件案内書面を交付された。これらのAによる口頭の説明内容及び本件案内書面の記載内容は,原告と機構との間の契約内容となっているとみるべきである。 したがって,機構は,原告に対し, ①KUプログラムで配信するよう原告から申請されたコンテン ツについては,これを遅滞なく被告に通知して,被告にKUプログラム上で配信させるよう所定の手続をとり,既に被告の提供する電子書籍配信サービス上で読者のクレームなどによって配信停止となっている等の特段の事情がある場合を除き,申請の翌々月の1日から,これを被告にKUプログラムで配信させる義務(以 下「本件義務1」という。),②原告がKUプログラムで配信すべきも 信停止となっている等の特段の事情がある場合を除き,申請の翌々月の1日から,これを被告にKUプログラムで配信させる義務(以 下「本件義務1」という。),②原告がKUプログラムで配信すべきものとして機構に提供したリストに記載されたコンテンツについては,そのサービス開始日から,これを被告にKUプログラムで配信させる義務(以下「本件義務2」という。), ③一度KUプログラムでの配信が開始されたコンテンツについては,少なくとも6か月以上,これを被告にKUプログラムで配信させる義務(以下「本件義務3」という。)を負っており,これらの義務を履行した上で,本件覚書に記載された計算式で算定された利用料を原告に支払うべきであり,原 告はこれらの義務に対応する債権を有していたといえる。 イ被告による侵害行為被告は,前提事実のとおり,本件特別支払条件が適用される期間の変更に原告が応じなかったことに対する制裁ないし報復として,原告がKUプログラムの配信対象とすべく平成28年 7月28日に新たに申請したコンテンツ(別表2)について,その配信を一方的に拒絶し,同年8月26日及び同年10月18日に新たに申請したコンテンツ(別表4,5)について,本件覚書によって本件特別支払条件が適用されることとなっている平成28年12月中に配信せず,また,同年9月1日にその前日までK Uプログラムで配信していた原告のコンテンツ(別表3)の配信 を停止し,同年10月3日頃,KUプログラムで配信がなされていた原告のコンテンツ全ての配信を停止し,もって,原告が機構に対し有していた上記アの債権の実現を,害意をもって妨害した。 (被告の主張)ア機構に対する原告の債権 原告と機構がKUプログラ の配信を停止し,もって,原告が機構に対し有していた上記アの債権の実現を,害意をもって妨害した。 (被告の主張)ア機構に対する原告の債権 原告と機構がKUプログラムに関して締結した各契約では,原告が機構に対し,電子書籍の配信を許諾すると定められているのみである。また,被告は機構に対し電子書籍を配信する義務を負っていない。以上によれば,機構が原告に対し,電子書籍の配信に関して何らの義務を負うものでないことは明らかである。 また,原告と機構との間に,機構において原告の電子書籍をKUプログラム上で配信させる義務が黙示的に発生していたともいえない。 イ被告による侵害行為上記アのとおり,原告の機構に対する債権が存在しない以上, 債権の侵害を観念できない。 被告は機構との間の契約に基づき,KUプログラムにどの電子書籍を組み込むかを決定する裁量権を有しているところ,被告が原告の電子書籍をKUプログラムの対象外としたことは,被告の裁量の範囲内であるから,債権侵害行為とはいえず,悪意や害意 も観念できない。 ⑵ 争点2(損害)(原告の主張)ア逸失利益平成28年9月分 原告のコンテンツは,被告による配信がなされれば,本件特 別支払条件の下で,前月の平均額である1タイトル1日あたり5711.14円を下らない対価を得ることができたと考えられる。原告は本来既に配信していた181タイトル(別表1)に新規申請した16タイトル(別表2)を加えた197タイトルについて上記の対価を得られるはずであったにもかかわらず, 被告の債権侵害行為により,実際に原告が機構から受け取った対価は418万3475円であった。 以上によれば,原告が被った損害は次の計算 について上記の対価を得られるはずであったにもかかわらず, 被告の債権侵害行為により,実際に原告が機構から受け取った対価は418万3475円であった。 以上によれば,原告が被った損害は次の計算式のとおり2956万9362円である。 (5711.14円×197タイトル×30日)-418万3 475円=2956万9362円平成28年10月分原告は上記の197タイトルに新たに申請した1タイトル(別表4)を加えた198タイトルについて対価を得られるはずであったにもかかわらず,被告の債権侵害行為により,実際 には機構から対価を受け取ることができなかった。 以上によれば,原告が被った損害は次の計算式のとおり3505万4977円である。 5711.14円×198タイトル×31日=3505万4977円 平成28年11月分原告は上記の198タイトルについて対価を得られるはずであったにもかかわらず,被告の債権侵害行為により,実際には機構から対価を受け取ることができなかった。 以上によれば,原告が被った損害は次の計算式のとおり33 92万4172円である。 5711.14円×198タイトル×30日=3392万4172円 平成28年12月分原告は上記の198タイトルに新たに申請した70タイトル(別表5)を加えた268タイトルについて対価を得られる はずであったにもかかわらず,被告の債権侵害行為により,実際には機構から対価を受け取ることができなかった。さらに,268タイトルのうち別表5のゴシック体で表示した53タイトルについては,人気作品であり,1日あたり3万0996. 03円の対価を得ることが十分に期待できるものであった。 以上によれば,原告が被 8タイトルのうち別表5のゴシック体で表示した53タイトルについては,人気作品であり,1日あたり3万0996. 03円の対価を得ることが十分に期待できるものであった。 以上によれば,原告が被った損害は次の計算式のとおり8899万1225円である。 (5711.14円×(198タイトル+70タイトル-53タイトル)×31日)+(3万0996.03円×53タイトル×31日)=8899万1225円 以上より,原告に生じた逸失利益は,合計1億8753万9736円である。 イ弁護士費用上記逸失利益のうち1割にあたる1875万3974円が被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用である。 ウ上記ア,イによれば,原告に生じた損害額の合計は,2億0629万3710円である。 (被告の主張)原告の主張は,否認し,争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(不法行為の成否)について ⑴ 原告は,被告による侵害行為の対象となる原告の機構に対する債権の存在について,機構が原告に対して本件義務1ないし3を負っていたことを主張しているので,この点について検討する。 ⑵ KUプログラムを含め被告の提供する電子書籍配信サービスに関して機構と原告との間で交わされた書面(甲1,3,5)をみると (なお,これらの書面の原契約に相当すると考えられる平成25年5月1日付け「取次基本契約書」(同日付覚書(甲3)頭書参照)については,当事者から書証提出がなかった。),これらは,いずれも被告の提供する電子書籍配信サービスに機構が原告のコンテンツを提供する際の遵守事項及び機構が原告に支払う対価の金額を含めた 取引条件を定めたものと認められるが(前提事実⑷,⑹),これらの書面を精査しても,機構 書籍配信サービスに機構が原告のコンテンツを提供する際の遵守事項及び機構が原告に支払う対価の金額を含めた 取引条件を定めたものと認められるが(前提事実⑷,⑹),これらの書面を精査しても,機構が原告に対し,原告のコンテンツを同サービスに提供するための被告への申請手続をすることは格別,原告の求めたとおりに同サービスで原告のコンテンツが配信されるという結果を実現させる債務(すなわち,原告の求めたとおりに同サー ビスで原告のコンテンツを配信することを被告に合意させる債務)を機構に負わせる旨の規定ないしはそのような債務の存在をうかがわせるような規定は見当たらない。 この点,原告は,機構の従業員であるAから,被告の提供する電子書籍配信サービスで既に配信されている原告のコンテンツについ ては,同サービスでの配信を停止されたり,読者のクレームによって配信を停止されたりした作品でない限り,翌月KUプログラムで配信されるとの説明を受けたこと及びその際に交付された本件案内書面の記載を根拠として,機構は本件義務1から3までの債務を負っていたと主張する。