- 1 -令和4年11月9日判決言渡令和2年(行ケ)第10120号 審決取消請求事件口頭弁論終結日 令和3年4月22日判 決 原 告 エイサー インコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士 田 中 克 郎同訴訟復代理人弁護士 佐 藤 力 哉関 川 淳 子同訴訟代理人弁理士 佐 藤 俊 司廣 中 健太 田 雅 苗 子 被 告 ピービーエックス ホールディング エルエルシー 同訴訟代理人弁理士 小 暮 理 恵 子行 田 朋 弘安 部 光 河村 山 靖 彦実 広 信 哉阿 部 達 彦渡 部 崇堀 江 健 太 郎黒 田 晋 平崔 允 辰 - 2 - 江 健 太 郎黒 田 晋 平崔 允 辰 - 2 -松 尾 直 樹塩 尻 一 尋飯 田 雅 人主 文1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事 実 及 び 理 由以下,書証を掲記する際には,枝番号の全てを含むときは,その記載を省略することがある。 第1 請求特許庁が取消2018-300153号事件について令和2年6月8日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,商標法50条1項に基づく商標登録取消審判請求に対して,これを認めた審決の取消訴訟である。争点は,以下の1の商標(以下,「本件商標」という。)の使用の有無である。 1 本件商標について原告は,別紙「商標目録」記載の「商標」のとおりの構成からなる商標について,同別紙の「指定商品・区分」記載の商品を指定商品とする商標登録第2244788号商標の商標権者である(甲1,2)。 2 特許庁における手続の経緯等被告は,平成30年3月16日,特許庁に対し,本件商標の指定商品中,第7類「起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機〔その部品を除く。〕を除く。),交流発電機,直流発電機」,第9類「配電用又は制 - 3 -御用の 指定商品中,第7類「起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機〔その部品を除く。〕を除く。),交流発電機,直流発電機」,第9類「配電用又は制 - 3 -御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電線及びケーブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」及び第12類「全指定商品」(以下,これらの指定商品を「本件指定商品」という。)の商標登録を取り消すことを求めて,商標法50条1項に基づき商標登録の取消審判(以下,「本件審判」という。)を請求した。 特許庁は,本件審判の請求を,同月30日に登録し,取消2018-300153号事件として審理した上で,令和2年6月8日,「登録第2244788号商標の指定商品中,第7類『起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機〔その部品を除く。〕を除く。),交流発電機,直流発電機』,第9類『配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電線及びケーブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品』及び第12類『全指定商品』についての商標登録を取り消す。」との審決(以下,「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月18日,原告に送達された。 本件商標登録について,商標法50条2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは,平成27年3月30日から平成30年3月29日までの期間(以下,「本件要証期間」という。)となる。 3 本件審決の理由(1) 液晶パネルについて甲8(CHIKAZO〔当時の運営責任者名A〕のamazon.co.jp における「PackardBell Easy Note tk37 シリーズ15.6 " LCD LED 表示画面WXGA HD Screen Size: 15.6"LED-1 zon.co.jp における「PackardBell Easy Note tk37 シリーズ15.6 " LCD LED 表示画面WXGA HD Screen Size: 15.6"LED-1366-768-G-40-15.6-14140」と題するウェブページのプリントアウト)によると,平成30年7月23日に,「Packard Bell Easy Note tk37 シリーズ15.6」と称する商品「交換用液晶パネル」が,価格10万5065円で,販売を目的として「CHIKAZO」によりAmazonで広告されたといえる(以下,「CHIKAZO」のウェブサイトの上記ページを「本件ウェブページ」といい,本件ウェブページに記載された「交換用液晶パネル」を「本件液晶パネル」という。)。 しかし,本件液晶パネルは,Amazonでの取扱い開始日が平成29年8月8 - 4 -日であることは確認できるものの,商標権者に係る商品であるとする表示はなく,また,商標権者により製造されたものであるかも不明であり,さらに,上記販売元と商標権者の関係も不明である。 また,本件商標は,その構成中「PACKARD BELL」の文字とその上下に配された赤色の帯状図形からなるもので,全体として一体的に表されたものと看取されるが,本件液晶パネルに表示された「Packard Bell」の文字(以下,「本件使用商標」という。)は,文字のみであって,本件商標が有する文字の上下に配されている赤色の帯状図形はない。 本件使用商標は,文字のみより構成され,本件商標が有する特徴的な構造である帯状図形を伴わないものであり,自他商品識別標識として本件商標と同一の機能を果たすものといえないから,本件商標と社会通念上同一の商標ということはできない。 (2) コンピュータモニ 構造である帯状図形を伴わないものであり,自他商品識別標識として本件商標と同一の機能を果たすものといえないから,本件商標と社会通念上同一の商標ということはできない。 (2) コンピュータモニター用ディスプレイ用操作ガイドについて甲17(セカイモンにおける「B」の「Packard Bell 1989 By Epson AmericaIncorporated computer vintage」と題するウェブページのプリントアウト),甲19(セカイモンにおける「コンピュータモニター用ディスプレイ用操作ガイド」の購入詳細のプリントアウト)によると,出品者が「B」であって,「sekaimon」のウェブサイトに出品された「Packard Bell 1989 By Epson America Incorporatedcomputer vintage」と称する商品は,「PACKARD BELL」の文字とその上下に配された赤色の帯状図形からなるものが一部に表示された複数の書類であり,当該商品は,平成31年10月1日にセカイモン物流センターに到着して,同年10月10日に顧客に商品が配達されたものである。 当該商品には,「PACKARD BELL」の文字とその上下に配された赤色の帯状図形からなる本件商標と社会通念上同一といい得るものが表示されているものの,当該商品が「コンピュータモニター用ディスプレイ用操作ガイド」であることはもとより,「商品情報」の記載からも,いかなる商品であるか,その詳細は不明で - 5 -ある。また,当該商品が商標権者に係る商品であるとする表示はなく,商標権者により製造されたものであるかも不明であり,出品者(取引者)と商標権者との関係も不明である。さらに,上記の取引は,本件要証期間内の取引とはいえない。 (3) 商品であるとする表示はなく,商標権者により製造されたものであるかも不明であり,出品者(取引者)と商標権者との関係も不明である。さらに,上記の取引は,本件要証期間内の取引とはいえない。 (3) コンピュータユーザーマニュアルについて甲21(セカイモンにおける出品者「C」の「Packard Bell IS/VT 286 Microsoft GWBasic Interpreter Computer User Manual (A5)」と題するウェブページのプリントアウト)によると,出品者が「C」であって,「sekaimon」のウェブサイトに出品された「Computer User Manual (A5)」と称する商品「ユーザーマニュアル」には,白色のバインダー及びそのバインダーのケースに「PACKARD BELL」の文字とその上下に赤色の帯状図形が表示されている。 当該商品には,中間に配された「PACKARD BELL」の文字とその上下に配された赤色の帯状図形からなる本件商標と社会通念上同一といい得るものが表示されているものの,当該商品が商標権者に係る商品であるとする表示はなく,商標権者により製造されたものであるかも不明であり,出品者(取引者)と商標権者の関係も不明である。また,ウェブサイトへの掲載日が不明であって,本件要証期間内の出品とはいえない。したがって,この証拠からは,商標権者が,本件要証期間内に本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたとはいえない。 (4) 以上のとおり,原告が提出した証拠によっては,本件要証期間内に,商標権者が,本件指定商品について本件商標の使用をしたことを認めることはできないから,原告は,本件要証期間内に,日本国において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者(以下,専用使用権者又は通常使用権者 権者が,本件指定商品について本件商標の使用をしたことを認めることはできないから,原告は,本件要証期間内に,日本国において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者(以下,専用使用権者又は通常使用権者を併せて「使用権者」といい,商標権者と使用権者を併せて「商標権者等」という。)のいずれかが本件審判の請求に係る本件指定商品のいずれかについて本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。 また,原告は,本件審判の請求に係る本件指定商品について,本件商標の使用をしていないことについて,正当な理由があることも明らかにしていない。 - 6 -したがって,本件商標登録は,商標法50条の規定により,その指定商品中,本件指定商品についての登録を取り消すべきものである。 第3 原告主張の審決取消理由1 本件商標は,以下のとおり,流通業者による使用を通じて,原告によって,本件要証期間中に,その指定商品中,第9類「電気通信機械器具」について使用された事実があるから,本件審決の判断には誤りがある。 (1) CHIKAZOによる使用ア 商標法50条により商標登録が取り消されるのは,当該商標を「使用」していないときであり,この「使用」の事実の判断に当たって,「商標権者に係る商品であるとの表示」といった要件は課されていない。本件審決は,同表示がないことをもって本件商標の使用の事実を否定しており,誤りがある。 イ アマゾン合同会社の運営に係るECサイト(以下,「Amazonサイト」という。)におけるショップ「CHIKAZO」(甲7)が出品する本件液晶パネルの販売ページ(本件ウェブページ。甲8)には,「Packard Bell Easy Note tk37 シリーズ15.6」との表示があり,当該表示の下のブランド名欄( (甲7)が出品する本件液晶パネルの販売ページ(本件ウェブページ。甲8)には,「Packard Bell Easy Note tk37 シリーズ15.6」との表示があり,当該表示の下のブランド名欄(甲22)には「PACKARD BELL」との表示がある。 原告傘下のPBブランドには,「Easy Note」とのノートブック型パソコンシリーズがあり,同シリーズには「TK37」というモデルが存在しており,米国の大手スーパーマーケットである「Walmart(ウォルマート)」のECサイトにおいても販売されている(甲23,24)。 本件液晶パネルは,このPBブランドの「Easy Note」のうち「TK37」というモデルの交換用液晶パネルとして製造販売された,原告が有するPBブランドに係る商品である。 したがって,本件液晶パネルを販売する本件ウェブページ(甲8)に「Packard Bell」との文字を表示させる行為は,「商品・・・に関する広告,価格表もしくは取引書類に標章を付して展示」(商標法2条3項8号)することによる本 - 7 -件商標の使用である。 ウ 被告は,原告が複数の国で「Packard Bell」に係る事業を放棄しており,米国では被告が当該ブランドの所有者となっていること,CHIKAZOが米国からの輸入品を扱うショップであること,原告が台湾に本拠を有することから,本件液晶パネルは,商標権者等が,業として商品を生産し,証明し,又は譲渡(以下,「生産等」という。)した商品ではない旨主張する。 しかし,「EasyNote」は,被告が製造販売する商品ではなく,原告のPBブランドの商品である(甲23)。また,原告は,多国籍企業であり,2008年(平成20年)に買収した「Packard Bell B.V.」