令和6(行コ)52 旅券発給拒否取消等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年1月30日 東京高等裁判所
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判決文本文18,159 文字)

主文 1 一審原告及び一審被告の本件各控訴をいずれも棄却する。 2 一審原告の控訴費用は一審原告の負担とし、一審被告の控訴費用は一審被告の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 一審被告⑴ 原判決中、一審被告敗訴部分を取り消す。 ⑵ 上記取消しに係る一審原告の請求を棄却する。 2 一審原告⑴ 原判決中、一審原告敗訴部分を取り消す。 ⑵ア主位的請求外務大臣は、一審原告に対し、全ての地域を渡航先として記載した一般旅券を発給せよ。 イ予備的請求外務大臣は、一審原告に対し、トルコ共和国以外の全ての地域を渡航先として記載した一般旅券を発給せよ。 ⑶ 一審被告は、一審原告に対し、550万円及びこれに対する令和元年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(以下、略語は、新たに定義しない限り原判決の例による。) 1 事案の要旨一審原告は、外務大臣に対して一般旅券の発給申請をしたところ、外務大臣から、トルコ共和国(トルコ)への入国が認められない者であるから旅券法13条1項1号に該当するとして、一般旅券の発給拒否処分(本件旅券発給拒否処分)を受けた。一審原告は、一審被告に対し、①本件旅券発給拒否処分の取消し、②主位的に全ての地域を渡航先として記載した一般旅券の発給の義務付け、予備的 にトルコ以外の全ての地域を渡航先として記載した一般旅券の発給の義務付け、③外務大臣が本件旅券発給拒否処分をしたことが違法であるとして、国家賠償法(国賠法)1条1項に基づく損害賠償として慰謝料500万円及び弁護士費用50万円並びに本件旅券発給拒否処分のされた日の翌日である令和元年7月11日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正 法(国賠法)1条1項に基づく損害賠償として慰謝料500万円及び弁護士費用50万円並びに本件旅券発給拒否処分のされた日の翌日である令和元年7月11日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 原審が①を認容し、②及び③を棄却したところ、請求全部の棄却を求めて一審被告が控訴し、請求全部の認容を求めて一審原告が控訴した。 2 旅券法の定めの概要、前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、原判決4頁10行目の「当裁判所に顕著な事実」を「記録上明らかな事実」に、同9頁16行目から17行目にかけての「その以外」を「それ以外」に、同11頁3行目の「2012年」を「2013年」にそれぞれ改め、同11頁8行目の「するため」」の次に「(同規約12条3項ただし書)」を、後記第3の2及び3のとおり当審における一審原告及び一審被告の各主張をそれぞれ加えるほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1から4まで(原判決2頁20行目から23頁19行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、一審原告の本件請求は、原判決が認容した限度で理由があるものと判断する。その理由は、次のとおり補正し、後記2及び3のとおり当審における一審原告及び一審被告の各主張についての判断を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1から8まで(原判決23頁21行目から55頁11行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する(なお、引用する人証は原審におけるものである。)。 ⑴ 原判決24頁18行目の「同年中」を「平成19年」に改める。 ⑵ 同31頁20行目の「乙13の1」の前に「甲24、32、」を加え、同32頁4行目の「 用する人証は原審におけるものである。)。 ⑴ 原判決24頁18行目の「同年中」を「平成19年」に改める。 ⑵ 同31頁20行目の「乙13の1」の前に「甲24、32、」を加え、同32頁4行目の「同法」を「同条」に改め、同35頁10行目の「自由へ」の次に 「の」を加える。 ⑶ 同36頁6行目から7行目にかけての「旅券法は「」を「旅券の発給制限について、「現在は、原則として許可主義により連合国最高司令部が必要に応じ、旅券の発給を制限して来たので、特別の規定を設けてありませんが、この法律におきましては、」に改め、同頁14行目の「発給しても、」の次に「渡航先の出先官憲は査証を与えないことになるため、」を、同行目の「ことになる」の次に「し、仮に渡航先の国の出先官憲が気付かずに査証を与えた場合に、その者が渡航先の国の上陸港に到着しても、もとより渡航先の国の法規により入国が禁止されているため、引き返して来なければならなくなる」をそれぞれ加える。 ⑷ 同37頁2行目の「13頁」を「12頁」に、同頁24行目から25行目にかけての「具体的には」を「少なくとも一次的には」にそれぞれ改め、同頁22行目の末尾に以下を加える。 「また、旅券法制定時の衆議院外務委員会においても、政府委員は、法令によりその者の入国を禁止している渡航先の国との関係でのみ旅券の発給を制限しなかった場合の不都合を説明するにとどまっている。」