- 1 -主文 被告人を懲役1年6月に処する。 この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。 さいたま地方検察庁で保管中の土地売買契約書2通(令和6年さいたま領第1387号符号1及び2)の偽造部分を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、平成31年4月1日から令和6年3月31日までの間、さいたま市都市局まちづくり推進部与野まちづくり事務所所長補佐兼区画整理係係長として、同市都市計画与野駅西口土地区画整理事業等に関する職務に従事していたものであるが、同年1月9日、同市(住所省略)同市中央区役所4階所在の前記事務所において、行使の目的で、ほしいままに、乙欄に株式会社Aの社印が押された土地売買契約書2通の甲欄に記載された同市長Bの不動文字の名下に「さいたま市長印与野まちづくり事務所」と刻された同市長の公印を押し、さらに、同月10日、作成日付欄の令和・年・月・日の各空欄に「6」「1」「10」とゴム印で記入するなどして、もって同市が株式会社Aに前記土地区画整理事業施行区域内の市有地2筆を代金8580万4160円で売却する旨の同市長作成名義の土地売買契約書2通(令和6年さいたま領第1387号符号1及び2)を偽造した上、同日、前記事務所において、株式会社Aの親会社であるC株式会社従業員Dに対し、前記偽造に係る土地売買契約書2通を真正に成立したもののように装って閲覧させ、そのうちの1通を交付して行使した。 (量刑の理由)本件は、さいたま市の職員であった被告人が、土地区画整理事業地内にある市有地売却に必要とされる手続を経ないまま、社屋用地の取得を希望 - 2 -する会社に売却しようと考え、市長の公印を冒用して押印するなどし、土地売買契約書2通を偽造した上、そ 理事業地内にある市有地売却に必要とされる手続を経ないまま、社屋用地の取得を希望 - 2 -する会社に売却しようと考え、市長の公印を冒用して押印するなどし、土地売買契約書2通を偽造した上、それらを同社の親会社従業員に閲覧させるなどして行使したという有印公文書偽造・同行使の事案である。 市の業務用パソコンを用いて契約文面を作成した上、事務所内で市長名義の正式な公印を使用して偽造された本件偽造文書は外観上真正に成立したものと区別ができず、当該土地の事務担当者の被告人に随意契約の希望を伝えていた買主において作成の真正を疑うことはできなかった。本件行為は、市有財産の処分に係る契約書という重要な公文書に対する信頼を大きく損なうものであり、一旦は当該会社への所有権移転登記がなされている。本件によりさいたま市に対し、土地区画整理に関する信頼を害するなどの悪影響を及ぼし、売買代金返還などの事務を生じさせ、登記手続費用などの損害賠償の支払も余儀なくさせている。 被告人は、資産経営課から買主に対する随意契約による売却には適さない旨の見解を示されていたにもかかわらず、随意契約で売却する利点がある、人員が不足し多忙な中で長年にわたり懸案事項となっていた本件土地を売却し区画整理事業を進めたいなどと考えて本件犯行に及んでいる。本来公共財産の処分は競争入札によるべきであって随意契約による処分には慎重な検討を要するはずであるのに,安易かつ軽率に重要な公文書たる契約書を偽造・行使したことは強い非難に値する。 これらの事情から、被告人の刑事責任は重いものの、私利私欲のために犯行に及んだことをうかがわせる事情はなく、資産経営課とのやり取りを随時上司である与野まちづくり事務所所長に報告し、契約締結について相談しても中止等を指示されなかったことが被告人が本件 私欲のために犯行に及んだことをうかがわせる事情はなく、資産経営課とのやり取りを随時上司である与野まちづくり事務所所長に報告し、契約締結について相談しても中止等を指示されなかったことが被告人が本件を進めた一因になっており、所長においてもこれを阻止すべきであったという意味で、酌むことができる。このほか、被告人が本件で懲戒免職処分等を受け社会的制裁を受けている上、さいたま市に対し前記の買主への賠償金等として約3 - 3 -00万円を支払ったこと、前科前歴がなく事実を認め反省を示していることは被告人に有利な事情とみることができる。 以上を考慮して、被告人を主文の刑に処した上、刑の執行を猶予することとした。 (求刑懲役1年6月)(さいたま地方裁判所第5刑事部裁判長裁判官小池健治裁判官並河浩二裁判官志村塔子)
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