(以下,「パッカー 被告が製造販売する商品ではなく,原告のPBブランドの商品である(甲23)。また,原告は,多国籍企業であり,2008年(平成20年)に買収した「Packard Bell B.V.」(以下,「パッカードベル社」という。)もオランダの会社であって(甲27),同社が原告傘下となって以降も,PBブランドの商品は,多数の国で販売されている(甲28)。そして,その商品の性質上,中間流通業者等によって国境をまたいで転々流通している。したがって,被告が主張する上記事情は,本件液晶パネルが商標権者等の生産等に係る商品であることを否定するものではない。 エ 本件審決は,本件商標の「使用」に当たらない理由として,CHIKAZOと原告の関係が不明であることも挙げている。 しかし,Amazonサイトにおけるショップ「CHIKAZO」(甲7)の「ストアフロント」欄の説明文言や,CHIKAZOの過去12か月間における56件の評価(98%が肯定的)や顧客から投稿されたフィードバック等に鑑みると,CHIKAZOが,業としてAmazonサイト上で,商品を販売等しており,本件ウェブページでの「Packard Be11」との表示も名目上の使用や偽りの表示などではないことは明らかである。CHIKAZOは,日本に所在する「輸入ショップ」であり,原告が有するPBブランドに係る本件液晶パネルの日本における流通業者である。 知財高裁判平成24年(行ケ)第10310号平成25年3月25日判決(以下,「Fashion Walker事件判決」という。甲11)は,「商標権者等が登 - 8 -録商標の使用をしている場合とは,特段の事情のある場合はさておき,商標権者等が,その製造に係る商品の販売等の行為をするに当たり,登録商標を使用する場合のみを指すのではなく,商標権者等によっ 8 -録商標の使用をしている場合とは,特段の事情のある場合はさておき,商標権者等が,その製造に係る商品の販売等の行為をするに当たり,登録商標を使用する場合のみを指すのではなく,商標権者等によって市場に置かれた商品が流通する過程において,流通業者等が,商標権者等の製造に係る当該商品を販売等するに当たり,当該登録商標を使用する場合を含むものと解するのが相当であ」り,「このように解すべき理由は,今日の商品の流通に関する取引の実情に照らすならば,商品を製造した者が,自ら直接消費者に対して販売する態様が一般的であるとはいえず,むしろ,中間流通業者が介在した上で,消費者に販売することが常態であるといえるところ,このような中間流通業者が,当該商品を流通させる過程で,当該登録商標を使用している場合に,これを商標権者等の使用に該当しないと解して,商標法50条の不使用の対象とすることは,同条の趣旨に反することになるからである。」と判断している。 CHIKAZOのような中間流通業者が,原告のPBブランドに係る本件液晶パネルを販売するAmazonサイト上の本件ウェブページにおいて「Packard Bell」との文字を表示させることは,「商品・・・に関する広告,価格表若しくは取引書に標章を付して展示」(商標法2条3項8号)する行為にほかならず,このような行為は,商標権者である原告による「使用」に当たる。 Fashion Walker事件判決は,商標権者等による使用が3年以上前に終了していたとしても,その後要証期間内に中間流通業者による使用が判明した場合には,当該使用を証拠とすることによって商標登録の取消しを免れるものとしたが,これは,一見使用されていない商標登録について,その使用を欲する商標権者以外の者と当該商標権者とのバランスとして,過去に一定の商 当該使用を証拠とすることによって商標登録の取消しを免れるものとしたが,これは,一見使用されていない商標登録について,その使用を欲する商標権者以外の者と当該商標権者とのバランスとして,過去に一定の商標の使用を行ってきた商標権者がその商標登録の使用継続を欲して証拠の提出を行うのであれば,当該商標権者に,その商標を継続して使用させるべきであるという価値判断を行ったものである。 本件においても,原告において,本件要証期間内に,自ら直接使用した証拠を提 - 9 -出することはできないとしても,本件要証期間内における中間流通業者による使用の事実を明らかにした以上は,原告に本件商標の使用の継続が認められるべきである。 オ 被告は,Fashion Walker事件判決は,商標権者等が日本国内で販売していた事案であって,本件と異なる旨を主張する。 しかし,Fashion Walker事件判決が,中間流通業者による使用を商標権者等の使用と解すべきとした理由は,「今日の商品の流通に関する取引の実情に照らすならば,商品を製造した者が,自ら直接消費者に対して販売する態様が一般的であるとはいえず,むしろ,中間流通業者が介在した上で,消費者に販売することが常態であるといえる」ことにある。今日,海外大手パソコンメーカー(例えば,原告以外にも,Lenovo,DELL,hp,Apple,Microsoft,ASUS,LG,HUAWEI等)のパソコンの交換パーツが中間流通業者を媒介して日本国内でECサイト等を通じて流通することは常態化しているため,本件液晶パネルが商標権者等によって最初に市場に置かれたのが日本国外であったことをもって,本件がFashion Walker事件判決の判断の射程外であると解することはできない。今日の商品の流通に関する取引の実情 ルが商標権者等によって最初に市場に置かれたのが日本国外であったことをもって,本件がFashion Walker事件判決の判断の射程外であると解することはできない。今日の商品の流通に関する取引の実情に鑑みると,本件液晶パネルがECサイト等を通じて日本国内で流通することは,商標権者等にとって当然に想定されたルートによる流通である。 したがって,PBブランドに係る本件液晶パネルが日本国内において中間流通業者であるCHIKAZOによってAmazonサイトに出品され,その広告において本件商標が使用されることは,原告の意思に反するものではなく,商標権者等による使用である。 カ また,被告は,Fashion Walker事件判決が本件に当てはまるとしても,CHIKAZOが本件液晶パネルを販売していたことが証明されていないと主張する。 しかし,本件ウェブページ(甲8)によると,CHIKAZOが本件液晶パネル - 10 -を販売するために出品していることは自明であり,被告が指摘するような,CHIKAZOのストアフロント欄の説明文言,顧客からの評価やフィードバック等(甲7)が自作自演であると解すべき合理的理由は見当たらない。 (2) 社会通念上同一の商標であることア 本件商標のうち「PACKARD BELL」の欧文字部分こそが自他商品識別機能を果たす部分であり,帯状図形部分は,同文字部分を単に装飾するものにすぎず,また,極めて単純,かつ,ありふれた図形であって,格別特徴的なものでもないから,取引者,需要者に特に顕著な印象を与えるものとは認められない。 