⑸ 同38頁13行目の「利益は、」の次に「一次的には、入国を禁止している」を加え、同頁14行目の「に限られる」及び同頁同行目の「あり、それが」から同頁16行目の「困難で」までをいずれも削除する。 ⑹ 同39頁2行目の「利益を」から同頁5行目末尾までを「利益は、少なくとも一次的には、ある者を入国禁止とした国と我が国との二国 り、それが」から同頁16行目の「困難で」までをいずれも削除する。 ⑹ 同39頁2行目の「利益を」から同頁5行目末尾までを「利益は、少なくとも一次的には、ある者を入国禁止とした国と我が国との二国間の信頼関係という、渡航先との関係から我が国が得られる利益と解され、これを渡航先国の利益と解することはできない。」に改める。 ⑺ 同39頁5行目の末尾に改行して以下を加える。 「オ旅券法13条1項の趣旨ところで、旅券は、海外に渡航する者と旅券保持者の同一性を公に証明するために政府から発行される身分証明書であり、また、外国政府に対して、保持 者が遅滞ないし妨害なしに旅行することを認め、必要な場合には合法的な援助と保護を与えることを要請するいわば保護依頼書でもある。したがって、我が国の旅券制度は、国際的な法秩序が維持され、国際社会において我が国が信頼関係を維持していることが前提として存在してこそ、成り立ち得るものである。 そして、旅券法13条1項は、例えば、1号において、渡航先の法規により入国禁止とされた者に対する旅券の発給を制限することで、二国間の信頼関係を維持することにより、2号は所定の犯罪について訴追等がされている者に対する旅券の発給を制限することで、我が国の犯罪捜査権及び訴追権を確保することにより、3号は所定の刑に処せられた者に対する旅券の発給を拒否することで、我が国の刑罰権を確保することにより、7号は著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者に対する旅券の発給を制限することで、我が国の利益又は公安の維持等を図ることにより、これらは、いずれもひいては、我が国の旅券制度が存立し得る前提である国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の維持に資 を制限することで、我が国の利益又は公安の維持等を図ることにより、これらは、いずれもひいては、我が国の旅券制度が存立し得る前提である国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の維持に資することをも目的としていると解するのが相当である。」⑻ 同39頁6行目冒頭から同頁9行目末尾までを以下のとおり改める。 「カ小括以上のとおり、旅券法制定時の説明、1号の文言及び枠組み並びに旅券法13条1項の趣旨に照らせば、1号は、ある者を入国禁止とした国と我が国との二国間の信頼関係を維持することを目的とし、ひいては、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の維持に資することをも目的とするものと解される。」⑼ 同39頁10行目冒頭の「カ」を「キ」に改め、同頁13行目冒頭から同40頁26行目末尾までを以下のとおり改める。 「この点については、前記説示のとおり、1号の目的は、少なくとも一次的には、ある者を入国禁止とした国と我が国との二国間の信頼関係の維持という、 渡航先との関係から我が国が得られる利益をはかることと解されるが、1号を含む旅券法13条1項は、各号において、前記説示に係るそれぞれの保護法益を確保することを目的としつつ、国際的な法秩序の維持及び国際社会における我が国の信頼関係の維持も、各号の保護法益がはかられることによって、その確保に資するものであり、これが同条1項全体の目的であると解される。 したがって、1号は、ある者を入国禁止とした国と我が国との二国間の信頼関係を維持することを目的とし、ひいては、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の維持に資することをも目的とするものと解されるのであって、一審被告の前記主張は上記説示の限りで理由がある。」⑽ 同4 目的とし、ひいては、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の維持に資することをも目的とするものと解されるのであって、一審被告の前記主張は上記説示の限りで理由がある。」⑽ 同41頁4行目冒頭から同42頁5行目末尾までを以下のとおり改める。 「上記⑵で説示したとおり、旅券法13条1項1号は、ある者を入国禁止とした国と我が国との間の二国間の信頼関係を維持し、ひいては、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の維持に資することをも目的とするものと解される。 ところで、ある国から入国禁止とされた者から一般旅券の発給申請があった場合、当該国と地理的に近接する国や当該国とテロ対策で協力する国など、当該国の利害に影響を与える関係国への当該者の渡航を我が国が許せば、当該国が当該者を入国禁止とすることで守ろうとした利益が害されるおそれが生じ、当該国と我が国との間の信頼関係が損なわれることになると考えられるし、当該国及びその関係国以外の国への渡航であっても、当該者が入国禁止とされた経緯及び理由、当該者の地位、経歴、人柄及び渡航目的、渡航先の情勢、我が国の外交方針並びに国際情勢その他これに関する全ての事情によっては(後記最高裁判例参照)、ある国から入国禁止とされた当該者に旅券を発給し、我が国が外国政府に対して、当該者が遅滞ないし妨害なしに旅行することを認め、必要な場合には合法的な援助と保護を与えることを要請することが、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係を損なう場合があり得る ことは否定できない。