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平成10(オ)897 保険金請求事件

裁判所

平成13年4月20日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所 平成9(ネ)2740

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2,851 文字

主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。理由 1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。(1) 上告人は,被上告人との間で,昭和57年8月10日,下記内容の災害割増特約が付加された生命保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結した。記ア保険の種類利益配当付養老生命保険イ被保険者 Dウ保険金受取人上告人エ災害割増特約保険金  5000万円オ保険期間昭和57年8月10日から30年間 (2) 本件保険契約に適用される保険約款(以下「本件約款」という。)によれば,主契約及び定期保険特約における死亡保険金の支払事由は被保険者が保険期間中に死亡したときであるとされているが,災害割増特約における災害死亡保険金の支払事由は不慮の事故を直接の原因として被保険者が保険期間中に死亡したときであるとされ,さらに不慮の事故とは,偶発的な外来の事故で,かつ昭和42年12月28日行政管理庁告示第152号に定められた分類項目のうち上記約款の別表2に掲げられたものをいうとされている。また,本件約款によれば,被保険者の故意により上記災害割増特約における災害死亡保険金の支払事由に該当したときは災害死亡保険金を支払わない場合に当たるとされている。(3) 本件保険契約の被保険者であるDは,平成7年10月31日午後2時30- 1 -分ころ埼玉県北足立郡a町所在の5階建て建物の屋上から転落し,脊髄損傷等により死亡した(以下,これを「本件転落」という。)。上告代理人山本隆夫,同根岸隆 年10月31日午後2時30- 1 -分ころ埼玉県北足立郡a町所在の5階建て建物の屋上から転落し,脊髄損傷等により死亡した(以下,これを「本件転落」という。)。上告代理人山本隆夫,同根岸隆,同久利雅宣,同増田英男の上告理由第一について【要旨】本件約款に基づき,保険者に対して災害割増特約における災害死亡保険金の支払を請求する者は,発生した事故が偶発的な事故であることについて主張,立証すべき責任を負うものと解するのが相当である。 - 1 -分ころ埼玉県北足立郡a町所在の5階建て建物の屋上から転落し,脊髄損傷等により死亡した(以下,これを「本件転落」という。)。上告代理人山本隆夫,同根岸隆,同久利雅宣,同増田英男の上告理由第一について【要旨】本件約款に基づき,保険者に対して災害割増特約における災害死亡保険金の支払を請求する者は,発生した事故が偶発的な事故であることについて主張,立証すべき責任を負うものと解するのが相当である。けだし,本件約款中の災害割増特約に基づく災害死亡保険金の支払事由は,不慮の事故とされているのであるから,発生した事故が偶発的な事故であることが保険金請求権の成立要件であるというべきであるのみならず,そのように解さなければ,保険金の不正請求が容易となるおそれが増大する結果,保険制度の健全性を阻害し,ひいては誠実な保険加入者の利益を損なうおそれがあるからである。本件約款のうち,被保険者の故意により災害死亡保険金の支払事由に該当したときは災害死亡保険金を支払わない旨の定めは,災害死亡保険金が支払われない場合を確認的注意的に規定したものにとどまり,被保険者の故意により災害死亡保険金の支払事由に該当したことの主張立証責任を保険者に負わせたものではないと解すべきである。以上によれば,本件転落が偶発的な事故であることについて,上告人に主張立証責任があるとした原審の判断は正当として是認することができる。上記判断は,所論引用の判例に抵触するものではない。原判決に所論の違法はなく,論旨は採用することができない。3 同第二について所論の点に関する原審の事実認定は,原判決挙示の証拠関係に照らし,是認することができ,その過程に所論の違法はない。上記事実関係の下において,本件転落が偶発的な事故であると認めることはでき について所論の点に関する原審の事実認定は,原判決挙示の証拠関係に照らし,是認することができ,その過程に所論の違法はない。上記事実関係の下において,本件転落が偶発的な事故であると認めることはできないとした原審の判断は正当として是認- 2 -することができる。論旨は,原審の専権に属する証拠の取捨判断,事実の認定を非難するものにすぎず,採用することができない。よって,裁判官亀山継夫の補足意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。裁判官亀山継夫の補足意見は,次のとおりである。 その過程に所論の違法はない。上記事実関係の下において,本件転落が偶発的な事故であると認めることはできないとした原審の判断は正当として是認- 2 -することができる。論旨は,原審の専権に属する証拠の取捨判断,事実の認定を非難するものにすぎず,採用することができない。よって,裁判官亀山継夫の補足意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。裁判官亀山継夫の補足意見は,次のとおりである。私は,法廷意見に賛成するものであるが,次のことを付言しておきたい。本件約款の合理的解釈としては,法廷意見のいうとおり,保険金請求者の側において偶発的な事故であることの主張立証責任を負うべきものと解するのが相当である。しかしながら,本件約款が,保険契約と保険事故一般に関する知識と経験において圧倒的に優位に立つ保険者側において一方的に作成された上,保険契約者側に提供される性質のものであることを考えると,約款の解釈に疑義がある場合には,作成者の責任を重視して解釈する方が当事者間の衡平に資するとの考えもあり得よう。そして,かねてから本件のように被保険者の死亡が自殺によるものか否かが不明な場合の主張立証責任の所在について判例学説上解釈が分かれ,そのため紛争を生じていることは,保険者側は十分認識していたはずであり,保険者側において,疑義のないような条項を作成し,保険契約者側に提供することは決して困難なこととは考えられないのであるから,一般人の誤解を招きやすい約款規定をそのまま放置してきた点は問題であるというべきである。もちろん,このような約款がこれまで使用されてきた背景には,解釈上の疑義が明確に解消されないため,かえって改正が困難であったという事 い約款規定をそのまま放置してきた点は問題であるというべきである。もちろん,このような約款がこれまで使用されてきた背景には,解釈上の疑義が明確に解消されないため,かえって改正が困難であったという事情があるのかもしれないが,本判決によって疑義が解消された後もなおこのような状況が改善されないとすれば,法廷意見の法理を適用することが信義則ないし当事者間の衡平の理念に照らして適切を欠くと判断すべき場合も出てくると考えるものである。(裁判長裁判官梶谷玄裁判官河合伸一裁判官福田博裁判官北川- 3 -弘治裁判官亀山継夫)- 4 -

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