そして,本件商標の「PACKARD BELL」の欧文字部分と本件使用商標である「Packard Bell」との文字とを対比すると,頭文字以外の文字に大文字・小文字の違いは のとは認められない。 そして,本件商標の「PACKARD BELL」の欧文字部分と本件使用商標である「Packard Bell」との文字とを対比すると,頭文字以外の文字に大文字・小文字の違いはあるが,構成する文字は同一であり,その字体の違いも特に目立ったものではなく,両者の称呼は同一である。 したがって,本件商標と使用商標とは,商標法50条の「商標の使用」に関して,社会通念上同一の商標と認められる。 イ 本件と同様に,文字と図形の組み合わせからなる商標と,その文字部分のみからなる商標が「社会通念上同一」か否かが争われる事案において,図形部分が自他識別標識として果たす役割は小さく,翻って文字部分が自他商品識別標識としての機能を発揮しているとして,登録商標と使用商標が「社会通念上同一」であると判断されたものが多数存在する(甲12,25,東京高等裁判所平成15年(行ケ)第124号同年10月30日判決,知的財産高等裁判所平成30(行ケ)第10101号同年12月19日判決)。 また,2008年(平成20年)に原告に買収されたパッカードベル社は,2006年(平成18年)10月まで,日本の法人である日本電気株式会社(以下,「NEC」という。)のグループ会社であり,日本市場においてもPBブランドのパソコン等が広く流通していた(甲26,27)から,「Packard Bell」の商標は,日本の需要者の間において認知されている。 - 11 -このような事情に照らすと,本件商標のうち「PACKARD BELL」との文字部分が自他識別機能を果たす部分であることは明らかである。 2 被告の本件審判請求が信義則に反し権利濫用に当たること(1) パッカードベル社は,1926年に創業し,ラジオ,テレビジョン,パーソナルコンピュータ等 たす部分であることは明らかである。 2 被告の本件審判請求が信義則に反し権利濫用に当たること(1) パッカードベル社は,1926年に創業し,ラジオ,テレビジョン,パーソナルコンピュータ等の家庭用電機製品を販売してきた。同社は,本件商標をはじめ,「PACKARD BELL」商標を同社の業務に係る商品に使用されるハウスマークとし,当該商標を使用して,1986年より,一般家庭ユーザー向けパーソナルコンピュータを販売し,さらに,DVDプレーヤー,PVR,MP3プレーヤー,GPS,ストレージ製品を販売してきた(甲29)。 原告は,2008年(平成20年)に,パッカードベル社を買収し,現在世界第3位のノートブック型コンピュータメーカーとなり(甲15,29),パッカードベル社は,現在,原告の傘下で事業を行っている。パッカードベル社は,「PACKARD BELL」商標を使用した家庭用電機製品を,フランス,ハンガリー,オランダ,トルコ共和国,ウクライナ,英国,南アフリカ共和国をはじめとした世界31の国や地域で取り扱っている(甲28)。このため,「PACKARD BELL」商標には,パッカードベル社や原告の信用や顧客吸引力が化体している。 (2) 他方,米国の「JMM Lee Properties, LLC」(以下,「JLP社」という。)は,2011年(平成23年)7月,2016年(平成28年)10月及び同年12月に,米国において,「PACKARD BELL」の欧文字を標準文字で横一連で表した複数の商標の商標登録(以下,「被告米国商標」と総称する。)を出願し(甲3,30~32,乙19),その後,被告米国商標は,2017年(平成29年)12月6日付けで同社から被告に譲渡された(甲30~32)。 JLP社は,第三者の信用や顧客吸引力の化 する。)を出願し(甲3,30~32,乙19),その後,被告米国商標は,2017年(平成29年)12月6日付けで同社から被告に譲渡された(甲30~32)。 JLP社は,第三者の信用や顧客吸引力の化体する多数の商標について商標登録を有しており,そのウェブサイトにおいてこれらの商標を用いたブランドの歴史,同商標が使用できる商品の種類及び同商標の使用開始日等の情報を提供の上,ライセンシーを募っている(甲33,34)ところ,2018年(平成30年)頃,米 - 12 -国の会社である「Southern Telecom Inc」(以下,「ST社」という。)が,「PACKARD BELL」商標を使用してノートブック型コンピュータ等の家庭用電機製品の販売を開始しており(甲35),これは被告によるライセンスに基づくものであると考えられる。 被告がST社を通じて展開する「PACKARD BELL」ブランドは,そのブランドロゴや色彩等の点を含め,あたかも原告傘下のPBブランドと関連があるかのように広告宣伝されており(甲35,39),被告は,米国において,明らかに原告傘下のPBブランドに擦り寄るような態様で,その信用にフリーライドしながら,ST社を通じて「PACKARD BELL」商標の使用を展開している。 JLP社やST社は,原告とは何ら関係がない会社である。 (3) 被告は,平成30年3月6日に,我が国において,米国登録商標と同じ「PACKARD BELL」の欧文字を標準文字で横一連にて表した商標(以下,「被告出願商標」という。)を商標登録出願した(甲40)。そして,その出願とほぼ同時に,被告出願商標にとって先願となる本件商標について本件審判請求がされた。 (4) 以上の経緯に照らすと,本件審判請求は,被告出願商標を登録させる目的でさ (甲40)。そして,その出願とほぼ同時に,被告出願商標にとって先願となる本件商標について本件審判請求がされた。 (4) 以上の経緯に照らすと,本件審判請求は,被告出願商標を登録させる目的でされたものであり,当該商標の登録及び使用は,原告の商標に化体・蓄積した信用や顧客吸引力等にただ乗りすることを意図してされたものである。 仮に,被告出願商標が登録されたとしても,その権利取得に不正の意図があることや,被告出願商標に化体した信用が原告やパッカードベル社に帰属するものであることからすると,被告による被告出願商標に基づく原告に対する権利行使は,権利の濫用(民法1条3項,民訴法2条)として許されるものではない。 (5) また,本件審判請求は,被告による不正の意図に基づきされたものであって,商標法の目的及び信義則(民法1条2項)に反するものというべきであり,しかも,被告にとっても何の実益ももたらさない無意味な請求であって,新たな紛争を招くものでしかなく,訴訟経済に反するものである。 