したがって、旅券法13条1項1号による海外渡航の自由に対する制約は、その目的及び内容に照らして合理的といえる。 また、国際化が進展し、国家間の関係が複雑化する現代社会においては、ある国から入国禁止とさ って、旅券法13条1項1号による海外渡航の自由に対する制約は、その目的及び内容に照らして合理的といえる。 また、国際化が進展し、国家間の関係が複雑化する現代社会においては、ある国から入国禁止とされた者が当該国又はその関係国に渡航することによって生じる当該国の利害に対する影響の有無及び程度、当該国と我が国との信頼関係の毀損の有無及び程度並びに当該毀損を許容するか否か、さらに、当該国又はその関係国以外の国に渡航することによって生じる国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の毀損の有無及び程度並びに当該毀損を許容するか否かといった事項については、当該者による旅券発給申請時より前に予測できるものではなく、かつ、当該時点の国際情勢により変動するものである。以上のような事項を適切に評価し、当該国と我が国との間の二国間の信頼関係ひいては国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係が害されるか否かについて判断することは、国際関係に関する専門的な知識と、外交上の機密に属する資料等を有する外務大臣等に、第一次的に委ねるほかない。 また、旅券法は、ある国から入国禁止とされた者からの旅券発給申請について外務大臣等が採り得る手段を複数用意している。すなわち、外務大臣等は、時々刻々と変動する国際情勢に応じて、渡航先を全ての地域とする一般旅券を発給するか、渡航先を個別に特定した限定旅券を発給するか、一般旅券の発給を拒否するかの選択を行うことができる。 なお、限定旅券制度は、旅券法5条2項の平成元年改正により、外務大臣等は、同法13条1項各号のいずれかに該当する者に対して一般旅券を発行するときは、渡航先を個別に特定して記載することができるとする制度であるところ、これは、ある国から入国禁止とされた者による旅券発給申請に対し、全面的な発給 いずれかに該当する者に対して一般旅券を発行するときは、渡航先を個別に特定して記載することができるとする制度であるところ、これは、ある国から入国禁止とされた者による旅券発給申請に対し、全面的な発給拒否しかできない場合の不都合を回避するための立法的手当てとして導入されたものと解される。一審被告は、この点について、限定旅券制度は、 人道的理由がある場合の例外的な救済措置として導入された旨主張するけれども、旅券法5条2項の文言にはそのような制限はないから、採用することができない。また、限定旅券制度の導入趣旨について、外務省担当課の内部文書では、人道的理由から旅券を発行しても差し支えないような場合を救済するために限定旅券を発給し得ることとした旨説明されているものの(乙37)、別の担当課職員が執筆した公刊物の記事では、渡航先を限定するなどすれば、渡航を認めても差し支えないという中間ケースがあることから限定旅券を発給し得ることとした旨説明されており(甲41の4枚目)、人道的理由から救済することに目的を限定するという解釈は採られていない。」⑾ 同42頁12行目冒頭から同頁14行目までを以下のとおり改める。 「しかし、前記説示のとおり、ある国から入国禁止とされた者について、入国禁止とした当該国及び当該国の利害に影響を与える関係国並びに渡航を認めることにより国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の維持を棄損するおそれのある国への渡航を制限することは合理的である。」⑿ 同43頁22行目の「維持」の次に「又は国際的な法秩序の維持や国際社会における当該国の信頼関係の維持」を加え、同44頁15行目の「の維持を」を「を維持し、ひいては、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の維持に資することをも」に改める。 国際社会における当該国の信頼関係の維持」を加え、同44頁15行目の「の維持を」を「を維持し、ひいては、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の維持に資することをも」に改める。 ⒀ 同45頁17行目の「広範な」を「無限定な」に、同19行目から20行目にかけての「ことによって、」から同頁21行目末尾までを「ことによって生じる当該国の利害に生じ得る影響の有無及び程度、当該国と我が国との信頼関係の毀損の有無及び程度並びに当該毀損を許容するか否か、さらに、当該国又はその関係国以外の国に渡航することによって生じる国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の毀損の有無及び程度並びに当該毀損を許容するか否かといった事項については、」に、同46頁5行目及び同11行目の各「広範な」を「無限定な」にそれぞれ改める。 ⒁ 同47頁3行目冒頭から同頁16行目末尾までを以下のとおり改める。 「前記説示のとおり、1号の目的は、ある者を入国禁止とした国と我が国との間の二国間の信頼関係を維持し、ひいては、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の維持に資することであるから、外務大臣等が1号に基づいて旅券発給拒否処分をするに当たっては、同目的に従って裁量権を行使しなければならない。 