平成16(行コ)3 損害賠償代位請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成16年9月22日 広島高等裁判所 広島地方裁判所 平成13(行ウ)14
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判決文本文6,497 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,竹原市に対し,金1億9665万円及びこれに対する平成13年9月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,広島県竹原市にあるAが,地方税法及び竹原市税条例(市税条例)に基づき,特別徴収義務者として,日帰り入湯客1人当たり150円の入湯税を徴収して同市に納入すべきであるにもかかわらず,免除規定によらずにすべての日帰り入湯客についてこれを免除扱いとしていたことにつき,被控訴人は,竹原市長に就任した後,何ら適切な措置をとらず入湯税の賦課徴収を怠っていたとして,平成14年3月30日法律第4号による改正前の地方自治法242条の2第1項に基づく住民訴訟により,控訴人が,被控訴人に対し,竹原市の被った入湯税相当額の損害を同市に支払うよう同市に代位して求めている事案である。 原判決は,①怠る事実が終了した後に当該怠る事実によって被った損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求する監査請求は,怠る事実が終了した日から1年内にすべきものであるとし,本件では,監査請求がされた平成13年6月19日より1年以上前(平成12年6月18日以前)に終了した怠る事実(同日までに3年の更正可能期間が経過した平成9年6月15日までに申告すべき分)については監査請求期間を徒過しているとし,さらに,②本件における監査請求の対象は,被控訴人が市長に就任した平成2年1月14日以降11年間分のもの,すなわち,平成12年12月に申告すべき分までであるとし,控訴人が請求する損害 しているとし,さらに,②本件における監査請求の対象は,被控訴人が市長に就任した平成2年1月14日以降11年間分のもの,すなわち,平成12年12月に申告すべき分までであるとし,控訴人が請求する損害のうち,平成13年1月以降に申告すべき分については監査請求を経ていないものとして不適法であるとし,その余の部分は適法な訴えであるが,市長たる被控訴人において専決権限を有する税務課長がAから日帰り入湯客の入湯税を徴収していないことを認識することは困難な状態にあり,義務違反があったとはいえないなどとして請求を棄却した。そのため控訴人が控訴したものである。 2 その他の事案の概要は,以下に訂正し,当事者の当審における主張を付加するほかは,原判決の事実及び理由中の「第2 事案の概要」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決3頁3行目から6行目までを次のとおり改める。 「ア控訴人は,竹原市監査委員に対し,「竹原市職員措置請求書」と題する平成13年6月18日付けの書面により監査請求をし(本件監査請求),同請求は翌19日に受理された。同書面の請求の要旨には,「竹原市長がAに対して免除した入湯税,年間約二千六百万円,就任以来十一年間の損失二億八千六百万円の補てんを求める」旨記載されていた。」(2) 控訴人の当審における主張ア監査請求期間について地方自治法242条2項本文の期間制限は,怠る事実については原則として適用がなく,例外的に適用されるとしても,純粋な不作為とは異なり,一定の財務会計上の行為(作為)が先行している場合に限定される。本件は,入湯税の賦課徴収を怠るという純粋に不作為の場合であり,地方自治法242条2項本文は,例外的にも適用されない。 したがって,平成2年1月から平成9年6月までに いる場合に限定される。本件は,入湯税の賦課徴収を怠るという純粋に不作為の場合であり,地方自治法242条2項本文は,例外的にも適用されない。 したがって,平成2年1月から平成9年6月までに申告すべき分(平成元年12月分から平成9年5月分)までの怠る事実によって被った損害を填補することを求める監査請求も,請求期間を遵守したものであり,適法である。 イ監査請求の対象について控訴人が監査請求書に記載した「就任以来11年間」というのは,新聞記事を引用したものであり,これは,監査請求の時点で,被控訴人が市長就任時より約11年間経過しているという程度の意味しかもたない。監査請求の対象は,被控訴人が市長に就任していた間であって,この間,被控訴人が継続的に入湯税の賦課徴収を怠り続けてきた事実を問題としており,原判決のように,平成2年1月14日から同13年1月14日までの間に期間を限定する趣旨ではない。現に,監査委員会も,監査対象の期間を原判決のように限定する扱いはしていない。 したがって,平成13年1月以降に申告すべき分についても,監査請求を経た適法なものである。 ウ被控訴人の故意過失について(ア) 竹原市役所決裁規則という,一般市民のほとんど知らないような内部規定によって,市長の責任を無限定に補助職員に転嫁することは許されるべきでない。