仮に,本件審決が維持され,それに伴い被告出願商標が登録に至れば,原告は, - 13 -これに対する無効審判等の請求のために無用な手続的負担や費用を強いられるものであり,さらに,その間,原告が日本において自らのPBブランドを展開できないことにより甚大な損失を被ることになる。 (6) 以上のとおり,本件審判請求は,信義則に反し権利濫用に当たるので,認められるべきではない。 第4 被告の主張1 商標権者等による使用について(1) 商標法50条の「商品についての商標の使用」とは,業として商品を生産し,証明し,又は譲渡(生産等)する者が行う,その商品についての同法2条3項1号,2号,8号,9号,又は10号に掲げる行為をいう(同法2条1項1号 「商品についての商標の使用」とは,業として商品を生産し,証明し,又は譲渡(生産等)する者が行う,その商品についての同法2条3項1号,2号,8号,9号,又は10号に掲げる行為をいう(同法2条1項1号及び同条3項)から,商標権者等が指定商品について登録商標の使用をしているというためには,その商品が,商標権者等が生産等した商品であることを証明しなければならない。 (2)ア 本件ウェブページにおける「Packard Bell Easy Note tk37 シリーズ15.6」との表示や,当該表示の下のブランド名欄(甲22)の「PACKARD BELL」との表示は,本件商標の文字部分に相当する「Packard Bell」及び「PACKARD BELL」の文字を単に示すにすぎず,本件液晶パネルが商標権者等が生産等した商品であることを何ら証明するものではない。 イ 原告は,本件液晶パネルが,ノートブック型パソコンシリーズの一つである「Easy Note」のうち「TK37」というモデルの交換用液晶パネルであり,原告が有するPBブランドに係る商品である旨主張し,本件液晶パネルに対応するものとして,Packard Bellのウェブページ(甲23)及び米国大手スーパーマーケットのECサイトのウェブページ(甲24)を提出する。 しかし,原告は,CHIKAZOが本件ウェブページにおいて実際に取引していた商品に関する直接的な証拠は一切提出していない。また,原告も認めるように,CHIKAZOは原告とは何らの関係のない流通業者であるため,本件ウェブペー - 14 -ジは,原告の商品を公式に広告宣伝するものではない。したがって,本件ウェブページにおける表示と,甲23,24における表示が部分的に一致するからといって,本件液晶パネルが原告又は使用権者が生 4 -ジは,原告の商品を公式に広告宣伝するものではない。したがって,本件ウェブページにおける表示と,甲23,24における表示が部分的に一致するからといって,本件液晶パネルが原告又は使用権者が生産等したものであるとは認定できない。 ウ また,原告は,米国を含む複数の国において,本件商標に係るブランド「Packard Bell」に係る事業を2011年(平成23年)頃に放棄しており,現在では,被告が当該ブランドの所有者となっている(甲3,乙19)。甲24には,「Acer」等の原告を示す表示は一切含まれていない。 したがって,甲24に係る液晶パネルが原告又は使用権者が生産等したものであると認めることはできない。 仮に,甲24に係る液晶パネルは原告又は使用権者が生産等したものであるとしても,CHIKAZOは,米国からの輸入品を扱うショップであり(甲7),甲24に係る液晶パネルを,CHIKAZOが本件ウェブページにおいて取り扱っていたことは立証されていない。 エ これらによると,本件液晶パネルが,台湾に本拠を有する商標権者等が生産等した商品であるかどうかは明らかでない。 (3) 原告は,CHIKAZOと原告の関係が不明であるとした本件審決の判断に誤りがあると主張する。 ア 商標法50条によると,被請求人は,商標権者等による使用を証明する必要があるところ,原告は,CHIKAZOが流通業者であると主張するにすぎず,専用使用権者又は通常使用権者とは主張していない。そのため,CHIKAZOと原告の関係が不明であること,すなわち,CHIKAZOが専用使用権者又は通常使用権者であるかが証明されていないことを理由として本件商標の使用を認めなかった本件審決は誤った判断をしたものではない。 イ Fashion Walker CHIKAZOが専用使用権者又は通常使用権者であるかが証明されていないことを理由として本件商標の使用を認めなかった本件審決は誤った判断をしたものではない。 イ Fashion Walker事件判決は,対象商標の通常使用権者であるグンゼが商標の使用対象となったパンティストッキングを日本国内で販売し,その販売の中止後も要証期間中に流通業者によって販売が継続されていたものであ - 15 -る。 一方,本件では,本件ウェブページにおいて広告宣伝されている本件液晶パネルが原告又は使用権者が製造したものであるかは証明されておらず,原告が,本件液晶パネルを本件要証期間前に自ら日本国内で販売していた事実は明らかになっていない。 このように,商標権者又は使用権者が当初より日本において商品を販売しており,日本の市場で当該商品を流通させることを意図していたFashion Walker事件判決と,商標権者又は使用権者が日本において本件液晶パネルを販売しておらず,日本において当該商品を流通させることを意図していなかった本件とでは事案が異なる。 ウ 仮に,Fashion Walker事件判決が本件に当てはまるとしても,同事件では,商品を製造した通常使用権者であるグンゼが製造したパンティストッキングを,流通業者であるアイ・ティ・エム・ユーが仕入れ,アイ・ティ・エム・ユーが介在した上で,当該パンティストッキングが消費者に販売されたという事実関係が明らかになっており,この事実関係は,Fashion Walker事件判決のいう「今日の商品の流通に関する取引の実情に照らすならば,商品を製造した者が,自ら直接消費者に対して販売する態様が一般的ではあるといえず,むしろ,中間流通業者が介在した上で,消費者に販売することが常態である」としている点に合 る取引の実情に照らすならば,商品を製造した者が,自ら直接消費者に対して販売する態様が一般的ではあるといえず,むしろ,中間流通業者が介在した上で,消費者に販売することが常態である」としている点に合致する。 しかし,本件において,原告又は使用権者が液晶パネルを製造していたとしても,CHIKAZOが当該液晶パネルの真正品を仕入れていたことは証明されていないから,本件液晶パネルが商標権者等が生産等した商品であるかが証明されておらず,かつ,CHIKAZOが本件液晶パネルを実際に販売していたことも立証されていない。 このように,本件では,Fashion Walker事件判決のいう取引の常態に該当する事実が認められないため,同事件判決の射程外である。 - 16 -エ さらに,本件液晶パネルが原告又はその使用権者によって製造されたものをCHIKAZOが仕入れたものであったとしても,どのような状態で販売されていたのかは不明であるから,液晶パネルの品質が損なわれていなかったと判断することはできない。液晶パネルの品質が損なわれていた場合,CHIKAZOの使用は,本件商標の品質保証機能を害するものと一般的には解されるが,このような行為を,本件商標の使用とみなし,本件商標の商標登録を維持することは,許されるものではない。この観点からも,CHIKAZOによる本件ウェブページにおける使用を,商標権者等による使用と認めることはできない。 オ 原告は,Amazonサイトにおけるショップ「CHIKAZO」(甲7)の「ストアフロント」欄の説明文言や,CHIKAZOの過去12か月間における56件の評価や顧客から投稿されたフィードバック等に鑑みると,CHIKAZOが,業としてAmazonサイト上で,商品を販売等しており,本件ウェブページでの「P CHIKAZOの過去12か月間における56件の評価や顧客から投稿されたフィードバック等に鑑みると,CHIKAZOが,業としてAmazonサイト上で,商品を販売等しており,本件ウェブページでの「Packard Be11」との表示も名目上の使用や偽りの表示などではない旨主張する。 しかし,本件ウェブページには,液晶パネルを購入した者によるレビューはない。 説明文言,評価,フィードバック等は,CHIKAZOが実際に本件液晶パネルを販売していることを証明するものではない上,原告が指摘する評価やフィードバックが真の顧客によるものか又は自作自演によるものかも明らかではない。 また,甲4に示すように,CHIKAZOのような個人や小規模事業体での出店の場合,在庫ありと表示されていても実際に在庫がない場合や,入金確認後は商品発送を含め全く対応しない等,詐欺目的の出品も存在する。 したがって,CHIKAZOが本件液晶パネルを実際に販売していたことは,依然として立証されていない。 2 社会通念上同一の商標であるかどうかについて(1) 本件商標は,「PACKARD BELL」の欧文字が赤色の帯状図形に上下から挟まれている構成を有している。欧文字及び帯状図形は,共に,右方向に傾 - 17 -斜しており,横方向の長さにおいて揃っている。欧文字と帯状図形の大きさを比較しても,いずれかが極端に大きいか又は小さいといったことはなく,概ね同じ大きさを有している。このように欧文字と帯状図形とは共通の外観的特徴を有し,お互いに調和するようにデザインされているため,本件商標は,全体的に統一のとれた一体不可分の商標として把握するべきである。 一方,本件ウェブページの「Packard Bell」の文字(本件使用商標)は,文字のみであり,本件商標が有する ため,本件商標は,全体的に統一のとれた一体不可分の商標として把握するべきである。 一方,本件ウェブページの「Packard Bell」の文字(本件使用商標)は,文字のみであり,本件商標が有する赤色の帯状図形を伴っていない。 したがって,本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標ではない。 (2) 原告は,図形部分が自他識別標識として果たす役割は小さく,翻って文字部分が自他商品識別標識としての機能を発揮しているとし,登録商標と使用商標が「社会通念上同一」であると判断された裁判例や審決が多数存在する旨主張する。 しかし,社会通念上同一であるか否かは個別具体的に判断されるべきものであり,実際に,図形と文字からなる登録商標は文字のみからなる使用商標とは社会通念上同一ではないと判断された例も存在する(乙20,21)。原告が挙げた審決や判決は,いずれも,本件とは,商標における文字と図形の構成が異なっている。 (3) また,原告は,「Packard Bell」との商標は,日本の需要者の間において認知されている商標であるといえるから,本件商標のうち「PACKARD BELL」との文字部分が自他識別機能を果たす部分であることは明らかである旨主張する。 まず,「Packard Bell」との商標が日本の需要者の間において単に認知されていることをもって,本件商標のうち図形部分が捨象され,欧文字部分が自他識別機能を果たすという原告の主張は,商標法上の又は判決若しくは審決によって確立された規範に基づくものではないため,失当である。 仮に,「認知」という語が「周知」を意味するとしても,原告は,日本における原告による生産数や販売数を示す資料等の周知性を証明する資料を一切提出していない。 - 18 -したがって,本件商標のうち「 知」という語が「周知」を意味するとしても,原告は,日本における原告による生産数や販売数を示す資料等の周知性を証明する資料を一切提出していない。 - 18 -したがって,本件商標のうち「PACKARD BELL」の欧文字部分が,原告の出所表示として日本の需要者の間で周知であるとはいえず,ひいては本件商標のうち図形部分が捨象され,欧文字部分が自他識別機能を果たすということはできない。 3 被告の本件審判請求が信義則に反し権利の濫用に当たるとの主張について(1) 原告は,「Packard Bell」商標には,パッカードベル社又は原告の信用及び顧客吸引力が化体していると主張している。 しかし,原告は,その理由として,歴史及び国数を簡潔に述べているにとどまり,商標の使用数量や広告宣伝の規模等の信用及び顧客吸引力の化体を証明する客観的な証拠を提出していない。本件審判請求に対しても,甲8のような,原告とは何らの関係のない者による資料しか使用証拠として提出できず,「Packard Bell」ブランドの商品を日本における公式のウェブサイトにおいて扱ってすらいない(甲6)。 他方,被告は,「Packard Bell」商標を,米国だけでなく,韓国やメキシコ等の複数の世界各国で登録している(乙22,23)。 このように,「Packard Bell」商標は原告又はその関連会社のみに結びついているものではない。このような状況で,「Packard Bell」商標の使用を通じて当該商標に原告又はその関連会社の信用及び顧客吸引力が化体しているとは認められない。 (2) 原告は,ST社が,米国において,原告傘下のPBブランドの信用にフリーライドしながら,「PACKARD BELL」商標の使用を展開していると主張する。 しかし,被告 認められない。 (2) 原告は,ST社が,米国において,原告傘下のPBブランドの信用にフリーライドしながら,「PACKARD BELL」商標の使用を展開していると主張する。 しかし,被告は,「PACKARD BELL」商標について米国で商標権を有しており(甲3,乙19),ST社は,被告の関連会社であるから,被告及びST社の使用は,所有している権利に基づくものである。