したがって、外務大臣等が、ある国から入国禁止とされた者による旅券発給申請に対して1号に基づき旅券発給拒否処分をした場合において、当該者が入国禁止とされた経緯及び理由、当該者の地位、経歴、人柄及び渡航目的、渡航先の情勢、我が国の外交方針並びに国際情勢その他これに関する全ての事情をしん酌した上で(最高裁昭和37年(オ)第752号同44年7月11日第二小法廷判決・民集23巻8号1470頁参照)、上記1号の目的に照らして、当該旅券発給 びに国際情勢その他これに関する全ての事情をしん酌した上で(最高裁昭和37年(オ)第752号同44年7月11日第二小法廷判決・民集23巻8号1470頁参照)、上記1号の目的に照らして、当該旅券発給拒否処分が合理的かつ必要やむを得ない限度のものとはいえないときは、同処分は、外務大臣等が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとして、違法になるというべきである。」⒂ 同47頁23行目冒頭から同頁末尾までを削除し、同48頁4行目の「と指摘する。」の次を改行し、同頁10行目の「鑑みれば、」の次に「外務大臣等による旅券発給拒否処分が適法か否かについては、上記説示のとおり判断すべきであって、」を加え、同頁12行目の「広範な裁量を」を「裁量までも」に改める。 ⒃ 同48頁15行目の「昭和」から同頁20行目末尾までを以下のとおり改める。 「旅券法23条の規定に該当して刑に処せられた者であっても、その違法性の程度等には差があり、また、旅券法23条2項1号(一般旅券に記載された渡航先以外の地域に渡航した者に対する罰則)に関する事例を挙げて、同号に該当するからといって、直ちに同法13条1項4号で機械的に旅券の発給が拒 否されるという結論にはならないと考えられ、これとの対比において、同法13条1項1号から3号までについては、かなり明白であるから、おそらくこれに該当すれば、機械的に当然に発給されないという感じがするとの説明をしたにすぎず、本件のように、ある特定の国から入国禁止の措置をとられた場合において、当該国を含む全ての渡航先への旅券の発給拒否が当然に帰結されるとの公的見解を示したものとまでは認め難い。」⒄ 同49頁3行目の「ある国」から同頁8行目の「必要がある。」までを「旅券発給の肯否を判断するに当たっては、ある国から入国禁 給拒否が当然に帰結されるとの公的見解を示したものとまでは認め難い。」⒄ 同49頁3行目の「ある国」から同頁8行目の「必要がある。」までを「旅券発給の肯否を判断するに当たっては、ある国から入国禁止とされた者が当該国又はその関係国に渡航することによって生じる当該国の利害に生じ得る影響の有無及び程度、当該国と我が国との信頼関係の毀損の有無及び程度並びに当該毀損を許容するか否か、さらに、当該国又はその関係国以外の国に渡航することによって生じる国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の毀損の有無及び程度並びに当該毀損を許容するか否かといった事項を評価する必要がある。」に改め、同頁13行目の「信頼関係」の次に「又は国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係」を加える。 ⒅ 同49頁18行目冒頭から同52頁20行目末尾までを以下のとおり改める。 「ア前記で説示した判断枠組みに基づき、本件旅券発給拒否処分が、1号の目的に照らして、合理的かつ必要やむを得ない限度のものといえるか否かについて検討する。 イ前記において認定したとおり、一審原告は、平成15年からフリーのジャーナリストとして、イラク、アフガニスタン及びシリアの紛争地域における取材活動を続け、平成16年4月にはイラクにおいてイラク戦争の取材活動に従事中、武装組織に拉致されて3日間身体を拘束されたことがあり、平成24年6月には、シリアの反政府組織の実態を取材するため、シリア全土に日本政府外務省から退避勧告が発出 され、在シリア日本国大使館も一時閉鎖されている中で、レバノンから、正規の入国手続を経ずにシリアに入国して反政府組織の支配地区などでシリア政府軍が民間施設を無差別攻撃している状況等を取材し、その後、レバノンへの経路がシリア政府 時閉鎖されている中で、レバノンから、正規の入国手続を経ずにシリアに入国して反政府組織の支配地区などでシリア政府軍が民間施設を無差別攻撃している状況等を取材し、その後、レバノンへの経路がシリア政府軍によって封鎖されたため、同年7月には、シリアから正規の入国手続を経ずにトルコへ出国したところ、トルコにおいて、不法入国に当たるとして、罰金を支払うこととなるとともに、同年8月にトルコから出国する際、トルコ政府から2年間の入国禁止措置を採られ、さらに、平成27年5月には、シリアの反政府組織の実態を再度取材するため、従来の人脈を伝手にシリア国内の情報収集を行い、危機発生時の対策も行った上で、トルコから、正規の入国手続を経ずにシリアに入国したところで、武装組織に身体を拘束され、約3年4か月間にわたる身体拘束の後に解放され、トルコの入国管理施設で保護された後、平成30年10月には、トルコ政府から、トルコ外国人法54条1項d所定の公共秩序、治安又は公衆衛生に反する行為を行った外国人に該当するとして国外退去命令を受けるとともに、5年間の入国禁止措置を受けた。一審原告が上記約3年4か月に及ぶ身体拘束を受けている間、外務省が中心になって、一審原告の解放に向けて情報収集を行い、トルコ政府やカタール政府、その他の関係機関に様々な働きかけを行った。 