しかしながら,本件案内書面は,その内容を みると,KUプログラムの提供開始にあたって,その内容,その参 加条件等を示して,コンテンツを有する出版社に対してKUプログラムへのコンテンツの提供を呼びかけるものにすぎず(甲4,前提事実⑸),この書面から,提供されたコンテンツをKUプログラムで配信することについて被告に合意させることを機構が約束する趣旨までを読み取ることは極めて困難であるし,また,Aによる上記説 明の事実については,証人Aはこれを否定する趣旨の証言をしており,他に上記説明がされたことを認めるに足りる客観的証拠はない。 しかも,仮にこのような内容の説明があっ あるし,また,Aによる上記説 明の事実については,証人Aはこれを否定する趣旨の証言をしており,他に上記説明がされたことを認めるに足りる客観的証拠はない。 しかも,仮にこのような内容の説明があったとしても,原告と機構が作成した本件覚書に同旨の記載がない以上,その旨の合意の存在を認めることは,やはり極めて困難というべきである。 また,原告は,本件案内書面に,1作品の参加期間は6か月からであるとの記載(以下「本件記載」という。)があることをもって,機構は一度KUプログラムでの配信が開始されたコンテンツについては,少なくとも6か月以上KUプログラムで配信させる義務(本件義務3)があると主張する。しかしながら,証人Aは,本件記載 について,電子書籍の提供者が作品をKUプログラムに提供する場合には,その作品が最低6か月間配信できるものでなければならないという趣旨のものであると証言しているところ,本件記載は,その内容だけでなく,「作品のご参加基準」というタイトルを付したページに挙げられていることからも,コンテンツをKUプログラムに 提供する際の条件を記載したものと解するのが相当であり,本件記載の存在により,直ちに本件義務3の存在を認めることはできない。 ⑶ KUプログラムを含め被告の提供する電子書籍配信サービスに関して被告と機構との間で合意された書面(乙2,4)を精査しても,機構が申請した機構又は第三者のコンテンツの配信を被告に義務付 けている規定は見当たらない。むしろ,KUプログラムの配信にも 適用される被告と機構との間で締結された配信契約では,機構が提供したコンテンツを配信等することについて,被告にライセンスを付与した上で,その権利行使については裁量を与えており,さらに,その権利行使が義務でないこ と機構との間で締結された配信契約では,機構が提供したコンテンツを配信等することについて,被告にライセンスを付与した上で,その権利行使については裁量を与えており,さらに,その権利行使が義務でないことや,被告が提供する電子書籍配信サービスの運営について被告に完全な裁量権があることが明確に合意 されている(前提事実⑶ア)。すなわち,機構は,コンテンツの原提供者との契約内容如何にかかわらず,被告との関係で,一定のコンテンツをKUプログラムで配信するよう被告に請求できる立場にはないといえるところ,そのような立場にある機構が,本件案内文書の交付にあたって,原告の求めたとおりにKUプログラムで原告の コンテンツが配信される結果を実現させる債務を負うことを,新たに原告に約束したとはおよそ考え難い。 ⑷ 以上の検討によれば,本件義務1から3までの機構の債務は認められず,また,これらの債務を前提とする,実際にはKUプログラムで配信されなかったコンテンツについての原告への利用料の支払 義務も認められない。すなわち,原告が被告により侵害されたと主張する原告の機構に対する債権は,いずれもその存在を認めることができない。そうすると,被告による侵害行為の有無について判断するまでもなく,被告の原告に対する不法行為は認めることができない。 2 以上のとおりであるから,その余の争点(損害)について検討するまでもなく,原告の請求は理由がない。よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第13部 裁判長裁判官中村心 裁判官大寄久 裁判官吉田怜未 村心 裁判官大寄久 裁判官吉田怜未

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