また,「Acer」等の原告を想起させる表示は,ST社のウェブサイトである甲35,39には含まれていない。さ - 19 -らに,原告は米国で商標権を放棄しており,米国において,「PACKARD BELL」ブランドに原告又はその関連会社の信用が化体しているとは認められない。 したがって,被告及びST社の使用が,信用のフリーライドに該当しないことは明らかである。 (3) 原告は,本件審判請求は,被告による不正の意図に基づきなされたものであり,商標法の目的及び信義則に反する等述べ,本件審判請求は認められるべきではないと主張する。 しかし,被告は,「PACKARD BELL」商標を使用して米国で展開している事業を日本においても展開するために,被告出願商標の出願を行った(甲40)。 調査したところ,本件商標が存在したため,被告出願商標の登録のために本件審判を請求した。このように,被告出願商標の出願及び本件審判請求は,日本における事業展開のために行ったものであり,不正の意図に基づいているものではない。 また,上記(1)のとおり,「PACKARD BELL」商標に原告又はその関連会社の信用及び顧客吸引力が化体しているとは認められず,この点に鑑みても,被告に不正の意図があると解する合理的理由はない。 (4) 以上より,本件審判請求は,信義則に反しないし,権利の濫 の関連会社の信用及び顧客吸引力が化体しているとは認められず,この点に鑑みても,被告に不正の意図があると解する合理的理由はない。 (4) 以上より,本件審判請求は,信義則に反しないし,権利の濫用には該当しない。 第5 当裁判所の判断1 事実関係後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 (1) パッカードベル社は,1926年に米国で創業した会社であり,昭和61年に,日本において,本件商標の商標登録を出願し,その頃から,本件商標を使用して,一般家庭ユーザー向けのパーソナルコンピュータを販売していた(甲1,15,29)。 パッカードベル社は,1996年(平成8年)に,NECの海外部門と合併して,パッカードベルNECジャパンとなり,同社は,日本国内においてパーソナルコン - 20 -ピュータを販売したが,平成11年11月頃に,日本国内の工場を閉鎖し,「パッカードベル」のブランド名は,日本で使用されなくなった(甲15,26)。 パッカードベル社は,2008年(平成20年)に,台湾に本拠を置く原告に買収され,原告が本件商標の商標権者となった(甲2,15,29)。 パッカードベル社は,現在,原告の傘下で事業を行っており,「PACKARDBELL」を含む商標を使用した家庭用電機製品を,フランス,ハンガリー,オランダ,トルコ共和国,ウクライナ,英国,南アフリカ共和国などの世界31の国や地域で取り扱っている(甲28,29)。 (2) 被告は,2017年(平成29年)12月6日付けで,米国のJLP社から,同社が有する被告米国商標を譲り受け,被告米国商標の商標権者となった(甲3,30~32,乙19)。 JLP社は,多数の商標について商標登録を有しており,そのウェブサイトにおいて,これらの商標 ら,同社が有する被告米国商標を譲り受け,被告米国商標の商標権者となった(甲3,30~32,乙19)。 JLP社は,多数の商標について商標登録を有しており,そのウェブサイトにおいて,これらの商標のライセンシーを募っている(甲33,34)。 米国では,2018年(平成30年)頃,ST社が,「PACKARD BELL」の欧文字を横一連に記載した商標等を使用してノートブック型コンピュータ等の家庭用電機製品の販売を開始し,同社は,自社のウェブサイトに,「PackardBell」ブランドを買収したと記載している(甲35,38,39)。 (3) 被告は,米国,韓国,メキシコなどにおいて,「PACKARD BELL」の商標登録をしている(乙22,23)。 また,被告は,平成30年3月6日に,日本において,「PACKARD BELL」の欧文字を標準文字で横一連にて表した被告出願商標を,指定商品を第9類として商標登録出願し(甲40),同月16日,本件商標について本件審判請求をした。 被告出願商標については,特許庁は,本件商標を引用し,平成30年10月31日付けで拒絶理由通知をした(甲41)。 (4) インターネット上にショッピングサイトを開設するアマゾン合同会社のAmazonサイトには,平成30年7月23日時点で,輸入品を取り扱うCHI - 21 -KAZOという事業者が,パソコン交換用液晶パネルとして,「Packard Bell Easy Notetk37 シリーズ15.6 " LCD LED 表示画面WXGA HD Screen Size: 15.6" LED-1366-768-G-40-15.6-14140」を10万5065円で販売していることを示す本件ウェブページがあり,本件ウェブページには,上記商品内容の記載の下に Size: 15.6" LED-1366-768-G-40-15.6-14140」を10万5065円で販売していることを示す本件ウェブページがあり,本件ウェブページには,上記商品内容の記載の下に,「PACKARDBELL」の記載があるほか,「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日」が「2017/8/8」(平成29年8月8日)と記載されている(甲7,8)。 原告のPBブランドのノートブック型パソコンシリーズには,「Easy Note」という商品シリーズがあり,同シリーズには,「TK37」という商品名の商品が存在する(甲23)。 CHIKAZOは,Amazonサイトにおいて,「オールラウンドで米国から直輸入。信頼の輸入ショップブランド,CHIKAZOです。」,「海外からの輸入のため,ご購入商品がお手元に届くまで,最大で2-3週間の日数が必要となります。」と記載しており,その評価は,30日間では,「肯定的80% 否定的20%」,90日間では,「肯定的89% 否定的11%」,12か月及び全期間では,「肯定的98% 否定的2%」であり,文章による評価でも,肯定的なものと否定的なものがあった(甲7)。 Amazonサイトでは,出品者による出品商品に欺罔行為がないよう,購入者による出品者の評価システムを構築したり,出品者がブランド名を使用するときの使用方法を定めるなどの対応を採っている(甲4,16,20,22)。 (5) 米国のウォルマート(Walmart)は,同社のウェブサイトにおいて,「Packard Bell EASYNOTE TK85-JU SERIRES 15.6” LCD LED Display ScreenWXGA HD」と表示した商品を販売している。