そして、一審原告は、平成22年10月の旅券申請時に、過去に旅券の発給を受けたことがあったにもかかわらず、旅券の発給を受けたことがない旨申告したが(乙1、2)、その後の申告では同様の行為はしていない。また、一審原告は、平成24年8月にトルコに不法入国したことを理由に罰金を支払うことになった際、トルコに密入国したのはレバノンへ出る道がシリア軍に封鎖され、他のどの国にも出られる可能性がなかったからであり、法 告は、平成24年8月にトルコに不法入国したことを理由に罰金を支払うことになった際、トルコに密入国したのはレバノンへ出る道がシリア軍に封鎖され、他のどの国にも出られる可能性がなかったからであり、法律を遵守しなかったのは取材目的 であり、やむを得ないものであったとSNSに投稿した(乙5)。また、一審原告は、平成24年8月にトルコから入国禁止措置を受けたにもかかわらず、平成26年2月の旅券申請時にトルコを含め入国拒否をされたことがない旨申告し、同年4月には当該入国禁止措置に反してトルコへの入国を試みたが、これは入国禁止措置の期間の終期を明確に認識していなかったことによるものであり(前記認定事実⑵ウ)、さらに、一審原告は、平成31年1月の本件旅券発給申請の際、トルコから入国禁止措置を受けていたにもかかわらず、トルコを含め外国で入国拒否をされたことがない旨申告したが、これは、トルコから入国禁止措置を受けているとの認識がなかったことによるものと認められる(前記認定事実⑷ア)。そして、一審原告は、本件旅券発給申請において、渡航目的を観光、渡航先をイタリア、フランス、スペイン、ドイツ、インド及びカナダと記載した渡航事情説明書を提出した(前記認定事実⑷ア)。 ウこのように、一審原告は、フリージャーナリストとして、紛争地域における取材活動のため、平成24年6月にレバノンからシリアへ、同年7月にシリアからトルコへ、平成27年6月にトルコからシリアへ、いずれも正規の入国手続を経ずにそれぞれ入国し、さらに、平成30年10月にトルコ政府からトルコ外国人法54条1項d所定の公共秩序、治安又は公衆衛生に反する行為を行った外国人に該当するとして国外退去命令を受けるとともに、5年間の入国禁止措置を課されている。また、一審原告は、トルコに密入国し 外国人法54条1項d所定の公共秩序、治安又は公衆衛生に反する行為を行った外国人に該当するとして国外退去命令を受けるとともに、5年間の入国禁止措置を課されている。また、一審原告は、トルコに密入国したのはレバノンへ出る道がシリア軍に封鎖され、他のどの国にも出られる可能性がなかったからであり、法律を遵守しなかったのは取材目的であり、やむを得ないものであったとSNSに投稿していることから、紛争地域において取材活動を行う場合に限っては、各国の出入国管理法規を軽視する 傾向が認められるものの、それ以上に、一審原告が、自ら進んで各国の社会的平穏や安全保障環境に不利益を与える行為をする可能性があることはうかがわれない。 以上のように、一審原告がトルコ政府から入国禁止とされた経緯及び理由、一審原告の地位、経歴、人柄、これまでの渡航目的及び取材内容並びに入国経路や前記補正に係る原判決認定のシリア及びトルコの情勢その他本件記録に顕われた全ての事情をしん酌すると、トルコはもとより、トルコと地理的に近接する国への一審原告の渡航を我が国が許せば、一審原告が当該近接する国を経由して正規の入国手続を経ずにトルコに入国することが考えられ、一審原告を入国禁止とすることで守ろうとしたトルコの利益が害されるおそれが生じるから、少なくともトルコ及びトルコと地理的に近接する国については、これらの国に一審原告が渡航することにより、トルコと我が国との二国間の信頼関係が損なわれる蓋然性があるといえ、これを制限することは、ある者を入国禁止とした国と我が国との間の二国間の信頼関係を維持し、ひいては、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係を維持するために、合理的かつ必要やむを得ない限度のものということができる。 しかしながら、トルコ及び の信頼関係を維持し、ひいては、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係を維持するために、合理的かつ必要やむを得ない限度のものということができる。 しかしながら、トルコ及びトルコと地理的に近接する国を含めトルコの利害に影響を与える関係国や、例えば、取材目的による渡航であっても、入国した場合に特定の組織等によって身体拘束を受ける可能性のある紛争地域の国などを除く全ての国に対する渡航を禁止する結果となる本件旅券発給拒否処分は、一審原告がトルコ政府から入国禁止とされた経緯及び理由、一審原告の地位、経歴、人柄、これまでの渡航目的及び取材内容並びに入国経路、本件旅券発給申請において一審原告の渡航目的が観光、渡航先がイタリア、フランス、スペイン、 ドイツ、インド及びカナダとされていること、上記各渡航先の情勢、我が国の外交方針並びに国際情勢その他本件記録に顕われた全ての事情をしん酌しても、およそトルコと我が国との間の二国間の信頼関係及び国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係を損なうおそれがあるとは認められない国への渡航をも全面的に禁止するものとして、1号の目的に照らし、合理的かつ必要やむを得ない限度のものとはいえない。 ⑶ まとめ本件旅券発給拒否処分は、およそトルコと我が国との間の二国間の信頼関係及び国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係を損なうおそれがあるとは認められない国への渡航を含めて全ての国への渡航を禁止するものであるから、1号の目的に照らし、合理的かつ必要やむを得ない限度のものとはいえず、外務大臣が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用してしたものといわざるを得ないから、違法である。 