住民監査請求をする住民にとっては,市役所内部の決裁権限が誰に移譲されているのか,その移譲の条件などは到底知り得ないものであり,当該監査請求事項が専決事項か否か,専決決裁者が誰であるかなどを正確に調査した上で正しい決裁権者をすべて選択することはほとんど不可能を強いるに等しい。市長の責任を限定的に解する考え方は,住民監査請求に対する抑止的効果をもつものであるから,住民監 であるかなどを正確に調査した上で正しい決裁権者をすべて選択することはほとんど不可能を強いるに等しい。市長の責任を限定的に解する考え方は,住民監査請求に対する抑止的効果をもつものであるから,住民監査請求の趣旨目的を没却しないよう厳格に解釈すべきである。 竹原市役所決裁規則は,市税等の賦課額の決定及び更正に関することは税務課長の専決事項とされているが,そこで予定されている専決事項は,税務課所管の日常的業務に関するものばかりである。税務課長の立場からも,専決事項として市長に代わって第一次的な責任を負わせられてもやむを得ないのは,自らの判断だけで決することが可能な,日常的な通常の業務に限定されるべきである。ところが,本件は,竹原市がAとの間で日帰り入湯客の入湯税に関する覚書を交わし,これに基づいて,申告納税の虚偽記載を積極的もしくは暗黙のうちに容認してきた事案であり,税務課長のレベルで判断できるような事案ではない。すなわち,竹原市役所決裁規則が専決事項として予定する,通常の市税等の賦課額の決定や更正とは明らかに次元が違う問題であり,専決事項の厳格解釈の観点からはこれを当然に専決事項と認めることはできない。 (イ) また,特に,平成13年3月以降の被控訴人の対応は不充分なものである。すなわち,平成13年3月16日,議会において本件入湯税問題が取り上げられ,被控訴人は,その賦課徴収を怠っていた事実を確実に認識している。被控訴人は,市として調査を行うこととし,税務課長(当時)Bを調査に当たらせているが,Bの調査は,覚書を交わしたとされる昭和59年当時の関係者からの聴き取りという基本的な調査をしておらず,過去の入湯者数については,事業団本部に照会すれば過去10年分程度の日帰り客の数まで把握できたはずであるのに,Aの帳簿保存期間に 昭和59年当時の関係者からの聴き取りという基本的な調査をしておらず,過去の入湯者数については,事業団本部に照会すれば過去10年分程度の日帰り客の数まで把握できたはずであるのに,Aの帳簿保存期間についての主張を鵜呑みにし,調査をしていない。入湯目的で入館した人すべてが入湯税の課税対象となるとすれば調査も容易であったはずである。 (3) 被控訴人の当審における主張(平成13年3月以降の対応について)平成13年3月に入湯税未徴収についての議会質問がされて以降,被控訴人は,徴収に向けて鋭意努力していたが,本件入湯税の徴収者(特別徴収義務者)はAであるところ,Aは,竹原市との間で徴収しなくてもよいとする合意があるなどとして直ちには徴収に協力する姿勢をみせず,また,意思決定に時間を要するという内部事情もあって,Aの協力を得るまでに時間を要した。市は,課税対象となる日帰り入湯客の人数を特定する方法をもたず,行政調査をしても特定は不可能であり,推計課税をするだけの合理的な資料も得られなかったものであり,直ちに徴収をできなかったことに故意過失はない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,控訴人の請求のうち,平成9年6月までに申告すべき分に係る損害の賠償を求める部分は監査請求期間を徒過したものとして不適法であり,その余の請求は適法であるが,被控訴人に故意,過失は認められず,請求は棄却すべきものと判断する。その理由は,以下に訂正するほか,原判決の事実及び理由中の「第3 当裁判所の判断」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決13頁24行目の,「19日」の次に「に受理された」を,「本件監査請求」の次に「に係る書面」を,それぞれ加える。 (2) 同14頁6行目の「徴収しなかったことや」の次に「,Aでは市と取り交わした覚書 頁24行目の,「19日」の次に「に受理された」を,「本件監査請求」の次に「に係る書面」を,それぞれ加える。 (2) 同14頁6行目の「徴収しなかったことや」の次に「,Aでは市と取り交わした覚書によって免除扱いされていると理解していること,」を加える。 (3) 同15頁6行目の「怠る事実が」を「怠る事実についても終了することが考えられるのであり,その」に改める。 (4) 同15頁14行目及び20行目の「徐」を,いずれも「除」に改める。 (5) 同15頁26行目の「3年の経過により怠る事実は終了し」を「3年の経過で賦課権が消滅したことにより怠る事実は終了したものというべきであり」に改める。 (6) 同16頁23行目から17頁16行目までを次のとおり改める。 「 これに対し,平成9年7月(15日)以降に申告すべき分については,適法な監査請求がされたものというべきである。この点,控訴人は,本件監査請求に係る書面において,「請求の要旨」として「就任以来11年間の損失」を求める旨記載しており,被控訴人が市長に就任したのが平成2年1月14日であるから,これを基準として形式的に判断すれば,平成13年1月13日までの間に申告すべき分に限定して監査請求をしたものと解する余地がないではない。