(甲24)2 商標法は,商標を保護することにより,商標の TK85-JU SERIRES 15.6” LCD LED Display ScreenWXGA HD」と表示した商品を販売している。(甲24)2 商標法は,商標を保護することにより,商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り,もって産業の発達に寄与し,あわせて需要者の利益を保護することを目的とする(商標法1条)ものであるところ,一定期間使用されていない商標については,そのような商標権者等の業務上の信用の維持を図る必要はない上,かえ - 22 -って国民一般の利益を害することになるため,商標法50条は,「継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていない」ことを要件として,商標登録の取消しを認めている。 そこで,本件において,本件商標の「商標権者,専用使用権者又は通常使用権者」(以下,「本件商標権者等」という。)が本件指定商品について本件商標の使用をしているということができるかどうかについて判断する。 (1) 原告は,前記1(4)の本件ウェブページの記載を基に,本件商標が本件要証期間中に,原告の商品である「Packard Bell Easy Note TK37 シリーズ」の本件液晶パネルを販売するために使用されていると主張する。 また,前記1(4)によると,本件ウェブページには,「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日」が,本件要証期間中の平成29年8月8日と記載されていること,原告が販売する商品には,「Packard Bell Easy Note TK37 シリーズ」があること(甲23)が認められる。 (2) しかし,本件証拠上,CHIKAZOが本件商標権について,「商標権者,専用使用権者,通用使用権者」(本件商 Easy Note TK37 シリーズ」があること(甲23)が認められる。 (2) しかし,本件証拠上,CHIKAZOが本件商標権について,「商標権者,専用使用権者,通用使用権者」(本件商標権者等)に当たると認めることはできないのはもとより,本件商標権者等といかなる関係にある者であるかは全く明らかではない。 また,CHIKAZOは,自らを米国からの直輸入品を扱う輸入業者であるとしている(前記1(4))ところ,原告は,米国において,製品を販売しているとは認められないこと(前記1(1),(2)),原告からCHIKAZOに原告の商品が流通した経路が本件において全く明らかになっていないことを考慮すると,本件ウェブページには,「Packard Bell Easy Note tk37 シリーズ15.6」等の表示があるものの,本件ウェブページを用いてCHIKAZOが販売していた「Packard Bell Easy Note TK37 シリーズ」が,原告の製品であるかどうかは本件の証拠上,明らかでないというほかない。このことは,Amazonサイトにおいては,販売業者に,詐欺行為がない - 23 -ようにする制度を構築し,ブランド名を使用する際のポリシーを定めていること(前記1(4))など前記1認定の事実によっても左右されない。 そうすると,仮に,本件ウェブページにおいて,本件商標が使用されているとしても,上記のとおり,本件商標権者等との関係が全く不明であり,しかも,販売している商品も不明である商標の使用をもって,本件商標権者等による本件商標の使用を認めることはできない。 (3) 以上によると,原告は,本件要証期間内に,日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,本件指定商品について,本件商標の使用をし 使用を認めることはできない。 (3) 以上によると,原告は,本件要証期間内に,日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,本件指定商品について,本件商標の使用をしていることを証明したとは認められないから,本件指定商品に係る本件商標登録は,取り消されるべきである。 なお,原告の主張するFashion Walker事件判決は,流通業者が,ウェブサイトなどを通じて,商標の通常使用権者の商品を販売していたことが認定された事案であり,本件とは,事案を異にする。 3 原告は,被告の本件審判請求が信義則に反し権利の濫用であると主張する。 前記2のとおり,商標法50条は,一定期間使用されていない商標については,商標権者等の業務上の信用の維持を図る必要はない上,かえって国民一般の利益を害することになるため,第三者による商標登録の取消請求を認めたものであると解される。 そうすると,一定期間使用していない商標について,第三者が,それと同一又は類似する商標を商標登録することを目的として,商標法50条により,商標登録の取消しを求めたとしても,商標権者等の商標登録を維持する必要性が認められない以上,当該第三者が,商標権者等の登録商標の使用をあえて妨害するなどの特段の事情がない限り,その商標登録の取消請求が信義則に反するとか権利濫用になると認めることはできない。 本件において,前記1のような事実関係が認められるとしても,被告が,原告の登録商標の使用をあえて妨害するなどの特段の事情があるとは認められないから, - 24 -被告の本件審判請求が信義則に反するとか権利濫用になると認めることはできない。 4 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 被告の本件審判請求が信義則に反するとか権利濫用になると認めることはできない。 4 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官森 義 之 裁判官眞 鍋 美 穂 子 裁判官中 島 朋 宏 - 25 -(別紙)商 標 目 録 商標: 指定商品・区分:第7類起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機,家庭用食器洗浄機,家庭用電気式ワックス磨き機,家庭用電気洗濯機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー,電機ブラシ 第9類配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極 第12類陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。) を除く。)
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