したがって、本件旅券発給拒否処分は、憲法22条、13条及び自由権規約1 ない限度のものとはいえず、外務大臣が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用してしたものといわざるを得ないから、違法である。 したがって、本件旅券発給拒否処分は、憲法22条、13条及び自由権規約12条2項に違反するか否かについて検討するまでもなく、取り消されるべきものである。」⒆ 同53頁2行目の「とおり、」の次及び同頁4行目の「トルコ」の前に、いずれも「少なくとも」を加え、同頁4行目の「いえない」を「いえず、これを制限することは、ある者を入国禁止とした国と我が国との間の二国間の信頼関係を維持し、ひいては、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係を維持するために、合理的かつ必要やむを得ない限度のものということができる」に改める。 ⒇ 同54頁10行目の「処分は、」の次に「少なくとも」を加え、同55頁6行目の「被告は、」の次に「原審における」を加え、同7行目から8行目にかけて の「当裁判所に顕著な事実」を「記録上明らかな事実」に改める。 2 当審における一審原告の主張についての判断⑴ 一審原告は、1号に該当する場合、一般旅券の発給申請に対して、外務大臣は、発給拒否(旅券法13条1項)又は限定旅券の発給(同法5条2項)ができるところ、両者は「13条1項各号のいずれかに該当する」との要件では共通するが、処分の根拠規定が異なるから、その合憲性は各条文毎に独立して審査されなければならず、渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者に対して一般旅券の発給を拒否することができるとする1号の規定は、合理的で必要やむを得ない限度の規制とはいえず、憲法22条及び13条並びに自由権規約12条2項に反し無効であって、限定旅券の発給(同法5条2項)の手段があるからといって、その合憲性が基礎づけられるもの 的で必要やむを得ない限度の規制とはいえず、憲法22条及び13条並びに自由権規約12条2項に反し無効であって、限定旅券の発給(同法5条2項)の手段があるからといって、その合憲性が基礎づけられるものではない旨主張する。 しかし、前記説示のとおり、1号は、ある者を入国禁止とした国と我が国との二国間の信頼関係を維持し、ひいては、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の維持に資することをも目的とするものと解され、この目的を達成する手段として、外務大臣等が、時々刻々と変動する国際情勢に応じて、渡航先を全ての地域とする一般旅券を発給するか、渡航先を個別に特定した限定旅券を発給するか、一般旅券の発給を拒否するかの選択を行うことができるとしているものであるから、1号の規定による海外渡航の自由に対する制約は、目的及び手段において、合理的で必要やむを得ない限度のものというべきであり、1号に該当した場合の外務大臣等の取り得る手段として限定旅券の発給(5条2項)をも考慮した上、1号の合憲性を判断することができるというべきである。 ⑵ 一審原告は、1号は、相互主義に基づかない我が国独自の片面的規定であるから、入国禁止措置を課された者に旅券を発給したとしても、当該入国禁止措置を課した国と我が国との二国間の信頼関係を害することにはならないから、 これを規定することに合理性はなく、憲法22条及び13条並びに自由権規約12条2項に反し無効である旨主張する。 しかし、仮に他国において1号と同内容の規定が存在しないとしても、我が国が、前記⑴の立法目的の下に1号の規定を設けることは、主権を有する我が国の立法政策の問題であって、当該規定を設けることが不合理とはいえない。 ⑶ 一審原告は、旅券法制定時、ある国から入国禁止とされた者は、 記⑴の立法目的の下に1号の規定を設けることは、主権を有する我が国の立法政策の問題であって、当該規定を設けることが不合理とはいえない。 ⑶ 一審原告は、旅券法制定時、ある国から入国禁止とされた者は、当該国以外を渡航先として一般旅券の発給申請をすれば、旅券発給拒否処分を受けることはなかったのに対し、平成元年改正後は、渡航先を包括記載とする数次往復用旅券の発給が原則とされたことにより、ある国から入国禁止とされた者は、外務大臣等から一般旅券の発給自体を拒否されることとなったが、国会の審議の過程を見てもこの点について議論がされた形跡がないことから、1号については、立法の過誤があり、憲法41条に違反する旨主張する。 しかし、前記説示のとおり、旅券法の平成元年改正において、ある国から入国禁止とされた者による旅券発給申請に対して、全面的な発給拒否しかできない場合の不都合を回避する立法的手当てとして限定旅券制度が導入されていること、平成元年改正自体が国会で立法されていることからすれば、1号について、立法の過誤があるとはいえないし、憲法41条に違反するものともいえない。 ⑷ 一審原告は、1号について入国禁止とした当該国だけではなく、当該国の利害に影響を与える関係国への渡航も含めて制限するのは合理的であるとの解釈については、その基準が過度に広範かつ漠然不明確であるため、国民がその規定の適用を恐れて萎縮的効果をもたらすから、憲法に違反し許されない旨主張する。 