しかし,前記2(1)に認定のような本件監査請求に係る書面及び添附資料として提出された新聞記事の内容を総合すれば,控訴人が本件監査請求で指摘し,問題としているのは,竹原市が,Aとの間で法違反の覚書を交わし,被控訴人は,市長に就任以来これを前提として入湯税の賦課徴収を怠ってきたという事実であり,このような事情からすれば,控訴人が指摘する入湯税の未徴収の事実自体は上記の期間経過後もなお継続していることが前提とされていることは容易に推測されるところであるから,本 を怠ってきたという事実であり,このような事情からすれば,控訴人が指摘する入湯税の未徴収の事実自体は上記の期間経過後もなお継続していることが前提とされていることは容易に推測されるところであるから,本件監査請求に係る書面の文言からすれば厳密には監査請求を経ていないかのようにみえるとしても,当該地方公共団体としてはこれを自主的に解決する機会はすでに与えられているということができ,監査請求前置の要請は充たされているものとして適法であると解すべきである。」(7) 同17頁20行目の「25,」の次に「27,」を加え,18頁20行目の「10月分」を「9月分」に改める。 (8) 同22頁4行目の次に,行を改め次を加える。 「 控訴人は,専決事項であるか否かの判断は住民監査請求の趣旨目的を没却しないよう厳格に解釈すべきであって,本件は,竹原市がAとの間で日帰り入湯客の入湯税に関する覚書を交わし,これに基づいて,申告納税の虚偽記載を積極的もしくは暗黙のうちに容認してきた事案であり,税務課長のレベルで判断できるような事案ではなく,専決事項の厳格解釈の観点からはこれを当然に専決事項と認めることはできない旨主張するが,住民監査請求が認められているとの一事によって市長の責任が実体法上厳格なものに加重されるべき根拠はなく,また,控訴人が被控訴人の責任として問題としているのは同人が市長に就任して後のことであるから,それ以前の事由をもって義務違反を論ずることはできないし,被控訴人が市長に就任した後において,同人が入湯税の未徴収について故意があったと認められないことは前記判示のとおりである。」(9) 同22頁10行目から23頁末尾までを次のとおり改める。 「 平成13年3月16日の市議会の予算特別委員会においてAで入湯税を徴収していないことが議事に上 は前記判示のとおりである。」(9) 同22頁10行目から23頁末尾までを次のとおり改める。 「 平成13年3月16日の市議会の予算特別委員会においてAで入湯税を徴収していないことが議事に上ったことは前記(1)ウ(イ)に認定のとおりであり,したがって同日には被控訴人において入湯税の未徴収があることを認識し得たというべきところ,被控訴人は,その後直ちに税務課長B等をして入湯税徴収に向けた行動を開始させ,監査請求と並行した実態調査を経て,同年10月15日から日帰り入湯客からの入湯税徴収を開始したこと,しかし,その以前の入湯税については,法定納期限の経過した従来分を含め,帳簿等の調査によっても,ついに入湯行為のあった日帰り客数を把握することはできなかったこと,この間,Aは入湯税の徴収に必ずしも協力的ではなく,その協力を得るための指導等を要したことは前記認定のとおりである。このような事情に加え,入湯税の賦課徴収の前提となる入湯者数の正確な把握にはAの協力が不可欠であることや,上記のような賦課徴収開始までの期間を総合すると,委員会での質疑がされた後においても,その後同年9月までに法定納期限が到来した入湯税について徴収しなかった点のみならず,既に法定納期限の経過していた従来分の入湯税について更正ないし徴収をしなかった点についてもやむを得ない事情があったというべきであり,これを行わなかった点に過失はないといわざるを得ない。」 2 以上によれば,控訴人の本件請求のうち金1億1365万8900円(平成3年度から平成8年度及び平成9年4月から同年6月までに申告すべき分)及びこれに対する平成13年9月15日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求に係る訴えは不適法であるから却下すべきであり,その余の請求は理由がないものと判断される。 申告すべき分)及びこれに対する平成13年9月15日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求に係る訴えは不適法であるから却下すべきであり,その余の請求は理由がないものと判断される。 したがって,平成13年1月以降に申告すべき分に係る請求についても監査請求を経ていないとして,その部分の訴えを不適法とした原判決は,その限度で失当であるが,本件審理の経過,内容に照らせば,この部分について原審に差し戻してさらに弁論を重ねる必要は認められず,当裁判所において判断をなし得るものと認められる。そして,これによれば上記のとおり請求を棄却すべきものであるが,この結論は原判決よりも控訴人に不利益になるので控訴を棄却するにとどめることとする。 よって,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第3部裁判長裁判官西島幸夫裁判官齋藤憲次裁判官永谷幸恵

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