しかし、1号は、旅券の発給制限事由として「渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者」と定めており、この文言自体は具体的かつ明確である。そして、前記説示のとおり、1号は、ある者を入国禁止 とした国と我が国との間の二国間の信頼関係を維持し、ひいては、国際的な法秩 れない者」と定めており、この文言自体は具体的かつ明確である。そして、前記説示のとおり、1号は、ある者を入国禁止 とした国と我が国との間の二国間の信頼関係を維持し、ひいては、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の維持に資することをも目的とするものである以上、当該国と地理的に近接する国や当該国とテロ対策で協力する国など、当該国の利害に影響を与える関係国への当該者の渡航をも含めて制限するのは合理的であり、また、当該国及び関係国以外の国への渡航であっても、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の維持の観点からは、これを制限すべき場合があり得ることは否定できない。さらに、その判断については、国際関係に関する専門的な知識と、外交上の機密に属する資料等を有する外務大臣等に、第一次的に委ねるほかないのであって、かかる観点からすれば、上記基準が、過度に広範であるとか漠然不明確であるとはいえない。 ⑸ 一審原告は、1号の「渡航先」は、一般旅券発給申請書に記載された「今回の渡航先」を意味すると解すべきところ、一審原告は、本件旅券発給申請において、「今回の渡航先」欄にトルコを記入していないから、仮に一審原告がトルコから入国禁止の措置をとられたとしても、トルコは1号の「渡航先」に当たらないため、一審被告は一審原告に対して一般旅券を発給しなければならない旨主張する。 しかし、1号の「渡航先」とは文言上、渡航が予定される国を意味するものと解され、殊に、旅券法の平成元年改正後は、渡航先を包括記載とする数次往復用旅券の発給が原則とされたことから、一審原告の主張に従うと、一般旅券発給申請書の「今回の渡航先」欄に入国を禁止された国を記載しさえしなければ、当該入国を禁止された国をも渡航先とする一般旅券が発給されることとな が原則とされたことから、一審原告の主張に従うと、一般旅券発給申請書の「今回の渡航先」欄に入国を禁止された国を記載しさえしなければ、当該入国を禁止された国をも渡航先とする一般旅券が発給されることとなってしまい、ある者を入国禁止とした国と我が国との二国間の信頼関係を維持することを一次的な保護法益として規定された1号の趣旨までもが没却されることとなり、相当でないことは明らかである。 ⑹ 一審原告は、一審原告が紛争地域を取材するジャーナリストであること、紛 争地域を取材するためには非正規の方法で入国するしか手段がなかったこと、本件旅券発給申請においてはトルコに渡航する意図はなかったこと、トルコによる入国禁止措置の理由も根拠もあいまいであることを踏まえれば、外務大臣等が、一審原告に対して一般旅券を発給しないことは裁量権の範囲を超えその濫用であるから、一審原告に対して一般旅券を発給すべき義務又はトルコ以外の全ての地域を渡航先として記載した限定旅券を発給すべき義務がある旨主張する。 しかし、一審原告主張のような上記事情があったとしても、前記説示のとおり、一審原告は、平成24年6月にレバノンからシリアへ、同年7月にシリアからトルコへ、平成27年6月にトルコからシリアへ、いずれも正規の入国手続を経ずにそれぞれ入国しており、さらに、平成30年10月にトルコから入国禁止措置を課されているのであるから、トルコはもとより、トルコと地理的に近接する国への一審原告の渡航を我が国が許せば、一審原告が当該国を経由して正規の入国手続を経ずにトルコに入国することが考えられ、一審原告を入国禁止とすることで守ろうとしたトルコの利益が害されるおそれが生じる。そうすると、少なくともトルコ及びトルコと地理的に近接する国については、これらの国に原告が渡航することに が考えられ、一審原告を入国禁止とすることで守ろうとしたトルコの利益が害されるおそれが生じる。そうすると、少なくともトルコ及びトルコと地理的に近接する国については、これらの国に原告が渡航することにより、トルコと我が国との二国間の信頼関係が損なわれる蓋然性があるといえ、これを制限することは、ある者を入国禁止とした国と我が国との間の二国間の信頼関係を維持し、ひいては、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係を維持するために、合理的かつ必要やむを得ない限度のものということができる。そのため、本件旅券発給拒否処分は、少なくともトルコ及びトルコと地理的に近接する国への渡航を制約する点において、外務大臣が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用してしたものとはいえない。 したがって、外務大臣が、一審原告に対して一般旅券を発給すべき義務又は少なくともトルコ以外の全ての地域を渡航先として記載した限定旅券を発給 すべき義務があるはいえない。 ⑺ 一審原告は、1号の規定及び本件旅券発給拒否処分が自由権規約19条に違反する旨主張する。 しかし、1号の規定は、国民の海外渡航の自由を規制するものであるから、表現の自由に関する自由権規約19条に違反するか否かの問題ではない。この点を措いても、同条3項は、同条2項の権利の行使については、一定の制限を課することができるところ、その制限は、法律によって定められ、かつ、他の者の権利又は信用の尊重、国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護の目的のために必要とされるものに限ると規定する。そして、前記補正に係る原判決説示のとおり、外務大臣等は、ある国から入国禁止とされた者の海外渡航の自由を、その者に対する旅券発給を拒否することを通じて制約することができるが、それは、旅券法13条1項1号とい 記補正に係る原判決説示のとおり、外務大臣等は、ある国から入国禁止とされた者の海外渡航の自由を、その者に対する旅券発給を拒否することを通じて制約することができるが、それは、旅券法13条1項1号という法律の規定に基づくものである上、1号は、ある者を入国禁止とした国と我が国との二国間の信頼関係を維持し、ひいては、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の維持に資することをも目的とするところ、この目的を達成することによって、最終的には、我が国の安全や公の秩序、他の日本国民の権利自由を保護することができるものといえ、さらに、1号による海外渡航の自由に対する制約は、合理的で必要やむを得ない限度のものである。したがって、1号の規定は、自由権規約19条に違反するとはいえない。 また、前記補正に係る原判決説示のとおり、本件旅券発給拒否処分は、外務大臣が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用してしたものといわざるを得ず、違法であるから、これが自由権規約19条に違反するか否かについて判断するまでもなく、取り消されるべきものである。 ⑻ したがって、一審原告の上記各主張はいずれも採用することができない。 3 当審における一審被告の主張に対する判断一審被告は、1号の目的について、二国間の信頼関係の維持にとどまらない国 際社会一般における国際信義の確保が当然の前提となっており、具体的には、国際的な法秩序の維持、国際社会における犯罪の防止、国際社会における信頼関係の維持を含む我が国の国益の維持等にあり、同号該当性を要件とする一般旅券の発給拒否処分に係る外務大臣の判断が違法となるのは、国際的な法秩序の維持や国際社会における信頼関係の維持等の目的に一定程度の譲歩を求めてもなお、申請者に旅券発給を認めなければならない特段の事情がある場合 拒否処分に係る外務大臣の判断が違法となるのは、国際的な法秩序の維持や国際社会における信頼関係の維持等の目的に一定程度の譲歩を求めてもなお、申請者に旅券発給を認めなければならない特段の事情がある場合に限られると主張し、本件ではそのような特段の事情はなく、また、特段の事情を認め難いその他の事情もあるため、一般旅券だけでなく限定旅券を発給しないことに合理性が認められる旨主張する。 この点、1号の目的については、補正に係る原判決説示のとおり、ある者を入国禁止とした国と我が国との間の二国間の信頼関係を維持し、ひいては、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の維持に資することであるといえ、外務大臣等が1号に基づいて旅券発給拒否処分をするに当たっては、同目的に従って裁量権を行使しなければならず、外務大臣等が、ある国から入国禁止とされた者による旅券発給申請に対して1号に基づき旅券発給拒否処分をした場合において、当該者が入国禁止とされた経緯及び理由、当該者の地位、経歴、人柄及び渡航目的、渡航先の情勢、我が国の外交方針並びに国際情勢その他これに関する全ての事情をしん酌した上で、上記1号の目的に照らして、当該旅券発給拒否処分が合理的かつ必要やむを得ない限度のものとはいえないときは、同処分は、外務大臣等が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとして、違法になるというべきであるが、一審被告主張のように、国際的な法秩序の維持や国際社会における信頼関係の維持等の目的に一定程度の譲歩を求めてもなお、申請者に旅券発給を認めなければならない特段の事情がある場合に限られるとはいえない。 また、本件旅券発給拒否処分は、およそトルコと我が国との間の二国間の信頼関係及び国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係を損なう がある場合に限られるとはいえない。 また、本件旅券発給拒否処分は、およそトルコと我が国との間の二国間の信頼関係及び国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係を損なう おそれがあるとは認められない国への渡航を含めて全ての国への渡航を禁止するものであるから、1号の目的に照らし、合理的かつ必要やむを得ない限度のものとはいえないから、外務大臣が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用してしたものといわざるを得ず、違法であるということは、補正に係る原判決説示のとおりである。 したがって、一審被告の上記主張は、1号の目的に関する部分については、一部理由があるが、その余の主張は採用することができない。 4 結論以上によれば、争点⑷及び⑸について判断するまでもなく、本件旅券発給拒否処分の取消請求は理由があるから認容し、その余の請求は理由がないからいずれも棄却すべきであって、これと同旨の原判決は相当であり、一審被告及び一審原告の本件各控訴はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第8民事部 裁判長裁判官三角比呂 裁判官田中芳樹 裁判官川淵健司

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